特許第6166454号(P6166454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6166454
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】半地下型道路上の人工地盤の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20170710BHJP
   E01D 2/02 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   E01D21/00 B
   E01D2/02
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-255735(P2016-255735)
(22)【出願日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年2月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170772
【氏名又は名称】黒沢建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 亮平
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3703760(JP,B2)
【文献】 特開2009−041271(JP,A)
【文献】 特開平07−268808(JP,A)
【文献】 特開2010−101094(JP,A)
【文献】 特許第5706566(JP,B1)
【文献】 特開2009−041272(JP,A)
【文献】 米国特許第06668412(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両脇に擁壁を有する半地下型道路の上に人工地盤を構築する方法であって、圧縮側に鉄骨鋼材を配設したプレキャストコンクリートPC桁(SPC桁)を擁壁間の距離(L)を支間長とする単純桁として断面を設計し、この断面であって桁長が支間長の半分(L/2)未満のSPC桁であって、先端部に先端面から突出する連結用鉄骨と連結PC鋼材用シースが設けてあり、少なくとも上下各一車線の通行帯を確保してその他を通行止めとして作業帯を確保し、SPC桁を一方の土留擁壁から道路の中央に設置した仮受台の間に掛け渡し、通行止めの車線を切り替えて作業帯を変更して他方の土留擁壁からもSPC桁を仮受台に掛け渡して対向配置し、SPC桁の先端部から突出した連結用鉄骨同士を連結すると共に、前記連結PC鋼材用シースに連結PC鋼材を挿入配設し、対向配置したSPC桁の間にコンクリートを打設して硬化させ、連結PC鋼材を緊張定着してプレストレスを付与して連結用鉄骨と連結PC鋼材を含む複合構造連結部を形成することによってSPC桁を連結一体化して支間長をLとする擁壁間のSPC単純桁を形成した後に、仮受台を撤去することを特徴とする半地下型道路の上に人工地盤を構築する方法。
【請求項2】
請求項1において、前記複合連結部を形成してSPC桁を一体化した後、SPC単純桁の両端部をPC鋼材による緊張力で擁壁に剛結し、その後に仮受台を撤去することを特徴とする半地下型道路の上に人工地盤を構築する方法。
【請求項3】
請求項1または2において、少なくとも上下一車線の通行帯を確保して反対側の道路略半分以上を通行止めにして作業帯を確保し、前記SPC桁を掛け渡して複合構造連結部を形成することを特徴とする半地下型道路の上に人工地盤を構築する方法。
【請求項4】
請求項1または2において、片側対向二車線の交通を確保して反対側の道路略半分以上を通行止めにして作業帯を確保した状態で前記SPC桁を掛け渡し、その後、道路両側に片側一車線ずつの通行帯を確保し、道路の中央を通行止めにして作業帯を確保して複合構造連結部を形成することを特徴とする半地下型道路の上に人工地盤を構築する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半地下型道路の上部に交通を全面的に通行止めにすることなく人工地盤を構築する方法及びそれに使用する圧縮側に鉄骨鋼材を配設したプレキャストコンクリート桁に関する。
