特許第6166378号(P6166378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166378改善されたモルフォロジーを有するZSM−58結晶の合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166378
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】改善されたモルフォロジーを有するZSM−58結晶の合成
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   C01B39/48
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-546482(P2015-546482)
(86)(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公表番号】特表2016-501178(P2016-501178A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】US2013069073
(87)【国際公開番号】WO2014088754
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】61/734,010
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/734,012
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/734,007
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】アイビー・ディ・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ナディア・エイ・フリチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ・カーステンセン
(72)【発明者】
【氏名】マクテルド・マリア・ウィルフリード・マーテンス
(72)【発明者】
【氏名】ブリータ・エンヘルス
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−027321(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090049(WO,A1)
【文献】 KUMITA, Yasukazu, et al.,Shape selective methanol to olefins over highly thermostable DDR catalysts,Applied Catalysis A:General,ELSEVIER SCIENCE,2010年 7月22日,Vol.391,PP.234-243,ISSN:0926-860X, DOI:10.1016/J.APCATA.2010.07.023
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01J 21/00−38/74
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DDRフレームワーク型ゼオライトの合成方法であって、
結晶質DDRフレームワーク型材料を形成することが可能な反応混合物を形成し、その反応混合物は、水、酸化ケイ素、水酸化アルカリまたはアルカリ土属、及びメチルトロピニウム塩構造指向剤を含み、その反応混合物は、12〜25の水と酸化ケイ素とのモル比、0.01〜1.0の水酸化物と酸化ケイ素とのモル比、0.01〜1.0のアルカリ及びアルカリ土類金属と酸化ケイ素とのモル比、0.01〜1.0の構造指向剤と酸化ケイ素とのモル比、及び前記反応混合物中の酸化ケイ素の重量に対して少なくとも0.05重量%の種結晶を有すること;及び
1.1以下の軸比を有するDDRフレームワーク型結晶を回収し、軸比は頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比であり、深さの寸法は前記頂点から頂点への距離及び前記辺から辺への距離より短いこと
を含む方法。
【請求項2】
前記反応混合物は、前記反応混合物中の酸化ケイ素の重量に基づき、0.05重量%〜5.0重量%の種結晶を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造指向剤は、塩化メチルトロピニウムであり、DDRフレームワーク型結晶は、実質的にZSM−58を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物は、12〜20の水と酸化ケイ素とのモル比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物は、アルミナ供給源を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記軸比は、1.05以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記深さの寸法と前記辺から辺への距離との比は、0.9以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ZSM−58結晶の10体積パーセント未満は、5μm以下の代表径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物は、前記DDRフレームワーク型結晶の形成の間、120℃〜175℃の温度で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
DDRフレームワーク型ゼオライトの合成方法であって、
結晶質DDRフレームワーク型材料を形成することが可能な反応混合物を形成し、その反応混合物は、水、酸化ケイ素、水酸化アルカリまたはアルカリ土属、及びメチルトロピニウム塩構造指向剤を含み、その反応混合物は、12〜25の水と酸化ケイ素とのモル比、0.01〜1.0の水酸化物と酸化ケイ素とのモル比、0.01〜1.0のアルカリ及びアルカリ土類金属と酸化ケイ素とのモル比、0.01〜2.0の構造指向剤と酸化ケイ素とのモル比、及び前記反応混合物中の酸化ケイ素の重量に対して少なくとも0.05重量%の種結晶を有すること;及び
結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布を有するDDRフレームワーク型結晶を回収し、前記DDRフレームワーク型結晶の10体積%未満は5μm以下の代表径を有し、前記結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布のピークに対する結晶径は15μm〜40μmであり、1μmビンの幅での前記結晶径に対する体積パーセントのプロットのピーク高さが少なくとも10体積%であること
を含む方法。
【請求項11】
前記結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布は、前記ピーク高さの半分に対応する体積パーセントにおける結晶径の間の差が、前記ピークの結晶径である又はそれ未満である、結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物中のシリカの重量に対して反応混合物は1.0重量%以下の種結晶を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
回収されたDDRフレームワーク型結晶は、1.1以下の軸比を有し、軸比は頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比であり、深さの寸法は前記頂点から頂点への距離及び前記辺から辺への距離より短いことである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記深さの寸法と前記辺から辺への距離との比が、0.9以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
