特許第6166427号(P6166427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6166427
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/023 20130101AFI20170710BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20170710BHJP
【FI】
   B60R25/023
   E05B83/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-111254(P2016-111254)
(22)【出願日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】為実 匠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智哉
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−308049(JP,A)
【文献】 特開2007−125970(JP,A)
【文献】 特開昭58−180348(JP,A)
【文献】 特開2007−269176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00−25/40
E05B 77/00−83/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部から径方向に突出した形状のロック作動カム部を有し、キーシリンダのキー操作により回動するカムシャフトと、
前記カムシャフトを回動可能に収容するロックボディと、
前記ロック作動カム部の回動によりステアリングシャフトに係止するロック方向又は該ステアリングシャフトに対する係止が解除されるアンロック方向に移動するロックバーとを備えたステアリングロック装置において、
前記カムシャフトには、前記軸部における前記ロック作動カム部とは異なる軸方向位置から径方向に突出した形状の突出部が設けられ、
前記カムシャフトは、ロック状態において、前記突出部に対し、前記ロック作動カム部が回動して前記ロックバーの前記ステアリングシャフトに対する係止を解除するような大荷重が作用した場合に、該突出部が前記軸部から分離するように形成されたステアリングロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングロック装置において、
前記カムシャフトは、前記軸部と前記突出部とが一体形成されてなるものであり、
前記突出部における前記軸部との接続部分に強度低下部が設けられたステアリングロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステアリングロック装置において、
前記ロックボディには、車両のシフトレバーがパーキング位置に操作されないと、前記ロックボディに取り付けられた前記キーシリンダからキーを抜くことができないようにするキーインターロックユニットの取り付け箇所となるインターロック取付部が設けられ、
前記突出部は、前記キーインターロックユニットをカム形状によって作動させるインターロック用カム部であるステアリングロック装置。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリングロック装置において、
前記キーインターロックユニットのケースは樹脂製であるステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング操作をロック可能なステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリング操作をロック可能な車載用のステアリングロック装置がある(例えば、特許文献1参照)。この種のステアリングロック装置では、キーシリンダがキーによって回動操作されたときに、カムシャフトがその軸周りに回動し、ロックストッパを介してロックバーがロック方向又はアンロック方向に作動することにより、ステアリングホイール(ステアリングシャフト)のロック状態又はアンロック状態に切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−112987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のステアリングロック装置においては、ロック状態のとき、仮に破壊による攻撃を受けても、ロック状態のまま維持させたいニーズがある。よって、このニーズを満足できる技術が要望されていた。
【0005】