【背景技術】
【0002】
大都市の自動車交通を担う高速道路は用地難の関係から既存の道路上に高架道路を構築するか、堀の水を抜いて半地下型道路を構築することで都市交通の近代化を図ってきた。
しかし、半地下型道路の土留擁壁が長年月を経過して老朽化が進み、コンクリートの剥離や鉄筋の腐食が顕著となってきている。また、建設当時の設計基準は震度7の直下型地震を想定しておらず、地震の襲来でライフラインである高速道路が損傷を受ける可能性が大であり、損傷を受けた場合の物流に対する影響は多大なものとなり、経済や市民生活に大打撃を与えることは必至であることから早急に擁壁を改修することが喫緊の課題である。
【0003】
都市における半地下型道路の逆T型の土留擁壁の老朽化と設計強度が低い時代のものであることから改修が必要となってきている。この改修工事に合わせて道路の幅員の拡幅及び道路の上空を有効利用するために道路の上に人工地盤を構築することが検討されている。
半地下型道路の上への人工地盤の構築にあたっては、道路両側の擁壁の間に桁を掛け渡すことが必要であるが、都市交通の停滞や停止は経済活動への影響が多大であり、改修工事などにおいても全面通行止めは許されるものでなく、少なくとも上下一車線の確保が必要である。また、工事中に落橋などの事故を起こすと人命にかかわることがあり、このようなことはあってはならないので安全確実に施工できる工法でなければならない。
更に、自動車の運転者の視界を妨げることなく安全に運転することができるように、道路上空の使用高さが制限されるので道路を横断する桁の高さをできるだけ低くすることが要求される。
【0004】
人工地盤構築のために桁を掛け渡す対象である既存の半地下型道路の擁壁間の距離である支間長(スパン)は、対向4車線で40〜50m程度のものであり、この程度のスパンに対しては、本願発明者が開発した特許文献1、2に開示されているプレキャストコンクリートの桁断面の圧縮側に鉄骨鋼材を圧縮鋼材として配設して大きなプレストレスの導入を可能にして桁高を低くすると共に桁の自重を軽量化して下部構造への負担を軽減することができる構造の桁(以下、SPC桁という)がコスト及び短期間で施工することができることから適切であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3703760号公報
【特許文献2】特許第5706566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半地下型道路の上に道路交通を完全に止めることなく人工地盤を構築するには、片側一車線の交通を確保してその他を通行止めにして作業帯Wを確保して施工するのが安全工事を遂行するためには最も合理的と考えられる。従って、擁壁の間の中間部に支保工やサポートなどの仮受台を設け、擁壁から仮受台まで片側ずつPC桁を架設し、中央部の仮受台において桁同士を連結して一体化することが必要となる。
しかしながら、擁壁間を支間長(スパン)とする単純桁として設計された特許文献1、2に示された鉄骨鋼材を圧縮鋼材として配置したプレキャストコンクリート桁(SPC桁)を二分割して半分ずつ両擁壁から仮受台の間に架設し、桁の中央部で連結して一体化した後、仮受台を取り外して擁壁の間の全支間に掛け渡された単純桁とすることになるが、応力が最大となる桁の中央断面で切断して連結部を設けることは、最も多く与えてある中央断面のプレストレスが喪失されることになるので土留擁壁間を支間長(スパン)とした単純桁の設計断面では負荷に耐えることができなくなり、従って断面を大きくしなければならず、桁高を低くすると共に桁の自重を軽量化して下部構造への負担を軽減するというSPC桁の長所を十分活用することができないものとなる。
【0007】
本発明は、以上の課題をクリアしつつ、低コストで半地下型道路の上に人工地盤を構築できるようにするものであり、供用中の道路交通を完全に遮断することなく、少なくとも上下一車線の対面交通を許容しながら幅員40〜50m程度の半地下型道路上に桁を掛け渡して人工地盤を構築するにあたり、幅員を支間長(スパン)とする単純桁として設計されたSPC桁の桁高を増大させることなくそのままの桁高で分割施工することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
