(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記帯状の布において、前記差込スリットからなる2つの列の間隔が、中心にかけて狭くなるように形成されており、最も狭い間隔と最も広い間隔の差が10mm〜30mmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の差込式半衿。
前記中央部以外の差込片が、幅8〜15mm、高さ10〜20mmであり、隣接する差込片同士の距離が20〜50mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の差込式半衿。
中央部の差込片が、基部に対して略垂直であり、且つ、先端部分が丸みを帯びた形状を有しており、幅8〜15mm、高さ15〜25mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の差込式半衿。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の差込式半衿を取り付けるための襦袢であって、襦袢の地衿に、地衿より衿幅が小さい掛衿が取り付けられており、前記地衿の下縁から前記掛衿の下縁までの距離が、前記固定具の基部の高さと略同一であり、前記地衿と掛衿の間に、前記差込片を挿入する隙間が設けられていることを特徴とする、襦袢。
【背景技術】
【0002】
半衿は掛衿の一種であり、和装時に着用する襦袢(長襦袢・半襦袢)の地衿の上に重ねて用いられるものである。すなわち襦袢の一番汚れやすいところは衿であるため、襦袢の地衿に、別布である半衿を縫い付けることによって、地衿の汚れを防ぐことができるとともに、半衿のみを洗濯したり、半衿のみを取り替えたりして使用することができる。特に最近では、地衿と半衿の間に「衿芯」を入れて衿の形を整えるため、半衿は必須のものとなっている。
【0003】
また半衿は、着物の衿から見えるため、着用する着物ごとに、あるいは同じ着物であっても着る度ごとに、着物に合わせた色や柄の半衿に付け替えて、おしゃれを楽しむ目的でも使用される。
【0004】
汚れを防ぐ目的でも、おしゃれを楽しむ目的でも、半衿は頻繁に取り替えられるものである。通常、半衿の取り付けは、襦袢の地衿に半衿を縫い付けることによって行うが、熟練者でなければ、手早く、美しく取り付けることができない。近年、和装が再び注目されてきているが、半衿の取り付けは、和装を面倒と感じさせる要因の一つとなっている。
【0005】
このような問題に鑑み、例えば特許文献1では、半衿に被せて使用する、強靭紙と弾性薄層板からなる半衿カバーが提案されており、特許文献2では、襟芯及び襟芯を覆う化粧布と、第一及び第二押さえ布と、複数の雄型スプリングホックを備える半襟が提案されている。また、本発明者も、以前にこの問題に対処するための掛衿カバーを発明し、出願している(特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題を解決するためのものであって、縫着せずに襦袢に取り付けることができるとともに、汎用性に優れ、且つ、襦袢の衿部にしっかりと固定できる半衿を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために検討を繰り返した結果、襦袢の地衿に縫い付けられた掛衿の上にさらに半衿用の布を被せ、襦袢の地衿と掛衿の間の縫い目の隙間を利用して、所定の形状を有する固定具で固定することにより、掛衿に半衿を確実に固定することに成功し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、襦袢の掛衿に被せて用いる差込式半衿であって、
帯状の布(半衿用の布)と、その長辺縁部をそれぞれ掛衿に固定するための2つの固定具とからなり、
前記固定具は、可撓性を有する略直線状の基部と、任意の間隔で前記基部上に連立する差込片を有しており、
