特許第6166502号(P6166502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6166502
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】表示装置の光学フィルムの選定方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20170710BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170710BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20170710BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20170710BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335
   G09F9/00 313
   H05B33/02
   H05B33/14 A
【請求項の数】1
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-514378(P2017-514378)
(86)(22)【出願日】2017年1月6日
(86)【国際出願番号】JP2017000229
【審査請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-2920(P2016-2920)
(32)【優先日】2016年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591061046
【氏名又は名称】小池 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】黒田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】小池 康博
【審査官】 後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−129893(JP,A)
【文献】 特開2015−207377(JP,A)
【文献】 [online], ブラビアの高画質,日本,2014年,[検索日2017.02.28], Retrieved from the Internet,URL,http://www.sony.jp/bravia/featured/picture.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335− 1/13363
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子の光出射面側の面上に、偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置の光学フィルムの選定方法であって、光学フィルムに入射する光が下記条件1−1を満たす場合に、下記条件2−1を満たす光学フィルムを選定する、表示装置の光学フィルムの選定方法。
<条件1−1>
前記光学フィルムXに表示素子側から入射する光のうち、前記光学フィルムXに対して垂直方向に入射する光をLとする。前記Lの強度を1nmごとに測定する。青の波長域を400nm以上500nm未満、緑の波長域を500nm以上600nm未満、赤の波長域を600nm以上780nm以下とする。前記Lの青の波長域の最大強度をBmax、前記Lの緑の波長域の最大強度をGmax、前記Lの赤の波長域の最大強度をRmaxとする。
前記Bmaxを示す波長をLλ、前記Gmaxを示す波長をLλ、前記Rmaxを示す波長をLλとする。
前記Bmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+α、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−α、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+α、前記Rmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−αとする。
λ、Lλ、Lλ、+α、−α、+α及び−αが、以下(1)〜(4)の関係を満たす。
+α<Lλ (1)
λ<−α (2)
+α<Lλ (3)
λ<−α (4)
<条件2−1>
前記光学フィルムXの光出射面側から光学フィルムXの垂直方向に出光する光であって、前記偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光をLとする。前記Lの強度を1nmごとに測定する。前記Lの分光スペクトルの傾きが負から正に変化する波長をボトム波長、前記Lの分光スペクトルの傾きが正から負に切り替わる波長をピーク波長とする。
前記Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−β、前記Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+βとする。
−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域に、前記ボトム波長及び前記ピーク波長をそれぞれ一以上有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、及び表示装置の光学フィルムの選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表される表示装置は、輝度、解像度、色域等の性能が急速に進歩している。そして、これら性能の進歩に比例して、携帯用情報端末、カーナビゲーションシステム等の屋外での使用を前提とした表示装置が増加している。
日差しの強い屋外等の環境では、眩しさを軽減するために偏光機能を備えたサングラス(以下、「偏光サングラス」と称する。)をかけた状態で表示装置を観察する場合がある。
【0003】
表示装置が偏光板を含む場合、表示装置の偏光の吸収軸と、偏光サングラスの偏光の吸収軸とが直交すると画面が暗くなり見えなくなる(以下、「ブラックアウト」と称する。)という問題がある。
前記問題を解決するために、特許文献1の手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−107198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、バックライト光源として白色発光ダイオード(白色LED)を用いた液晶表示装置において、偏光板の視認側に3000〜30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを特定の角度で配置することを特徴とするものである。特許文献1の手段ではブラックアウトの問題は解消できる。
また、特許文献1では、バックライト光源として白色発光ダイオード(白色LED)を用いた液晶表示装置において、リタデーション値に特有の干渉色(ニジムラ)を防止している。
【0006】
一方、近年、輝度、解像度、色域等を向上するために、表示装置の光源及び表示素子が多様化している。例えば、液晶表示装置のバックライトの光源としては、特許文献1で用いている白色LEDが多く用いられているが、近年、バックライトの光源として量子ドットを用いた液晶表示装置が提案され始めている。また、現在の表示素子の主流は液晶表示素子であるが、近年、有機EL素子の実用化が広がりつつある。
これら近年の表示装置を偏光サングラスを通して観察した場合、前記問題(ブラックアウト及びニジムラ)を生じなくても、色の再現性に問題を生じる場合があった。
【0007】
本発明は、色の再現性が良好な表示装置、表示装置の光学シートの選定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するため、従来の主流であった白色LEDを用いた液晶表示装置と、近年開発が進められている表示装置との違いに着目した。その結果、近年の表示装置は、白色LEDを用いた液晶表示装置に比べてRGBの分光スペクトルがシャープであり、色域(再現できる色の幅)が広いこと、色域が広いがゆえに、リタデーションを有する光学フィルム及び偏光の吸収軸を通過することによって色の再現性に問題を生じやすいことを見出した。
