特許第6166458号(P6166458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166458半導体装置の製造方法、半導体装置及びワイヤボンディング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166458
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、半導体装置及びワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170710BHJP
   H01L 21/607 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   H01L21/60 301D
   H01L21/60 301G
   H01L21/607 C
   H01L21/607 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-504053(P2016-504053)
(86)(22)【出願日】2015年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2015053666
(87)【国際公開番号】WO2015125670
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-32217(P2014-32217)
(32)【優先日】2014年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】株式会社新川
(72)【発明者】
【氏名】関根 直希
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−001039(JP,A)
【文献】 特開2005−123388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボンド点と第2ボンド点とが接続されるワイヤループを有する半導体装置の製造方法であって、
ボンディングツールに挿通されたワイヤを前記第1ボンド点にボンディングする第1ボンディング工程と、
前記ワイヤを繰り出しながら前記ワイヤをルーピングするワイヤルーピング工程と、
前記ワイヤを第2ボンド点にボンディングする第2ボンディング工程と、
前記ワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを上昇させるとともに前記第2ボンド点から前記第1ボンド点側に向かう方向に移動させて、前記ボンディングツールの先端から延出したワイヤのうち前記第2ボンド点付近において屈曲する被切断部を形成する被切断部形成工程と、
前記ボンディングツールを下降させるとともに前記ボンディングツールの先端を前記ワイヤに押し当てながら前記ワイヤの被切断部まで移動させるボンディングツール移動工程と、
前記ボンディングツールを前記第2ボンド点に向かって鉛直方向に下降させて加圧することによって前記ワイヤの被切断部を薄くする薄肉部形成工程と、
前記ワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを上昇させるボンディングツール上昇工程と、
前記ボンディングツールを前記第1ボンド点及び前記第2ボンド点から離れる方向であって前記第1ボンド点と前記第2ボンド点とを結ぶワイヤ方向に沿って移動させ前記ワイ
ヤを被切断部で切断することによって、前記ボンディングツールの先端にワイヤテールを形成するワイヤテール形成工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記被切断部形成工程において、前記ボンディングツールを第1高さまで上昇させ、
前記ボンディングツール移動工程において、前記ボンディングツールを前記第1の高さよりも低い第2高さに下降させて、当該第2高さにおいて、前記ボンディングツールをその先端を前記ワイヤに押し当てながら前記ワイヤの被切断部まで移動させ、
前記薄肉部形成工程において、前記ボンディングツールを前記第2高さよりも低い第3高さまで加圧する、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ボンディングツール移動工程において、前記ボンディングツールの先端を、前記ワイヤのうち前記第2ボンド点よりも前記第1ボンド点側付近に押し当てる、
請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記薄肉部形成工程において、前記ボンディングツールを前記第3の高さに維持しながら前記ワイヤ方向に沿って移動させる、
請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