前記差込片は、中央部の差込片を除いて、基部付け根から1〜5mmの位置で、基部に対して20〜50度の角度で、中央部の差込片から離れる方向に屈曲し、且つ、先端部分が丸みを帯びた形状を有しており、
前記帯状の布は、長辺縁部それぞれに、前記差込片を挿入可能な差込スリットが略直線状に配列されていることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる差込式半衿は、上記構成をとるため、帯状の布の長辺縁部(長手方向に略平行な両側)それぞれに、差込片先端が布の外側を向くように各固定具を配置し、各固定具の各差込片を、対応する位置にある差込スリットに挿入していくことによって、帯状の布に固定具を取り付けることができる。その後、帯状の布の長辺縁部をそれぞれ、固定具の基部をくるみ込むように基部ごと折り返し、襦袢に縫い付けられた掛衿の上に重ねて、各差込片を、掛衿の縫い目の隙間から、襦袢地衿と掛衿の間(掛衿が2種類あるときは掛衿と掛衿の間でもよい)に挿入していくことによって、半衿用の布で掛衿を覆うことができる。直線状の基部は可撓性を有するため、襦袢着用時の衿の湾曲形状にも対応可能である。また、前記差込片は、中央部の差込片を除いて、基部付け根から1〜5mmの位置で、基部に対して20〜50度の角度で、中央部の差込片と反対の方向(衿先方向)に屈曲しているため、湾曲させても、差込スリットや、地衿と掛衿の隙間から外れにくい。また、先端部分が丸みを帯びた形状のため、差込スリットや前記隙間に差し込みやすい。
【0013】
掛衿に差込式半衿を装着した状態では、固定具の基部は半衿用の布にくるみ込まれており、差込片は掛衿と地衿の間に挟まれているため、固定具が外から見えることはなく、外観上は通常の半衿と全く同じに見える。また、固定具が皮膚に直接触れることもないため、肌が弱い人でも安心して用いることができる。
また、固定具の直線状の基部は、衿の根本位置にくるため、衿の根本をすっきりと直線状にととのえる芯材としての役目も果たす。
【0014】
前記帯状の布において、前記差込スリットからなる2つの列の間隔は、中心にかけて狭くなるように形成されており、最も狭い間隔と最も広い間隔の差が10mm〜30mmの範囲であることが好ましい。
【0015】
前記固定具において、前記中央部以外の差込片は、幅8〜15mm、高さ10〜20mmであり、隣接する差込片同士の距離が20〜50mmであることが好ましい。
また、中央部の差込片は、基部に対して略垂直であり、且つ、先端部分が丸みを帯びた形状を有しており、幅8〜15mm、高さ15〜25mmであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、襦袢に半衿を取り付けるための固定具であって、可撓性を有する略直線状の基部と、任意の間隔で前記基部上に連立する差込片とを有し、前記差込片は、中央部の差込片を除いて、基部付け根から1〜5mmの位置で、基部に対して20〜50度の角度で、中央部の差込片から離れる方向に屈曲し、且つ、先端部分が丸みを帯びた形状を有していることを特徴とする固定具に関する。
【0017】
また、本発明は、前記固定具とセットで使用される帯状の布(半衿用の布)であって、長辺縁部それぞれに、前記固定具の差込片を挿入するための差込スリットが、略直線状に配列されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前述した差込式半衿を取り付けるための襦袢であって、襦袢の地衿に、地衿より衿幅が小さい掛衿が取り付けられており、前記地衿の下縁(付け根)から前記掛衿の下縁までの距離が、前記固定具の基部の高さと略同一であり、前記地衿と掛衿の間に、前記差込片を挿入する隙間が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は
(a)前記差込式半衿、
(b)前記襦袢、又は、前記襦袢用の掛衿であって、前記差込片を挿入する隙間を形成するための印が付されている掛衿
