(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トリグリセリドが、大豆油、パンプキンシード油、亜麻仁油、グレープシード油、オリーブ油、ひまわり油、及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
前記医薬組成物に対してソラノルビン:八水素ソラノルビン:六水素ソラノルビンの重量比が、4〜5:0.1〜1:0.1〜1であることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
前記医薬組成物に対してソラノルビン:八水素ソラノルビン:六水素ソラノルビンの重量比が、4.2〜4.5:0.3〜0.5:0.3〜0.5であることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以上及び本明細書に使用される以下の用語は、特に説明しない限り、以下の定義を有すると理解される。
【0011】
本明細書に使用された単数形の「一(a)」、「一(an)」および「当該(the)」は、特に説明しない限り、複数形の場合も含むものとする。
【0012】
「個体(subject)」という用語は、前立腺疾患を患う脊椎動物又は前立腺疾患の治療が必要とされる脊椎動物を指す。個体としては、温血動物、例えば、哺乳動物、例えば、霊長類動物、好ましくはヒトである。非ヒト霊長類も個体に含まれる。「個体」という用語には、飼育動物(例えば、猫、犬等)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミ、モルモット等)が含まれる。よって、獣医学的な使用及び医学的製剤は本明細書において意図される。
【0013】
本発明における全ての数字は、「約」という用語で修飾することができると理解される。
[医薬組成物]
一実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、(a)一つ又は複数のカイロミクロンと、(b)1または2以上のカロテノイドとを含む。カイロミクロンに封入されるカロテノイドのバイオアベイラビリティは、カイロミクロンに封入されていないカロテノイドのバイオアベイラビリティより相対的に高いである。一実施形態では、医薬組成物の封入効率が50、60、70、80%を超えた。
【0014】
例示的な一実施形態では、カイロミクロンは、トリグリセリド(triglyceride)と、リン脂質(phospholipid)と、フィトステロール(phytosterol)との混合物を含む。医薬組成物に対してトリグリセリド:リン脂質:フィトステロールの比が、約75:1:0.1(w/w)〜約95:15:1.5(w/w)の範囲である。他の実施形態では、医薬組成物に対してトリグリセリド:リン脂質:フィトステロールの比の範囲が約80:6:0.1(w/w)〜約92:12:1(w/w)の範囲である。高粘度のカロテノイド(例えば、ソラノルビン)によりカイロミクロンを形成することが困難又は不可能であるので、いずれの特定の理論にも拘束されないが、トリグリセリド:リン脂質:フィトステロールの重量比は、カロテノイド・カイロミクロンの形成に重要な役割を果たすと認められる。カイロミクロンの形成は、封入されたカロテノイドのバイオアベイラビリティ及び安定性を向上させることができる。
【0015】
例示的な一実施形態では、組成物の約75〜約95重量%はトリグリセリドである。例示的な一実施形態では、トリグリセリドの重量%が組成物に対して約94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75以下の重量%、又はそれらの間に0.1%を単位(increments)とする任意の値又は値の範囲(例えば、約86.5%、約83.2%など)である。他の実施形態では、トリグリセリドの重量%が組成物に対して約50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30以下の重量%、又はそれらの間に0.1%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約48.7%、約33.9%、約33〜48%など)である。
もう一つの例示的な実施形態では、トリグリセリドが大豆油、パンプキンシード油、亜麻仁油、グレープシード油、オリーブ油、ひまわり油、及びそれらの組合せから選択される。
【0016】