両脇に擁壁を有する半地下型道路の上に人工地盤を構築する方法であって、圧縮側に鉄骨鋼材を配設したプレキャストコンクリートPC桁(SPC桁)を擁壁間の距離(L)を支間長とする単純桁として断面を設計し、この断面であって桁長が支間長の半分(L/2)未満のSPC桁であって、先端部に先端面から突出する連結用鉄骨と連結PC鋼材用シースが設けてあり、少なくとも上下各一車線の通行帯を確保してその他を通行止めとして作業帯を確保し、SPC桁を一方の土留擁壁から道路の中央に設置した仮受台の間に掛け渡し、通行止めの車線を切り替えて作業帯を変更して他方の土留擁壁からもSPC桁を仮受台に掛け渡して対向配置し、SPC桁の先端部から突出した連結用鉄骨同士を連結すると共に、前記連結PC鋼材挿入用シースに連結PC鋼材を挿入配設し、対向配置したSPC桁の間にコンクリートを打設して硬化させ、連結PC鋼材を緊張定着してプレストレスを付与して連結用鉄骨と連結PC鋼材を含む複合構造連結部を形成することによってSPC桁を連結一体化して支間長をLとする擁壁間のSPC単純桁を形成した後に、仮受台を撤去することを特徴とする半地下型道路の上に人工地盤を構築する方法である。
また、前記複合連結部を形成してSPC桁を連結一体化して支間長がLである擁壁間のSPC桁を形成した後、SPC桁の両端部をPC鋼材による緊張力で土留擁壁に剛結し、その後に前記仮受台を撤去する半地下型道路上に人工地盤を構築する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果を以下に列挙する。
(1)単純桁として設計した支間長に適用するPC桁を二分割して、支間中央部に仮受台を設けて半分ずつ桁を架設して連結一体化することによって、少なくとも片側一車線の交通を確保することができ、安全に施工できることから、通行止めによる物流を停滞させないので経済に打撃を与えることがない。
(2)単純桁として支間長(スパン)に適用するPC桁を二分割して、桁の中央部に鉄骨連結とPC鋼材連結とからなる複合構造連結部を形成して一体化にすることによって、施工中に支間中央部のみに仮受台(支保工やサポート)を設けるだけで済み、単純桁として設計されたSPC桁は、桁高を低く抑えることができ、桁の自重が軽量であるので下部構造への負担を軽減することができ、経済的に人工地盤を構築することができる。
(3)複合構造連結部に貫通する連結PC鋼材が支間長の約1/3まで配置されることによって、予め分割部材に配置されたPC鋼材(プレテンション方式PC鋼材及びポストテンション方式PC鋼材)と充分な長さでラップされている状態になり、桁の中央断面にプレストレスがスムーズに伝達されて付与されているので、中央の複合構造連結部が強固な構造体となり、巨大地震にも耐えることができ、桁が道路面に落下して通行中の自動車を破壊して損害を与えたり、道路を閉塞したりして地震の被害の復旧活動を阻害することなく交通路として使用することが可能である。
(4)中央の複合構造連結部において、桁高を高くするふかしを設けることによって断面を拡大し、連結部に大きな連結用鉄骨部材の配置や連結PC鋼材を多く配置できるようにしたので連結部と共に桁全体の構造耐力が大幅に増加され、人工地盤の上に種々の建造物の構築に対応可能となり、都市の多様性が図れることになる。
(5)桁の両端を擁壁にPC鋼材で剛結することによってSPC桁は荷重による全曲げモーメントの一部を桁端が負担することになり、中央断面が負担する曲げモーメントを軽減させることができるので中央の連結鋼材としての鉄骨若しくはPC鋼材を減らすことができ、桁高を増大させることなく連結鋼材や連結用PC鋼材を配置するスペースを確保することができる。
(6)従来、PC単純桁橋の支間長(スパン)は、30〜40mが限界とされ、桁高スパン比は1/17.5が限界とされていたが、本願発明者が開発した(桁中央に連結部を設けない)SPC桁によって、支間長(スパン)を50〜70mまで拡大可能とし、桁高スパン比の限界を1/30に引き上げた(特許文献2:特許第5706566号公報の段落0003及び段落0012、0013参照)。