本発明の目的は、破壊によるロック状態の不正解除を生じ難くすることができるステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するステアリングロック装置は、軸部から径方向に突出した形状のロック作動カム部を有し、キーシリンダのキー操作により回動するカムシャフトと、前記カムシャフトを回動可能に収容するロックボディと、前記ロック作動カム部の回動によりステアリングシャフトに係止するロック方向又は該ステアリングシャフトに対する係止が解除されるアンロック方向に移動するロックバーとを備えたものにおいて、前記カムシャフトには、前記軸部における前記ロック作動カム部とは異なる軸方向位置から径方向に突出した形状の突出部が設けられ、前記カムシャフトは、ロック状態において、前記突出部に対し、前記ロック作動カム部が回動して前記ロックバーの前記ステアリングシャフトに対する係止を解除するような大荷重が作用した場合に、該突出部が前記軸部から分離するように形成されている。
【0007】
突出部がロックボディから露出した状態では、不正解除を行おうとする第三者が該突出部にカムシャフトを回動させるように荷重を加えることにより、ロック作動カム部が回動して不正解除されるおそれがある。この点、上記構成によれば、突出部に大荷重が作用しても、ロック作動カム部が回動してロックバーによるステアリングシャフトへの係止が解除される前に該突出部が分離する。その結果、突出部に荷重を加えてカムシャフトを回動させることができなくなるため、ロック状態の不正解除を生じ難くすることができる。
【0008】
上記ステアリングロック装置において、前記カムシャフトは、前記軸部と前記突出部とが一体形成されてなるものであり、前記突出部における前記軸部との接続部分に強度低下部が設けられることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、突出部に大荷重が作用した場合に強度低下部から破断することで、突出部が軸部(カムシャフト)から分離するため、部品点数を増加させずに、突出部を分離可能とすることができる。
【0010】
上記ステアリングロック装置において、前記ロックボディには、車両のシフトレバーがパーキング位置に操作されないと、前記ロックボディに取り付けられた前記キーシリンダからキーを抜くことができないようにするキーインターロックユニットの取り付け箇所となるインターロック取付部が設けられ、前記突出部は、前記キーインターロックユニットをカム形状によって作動させるインターロック用カム部であることが好ましい。
【0011】
ロックボディにインターロック取付部が設けられ、キーインターロックユニットが該ロックボディに対して取り付けられる構成では、不正解除を行おうとする第三者がロックボディを直接攻撃せずに該キーインターロックユニットを破壊して、インターロック用カム部をロックボディから露出させることが想定される。したがって、同構成において、インターロック用カム部に大荷重が作用した場合に該インターロック用カム部が軸部から分離可能とすることの効果は大きい。
【0012】
上記ステアリングロック装置において、前記キーインターロックユニットのケースは樹脂製であることが好ましい。
上記構成によれば、キーインターロックユニットの軽量化等を図ることができる一方で、該キーインターロックユニットの強度が低くなるため、不正解除を行おうとする第三者から攻撃を受けやすくなってしまう。したがって、同構成において、インターロック用カム部に大きな荷重が作用した場合に該インターロック用カム部がカムシャフトから分離可能とすることの効果は極めて大きい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、破壊によるロック状態の不正解除を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ステアリングロック装置の斜視図。
図2】カムシャフトの径方向から見た側面図。
図3】ステアリングロック装置の分解斜視図。
図4】ロックバー及びその周辺部品の組み付け図。
図5】ステアリング装置のキーインターロックユニット近傍の断面図。
図6】(a)はロック状態の作動図、(b)はアンロック状態の作動図。
図7】(a)はキーインターロックが行われた状態の作動図、(b)はキーインターロックが解除された状態の作動図。
図8】キーインターロックユニットを取り外した状態のステアリングロック装置の斜視図。
図9】カムシャフトの軸方向から見た側面図。
図10】カムシャフトにおけるインターロック用カム部近傍の一部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ステアリングロック装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本例のステアリングロック装置1は、車両用のステアリングホイール(図示略)の操作をロック可能とするものである。ステアリングロック装置1は、ステアリングロック装置1の本体部分(ハウジング)をなすロックボディ2と、カバー3とを備えている。ロックボディ2は、例えばマグネシウム合金からなり、筒形状に形成されている。また、ロックボディ2には、その側方に開口した箱状部11が形成されるとともに、箱状部11の反対側に支持部12が形成されている。支持部12は、ステアリングシャフト4を回転可能に収納するステアリングコラム5の外形に応じた湾曲面を有している。カバー3は、例えば亜鉛合金からなり、箱状部11の開口を塞ぐように形成されている。カバー3は、複数の圧入ピン6によって、ロックボディ2に固定されている。そして、ステアリングロック装置1は、ロックボディ2の支持部12をステアリングコラム5の外周に嵌合させ、ブラケット(図示略)などを介して取り付けられる。