そして、本発明者らはさらに検討した結果、色域が広い表示装置においては、波長が長くなるほど色の再現性の問題が生じやすいこと、及び特許文献1のように光源の分光スペクトルを考慮したのみでは該問題を解消できず、表示素子の分光スペクトルを考慮することが必要となることを見出し、前記問題を解決するに至った。
【0009】
本発明は、以下の表示装置、及び表示装置の光学フィルムの選定方法を提供する。
[1]表示素子の光出射面側の面上に、偏光子a及び光学フィルムXを有し、下記条件1−1及び条件2−1を満たす表示装置。
<条件1−1>
前記光学フィルムXに表示素子側から入射する光のうち、前記光学フィルムXに対して垂直方向に入射する光をLとする。前記Lの強度を1nmごとに測定する。青の波長域を400nm以上500nm未満、緑の波長域を500nm以上600nm未満、赤の波長域を600nm以上780nm以下とする。前記Lの青の波長域の最大強度をBmax、前記Lの緑の波長域の最大強度をGmax、前記Lの赤の波長域の最大強度をRmaxとする。
前記Bmaxを示す波長をLλ、前記Gmaxを示す波長をLλ、前記Rmaxを示す波長をLλとする。
前記Bmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+α、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−α、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+α、前記Rmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−αとする。
λ、Lλ、Lλ、+α、−α、+α及び−αが、以下(1)〜(4)の関係を満たす。
+α<Lλ (1)
λ<−α (2)
+α<Lλ (3)
λ<−α (4)
<条件2−1>
前記光学フィルムXの光出射面側から光学フィルムXの垂直方向に出光する光であって、前記偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光をLとする。前記Lの強度を1nmごとに測定する。前記Lの分光スペクトルの傾きが負から正に変化する波長をボトム波長、前記Lの分光スペクトルの傾きが正から負に切り替わる波長をピーク波長とする。
前記Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−β、前記Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+βとする。
−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域に、前記ボトム波長及び前記ピーク波長をそれぞれ一以上有する。
【0010】
[2]表示素子の光出射面側の面上に、偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置の光学フィルムの選定方法であって、光学フィルムに入射する光が上記条件1−1を満たす場合に、上記条件2−1を満たす光学フィルムを選定する、表示装置の光学フィルムの選定方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表示装置は、偏光サングラスを通して観察した際に、色の再現性が低下することを抑制できる。また、本発明の表示装置の光学フィルムの選定方法は、偏光サングラスを通して観察した際の色の再現性の低下を抑制できる光学フィルムを効率よく選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の表示装置の一実施形態を示す断面図である。
図2】マイクロキャビティ構造を備えた三色独立方式の有機EL表示素子上に、偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、光学フィルムに表示素子側から入射する光(L)の分光スペクトルの一例である。
図3】表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの光源が冷陰極蛍光管(CCFL)であり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、光学フィルムに表示素子側から入射する光(L)の分光スペクトルの一例である。
図4】表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの光源が白色LEDであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、光学フィルムに表示素子側から入射する光(L)の分光スペクトルの一例である。
図5】表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの一次光源が青色LEDであり、二次光源が量子ドットであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、光学フィルムに表示素子側から入射する光(L)の分光スペクトルの一例である。
図6】マイクロキャビティ構造を備えた三色独立方式の有機EL表示素子上に、偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置の光学フィルムから出射する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)の分光スペクトルの一例である。
図7】表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの光源が冷陰極蛍光管(CCFL)であり、液晶表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置の光学フィルムから出射する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)の分光スペクトルの一例である。
図8】表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの光源が白色LEDであり、液晶表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置の光学フィルムから出射する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)の分光スペクトルの一例である。
図9】表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの一次光源が青色LEDであり、二次光源が量子ドットであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置の光学フィルムから出射する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)の分光スペクトルの一例である。
図10図2の分光スペクトルと図6の分光スペクトルとを重ね合わせた図である。
図11図3の分光スペクトルと図7の分光スペクトルとを重ね合わせた図である。
図12図4の分光スペクトルと図8の分光スペクトルとを重ね合わせた図である。
図13図5の分光スペクトルと図9の分光スペクトルとを重ね合わせた図である。
図14】表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの一次光源が青色LEDであり、二次光源が量子ドットであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、光学フィルムに表示素子側から入射する光(L)の分光スペクトルの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