本発明は、桁中央に複合構造連結部を設けて分割した部材を連結一体化することによってSPC桁の特徴(利点)を保ちながら、支間長(スパン)を40〜50mの単純桁橋に適用すると共に、桁高スパン比を1/22〜1/30程度で桁高を低いものとすることを半地下型道路の上部に施工することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】SPC桁の(1)平面図、(2)正面図、(3)左右両端面図と中間部の断面図。
図2】本発明の施工工程図。
図3】複合構造連結部の形成過程の拡大説明図。
図4】連結部の上縁を拡大して桁高を拡大したSPC桁の(1)平面図、(2)正面図、(3)左右両端面図と中間部の断面図。
図5】連結部の上縁を拡大して桁高を拡大したSPC桁による施工工程図。
図6】連結部の上縁を拡大して桁高を拡大したSPC桁による複合構造連結部の形成過程の拡大説明図。
図7】連結部の下縁を拡大して桁高を拡大したSPC桁による施工工程図。
図8】連結部の下縁を拡大して桁高を拡大したSPC桁による複合構造連結部の形成過程の拡大説明図。
図9】連結部における連結PC鋼材を延長させてSPC桁の上縁に定着する施工工程図。
図10】連結部における連結PC鋼材を延長させてSPC桁の上縁に定着する複合構造連結部の形成過程の拡大説明図。
図11】連結部における連結PC鋼材を延長させてSPC桁の下縁に定着する施工工程図。
図12】連結部における連結PC鋼材を延長させてSPC桁の下縁に定着する複合構造連結部の形成過程の拡大説明図。
図13】擁壁側の桁端支点部における緊張鋼材を延長させてSPC桁に定着する施工工程図。
図14】連結部の桁の端部の下縁を延長したSPC桁による複合構造連結部の形成過程の拡大説明図。
図15】桁の支持点となる土留擁壁に緊張鋼材を配設しておき、桁と土留擁壁を剛結する構造の説明図。
図16】桁の曲げモーメント分布図。
図17】道路上に作業帯を確保する方法説明図。
図18】半地下型道路の上に構築した人工地盤の道路に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図面に基づいて詳しく以下に説明する。
本発明においては、人工地盤を構築する場所が半地下型道路の上であるという特殊性から、道路上に完成した人工地盤が運転者には覆い被さってトンネルのように見えて圧迫感を与えるので人工地盤となる桁の高さを可能な限り低くする必要がある。
SPC桁(圧縮側に鋼材を配設したプレストレストプレキャストコンクリート桁)は、桁断面の圧縮側に鉄骨鋼材を配置することによって見掛け上のコンクリート断面積を増大させて導入プレストレス量を増やすことができるものであり、桁の高さを通常のプレストレストコンクリート桁より低くすることができる特徴を有している。
【0012】
図1は、本発明の人工地盤の構築に使用するSPC桁の一例を示すものであり、半地下型道路の上に掛け渡す桁の半分を示すものであって、SPC桁を製作する工場から建設現場までの運搬を考慮して3つのユニット3U、3U、3Uに分割したものであり、(1)平面図、(2)正面図及び(3)左右両端面図と中間部の断面図である。ユニット同士の連結部となる端面3Mは、断面四角形としてあり、各ユニットをPC鋼材を用いてポストテンション方式で圧着連結して一体化したSPC桁3a、3bである。
なお、各ユニットは、PC鋼材を配置してプレテンション方式でプレストレスを付与してあり、プレテンション方式PC鋼材35がSPC桁の構造耐力の一部となり、その後に配置するポストテンション方式PC鋼材35aの量を減らすことができる。
このSPC桁は、図1(3)のb−b断面に示すようにI型断面であり、圧縮側のフランジに圧縮鋼材とする鉄骨鋼材31を配設してある。図示の例の鉄骨鋼材31はL形の鉄骨組立材を対向させて桁の長手方向に渡って配設してある。桁ユニット3Uの端部の土留擁壁に載置する基部(端支点拡幅部)3Eは直方体としてあり、この部分を土留擁壁2に載せて設置する。
先頭側の桁ユニット3Uの端部3Tは、もう一方の対向する土留擁壁から道路中央に向かって設置されるSPC桁と道路の中央部で連結されて一体化される連結部であり、桁ユニット3Uの基部3Eと同様に直方体としてあり、連結用鉄骨32としてH形鋼が桁ユニット3Uの端面から他方の桁との接続に必要な長さを突出させてあり、桁内部側には一定長さ埋設されて桁ユニット3Uに定着してある。