第1ボンド点と第2ボンド点とがワイヤで接続されるワイヤループを有する半導体装置を製造するワイヤボンディング装置であって、
ボンディング領域内のXY平面及びZ方向を自在に移動可能なボンディングアームと、
前記ボンディングアームの先端に取り付けられた超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの一端に取り付けられ、その内部に挿通されたワイヤをボンディング対象である第1ボンド点と第2ボンド点とに押圧するボンディングツールと、
前記ボンディングツールの動作を制御する制御部とを含み、
前記制御部が、
前記ワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを上昇させるとともに前記第2ボンド点から前記第1ボンド点側に向かう方向に移動させて、前記ボンディングツールの先端から延出したワイヤのうち前記第2ボンド点付近に屈曲してなる被切断部を形成する工程と、
前記ボンディングツールを下降させるとともに前記ボンディングツールの先端を前記ワイヤに押し当てながら前記ワイヤの被切断部まで移動させる工程と、
前記ボンディングツールを加圧することによって前記ワイヤの被切断部を薄くする工程と、
前記ワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを上昇させる工程と、
前記ボンディングツールを前記第2ボンド点から離れる方向に移動させ前記ワイヤを被切断部で切断することによって、前記ボンディングツールの先端にワイヤテールを形成する工程とを実行可能に構成された、
ワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、半導体装置及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する場合において、例えば半導体チップの電極と基板の電極とをワイヤによって電気的に接続するワイヤボンディングが広く用いられている。ワイヤボンディング方法の一態様としては、ワイヤ先端にボールを形成せずにボンディング対象にワイヤを接続するウェッジボンディング方式が知られている。ウェッジボンディング方式によれば、第1ボンド点と第2ボンド点との間をワイヤで接続した後、ボンディングツールの先端から延出したワイヤの一部を切断して、ボンディングツールの先端に次のワイヤボンディングのためのワイヤテールを形成し、ボール形成工程を行うことなく当該ワイヤテールをそのまま次の第1ボンド点にボンディングする。
【0003】
しかしながら、第1ボンド点を半導体チップの電極とした場合、第1ボンド点にボンディングした後のワイヤテールの先端が、半導体チップ上の隣接する電極やパッシベーション膜に接触してしまい、これによって半導体チップが損傷あるいは不良となってしまう場合があった。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に記載されたように、ワイヤテールの先端を上方に曲げるための部材(型)を用意し、第1ボンド点へのボンディングを行う前にボンディングツールを当該部材上に移動させてワイヤテールの形状を整える手法があるが、ワイヤボンディングを行うたびにボンディングツールを移動させる必要があり、簡便かつ効率的な製造方法とは言い難かった。あるいは、このような問題は第1ボンド点においてのみ生じ得ることに鑑みて、ボンディング順番を逆にした逆ボンディングによって解決することも考えられるが、ボンディング順番が制約されてしまい、ワイヤボンディング方法の設計自由度が高いとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−318216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決することができる半導体装置の製造方法、半導体装置及びワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる半導体装置の製造方法は、第1ボンド点と第2ボンド点とが接続されるワイヤループを有する半導体装置の製造方法であって、ボンディングツールに挿通されたワイヤを第1ボンド点にボンディングする第1ボンディング工程と、ワイヤを繰り出しながらワイヤをルーピングするワイヤルーピング工程と、ワイヤを第2ボンド点にボンディングする第2ボンディング工程と、ワイヤを繰り出しながらボンディングツールを上昇させるとともに第2ボンド点から第1ボンド点側に向かう方向に移動させて、ボンディングツールの先端から延出したワイヤのうち第2ボンド点付近において屈曲する被切断部を形成する被切断部形成工程と、ボンディングツールを下降させるとともにボンディングツールの先端をワイヤに押し当てながらワイヤの被切断部まで移動させるボンディングツール移動工程と、ボンディングツールを第2ボンド点に向かって鉛直方向に下降させて加圧することによってワイヤの被切断部を薄くする薄肉部形成工程と、ワイヤを繰り出しながらボンディングツールを上昇させるボンディングツール上昇工程と、ボンディングツールを第1ボンド点及び第2ボンド点から離れる方向であって第1ボンド点と第2ボンド点とを結ぶワイヤ方向に沿って移動させワイヤを被切断部で切断することによって、ボンディングツールの先端にワイヤテールを形成するワイヤテール形成工程と、を含む。