構造指向剤は塩化メチルトロピニウムであり、DDRフレームワーク型結晶は実質的にZSM−58を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
反応混合物は、12〜25の水と酸化ケイ素とのモル比を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比である、1.1以下の軸比と、
前記頂点から頂点への距離及び前記辺から辺への距離より短い深さの寸法を有する、丸形状ディスクモルフォロジーを有するZSM−58結晶を含む組成物であり、
ZSM−58結晶は、結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布を有し、
前記ZSM−58結晶の10体積パーセント未満が5μm以下の代表径を有し、
前記ZSM−58結晶が、少なくとも90%の純度を有する、組成物。
【請求項18】
前記結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布のピークの結晶径は、15μm〜40μmであり、かつ1μmビンの幅での前記結晶径に対する体積パーセントのプロットのピーク高さは少なくとも10体積パーセントである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布は、前記ピーク高さの半分に対応する体積パーセントにおける結晶径間の差が、前記ピークの前記結晶径である又はそれ未満である、結晶の体積パーセントに基づく単峰形の結晶径分布を更に含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記深さの寸法と前記辺から辺への距離との比が0.9以下である、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
改善されたモルフォロジーを有するゼオライトと、その製造方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト結晶構造は、石油流体を処置するための精製装置プロセスおよび他のプロセス内での広範囲にわたる用途が見出されている。いくつかのゼオライト用途は本質的に触媒であり、一方、他の用途は、ガス流体内の分子を選択的に吸着するゼオライトの能力に焦点を置いている。
【0003】
分子の選択的吸着のために潜在的に適切であるゼオライトの一例はZSM−58である。ZSM−58は、8員環構造を有するDDR型ゼオライトである。特許文献1は、指向剤としてメチルトロピニウム(methyltropinium)塩を使用するZSM−58の合成方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,698,217号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、1.1以下の軸比であって、頂点から頂点への距離と辺(端、へり又は縁:edge)から辺への距離との比(又は辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の比)である軸比と、頂点から頂点への距離および辺から辺への距離未満の深さの寸法とを有する丸形ディスクモルフォロジーを有し、結晶径分布に対する単峰形の体積(又は結晶径に対する単峰形の体積分布:unimodal volume versus crystal size distribution)を有するZSM−58結晶を含む組成物であって、ZSM−58結晶の10体積パーセント未満が約5μm以下の代表径(特徴径、サイズ又は寸法:characteristic size)を有し、ZSM−58結晶が、少なくとも約90%の純度を有する組成物を提供する。
【0006】
別の態様において、DDRフレームワーク型ゼオライトの合成方法が提供される。この方法は、ZSM−58結晶などの結晶質DDRフレームワーク型材料を形成することが可能な反応混合物であって、水、酸化ケイ素、水酸化アルカリまたはアルカリ土属およびメチルトロピニウム塩構造指向剤を含んでなり、約12〜約25の水と酸化ケイ素とのモル比(又は酸化ケイ素に対する水のモル比)、約0.01〜約1.0の水酸化物と酸化ケイ素とのモル比(又は酸化ケイ素に対する水酸化物のモル比)、約0.01〜約1.0のアルカリまたはアルカリ土類金属と二酸化ケイ素とのモル比(又は二酸化ケイ素に対するアルカリまたはアルカリ土類金属のモル比)、約0.01〜約1.0の構造指向剤と二酸化ケイ素とのモル比(又は二酸化ケイ素に対する構造指向剤のモル比)、および混合物中のシリカの重量に対して少なくとも約0.05重量%の種結晶を有する混合物を形成することと、1.1以下の軸比であって、頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比である軸比と、頂点から頂点への距離および辺から辺への距離未満の深さの寸法とを有するDDRフレームワーク型結晶(ZSM−58結晶など)を回収することを含む。
【0007】
さらに別の態様において、DDRフレームワーク型ゼオライトの合成方法を提供する。この方法は、ZSM−58結晶などの結晶質DDRフレームワーク型材料を形成することが可能な反応混合物であって、水、酸化ケイ素、水酸化アルカリまたはアルカリ土属およびメチルトロピニウム塩構造指向剤を含んでなり、約0.01〜約1.0の水酸化物と酸化ケイ素とのモル比(又は酸化ケイ素に対する水酸化物のモル比)、約0.01〜約1.0のアルカリまたはアルカリ土類金属と二酸化ケイ素とのモル比(又は二酸化ケイ素に対するアルカリまたはアルカリ土類金属のモル比)、約0.01〜約1.0の構造指向剤と二酸化ケイ素とのモル比(又は二酸化ケイ素に対する構造指向剤のモル比)、および混合物中のシリカの重量に対して少なくとも約0.05重量%の種結晶を有する混合物を形成することと、結晶径分布に対する単峰形の体積を有するDDRフレームワーク型結晶(ZSM−58結晶など)を回収することを含む。ここで、DDRフレームワーク型結晶(ZSM−58結晶など)の10体積パーセント未満が約5μm以下の代表径を有し、結晶径分布に対する体積のピークの結晶径が約15μm〜約40μmであり、かつ1μmビン幅による結晶径に対する体積プロット(volume versus crystal size plot)のピーク高さが少なくとも約10体積パーセントである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは、SEM顕微鏡写真における結晶の軸比を決定するために使用する距離の例を概略的に示す。 図1B及び1Cは、六角形モルフォロジーを有するZSM−58結晶のSEM顕微鏡写真を示す。 図1Dは、ZSM−58結晶の径分布を示す。
図2図2A及び2Bは、六角形モルフォロジーを有するZSM−58結晶のSEM顕微鏡写真および径分布を示す。
図3図3A及び3Bは、丸形ディスクモルフォロジーを有するZSM−58結晶のSEM顕微鏡写真および径分布を示す。
図4図4A及び4Bは、丸形ディスクモルフォロジーを有するZSM−58結晶のSEM顕微鏡写真および径分布を示す。
図5図5は、六角形モルフォロジーを有するZSM−58結晶のSEM顕微鏡写真を示す。
図6図6は、丸形ディスクモルフォロジーを有するZSM−58結晶のSEM顕微鏡写真を示す。
図7図7a及び7bは、丸形ディスクモルフォロジーを有するZSM−58結晶のSEM顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概要
ZSM−58は、DDR結晶構造を有する8員環結晶であり、かつ本明細書のZSM−58結晶質材料の形成に関する方法は、他のDDRフレームワーク型結晶質材料の形成に容易に変換できると考えられる。DDR/ZSM−58の潜在的用途には、気体の分離における用途が含まれる。例えば、DDR/ZSM−58の細孔径のため、この結晶は、NおよびCOなどの分子をCHなどの低分子量炭化水素から分離するために適切となる。ZSM−58は、従来から、形成させるには高価な結晶構造であると考えられている。これは、部分的に、典型的な構造指向剤、ヨウ化物型などのメチルトロピニウム塩の高い費用、ならびに高いHO:SiO比および/または従来の合成技術の低いスループットのためである。