【0013】
図2に示すように、前記のユニット同士をポストテンション方式PC鋼材35a(図示せず)で圧着連結して一体化したSPC桁3aと3bを半地下型道路1の両側に設けてある土留擁壁2a、2bと道路の中央に設置した仮受台15に順次に架設し、仮受台15の上で連結一体化して土留擁壁の間にSPC単純桁として掛け渡して人工地盤10を構築するものである。
交通を全面的に遮断することなく人工地盤を構築することが必須であり、走行中の自動車に損傷を与えるなど、人命を損なうことは絶対に避けなければならず、一方の土留擁壁2aから対向する土留擁壁2bの間の道路中央部に支保工やサポートなどの仮受台15を設置し、上下車線の一方を通行止めにして作業帯Wを形成し、他方の車線を通行帯Tとして上下対向走行させることによって走行中の自動車を巻き込む工事に起因する事故が起きないようにしている。
【0014】
図2は人工地盤構築過程の全体説明図であり、図3はSPC桁3a、3bの連結部の拡大図であり、図2図3の工程を示す番号は同じ手順の状態を示しており、両図に基づいて構築過程を説明する。
図2(1)に示すように、土留擁壁2aと2bを桁3の支点とし、擁壁間の距離(L)を支間長とする単純桁とした断面で設計されたSPC桁を略半分の長さ(L/2)にしたSPC桁3aを運搬可能な長さで3つのユニットに分割し、ポストテンション方式PC鋼材35a(図示せず)で圧着連結して一体化し、一方の土留擁壁2aと中間の仮受台15に適宜の工法、例えば架設桁による送り出し工法によって架設する。
ここで、図2(2)に示すように、それまで自動車を走行させる通行帯Tとしていた車線を通行止めにし、作業帯Wとしていた車線を開放して通行帯Tに切り替える。反対側の土留擁壁2bから中間の仮受台15に向かってSPC桁3bを送り出して仮受台15にSPC桁3bの先頭部を載せて支持し、両土留擁壁2a、2bから送り出してSPC桁3a、3bの先頭部から突出している連結用鉄骨32、32を突き合わせ状態とする。
図2(3)に示すように、連結用鉄骨32に添接板を設置してSPC桁3aと桁3bを連結して一体化し、連結部の周囲を型枠で囲ってコンクリートまたは無収縮モルタル33を打設し、固結後にSPC桁3a、3bの先頭部に設けた連結PC鋼材用シース34にPC鋼材を挿入して緊張定着することによって複合構造連結部36を形成し、二つのSPC桁3a、3bを強固に連結一体化する。
図2(4)に示すように中央の仮受台15を撤去すると、土留擁壁2a、2bの間に支間長(L)に適用するように設計された単純桁の桁高のSPC桁3が掛け渡された状態となる。桁3の上に床版4を形成することによって人工地盤10が完成するので、人工地盤の付属構造物、例えば地覆、高欄などを構築する。
また、図示は省略するが、SPC桁3aと3bの先端部から予め鉄筋を突出させておき、連結部に鉄筋を配置して突出した鉄筋を繋ぐこととし、鉄骨、PC鋼材及び鉄筋による複合構造連結部36とすることもできる。
【0015】
図4は、人工地盤構築に使用するSPC桁の他の例であり、桁の連結部端部の上縁を上方向に拡大して拡大部(ふかし)3Hを設けたものであり、この拡大部3Hに連結PC鋼材34aを挿通するシース34Sが設置してある。両方のSPC桁3a、3bの拡大部(ふかし)3Hに設けたシース34Sに連結PC鋼材34aを挿通して緊張定着することによってSPC桁3a、3bを強固に連結する複合構造連結部36を形成したものである。
拡大部3Hを設けたことによって桁断面が拡大され、複合構造連結部36に比較的大きな断面の鉄骨部材を配置することができ、また、連結用のPC鋼材を多く配置できるようになり、桁全体の構造耐力を増大することができるので完成した人工地盤上に大荷重の建造物が構築可能となるので人工地盤の用途が拡大される。
図5及び図6は、図4に示した端部に拡大部3Hを設けたSPC桁を用いた場合の梁を掛け渡す工程と複合連結構造36の施工過程を図2図3と同様に示すものであり、いずれの工程も図2図3と同じであり、接続端部に拡大部(ふかし)3Hが設けてあることが異なる点である。