例示的な一実施形態では、組成物の約1〜約15重量%はリン脂質である。他の例示的な実施形態では、リン脂質が組成物に対して約6〜約12重量%である。さらに他の例示的な実施形態では、リン脂質の重量%が組成物に対して約14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1以下の重量%、又はそれらの間に0.1%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約7.1%、約8.3%、約8〜10%など)である。他の例示的な実施形態では、リン脂質の重量%が組成物に対して約5、4、3、2以下の重量%、又はそれらの間に0.1%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約4.5%、約2.1%、約0.1〜5%など)である。
もう一つの例示的な実施形態では、リン脂質がレシチン及びホスファチジルコリンから選択される。
【0017】
一実施形態では、組成物の約1〜約3重量%はフィトステロールである。例示的な一実施形態では、フィトステロールの重量%が組成物に対して約2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1以下の重量%、又はそれらの間に0.01%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約1.71%)である。他の例示的な実施形態では、リン脂質の重量%が組成物に対して約0.1〜約1.5重量%である。さらに他の例示的な実施形態では、フィトステロールの重量%が組成物に対して約1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下の重量%、又はそれらの間に0.01%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.71%)である。
【0018】
一実施形態では、医薬組成物は、約0.01〜約1重量%のβ−カロチンをさらに含む。他の実施形態では、β−カロチンの重量%が組成物に対して約0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下の重量%、又はそれらの間に0.01%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.14%)である。
【0019】
医薬組成物中のカイロミクロンの直径が約75nm以上の直径、例えば、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、約100nm、約105nm、約110nm、約115nm、約120nm、約125nm、約130nm、約135nm、及び約140nmなどの直径である。医薬組成物中のカイロミクロンの直径が約450nm以下の直径、例えば、約445nm、約440nm、約435nmなどの直径である。一実施形態では、医薬組成物中のカイロミクロンの直径が約100〜約150nmである。他の実施形態では、医薬組成物中のカイロミクロンの直径が約125〜約140nmである。さらに他の実施形態では、医薬組成物中のカイロミクロンの直径が約130〜約135nmである。他の一実施形態では、医薬組成物中のカイロミクロンの直径が約125〜約140nmである。
【0020】
一実施形態では、本発明に適したカロテノイドは、カロチンである。カロチンの非限定的な例としては、α−カロチン、β−カロチン、ソラノルビン、及びその前駆体である六水素ソラノルビン及び八水素ソラノルビンが挙げられる。他の実施形態では、本発明に適したカロテノイドは、キサントフィル(Xanthophyll)である。キサントフィルの非限定的な例としては、β−クリプトキサンチン(beta−cryptoxanthin)、ルテイン(lutein)、及びゼアキサンチン(zeaxanthin)が挙げられる。
【0021】
一実施形態では、カロテノイドは、ソラノルビン、八水素ソラノルビン又は六水素ソラノルビンから選択される一つ又は複数のものである。他の実施形態では、本発明に係る組成物中のカロテノイドは、キサントフィルを実質的に含有しない。他の実施形態では、キサントフィルの量は、組成物中に好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1.5重量%、さらに好ましくは≦1重量%、特に好ましくは≦0.5重量%である。
【0022】
一実施形態では、医薬組成物は、ゼインたんぱく質(zein protein)を実質的に含有しない。他の実施形態では、ゼインたんぱく質の量は、組成物中に好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1.5重量%、さらに好ましくは≦1重量%、特に好ましくは≦0.5重量%である。
【0023】
一実施形態では、医薬組成物は、アミノ酸を実質的に含有しない。他の実施形態では、アミノ酸の量は、組成物中に好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1.5重量%、さらに好ましくは≦1重量%、特に好ましくは≦0.5重量%である。