【0010】
合成することが相対的に高価な結晶であることに加えて、従来のZSM−58合成技術は、径均一性の低い(相対的に広い径分布)結晶を製造する傾向がある。上記の通り、ZSM−58の1つの用途は、気相分離である。気相分離において使用されるゼオライトの結晶のために、相対的に狭い径の分布を有する結晶を製造することが有利である。相対的に狭い径分布を維持することによって、分離デバイスなどのデバイスの範囲内で、結晶全体で、相対的に均一および/または相対的に容易に予想できる吸着(または他のゼオライト活性/反応)を促進することができる。追加的に、個々の結晶が相対的に等方性反応および/または吸着活性を有することも有利となる。言い換えると、潜在的反応物または吸着剤に対して結晶がどのように配列されるかということから独立して、個々の結晶が同様の活性および/または吸着特性を示すことが望ましい。単結晶に関する性質のこのような均一性は、結晶のモルフォロジーによって、しばしば影響を受ける。
【0011】
様々な態様において、改善されたモルフォロジーおよび/または改善された径分布を有するZSM−58結晶の合成方法が提供される。ZSM−58結晶の合成の間、条件を制御することによって、狭い径分布を有する有用な径の結晶を生じることができる。追加的に、合成混合物中の水含有量対酸化ケイ素(SiO)含有量の比を制御することによって、改善されたモルフォロジーを有するZSM−58結晶を形成することができることが予想外に見出された。改善されたモルフォロジーは、結晶の様々な寸法全体で、より均一な径を有するZSM−58結晶をもたらすことができ、したがって、結晶の分布の間で、より均一の拡散を可能にすることができる。このことは、結晶の異なる軸に沿って結晶の径が有意に異なる従来の合成された結晶とは対照的である。モルフォロジーのこのような変化は、結晶の径範囲を変化させることなく達成することができる。言い換えると、2つの異なるモルフォロジーを有する類似の径の結晶は、適切な合成条件を選択することによって作製することができる。いくつかの態様において、ZSM−58結晶の合成方法には、従来から使用されるヨウ化メチルトロピニウムと対照的に、構造指向剤として、塩化メチルトロピニウムまたは水酸化メチルトロピニウムを使用する方法が含まれる。
【0012】
結晶モルフォロジーおよび合成スループット
ゼオライトのための合成混合物の典型的な製法は、反応物の可能な比率に関する相対的に広い範囲を含むことができる。例えば、米国特許第4,698,217号明細書のZSM−58合成の最初の記載は、50〜1000のSiO:Al比および5〜200のHO:SiO比を記載した。
【0013】
米国特許第4,698,217号明細書には、一般に、5〜200のHO:SiO比が開示されるが、その中で提示される実施例は、40のHO:SiO比のみが示されることに留意すべきである。水自体は一般に、合成の間に形成される結晶の種類への直接的な影響を有するとは見られ得ない。その代わりに、ゼオライト合成混合物に添加される水の量は、任意であるか、様々な要因に基づいて選択することができる。要因の1組は、原材料を可溶性にするために、およびまた、相対的に均質の混合物を達成するために十分な液体を合成混合物中に提供することに関連がある。合成混合物が十分に均質化されない場合、結晶形成は、より低い速度で生じ得、および/または所望の種類以外の他の結晶が形成し得る。合成混合物により多くの水を添加することによって、成分の全てが水中で十分に可溶性となる(溶解される)ことを保証し、混合した時に十分均質の混合物を達成することを促進することができる。しかしながら、水は希釈剤として作用することも可能である。したがって、別の考慮すべき問題または要因は、プロセススループットに及ぼす水の影響に関連がある。均質な混合物の形成を可能にするために十分な水が存在する場合、いずれの追加の水も、所望の結晶のための合成プロセスを必要以上に遅らせる傾向がある。これは、部分的に、所望の結晶が形成されたら、水を除去することの必要性による。実際的な観点から、約40〜50のHO:SiOの比は、過剰量の水を有することなく、均質な混合物を形成するために十分な水を提供すると考えられる。
【0014】
O:SiOモル比を低下させることは、合成混合物に種結晶を含むことと組み合わせて、ZSM−58の結晶形成に影響を有することができることが予想外に見出された。試薬を混合するための媒体として役立つ代わりに、種結晶の存在下で、約12〜約25(例えば、約12〜約20)のHO:SiO比を使用することは、異なる望ましいモルフォロジーを有するZSM−58結晶の形成をもたらすことができる。ZSM−58を形成するための従来の合成混合物は、六角形面を有するディスコティックモルフォロジーに相当する結晶の形成を導いた。六角形ディスクモルフォロジーは、主として六角形面を一般に有することができる。六角形面の上部および底部は、一般に、より大きい六角形面に相当し、上部および底部に対して(ほぼ)垂直な、より小さい深さ寸法を有する。対照的に、約12〜約20のHO:SiO比を有し、種結晶を含む合成混合物は、で丸形または(ほぼ)円形ディスク面/形状を有する結晶の形成をもたらすことができる。丸形ディスクの深さ寸法は、ディスクの丸い面の横の寸法より小さくなることができる。
【0015】
従来の六角形ディスクモルフォロジーと、丸形ディスクモルフォロジーの差異は、例えば、SEM顕微鏡写真に認めることができる。図1bは、約47のHO:SiO比を有する合成混合物を使用して形成されるZSM−58結晶の実施例を示す(追加的な合成の詳細は、下記の実施例1に提示される)。図1bに示すように、ZSM−58結晶は、主として六角形面を有する。対照的に、図3aは、同様であるが約19のみのHO:SiO比を有する合成混合物を使用して形成されるZSM−58結晶は、円形または丸形ディスクの外観を有するように見えることを示す(追加的な合成の詳細に関しては、下記の実施例3を参照のこと)。図3に示される丸形ディスクモルフォロジーを有する結晶が、ZSM−58結晶構造を有するように見えることを確認するために、X線回折(XRD)技術を使用した。
【0016】
従来の六角形ディスクモルフォロジーおよび丸形ディスクモルフォロジーとの間の差異を特徴づける1つの方法は、結晶の六角形面における、頂点から頂点への距離と、辺から辺への距離との間の差異に基づくことができる。この種類の特徴づけを実行するために、最初のステップは、特徴づけを実行するための結晶の正確な面を特定することである。六角形ディスク結晶に関して、頂点から頂点への線および辺から辺への線の組み合わせは、平面を粗く画定することができる。次いで、この平面に対して垂直な寸法は、結晶の深さに相当することができる。六角形ディスクモルフォロジーに関して、この深さの寸法は、頂点から頂点への距離または辺から辺への距離よりも一般に短くなることができる。深さの距離が他の2つの距離よりも長い場合、異なる六角形面がこの計算のために選択されなければならないか、あるいは結晶は、六角形ディスクまたは丸形ディスクモルフォロジーに相当し得ない。結晶を特徴づけるために、正確な種類の六角形(または丸形)面が選択されたことを決定した後、六角形面に関する頂点から頂点への距離および辺から辺への距離は、軸比を算出するために比較することができる。
【0017】
図1aは、この種類の計算の概略的な例を示す。図1a中、線110は、六角形の頂点から頂点への距離に相当する。線120は、辺から辺への距離に相当する。良好に画定された辺および頂点を有する六角形面に関して、頂点から頂点への距離は、定義上、辺から辺への距離より典型的に大きい。六角形の角および辺は、辺および頂点がまだ特定されることができる程度に、円を形成する方へ平滑化されると、頂点から頂点への距離および辺から辺への距離は、ますますより近くなることができる。円の限定ケースにおいて、頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との軸比は1になるが、限定ケースにおいて、「頂点」および「辺」の位置がいくぶん任意でもあり得ることに留意すべきである。