図7及び図8に示す例は、桁端部の拡大部(ふかし)3HをSPC桁の下縁に形成したものであり、図5図6の例とは上下を逆にしたものである。
【0016】
図9及び図10に示す例は、連結PC鋼材34としてPCケーブルを複合構造連結部36から桁の支点方向に比較的長い距離を延長させたものであり、図示の例はSPC桁連結部の次のユニットの桁の上縁に突出させた延長定着部5に緊張定着したものである。
この場合、桁中央部の連結部における連結PC鋼材の緊張定着作業には、道路中央部の車線を通行止めにして作業帯Wを設け、左右の土留擁壁2a、2b側の車線を通行帯Tとして通行帯Tの上では作業をしないようにする。作業帯Wと通行帯Tの切り替えの平面図を図17に示す。
なお、延長定着部5は、図11及び図12に示すようにSPC桁3の下縁側に突出させたものであっても構わない。
【0017】
また、図13に示すように延長定着部5を桁の上縁または下縁から突出させることなくユニットの接続部の端面に延長定着部5を設けて連結PC鋼材を定着してもよい。
以上の図示例、特に図9図13に示した複合構造連結部36に配設される連結PC鋼材34(2次PC鋼材)は、分割部材であるユニットに予め配置されている1次PC鋼材(プレテンション方式PC鋼材35とポストテンション方式PC鋼材35a)と十分な長さのラップ部分を有するものであるので桁の中央断面において十分なプレストレスが付与されることになり、中央断面に生じる大きな曲げ応力を2次PC鋼材と1次PC鋼材とで共同負担して桁両端の支点に伝達することになる。
また、本発明においては、片側一車線の通行帯Tを確保してその他の車線を通行止めにして作業帯Wを確保して施工するという原則を守る必要があるが、1次PC鋼材と2次PC鋼材のラップ長を長くすると、現場作業である2次PC鋼材の両端定着部5の作業が作業帯Wを越えて通行帯Tに入りこむので好ましくない。そして、連結完成後の桁が基本的に単純桁の構造であることを考慮すると、図16(2)のモーメント図に示すように、桁の中央区間において、支間長の約1/3までの区間では曲げモーメントは大きなものであるが、その区間の外側ではモーメントは約半分近くまで減少して小さな値となるので、2次PC鋼材を支間長(L)の約1/3の区間に配置することによって必要な強度を得ることができ、工事期間も短縮することが可能であるので合理的なものであることからラップ区間を支間長(L)の1/3までとするのが好ましい。
【0018】
図14に示す例は、連結部となるSPC桁の端部の下縁を延長した下縁延長部3Jを形成したものである。この下縁延長部3J同士を突き合わせ、下縁延長部3J間に目地を設けて目地材を充填するだけでよく、連結部のベッド型枠は不要となり、現場の手間や時間を省くことができる。
【0019】
さらに、図15は、桁の支持部である土留擁壁2に桁の端部をPC鋼棒の緊張力Pによって土留擁壁2に定着して剛結したものである。
土留擁壁2に予めPC鋼棒39を配設しておきその先端部は土留擁壁内に定着しておく。桁3の架設後にカプラー39cで延長PC鋼棒39eを接続して桁3の天端まで延長させ、桁3の中央部の複合構造連結部36が完成して分割された桁が一体化されて単純桁として完成した後に、SPC桁3と土留擁壁2の間には目地モルタル39mを充填して硬化させた後に、PC鋼棒39を桁端部の上面に緊張定着して桁端部を土留擁壁2に剛結する。
なお、図示は省略するが、剛結方法はこれに限ることなく、例えば、土留擁壁2と桁3の端部との間に水平方向にPC鋼棒39eを貫通して、同様に緊張定着して剛結することとしてもよい。
【0020】
図16(1)にSPC桁を仮受台に載置したときのモーメント図を示す。連結前の分割されたSPC桁3a、3bは、土留擁壁2と仮受台15で両端部を支持された支間長がL/2とする単純桁であるので、支持点におけるモーメントはゼロであり、支間長がL/2とする各桁の中央部で最大のモーメントなる。これが、桁の中央部の連結部において連結一体化されて複合構造連結部が完成すると、この桁は端部が両土留擁壁2a、2bで支持された支間長がLとなる単純桁となっていることから、モーメント分布は、図16(2)のようになる。