[表示装置]
本発明の表示装置は、表示素子の光出射面側の面上に、偏光子a及び光学フィルムXを有し、下記条件1−1及び条件2−1を満たすものである。
【0014】
<条件1−1>
前記光学フィルムXに表示素子側から入射する光のうち、前記光学フィルムXに対して垂直方向に入射する光をLとする。前記Lの強度を1nmごとに測定する。青の波長域を400nm以上500nm未満、緑の波長域を500nm以上600nm未満、赤の波長域を600nm以上780nm以下とする。前記Lの青の波長域の最大強度をBmax、前記Lの緑の波長域の最大強度をGmax、前記Lの赤の波長域の最大強度をRmaxとする。
前記Bmaxを示す波長をLλ、前記Gmaxを示す波長をLλ、前記Rmaxを示す波長をLλとする。
前記Bmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+α、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−α、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+α、前記Rmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−αとする。
λ、Lλ、Lλ、+α、−α、+α及び−αが、以下(1)〜(4)の関係を満たす。
+α<Lλ (1)
λ<−α (2)
+α<Lλ (3)
λ<−α (4)
【0015】
<条件2−1>
前記光学フィルムXの光出射面側から光学フィルムXの垂直方向に出光する光であって、前記偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光をLとする。前記Lの強度を1nmごとに測定する。前記Lの分光スペクトルの傾きが負から正に変化する波長をボトム波長、前記Lの分光スペクトルの傾きが正から負に切り替わる波長をピーク波長とする。
前記Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−β、前記Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+βとする。
−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域に、前記ボトム波長及び前記ピーク波長をそれぞれ一以上有する。
【0016】
図1は、本発明の表示装置の実施の形態を示す断面図である。図1の表示装置(100)は、表示素子(10)の光出射面上に、偏光子a(40)、光学フィルムX(20)を有している。図1の表示装置(100)では、表示素子として有機EL表示素子(10a)を用いている。また、図1の表示装置(100)は、偏光子a(40)と光学フィルムX(20)との間に、その他の光学フィルム(30)を配置している。
なお、図1では、その他の光学フィルム(30)を、偏光子a(40)と光学フィルムX(20)との間に配置しているが、その他の光学フィルム(30)の配置箇所は、表示素子と偏光子aとの間や、光学フィルムXよりも観察者側であってもよい。また、表示装置の表示素子が液晶表示素子である場合、液晶表示素子の背面には図示しないバックライトが必要である。
【0017】
(条件1−1)
条件1−1は、表示装置のRGB(赤、緑、青)の分光スペクトルがシャープであることを示す条件である。条件1−1について、図を引用してより具体的に説明する。
【0018】
図2は、マイクロキャビティ構造を備えた三色独立方式の有機EL表示素子上に、偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、表示素子を白表示させた際に、光学フィルムに表示素子側から垂直方向に入射する光(L)の強度を1nmごとに測定した際の分光スペクトルの一例である。なお、図2の分光スペクトルは最大強度を100として各波長の強度を規格化したものである。
図2中、Bmaxは青の波長域(400nm以上500nm未満)における最大強度、Gmaxは緑の波長域(500nm以上600nm未満)における最大強度、Rmaxは赤の波長域(600nm以上780nm以下)における最大強度を示している。
また、図2中、LλはBmaxを示す波長、LλはGmaxを示す波長、LλはRmaxを示す波長を示している。
また、図2中、+αは、Bmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を示している。−αは、Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を示している。+αは、Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を示している。−αは、Rmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を示している。
図2の分光スペクトルはRGBのスペクトルがいずれもシャープであり、Lλ、Lλ、Lλ、+α、−α、+α及び−αが、以下(1)〜(4)の関係を満たしている。
+α<Lλ (1)
λ<−α (2)
+α<Lλ (3)
λ<−α (4)
【0019】
図3は、表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの光源が冷陰極蛍光管(CCFL)であり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、表示素子を白表示させた際に、光学フィルムに表示素子側から垂直方向に入射する光(L)の強度を1nmごとに測定した際の分光スペクトルの一例である。図3もRGBの分光スペクトルがいずれもシャープであり、前記(1)〜(4)の関係を満たしている。なお、図3の分光スペクトルは最大強度を100として各波長の強度を規格化したものである。
【0020】
図4は、表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの光源が白色LEDであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、表示素子を白表示させた際に、光学フィルムに表示素子側から垂直方向に入射する光(L)の分光スペクトルの一例である。図4は、B(青)の分光スペクトルがシャープであり、かつG(緑)の分光スペクトルが比較的シャープであるため、前記(1)〜(3)の関係を満たすものの、R(赤)の分光スペクトルがブロードであるため、前記(4)の関係を満たしていない。なお、図4の分光スペクトルは最大強度を100として各波長の強度を規格化したものである。
【0021】
図5は、表示素子が液晶表示素子であり、バックライトの一次光源が青色LEDであり、二次光源が量子ドットであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置において、表示素子を白表示させた際に、光学フィルムに表示素子側から垂直方向に入射する光(L)の強度を1nmごとに測定した際の分光スペクトルの一例である。図5もRGBの分光スペクトルがいずれもシャープであり、前記(1)〜(4)の関係を満たしている。なお、図5の分光スペクトルは最大強度を100として各波長の強度を規格化したものである。
【0022】
次に、RGBの分光スペクトルと、色域の広さとの関係を説明する。
RGBの三色の混合によって再現できる色域は、CIE−xy色度図上の三角形で示される。前記三角形は、RGB各色の頂点座標を定め、各頂点を結ぶことにより形成される。
RGBの分光スペクトルがそれぞれシャープであると、CIE−xy色度図において、Rの頂点座標はxの値が大きくyの値が小さくなり、Gの頂点座標はxの値が小さくyの値が大きくなり、Bの頂点座標はxの値が小さくyの値が小さくなる。つまり、RGBの分光スペクトルがそれぞれシャープであると、CIE−xy色度図においてRGB各色の頂点座標を結んだ三角形の面積が大きくなり、再現できる色域の幅が広くなる。なお、色域の幅が広くなることは、動画の迫力、臨場感の向上につながる。
