特許第6166413号(P6166413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6166413-回路装置の製造方法及び回路装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6166413
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】回路装置の製造方法及び回路装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   B29C45/27
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-68245(P2016-68245)
(22)【出願日】2016年3月30日
【審査請求日】2017年2月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】許 昌龍
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−090605(JP,A)
【文献】 特開平06−232195(JP,A)
【文献】 特開平11−320600(JP,A)
【文献】 実開昭64−047040(JP,U)
【文献】 特開平03−058814(JP,A)
【文献】 特開平03−264322(JP,A)
【文献】 特開2001−079881(JP,A)
【文献】 特開2005−216991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00−45/84
H01L21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの型を含んで構成され、
これらの2つの型、互いに型締めされた状態で、溶融した樹脂を成形するキャビティと、このキャビティへ樹脂を供給するゲートとを有する金型を用いた回路装置の製造方法であって、
前記ゲートは、前記2つの型が型締めされる分割面を挟んで両側に形成し、
前記2つの型における前記キャビティを挟んで前記ゲートの反対側にのみ形成された基板挟持部が、前記キャビティに配置されて両面にそれぞれ複数の電子部品が実装された基板の端部を挟持するように、前記2つの型を互いに型締めし、
前記ゲートから前記キャビティへ前記樹脂を供給して、前記基板と複数の電子部品とを封止する、
ことを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲートは、前記分割面を挟んで面対称に形成されていることを特徴とする請求項1記載の回路装置の製造方法。
【請求項3】
前記金型内に形成され、前記ゲートに至る流路を、前記樹脂の流れに沿って上流部、下流部と区分したときに、前記上流部は、前記2つの型の一方のみに形成されるとともに、前記分割面に露出していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の回路装置の製造方法。
【請求項4】
前記金型内に形成され、前記ゲートに至る流路を、前記樹脂の流れに沿って上流部、下流部と区分したときに、前記下流部が前記ゲートにつながっているときに、前記下流部は、前記流路の上面が前記流路の下面に平行であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の回路装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の回路装置の製造方法により製造された回路装置であって、
前記分割面の位置にバリが残っていることを特徴とする回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置の基板及び電子部品を樹脂で封止する回路装置の製造方法及び回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車や自動二輪車に代表される車両には、基板を備える回路装置が搭載されている。回路装置では、基板への水等の浸入を防ぐために、基板の周囲を樹脂で中実になるように覆う技術が実用化されている。このような技術において、加熱ポットから溶融した樹脂を基板が配置されたキャビティに充填する、トランスファーモールド用の金型が知られている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
特許文献1に開示されている技術の基本原理を図4に基づいて説明する。
図4に示すように、下型101及び上型102からなるトランスファーモールド用金型100のキャビティ103に、電子部品104を実装した基板105が配置されている。基板105は、下型102に配置されたヒートシンク106にリードフレーム107及び支持ピン108を介して支持されており、基板105の下方に電子部品104が配置されている。
【0004】
溶融した樹脂をゲート108からキャビティ103内に注入することで、キャビティ103に樹脂が充填される。ゲート108から流入した溶融樹脂は、基板105の下方と上方に分かれて流動する。
【0005】
回路装置の信頼性を高めるには、樹脂による封止品質の向上が求められる。これには、ゲート108から流入した樹脂が、基板105の下方と上方を均等に流れてガスベント(分割面)109の近傍で合流することで、キャビティ103内の空気がガスベント(分割面)109から抜けることが好ましい。
【0006】
溶融樹脂は広い流路の方を流れ易いため、特許文献1の技術は、基板105の下方と上方に分かれた樹脂を均等に流すために、広い流路である基板105の上側に障害部材110を設けることで樹脂の流れを制御している。