を含む和装用セットに関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の差込式半衿によれば、襦袢に縫い付けられた掛衿(半衿や、半衿の土台となる別衿など)の縫い目の隙間に差込片を差し込むだけで取り付けることができ、差込片を抜き取るだけで取り外すことができるため、取り替えが非常に容易である。また、中央部以外の差込片が、略直線状の基部に対して、高さ1〜5mmの位置で衿先方向に20〜50度屈曲しており、先端部分が丸みを帯びているため、帯状の布の差込スリットや、地衿と掛衿の隙間に差し込みやすく、且つ外れにくい。また、襦袢の衿に取り付けた後は、固定具は一切外から見えず、外観上は、通常の半衿そのものと何ら変わりない。差込式半衿が汚れたときは帯状の布を固定具から取り外して洗濯して再度取り付ければよく、色や柄を変えたいときには、この帯状の布自体を取り替えるだけでよい。従来は半衿自体を取り替えていたため、襦袢の衿に縫い付けられた半衿を解いて取り外し、新たに半衿を縫い付け直す必要があったが、本発明の差込式半衿を用いれば、半衿を縫着する手間は不要である。さらに、帯状の布と固定具は一体不可分でないため、固定具が一つあれば布だけ取り替えて使用することができ、経済性にも優れている。また、差込式半衿に用いる布は、差込片に対応する位置に差込スリットを入れるだけで作れるため、使用者自身が気に入った布を簡単な加工で利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の差込式半衿で使用される帯状の布2の大きさは、半衿として通常用いられる布と同じ大きさでよい。例えば、幅が14〜18cm、長さが1m前後(例えば、約90cm〜115cm程度)の略長方形状の布である。帯状の布は、完全な長方形であってもよいが、襦袢の地衿の幅は、背中心(首の真後ろに位置する部分)にかけて幅が少し狭くなるように形成されているため、帯状の布も、背中心にあたる部分にかけて幅がやや狭くなるように形成されていてもよい。例えば、2つの長辺の間隔が中心にかけて徐々に小さくなるように形成された帯状の布を用いることができる。最も狭い幅(背中心における布幅)と最も広い幅(すなわち、布の短辺の長さ)の差は、例えば10〜30mmとすることができる。帯状の布の種類は特に限定されず、半衿用の布と同じ布を用いることができる。帯状の布には、中央部の差込片の差し込み位置が分かるように、中心点を表示しておくことが好ましい。
【0023】
帯状の布の差込スリット6は、布の2つの長辺それぞれ(長手方向に平行な両側)に沿って複数形成される。差込スリット6は、布の長辺縁からそれぞれ5mm〜30mm、特に5mm〜25mm内側に設けられることが好ましい。
また差込スリットが、長辺縁部に略直線状に配列されるとは、完全に一直線状に並んでいる場合だけでなく、多少ジグザグ又は多少湾曲していても、布の長辺にほぼ沿うように配置されている場合を含む意味で用いられる。上述の通り、襦袢の地衿は、首の真後ろ部分にかけて、衿幅がやや狭くなるように形成されているため、差込スリットの列もこれに併せて、2つの列の間隔が中央部にかけてやや狭くなるように形成することが好ましい(
図2参照 w2<w3)。帯状の布が完全な長方形である場合も、差込スリットの列をこのように形成すれば、差込式半衿の衿幅が首の真後ろで最も短くなるため、襦袢の地衿と対応する形になる。w2とw3の差は、10〜30mm程度が好ましく、15〜25mm程度がより好ましい。差込スリットは、差込片を挿入可能なものであればよいが、差込片の差し込み易さと抜けにくさの観点から、差込片の幅と同じかやや大きい(特に0.5〜2mm大きい)ことが好ましい。例えば、スリット長(
図1Aのd2)が9〜16mm、より好ましくは11〜15mmの直線状の切れ目である。また、差込スリットに、ボタンホールのように穴かがりを施してもよい。