更に、図15に示すように桁端部が土留擁壁2に緊張鋼材39によって緊張力Pで緊張定着されると、桁端部には負のモーメントが作用することから図16(3)のモーメント図に示すように、支間長がLとなるSPC桁に作用する荷重による曲げモーメントの一部が桁端に負担されることになり、桁中央部の複合連結部36に作用する曲げ応力が軽減されることになり、桁高を低くすることができる。
【0021】
道路を全面的に通行止めにすることなくSPC桁を道路上に掛け渡すための作業帯Wを確保する手法の一例を以下に示す。ここに示す例は、上下各2車線の道路を例にしたものである。
図17(1)に示すように、上下線のいずれかの二車線を上下通行に利用して通行帯Tを確保し、反対側の二車線の道路の略半分以上を通行止めにして作業帯Wを確保するものであり、土留擁壁2からSPC桁を中央線付近に設置した仮受台に掛け渡す際に適したものである。
図17(2)に示す例は、上下線の路側帯側をそれぞれ交通に供する通行帯Tとし、中央線側を通行止めにすることによって中央線を中心にした作業帯Wを確保するものであり、両側の土留擁壁からSPC桁を掛け渡して複合構造連結部36を形成する作業時に適した作業帯Wが形成される。
【0022】
図18(1)は、架設した桁3の道路長手方向の断面を示すものであり、桁3が一定間隔あけて並列させて土留擁壁2の間に架設してあり、桁3、3の間にプレキャストコンクリート製床版41が掛け渡してあり、更に、左右両側端の桁3には地覆45がSPC桁3と一体に成型されたものであり、人工地盤の両端部の道路に面する部分の部材は可能な限りプレキャスト製とすることによって、現場作業を省略できるようにしたものであり、現場で組立てるだけで道路に面する構造体を迅速に形成できるようにし、その後の作業、例えば、トップコンクリート42を打設して合成床版を形成し、その上に仕上げや舗装工事と共に高欄の取り付け工事等を道路通行規制を解除して形成された人工地盤の構造体の上に行うことができ、工期の短縮を図ることができる。
図18(2)は土留擁壁2の位置の断面図であり、図18(3)は桁3の上縁を拡大して拡大部(ふかし)3Hとした部分の横断面図であり、図18(4)は、並列させた桁3同士の間にプレキャスト製の横桁3Pを設け、それらを貫通する緊張鋼材37によって道路に面する構造体を迅速に形成できるようにしたものであり、横桁3Pの完成後は道路通行規制を解除して形成された人工地盤10の構造体の上で種々の作業を行うことができるようにしたものである。
【符号の説明】
【0023】
1 半地下型道路
10 人工地盤
15 仮受台
2、2a、2b 土留擁壁
3、3a、3b SPC桁
3E 基部
3H 拡大部(ふかし)
3U1〜3 桁ユニット
3M 桁ユニットの連結部
3J 下縁延長部
3P 横桁
31 鉄骨鋼材
32 連結用鉄骨
33 コンクリート、無収縮モルタル
34、34a 連結PC鋼材
34S 連結PC鋼材用シース
35 プレテンション方式PC鋼材
35a ポストテンション方式PC鋼材
36 複合構造連結部(連結部)
37 横方向緊張鋼材
39 桁端定着緊張鋼材
39c カプラー
39e 延長緊張鋼材
39m 目地モルタル
4 床版
45 地覆
5 延長定着部
G 地面
T 通行帯
W 作業帯
【要約】      (修正有)
【課題】供用中の道路交通を完全に遮断することなく半地下型道路の上に人工地盤を低コストで構築する。
【解決手段】半地下型道路の両側の土留擁壁2a、2bの距離Lを支間長とする単純桁として設計した圧縮側に鉄骨鋼材を配設したSPC桁3を前記支間長がl/2より短い桁長とし、SPC桁3の先端部には端面から突出する連結用鉄骨32と連結PC鋼材を通すシース34が設けてあり、このSPC桁3を土留擁壁2a、2bから道路中央に設けた仮受台15に掛け渡し、連結用鉄骨32同士を連結し、連結部にコンクリー打設して固化させ、シース34に前記連結PC鋼材を挿入してプレストレスを導入して連結一体化して仮受台15を撤去し、土留擁壁2a、2bの間に前記単純桁を形成する。このSPC桁3を多数道路の上に構築して前記半地下型道路の上に人工地盤10を構築する。
【選択図】図2
図1
図2
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図18