【0024】
当該医薬組成物は、選択された投与経路に適した任意の剤形に製剤化されることができる。より好ましくは、当該医薬組成物は、経口投与の形態として製剤化される。薬学的に利用可能な他の投与経路は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与、経直腸投与又は吸入投与である。一実施形態では、医薬組成物は、選択的に0.1g〜1.5gのリン脂質(例えば、レシチン)を含む約1〜10mLの脱イオン水と構成される。他の実施形態では、医薬組成物に使用される水の体積が約9、8、7、6、5、4、3、2ml以下の体積であり、又はそれらの間に0.1%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約4〜6ml、約5.4ml)である。医薬組成物に使用されるリン脂質の量が1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2g以下の重量であり、又はそれらの間に0.01%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.45〜0.75g、約6g)である。
【0025】
当該医薬組成物又はカロテノイドの投与量は、実施例に基づいて当業者により決定されることができる。単位投与又は複数回投与の形態はもれなく特許請求の範囲に含まれるものとし、それぞれ特定の臨床状況において有利とされる。本発明によれば、医薬組成物又はカロテノイドの実際の投与量は年齢、体重、被治療者の状況及び他の合併症により変化して、医療従事者の判断により決定される。一実施形態では、約1〜約10重量%の組成物はソラノルビンであり、約0.1〜約1.5重量%の組成物は八水素ソラノルビンであり、約0.1〜約1.5重量%の組成物は六水素ソラノルビンである。もう一つの実施形態では、約2〜約6重量%の組成物はソラノルビンであり、約0.2〜約0.6重量%の組成物は八水素ソラノルビンであり、約0.1〜約0.5重量%の組成物は六水素ソラノルビンである。
もう一つの実施形態では、約4〜約5重量%の組成物はソラノルビンであり、0.1〜1重量%の組成物は八水素ソラノルビンであり、0.1〜1重量%の組成物は六水素ソラノルビンである。もう一つの実施形態では、4.2〜4.5重量%の組成物はソラノルビンであり、0.3〜0.5重量%の組成物は八水素ソラノルビンであり、0.3〜0.5重量%の組成物は六水素ソラノルビンである。例示的な実施形態では、ソラノルビンの重量%がカイロミクロン組成物に対して約9、8、7、6、5、4、3、2より低い又はそれらに等しい重量%であり、又はそれらの間に0.1%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約4.3%)である。もう一つの例示的な実施形態では、八水素ソラノルビンの重量%がカイロミクロン組成物に対して約1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2より低い又はそれらに等しい重量%であり、又はそれらの間に0.01%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.43%)である。もう一つの例示的な実施形態では、六水素ソラノルビンの重量%がカイロミクロン組成物に対して約1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2より低い又はそれらに等しい重量%であり、又はそれらの間に0.01%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.35%)である。
【0026】
一実施形態では、医薬組成物中のソラノルビンのC
max(最高血漿濃度)の範囲が約0.15μg/mL〜約0.5μg/mL、又は約0.12μg/mL〜約0.55μg/mLであってもよい。第2実施例では、医薬組成物中のソラノルビンのt
max(最高血漿濃度に達するまでの時間)の範囲が約1.5分〜約265分、又は約1分〜約290分であってもよい。第3実施例では、医薬組成物中のソラノルビンのt
1/2(半減期)の範囲が約1800分〜約2500分、又は約1600分〜約2700分であってもよい。
【0027】
一実施形態では、医薬組成物中の八水素ソラノルビンのC
maxの範囲が約0.05μg/mL〜約0.3μg/mL、又は約0.04μg/mL〜約0.33μg/mLであってもよい。第2実施例では、医薬組成物中の八水素ソラノルビンのt
maxの範囲が約1.8分〜約132分、又は約1.5分〜約145分であってもよい。第3実施例では、医薬組成物中の八水素ソラノルビンのt
