(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166507
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】固形描画材及び固形描画具
(51)【国際特許分類】
C09D 13/00 20060101AFI20170710BHJP
B43K 19/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
C09D13/00
B43K19/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-171444(P2011-171444)
(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2012-52109(P2012-52109A)
(43)【公開日】2012年3月15日
【審査請求日】2014年6月11日
【審判番号】不服2016-758(P2016-758/J1)
【審判請求日】2016年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-176170(P2010-176170)
(32)【優先日】2010年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】北澤 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 超
(72)【発明者】
【氏名】松本 正昭
【合議体】
【審判長】
冨士 良宏
【審判官】
國島 明弘
【審判官】
井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−221574(JP,A)
【文献】
特開平2−166176(JP,A)
【文献】
特開2008−045043(JP,A)
【文献】
特開2004−189951(JP,A)
【文献】
特開2010−037434(JP,A)
【文献】
特開2001−152071(JP,A)
【文献】
特開平5−93164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D13/00, B43K19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂成分(水溶性樹脂(ウッドロジンとロジン樹脂を除く。)を除く。以下同じ。)、ワックス成分、少なくとも二酸化チタンを含む顔料5重量%以上25重量%以下及び体質材6重量%以上18重量%以下を含有する固形描画材において、
前記樹脂成分として、ロジン及びロジン変成物のうち少なくとも一方を6重量%以上20重量%以下の範囲で含有し、
前記ワックス成分として、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルのうちの少なくとも一方を8重量%以上50重量%以下の範囲で含むとともに、
他に、融点が40℃以下の低融点成分を含有しないことを特徴とする固形描画材。
【請求項2】
前記樹脂成分と前記ワックス成分との重量比率が2:1〜1:25の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の固形描画材。
【請求項3】
前記樹脂成分以外の追加樹脂成分としてポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体のうちの少なくとも一方を8重量%以上20重量%以下の範囲で含有するとともに、
前記ワックス成分以外の追加ワックス成分として融点45℃以上のパラフィンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を15重量%以上30重量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1記載の固形描画材。
【請求項4】
前記ポリエチレンは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体は酢酸ビニル含有量が30重量%以下、かつ、メルトフローレートが2g/分以上であることを特徴とする請求項3記載の固形描画材。
【請求項5】
前記追加樹脂成分と、前記追加ワックス成分との重量比率が3:1〜1:20の範囲にあることを特徴とする請求項3又は4記載の固形描画材。
【請求項6】
請求項1記載の固形描画材と、
該固形描画材の外周面に2周以上巻き回されるとともに表面加工紙又は合成紙で形成されている保護シートとを備え、
該固形描画材は該保護シートごと鉛筆削り器で切削するものであることを特徴とする固形描画具。
【請求項7】
請求項1記載の固形描画材と、
該固形描画材の外周面に2周以上巻き回されるとともにポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンにより形成されている保護シートとを備え、
該固形描画材は該保護シートごと鉛筆削り器で切削するものであることを特徴とする固形描画具。
【請求項8】
前記保護シートの内面側の一部又は全部に接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項6又は7記載の固形描画具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として通常の上質紙、画用紙、コピー用紙等の紙類はもちろん、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面にも滑らかに、濃く描画することが可能な固形描画材に関する。さらに詳しくは、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に濃く明確に描画可能で、かつ、これら非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具等で容易に消去できる固形描画材に関する。また、この固形描画材の外周に保護シートを巻き回した固形描画具であって、従来の鉛筆同様鉛筆削り器にて切削して使用可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固形描画材は、ワックス、顔料、体質材からなる配合物に、必要に応じて、オイル、樹脂等を添加して、硬さを調整している。しかし、固形描画材を軟質化する目的でオイル量を増量すると、強度が低くなり折れやすくなる。その場合、細く成形したり、先端を尖らせて切削することができなくなるため、細かい描画が不可能である。またコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合、表面で滑ってしまい、軟らかい割りに濃く描画することができない点に課題がある。