【0018】
図1bに示される種類の結晶に関して、頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比(又は辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の比)は、SEM顕微鏡写真における距離を測定することに基づいて決定することができる。図1bに示される結晶は、約40以上のHO:SiO比を有する合成混合物を使用して形成される結晶の代表である。六角形ディスクモルフォロジーを有するそのような混合物から形成されるZSM−58結晶に関して、頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との軸比は、少なくとも約1.15、例えば、少なくとも約1.2であることが観察された。
【0019】
六角形ディスクモルフォロジーと対照的に、水とシリカとのより低い比を有する合成混合物を使用して、丸形ディスクモルフォロジーを有する結晶を形成することができる。丸形ディスクモルフォロジーの結晶の特徴づけは、同様の方法で実行することができる。深さの寸法は、結晶の丸形(ほぼ円形)面に関して特定することができる。いくつかの実施形態において、深さ寸法と辺から辺への距離との比(又は深さ寸法と辺から辺への距離に対する深さ寸法の比)は、約0.9以下、例えば、約0.85以下であることができる。そのような実施形態において、約0.95より大きい深さの寸法と辺から辺への距離との比を有する結晶ほぼ球状のモルフォロジーに相当することが特定された。次いで、丸形ディスクの丸い面は、軸比を使用して特徴づけることができる。図3aに示される丸形ディスクに関して、頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との軸比(又は辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比)は、約1.1以下、例えば、約1.05以下、または1.0の限定軸比値に接近することができる、さらにより低い値であることができる。
【0020】
約1.1以下の軸比を有する丸形ディスクモルフォロジーは、気体分離などの用途に利点を予想外に提供することができる。六角形モルフォロジーの結晶に関して、結晶の中心から結晶の外側への経路距離は、結晶内の流れの方向次第で異なることができる。第1の経路距離は、辺の方へ移動する気体に関して観察することができ、一方、第2の経路距離は、頂点の方へ移動する気体に関して観察することができる。結晶内の経路距離のこの差異は、吸着/脱着および/または触媒反応性における異方性挙動に導くことができる。丸形ディスクモルフォロジーは、例えば、六角形ディスクモルフォロジーと比較すると、結晶内の経路距離で差異を低下させることができ、したがって、結晶内での異方性挙動の可能性を低下させることができる。
【0021】
構造指向剤−塩化メチルトロピニウム
多くの種類のゼオライトに関して、所望のゼオライトの形成は、構造指向剤の性質に高度に感応性であり得る。一連の有機ハロゲン化物などの関連した構造指向剤の系統群の中でさえ、1つのハロゲン化物を他のハロゲン化物に変化させることは、合成混合物から形成された得られた結晶における有意な変更へと導くことができる。様々な実施形態において、同様の結晶を製造しながら、ヨウ化メチルトロピニウムの代わりに構造指向剤として塩化メチルトロピニウムを使用することができるということが見出された。
【0022】
ヨウ化メチルトロピニウムは、以前に公開されたZSM−58合成の実施例に関して、構造指向剤として使用されていた。しかしながら、ヨウ化メチルトロピニウムは、相対的に高価な試薬である。追加的に、ヨウ化物塩は、おそらく、ヨウ化物塩前駆体によって提起されるある種の健康リスクなどのいくつかのヨウ化物塩によって示されるある種の危険のため、微孔性材料のための産業的な合成手順のために一般に好ましくない。塩化メチルトロピニウムは、より低コストの構造指向剤の選択を提供することができ、それによって、ZSM−58の生産コストを潜在的に低下することが可能である。同様の種類のZSM−58結晶を生じながら、塩化メチルトロピニウムをヨウ化メチルトロピニウムの代わりに使用することができることが決定された。塩化メチルトロピニウムに加えて、ヨウ化メチルトロピニウムのより低コストの代替物として、水酸化メチルトロピニウムを追加的に、または代わりとして使用することができる。
【0023】
DDR型ゼオライトの合成
ZSM−58は、ナトリウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属(M)カチオンの供給源、任意選択でアルミニウムの酸化物の供給源、ケイ素の酸化物の供給源、およびハロゲン化物、水酸化物または硫酸塩などのメチルトロピニウム塩の有機カチオン(R)の供給源、ならびに水を含有する反応混合物から調製することができる。例えば、ZSM−58を形成するための反応混合物は、水酸化ナトリウム(NaOH)、任意選択でアルミン酸ナトリウム(NaAlO)、酸化ケイ素(典型的にSiO)、ヨウ化メチルトロピニウム(潜在的にMTIと呼ばれる)および水(HO)を含むことができる。反応混合物の様々な成分のための適切な比は、下記の表Aに記載されるものを含むことができる。
【0024】
【表1】
【0025】
表Aに示されるように、アルミナの供給源の意図的な添加は必要とされない。故意に添加されたアルミナが少ない、または存在しない合成混合物に関して、SiO:Alの比は、通常、試薬に存在するアルミニウム不純物によって決定することができる。アルミニウム含有不純物は、混合物の成分の微量/汚染物質量で存在してもよいが(例えば、シリカの供給源中)、そのような成分は、本明細書のアルミナの考慮される供給源ではない。
【0026】
好ましくは、ZSM−58結晶の合成のための合成混合物は、結晶形成を促進するための種結晶をさらに含むことができる。1つの選択は、所望の結晶構造に相当する種結晶を導入することであり得る。乾燥結晶、湿潤結晶または結晶の湿潤ケーキなどの結晶のいずれかの都合のよい種類も使用することができる。種結晶は、製造環境での使用のために結晶に通常適用されるイオン交換または他の仕上げプロセスを使用して処理されることが必ずしも必要というわけではない。
【0027】
ZSM−58の結晶化は、適切な反応容器(例えば、ポリプロピレンジャーまたはTeflon(商標)ラインドまたはステンレス鋼オートクレーブ)中、静的または撹拌された条件のいずれかで実行することができる。結晶化のための温度の全体の有用な範囲は、約80℃〜約225℃(例えば、約120℃〜約175℃)であることができる。合成混合物が最初に形成される場合、合成混合物の温度は、いずれかの都合のよい方法で、所望の合成温度まで増加させることができる。例えば、合成混合物の温度は、所望の合成温度が達成されるまで、1時間あたり少なくとも10℃、例えば、1時間あたり少なくとも25℃、1時間あたり少なくとも40℃、または1時間あたり少なくとも75℃で増加させることができる。使用された温度で結晶化が生じるために十分な時間、この温度を維持することができ、例えば、約24時間から約60日にわたることができる。その後、結晶を液体から分離し、回収することができる。例えば、ZSM−58結晶を形成した後、生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、水を除去するために適切な温度で、例えば、約100℃〜約140℃で乾燥することができる。
【0028】