また、差込片の間隔(
図1Bのd3)より差込スリットの間隔(
図1Aのd1)が広いと布がたるむため、差込片の間隔d3に比べて当該差込片を挿入する差込スリットの間隔d1が、同じかやや狭い(例えば、d3よりd1が0.5〜3mm程度狭い)ほうがよい。
【0024】
固定具3の略直線状の基部4は、衿の形状に合わせて湾曲することが必須であるため、可撓性を有する必要がある。可撓性の程度は、襦袢着用中や脱ぎ着の際に不便とならない程度であればよい。例えば、プラスチック製(ポリエチレン等)の薄板程度の可撓性があればよい。
帯状の布を掛衿にしっかりと取り付けるために、固定具の全長(すなわち基部の長さ)は60cm以上あることが好ましい。より好ましくは70cm以上、特に好ましくは80cm以上である。他方、掛衿(約1m)や半衿より長いとかえって邪魔になるため、約1m以下が好ましい。特に好ましい基部の長さは、80〜90cmである。基部は完全な直線形状ではなく、多少湾曲した形状でもよい。
【0025】
固定具3の基部4は、差込式半衿の根本を整える芯材ともなるため、基部の高さ(
図1Cのh3)は1mm以上あることが好ましい。好ましい基部の高さは1〜7mmであり、より好ましくは3〜7mm、特に好ましくは4〜6mmである。厚みは1mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましい。
【0026】
中央部以外の差込片5bは、襦袢に取り付けた後の安定性の点から、幅(
図1Cのw1b及び/又はw1c)が8mm〜15mm、高さ(
図1Cのh1b)が10〜20mmの薄板状のものが好ましい。より好ましい幅は>10mm、特に好ましい幅は11〜13mmであり、より好ましい高さは13〜17mmである。また、基部に対する屈曲角度(
図1Cのθ)は、20〜40度がより好ましく、25〜35度が特に好ましい。屈曲角度が大きすぎると(90度により近くなると)、差込片が外れやすくなり、小さすぎると差し込みにくくなる。また、基部から1〜5mmまでは、基部に対して略垂直(90±10度)であり、基部から1〜5mm、より好ましくは1.5〜4.5mm、特に好ましくは2〜4mmの位置(
図1Cのh2)で屈曲させることが好ましい。屈曲方向は、中心部の差込片5aから遠ざかる方向(衿先方向)とする。このように屈曲させることにより、襦袢着用時に固定具の基部4が湾曲しても、差込片5bが掛衿と地衿の隙間にしっかりと固定されて外れにくくなる。また、差込片5bの根本から即斜めにせず、1〜5mmのところで屈曲させ、且つ先端部が丸みを帯びた形状とすることにより、差込スリットや、地衿と掛衿の縫い目の隙間に差し込みやすくなる。なお、本明細書中において、先端部分が丸みを帯びているとは、先端に直線部分が存在しない形状(例えば、差込片の先端が円弧状に形成されている場合)だけでなく、先端部の角がR面取りされたような形状も含む。
【0027】
中央部の差込片5aは、幅(
図1Cのw1a)が8〜15mm、高さ(
図1Cのh1a)が15〜25mmの薄板状のものが好ましい。より好ましい幅は10〜13mmであり、より好ましい高さは17〜23mmである。中央部の差込片は、衿のカーブが小さい背中心付近に位置し、もともと外れにくいため、基部に対して略垂直(90±10度)形状であることが好ましい。このように真っ直ぐな形状とすることにより、差込片5aが芯の役割を果たして、首の真後ろの衿の形がよりきれいに整うという効果が得られる。また、中央部の差込片5aの形状を、それ以外の差込片5bの形状と異ならせることにより、固定具の中心が分かりやすくなるため、固定具を帯状の布に取り付ける際にも、襦袢の衿に取り付ける際にも、正しい位置を把握することができるため、取り付けが容易になる。
差込片5aの先端部分は、上記と同様、丸みを帯びた形状であることが好ましい。
【0028】
本明細書において、中央部の差込片5aは、直線状の基部のほぼ中心点に位置する1つのみでもよく、さらにその両脇の2つを含む3つでもよく、あるいは中心点を挟むように位置する2つの差込片でもよい。