【0016】
図1及び図3に示すように、ロックボディ2には、その長さ方向(X軸方向)の一端に設けられた開口穴13に、キー(図示略)によって操作されるキーシリンダ7が挿し込むようにして取り付けられている。ロックボディ2の長さ方向の他端には、キーシリンダ7の操作位置に応じて電源状態(車両電源状態)を切り替えるイグニッションスイッチ8が取り付けられている。ロックボディ2には、箱状部11の側面に開口し、キーインターロックユニット9の取り付け箇所となるインターロック取付部14が設けられている。キーインターロックユニット9は、シフトレバーがパーキング位置に操作されないとキーシリンダ7からキーを抜くことができないようにするキーインターロックを行う。
【0017】
図3に示すように、ステアリングロック装置1は、ステアリングシャフト4に係脱することによりステアリング操作のロック/アンロックを切り替えるロック機構21を備えている。本例のロック機構21は、ステアリングシャフト4に係止可能なロックバー22と、ロックバー22に連結されるロックストッパ23と、キーシリンダ7のキー操作に応じて回動するカムシャフト24とを備えている。ロックバー22、ロックストッパ23及びカムシャフト24は、ロックボディ2に形成された部品収納部26に収納されている。部品収納部26には、部品収納部26内の空間を仕切るようにロックボディ2の長さ方向に並ぶ複数(本例は3つ)の支持壁27が設けられ、これら支持壁27に形成された円弧状の溝部28にカムシャフト24が回動可能に載置されている。また、部品収納部26の一部は、インターロック取付部14においてキーインターロックユニット9の少なくとも一部を収納する収納空間29となっている。
【0018】
ロックストッパ23は、ロックボディ2の幅方向(Y軸方向)に間隔を空けて設けられる一対の側壁31を有する板状に形成されている。ロックストッパ23は、各側壁31の一部がロックボディ2の内壁面に形成された一対のガイド32(図3は片側のみ図示)に挿入されることにより、該ガイド32に沿って直線往復移動可能に取り付けられている。カバー3とロックストッパ23との間には、ロックストッパ23をロック方向(Z軸方向負側)に付勢するコイルバネ等の付勢部材33が設けられている。付勢部材33は、その一端がロックストッパ23に設けられた穴部34に収納され、その他端がカバー3の内面に支持されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、カムシャフト24には、ロックストッパ23をロック方向又はアンロック方向に作動させるカム形状のロック作動カム部41が設けられている。ロック作動カム部41は、カムシャフト24の軸部42から径方向に突出した形状に形成されている。カムシャフト24には、キーインターロックユニット9をカム形状によって作動させる突出部としてのインターロック用カム部43が設けられている。インターロック用カム部43は、軸部42から径方向に突出した形状に形成されている。ロック作動カム部41とインターロック用カム部43とは、カムシャフト24の軸L1方向(X軸方向)における異なる軸方向位置に配置されるとともに、カムシャフト24の軸L1を中心に略対称配置されている。カムシャフト24には、カムシャフト24の軸L1回り方向(図3の矢印R方向)のバランスを確保するためのカウンタウェイト部44が設けられている。カウンタウェイト部44は、軸部42から径方向に突出した形状に形成されている。カウンタウェイト部44は、インターロック用カム部43と略同じ軸方向位置に配置されるとともに、インターロック用カム部43に対して軸L1を中心に略対称配置されている。カムシャフト24におけるキーシリンダ7側(X軸方向正側)の端部の先端には、キーシリンダ7が連結される長穴45が設けられている。
【0020】
図3図4及び図6に示すように、カムシャフト24は、ステアリングロック装置1の組み付け状態において、ロックストッパ23の側壁31間に回動可能に配置されている。そして、ロック作動カム部41が付勢部材33の反対側からロックストッパ23の当接部51に当接するとともに、インターロック用カム部43がインターロック取付部14に臨んでいる。
【0021】
図3及び図4に示すように、ロックバー22は角柱状に形成されるとともに、その基端には凹部52が形成されている。ロックバー22は、ロックストッパ23に形成された係合部53に凹部52が係合されることで、ロックストッパ23とロック方向及びアンロック方向に一体移動可能に連結されている。ステアリングロック装置1の組み付け状態において、ロックバー22の先端は、ロックボディ2の支持部12における湾曲面に開口する孔54から出没可能に配置されている(図8参照)。
【0022】