反応混合物は、適切な酸化物を供給する材料を利用して調製することができる。そのような材料には、必ずしも限定されないが、ケイ酸ナトリウム、シリカヒドロゾル、シリカゲル、ケイ酸、沈殿リカアルミナゾル、水酸化ナトリウム、任意選択でアルミン酸ナトリウム、任意選択でアルミナおよびメチルトロピニウム塩指向剤が含まれてもよい。ヨウ化、塩化および/または水酸化メチルトロピニウムなどのメチルトロピニウム塩は、試薬としての使用のために十分な純度での購入のために商業的に入手可能であり得る。あるいは、メチルトロピニウム塩は、橋頭位窒素における3−トロパノールの選択的メチル化によって合成されてもよい。この塩は、以下の式を有することができる。
【化1】
式中、Xは、アニオン、例えば、ハロゲン化物(例えば、ヨウ化物、塩化物、臭化物など、またはそれらの組み合わせ)、硝酸塩、水酸化物、硫酸塩、重硫酸塩、過塩素酸塩など、またはそれらの組み合わせである。
【0029】
反応混合物成分が2種以上の供給源によって供給されることができることは理解されなければならない。反応混合物は、バッチ的または連続的に調製することができる。新規の結晶質材料の結晶径および結晶化時間は、利用される反応混合物の性質および結晶化条件によって変化することができる。任意選択で、ZSM−58結晶の合成は、約0.05重量%〜約5.0重量%(例えば、約0.10重量%〜約5.0重量%または約1.0重量%〜約5.0重量%)の結晶質生成物の種結晶の存在によって促進することができる。
【0030】
本発明の様々な実施形態に従って合成されるZSM−58結晶は、少なくとも約85重量%、例えば、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約98重量%の純度を有することができる。純度は、結晶質生成物に存在する他の種類の結晶質モルフォロジーに対するZSM−58型モルフォロジーを有する結晶の重量%を指す。
【0031】
典型的に、ゼオライト結晶は、本明細書に記載される合成混合物などの成分の合成混合物を最初に作製することによって形成することができる。この混合物は、結晶化の前に、約0.5〜約48時間、いずれかの周囲条件で老化されていても、されていなくてもよい。有効期間、有効温度で合成混合物を加熱した後、合成混合物に形成される結晶は、濾過などによって混合物の水性環境から分離することができる。次いで、結晶を、使用前に典型的に乾燥および焼成することができる。相対的に小さいバッチで、例えば、ベンチスケールで、約350℃〜約925℃の温度で、約1分〜約1時間、例えば、約1分〜約20分間、結晶を焼成することができる。しかしながら、焼成時間は、しばしば、いずれかの所与の時間で処理される量(例えば重量および/または体積)次第である。相対的に大きいバッチで、結晶は、相対的に小さいバッチの場合と同様の焼成レベルを達成するために、16時間まで焼成される必要があり得る。焼成温度を達成するため、結晶を加熱するためのオーブンまたは他のデバイスの温度は、1時間あたり約50℃、1時間あたり約100℃で、または他の都合のよい増加で上昇させることができる。結晶は、所望の最終焼成温度まで温度を増加させ続けることより前の期間に、(例えば、1時間ごとに、2時間ごとになど)追加される温度で任意選択で保持されることができる。追加の加熱によって、結晶に対するダメージおよび/または結晶におけるモルフォロジー変化を減少/最小化させながら、水蒸気が結晶構造から出ることができる。
【0032】
追加的に、または代わりとして、結晶形成の後、いくつかの手順の1つ以上を使用して、結晶を処理することができる。1つの手順には、濾過、脱イオン(DI)水による洗浄、および約100℃〜約140℃などの水を除去するために適切な温度での結晶の乾燥が含まれる。
【0033】
いくつかの形態において、DDR型結晶は、テンプレート/構造指向剤として使用された有機材料を含有することができる。触媒または吸着剤として使用する前に、有機成分の全部または一部を除去するために、そのような材料を処理することができる。これは、約250℃〜約550℃の温度で、例えば、1時間〜約48時間、そのような有機物含有結晶を加熱することによって都合よくは実行することができる。
【0034】
本発明の結晶質材料は、吸着剤または触媒として利用される場合、少なくとも部分的に脱水されることもできる。これは、酸化または不活性雰囲気(それぞれ、空気または窒素など)で、および大気、亜大気または超大気圧で、例えば、約30分〜約48時間、200℃〜約370℃の範囲の温度まで加熱することによって実行することができる。脱水は、単に真空下にDDR型結晶を配置して、室温(約20〜25℃)で実行することによっても実行できるが、十分な量の脱水を得るために長い時間が必要とされ得る。
【0035】
任意選択で、結晶は、1〜20分間、約350℃〜約925℃の温度で焼成することもできる。焼成温度を達成するため、結晶を加熱するためのオーブンまたは他のデバイスの温度は、50℃、100℃または他の都合のよい増加で上昇させることができる。結晶は、所望の最終焼成温度まで温度を増加させ続けることより前の期間に、追加される温度で保持されることができる。追加の加熱によって、結晶におけるダメージおよび/またはモルフォロジー変化を減少/最小化させながら、水蒸気が結晶構造から出ることができる。
【0036】
所望の範囲まで、ナトリウムカチオンなどの合成されたままの材料の最初のカチオンを、当該技術において周知の技術に従って、少なくとも部分的に、イオン交換によって他のカチオンで置き換えることができる。好ましい置換カチオンには、金属イオン、水素イオン、水素前駆体、例えば、アンモニウムイオンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0037】
様々な実施形態において、上記手順は、ナトリウムまたは他のアルカリ金属不純物の含有量を低下させるためにイオン交換手順を実行するために、修正および/または置き換えることができる。結晶を形成するために十分な時間量で合成混合物を加熱した後、合成混合物の結晶を、濾過などによって、混合物の水性環境から分離することができる。次いで、分離された結晶を、水洗浄に暴露することができる。例えば、濾過された結晶は、約20℃〜約90℃(例えば、約20℃〜約70℃)の温度で、水ですすぐことができる。水洗浄のために使用される水の量は、典型的に、少なくとも相当する結晶の体積であることができる。任意選択で、水洗浄の前または後に、結晶を、アセトンの使用などの有機洗浄に暴露することもできる。有機洗浄は、約40℃未満などの都合のよい温度で、水と同様に少なくとも結晶の体積であることが可能な有機溶媒の体積を用いて実行することができる。水洗浄および任意の有機洗浄の後、洗浄された結晶を、洗浄流体から分離するために濾過することができる。濾過および乾燥の後、上記されたような最初の焼成を結晶に実行することができる。焼成の加熱プロフィールは、濾過された結晶をより徹底的に乾燥することができるように追加の温度値での停止を任意選択で含むことができる。次いで、結晶を、酢酸、硝酸アンモニウムまたは塩酸の1Mの溶液などの酸性水環境に暴露することができる。他の適切な酸性溶液には、ゼオライト結晶と適合性のある酸性溶液(すなわち、ゼオライトを溶解および/また脱結晶化させないもの)、例えば、6.0以下、例えば5.0以下のpKa値を有する他の強酸および有機酸が含まれる。これによって、DDR型ゼオライトのアルカリ金属不純物が、酸性溶液からの水素イオンと交換されることができる。交換後、結晶を、使用前に第2の時間で乾燥/焼成することができる。酸性溶液は、過剰量のイオンが、結晶中のアルカリ金属不純物との交換のために、溶液中で利用可能である限り、いずれかの都合のよい濃度を有することができる。便宜上、酸性溶液は、少なくとも約0.1M、例えば少なくとも約1.0Mの濃度を有することができる。
【0038】
結晶径分布の制御
新規結晶モルフォロジーを促進することに加えて、種結晶の使用は、結晶径の改善された均一性を有するZSM−58結晶の合成を促進することもできる。試料中の結晶の径分布は、体積の関数として結晶の径分布を決定するために、Horiba(商標)光散乱検出器を使用するなどの光散乱によって決定することができる。本明細書に記載される径分布において、径分布は、約1μm径の一連のビンとして表すことができる。
【0039】