【0008】
上記構成によれば、ボンディングツールの先端から延出したワイヤのうち第2ボンド点付近に、ワイヤが切断されやすい状態となった被切断部を形成し、当該被切断部においてワイヤを切断することができるので、簡便かつ効率的にワイヤテールの長さを一定に調整することができる。よって、例えばワイヤテールの長さを小さくすることができ、例えば次のワイヤボンディングにおける第1ボンド点でのボンディングにおいて、ワイヤの先端部を電極の領域内に確実に配置することができ、半導体装置の狭ピッチ化及び高信頼性化を図ることができる。
【0009】
上記半導体装置の製造方法において、被切断部形成工程において、ボンディングツールを第1高さまで上昇させ、ボンディングツール移動工程において、ボンディングツールを第1の高さよりも低い第2高さに下降させて、当該第2高さにおいて、ボンディングツールをその先端をワイヤに押し当てながらワイヤの被切断部まで移動させ、薄肉部形成工程において、ボンディングツールを第2高さよりも低い第3高さまで加圧してもよい。
【0010】
上記半導体装置の製造方法において、ボンディングツール移動工程において、ボンディングツールの先端を、ワイヤのうち第2ボンド点よりも第1ボンド点側付近に押し当ててもよい。
【0011】
上記半導体装置の製造方法において、薄肉部形成工程において、ボンディングツールを第3の高さに維持しながらワイヤ方向に沿って移動させてもよい。
【0012】
本発明の一態様にかかる半導体装置は、ワイヤテールが第1ボンド点としてボンディングされた第1電極と、第2ボンド点としてワイヤがボンディングされた第2電極と、第1電極と第2電極との間を接続するために所定形状に延出されたワイヤループとを備え、ワイヤループは、第1電極との第1接合部を有し、ワイヤループのうち第1接合部側の第1先端部は、第1電極の平面視における領域内に配置され、かつ、第1接合部と一体となってワイヤ径よりも薄い薄肉部を構成するように形成されている。
【0013】
上記構成によれば、第1ボンド点からワイヤの先端部がはみ出して他の電極等に接触してしまうことを回避することができることから、半導体装置が損傷あるいは不良となってしまうことを回避又は抑えることができる。したがって、狭ピッチ(例えば千鳥状のパッド配列)に対応した信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0014】
上記半導体装置において、ワイヤループにおける第1電極から立ち上がる部分には、凹部が形成されていてもよい。
【0015】
上記半導体装置において、第1電極は、半導体チップに設けられており、第1電極の領域は半導体チップ上に形成されたパッシベーション膜から露出した領域であり、第2電極は、半導体チップが搭載された基板に設けられてもよい。
【0016】
本発明の一態様にかかるワイヤボンディング装置は、第1ボンド点と第2ボンド点とがワイヤで接続されるワイヤループを有する半導体装置を製造するワイヤボンディング装置であって、ボンディング領域内のXY平面及びZ方向を自在に移動可能なボンディングアームと、ボンディングアームの先端に取り付けられた超音波ホーンと、超音波ホーンの一端に取り付けられ、その内部に挿通されたワイヤをボンディング対象である第1ボンド点と第2ボンド点とに押圧するボンディングツールと、ボンディングツールの動作を制御する制御部とを含み、制御部が、ワイヤを繰り出しながらボンディングツールを上昇させるとともに第2ボンド点から第1ボンド点側に向かう方向に移動させて、ボンディングツールの先端から延出したワイヤのうち第2ボンド点付近に屈曲してなる被切断部を形成する工程と、ボンディングツールを下降させるとともにボンディングツールの先端をワイヤに押し当てながらワイヤの被切断部まで移動させる工程と、ボンディングツールを加圧することによってワイヤの被切断部を薄くする工程と、ワイヤを繰り出しながらボンディングツールを上昇させる工程と、ボンディングツールを第2ボンド点から離れる方向に移動させワイヤを被切断部で切断することによって、ボンディングツールの先端にワイヤテールを形成する工程とを実行可能に構成されている。
【0017】