1/2の範囲が約885分〜約1900分、又は約800分〜約2050分であってもよい。
【0028】
一実施形態では、医薬組成物中の六水素ソラノルビンのC
maxの範囲が約0.08μg/mL〜約0.31μg/mL、又は約0.07μg/mL〜約0.34μg/mLであってもよい。第2実施例では、医薬組成物中の六水素ソラノルビンのt
maxの範囲が約1.8分〜約265分、又は約1.5分〜約288分であってもよい。第3実施例では、医薬組成物中の六水素ソラノルビンのt
1/2の範囲が約1250分〜約1900分、又は約1110分〜約2050分であってもよい。
【0029】
本発明は、(a)一つ又は複数のミセルと、(b)1または2以上のカロテノイドとを含む医薬組成物も提供する。ミセルは水溶液中に存在する。一実施形態では、カロテノイドはミセルに封入される。他の実施形態では、医薬組成物の封入効率が60、70、80%を超えた。
【0030】
一実施形態では、ミセルは、界面活性剤と、リン脂質との混合物を含む。高粘度のカロテノイド(例えば、ソラノルビン)によりミセルを形成することが困難であるので、いずれの特定の理論にも拘束されないが、リン脂質と油との重量%は、カロテノイド・ミセルの形成に重要な役割を果たすと認められる。ミセルの形成は、封入されたカロテノイドのバイオアベイラビリティ及び安定性を向上させることができる。また、ミセルは、水溶性であるので、静脈経路(IV route)によって投与されることができる。
【0031】
例示的な一実施形態では、組成物の約1〜約20重量%は界面活性剤である。例示的な実施形態では、界面活性剤の重量%が組成物に対して約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2以下の重量%、又はそれらの間に0.1%を単位とする任意の値もしくは値の範囲(例えば、約9.9%、約7.4%など)である。他の実施形態では、界面活性剤の重量%が組成物に対して約5〜約15重量%である。他の実施形態では、界面活性剤の重量%が組成物に対して約10重量%である。
さらにもう一つの実施形態では、界面活性剤はポリソルベート(polysorbate)である。
【0032】
一実施形態では、組成物の約0.01〜約2重量%はリン脂質である。例示的な実施例では、リン脂質の重量%が組成物に対して約1.95、1.9、1.85、1.8、1.75、1.7、1.65、1.6、1.5、1.45、1.4、1.35、1.3、1.25、1.2、1.15、1.1、1.05、1、0.95、0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.05以下の重量%、又はそれらの間に0.01%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.06%)である。他の例示的な実施形態では、リン脂質の重量%が組成物に対して約0.01%から約1%以下の重量%までである。さらに他の例示的な実施形態では、リン脂質の重量%が組成物に対して約0.01%から約0.5%以下の重量%までである。さらに他の例示的な実施形態では、リン脂質の重量%が組成物に対して約0.01%から約0.1%以下の重量%までである。
【0033】
一実施形態では、医薬組成物は、約0.001重量%〜1重量%のβ−カロチンを含む。他の実施形態では、β−カロチンの重量%が組成物に対して約0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下の重量%、又はそれらの間に0.001%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.001%〜約0.01%)である。
【0034】
ミセルの直径が約1nmより大きいまたはそれに等しい直径、例えば、約1.5nm、約2nm、約2.5nm、約3nm及び約3.5nmであってもよい。ミセルの直径が約10nm以下の直径、例えば、約9.5nm、約9nm及び約8nmであってもよい。一実施形態では、ミセルの直径が約3.5nm、約5nm又は7.5nmである。
【0035】
ミセル中のカロテノイドの合計量は、本発明に係るカイロミクロン中のカロテノイドの合計量と比べて少ない。例示的な一実施形態では、約0.001〜約1重量%の医薬組成物はソラノルビンである。例示的な一実施形態では、ソラノルビンの重量%が組成物に対して約0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下の重量%、又はそれらの間に0.001%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.035%、約0.022%)である。他の例示的な実施形態では、ソラノルビンの重量%が組成物に対して約0.035重量%である。