図5に示すように、キーインターロックユニット9は、ケース61と、ケース61に収容されるソレノイド62と、ソレノイド62に連結されたリンク63と備えている。本例では、ケース61及びリンク63は樹脂材料からなり、その軽量化等が図られている。また、ソレノイド62には、周知の保持ソレノイドが用いられている。キーインターロックユニット9は、リンク63がインターロック用カム部43に対してロックボディ2の幅方向(Y軸方向)に対向するようにインターロック取付部14に取り付けられている。リンク63は、その基端がソレノイド62のプランジャ64に連結されるとともに、捩りバネ65によってその先端がインターロック用カム部43と干渉する領域に位置するように付勢されている。そして、リンク63は、捩りバネ65の付勢力に抗しつつ、プランジャ64が飛び出るように移動させることで、その先端がインターロック用カム部43と干渉する領域から出るように移動可能となっている。
【0023】
次にステアリングロック装置1によるステアリング操作のロック/アンロックについて説明する。
図6(a)に示すように、例えばキーシリンダ7がIGオフ位置に操作されるなどしてカムシャフト24がロック方向(図6(a)の矢印R1方向)に回動していると、付勢部材33の付勢力によってロックバー22及びロックストッパ23がロック方向(図6(a)の矢印T1方向)にスライド移動する。これにより、ロックバー22がロックボディ2の孔54から飛び出してステアリングシャフト4に係止し、ステアリングロック装置1がロック状態となる。
【0024】
一方、図6(b)に示すように、例えばキーシリンダ7がACCオン位置やIGオン位置に操作されるなどしてカムシャフト24がアンロック方向(図6(b)の矢印R2方向)に回動すると、ロック作動カム部41が当接部51を介してロックストッパ23をカバー3側に押し付ける。そして、ロックバー22及びロックストッパ23が付勢部材33の付勢力に抗してアンロック方向(図6(b)の矢印T2方向)に移動する。これにより、ロックバー22がロックボディ2の内部に引き込まれてステアリングシャフト4から離脱し、ステアリングロック装置1がアンロック状態となる。
【0025】
次にステアリングロック装置1によるキーインターロックについて説明する。
図7(a)に示すように、シフトレバーがパーキングポジション以外に操作されていると、ソレノイド62に通電が行われてプランジャ64の移動、すなわちリンク63の移動が規制される。この状態において、キーシリンダ7をACCオン位置からIGオフ位置に操作しようとすると、移動の規制されたリンク63の先端にインターロック用カム部43が接触することにより、それ以上の回動操作が規制される。これにより、シフトレバーがパーキング位置に操作されない状態では、キーシリンダ7をIGオフ位置に操作できず、キーを抜くことができない。
【0026】
一方、図7(b)に示すように、シフトレバーがパーキングポジションに操作されていると、ソレノイド62への通電が停止されてプランジャ64の移動、すなわちリンク63の移動が可能となる。この状態において、キーシリンダ7をACCオン位置からIGオフ位置に操作しようとすると、インターロック用カム部43が捩りバネ65の付勢力に抗してリンク63を押し下げることにより、キーシリンダ7がIGオフ位置となるまで回動操作される。これにより、シフトレバーがパーキング位置に操作された状態では、キーシリンダ7をIGオフ位置に操作でき、キーを抜くことができる。
【0027】
ここで、ロック状態のステアリングロック装置1を不正にアンロック状態に切り替えようとした第三者がいた場合、例えば工具等を用いてロックボディ2に取り付けられているキーインターロックユニット9を破壊することが想定される。特に本例のようにキーインターロックユニット9が樹脂製となっている場合には、他の部分に比べて強度が低いために狙われやすい。
【0028】
図8に示すように、キーインターロックユニット9を取り外した状態では、インターロック用カム部43がインターロック取付部14(ロックボディ2)から露出する。一方、ロック状態でキーが抜かれていれば、カムシャフト24はキーシリンダ7に接続されていることからその回動は規制される。しかし、工具等を用いてカムシャフト24がアンロック方向(R2方向、図6(b)参照)に回動するように、インターロック用カム部43に荷重を加えることで、例えば軸部42を捩り、カムシャフト24を塑性変形させながらロック作動カム部41の部分を回動させてアンロック状態とすることも想定される。
【0029】
この点を踏まえ、図9及び図10に示すように、カムシャフト24は、ロック状態において、インターロック用カム部43に大荷重(ロック作動カム部41が回動してロックバー22のステアリングシャフト4に対する係止を解除するような荷重)が作用した場合に、インターロック用カム部43が軸部42から分離するように形成されている。
【0030】
詳しくは、インターロック用カム部43は、カムシャフト24の軸部42から径方向に延出されるとともに軸方向に延びた第1壁部71と、軸部42から径方向に延出されるとともに第1壁部71の両端に接続された一対の第2壁部72と、第1壁部71及び一対の第2壁部72の先端に接続された第3壁部73とを有している。つまり、本例では、第1壁部71及び一対の第2壁部72の基端がインターロック用カム部43における軸部42との接続部分に相当する。
【0031】