上記構成によれば、ボンディングツールの先端から延出したワイヤのうち第2ボンド点付近に、ワイヤが切断されやすい状態となった被切断部を形成し、当該被切断部においてワイヤを切断することができるので、簡便かつ効率的にワイヤテールの長さを一定に調整することができる。よって、例えばワイヤテールの長さを小さくすることができ、例えば次のワイヤボンディングにおける第1ボンド点でのボンディングにおいて、ワイヤの先端部を電極の領域内に確実に配置することができ、半導体装置の狭ピッチ化及び高信頼性化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ワイヤボンディングにおけるワイヤテールの長さを簡便かつ効率的に一定に調整することができる。よって、狭ピッチ化に対応するとともに信頼性の高い半導体装置の製造方法、半導体装置及びワイヤボンディング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置を示した図である。
図2図2(A)及び(B)は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置のボンディングアームの平面における頂面図及び底面図である。
図3図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法のフローチャートである。
図4図4(A)〜(D)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図5図5(A)〜(C)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図6図6は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法に関するタイミングチャートである。
図7図7は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置を説明するための図である。
図8図8(A)及び(B)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置を説明するための図であり、図8(A)が本発明を適用した一例であり、図8(B)が比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0021】
図1は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置を示した図であり、図2は、ワイヤボンディング装置におけるボンディングアームの一部拡大図であり、図2(A)は、ボンディングアームの頂面図、図2(B)は、ボンディングアームの底面図である。
【0022】
図1に示すように、ワイヤボンディング装置1は、XY駆動機構10、ボンディングアーム20、超音波ホーン30、ボンディングツール40、荷重センサ50、超音波振動子60及び制御部80を備える。
【0023】
XY駆動機構10はXY軸方向(平面方向)に移動可能に構成されており、XY駆動機構(リニアモータ)10には、ボンディングアーム20をZ軸方向(上下方向)に移動可能なZ駆動機構(リニアモータ)12が設けられている。ボンディングアーム20は、ボンディング領域内のXY平面及びZ方向を自在に移動可能に構成されている。
【0024】
ボンディングアーム20は、支軸14に支持され、XY駆動機構10に対して揺動自在に構成されている。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10から、ボンディング対象物100が置かれたボンディングステージ16に延出するように略直方体に形成されている。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10に取り付けられるアーム基端部22と、アーム基端部22の先端側に位置して超音波ホーン30が取り付けられるアーム先端部24と、アーム基端部22とアーム先端部24とを連結して可撓性を有する連結部23とを備える。この連結部23は、ボンディングアーム20の頂面21aから底面21bの方向へ延出した所定幅のスリット25a、25b、及び、ボンディングアーム20の底面21bから頂面21aの方向へ延出した所定幅のスリット25cによって構成されている。このように、連結部23が各スリット25a、25b、25cによって局部的に薄肉部として構成されているため、アーム先端部24はアーム基端部22に対して撓むように構成されている。
【0025】
図1及び図2(B)に示すように、ボンディングアーム20の底面21b側には、超音波ホーン30が収容される凹部26が形成されている。超音波ホーン30は、ボンディングアーム20の凹部26に収容された状態で、アーム先端部24にホーン固定ネジ32によって取り付けられている。この超音波ホーン30は、凹部26から突出した先端部においてボンディングツール40を保持しており、凹部26には超音波振動を発生する超音波振動子60が設けられている。超音波振動子60によって超音波振動が発生し、これが超音波ホーン30によってボンディングツール40に伝達され、ボンディングツール40を介してボンディング対象に超音波振動を付与することができる。超音波振動子60、例えば、ピエゾ振動子である。
【0026】