色域を表す規格としては、「ITU−R勧告 BT.2020(以下、「BT.2020」と称する。)」等が挙げられる。ITU−Rは、「International Telecommunication Union - Radiocommunication Sector(国際電気通信連合 無線通信部門)」の略称であり、ITU−R勧告 BT.2020は、スーパーハイビジョンの色域の国際規格である。下記式で表されるCIE−xy色度図に基づくBT.2020のカバー率が後述する範囲であると、動画の迫力及び臨場感を向上しやすくできる。
<BT.2020のカバー率を表す式>
[LのCIE−xy色度図の面積のうち、BT.2020のCIE−xy色度図の面積と重複する面積/BT.2020のCIE−xy色度図の面積]×100(%)
【0023】
次に、色の再現性の問題について説明する。
条件1−1を満たすような色域が広い表示装置においては、偏光サングラスを通して画像を観察した場合に、色の再現性の問題(特に、赤を原因とする色の再現性の問題)を生じやすい。この原因は、光学フィルムのリタデーション値と、複屈折率の波長依存性の影響により、Lの分光スペクトルの強度の変化の周期が大きくなるためと考えられる。
図6〜9は、図2〜5の分光スペクトルを有するLをリタデーション値:11,000nmの光学フィルムに入射させ、光学フィルムの光出射面側から光学フィルムの垂直方向に出光する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)の分光スペクトルである。Lの分光スペクトルは、偏光サングラスを通して視認される分光スペクトルとみなすことができる。図6〜9のLの分光スペクトルを見ると、波長が大きくなるにつれて、Lの分光スペクトルの強度の変化の周期が大きくなっている。なお、図6〜9のLの分光スペクトルは、Lの分光スペクトルの最大強度を100として各波長の強度を規格化したものである。また、図6〜9のLはP偏光(光学フィルムXに対して鉛直方向の偏光)の光である。
【0024】
図10は、図2図6とを重ねたもの、図11は、図3図7とを重ねたもの、図12は、図4図8とを重ねたもの、図13図5図9とを重ねたものである。
図12のLは条件1−1を満たさないものである。図12では、Lの分光スペクトルの中に、Lの分光スペクトルの多くが入り込んでいる。つまり、図12のように、Lの分光スペクトルがシャープでないものは、色域は狭いものの、Lの分光スペクトル及びLの分光スペクトルに大きな差が生じにくいため、色の再現性の問題が生じにくい。
一方、図10図11及び図13のように、Lの分光スペクトルがシャープであるものは、Lの分光スペクトルの中に、Lの分光スペクトルが入り込みにくくなり、色の再現性の問題が生じやすい。特に、赤(R)の波長域において、Lの分光スペクトルの中に、Lの分光スペクトルが入り込みにくくなる。この原因は、光学フィルムのリタデーション値、及び複屈折率の波長依存性等の影響により、Lの分光スペクトルの強度の変化の周期が波長の増加に伴い大きくなるためである。
【0025】
本発明において、L及びLの分光スペクトルは、表示素子を白表示させた際の分光スペクトルとすることが好ましい。これらの分光スペクトルは、分光光度計を用いて測定することができる。測定の際、分光光度計の受光器は表示装置の光出射面に対して垂直となるように設置し、視野角は1度とする。また、測定の対象とする光は、表示装置の有効表示領域の中心を通る光とすることが好ましい。分光スペクトルは、例えば、コニカミノルタ社製の分光放射輝度計CS−2000で測定できる。
また、BT.2020のカバー率を算出する際に必要となる「LのCIE−xy色度図の面積」は、赤(R)表示、緑(G)表示、及び青(B)表示の際のCIE−Yxy表色系のx値及びy値をそれぞれ測定し、該測定結果から得られた「赤(R)の頂点座標」、「緑(G)の頂点座標」及び「青(B)の頂点座標」から算出できる。CIE−Yxy表色系のx値及びy値は、例えば、コニカミノルタ社製の分光放射輝度計CS−2000で測定できる。
【0026】
(条件2−1)
条件2−1は、色の再現性の問題を生じさせないための条件を示している。
なお、条件2−1において、「偏光子b」は、実質的に「偏光サングラスの偏光子」を意図したものである。つまり、条件2において、「光学フィルムXの垂直方向に出光する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)」とは、「光学フィルムXの垂直方向に出光する光であって、偏光サングラスの偏光子を通過した光(偏光サングラスを通して人間が視認する光)」を意図している。
また、条件2−1において、「−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域」と規定しているのは、600nm未満又は780nm超の波長域については、−β以上+β以下の波長域であっても、ボトム波長及びピーク波長をカウントしないことを意味している。
【0027】
図10の実線は図2に相当し、図10の破線は図6に相当している。
図10中、−βは、Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を示している。また、図10中、+βは、Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を示している。
の分光スペクトルの傾きが負から正に変化する波長をボトム波長、Lの分光スペクトルの傾きが正から負に切り替わる波長をピーク波長とした場合、図10の破線は、−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域に、ボトム波長及びピーク波長をそれぞれ一以上有しており、条件2−1を満たしている。
【0028】
条件2−1を満たす場合、Lの赤(R)の最大強度近傍の山の中に、Lの赤(R)の波長域の山が1つ以上入ることを意味している。つまり、条件2−1を満たす場合、Lの赤(R)の波長域の分光スペクトルと、Lの赤(R)の波長域の分光スペクトルとの差がつきにくくなり、赤(R)を原因とした色の再現性の問題を抑制することができる。
一方、条件2−1を満たさないことは、Lの赤(R)の最大強度近傍の山の中に、Lの赤(R)の波長域の山が1つも入らないことを意味している。このため、条件2−1を満たさない場合、赤(R)を原因として色の再現性が低下してしまう。
の赤(R)の波長域は、人間の視感度が緑(G)に次いで高い一方で、リタデーションの波長分散性により、分光スペクトルの周期が長くなる。このため、Lの分光スペクトルがシャープである場合、通常の設計では、条件2−1を満たすことができず、人間の視感度が高い赤(R)を原因として色の再現性が低下してしまう。本発明は、リタデーションの波長分散性(特に、複屈折率の波長依存性が影響したリタデーションの波長分散性)を考慮して、色の再現性の低下の抑制を可能としたものである。
なお、従来主流であったバックライトの光源として白色LEDを用いた液晶表示装置は、図4に示すようにLの赤(R)の分光スペクトルがブロードであるため、Lの赤(R)の最大強度近傍の山の中に、Lの赤(R)の波長域の山が容易に入ることができる。つまり、偏光サングラスを通して観察した際の赤(R)を原因とする色の再現性の低下は、従来の主流であった白色LEDを用いた液晶表示装置では起こりえない課題である。
【0029】
条件2−1において、Lは偏光しており、P偏光であってもよいし、S偏光であってもよい。なお、通常の偏光サングラスはS偏光をカットするものが多い。このため、LがP偏光である場合に条件2−1を満たすことが好ましい。
【0030】
条件2−1では、−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域において、前記ボトム波長及び前記ピーク波長をそれぞれ二以上有することが好ましい。
【0031】
また、本発明の表示装置は、色の再現性の問題をより抑制するために、以下の条件2−2〜2−4の一以上を満たすことが好ましい。条件2−2〜2−4の一以上を満たすことにより、赤(R)を原因とする色の再現性の低下をより抑制できる。
