(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道車両の車体は、それらの成形加工時又は使用時において、外力によって車体外板に損傷又は凹凸が生じることがある。従来、このような車体外板の凹凸を埋め、外観を向上させる等の目的で、様々なパテ材が使用されている。特に、鉄道車両の塗装工程では、車体の成形加工後、凹部にパテを塗り付け、これを乾燥させ、その後、パテを平滑に研磨して面出しし、然る後、その面出ししたパテの上にコーティング材で塗装を施すことが行われている(例えば、特許文献1参照)。パテ材を使用することにより、外観を向上することが可能となるが、パテの乾燥には時間を要するため、作業時間の長期化の問題や、パテ材乾燥後の研磨工程による作業工数増加の問題、更には、パテ材によって車両重量が増加するため、運行エネルギー増加の問題等の様々な課題があった。さらに、パテ材を使用して車体に平滑性を付与した上でコーティング材を塗装する場合、蛍光灯等の光源による外光が鏡面反射するために光源の映り込みが発生し、デザインの面から演出が制限されるという課題もあった。
【0003】
一方で、基材上にレンズ状粒子(ドット)を形成させる技術が報告されている。例えば、特許文献2には、穿孔パターンシートを基材表面に設置して、これにコーティング材を塗装した後、パターンシートを撤去し、基板上にドットを形成させる技術、又はノズルを用いて基材上へコーティング材をドット状に噴出し、基板上にドットを形成させる技術が記載されている。特許文献2に記載の技術は、予めパターンシートに孔をあける必要があり、また、パターンシート上から塗装するため、コーティング材に無駄が生じるといった課題があった。更に、基材に凹凸がある場合、パターンシートを基材に密着させることは困難であった。
【0004】
また、特許文献3には、粒状のコーティング材を一定の時間間隔毎に吐出する複数のノズルが配置されたドット塗装ガンと、該ドット塗装ガンを移動させる支持アームとを備えた塗装装置により、基材上にドットを形成する技術が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の技術は、高品質の見切り線を形成することを目的としており、防眩効果の発現及び平滑性の向上を目的としていない。
【0005】
更に、特許文献4には、ドット塗装ガンから水性コーティング材を粒子状に吐出させて可剥離性保護膜を形成する技術が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載の技術は、均一な膜厚分布を持った高品質の見切り線を形成することを目的としており、防眩効果の発現及び平滑性の向上を目的としていない。
【0006】
また、特許文献5には、合成樹脂を原料としたレンズ状粒子の製造方法が記載されている。特許文献5に記載の製造方法は、スクリーン方式、インクジェット方式又はディスペンサー方式によってベルトコンベア上にコーティング材を滴状に塗布し、次いで、該コーティング材を硬化させレンズ状粒子を形成させ、その後、ベルトコンベアからレンズ状粒子を剥離させることを特徴とし、特定の形状のレンズ状粒子を合成樹脂から製造することを目的としており、防眩効果の発現及び平滑性の向上を目的としていない。
【0007】
更に、特許文献6には、LCD用スペーサー、光拡散シートや防眩フィルムに適した特異な形状を有する樹脂粒子及びその製造方法が記載されている。また更に、特許文献7には、特定のアスペクト比を有する微粒子を基材上に配置することによって、光透過性に優れた光学フィルム及びその製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献6に記載の樹脂粒子及び特許文献7に記載の光学フィルムは、専ら光学的な特徴を発現することを目的としており、平滑性の向上を目的としていない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を詳細に説明する。本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、官能基数が1〜2のラジカル重合性モノマー(A)、光重合開始剤(B)及び光安定剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物であって、前記ラジカル重合性モノマー(A)の含有量が60〜98.9質量%であり、前記光重合開始剤(B)の含有量が1〜25質量%であり、前記光安定剤(C)の含有量が0.1〜15質量%であり、前記ラジカル重合性モノマー(A)分子中のヘテロ原子の合計原子量Hwと該ラジカル重合性モノマー(A)の分子量Mwの比(Hw/Mw)が0.35未満であることを特徴とする。なお、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物とは、インクジェットプリンタ用のインク組成物であって、活性エネルギー線照射により硬化させることができるインク組成物を意味する。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に用いるラジカル重合性モノマー(A)は、官能基数が1〜2であることを要し、この官能基数が1〜2のラジカル重合性モノマー(A)の含有量は、該インク組成物中60〜98.9質量%である。ラジカル重合性モノマー(A)の含有量が60質量%未満では、インクの粘度を低下させるのに溶剤等を添加することが必要となり、活性エネルギー線照射により硬化した印刷膜の内部に溶剤が残留するため、乾燥性が悪く、揮発する溶剤により環境への負荷も大きくなる。一方、ラジカル重合性モノマー(A)の含有量が98.9質量%を超えると、光重合開始剤の含有量が低くなり過ぎるため、活性エネルギー線照射時に硬化不良となる。なお、本発明において、官能基とは、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基を指す。