最も好ましい実施形態では、中央部の差込片は、前記中心点付近に位置する1つのみとする。
【0029】
前記差込片5a・5bの厚みはいずれも、衿の厚みに影響しないよう、1mm以下であることが好ましく、0.8mm以下がより好ましい。
また、差し込みやすさの点から、前記差込片はいずれも可撓性を有することが好ましい。好ましい差込片は、可撓性を有する合成樹脂の薄板からなるものであり、例えば、前記略直線状の基部と同じプラスチック材(例えばポリエチレン)を用いて、基部と一体に形成することが好ましい。
差込片は、略直線状の基部4の全体にわたって設けられていることが好ましい。例えば、基部の両端から10〜20mmの位置まで差込片を形成することが好ましい。
【0030】
差込片の間隔(差込片とその隣の差込片の間の距離を指す。
図1Bのd3)は、任意の間隔とすればよいが、広すぎると差込式半衿と掛衿の固定が甘くなり、狭すぎると取り付けるのに手間がかかるため、20〜50mmの間隔(より好ましくは25〜40mm、特に好ましくは25〜35mm)の間隔が好ましい。各差込片の間隔は、全て同一でもよく、場所によって変えてもよいが、全て同一の間隔とすることがより好ましい。
【0031】
本発明では、1つの帯状の布に、2つの固定具を取り付けるが、2つの固定具は同じ形状であることがより好ましい。このように構成することにより、どちらが衿の外側用で、どちらが衿の内側用か、区別する必要がなくなるため、取り付けが容易になる。また、片方が破損した場合の買い換えも楽であり、片方だけが余っていくこともない。
しかしながら、衿の外側用の固定具と、衿の内側用の固定具の形状が異なっていてもよい。この場合は、どちらが外側でどちらが内側か分かるような印を付すことが好ましい。
【0032】
本発明の差込式半衿を襦袢の衿に装着するには、襦袢の地衿と掛衿の間に差込片を差し込むことが必須である。従って、差込片を差し込む為の隙間が、襦袢の地衿に取り付けられた掛衿の下縁に沿って、半衿を取り付ける箇所の全体にわたって存在していることが必要である。通常、襦袢の地衿には、半衿の土台となる別衿(掛衿の一種)が粗い縫い目で絎縫いされているが、前述の通り、本発明の差込片は、幅が8〜15mm程度であることが好ましいため、本発明の差込式半衿を使用する襦袢の地衿には、前記差込片の位置に合わせて、前記差込片の幅より0.5〜3mm(より好ましくは1〜2mm)程度大きい隙間が形成されるように、前記掛衿を縫いつけることが好ましい。
【0033】
前述した差込片の差込口を確保するために、本発明では、あらかじめ地衿と縫い合わせない位置(差込片を挿入する位置)又は地衿と縫い合わせる位置に印をつけた掛衿用の布を用意し、襦袢の地衿に取り付けることが好ましい。前記布には、さらに背中心にあたる位置にも印をつけることが好ましい。このような布を襦袢の掛衿として使用すれば、襦袢の地衿と掛衿に、差込片を差し込むための隙間を確実に形成することができ、さらに、襦袢に取り付けた後も、差込片の挿入位置が分かるため、取り付けが容易になる。
【0034】
また、前記掛衿は、襦袢の地衿に縫い付けた後の衿幅(
図4Aのw4)が、襦袢の地衿の幅(
図4Aのw5)より、基部の高さh3と略同一(両者の差が±1.5m以内、特に±1mm以内が好ましい)だけ短くなるように、掛衿を取り付けることが好ましい(
図4参照:w5−w4=d4≒
図1Cのh3)。
本発明の差込式半衿を掛衿に取付けた状態では、掛衿の下縁に基部の上端が位置することになるため、このように掛衿の下縁を地衿の下縁とずらすことにより、本発明の差込式半衿を、襦袢地衿の衿幅からはみ出さないように取り付けることが可能になる。
また、前記掛衿は、襦袢の地衿の形状と同様、背中心の衿幅が衿先側の衿幅よりやや狭くなるように取り付けることが好ましい。
【0035】