【0032】
<条件2−2>
0.40≦[−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域における前記Lの強度の総和/−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域における前記Lの強度の総和]
条件2−2は、0.45≦右辺を満たすことがより好ましく、0.47≦右辺を満たすことがさらに好ましい。
なお、条件2−2において、「−β以上+β以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域」と規定しているのは、600nm未満又は780nm超の波長域については、−β以上+β以下の波長域であっても、強度の総和の対象外であることを意味している。
条件2−2及び後述する条件2−4において、L及びLの強度の総和は、偏光子aの偏光子の吸収軸(直線偏光の振動方向)と光学フィルムXの遅相軸とのなす角度θを45度として算出することが好ましい。
【0033】
<条件2−3>
maxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−α、Rmaxの1/2以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+αとする。
−α以上+α以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域に、前記Lのボトム波長及び前記Lのピーク波長をそれぞれ一以上有する。
なお、条件2−3において、「−α以上+α以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域」と規定しているのは、600nm未満又は780nm超の波長域については、−α以上+α以下の波長域であっても、ボトム波長及びピーク波長をカウントしないことを意味している。
【0034】
条件2−3では、−α以上+α以下の波長域の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域において、前記ボトム波長及び前記ピーク波長をそれぞれ二以上有することがより好ましい。
【0035】
<条件2−4>
0.40≦[−α以上+α以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域における前記Lの強度の総和/−α以上+α以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域における前記Lの強度の総和]
条件2−4は、0.45≦右辺を満たすことがより好ましく、0.47≦右辺を満たすことがさらに好ましい。
なお、条件2−4において、「−α以上+α以下の波長域であって、かつ600nm以上780nm以下の波長域」と規定しているのは、600nm未満又は780nm超の波長域については、−α以上+α以下の波長域であっても、強度の総和の対象外であることを意味している。
【0036】
条件2−1〜2−4は、Lの赤(R)の波長域における条件である。このため、Lの緑(G)及び青(B)の波長域においても、条件2−1〜2−4と同様の条件を満たすことが好ましい。なお、上述したように、光学フィルムのリタデーション値、及び複屈折率の波長依存性等の影響により、波長が短くなればなるほど分光スペクトルの周期は短くなるため、通常、条件2−1〜2−4を満たす場合には、緑(G)及び青(B)の波長域においても同様の条件を満たすことになる。
【0037】
(Lの好適な態様)
上述したように、本発明の表示装置は、条件1−1(Lの分光スペクトルがシャープ)を満たすために、通常の設計では色の再現性に問題を生じやすいものの、条件2−1を満たすことによって、色の再現性の問題を抑制している。
また、本発明の表示装置は、Lの分光スペクトルが極めてシャープであっても、条件2−1を満たせば色の再現性の問題を抑制することができる。近年、色域を広げるため、Lの分光スペクトルが極めてシャープとなる表示装置の開発が進められている。本発明の表示装置は、Lの分光スペクトルが極めてシャープである表示装置においても、色の再現性の問題を抑制できる点で好適である。
例えば、本発明の表示装置は、Lの分光スペクトルが以下の条件1−2〜条件1−5の一以上を満たす表示装置(Lの分光スペクトルが極めてシャープであり、色域が極めて広い表示装置)に対して、色の再現性の問題を抑制できる点で好適である。条件1−1〜1−4は主として色純度を高めることによる色域の拡大、条件1−5は主として明るさを考慮した色域の拡大に寄与している。
なお、条件1−2を満たすことで、ニジムラも抑制しやすくなる。
【0038】
<条件1−2>
条件1−1の測定で得たLの分光スペクトルに基づき、青の波長域における分光スペクトルの強度の平均値BAve、緑の波長域における分光スペクトルの強度の平均値GAve、赤の波長域における分光スペクトルの強度の平均値RAveを算出する。青の波長域においてLの強度がBAveを連続して超える波長域をB、緑の波長域においてLの強度がGAveを連続して超える波長域をG、赤の波長域においてLの強度がRAveを連続して超える波長域をRとする。B、G及びRを示す波長域が何れも一つである。
【0039】
図2図4及び図5の分光スペクトルは、B、G及びRを示す波長域が何れも一つであり条件1−2を満たしている。一方、図3の分光スペクトルは、B、G及びを示す波長域が二つあり、条件1−2を満たさない。
【0040】
<条件1−3>
前記+α、前記−α、前記+α及び前記−αが、以下(5)〜(6)の関係を満たす。
+α<−α (5)
+α<−α (6)
【0041】
図2図3及び図5の分光スペクトルは(5)及び(6)の関係を満たし、条件1−3を満たしている。一方、図4の分光スペクトルは(6)の関係を満たさず、条件1−3を満たさない。
【0042】
<条件1−4>
前記Bmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+β、前記Gmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−β、前記Gmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのプラス方向側に位置する最小波長を+β、前記Rmaxの1/3以下の強度を示す波長であってLλのマイナス方向側に位置する最大波長を−βとする。
前記+β、前記−β、前記+β及び前記−βが、以下(7)〜(8)の関係を満たす。
+β<−β (7)
+β<−β (8)
【0043】
図2図3及び図5の分光スペクトルは何れも(7)及び(8)の関係を満たし、条件1−4を満たしている。一方、図4の分光スペクトルは(8)の関係を満たさず、条件1−4を満たしていない。
【0044】
<条件1−5>
前記Bmax、前記Gmax及び前記Rmaxのうちの最大強度をL1maxとする。Bmax/L1max、Gmax/L1max及びRmax/L1maxがそれぞれ0.27以上。
【0045】
図2図3及び図5の分光スペクトルは、Bmax/L1max、Gmax/L1max及びRmax/L1maxがそれぞれ0.27以上であり、条件1−5を満たしている。一方、図4の分光スペクトルは、Rmax/L1maxがそれぞれ0.27未満であり、条件1−5を満たしていない。
条件1−5では、Bmax/L1max、Gmax/L1max及びRmax/L1maxは、それぞれ0.30以上であることがより好ましい。
【0046】
なお、色域を広げる観点からはLの分光スペクトルはシャープであることが好ましい一方で、条件2−1を満たしやすくする観点からは、Lの分光スペクトルは極端にシャープでないことが好ましい。このため、前記+βと、前記−βとの差[+β−(−β)]は、15〜90nmであることが好ましく、30〜85nmであることがより好ましく、50〜80nmであることがさらに好ましい。