しかし、基板105に障害部材110を設けることで不要な部品点数が多くなる上、回路装置が大型になる。そのため、部品点数を低減させ簡易な構造で樹脂の流れを制御でき、回路装置の信頼性を高めることができる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−199146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、部品点数を低減させ簡易な構造で樹脂の流れを制御でき、回路装置の信頼性を高めることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、2つの型を含んで構成され、これらの2つの型、互いに型締めされた状態で、溶融した樹脂を成形するキャビティと、このキャビティへ樹脂を供給するゲートとを有する金型を用いた回路装置の製造方法であって、ゲートは、2つの型が型締めされる分割面を挟んで両側に形成し、2つの型におけるキャビティを挟んでゲートの反対側にのみ形成された基板挟持部が、キャビティに配置されて両面にそれぞれ複数の電子部品が実装された基板の端部を挟持するように、2つの型を互いに型締めし、ゲートからキャビティへ樹脂を供給して、基板と複数の電子部品とを封止することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、ゲートは、分割面を挟んで面対称に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は金型内に形成され、ゲートに至る流路を、樹脂の流れに沿って上流部、下流部と区分したときに、上流部は、2つの型の一方のみに形成されるとともに、分割面に露出していることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は金型内に形成され、ゲートに至る流路を、樹脂の流れに沿って上流部、下流部と区分したときに、下流部がゲートにつながっているときに、下流部は、流路の上面が流路の下面に平行であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は請求項1記載の回路装置の製造方法により製造された回路装置であって、分割面の位置にバリが残っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、2つの型を含んで構成され、これらの2つの型、互いに型締めされた状態で、溶融した樹脂を成形するキャビティと、このキャビティへ樹脂を供給するゲートとを有する金型を用いた回路装置の製造方法であって、ゲートは、2つの型が型締めされる分割面を挟んで両側に形成し、2つの型におけるキャビティを挟んでゲートの反対側にのみ形成された基板挟持部が、キャビティに配置されて両面にそれぞれ複数の電子部品が実装された基板の端部を挟持するように、2つの型を互いに型締めし、ゲートからキャビティへ樹脂を供給して、基板と複数の電子部品とを封止する。ゲートは2つの型が型締めされる分割面を挟んで両側に形成されているので、キャビティの上側及び下側に、樹脂を同時に且つ均等に充填することができる。
【0015】
さらに、ゲートの開口サイズを調整することで、基板の上側及び下側への溶融樹脂の流入量を容易に調整できるので、キャビティ内にゲートの延び方向に沿って基板を配置しても、基板の上側及び下側に樹脂を同時に且つ均等に充填することができる。電子部品が設けられた基板のように、複雑な形状物をキャビティ内に配置しても、ゲートの開口サイズを調整することで、複雑な形状部の上側及び下側にバランス良く樹脂を充填することができる。このように、基板に不要な部品を設けることなく、部品点数を低減させ簡易な構造で樹脂の流れを制御でき、回路装置の信頼性を高めることができる技術を提供することができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、ゲートは、分割面を挟んで面対称に形成されているので、キャビティの上側及び下側にバランス良く樹脂を充填することができ、ガスベント(分割面)への空気の排出を円滑に行うことができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、金型内に形成され、ゲートに至る流路を、樹脂の流れに沿って上流部、下流部と区分したときに、上流部は、2つの型の一方のみに形成されるとともに、分割面に露出しているので、一方の型の分割面のみを加工するだけで流路の上流部を形成することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、金型内に形成され、ゲートに至る流路を、樹脂の流れに沿って上流部、下流部と区分したときに、下流部がゲートにつながっているときに、下流部は、流路の上面が流路の下面に平行であるので、ゲートの先端にポケット部を形成でき、このポケット部により、溶融樹脂の乱流を緩和でき、ボイドをより低減することができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、請求項1記載の回路装置の製造方法により製造された回路装置であって、分割面の位置にバリが残っているので、回路装置の製造方法により製造された回路装置であることを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例における金型の断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】比較例の金型と実施例の金型の作用図及び回路装置の部分断面図である。
図4】従来技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0022】
まず、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、トランスファーモールド用の金型10は、固定型としての下型11と、可動型としての上型12の2つの型を含んで構成されている。これらの2つの下型11及び上型12は、互いに型締めされた状態で、溶融した樹脂を成形するキャビティ13と、このキャビティ13へ溶融樹脂を供給するゲート21と、キャビティ13に配置される基板41の端部を挟持する基板挟持部31を有する。
【0023】
キャビティ13は、回路装置40(図3(c)参照)の樹脂部43の外形形状を呈している。なお、実施例では、樹脂部43を略直方体とし、キャビティ13の形状を断面視で矩形としたがこれに限定されず、樹脂部43の形状は角部を円弧状に形成したり、取付用のフランジを形成する等、樹脂部43の形状に応じてキャビティ13の形状を適宜変更しても差し支えない。
【0024】
基板挟持部31は、下型11と上型12が型締めされ接触する分割面14の一部を窪ませることで形成されている。基板挟持部31は、キャビティ13を挟んでゲート21の反対側に配置されている。型締めされた際の下型11と上型12との間、すなわち分割面14にガスベントが形成されている。