本明細書に記載される合成方法のための改善された径分布は、いくつかの要因に基づいて定義することができる。第1に、体積と関連する径分布のプロットは、好ましくは、シングルピークを示すモノモーダルであることができる(例えば、バイモーダルまたはマルチモーダルではない)。本明細書に説明に関して、径分布は、径分布プロットの2つの別々のピークが、2.5%より高いピーク体積パーセントを有する場合、バイモーダルであると考えられ、したがって、ピークが1つのみ存在し、その体積パーセントが2.5%より高い場合、モノモーダルであると考えられる。別の好ましい特徴は、体積分布の主な(あるいは唯一の)ピークのピーク高さが、結晶体積の少なくとも10%に相当することである。言い換えると、体積分布のピークに相当する1μmビンは、結晶体積の少なくとも10%に相当する結晶を含むことができる。第3の好ましい特徴は、全体の結晶体積の10%未満が、5μm未満の代表径を有する結晶に相当することである得る。
【0040】
さらに別の潜在的特徴は、主なピークの幅が関与することができる。図1D、2B、3Bおよび4BのHoriba(商標)プロットにおいて、下部(x−)の軸は、結晶径の対数に相当し、そのプロット態様は、主なピークに関してほぼガウス形の外観をもたらす。ガウス型形状を特徴づけることの1つ方法は、最大高さの半分におけるピークの全幅(半値全幅)に基づくことができる。そのような半値全幅の測定は、この場合、対数スケール幅に相当するが、線形スケールで表される幅を、ピークの両側での高さ値に基づいて誘導することができる。いくつかの実施形態において、半値全幅の差異は、ほぼピークの最大高さまたはそれ未満であることができる。例えば、結晶径の仮定的Horiba(商標)プロットは、17μmの結晶径においてピークを有することができる。ピーク高さの半分で、結晶径値は、それぞれ、12μmおよび26μmであることができ、これによって、14μmの最大半量における結晶径の差異がもたらされ、これはピークにおける結晶径未満である。なお、「狭い」結晶径分布のためのこの定義は、最も共通の結晶径増加のための径値として比例する。
【0041】
他の実施形態
追加的に、または代わりとして、本発明は以下の実施形態の1つ以上を含むことができる。
【0042】
実施形態1.1.1以下の軸比であって、頂点から頂点への距離と辺(端、へり又は縁)から辺への距離との比(a ratio of a vertex-to-vertex distance and an edge-to-edge distance)である軸比と、頂点から頂点への距離および辺から辺への距離未満の深さ寸法とを有する丸形ディスクモルフォロジーを有し、結晶径分布に対する単峰形の体積(又は結晶径に対する単峰形の体積分布:unimodal volume versus crystal size distribution)を有するZSM−58結晶を含む組成物であって、ZSM−58結晶の10体積パーセント未満が約5μm以下の代表径を有し、ZSM−58結晶が、少なくとも約90%の純度を有する組成物。
【0043】
実施形態2.結晶径分布に対する単峰形の体積のピークの結晶径が約15μm〜約40μmであり、かつ1μmビン幅による結晶径に対する体積プロット(volume versus crystal size plot)のピーク高さが少なくとも約10体積パーセントである、実施形態1の組成物。
【0044】
実施形態3.結晶径分布に対する単峰形の体積は、ピーク高さの半分に相当する体積における結晶径間の差が、ほぼピークの結晶径またはそれ未満である、結晶径分布に対する体積をさらに含む、実施形態1または実施形態2の組成物。
【0045】
実施形態4.深さ寸法と辺から辺への距離との比(又は辺から辺への距離に対する深さ寸法の比:ratio of the depth dimension to the edge-to-edge distance)が約0.9以下である、実施形態1〜3のいずれか1つの組成物。
【0046】
実施形態5.DDRフレームワーク型ゼオライトの合成方法であって、ZSM−58などの結晶質DDRフレームワーク型材料を形成することが可能な反応混合物であって、水、酸化ケイ素(好ましくは、SiO)、水酸化アルカリまたはアルカリ土属およびメチルトロピニウム塩構造指向剤を含んでなり、約12〜約25、好ましくは約12〜約20の水と酸化ケイ素とのモル比(又は酸化ケイ素に対する水のモル比)、約0.01〜約1.0の水酸化物と酸化ケイ素とのモル比(又は酸化ケイ素に対する水酸化物のモル比)、約0.01〜約1.0のアルカリおよびアルカリ土類金属と酸化ケイ素とのモル比(又は酸化ケイ素に対するアルカリまたはアルカリ土類金属のモル比)、約0.01〜約2.0の構造指向剤と酸化ケイ素とのモル比(又は二酸化ケイ素に対する構造指向剤のモル比)、および混合物中の酸化ケイ素の重量に対して少なくとも約0.05重量%の種結晶、好ましくは約1.0重量%以下の種結晶を有する反応混合物を形成することと、1.1以下の軸比であって、頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比である軸比と、頂点から頂点への距離および辺から辺への距離未満の深さ寸法とを有するDDRフレームワーク型結晶(ZSM−58結晶など)を回収することを含み、構造指向剤が、好ましくは塩化メチルトロピニウムを含んでなるか、または塩化メチルトロピニウムである方法。
【0047】
実施形態6.DDRフレームワーク型結晶は、DDRフレームワーク型結晶の10体積パーセント未満が約5μm以下の代表径を有し、結晶径分布に対する単峰形の体積(又は結晶径に対する単峰形の体積分布)のピークの結晶径が約15μm〜約40μmであり、かつ1μmビン幅による結晶径に対する体積プロットのピーク高さが少なくとも約10体積パーセントである、結晶径分布に対する単峰形の体積を有する、実施形態5の方法。
【0048】
実施形態7.結晶径分布に対する単峰形の体積は、ピーク高さの半分に相当する体積における結晶径間の差が、ほぼピークの結晶径またはそれ未満である、結晶径分布に対する体積をさらに含んでなる、実施形態5または6の方法。
【0049】
実施形態8.反応混合物が、反応混合物中のシリカの重量に基づき、約0.05重量%〜約5.0重量%の種結晶をさらに含んでなる、実施形態5〜7のいずれか1つの方法。
【0050】
実施形態9.反応混合物がアルミナ供給源をさらに含んでなる、実施形態5〜8のいずれか1つの方法。
【0051】
実施形態10.軸比が1.05以下である、実施形態5〜9のいずれか1つの方法。
【0052】
実施形態11.深さ寸法と辺から辺への距離との比が約0.9以下である、実施形態5〜10のいずれか1つの方法。
【0053】
実施形態12.反応混合物が、DDRフレームワーク型結晶の形成の間、約120℃〜約175℃の温度で維持される、実施形態5〜11のいずれか1つの方法。
【実施例】
【0054】
全体的な結晶組成物の実施例
様々な実施形態において、上記の通り合成条件を制御することによって、新規ZSM−58組成物の形成が可能となる。いくつかの実施形態において、ZSM−58組成物は、好ましくは、モノモーダル分布および/または全体の結晶体積の10%未満が、5μm未満の代表径を有する結晶に相当する分布などの、上記のような1種以上の径分布の特徴を有することができる。追加的に、または代わりとして、ZSM−58組成物は、好ましくは、約1.1以下(例えば、約1.05以下)の軸比、および約0.9以下(例えば、約0.85以下)の深さと辺から辺への長さとの比(又は辺から辺への長さに対する深さの比)を有する丸形ディスクモルフォロジーを有することができる。合成された結晶の得られたモルSiO:Al比は、反応混合物に存在する全体のアルミニウムの関数であることができる。故意に添加されたアルミナの供給源がない場合、SiO:Al比は、典型的に、シリカ原材料のSiO:Al比を反映することができる。任意選択で、しかし好ましくは、ZSM−58組成物は、少なくとも約0.05重量%の種結晶を含有する合成混合物から形成されることができる。追加的に、または代わりとして、合成混合物は、約1.0重量%未満、例えば、約0.5重量%未満の種結晶を含有することができる。