一方、強度を強くするため、樹脂量を増量すると、細く成形することはできても硬いため、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画することができない点に課題がある。
【0003】
たとえば、非焼成色鉛筆として、融点65℃以下のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルと、ロジン及び/又はロジン変性物の混合物を含有する優れた着色性を有する軟質色芯の組成が開示されている(特許文献1)。これはキャンバス上に描いた描画部分を油絵用オイルで溶かし、油絵調の作品を得ることが目的であり、本願のようなコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する固形描画材とは目的が異なる。
【0004】
その他、やはり固形描画材として、顔料とワックスと鉱物油とを含み、さらに非晶性ポリα−オレフィンとロジンを一定割合含むことで、非吸収性の描画面にも滑らかに描くことができるとしている固形描画材の組成が開示されている(特許文献2)。しかし、この組成では、5重量%以上の鉱物油を含むことが必要要件であるため、強度が低く、細く成形することができない。実際、同文献中の実施例でも成形体の直径等については言及していない。
【0005】
ところで、化学的定義では、ワックスとは、「脂肪酸と高級一価または二価のアルコールのエステル」をいう。この定義ではたとえばホホバ油のように常温で液体のものもあれば、固体のものも含まれる。しかし、通常は、「常温で固体または半固体の有機物」であって「常温から100℃付近までの温度範囲で溶融し、溶融粘度の低いもの」をワックスと総称するようである(非特許文献1)。具体的には、上記化学的定義のワックスの他、油脂の範疇である三価(グリセリン)、あるいは四価(ペンタエリスルトール)のアルコールと脂肪酸のエステル、パラフィンワックス、ペトロラタム、マイクロクリスタリンワックス等の石油系炭化水素、脂肪酸単体、その他の物質もワックスと総称される。
上記の「ワックス」と総称されるもののうち、「脂肪酸と高級一価または二価のアルコール」と定義されるほとんどのものが、ロジン及びロジンのグリセリンエステル等ロジン変成物との相溶性が劣る。
これに対して、三価(グリセリン)、あるいは四価(ペンタエリスリトール)のアルコールと脂肪酸のエステルは、ロジン及びロジンのグリセリンエステル等ロジン変成物との相溶性が良い。
以上より、本願では、「常温で固体または半固体の有機物」であって「常温から100℃付近までの温度範囲で溶融し、溶融粘度の低いもの」、特に、その溶融する温度(融点)が110℃以下であるものを「ワックス」と称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−45043(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2010−37434(特許請求の範囲、実施例等)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ワックスの性質と応用」府瀬川健蔵監修、幸書房、昭和58年9月10日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、これを解消しようとするものである。具体的には、本発明は、滑らかな書き味を有し、特にコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対しても格段に濃く描画可能な固形描画材を提供することを課題とする。さらに詳しくは、透明プラスチック、ガラス等透明な描画面に濃く明確に描画可能でありながら、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい固形描画材を提供することを課題とする。また、上記の非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具等で容易に消去できる固形描画材を提供することを課題とする。また、このような固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な固形描画具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意研究を行った結果、少なくとも樹脂、ワックス類、顔料、二酸化チタン、体質材からなる固形描画材において、樹脂としてロジン及び/又はロジンのグリセリンエステル等ロジン変成物を0.5重量%から20重量%、ワックス類として融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルを8重量%から50重量%の範囲で含むことにより、上記目的の固形描画材が得られることを見出し、下記のとおり、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
(1)第1の発明
上記の課題に鑑み、本願の第1の発明は、少なくとも樹脂成分(水溶性樹脂(ウッドロジンとロジン樹脂を除く。)を除く。以下同じ。)、ワックス成分、少なくとも二酸化チタンを含む顔料5重量%以上25重量%以下及び体質材6重量%以上18重量%以下を含有する固形描画材20において、
前記樹脂成分として、ロジン及びロジン変成物のうち少なくとも一方を6重量%以上20重量%以下の範囲で含有し、
前記ワックス成分として、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルのうちの少なくとも一方を8重量%以上50重量%以下の範囲で含むとともに、
他に、融点
が40℃
以下の低融点成分を含有しないことを特徴とする。
【0011】
本発明において、「樹脂成分」として用いられるロジン及びロジン変成物は、一般的にロジン及びロジン変成物として分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。また、ロジンの主成分であるアビチエン酸を使用することも可能である。なお、ここで「ロジン変成物」とは、ロジンのグリセリンエステル等をいう。