また、図1及び図2(A)に示すように、ボンディングアーム20の頂面21a側には、頂面21aから底面21bに向かって順番にスリット25a及び25bが形成されている。上部のスリット25aは、下部のスリット25bよりも幅広に形成されている。そして、この幅広に形成された上部のスリット25aに、荷重センサ50が設けられている。荷重センサ50は、予圧用ネジ52によってアーム先端部24に固定されている。荷重センサ50は、アーム基端部22とアーム先端部24との間に挟みこまれるように配置されている。すなわち、荷重センサ50は、超音波ホーン30の長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、ボンディングアーム20の回転中心とアーム先端部24における超音波ホーン30の取り付け面(すなわち、アーム先端部24におけるボンディングツール40側の先端面)との間に取り付けられている。そして、上記のように、ボンディングツール40を保持する超音波ホーン30がアーム先端部24に取り付けられているため、ボンディング対象からの反力によりボンディングツール40の先端に荷重が加わると、アーム基端部22に対してアーム先端部24が撓み、荷重センサ50において荷重を検出することが可能となっている。荷重センサ50は、例えば、ピエゾ荷重センサである。
【0027】
ボンディングツール40は、ワイヤ42を挿通するためのものであり、例えば挿通穴41が設けられたキャピラリである(図4(A)参照)。この場合、ボンディングツール40の挿通穴41にボンディングに使用するワイヤ42が挿通され、その先端からワイヤ42の一部を繰り出し可能に構成されている。また、ボンディングツール40の先端には、ワイヤ42を押圧するための押圧部47(図4(A)参照)が設けられている。押圧部47は、ボンディングツール40の挿通穴41の軸方向の周りに回転対称の形状を有しており、挿通穴41の周囲の下面に押圧面48を有している。
【0028】
ボンディングツール40は、バネ力等によって交換可能に超音波ホーン30に取り付けられている。また、ボンディングツール40の上方には、ワイヤクランパ44が設けられ、ワイヤクランパ44は所定のタイミングでワイヤ42を拘束又は解放するよう構成されている。ワイヤクランパ44のさらに上方には、ワイヤテンショナ46が設けられ、ワイヤテンショナ46はワイヤ42を挿通し、ボンディング中のワイヤ42に適度なテンションを付与するよう構成されている。
【0029】
ワイヤ42の材料は、加工の容易さと電気抵抗の低さなどから適宜選択され、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は銀(Ag)等が用いられる。なお、ワイヤ42は、ボンディングツール40の先端から延出した一部43が第1ボンド点にボンディングされる。
【0030】
制御部80は、XY駆動機構10、Z駆動機構12、超音波ホーン30(超音波振動子60)及び荷重センサ50に接続されており、制御部80によってこれらの構成の動作を制御することにより、ワイヤボンディングのための必要な処理を行うことができるようになっている。制御部80は、例えばXY駆動機構10、Z駆動機構12、荷重センサ50、超音波ホーン30(超音波振動子60)、ワイヤクランパ44などの各構成との間で信号の送受信を行うインタフェース(図示しない)を備えている。具体的には、制御部80は、ボンディングツール40のXYZ軸方向の移動距離やZ方向の荷重の制御、ワイヤクランパ44の開閉動作、ボンディングツール40に付与される超音波振動のタイミングや時間及びスクラブ動作の制御など、ボンディングツールの動作に関わる制御を行う。
【0031】
また制御部80には、制御情報を入力するための操作部82と、制御情報を出力するための表示部84が接続されており、これにより作業者が表示部84によって画面を認識しながら操作部82によって必要な制御情報を入力することができるようになっている。なお、制御部80は、CPU及びメモリなどを備えるコンピュータ装置であり、メモリには予めワイヤボンディングに必要な処理を行うためのボンディングプログラムなどが格納される。制御部80は、後述する半導体装置の製造方法において説明するボンディングツール40の動作を制御するための各処理を行うための手段(各処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)を備える。
【0032】
次に、図3図6も参照して、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明する。この半導体装置の製造方法は、上記ワイヤボンディング装置1を用いて行われるワイヤボンディング方法を含む。
【0033】
ここで、図3は、半導体装置の製造方法のフローチャートであり、図4(A)〜(D)及び図5(A)〜(C)はワイヤボンディングの処理を示したものである。また、図6は、半導体装置の製造方法に関するタイミングチャートである。なお、図4(A)で示されたXYZ軸の向きは、図1図2(A)及び(B)のXYZ軸の向きに対応しており、また、この向きは図4(A)〜(D)、図5(A)〜(C)及び図6においても同様に当てはまるものである。