【0020】
また、上記ラジカル重合性モノマー(A)は、分子中のヘテロ原子の合計原子量Hwと該ラジカル重合性モノマー(A)の分子量Mwの比(Hw/Mw)が0.35未満である。Hw/Mwが0.35未満であると、ピエゾ方式によるインクジェットプリンタにおいて良好な吐出が得られる粘度にインク組成物を調整することができる。ここで、ヘテロ原子とは、炭素及び水素以外の元素の原子を意味する。
【0021】
上記ラジカル重合性モノマー(A)は、官能基数が1〜2で且つHw/Mwが0.35未満のラジカル重合性モノマーであれば特に限定されるものではない。なお、ラジカル重合性モノマー(A)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記1官能モノマーの具体例としては、ステアリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、EO変性2−エチルヘキシルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、2−(2’−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、EO変性フェノールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、及びPO変性ノニルフェノールアクリレート等が挙げられる。これらの中で、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート及びフェノキシエチルアクリレートが好ましい。なお、これら1官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記2官能モノマーの具体例としては、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、及びEO変性ビスフェノールFジアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレートが好ましい。なお、これら2官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物においては、硬化性や印刷膜の強度を上げるため、上記ラジカル重合性モノマー(A)以外にも、アクリレートオリゴマーや官能基を3つ以上有する3官能以上の多官能ラジカル重合性モノマーを使用してもよい。アクリレートオリゴマーとして具体的には、アミノ樹脂アクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及びポリブタジエンアクリレート等が挙げられる。なかでも、耐候性や密着性の観点から、ポリウレタンアクリレートが好ましい。
【0025】
上記アクリレートオリゴマーの具体例としては、ビームセット502H、ビームセット505A−6、ビームセット550B、ビームセット575、ビームセットAQ−17(荒川化学工業社製)、UA−306H、UA−306I、UA−510H、UF−8001G(共栄社化学社製)、CN929、CN940、CN944B85、CN959、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J75、CN964、CN964A85、CN964E75、CN965、CN965A80、CN966A80、CN966B85、CN966H90、CN966J75、CN966R60、CN968、CN980、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN982P90、CN983、CN985B88、CN989、CN991、CN996、CN9001、CN9002、CN9004、CN9005、CN9006、CN9007、CN9008、CN9009、CN9010、CN9011、CN9014、CN9178、CN9788、CN9893(サートマー社製)、U−4HA、U−6HA、U−6LPA、UA−1100H、UA−53H、UA−33H、U−200PA、UA−4200、UA−122P(新中村化学工業社製)、ニューフロンティアR−1214、ニューフロンティアR−1301、ニューフロンティアR−1304、ニューフロンティアR−1306X、ニューフロンティアR−1150D(第一工業製薬社製)、EBECRYL230、EBECRYL244、EBECRYL245、EBECRYL264、EBECRYL265、EBECRYL270、EBECRYL284、EBECRYL285、EBECRYL294、EBECRYL1290、EBECRYL4820、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8402、(ダイセル・サイテック社製)、UV−1700B、UV−7600B、UV−7605B、UV−6630B、UV−7000B、UV−7461TE、UV−3000B、UV−3310B、UV−3520TL、UV−3700B(日本合成化学社製)、アートレジンUN−333、UN−1255、UN−2600、UN−2700、UN−5500、UN−5507、UN−6060P、UN−6200、UN−6300、UN−6301、UN−7600、UN−7700、UN−9000PEP、UN−9200A、UN−3320HA、UN−3320HC、UN−904(根上工業社製)等が挙げられる。