【0036】
例示的な一実施形態では、医薬組成物の約0.001〜約1重量%は八水素ソラノルビンである。例示的な一実施形態では、八水素ソラノルビンの重量%が組成物に対して約0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下の重量%、又はそれらの間に0.0001%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.0027%、約0.0035%など)である。他の例示的な実施形態では、八水素ソラノルビンの重量%が組成物に対して約0.0035重量%である。
【0037】
例示的な一実施形態では、医薬組成物の約0.001〜約1重量%は六水素ソラノルビンである。例示的な実
施形態では、六水素ソラノルビンの重量%が組成物に対して約0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1以下の重量%、又はそれらの間に0.0001%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、約0.0047%、約0.0483%など)である。他の例示的な実施形態では、六水素ソラノルビンの重量%が組成物に対して約0.003重量%である。
例示的な一実施形態では、ソラノルビン:八水素ソラノルビン:六水素ソラノルビンの重量比が医薬組成物に対して約0.02〜0.05:0.002〜0.005:0.002〜0.005である。もう一つの例示的な実施形態では、ソラノルビン:八水素ソラノルビン:六水素ソラノルビンの重量比が医薬組成物に対して約0.036:0.0036:0.0036である。
【0038】
当該医薬組成物は、選択された投与経路に適した任意の剤形に製剤化されることができる。より好ましくは、一つ又は複数のミセルを含む医薬組成物は、静脈内投与の形態として製剤化される。薬学的に利用可能な投与経路は、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与、経直腸投与又は吸入投与などである。
【0039】
当該医薬組成物は、定時的に、又は治療する疾患、被治療者の状況、投与経路に適した期間に単回又は複数回の投与量として投与可能である。必要な投与量は、便利な単回投与、又は適切な間隔で分割投与、例えば1日に2回、3回、4回、又はそれら以上のサブ用量として投与されることができる。サブ用量自体は、更に分割されてもよく、例えば、緩く間隔をあけるように複数の用量に分割されてもよい。
【0040】
医薬組成物又はカロテノイドの投与量は、実施例に基づいて当業者により決定されることができる。単位投与量又は複数回投与の形態は、特許請求の範囲に含まれるものとし、それぞれ特定の臨床状況において有利とされる。本発明によれば、医薬組成物又はカロテノイドの実際の投与量は、年齢、体重、被治療者の状況及び他の合併症により変化して、医療従事者の判断により決定される。
【0041】
当該医薬組成物は選択的に滅菌及び/又は凍結乾燥される。医薬組成物は凍結乾燥粉末の状態であってもよく、そして例えば滅菌水(sterile water)、生理食塩水又は他の注射可能溶液で希釈又は再構成される。一実施形態では、本明細書に提供された医薬組成物は、少なくとも一つの抗凍結剤、例えば、マンニトール(mannitol)、グリセリン、デキストロース(dextrose)、スクロース(sucrose)及び/又はトレハロース(trehalose)をさらに含む。一部の実施例では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、ビヒクル(vehicle)、活性成分の媒体(medium)又はそれらの組合せをさらに含む。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤はトコフェロール(tocopherol)である。賦形剤又は担体の重量は、医薬組成物の投与量あたり、約0.001mg〜約50mgである。一実施形態では、薬学的に許容される担体の重量は、医薬組成物の投与量あたり、約0.01mg〜約30mgである。他の実施形態では、薬学的に許容される担体の重量は、医薬組成物の投与量あたり、約0.1mg〜約10mgである。他の実施形態では、担体又は賦形剤の重量%は、医薬組成物に対して約0.001〜約5重量%である。他の実施形態では、担体又は賦形剤の重量%は、医薬組成物に対して約5、4、3、2、1以下の重量%、又はそれらの間に0.001%を単位とする任意の値又は値の範囲(例えば、1.430%、0.012%、0.001%〜0.5%)である。
【0042】
一実施形態では、医薬組成物中のソラノルビンのC