なお、本発明では、掛衿の付け根(下縁)に差込片を差し込むための隙間があればよいため、例えば、襦袢と掛衿のそれぞれにボタンやホック等の係合具を設けることによって、襦袢に取り付ける構成となっている掛衿であっても、差込片を差し込める隙間があるものであれば、本発明の差込式半衿を使用できる。
【0036】
また、本発明は、(a)前記固定具、(b)前記帯状の布(半衿用の布)、(c)前記掛衿又は前記掛衿が取り付けられた襦袢、を含む和装用セットに関する。一例として、前記固定具、前記帯状の布、前記掛衿を含む和装用セットが挙げられる。
【0037】
以下、実施例により本発明にかかる差込式半衿をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は、本発明にかかる差込式半衿の一実施例を示す図であって、Aは帯状の布2、Bは固定具3である(固定具は2つ使用するが、同じ形状であるため、一つのみ図示する)。帯状の布2は、幅が約16cm、長さ約1mの長方形状の布からなり、その2つの長辺沿いに、長さ(d2)が約13mmの差込スリット6がほぼ一直線上に配列されている。より具体的には、
図2に示すように、一点鎖線で示す中心線上に差込スリットが一つ設けられ、その両側に、約30mmの間隔(差込スリットの端から隣の差込スリットの端までの距離d1)で、差込スリット6が複数形成されている(合計で21個)。なお、
図2(帯状の布の全体図)に示すように、スリットの列は完全な直線ではなく、中心線付近で2つの列の間隔がわずかに狭くなるように、やや湾曲した線上に配置されている(w3−w2=10〜20mm)。そのため、中心線付近の差込スリットは、長辺の縁から15〜20mm程度内側に形成されているが、中心線から最も遠い差込スリットは、長辺の縁から約10mm内側の位置に形成されている。また、布の裏面側には、中心位置を示すための印Xが形成されている。
【0039】
図1Bに示すように、固定具は、略直線状の基部4(高さh3が5mm、長さは880mm)と、基部4に固着された21個の差込片5とからなる(図では、中心部の差込片を5a、それ以外の差込片を5bとする)。本実施例において、略直線状の基部4と差込片5は、厚み0.5〜0.6mmのポリエチレンの薄板から一体に形成されており、可撓性を有する。
図1Cは固定具の拡大図である。中央部の差込片5aは、幅(w1a)が12mm、高さ(h1a)が20mmであり、中央部以外の差込片5bは、幅(w1b及びw1c)が12mmであり、基部との付け根から高さh2(2〜3mm)までは基部に垂直に形成され、h2の位置で、基部に対し角度(θ)が30度となるように屈曲している。差込片5bの高さ(h1b)は15mmである。差込片と差込片の間隔(差込片の端から隣の差込片までの距離d3)は、いずれも30mmである。基部の両端から、端部に最も近い差込片の距離は、それぞれ15mmである。
図1Bから明らかなように、中央部以外の差込片5bはいずれも、中央部の差込片5aから離れる方向に屈曲するため、中心線より左側の差込片5bは左方向に、中心線より右側の差込片5bは右方向に曲げられている。差込片5a及び5bはいずれも、先端部が円弧に近い形状に形成されている。
【0040】
本発明の差込式半衿1を使用する際には、
図3Aに示すように、帯状の布2の裏面側に、固定具を、中心を合わせて置き、差込片先端が布の外側に出る向きに、各差込片5(5a及び5b)を各差込スリット6に挿入していく(すなわち、基部4は布2の裏面に、差込片5は布2の表面に位置する)。その後、
図3Bに示すように、帯状の布2の長辺縁部を、直線状の基部4をくるみ込むように基部ごと折り返し、
図3Cに示すように、幅が略半分になるように二つ折りにした状態で(