【0034】
最初に、ボンディングステージ16にボンディング対象物100を用意する。
【0035】
図1に示すように、ボンディング対象物100は、本実施形態の半導体装置の製造方法によって電気的に接続される第1ボンド点と第2ボンド点とを有する。ここで、第1ボンド点とは、ワイヤで接続する2点のうちの最初にボンディングする箇所を指し、第2ボンド点とは、当該2点のうちの後にボンディングする箇所を指す。
【0036】
ボンディング対象物100は、少なくとも1つの半導体チップを含む半導体装置であり、例えば、図1に示すように、第1ボンド点としての複数の電極112を有する半導体チップ110と、第2ボンド点としての複数の電極122を有する基板120とを備え、ワイヤボンディングによって電極112と電極122との間をそれぞれ接続するワイヤループを形成し両者を電気的に接続することができる。半導体チップ110における電極112の形成面(半導体素子が形成された側の表面)には、保護膜としてのパッシベーション膜114(図1では省略。図7参照。)が形成されており、複数の電極112はそれぞれパッシベーション膜の開口部から露出している。半導体チップ110は、基板120上に搭載されている。このような態様において、半導体チップ110の電極112から基板120の電極122の順番にボンディングすることを、通常、正ボンディングと呼び、以下の例では正ボンディングの例を説明するが、本実施形態のワイヤボンディングは基板120の電極122から半導体チップ110の電極112の順番にボンディングするいわゆる逆ボンディングに適用することもできる。
【0037】
<時刻t0以前及び時刻t0〜t1の処理>
図3に示すように、第1ボンド点である半導体チップ110の電極112と、第2ボンド点である基板120の電極122とをワイヤで接続する(S10)。
【0038】
具体的には、ボンディングツール40の先端から延出したワイヤの一部を半導体チップ110の電極112(第1ボンド点)にボンディングし、その後、ボンディングツール40の先端からワイヤを繰り出しながら、ボンディングツール40を所定の軌跡に沿って移動させてワイヤをルーピングさせるとともに、ボンディングツール40を基板120の電極122(第2ボンド点)の上方に移動させ、ボンディングツール40を下降させる。そして、図4(A)及び図6に示すように、時刻t0からt1までの時間にかけて、ワイヤクランパ44を閉じた状態でボンディングツール40を高さZ0まで加圧し、ワイヤ42の一部を基板120の電極122にボンディングする。具体的には、ボンディングツール40の押圧部47(押圧面48)によってワイヤ42の一部を加圧する。このとき、必要に応じて、熱、超音波及びスクラブ動作を作動させることによって、ワイヤと電極とを接合する。こうして、第1ボンド点である電極112と第2ボンド点である電極122とをワイヤによって接続する。
【0039】
<時刻t1〜t5の処理>
第2ボンド点でのボンディングを終えた後、図3に示すように、ワイヤ42を繰り出しながらボンディングツール40を高さZ1まで上昇させるとともに第2ボンド点から第1ボンド点側に向かう方向に移動させて、ボンディングツール40の先端から延出したワイヤ42のうち第2ボンド点付近に被切断部92を形成する(S11)。例えば、図6に示すように、時刻t1にZ駆動機構12を作動させてボンディングツール40を上昇させ、次にXY駆動機構10を作動させてボンディングツール40を第1ボンド点側に向かう方向(図4(B)ではY方向)へ移動させることによってボンディングツール40を第1ボンド点側に向かって斜め上方に移動させ、時刻t2において図4(B)に示すようにボンディングツール40を高さZ1に配置する。この場合、図4(A)から図4(B)へのボンディングツール40におけるY方向の移動量は、適宜調整可能であり、例えばワイヤ径程度の大きさであってもよい。図4(B)に示すように時刻t2においては、ワイヤの被切断部92は、ボンディングツール40がY方向に移動してワイヤが屈曲することによって形成された屈曲部となっている。また、ワイヤの被切断部92は、第2ボンド点付近である、ワイヤと電極との接合部90付近に設けられる。
【0040】
そして、ボンディングツール40を高さZ2まで下降させるとともに、ボンディングツール40の先端をワイヤ42に押し当てながら被切断部92まで移動させる(S12)。例えば、図6に示すように、時刻t2にZ駆動機構12を作動させてボンディングツール40を下降させ、次にXY駆動機構10を作動させてボンディングツール40をさらに第1ボンド点側に向かって斜め下方に移動させ、時刻t3において図4(C)に示すようにボンディングツール40を高さZ2に配置する。このとき、ボンディングツール40の先端の押圧部47(押圧面48)は、ワイヤ42の一部に押し当てられた状態となっている。ボンディングツール30の先端がワイヤに当接する位置は、第2ボンド点上の接合部90であってもよいし、あるいは第2ボンド点からワイヤが立ち上がる部分((例えば、第2ボンド点でのボンディングによってステッチが形成されていない位置)であってもよい。時刻t3以降においては、高さZ2を維持した状態でXY駆動機構10を作動させてボンディングツール40をその先端をワイヤ42に押し当てながら接合部90上を滑らせるようにY方向に引っ張り、図4(D)に示すように被切断部92まで移動させる。