【0055】
比較例A(米国特許第4,698,217号明細書から)
米国特許第4,698,217号明細書のいくつかの実施例は、ZSM−58の合成を記載するために提供される。表Bは、この従来技術の発表における実施例に基づく反応条件を示す。これらの合成条件は、本明細書に提供された、改善された結晶合成条件との比較のために試験された。表Bは、構造指向剤(SDA)としてヨウ化メチルトロピニウムを含む合成混合物を記載する。アルミニウムの(酸化物の)供給源は反応混合物に含まれるが、種結晶は含まれなかった。この実施例のHO:SiO比は40であった。この実施例のための結晶形成の温度は、撹拌速度が400rpmであるとき、160℃であった。4日後、約1μmの相対的に均一な平均径を有する結晶が製造された。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例1〜7
実施例1〜7において、以下の合成プロトコルを使用した。試薬を、以下:脱イオン水;水酸化ナトリウム(約50重量%溶液);シリカ(Ludox(商標)HS−40);種結晶;および構造指向剤(SDA)の順序でビーカーに添加した。場合によっては、結晶促進剤に混合物を添加する前に、ゲルを周囲条件で一晩(約16時間)老化させた(又は養生した)。老化によって、最終製品への影響はないように見えた。次いで、各混合物を、加熱および混合のため、オートクレーブに添加した。次いで、各混合物を、オートクレーブ中で約30rpmまたは約200rpmで混合パドルを使用して撹拌した。各撹拌速度は、約0.5 m/秒未満の容器中のチップ速度に相当した。ゲルをそれぞれ、約4〜6日間、反応温度で撹拌し、結晶を製造した。
【0058】
実施例1−ZSM−58(六角形モルフォロジー)の合成
実施例1において、構造指向剤としてヨウ化メチルトロピニウム(MTPI)を使用してZSM−58結晶を形成した。合成混合物の成分の比を以下の表1に示す。合成温度は約160℃であった。混合物を、混合物容器中で約30rpmの撹拌速度で撹拌した。合成混合物は、アルミナの別々の(意図的な)供給源を含まなかった。
【0059】
【表3】
【0060】
表1に示すように、合成混合物は約47のHO:SiO比を含んだ。相対的に高いHO:SiOモル比のために、得られた結晶モルフォロジーは六角形ディスクを構成するように見えた。六角形ディスクモルフォロジーは、倍率の異なるSEM顕微鏡写真を示す図1bおよび1cで確認することができる。辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比は約1.2であることが決定された。ピーク(平均)結晶径は、約20μmであることが決定された。図1dは、特定の径範囲内の結晶の体積パーセントに基づく結晶径の分布を示す。図1dの径分布は、Horiba(商標)光散乱粒径検出器を使用して得られた。図1dに示すように、結晶径分布は相対的に狭く、約20μmの最も共通の(ピーク)結晶径は、結晶体積の約10%のみに相当する。相対的に狭い分布は、合成混合物における種結晶の使用に起因していた。
【0061】
実施例2−ZSM−58(六角形モルフォロジー)の合成
実施例2において、構造指向剤としてヨウ化メチルトロピニウム(MTPI)を使用してZSM−58結晶を形成した。合成混合物の成分の比を以下の表2に示す。合成温度は約140℃であった。混合物を、混合物容器中で約30rpmの撹拌速度で撹拌した。合成混合物は、アルミナの別々の供給源を含まなかった。
【0062】
【表4】
【0063】
表2に示すように、合成混合物は約47のHO:SiO比を含んだ。相対的に高いHO:SiOモル比のために、得られた結晶モルフォロジーは六角形ディスクを構成するように見えた。六角形ディスクモルフォロジーは、実施例2で生じた結晶のSEM顕微鏡写真を示す図2aで確認することができる。辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比は約1.2であることが決定された。ピーク(平均)結晶径は、約26μmであることが決定された。図2bは、特定の径範囲内の結晶の体積パーセントに基づく結晶径の分布を示す。図2bに示すように、結晶径分布は相対的に狭く、約26μmの最も共通の(ピーク)結晶径は、結晶体積の約10%より多くに相当する。相対的に狭い分布は、合成混合物における種結晶の使用に起因していた。
【0064】
実施例1〜2は、相対的に高いHO:SiOモル比および異なる温度(約140℃、約160℃)におけるMTPI調製物からの結晶を比較する。SEM像に示すように、両調製物は六角形ディスクを生じた。
【0065】
実施例3−ZSM−58(丸形モルフォロジー)の合成
実施例3において、構造指向剤としてヨウ化メチルトロピニウム(MTPI)を使用してZSM−58結晶を形成した。合成混合物の成分の比を以下の表3に示す。合成温度は約140℃であった。混合物を、混合物容器中で約30rpmの撹拌速度で撹拌した。合成混合物は、アルミナの別々の供給源を含まなかった。
【0066】
【表5】
【0067】
表3に示すように、合成混合物は約19のHO:SiO比を含んだ。相対的に低いHO:SiOモル比のために、得られた結晶モルフォロジーは丸形または円形ディスクを構成するように見えた。この結果は、モルフォロジーが、構造指向剤の性質、またはフレームワークに組み込まれるいずれかの成分の性質に必ずしも依存するというわけではないことを実証した。丸形ディスクモルフォロジーは、実施例3で生じた結晶のSEM顕微鏡写真を示す図3aで確認することができる。辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比は約1.0であることが決定された。ピーク(平均)結晶径は、約20μmであることが決定された。図3bは、特定の径範囲内の結晶の体積パーセントに基づく結晶径の分布を示す。図3bに示すように、結晶径分布は相対的に狭く、約20μmの最も共通の(ピーク)結晶径は、結晶体積の約10%に相当する。相対的に狭い分布は、合成混合物における種結晶の使用に起因していた。
【0068】
実施例4−ZSM−58(丸形モルフォロジー)の合成
実施例4において、構造指向剤としてヨウ化メチルトロピニウム(MTPI)を使用してZSM−58結晶を形成した。合成混合物の成分の比を以下の表4に示す。合成温度は約140℃であった。混合物を、混合物容器中で約30rpmの撹拌速度で撹拌した。合成混合物は、アルミナの別々の供給源を含まなかった。
【0069】
【表6】
【0070】
表4に示すように、合成混合物は約12のHO:SiO比を含んだ。相対的に低いHO:SiOモル比のために、得られた結晶モルフォロジーは丸形または円形ディスクを構成するように見えた。丸形ディスクモルフォロジーは、実施例4で生じた結晶のSEM顕微鏡写真を示す図4aで確認することができる。辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比は約1.0であることが決定された。ピーク(平均)結晶径は、約17μmであることが決定された。図4bは、特定の径範囲内の結晶の体積パーセントに基づく結晶径の分布を示す。図4bに示すように、結晶径分布は相対的に狭く、約17μmの最も共通の(ピーク)結晶径は、結晶体積の約15%に相当する。なお、図4aは、層状の相の存在も示す。理論によって拘束されないが、層状の相は、混合物が、本実施例に記載される合成のゲル組成物の有効なHO:SiO比の下限またはその付近にあるために現れたと考えられる。ZSM−58結晶が所望のモルフォロジーおよび/または狭い径分布を有するように見える限り、層状の相は、所与の体積において所望の結晶の量を低下させることができる希釈剤として作用すること以外は、吸着活性に有意に影響を与えないと考えられる。
【0071】
実施例2〜4は、連続的に低いHO:SiO比のMTPIを使用してZSM−58の合成の比較を提供する。これらの実施例は、より高いHO:SiO比の六角形ディスクモルフォロジーからより低いHO:SiO比(例えば約25以下)の丸形ディスクモルフォロジーへの変換を実証する。