maxの範囲が約0.24μg/mL〜約3.8μg/mL、又は約0.22μg/mL〜約4.2μg/mLであってもよい。第2実施形態では、医薬組成物中のソラノルビンのt
maxの範囲が約1.8分〜約132分、又は約1.6分〜約145分であってもよい。第3実施形態では、医薬組成物中のソラノルビンのt
1/2の範囲が約520分〜約1560分、又は約460分〜約2080分であってもよい。
【0043】
一実施形態では、医薬組成物中の八水素ソラノルビンのC
maxの範囲が約0.05μg/mL〜約1.76μg/mL、又は約0.04μg/mL〜約1.95μg/mLであってもよい。第2実施形態では、医薬組成物中の八水素ソラノルビンのt
maxの範囲が約1.8分〜約66分、又は約1.5分〜約75分であってもよい。第3実施形態では、医薬組成物中の八水素ソラノルビンのt
1/2の範囲が約565分〜約1620分、又は約500分〜約1765分であってもよい。
【0044】
一実施形態では、医薬組成物中の六水素ソラノルビンのC
maxの範囲が約0.11μg/mL〜約3μg/mL、又は約0.10μg/mL〜約3.3μg/mLであってもよい。第2実施形態では、医薬組成物中の六水素ソラノルビンのt
maxの範囲が約1.8分〜約132分、又は約1.5分〜約145分であってもよい。第3実施形態では、医薬組成物中の六水素ソラノルビンのt
1/2の範囲が約565分〜約2865分、又は約500分〜約3130分であってもよい。
【0045】
本発明は、更に以下の実施例によって説明され、但し、それらは説明の目的で提供するものであり、本発明を限定することを企図するものではない。
【実施例】
【0046】
例1:カイロミクロン及びカロテノイドを含む医薬組成物の調製
本発明の一実施例は下記ステップにより調製された。
(1)高粘度のカロテノイド混合物(MCS(登録商標)、Health Ever Biotech株式会社(台湾)から購入可能)は、15mgのソラノルビン(カロテノイド)と、1.5mgの八水素ソラノルビン(カロテノイド)と、1.25mgの六水素ソラノルビン(カロテノイド)と、25mgのレシチン(リン脂質)と、1.5mgのフィトステロールと、5mgのトコフェロールと、0.5mgのβ−カロチンとを含み、且つ300.25mgの大豆油(トリグリセリド)と十分に混合した。
(2)ステップ(1)で得られた混合物を30分の超音波処理によって、油中水型(W/O)の乳液(MCS(登録商標)カロテノイド混合物の粘度より低い)を得た。
【0047】
ステップ(2)で得られた医薬組成物は、4.3重量%のソラノルビン(カロテノイド)と、0.43重量%の八水素ソラノルビン(カロテノイド)と、0.35重量%の六水素ソラノルビン(カロテノイド)と、1.43重量%のトコフェロールと、0.14重量%のβ−カロチンと、0.43重量%のフィトステロールと、7.14重量%のレシチン(リン脂質)と、85.78重量%の大豆油(トリグリセリド)とを含む。
【0048】
しかし、ステップ(2)で得られたW/O型の乳液の粘度を静脈内及び/又は経口投与として用いることは困難であった。よって、投与前、その乳液を選択的に0.6gのレシチン(リン脂質)を含む脱イオン水5.4mLに溶解した。
【0049】
DLSによって測定されたように、水溶液中のカイロミクロンの平均サイズが約131.5nmであり、多分散度(polydispersity)が0.053である。TEMによって観察されたように、ソラノルビンが封入されるカイロミクロンW/O乳液の表面形態は、実質的な球形形状を示した。また、4℃又は25℃で3ヶ月保存する、又は100℃で4時間加熱する場合に、濃度が僅かな変化しか示されていなかったので、カイロミクロンのソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンの高安定性が観察された。それと同じように、カイロミクロンがpH2.0、3.5、6.0、6.8及び7.4に1、2、4、6、12又は24時間保存する場合でも、ソラノルビン、八水素ソラノルビン、六水素ソラノルビンの安定性が維持された。カイロミクロン中のソラノルビンの封入効率評価が約80%であった。
例2:ミセル及びカロテノイドを含む医薬組成物の調製
本発明の一実施例は下記ステップにより調製された。
(1)50mgの高粘度のカロテノイド混合物は、(a)2.2mgのソラノルビン(カロテノイド)と、(b)0.21mgの八水素ソラノルビン(カロテノイド)と、(c)0.18mgの六水素ソラノルビン(カロテノイド)と、(d)3.28mgのレシチン(リン脂質)と、(e)0.71mgのトコフェロールと、(f)0.07mgのβ−カロチンと、(g)42.9mgの油とを含み、且つガラス管に600mgのTween80(界面活性剤)と十分に混合する。混合物を均質となるように攪拌した。