なお、これらアクリレートオリゴマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記3官能以上の多官能ラジカル重合性モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート変性アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。なお、これら多官能ラジカル重合性モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に用いる光重合開始剤(B)は、活性エネルギー線を照射されることによって、上述したラジカル重合性モノマー(A)、アクリレートオリゴマー及び3官能以上の多官能ラジカル重合性モノマーの重合を開始させる作用を有する。また、上記光重合開始剤(B)の含有量は、該インク組成物中1〜25質量%であることを要し、1〜10質量%であることが好ましい。光重合開始剤(B)の含有量が上記特定した範囲内であれば、インク組成物の硬化性を向上でき、耐候性及び耐汚染性をも向上できる。また、光重合開始剤(B)の含有量が1質量%未満では、印刷物が硬化不良となることがあり、25質量%を超えると、低温時に析出物が発生してインクの吐出が不安定になることがある。更に、光重合開始剤の開始反応を促進させるため、光増感剤等の助剤を併用することも可能である。
【0028】
上記光重合開始剤(B)としては、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられるが、硬化性の観点から、照射する活性エネルギー線の波長と光重合開始剤の吸収波長ができるだけ重複するものが好ましい。
【0029】
上記光重合開始剤(B)の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドが、インクの硬化性の観点から好ましい。なお、これら光重合開始剤(B)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に用いる光安定剤(C)は、紫外線を吸収し、紫外線による劣化を防止する作用を有するものであるが、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に特定量で配合されることによって、耐候性及び耐汚染性を向上させることもできる。なお、上記光安定剤(C)の含有量は、該インク組成物中0.1〜15質量%であることを要し、0.2〜5質量%であることが好ましい。光安定剤(C)の含有量が上記特定した範囲内であれば、耐候性及び耐汚染性を向上させることができる。また、光安定剤(C)の含有量が0.1質量%未満では、充分な紫外線の吸収効果が得られず、15質量%を超えると、印刷物が硬化不良となることがある。
【0031】
上記光安定剤(C)としては、シアノアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンジリデンカンファー系、無機微粒子等が挙げられ、中でも、紫外線吸収がより短波長にあるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物がインクの硬化性の観点から好ましい。硬化性の観点から、照射する活性エネルギー線の波長と光安定剤の吸収波長が出来るだけ重複しないものが好ましい。
【0032】
上記光安定剤(C)の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォニックアシッド、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2―ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール・コポリマー、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。なお、これら光安定剤(C)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物には、その他の成分として、体質顔料、表面調整剤、重合禁止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、非反応性ポリマー、充填剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体等の添加剤を必要に応じて使用してもよい。
【0034】
上記体質顔料の具体例としては、珪砂、珪酸塩、タルク、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、粉末状、フレーク状又はファイバー状のガラス、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂粉末等が代表的なものとして挙げられる。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、上記ラジカル重合性モノマー(A)、光重合開始剤(B)及び光安定剤(C)と、必要に応じて適宜選択される各種成分とを混合し、必要に応じて、使用するインクジェットプリントヘッドのノズル径の約1/10以下のポアサイズを持つフィルターを用い、得られた混合物を濾過することによって、調製できる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、その粘度が、0.1mPa・s〜2000mPa・sが好ましく、1mPa・s〜100mPa・sが更に好ましく、1〜20mPa・sが特に好ましい。