【0025】
基板41の上面41a及び下面41bには、電子部品42が実装されている。基板41は平板状であり、断面視にて分割面14に沿って配置されている。基板41のうち基板挟持部31の反対側の端部は、ゲート21の前方に位置している。
【0026】
図1(b)に示すように、ゲート21は、分割面14を挟んで両側に形成されており、ゲート21の正面視にて矩形状に形成されている。ゲート21の幅方向端部22は、キャビティ13の幅方向端部15から離れている。
【0027】
図2に示すように、ゲート21は、分割面14を挟んで両側に形成されており、分割面14より上側のゲート上部21aと、分割面14より下側のゲート下部21bとを有する。ゲート上部21aの上面を構成するゲート天井面23aは、ゲート21の開口に向かって下方に傾斜しており、ゲート天井面23aと分割面14とのなす角はθ1である。
【0028】
ゲート下部21bの下面を構成するゲート底面23bは、ゲート21の開口に向かって上方に傾斜しており、ゲート底面23bと分割面のなす角はθ2である。ゲート21は、分割面14を挟んで面対称に形成されており、角θ1は角θ2に等しい。このため、キャビティ13の上側及び下側にバランス良く樹脂を充填することができ、ガスベント(分割面)14への空気の排出を円滑に行うことができる。
【0029】
なお、実施例では、ゲート21は、分割面14を挟んで面対称に形成したが、これに限定されず、ゲート上部21aの開口の流路面積とゲート下部21bの開口の流路面積を異なるように設定しても差し支えない。この場合、ゲート21の開口サイズを調整することで、基板41の上側及び下側への溶融樹脂の流入量を容易に調整できるので、キャビティ13内にゲート21の延び方向に沿って基板41を配置しても、基板41の上側及び下側に樹脂を同時に且つ均等に充填することができる。
【0030】
加熱ポット(不図示)からゲート21に至る溶融樹脂の流路24の上流部25は、下型11のみに形成されるとともに、分割面14に露出している。このため、下型11の分割面14のみを加工するだけで流路24の上流部25を形成することができる。
【0031】
また、ゲート21の直前に位置する流路24の下流部26は、流路の上面26aが流路の下面26bに平行である。このため、溶融樹脂の流れを安定させボイドを低減することができる。さらに、ゲート21の直前の位置で流路の上面26aを流路の下面26bに平行とすることで、ゲート21の先端にポケット部27を形成でき、このポケット部27により、溶融樹脂の乱流を緩和でき、ボイドをより低減することができる。
【0032】
次に、以上に述べた金型10の作用を比較例と較べて説明する。
図3(a)は比較例における金型200の断面図であり、金型200は下型201と上型202の分割面203に形成した基板保持部204に、電子部品205を備えた基板206を挟持している。
【0033】
ゲート209は、下型201のみに形成されており、ゲート209の上面は分割面203で構成され、ゲート209の下面207はゲート209の開口に向かって上方に傾斜している。加熱ポットからの溶融樹脂は、傾斜した下面207によって矢印(1)のように基板206の上側へ多く流れ、矢印(2)のように基板206の下側へ少なく流れる。このため、キャビティ208内の空気がガスベントとしての分割面203から効率よく排出できず、ボイドが発生し易くなる。結果、樹脂による基板及び電子部品の封止が良好になり難い。
【0034】
図3(b)は実施例における金型10の断面図であり、ゲート21が分割面14を挟んで両側に形成されているので、加熱ポットからの溶融樹脂が、矢印(3)(4)のように、基板41の上側と基板41の下側に均等に流れる。そして、溶融樹脂は基板挟持部31の近傍で合流し、キャビティ13内の空気がガスベントとしての分割面14から良好に排出される。結果、樹脂による基板41及び電子部品42の封止を良好に行うことができる。
【0035】
図3(c)は実施例における回路装置40であり、回路装置40は、基板41、電子部品42及びこれらを封止する樹脂部43から構成されている。樹脂部40には、ゲート21の位置にゲート跡44があり、分割面14の位置にバリ45が残っている。なお、バリ45は、除去された後のバリ跡であってもよい。ゲート21は分割面14を挟んで形成されているので、ゲート跡44の上下中間位置にバリ45が形成されている。これにより、本発明の金型10によって成形された回路装置40であることを判別することを容易にできる。
【0036】
なお、大きさの異なる電子部品42が複数設けられた基板41のように、複雑な形状物をキャビティ13内に配置しても、ゲート21の開口サイズを調整することで、複雑な形状部の上側及び下側にバランス良く樹脂を充填することができる。このように、従来技術のように基板41に不要な部品を設けることなく、本発明では部品点数を低減させ簡易な構造で樹脂の流れを制御でき、回路装置10の信頼性を高めることができる。
【0037】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、基板及び電子部品を樹脂で封止するトランスファーモールド用の金型に好適である。
【符号の説明】
【0039】
10...金型、11...下型、12...上型、13...キャビティ、14...分割面(ガスベント)、21...ゲート、24...流路、25...上流部、26...下流部、40...回路装置、41...基板、45...バリ(バリ跡)。
【要約】
【課題】部品点数を低減させ簡易な構造で樹脂の流れを制御でき、回路装置の信頼性を高めることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】下型11と上型12を含んで構成されたトランスファーモールド用の金型10である。下型11と上型12は、互いに型締めされた状態で、溶融した樹脂を成形するキャビティ13と、このキャビティ13へ樹脂を供給するゲート21とを有する金型である。ゲート21は、2つの型が型締めされる分割面14を挟んで両側に形成されている。
【効果】ゲートは2つの型が型締めされる分割面を挟んで両側に形成されているので、キャビティの上側及び下側に、樹脂を同時に且つ均等に充填することができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4