図3Cは二つ折りした状態を側面側から見た図である)、襦袢に縫い付けられた掛衿7の上に被せて、各差込片5を、縫い目の隙間から、襦袢地衿8と掛衿7の間に挿入していく。このようにすることによって、帯状の布2で掛衿7をしっかりと覆うことができる。差込片5は、可撓性を有する素材から成り、且つ、先端が丸みを帯びた形状であるため、屈曲している差込片5bであっても、差込スリット6、及び、掛衿と地衿の隙間に挿入しやすい。また、挿入後は屈曲部分が引っかかるため、襦袢着用時に固定具が湾曲しても、差込片5が、差込スリット6や掛衿の縫い目の隙間から外れにくい。
【0041】
なお、襦袢には、掛衿があらかじめ取り付けられている必要がある。市販されている襦袢には、半衿等の掛衿があらかじめ縫い付けられているものもあるが、通常、襦袢に縫い付けられている掛衿は、縫い目の隙間が5mm〜10mm程度の粗さで縫い付けられており、本発明の実施例の差込片(幅12mm)を差し込むには隙間が狭い。そのため、本実施例では、襦袢の地衿に掛衿を縫い付ける際に、固定具の差込片5を差し込む隙間を確保する必要がある。このような掛衿としては、あらかじめ縫わない位置又は縫う位置に印をつけた帯状の布を用意しておくことが好ましい。
図4Aに、このような印付きの掛衿7を襦袢の地衿8に縫い付けた状態を示す。
図4Aに示す線状の印Yが、縫ってはいけない位置(すなわち、差込片を差し込む位置)を示す。Xは掛衿の背中心を示す印である。このような掛衿を襦袢に縫い付けておくことにより、差込片を差し込む隙間を適切な位置に確保することができ、且つ、差込片を差し込む際の目印にもなるため、半衿の取り付けが容易になる。また、通常の場合、掛衿7の下縁は地衿8の下縁とほぼ一致しているが、本実施例では、固定具の基部の高さが5mmあるため、襦袢の地衿の下縁から、掛衿の下縁までの距離(
図4Aのd4)も5mm程度とすることが好ましい。この理由は、本発明の差込式半衿を使用すると、掛衿の下縁に固定具の直線状の基部の上端が位置することになるため、差込式半衿を装着した後の衿幅は、掛衿の衿幅w4と固定具の基部の高さh3の合計とほぼ等しくなるためである。したがって、本発明では、掛衿の下縁が襦袢の地衿の下縁より、基部の高さh3の分だけ上方に位置するように、襦袢の地衿に掛衿を取り付けることが好ましい。これにより、差込式半衿を装着した後の衿幅が、襦袢の地衿の衿幅とほぼ等しくなるため、衿幅が通常より大きくなる等の不都合を防ぐことができる。
【0042】
図4Bは、差込式半衿を掛衿に装着した襦袢を内側(裏側)から見た図であり、
図4Cは、衿部分の拡大断面図である。掛衿7に差込式半衿を装着した状態では、固定具の基部4及び差込片5は外から見えることがなく、通常の半衿と全く同じ外観を呈する。また、肌に固定具が触れることもない。
図4A・Bから明らかなように、固定具の基部4は、掛衿7の下縁(付け根)の真下に位置するため、衿の根本の線がすっきりと整う。
なお、本発明の差込式半衿を付けた際も、通常どおり、掛衿7と襦袢の地衿8の間に衿芯を入れることが可能である。
【0043】
図5は、本発明の差込式半衿を掛衿に装着した状態で襦袢を着用した図を示す。略直線状の基部4は可撓性を有するため、衿の湾曲形状にも自在に対応可能である。また、中央部以外の差込片5bが衿先方向に屈曲しているため、襦袢着用時に首回りに沿って固定具が湾曲しても差込片が外れにくい。また、背中心に真っ直ぐなに差込片5aがあるため、首の真後ろに芯が通った状態となり、衿の形がきれいに整う。
【解決手段】襦袢の掛衿に被せて用いる差込式半衿であって、帯状の布(2)と、その長辺縁部をそれぞれ掛衿に固定するための2つの固定具(3)とからなり、前記固定具は、可撓性を有する略直線状の基部(4)と、任意の間隔で前記基部上に連立する差込片(5a・5b)を有しており、前記差込片は、中央部の差込片(5a)を除いて、基部付け根から1〜5mmの位置(h2)で、基部に対して20〜50度の角度(θ)で、中央部の差込片(5a)から離れる方向に屈曲し、且つ、先端部分が丸みを帯びた形状を有しており、前記帯状の布(2)は、長辺縁部それぞれに、前記差込片(5a・5b)を挿入可能な差込スリット(6)が略直線状に配列されていることを特徴とする。