【0072】
実施例5−ZSM−58(六角形モルフォロジー)の合成
実施例5において、構造指向剤として塩化メチルトロピニウム(MTPCl)を使用してZSM−58結晶を形成した。合成混合物の成分の比を以下の表5に示す。合成温度は約160℃であった。混合物を、混合物容器中で約30rpmの撹拌速度で撹拌した。合成混合物は、アルミナの別々の供給源を含まなかった。
【0073】
【表7】
【0074】
表5に示すように、合成混合物は約47のHO:SiO比を含んだ。得られた結晶モルフォロジーは六角形ディスクを構成するように見えた。六角形ディスクモルフォロジーは、実施例5の合成混合物から生じた結晶のSEM顕微鏡写真を示す図5で確認することができる。辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比は約1.2であることが決定された。平均結晶径は、SEMおよび視覚(又は目視)による検査によって、約10〜15μmであることが決定された。
【0075】
実施例1および5は、それ以外では同様の条件で、相対的に高いHO:SiOモル比(例えば少なくとも45)において、構造指向剤としてMTPClによってMTPIを置き換えることを比較する。実施例1および5は、両方とも六角形ディスクモルフォロジーを有する結晶を製造するように見える。
【0076】
実施例6−ZSM−58(丸形モルフォロジー)の合成
実施例6において、構造指向剤として塩化メチルトロピニウム(MTPCl)を使用してZSM−58結晶を形成した。合成混合物の成分の比を以下の表6に示す。合成温度は約160℃であった。混合物を、混合物容器中で約200rpmの撹拌速度で撹拌した。合成混合物は、アルミナの別々の供給源を含まなかった。
【0077】
【表8】
【0078】
表6に示すように、合成混合物は約19のHO:SiO比を含んだ。相対的に低いHO:SiO比のため、得られた結晶モルフォロジーは丸形ディスクを構成するように見えた。丸形ディスクモルフォロジーは、実施例6の合成混合物から生じた結晶のSEM顕微鏡写真を示す図6で確認することができる。辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比は約1.0であることが決定された。平均結晶径は、SEMおよび視覚による検査によって、約20〜25μmであることが決定された。
【0079】
実施例5〜6は、異なるHO:SiO比でMTPClを使用する調製物からの生成物を比較する。実施例6は、MTPIおよびMTPClの両方が丸形ディスクモルフォロジーを有するZSM−58結晶を製造するために有効であることを示す。
【0080】
実施例7−ZSM−58(丸形モルフォロジー)の合成
実施例7において、構造指向剤として塩化メチルトロピニウム(MTPCl)を使用してZSM−58結晶を形成した。合成混合物の成分の比を以下の表7に示す。合成温度は約140℃であった。混合物を、混合物容器中で約200rpmの撹拌速度で撹拌した。合成混合物は、アルミナの別々の供給源を含まなかった。
【0081】
【表9】
【0082】
表7に示すように、合成混合物は約19のHO:SiO比を含んだ。得られた結晶モルフォロジーは丸形ディスクを構成するように見えた。丸形ディスクモルフォロジーは、実施例7の合成混合物から生じた結晶のSEM顕微鏡写真を示す図7a〜7bで確認することができる。図7bはより高い倍率であり、軸比を決定するために使用された頂点から頂点および辺から辺への線の例が示される。辺から辺への距離に対する頂点から頂点への距離の軸比は約1.1であることが決定された。平均結晶径は、SEMおよび視覚による検査によって、約15〜20μmであることが決定された。
【0083】
実施例6〜7は、相対的に低いHO:SiO比であるが、異なる温度におけるMTPCl調製物からの生成物を比較する。軸比がわずかにより大きい値であること以外、実施例6〜7の合成混合物はほぼ同様の結晶を製造した。
【0084】
本発明は特定の実施形態に関して記載されたが、それは限定されない。特定の条件下での作業のための適切な変更形態/修正形態は、当業者に明白であろう。したがって、以下の特許請求の範囲が、全てのそのような変更形態/修正形態を本発明の真の趣旨/範囲に含まれるものとして包含するように解釈されることが意図される。

本明細書には、以下の形態も含まれる。
1.
頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比である、1.1以下の軸比と、
前記頂点から頂点への距離及び前記辺から辺への距離より短い深さの寸法を有する、丸形状ディスクモルフォロジーを有するZSM−58結晶を含む組成物であり、
結晶径分布に対する単峰形の体積を有し、
前記ZSM−58結晶の10体積パーセント未満が約5μm以下の代表径を有し、
前記ZSM−58結晶が、少なくとも約90%の純度を有する、組成物。
2.
前記結晶径分布に対する単峰形の体積のピークの結晶径は、約15μm〜約40μmであり、かつ1μmビンの幅での前記結晶径に対する体積プロットのピーク高さが少なくとも約10体積パーセントである、上記1に記載の組成物。
3.
前記結晶径分布に対する単峰形の体積は、前記ピーク高さの半分に対応する体積における結晶径間の差が、ほぼ前記ピークの前記結晶径である又はそれ未満である、結晶径分布に対する体積を更に含む、上記1又は2に記載の組成物。
4.
前記深さの寸法と前記辺から辺への距離との比が約0.9以下である、上記1〜3のいずれかに記載の組成物。
5.
DDRフレームワーク型ゼオライトの合成方法であって、
ZSM−58などの結晶質DDRフレームワーク型材料を形成することが可能な反応混合物を形成し、その混合物は、水、酸化ケイ素(好ましくは、SiO)、水酸化アルカリまたはアルカリ土属、及びメチルトロピニウム塩構造指向剤を含み、その混合物は、約12〜約25、好ましくは約12〜約20の水と酸化ケイ素とのモル比、約0.01〜約1.0の水酸化物と酸化ケイ素とのモル比、約0.01〜約1.0のアルカリ及びアルカリ土類金属と酸化ケイ素とのモル比、約0.01〜約2.0の構造指向剤と酸化ケイ素とのモル比、及び前記混合物中の酸化ケイ素の重量に対して少なくとも約0.05重量%の種結晶、好ましくは約1.0重量%以下の種結晶を有すること;及び
1.1以下の軸比を有するDDRフレームワーク型結晶(ZSM−58結晶など)を回収し、軸比は頂点から頂点への距離と辺から辺への距離との比であり、深さの寸法は前記頂点から頂点への距離及び前記辺から辺への距離より短く、前記構造指向剤は、好ましくは塩化メチルトロピニウムを含むこと
を含む方法。
6.
前記DDRフレームワーク型結晶は、結晶径分布に対する単峰形の体積を有し、前記DDRフレームワーク型結晶の10体積パーセント未満が約5μm以下の代表径を有し、前記結晶径分布に対する体積のピークに対する結晶径が約15μm〜約40μmであり、かつ1μmビンの幅での前記結晶径に対する体積プロットのピーク高さが少なくとも約10体積パーセントである、上記5に記載の方法。
7.
前記結晶径分布に対する単峰形の体積は、前記ピーク高さの半分に対応する体積における結晶径の間の差が、約前記ピークの結晶径である又はそれ未満である、結晶径分布に対する体積を更に含む、上記5又は6に記載の方法。
8.
前記反応混合物が、前記反応混合物中のシリカの重量に基づき、約0.05重量%〜約5.0重量%の種結晶を更に含んでなる、上記5〜7のいずれかに記載の方法。
9.
前記反応混合物がアルミナ供給源を更に含んでなる、上記5〜8のいずれかに記載の方法。
10.
前記軸比が1.05以下である、上記5〜9のいずれかに記載の方法。
11.
前記深さの寸法と前記辺から辺への距離との比が、約0.9以下である、上記5〜10のいずれかに記載の方法。
12.
前記反応混合物が、前記DDRフレームワーク型結晶の形成の間、約120℃〜約175℃の温度で維持される、上記5〜11のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7