また、色域を広げる観点、及び条件2−3を満たしやすくする観点のバランスから、前記+αと、前記−αとの差[+α−(−α)]は、10〜70nmであることが好ましく、20〜60nmであることがより好ましく、30〜55nmであることがさらに好ましい。
【0047】
の分光スペクトルが極めてシャープである表示装置としては、三色独立方式の有機EL表示装置、バックライトに量子ドットを用いた液晶表示装置等が挙げられる。
【0048】
(表示素子)
表示素子としては、液晶表示素子、有機EL表示素子、無機EL表示素子、プラズマ表示素子等が挙げられる。なお、液晶表示素子は、タッチパネル機能を素子内に備えたインセルタッチパネル液晶表示素子であってもよい。
これらの表示素子の中でも、三色独立方式の有機EL表示素子は、Lの分光スペクトルがシャープとなりやすく、本発明の効果が有効に発揮されやすい。また、有機EL表示素子は光取り出し効率が課題となっており、光取り出し効率を向上させるために、三色独立方式の有機EL素子にマイクロキャビティ構造が備えられている。このマイクロキャビティ構造を備えた三色独立方式の有機EL素子は、光取り出し効率を向上させればさせるほどLの分光スペクトルがシャープとなりやすいため、本発明の効果が有効に発揮されやすい。
また、表示素子が液晶表示素子であって、バックライトとして量子ドットを用いた場合も、Lの分光スペクトルがシャープとなりやすく、本発明の効果が有効に発揮されやすい。
【0049】
表示素子は、上記式で表されるCIE−xy色度図に基づくBT.2020のカバー率が60%以上のものが好ましく、65%以上のものがより好ましい。
【0050】
(偏光子a)
偏光子aは、表示素子の出射面上であって、光学フィルムXよりも表示素子側に設置される。
偏光子aとしては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶や二色性ゲスト−ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。なお、これらの偏光子aは、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
偏光子aの両面は、プラスチックフィルム、ガラス等の透明保護板で覆うことが好ましい。透明保護板として、光学フィルムXを用いることも可能である。
【0051】
偏光子aは、例えば、1/4λ板との組み合わせにより反射防止性を付与するために使用される。また、表示素子が液晶表示素子の場合、液晶表示素子の光入射面側には背面偏光子が設置され、液晶表示素子の上に位置する偏光子aの吸収軸と、液晶表示素子の下に位置する背面偏光子の吸収軸とを直交して配置することにより、液晶シャッターの機能を付与するために使用される。
【0052】
偏光サングラスは原則としてS偏光を吸収するため、偏光サングラスの偏光子の吸収軸の方向も原則として水平方向である。このため、表示装置の水平方向に対して、偏光子aの吸収軸の方向の角度が、±10°未満の範囲内となるように設置することが好ましい。該角度は±5°未満の範囲とすることがより好ましい。
表示素子と光学フィルムXとの間に2以上の偏光子を有する場合、表示素子から最も離れた側に位置する偏光子を偏光子aとする。
【0053】
(光学フィルムX)
光学フィルムXは表示素子の光出射面側の面上であって、偏光子aよりも光出射面側に設置される。また、表示装置が複数の偏光子を有する場合、最も光出射面側に位置する偏光子(偏光子a)よりも光出射面側に光学フィルムXを設置する。
表示素子上に複数の光学フィルムを設置する場合、光学フィルムXは、表示素子から最も離れた側(視認者側)に設置することが好ましい。
【0054】
光学フィルムXは、光学フィルムXを透過する前の光を変換し、LとLとの関係が条件2−1を満足させる役割を有する。
光学フィルムXに垂直方向に入射するLの強度を「I」、光学フィルムXの波長550nmのリタデーション値を「Re550」、[光学フィルムXを構成する材料の波長400〜780nmの各波長の複屈折率/光学フィルムXを構成する材料の波長550nmの複屈折率]を「N(λ)」、偏光子aの偏光子の吸収軸(直線偏光の振動方向)と光学フィルムXの遅相軸とがなす角度を「θ」とした場合、光学フィルムXの光出射面側から光学フィルムXの垂直方向に出光する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)の強度であるIは、以下の式(A)で表すことができる。なお、Lは、光学フィルムXより表示素子側に位置する偏光子aを通過した直線偏光であることを前提としている。
I=I−I・sin(2θ)・sin(π・N(λ)・Re550/λ) (A)
光学フィルムXの構成は、上記式(A)を元に決定することができる。具体的には、まず、光学フィルムXを透過する前のLの分光スペクトルを測定する。次いで、Lの分光スペクトルの測定結果と、上記式(A)とに基づいて、光学フィルムXのリタデーション値に応じたLの分光スペクトルをシミュレーションする。次いで、Lの分光スペクトルと、シミュレーションで得られたLの分光スペクトルとを対比し、条件2−1を満たすレタデーションを有する光学フィルムを光学フィルムXとして決定する。このようにして光学フィルムXの構成を決定することにより、光学フィルムXのリタデーションを必要以上に大きくすることなく、色の再現性を良好にすることができる。
なお、偏光子aの偏光子の吸収軸(直線偏光の振動方向)と光学フィルムXの遅相軸とのなす角度θが45度の場合に、Iの値は最大値を示す。このため、θを45度とした下記式(B)により上記シミュレーションを行うことが好ましい。
I=I−I・sin(π・N(λ)・Re550/λ) (B)
【0055】
表示素子上に複数の光学フィルムを設置する場合、上述したように、光学フィルムXは、表示素子から最も離れた側(視認者側)に設置することが好ましい。この場合、光学フィルムXと、光学フィルムXよりも表示素子側に位置する光学フィルムの相互作用によって、上記シミュレーションを行ってもよい。例えば、光学フィルムXの遅相軸方向と、光学フィルムXよりも表示素子側に位置する光学フィルムの遅相軸方向とを同一とした場合であって、両光学フィルムを構成する材料が同一である場合、両光学フィルムの合計厚みでRe550を算出して、上記シミュレーションを行うことができる。
【0056】
光学フィルムXのリタデーション値を大きくすると条件2−1を満たしやすくなるが、単にリタデーション値を大きくしても条件2−1を満たさない場合がある。また、光学フィルムXのリタデーション値を大きくし過ぎると、光学フィルムXの厚みが大きくなり過ぎたり、光学フィルムXの材料として取り扱い性の悪い特殊な素材を用いる必要が出てくる。また、リタデーション値が小さすぎると、偏光サングラスを通して観察した際に、ブラックアウトやニジムラを生じやすくなる。
このため、光学フィルムXとしては、リタデーション値3,000nm以上100,000nm以下の範囲で条件2−1を満たすものを用いることが好ましい。光学フィルムXのリタデーション値は、4,000nm以上30,000nm以下のものがより好ましく、5,000nm以上20,000nm以下のものがさらに好ましく、6,000nm以上15,000nm以下のものがよりさらに好ましく、7,000nm以上12,000nm以下のものが特に好ましい。なお、ここでいうリタデーション値は波長550nmにおけるリタデーション値である。
【0057】
光学フィルムXのリタデーション値は、光学フィルムの面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率nと、光透過性フィルムの面内において前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率nと、光学フィルムの厚みdとにより、下記式(C)によって表わされるものである。
リタデーション値(Re)=(n−n)×d (C)
上記リタデーション値は、例えば、王子計測機器社製の商品名「KOBRA−WR」、「PAM−UHR100」により測定できる。