【0041】
ボンディングツール40を被切断部92上に配置したら、ボンディングツール40の押圧部47(押圧面48)によってワイヤの被切断部92を加圧し、被切断部92を薄くする(S13)。具体的には、図5(A)及び図6に示すように、時刻t4からt5までの時間にかけて、ボンディングツール40を高さZ3まで加圧し、ボンディングツール40の押圧部47(押圧面48)によって被切断部92を塑性変形させて薄くする。これによって被切断部92を薄肉部に形成する。なお、時刻t4からt5の間の少なくとも一部の時間において、XY駆動機構10を作動させて、ボンディングツール40を高さZ3に維持しながら、第1及び第2ボンド点から離れる方向であってワイヤ方向(XY平面における第1ボンド点と第2ボンド点とを結ぶ方向)に沿って移動させてもよい。
【0042】
こうして、時刻t1からt5までの時間にかけて、ワイヤ42を少なくとも一回屈曲させるとともに応力を加えることによって薄く塑性変形させ、被切断部92の剛性ないし引っ張り強度を低下させ、ワイヤを被切断部92において切断されやすい状態に加工する。なお、図6に示すように、時刻t1からt5までの時間においては、ワイヤクランパ44が開いた状態となってボンディングツール40の動作が制御される。
【0043】
<時刻t5〜t6の処理>
被切断部92の塑性変形を終えた後、ワイヤ42を繰り出しながらボンディングツール40を上昇させる(S14)。具体的には、図5(B)及び図6に示すように、時刻t5においてワイヤクランパ44を開いた状態で、Z駆動機構12を作動させてボンディングツール40を上昇させる。これによって、ボンディングツール40の先端からワイヤ42を延出させる。
【0044】
その後、ボンディングツール40を第2ボンド点から離れる方向に移動させワイヤ42を被切断部92で切断する(S15)。具体的には、図6に示すようにZ駆動機構12を作動させてボンディングツール40を上昇させつつ、ワイヤクランパ44を閉じた状態で、XY駆動機構10も作動させてボンディングツール40を第2ボンド点から離れる方向(第1ボンド点とは反対側のY方向)へ移動させる。こうして、ボンディングツール40を上昇させるまでの時刻t6までのいずれかのタイミングにおいて、ワイヤ42に引っ張り応力を加えワイヤ42を被切断部92で切断する。このときのボンディングツール40の移動の軌跡は特に限定されるものではないが、例えば時刻t5において上昇し、その後第1ボンド点とは反対側へ向かって斜め上方へ移動し、さらに横方向(Y方向)へ移動することを含んでいてもよい。ワイヤ42が切断されるタイミングも特に限定されるものではないが、例えば図5(C)に示すようにZ駆動機構12が作動していない状態でXY駆動機構10が作動することによってボンディングツール40がY方向へ移動するときに、ワイヤ42が切断されてもよい。
【0045】
このような処理によって、図5(C)に示すように、第1ボンド点と第2ボンド点との間を接続するために所定形状に延出されたワイヤループ130と、第2ボンド点である電極122上にワイヤの接合部134を形成することができる。
【0046】
また、ボンディングツール40の先端にワイヤテール43が形成される。ワイヤは第2ボンド点付近である予め決まった位置(被切断部92の位置)で切断されるので、上記ワイヤを繰り出す量によってワイヤテール43の長さをコントロールすることができる。また、ボンディングツール40によって挿通されるワイヤ42には、ボンディングツール40の挿通穴41の開口付近において凹部49が形成されている。凹部49は、切断工程におけるボンディングツール40の移動操作によって形成されたものであり、ボンディングツール40における挿通穴41の開口端部がワイヤ42に当接して形成されたツール痕による凹部である。
【0047】
このようにして第1ボンド点と第2ボンド点とを接続するワイヤループ130を形成するとともに、ボンディングツール40の先端にワイヤテール43を形成した後、ボンディング対象物100に対して次のワイヤボンディングを行う必要があるか否かを判定し(S16)、必要がある場合(S16 Yes)は、ボンディングツール40を次のワイヤボンディングのための第1ボンド点へ移動させてワイヤテール43を第1ボンド点にボンディングし、S10〜S15の一連の工程を繰り返し行う。他方、次のワイヤボンディングを行う必要がなく、ボンディング対象物100に対するワイヤボンディングを全て終えた場合(S16 No)は、当該ボンディング対象物100に対してのワイヤボンディング工程を終了する。