(2)ステップ(1)で得られた混合物を5.4mL(5.4gに相当)の脱イオン水と混合して、超音波により30分処理した。
(3)ステップ(1)で得られた混合物を室温で24時間保存することにより、ミセル(O/W乳液)を得た。その中、ソラノルビンの濃度が約0.37mg/mLであった。
【0050】
ステップ(3)で得られた医薬組成物は、0.035重量%のソラノルビンと、0.0035重量%の八水素ソラノルビンと、0.003重量%の六水素ソラノルビンと、0.012重量%のトコフェロールと、0.0012重量%のβ−カロチンと、0.0035重量%のフィトステロールと、0.06重量%のレシチンと、89.27重量%の水と、0.71重量%の油と、9.9重量%のTween80とを含む。
【0051】
DLS及びTEMの分析に基づいて、ミセルの平均サイズが約7.5nmであり、且つ球形形状と透明の外観を有し、そして多分散度が0.033であり、粒径分布が狭いものであることで、高度均一なミセル乳液の調製が成功したことを示した。また、4℃又は25℃で3ヶ月保存する、又は100℃で4時間加熱する期間において、ソラノルビンミセルの粒子サイズ(7.0〜7.5nm)及び形状は僅かな差異しか示されていなかったので、当該ソラノルビンミセル乳液は高安定性を有する。そして、同一条件で保存または加熱する期間において、ソラノルビン、八水素ソラノルビン、六水素ソラノルビンは、平均値の範囲がそれぞれ0.34〜0.38mg/mL、0.03〜0.04mg/mL及び0.03〜0.04mg/mLであった。また、ミセルをpH2.0、3.5、6.0、6.8及び7.4に1、2、4、6、12又は24時間保存する場合、ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビン濃度がわずかに変化するだけであった。ミセル中のソラノルビンの封入効率評価が約78%であった。
例3:医薬(Pharmaceutical)及び医薬組成物の薬物動態学の研究
例1及び例2で調製された医薬組成物の薬物動態学的特性を、雄スプラーグドーリーラット(Sprague−Dawley rat)を用いて評価した。
【0052】
合計24匹のラット(毎匹の体重は約280g)を12匹ずつ2群に分け、その1群には経口投与(強制経口投与(gavage))し、他の群には静脈内(i.v.)注射した。この研究では、ソラノルビンは水に難溶性であるので、経口投与又は静脈内注射に困難があるため、ソラノルビンのみの投与を含まなかった。
【0053】
例1及び例2で得られた医薬組成物を経口投与及び静脈内(IV)注射により投与した。1.43mg/kgの当量のソラノルビンをIV(経口投与量の10分の1)により投与した。また、14.3mg/kgの当量のソラノルビンを経口投与により投与した。それらの投与量は、リコピン(lycopene)の吸収飽和が14.3mg/kg体重(14.3mg/kg BW)より高い投与量で発生するという、予備実験の結果により選択された。
【0054】
血液サンプルは、以下の時間間隔でラットの尾静脈から採血した:組成物投与後の2分、5分、10分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間及び72時間であった。
【0055】
薬物動態学の研究は、非コンパートメントモデル(non−compartmental model)でWinNonlinソフトウェアシステム(Pharsight Co, Mountain View, CA, USA)により行われた。薬物濃度−時間曲線下面積(AUC)を用いて体循環に達するすべてのトランス(trans)−ソラノルビン、シス(cis)−ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンの合計量を確認した。他の薬物動態パラメータの一部、例えば、C
max、T
max及びt
1/2も測定された。トランス−ソラノルビン、シス−ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンの絶対バイオアベイラビリティは下記の数式で算出された:
【0056】
【数1】
【0057】
すべてデータは、統計解析ソフト(Statistical Analysis Software, SAS)で分散分析及びダンカンの多重範囲検定(Duncan’s multiple range test)を行い、統計的有意性を、P<0.05にて判断した。
【0058】
表1は、例1(カイロミクロン)及び例2(ミセル)で調製された医薬組成物の薬物動態学を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