上記インク組成物の粘度が0.1mPa・s〜2000mPa・sの範囲内であれば、好適なレンズ形状、特に半球状のレンズ状粒子が更に容易に得られる。即ち、インク組成物の粘度が0.1mPa・s未満では、所望のレンズ形状、例えば半球状のレンズ状粒子を形成することが困難になる場合があり、一方で、インク組成物の粘度が2000mPa・sを超えると、インク組成物の流動性が低くなり、印刷が困難になる場合がある。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、その表面張力が、20〜40mN/mであることが好ましく、22〜35mN/mであることが特に好ましい。上記インク組成物の表面張力が20〜40mN/mの範囲内であれば、好適なレンズ形状、特に半球状のレンズ状粒子が更に容易に得られる。また、インク組成物の表面張力が40mN/mを超えると、基材に着弾させたコーティング材の接触角が170度を超える場合があり、この場合、着弾したインク組成物の形状が球状に近づくため、該インク組成物が着弾位置から移動したり、基材との密着性が低下したりする恐れがある。よって、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御することが困難になり得る。一方、インク組成物の表面張力が20mN/m未満では、基材に着弾させたインク組成物の接触角が20度未満になる場合があり、この場合、着弾したインク組成物の形状が平板形状に近づくため、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御することが困難になり得る。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、種々のインクジェットプリンタに使用することができる。インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式又はピエゾ方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンタを挙げることができる。また、耐候性及び耐汚染性の関連から、ピエゾ方式によるインクジェットプリンタが特に好ましい。
【0039】
次に、本発明のレンズ粒子の形成方法を詳細に説明する。本発明のレンズ状粒子の形成方法は、ピエゾ方式によるインクジェットプリンタによって、上述の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を基材上に印刷し、平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであるレンズ状粒子を形成することを特徴とする。上述の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物をピエゾ方式によるインクジェットプリンタによって印刷することで、特定の平均直径及び平均高さを有するレンズ状粒子を容易に作製でき、更には、耐候性及び耐汚染性を向上させることもできる。
【0040】
本発明のレンズ粒子の形成方法において、インクジェットプリンタは、ピエゾ方式であれば特に制限されず、通常使用されるピエゾ方式インクジェットプリンタを用いることができる。
【0041】
本発明のレンズ粒子の形成方法において、ヘッドと基材間の距離やインクジェットインク組成物の吐出量は、ノズルの性能や、目的とするレンズ状粒子の直径に応じて調整すればよい。また、基材表面に対するインクジェットインク組成物の吐出量や印刷濃度(この場合、基材に塗着するインクジェットインク組成物の面積割合)を変化させることで、レンズ状粒子を所望の位置に必要な量配置できるため、多様なデザインに対応可能である。
【0042】
また、本発明のレンズ粒子の形成方法においては、基材上に印刷された活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(印刷物)に、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ又は紫外線LED等を用いて紫外光等の活性エネルギー線を照射し、該印刷物を化学反応させて、上記レンズ状粒子が形成される。該活性エネルギー線の波長は、光重合開始剤の吸収波長と重複していることが好ましく、活性エネルギー線の主波長が360〜425nmであることが好ましい。
【0043】
特に、レンズ状粒子を基材に精度よく配置するためには、基材上に着弾した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の形状が変化する前に硬化させるのが好ましい。例えば、インクジェットインク組成物が基材に着弾した直後に紫外光を照射した場合、凸部の高さが高く、レンズ径は小さく保たれるので、より球状に近いレンズ状粒子を形成可能である。逆に、インクジェットインク組成物が基材に着弾してから時間を経た後に紫外光を照射した場合、凸部の高さが低く、レンズ径は大きくなるため、平坦なレンズ状粒子を形成可能である。
【0044】
本発明のレンズ粒子の形成方法において、上記基材は、特に限定されるものではないが、自動車又は鉄道車両用基材や、サインディスプレイ等の屋外用基材等が挙げられ、具体的には、鉄、ステンレススチール、アルミ、ブリキ等の金属類、プラスチック類、ガラス類、セラミックス類及び紙類、並びにそれらの表面に塗膜が設置されたもの(例えば、表面を樹脂でコーティングした紙等)が挙げられる。基材に塗膜が設置される場合、該塗膜の形成には、塗料業界で通常使用される樹脂を結合剤とする各種の溶剤系又は水系塗料等が使用される。また、上記基材が凹凸面を有する場合、該凹凸面にレンズ状粒子を配置させることが特に好ましい。なぜなら、入射した光がレンズ状粒子により散乱するため、防眩効果が得られ、基材の凹凸が目立たなくなり、基材のうねりに由来する強い正反射光を低減できるからである。また、この効果により、パテ材を使用しなくとも、自動車や鉄道車両の車体外板の凹凸を目立たなくし、視覚的に平滑性を演出する機能(目視による基材の凹凸感の低減)を付与することができる。