【0048】
以上のとおり、本実施形態によれば、ボンディングツール40の先端から延出したワイヤのうち第2ボンド点(電極122)付近に、ワイヤ42が切断されやすい状態となった被切断部92を形成し、当該被切断部92においてワイヤ42を切断することができるので、簡便かつ効率的にワイヤテール43の長さを一定に調整することができる。よって、例えばワイヤテール43の長さを小さくすることができ、例えば次のワイヤボンディングにおける第1ボンド点(電極112)でのボンディングにおいて、ワイヤ42の先端部を電極の平面視における領域内に確実に配置することができ、半導体装置の狭ピッチ化及び高信頼性化を図ることができる。
【0049】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法を用いて例えば図7及び図8(A)に示す半導体装置を製造することができる。なお、図8(A)は、図7で示す半導体装置のうち第1ボンド点である第1電極112付近の拡大斜視図であり、図8(B)は図8(A)に対応する図示の比較例(従来の方法で作成された例)を示したものである。
【0050】
図7に示すように半導体装置100aは、上記半導体装置の製造方法において説明したワイヤテール43が第1ボンド点としてボンディングされた第1電極112と、第2ボンド点としてワイヤ42がボンディングされた第2電極122と、第1電極112と第2電極122との間を接続するための所定形状に延出されたワイヤループ130とを備える。第1電極及び第2電極に関わる構成は既に説明したとおりであるが、例えば、第1電極112は、半導体チップ110の表面(半導体素子が形成された側の表面)に複数形成されており、各電極112は、半導体チップ110上の表面に形成されたパッシベーション膜(保護膜)114から開口した露出領域を有している。また、第2電極122は、基板120に形成された配線パターンの一部として複数形成されている。
【0051】
そして、図8(A)に示すように、ワイヤループ130は、第1電極112との第1接合部132を有し、ワイヤループ130のうち第1電極112側の第1先端部133は、第1電極112の平面視における領域(パッシベーション膜114から露出した領域)内に配置され、かつ、第1接合部132と一体となってワイヤ径よりも薄い薄肉部を構成するように形成されている。また、ワイヤループ130における第1電極112から立ち上がる部分には凹部49が形成されている。凹部49は、上記半導体装置の製造方法において説明したとおり、ボンディングツール40における挿通穴41の開口端部がワイヤ42に当接して形成されたツール痕によるものである。
【0052】
ここで、比較例における従来の方法を用いて製造された半導体装置においては、例えば図8(B)に示すように、ワイヤループのうち第1電極222(第1ボンド点)側の第1先端部233は、第1電極222の平面視における領域(パッシベーション膜114から露出した領域)から外側に配置されており、ワイヤが切断されることによって若干薄くなっているものの、ボンディングツールの加圧によって薄肉部として構成された第1接合部232と第1先端部233との間は、薄く塑性変形されておらずワイヤ径程度の大きさを有する部分からなっている。
【0053】
これに対して本実施形態にかかる半導体装置100aは、既に説明したとおりのワイヤループ130の構成を備えているため、ワイヤ材料を余分に消費することなく、かつ、第1ボンド点からワイヤの先端部がはみ出して他の電極やパッシベーション膜に接触してしまうことを回避することができることから、半導体チップが損傷あるいは不良となってしまうことを回避又は抑えることができる。したがって、狭ピッチ(例えば千鳥状のパッド配列)に対応した信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
【0055】
例えば、ボンディングツール40のXYZ方向への移動は、上記実施形態にかかる例で示した構成に限定されるものではなく、例えば直線軌道のみならず曲線軌道を描く処理を含んでいてもよい。またボンディングツール40の形状も図示するものに限定されるものではない。
【0056】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0057】
1…ワイヤボンディング装置、20…ボンディングアーム、30…超音波ホーン、40…ボンディングツール(キャピラリ)、42…ワイヤ、43…ワイヤテール、49…凹部、80・・・制御部、92…被切断部、100…ボンディング対象物(半導体装置)、110…半導体チップ、112…電極、114…パッシベーション膜、120…基板、122…電極、132…薄肉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8