例示的な一実施形態では、カイロミクロン・ソラノルビンの薬物濃度−時間曲線下面積は450〜580分・μg/mLである。もう一つの例示的な実施形態では、カイロミクロン・八水素ソラノルビンの薬物濃度−時間曲線下面積は150〜200分・μg/mLである。さらにもう一つの例示的な実施形態では、カイロミクロン・六水素ソラノルビンの薬物濃度−時間曲線下面積は65〜120分・μg/mLである。
経口投与による医薬組成物のバイオアベイラビリティを表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表1を参照し、ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンの最高血漿濃度(C
max,μg/mL)は、ミセル組成物の経口投与後120、60及び120分に対して0.27、0.06及び0.13μg/mLであった。ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのC
max(μg/mL)は、カイロミクロンの経口投与後240、120及び240分には0.18、0.06及び0.09μg/mLであった。ミセルの粒径が比較的に小さいため、ミセル組成物のC
maxに達する時間がカイロミクロン組成物より短かった。
【0063】
経口投与によるミセル組成物に対して、ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのAUC(分・μg/mL)は496、209及び204であった。経口投与によるカイロミクロン組成物に対して、ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのAUC(分・μg/mL)は503、166及び76であった。
【0064】
ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのC
maxは、ミセル組成物の静脈内投与後2、2及び2分に対して3.5、1.6及び2.7μg/mLであった。ソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのC
maxは、カイロミクロン組成物の静脈内投与後2、
2及び2分に対して0.45、0.27及び0.28μg/mLであった。ミセルの平均粒径が比較的に小さいため、静脈内投与によるミセル組成物のソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのC
maxは、静脈内投与によるカイロミクロン組成物と比較して7.8倍、5.9倍及び9.6倍高かった。
【0065】
同じように、静脈内投与によるミセル組成物のソラノルビン、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのAUC(分・μg/mL)は、静脈内投与によるカイロミクロン組成物より高かった(それらの差はそれぞれ203、311及び544)。
【0066】
表2に示すように、経口投与によるミセル組成物のソラノルビン(ソラノルビンのすべてトランス異性体およびシス異性体を含み)、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンの経口バイオアベイラビリティはそれぞれ6.8、4.3及び3.1%であった。また、経口投与によるカイロミクロン組成物のソラノルビン(ソラノルビンのすべてトランス異性体およびシス異性体を含み)、八水素ソラノルビン及び六水素ソラノルビンのバイオアベイラビリティはそれぞれ9.5、9.4及び7.1%であった。カイロミクロン組成物は、ミセル組成物より高いカロテノイドのバイオアベイラビリティを有する。いずれの特定の理論にも拘束されないが、カイロミクロンの厚い外層により証明されるように、消化及び吸収の期間において、カイロミクロンは、カロテノイドに対してより高い保護作用が発揮すると考えられる。ミセル中及びカイロミクロン中のソラノルビンのバイオアベイラビリティは、いずれも封入されていないソラノルビンの利用率より高い(1.85%、Faisal et al “Bioavailability of solanorubin in the rat: the role of lymphatic transport. J. Pharm. Pharmacol. 2010, Mar 62(3):323−31を参照)であった。
【0067】
本明細書中に援用又は叙述されるすべての特許、特許出願および刊行物の公開内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明は、本発明の要旨から逸脱せずに、本発明の好適な実施例に対して様々な変更及び修正が可能であるということは当業者にとって自明である。従って、本発明の要旨及び範囲内にあるそのような等価的な変更は、特許請求の範囲で扱うものとする。