【0045】
また、レンズ状粒子の形状や基材上におけるレンズ状粒子の配置を制御し易くするためには、塗膜が設置された基材を使用することが好ましい。塗膜が設置された基材を使用することで、インクジェットインク組成物を好適な接触角(例えば、20〜170度)で基材上に着弾させることが容易になる。該塗膜としては、微細な凹凸構造を有する塗膜、接触角を調整する目的の添加剤や官能基を有する樹脂が含まれる塗膜等が好適に挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
本発明のレンズ粒子の形成方法において、上記レンズ状粒子は、平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであることを要する。レンズ状粒子の平均高さ及び平均直径が上記特定した範囲内であれば、光源の映り込みを防止することができ、更には、目視による官能評価において、優れた平滑性を表面凹凸に付与することができる。また、レンズ状粒子の平均高さが1μm未満で且つ平均直径が1μm未満では、光の散乱効果が得られ難くなるため、防眩効果を発揮し難い。一方、レンズ状粒子の平均高さが100μmを超え且つ平均直径が1000μmを超えると、表面凹凸に関する平滑性が十分に得られず、更には、意匠性を低減し、所望の外観が得られ難い。なお、レンズ状粒子の平均高さは、1μm〜50μmの範囲が好ましく、2μm〜30μmの範囲が更に好ましい。また、レンズ状粒子の平均直径は、10μm〜500μmの範囲が好ましく、200μm〜300μmの範囲が更に好ましい。
【0047】
上記レンズ状粒子は、平面部と曲面部とからなるレンズ形状を有する限り制限されるものではないが、具体例としては、
図1及び2に示されるような、平面部(底面部分)1aと曲面部1bとからなるレンズ状粒子が挙げられる。なお、
図1は、レンズ状粒子の一例の模式的平面図であり、
図2は、
図1に示すレンズ状粒子の模式的側面図である。
【0048】
本発明において、レンズ状粒子の高さとは、
図2に示されるように、平面部1aからのレンズ状粒子の高さHであり、レンズ状粒子の直径とは、平面部外周上の2点を結ぶ最大距離である。例えば、
図1に示されるように、平面部が長径Dと短径dの楕円形状である場合、長径Dが、レンズ状粒子の直径となる。なお、上記平面部の形状は、特に限定されず、楕円形状でもよいし、円形状であってもよい。
【0049】
例えば、上記レンズ状粒子の平面部を円形状にすることで、レンズ状粒子の形状を半球状にすることができるが、本発明において、レンズ状粒子の形状は、これに限定されるものではない。
図2に示す平面部と曲面部のなす角αは、1度から179度までの幅があり、この角度が小さい程、レンズ状粒子が扁平形状に近くなり、一方、大きくなる程、レンズ状粒子が球状に近くなる。
【0050】
次に、本発明の複合材料を詳細に説明する。本発明の複合材料は、基材と、該基材の少なくとも1つの面に配置されたレンズ状粒子とを備える複合材料であって、該レンズ状粒子が、上述のレンズ状粒子の形成方法によって得られたことを特徴とする。即ち、本発明の複合材料を構成するレンズ状粒子は、平均高さが1μm〜100μmで且つ平均直径が1μm〜1000μmであることを要し、上記活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物からピエゾ方式のインクジェットプリンタを用いて得られたものである。即ち、本発明の複合材料によれば、特定の原料から特定のインクジェットプリンタを用いて作られた特定の平均高さ及び平均直径を有するレンズ状粒子を基材の少なくとも1つの面に配置させることによって、光源の映り込みを防止できる上、目視による官能評価において、優れた平滑性を表面凹凸に付与でき、更には耐候性及び耐汚染性をも向上させることができる。なお、本発明の複合材料を構成する基材及びレンズ状粒子の詳細な説明については、上述した通りである。
【0051】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子は、基材表面に配置されるが、このレンズ状粒子が配置された領域における基材1平方インチ当たりのレンズ状粒子の個数は、50〜360000であることが好ましい。該レンズ状粒子が基材1平方インチ当たり50個未満では、光の散乱効果が十分に得られず、防眩効果を発揮できない場合がある。また、該レンズ状粒子が基材1平方インチ当たり360000個を超えても、レンズ状粒子同士が近づき過ぎるために十分な光の散乱効果が得られず、防眩効果を発揮できない場合がある。
【0052】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子は、本発明の目的を損なわない範囲で、基材の屈曲の程度や表面積に応じて自由に配置できる。具体的には、複数のレンズ状粒子が、独立して配置されてもよいし、接触して配置されてもよい。
【0053】
本発明の複合材料において、上記レンズ状粒子が配置された基材面におけるレンズ状粒子の占有面積は、該基材面の面積の10〜100%であることが好ましい。該レンズ状粒子の占有面積が10%未満では、光の散乱効果が十分に得られず、防眩効果を発揮できない場合がある。一方、該レンズ状粒子の占有面積が100%であると、レンズ状粒子同士が密着するものの、該レンズ状粒子の高さを調整することで、防眩効果を十分に確保することができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