また、二以上の偏光子を用いて、光学フィルムXの配向軸方向(主軸の方向)を求めた後、二つの軸(配向軸の屈折率、及び配向軸に直交する軸)の屈折率(n、n)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)によって求める。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。光学フィルムの厚みdは、例えば、マイクロメーター(商品名:Digimatic Micrometer、ミツトヨ社製)により測定し、単位をnmに換算する。複屈折率(n−n)と、フィルムの厚みd(nm)との積より、リタデーションを計算することもできる。
【0058】
光学フィルムXは、プラスチックフィルム等の光透過性基材を主体とするものが挙げられる。
光透過性基材としては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、アクリルフィルム等のプラスチックフィルムを延伸したものが挙げられる。これらの中でも、複屈折率を大きくしやすいという観点から、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルムを延伸したものが好ましい。また、光透過性基材の中でも正分散性(短波長側に向かうにつれて複屈折率が大きくなる性質)を示すものが好ましい。特に、ポリエステルフィルムを延伸したもの(延伸ポリエステルフィルム)は、正分散性が強く、短波長側に向かうにつれて複屈折率が大きくなる(長波長側に向かうにつれて複屈折率が小さくなる)性質を有するため、他のプラスチックフィルムと同等のリタデーション値であっても上記条件2−1を満たしやすくできる点で好適である。言い換えると、光学フィルムXの基材として延伸ポリエステルフィルムを用いた場合、基材の厚みを必要以上に厚くしなくても、上記条件2−1を満たしやすくできる点で好適である。
ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)等が好適である。
延伸は、縦一軸延伸、テンター延伸、逐次二軸延伸及び同時二軸延伸等が挙げられる。
また、光透過性基材の中でも、機械的強度の観点から、正の複屈折性を示すものが好ましい。正の複屈折性を示す光透過性基材とは、光透過性基材の配向軸方向(主軸の方向)の屈折率nと、配向軸方向に直交する方向の屈折率nとが、n>nの関係を満たすものを意味する。正の複屈折性を示す光透過性基材としては、PETフィルム、PENフィルム等のポリエステルフィルム、アラミドフィルム等が挙げられる。
【0059】
光透過性基材の厚みは、取り扱い性及び薄膜化の観点から、5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、15〜100μmであることがさらに好ましい。
【0060】
光学フィルムXは、光透過性基材上に機能層を有するものであっても良い。機能層としては、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等が挙げられる。
【0061】
(その他の光学フィルム)
本発明の表示装置は、位相差フィルム、ハードコートフィルム、ガスバリアフィルム等のその他の光学フィルムを有していてもよい。なお、その他の光学フィルムは、光学フィルムXよりも表示素子側に設置することが好ましい。
【0062】
(タッチパネル)
本発明の表示装置は、表示素子と光学フィルムXとの間にタッチパネルを備えたタッチパネル付き表示装置であってもよい。表示素子上の偏光子aとタッチパネルとの位置関係は特に限定されないが、最も光出射面側に位置する偏光子(偏光子a)を、タッチパネルと光学フィルムXとの間に配置させることが好ましい。
タッチパネルとしては、抵抗膜式タッチパネル、静電容量式タッチパネル、インセルタッチパネル、電磁誘導式タッチパネル、光学式タッチパネル及び超音波式タッチパネル等が挙げられる。
【0063】
(バックライト)
表示装置が液晶表示装置の場合、表示素子の背面にはバックライトが配置される。
バックライトとしては、エッジライト型バックライト、直下型バックライトの何れも用いることができる。
バックライトの光源としては、LED、CCFL等が挙げられるが、光源として量子ドットを用いたバックライトは、Lの分光スペクトルがシャープとなりやすく、本発明の効果が有効に発揮されやすい。
【0064】
光源として量子ドットを用いたバックライトは、少なくとも、一次光を放出する一次光源と、一次光を吸収して二次光を放出する量子ドットからなる二次光源から構成される。
一次光源が青に相当する波長の一次光を放出する場合、二次光源である量子ドットは、一次光を吸収して赤に相当する波長の二次光を放出する第1量子ドット、及び一次光を吸収して緑に相当する波長の二次光を放出する第2量子ドットの少なくとも一種を含むことが好ましく、前記第1量子ドット及び前記第2量子ドットの両方を含むことがより好ましい。
【0065】
量子ドット(Quantum dot)は、半導体のナノメートルサイズの微粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子とか、半導体ナノ結晶とも呼ばれるものである。
量子ドットは、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。
量子ドットは、バックライトを構成する光学フィルム中に含有させればよい。
【0066】
[表示装置の光学フィルムの選定方法]
本発明の表示装置の光学フィルムの選定方法は、表示素子の光出射面側の面上に、偏光子a及び光学フィルムを有する表示装置の光学フィルムの選定方法であって、光学フィルムに入射する光が上記条件1−1を満たす場合に、上記条件2−1を満たす光学フィルムを選定するものである。
【0067】
及びLの分光スペクトルは、分光光度計を用いて測定することができる。測定の際、分光光度計の受光器は表示装置の光出射面に対して垂直となるように設置し、測定の際、視野角は1度とする。また、測定の対象とする光は、表示装置の有効表示領域の中心を通る光とすることが好ましい。なお、Lの分光スペクトルは、後述のようにシミュレーションに基づいて算出することが好ましい。
【0068】
条件2−1〜2−4を満たす光学フィルムを選定は、以下の(a)、(b)の手順で選定することが好ましい。
(a)条件1−1において測定したLの分光スペクトルの測定結果と、上記式(A)とに基づいて、光学フィルムXのリタデーション値に応じたLの分光スペクトルをシミュレーションにより算出する。なお、上記式(A)の代わりに上記式(B)を用いてもよい。
(b)Lの分光スペクトルと、シミュレーションで算出したLの分光スペクトルとを対比し、条件2−1を満たすレタデーションを有する光学フィルムを光学フィルムXとして選定する。
【0069】
本発明の表示装置の光学フィルムの選定方法によれば、偏光サングラスを通して観察した際の色の再現性の低下を抑制できる光学フィルムを効率よく選定でき、作業性を向上できる。
本発明の表示装置の光学フィルムの選定方法は、Lの分光スペクトルが極めてシャープである場合に特に有効である。具体的には、Lの分光スペクトルが前記条件1−2〜1−5を満たす場合、色の再現性の問題はより深刻化するため、本発明の表示装置の光学フィルムの選定方法が極めて有用となる。
【0070】
また、本発明の表示装置の光学フィルムの選定方法は、色の再現性をより良好にする観点から、さらに前記条件2−2〜2−4から選ばれる一以上を選定条件とすることが好ましく、前記条件2−2〜2−4の全部を選定条件とすることがより好ましい。
【実施例】
【0071】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
【0072】
1.光学フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレートを290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃で4.0倍固定端一軸延伸して、面内に複屈折性を有する光学フィルムを作製した。この光学フィルムの波長550nmにおける屈折率n=1.701、n=1.6015であり、Δn=0.0995であった。