これらは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする固形描画材20の着色性、硬さによって適宜選択される。
この樹脂成分の含有率は0.5重量%以上20重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が0.5重量%を下回ると、平滑面での定着性が劣り着色が不十分であり、また強度的に弱く、実用的でない。一方、20重量%を上回ると硬く、やはり平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。
【0012】
本発明において、「ワックス成分」として用いられるグリセリン脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にグリセリン脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸グリセリド、ステアリン酸グリセリド等、また、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれも用いることができる。さらに、これら以外のものとしては、グリセリン脂肪酸エステルを主成分とするハゼロウ、ウルシロウ等のモクロウ類、ヤマハゼロウ、ヤマウルシロウ等のスマックワックス類等の天然物のいずれをも用いることができる。
【0013】
本発明において、「ワックス成分」として用いられるペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸ペンタエリスリット、ステアリン酸ペンタエリスリット等、また、モノペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、トリペンタエリスリット、テトラペンタエリスリットのいずれも用いることができる。なお、融点が45℃を下回ると、実用上の強度が弱すぎ、固形描画材20を細く成形すると折れやすくなる。
【0014】
これら本発明に用いるグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする固形描画材20の着色性、硬さによって適宜選択される。
上記ワックス成分の含有率は8重量%以上50重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が8重量%を下回ると硬く、平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。一方、50重量%を上回ると強度的に弱くなり、実用的でない。
【0015】
本発明における「顔料」としては、ジスアゾイエローAAA、ピラゾロンオレンジ等のアゾ系有機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド等の高級有機顔料、ファナルカラー等染付け顔料、蛍光顔料、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、紺青等の無機顔料等をすべて用いることができる。
本発明における「二酸化チタン」としてはルチル、アタナーゼを問わず従来公知の二酸化チタンをすべて用いることができる。しかし、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に濃く明確に描画することを目的とするには、触媒用二酸化チタンは粒子径が細かく、薄い描画面となり、好ましくない。
本発明における「体質材」としては炭酸カルシウム、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、マイカ、窒化ホウ素、チタン酸カリウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカーのウィスカー類等公知の体質材をすべて用いることができる。
【0016】
(2)第2の発明
また、本願の第2の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記樹脂成分と前記ワックス成分との
重量比率が2:1〜1:25の範囲にあることを特徴とする。
樹脂成分の
重量比率がワックス成分に対し1:25より少ないと、得られる固形描画材20が脆く、また平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。また、樹脂成分の
重量比率がワックス成分に対し2:1より多いと固形描画材20が硬くなってしまい、着色性が不十分である。
要するに、樹脂成分と、ワックス成分とが好適な
重量比率(すなわち、2:1〜1:25の範囲内)で混合されれば、平滑面での定着性が良好で、着色が良い固形描画材20が得られることになる。
なお、樹脂成分とワックス成分との混合は、事前に溶融混合しておくことも可能であるし、また、固形描画材20の製造工程において、他の配合物とミキサー中等で混合することも可能であり、その製造方法については特に限定されない。
【0019】
(
3)第
3の発明
また、本願の第
3の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記樹脂成分以外の追加樹脂成分としてポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体のうちの少なくとも一方を8重量%以上20重量%以下の範囲で含有するとともに、
前記ワックス成分以外の追加ワックス成分として融点45℃以上のパラフィンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を15重量%以上30重量%以下の範囲で含むことを特徴とする。
すなわち、追加樹脂成分として、20重量%以下のポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を、強度向上、硬さ、書き味調整等の目的で、前記樹脂成分と併用することができる。この追加樹脂成分が20重量%を超えると、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対する着色力が劣り、薄い描線となるため、好ましくない。