第1壁部71は、径方向外側に向かうにつれて、カムシャフト24の回動方向におけるロック方向側に反り返った板状に形成されている。各第2壁部72は、径方向外側に向かうにつれて周方向に沿った厚みが徐々に小さくなる扇形状に形成されている。第3壁部73は、各第2壁部72の外縁に沿った円弧板状に形成されている。
【0032】
そして、各第2壁部72の基端には、切削加工等により一部が削られた肉取り部74が形成されている。なお、図9において、説明の便宜上、肉取り部74を形成する前の各第2壁部72の壁面を二点鎖線で示す。これにより、インターロック用カム部43の軸部42との接続部分の強度が低下されており、インターロック用カム部43に大荷重が作用した場合に、インターロック用カム部43が軸部42から分離するように形成されている。つまり、本例では、肉取り部74が強度低下部に相当する。
【0033】
肉取り部74の周方向に沿った厚みは、予め実験やシミュレーション等により求められた第1荷重よりも小さく、かつ第1荷重よりも小さい荷重である第2荷重よりも大きな荷重が作用した際に、インターロック用カム部43が軸部42(カムシャフト24)から分離するように設定されている。なお、本例では、第1荷重は、キーシリンダ7がIGオフ位置に操作されることにより、キーシリンダ7によりカムシャフト24の回動が規制された状態で、軸部42を塑性変形させて捻るような荷重である。第2荷重は、シフトレバーがパーキング位置に操作されていない状態で、運転者がキーをIGオフ位置に回動操作しようとした際に、インターロック用カム部43にキーインターロックユニット9のリンク63から作用する荷重である(図7(a)参照)。
【0034】
本例では、カムシャフト24は、例えば鋳造により製造されており、インターロック用カム部43は、軸部42及びロック作動カム部41と一体形成されている。そして、各第2壁部72の厚みが所定の厚みになるように、例えば切削加工等により肉取り部74が形成されることにより製造される。
【0035】
次に、ステアリングロック装置1の作用効果について説明する。
(1)カムシャフト24を、ロック状態において、インターロック用カム部43に大荷重が作用した場合に、インターロック用カム部43が軸部42から分離するように形成した。そのため、不正解除を行おうとする第三者がインターロック用カム部43にカムシャフト24を回動させるように荷重を加えても、ロック作動カム部41が回動してロックバー22によるステアリングシャフト4への係止が解除される前にインターロック用カム部43が軸部42から分離する。その結果、インターロック用カム部43に荷重を加えてカムシャフト24を回動させることができなくなるため、ロック状態の不正解除を生じ難くすることができる。
【0036】
特に本例のように、キーインターロックユニット9が樹脂製であり、別途ロックボディ2に取り付けられる構成では、インターロック取付部14からインターロック用カム部43を露出させるために、キーインターロックユニット9が不正解除を行おうとする第三者から攻撃を受けやすい。そのため、インターロック用カム部43を分離可能とすることの効果は極めて大きい。
【0037】
(2)カムシャフト24を、軸部42とインターロック用カム部43とが一体形成されてなるものとし、各第2壁部72の基端に肉取り部74を設けることで、インターロック用カム部43に大荷重が作用した場合に肉取り部74から破断することで、インターロック用カム部43が軸部42から分離するようにした。そのため、部品点数を増加させずに、インターロック用カム部43を軸部42から分離可能とすることができる。
【0038】
(3)キーインターロックユニット9のケース61及びリンク63を樹脂製としたため、その軽量化等を図ることができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0039】
・上記実施形態では、インターロック用カム部43が軸部42から分離する大荷重の下限(インターロック用カム部43が分離するために必要な最低の荷重)として、軸部42を塑性変形させて捻るような第1荷重よりも小さな荷重と設定した。しかし、これに限らず、例えば軸部42が捻れるよりも先に長穴45が塑性変形するようにカムシャフト24を設計した場合には、上記大荷重の下限として長穴45が塑性変形する荷重よりも小さな荷重に設定してもよい。要は、ロック作動カム部41が回動してロックバー22によるステアリングシャフト4への係止が解除される前に分離するように設定すればよく、カムシャフト24の他の部位やカムシャフト24に連結されるキーシリンダ7の強度等を考慮して適宜変更可能である。
【0040】
・上記実施形態では、インターロック用カム部43をカムシャフト24から分離可能に構成したが、これに限らず、例えばカウンタウェイト部44を分離可能に構成してもよい。また、ロック作動カム部41、インターロック用カム部43及びカウンタウェイト部44以外に軸部42から径方向に突出した突出部があれば、該突出部を分離可能に構成してもよい。突出部は、ロックボディ2にキーシリンダ7、イグニッションスイッチ8及びキーインターロックユニット9を取り付けた状態で、ロックボディ2内に収納されているか、露出しているかは問わない。なお、カムシャフト24に形成された突出部の少なくとも1つが分離可能となっていれば、インターロック用カム部43が分離可能な構成となっていなくてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、インターロック用カム部43を軸部42と一体形成したが、これに限らず、例えばインターロック用カム部43を別部材とし、溶接や凹凸嵌合等により軸部42に固定してもよい。