この光学フィルムの膜厚を調整し、以下のリタデーション値(Re)を有する光学フィルムi〜viiを得た。
光学フィルムi :Re=3,000nm
光学フィルムi :Re=4,000nm
光学フィルムiii:Re=6,000nm
光学フィルムiv :Re=7,000nm
光学フィルムv :Re=8,000nm
光学フィルムvi :Re=11,000nm
光学フィルムvii:Re=15,000nm
【0073】
2.Lの分光スペクトルの測定
分光光度計を用いて、視野角1度として、以下の表示装置A〜Eを白表示させた際に、光学フィルムに表示素子側から垂直に入射する光(L)の強度を1nmごとに測定した。表示装置A〜Eにおいて、偏光子aの吸収軸(直線偏光の振動方向)と光学フィルムXの遅相軸とのなす角度は45度としている。また、測定箇所は表示装置の有効表示領域の中心とした。表示装置AのLの分光スペクトルを図2、表示装置BのLの分光スペクトルを図3、表示装置CのLの分光スペクトルを図4、表示装置DのLの分光スペクトルを図5、表示装置EのLの分光スペクトルを図14に示す。また、測定結果に基づいて算出した条件1−1〜1−5に関する数値を表1に示す。また、条件1−1〜1−5を満たすものを「○」、満たさないものを「×」として、併せて表1に示す。
【0074】
<表示装置A>
マイクロキャビティ構造を備えた三色独立方式の有機EL表示素子上に、偏光子a及び光学フィルムを有する市販の表示装置。CIE−xy色度図に基づくBT.2020のカバー率:77%。
<表示装置B>
表示素子がカラーフィルター付きの液晶表示素子であり、バックライトの光源が冷陰極蛍光管(CCFL)であり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する市販の表示装置。
<表示装置C>
表示素子がカラーフィルター付きの液晶表示素子であり、バックライトの光源が白色LEDであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する市販の表示装置。CIE−xy色度図に基づくBT.2020のカバー率:49%。
<表示装置D(量子ドットを用いた表示装置1)>
表示素子がカラーフィルター付きの液晶表示素子であり、バックライトの一次光源が青色LEDであり、二次光源が量子ドットであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する市販の表示装置。CIE−xy色度図に基づくBT.2020のカバー率:68%。
<表示装置E(量子ドットを用いた表示装置2)>
表示素子がカラーフィルター付きの液晶表示素子であり、バックライトの一次光源が青色LEDであり、二次光源が量子ドットであり、表示素子上に偏光子a及び光学フィルムを有する市販の表示装置。CIE−xy色度図に基づくBT.2020のカバー率:52%。
【0075】
【表1】
【0076】
3.表示装置A−i〜A−vii、表示装置B−i〜B−vii、表示装置C−i〜C−vii、表示装置D−i〜D−vii及び表示装置E−i〜E−viiの作製
表示装置A〜Eの光学フィルムとして、光学フィルムi〜viiを配置して、表示装置A−i〜A−vii、表示装置B−i〜B−vii、表示装置C−i〜C−vii、表示装置D−i〜D−vii及び表示装置E−i〜E−viiを得た。
【0077】
4.Lのシミュレーション、Lの分光スペクトルの測定
上記2で測定したLの分光スペクトルと、上記式(B)とを元に、表示装置A−i〜A−vii、表示装置B−i〜B−vii、表示装置C−i〜C−vii、表示装置D−i〜D−vii及び表示装置E−i〜E−viiの光学フィルムの光出射面側から光学フィルムの垂直方向に出光する光であって、偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光(L)の強度であるIをシミュレーションにより算出した。シミュレーション結果に基づいて算出した条件2−1〜2−4に関する数値を表2〜6に示す。また、条件2−1〜2−4を満たすものを「○」、満たさないものを「×」として、併せて表2〜6に示す。
なお、シミュレーションにより算出した条件2−1〜2−4に関する数値を実測値に基づき算出したところ、同様の結果が得られた。
【0078】
5.評価
以下のように、表示装置A−i〜A−vii、表示装置B−i〜B−vii、表示装置C−i〜C−vii、表示装置D−i〜D−vii及び表示装置E−i〜E−viiを評価した。結果を表2〜表6に示す。
【0079】
5−1.ブラックアウト
表示装置の画面を白表示もしくは略白表示にした。偏光サングラスを介して様々な角度から画面を観察し、画面が暗くなる箇所があるかどうかを目視で評価した。
○:画面が暗くなる箇所がない。
×:画面が暗くなる箇所がある。
【0080】
5−2.ニジムラ
表示装置の画面を白表示もしくは略白表示にした。偏光サングラスを介して様々な角度から画面を観察し、虹模様のムラが視認できるかどうかを目視で評価した。
○:虹模様が視認できない。
△:虹模様が僅かに視認される。
×:虹模様が視認される。
【0081】
5−3.色の再現性
表示装置の画面をカラー表示にした。偏光サングラスをかけた状態(状態1)、及び偏光サングラスを外して画面上に偏光サングラスと同色に染色したガラス板を設置した状態(状態2)で、それぞれ正面から画面を観察し、偏光サングラスをかけた状態の色の再現性を目視で評価した。
状態1と状態2との色の差(赤に基づく色の差)が気にならないものを2点、状態1と状態2との色の差(赤に基づく色の差)が若干気になるものを1点、状態1と状態2との色の差(赤に基づく色の差)がひどく気になるものを0点として、20人が評価を行い、平均点を算出した。
◎:平均点が1.7点以上
○:平均点が1.5点以上1.7点未満
△:平均点が1.0点以上1.5点未満
×:平均点が1.0点未満
【0082】
5−4.動画の臨場感
表示装置の画面をカラーの動画表示にして、偏光サングラスを外した状態で画面を観察し、動画の臨場感を目視で評価した。
○:臨場感を強く感じる。
△:臨場感を感じる。
×:臨場感が物足りない。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
表1〜表6の結果から、条件1−1及び条件2−1を満たす表示装置(表示装置A−iv〜A−vii、B−vi〜B−vii、D−ii〜D−vii、E−iv〜E−vii)は、色域が広いため動画の臨場感に優れるとともに、色域が広いことにより生じやすい色の再現性の問題を抑制できるものであった。
また、条件1−1及び条件2−1を満たす表示装置の中でも、さらに条件1−2〜1〜5を満たすとともに、CIE−xy色度図に基づくBT.2020のカバー率が60%以上である表示装置(表示装置A−iv〜A−vii、D−ii〜D−vii)は、動画の臨場感がより優れるものであった。
また、条件1−1及び条件2−1を満たす表示装置の中でも、条件2−3のボトム波長及びピーク波長の数がそれぞれ1以上である表示装置(表示装置A−iv〜A−vii、D−ii〜D−vii、E−iv〜E−vii)は、色の再現性がより優れるものであった。その中でも、条件2−1のボトム波長及びピーク波長の数がそれぞれ2以上である表示装置(表示装置A−vii、D−vi、D−vii、E−vii)は、さらに色の再現性に優れるものであった
【符号の説明】
【0089】
10:表示素子
10a:有機EL表示素子
20:光学フィルムX
30:その他の光学フィルム
40:偏光子a
100:表示装置
【要約】
偏光サングラスを通して観察した際でも色の再現性が良好な表示装置を提供する。表示素子の光出射面側の面上に、偏光子a及び光学フィルムXを有し、光学フィルムXに表示素子側から入射する光のうち、光学フィルムXに対して垂直方向に入射する光であるLが特定の条件を満たし、光学フィルムXの光出射面側から光学フィルムXの垂直方向に出光する光であって、前記偏光子aの吸収軸と平行な吸収軸を有する偏光子bを通過した光であるLが特定の条件を満たす表示装置。
図1
図2
図3
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