<インク1の調製例>
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(官能基数2,Hw/Mw0.28)35質量部、2−フェノキシエチルアクリレート(官能基数1,Hw/Mw0.25)34.5質量部、イソボルニルアクリレート(官能基数1,Hw/Mw0.15)10質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセル・サイテック製EBECRYL4820,官能基数3)10質量部、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン0.5質量部、及び2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド10質量部を混合することによって、インク1を調製した。
【0056】
<インク2の調製例>
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート24.5質量部、2−フェノキシエチルアクリレート35質量部、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート(官能基数2,Hw/Mw0.34)20質量部、イソボルニルアクリレート10質量部、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン0.5質量部、及び2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド10重量部を混合することによって、インク2を調製した。
【0057】
<インク3の調製例>
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート44.2質量部、2−フェノキシエチルアクリレート34.5質量部、イソボルニルアクリレート10質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセル・サイテック製EBECRYL4820)10質量部、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン0.5質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド0.8質量部を混合することによって、インク3を調製した。
【0058】
<インク4の調製例>
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート35質量部、2−フェノキシエチルアクリレート35質量部、イソボルニルアクリレート10質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセル・サイテック製EBECRYL4820)10質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド10質量部を混合することによって、インク4を調製した。
【0059】
<実施例1〜3及び比較例1〜2>
ピエゾ方式によるインクジェットプリンタを用いて、上記インク1〜4を基材表面に印刷した。ヘッドと基材間の距離は3mmであった。印刷後に、波長395nmのLEDランプを用い、照射条件400mJ/cm2で紫外光をインクに直接照射し、これを硬化させ、レンズ状粒子が形成された塗装板を作製した。
【0060】
基材表面に形成したレンズ状粒子の平均直径及び平均高さを、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製VK−8510)で測定した。結果を表1に示す。
【0061】
なお、実施例及び比較例に使用した基材を以下の通り準備した。JIS K 5600に規定された耐カッピング性試験で使用されるカッピング試験装置を用いて、ブリキ板に直径27mm、深さ1mmの凹部位を作製し、その後、白色のコーティング材(大日本塗料株式会社、商品名:イノーバ)を塗布した。
【0062】
また、平滑性、光沢度、耐候性及び耐汚染性は、以下のように評価された。結果を表1に示す。なお、比較例3には、上記基材単独での結果を示す。
【0063】
<平滑性>
入射角85度で光を基材の凹部に照射し、目視にて基材の凹部の凹凸感を官能的に評価した。
○ 凹凸感が確認されない
× 凹凸感が確認された
【0064】
<光沢度>
JIS Z 8741に準拠して、基材の平坦部位のレンズ状粒子が配置された部分の85度鏡面光沢の光沢度(%)を測定して、レンズ状粒子の光散乱効果を確認した。
【0065】
<耐候性>
サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機を用いた促進耐候性試験を行い、1000時間後の塗装板の外観の変化を評価した。
○・・・塗装板外観の変化がほとんど確認されない
×・・・塗装板外観の変化がはっきりと確認できる
【0066】
<耐汚染性>
塗装面が外側で、内角が120°になるように、塗装板を折り曲げ、次いで、塗装板の接地部分が地面に対して垂直となるように(即ち、地面に対して垂直にない部分は、地面となす角が120°となるように)、屈曲した塗装板を屋外に設置し、1年後に塗装板の外観を目視観察により評価した。なお、塗装板は、塗装面が上側になるように設置された。
○・・・雨だれによる縦筋がほとんど確認されない
×・・・雨だれによる縦筋がはっきりと確認でき、軽く擦っても筋が消えない
【0067】
【表1】