【0042】
・上記実施形態では、インターロック用カム部43が第1〜第3壁部71〜73を有する構成としたが、例えばインターロック用カム部43を直方体形状としてもよく、その形状は適宜変更可能である。
【0043】
・上記実施形態では、第2壁部72の基端に肉取り部74を形成することにより、インターロック用カム部43と軸部42との接続部分の強度を低下させたが、これに限らず、例えば第1壁部71の基端に肉取り部を設けてもよい。また、例えば第1壁部71又は第2壁部72の基端に小さな孔を複数形成してもよく、強度低下部の構成は適宜変更可能である。
【0044】
・上記実施形態において、カムシャフト24にインターロック用カム部43を設けず、ステアリングロック装置1にキーインターロックユニット9を設けなくてもよい。
・上記実施形態において、ソレノイド62として、例えば吸引ソレノイド等、他の種類のソレノイドを用いてもよい。
【0045】
・上記実施形態において、キーインターロックユニット9のケース61及びリンク63を樹脂材料以外の材料により構成してもよい。このようにケース61が樹脂製でなくとも、キーインターロックユニット9がロックボディ2に対して別途取り付けられる構成では、不正解除を行おうとする第三者がロックボディ2を直接攻撃せずにキーインターロックユニット9を破壊することが想定される。したがって、インターロック用カム部43に大荷重が作用した場合に、インターロック用カム部43が軸部42から分離可能とすることの効果は大きい。
【0046】
・上記実施形態において、ロックボディ2の形状は適宜変更可能であり、例えばインターロック取付部14を開口穴13寄りに形成し、キーインターロックユニット9がロック機構21よりもキーシリンダ7寄りに配置してもよい。
【0047】
・上記実施形態において、ロック機構21の構成は、ステアリング操作を規制できれば、種々のものに変更してもよく、例えばロックストッパ23を省略し、カムシャフト24でロックバー22を直に作動させる構成としてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、ステアリングロック装置1は、機械式又は電動式のいずれでもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0049】
(イ)前記大荷重は、前記キーシリンダがIGオフ位置に操作されることにより前記カムシャフトの回動が規制された状態で前記軸部を塑性変形させて捻るような第1荷重よりも小さく、かつシフトレバーがパーキング位置に操作されていない状態でキーをIGオフ位置に回動操作しようとした際に該インターロック用カム部にキーインターロックユニットから作用する第2荷重よりも大きな荷重であるステアリングロック装置。上記構成によれば、キーインターロックの機能を確保しつつ、不正解除を行おうとする第三者が工具等を用いてインターロック用カム部に大荷重を加えた際に、該インターロック用カム部を離脱させて不正解除を生じ難くすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…ステアリングロック装置、2…ロックボディ、4…ステアリングシャフト、7…キーシリンダ、8…イグニッションスイッチ、9…キーインターロックユニット、14…インターロック取付部、21…ロック機構、22…ロックバー、23…ロックストッパ、24…カムシャフト、41…ロック作動カム部、42…軸部、43…インターロック用カム部、44…カウンタウェイト部、45…長穴、61…ケース、71…第1壁部、72…第2壁部、73…第3壁部、74…肉取り部、L1…軸。
【要約】
【課題】破壊によるロック状態の不正解除を生じ難くすることができるステアリングロック装置を提供する。
【解決手段】カムシャフトのインターロック用カム部43は、軸部42から径方向に延出されるとともに軸方向に延びた第1壁部71と、軸部42から径方向に延出されるとともに第1壁部71の両端に接続された一対の第2壁部72と、第1壁部71及び一対の第2壁部72の先端に接続された第3壁部73とを有する。第1壁部71は、径方向外側に向かうにつれて、カムシャフトの回動方向におけるロック方向側に反り返った板状に形成される。各第2壁部72は、径方向外側に向かうにつれて周方向に沿った厚みが徐々に小さくなる扇形状に形成される。第3壁部73は、各第2壁部72の外縁に沿った円弧板状に形成される。そして、各第2壁部72の基端には、切削加工等により一部が削られた肉取り部74が形成される。
【選択図】図9
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図10