なお、以上の場合、前記樹脂成分と前記追加樹脂成分との合計含有量は、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると30重量%以下とすることが好ましい。
【0020】
また、前記追加樹脂成分としてのポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体と、前記樹脂成分としての、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルとは相溶性が低いため、追加ワックス成分として30重量%以下の融点45℃以上のパラフィンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を併せて使用されることとなっている。
追加ワックス成分として用いられるオゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスは従来公知のものがすべて使用できるが、パラフィンワックスは強度の点で、融点45℃以上であることが好ましい。その含有量はコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点で30重量%以下とすることが好ましい。
また、前記ワックス成分と前記追加ワックス成分との合計含有量は、概ね70重量%以下が好ましいが、強度の点で65重量%以下が望ましい。さらに、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると60重量%以下とすることが望ましい。
【0021】
(
4)第
4の発明
また、本願の第
4の発明は、前記第
3の発明の特徴に加え、前記ポリエチレンは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体は酢酸ビニル含有量が30重量%以下、かつ、メルトフローレートが2g/分以上であることを特徴とする。
【0022】
すなわち、本発明で用いるポリエチレンは、その他配合材との混練性、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点に鑑みれば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのいずれか1種類、又は、これらの混合物から選択することが好ましい。さらには、メルトフローレートが2g/分以上であるものから選択することが望ましい。
また、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、その他配合材との混練性、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点に鑑みれば、酢酸ビニル含有量が30重量%以下、メルトフローレートが2g/分以上であるものから選択することが好ましい。
【0023】
(
5)第
5の発明
また、本願の第
5の発明は、前記第
3又は第
4の発明の特徴に加え、前記追加樹脂成分と、前記追加ワックス成分との重量比率が3:1〜1:20の範囲にあることを特徴とする。
ここで、追加樹脂成分の重量比率が追加ワックス成分に対して3:1より多い場合は固形描画材20が硬くなってしまい、着色性が不十分となる。また、追加樹脂成分の重量比率が追加ワックス成分に対して1:20より少ない場合は、得られる固形描画材20が脆くなってしまい、強度的に不十分である。
【0024】
(
6)第
6の発明
また、本願の第
6の発明に係る固形描画具10は、前記第1の発明に係る固形描画材20と、
該固形描画材20の外周面に2周以上巻き回される保護シート30とを備え、
該固形描画材20は該保護シート30ごと鉛筆削り器で切削するものであることを特徴とする。
「保護シート30」とは、この固形描画材20の外周面に、手指の汚れ防止や固形描画材20の保護あるいや補強のために巻き回されるシート状構造物をいう。
そして、この固形描画材20にこの保護シート30が巻き回されているものが「固形描画具10」である。
【0025】
本発明において用いられる、固形描画材20に2周以上巻き回す保護シート30は、鉛筆削り器で切削可能であれば、合成樹脂、天然樹脂等プラスチック、セラミック、金属、紙、木材等、特に限定されず、いずれも使用できるが、2周以上巻き回すことを考慮し、適宜その材質が選択される。すなわち、保護シート30の材質は、複数回巻き回すことによる柔軟性、厚さ、及び鉛筆削り器で切削する際の削り器の刃の耐久性、切削性を考慮すると、紙又は合成樹脂が望ましい。
なお、保護シート30の材質としての紙については、吸湿により繊維が膨潤することで切削性が悪くなることを考慮し、アート紙又はコート紙等表面加工した紙や、ポリプロピレン製等の樹脂を配合した合成紙が望ましい。
【0026】
また、保護シート30の材質としての合成樹脂については、公知のシート材又はフィルム材であれば特に限定されず、使用可能である。しかし、強度や鉛筆削り器による切削性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンを使用することが望ましい。
また、強度及び切削時のカスの散乱防止の点で、保護シート30の内面側の一部又は全部に接着剤が塗布されていることが望ましい。この接着剤の材質は、これまでシール、シート、フィルム等に使用されてきたものであれば、特に限定はなく、いずれも使用可能である。
【0027】
なお、固形描画材20と保護シート30を固定するため、保護シート30の最内層に当たる部位には接着剤が塗布されていることが望ましい。また、保護シート30の最外層は、その直下の層に対し接着剤で固定することが必要である。そして、これらの中間部分には接着剤は塗布されていてもされていなくてもいずれでもよく、あるいは接着力の弱い接着剤を使用するなど、接着強度を変えたり、求める特性に応じて適宜選択することが可能である。
また、本発明では固形描画材20に保護シート30を2周以上巻き回すが、極端に薄いと皺になりやすい。また、あまりに厚ければ、最内層の辺縁と重なる部分に段差ができやすく、常温では巻きにくく、そして時間が経てば剥れやすい。よって保護シート30の厚さは概ね1μm以上かつ200μm以下が好ましく、5μm以上かつ150μm以下がさらに望ましい。
【0028】
また、保護シート30の巻き回しの回数が2周未満であれば強度的補強効果が少ないが、あまり多くてもずれが生じたりして製造上の問題となる。よって、内部の固形描画材20の径と保護シート30の厚さとを調整し、概ね3周から20周巻き回すことが望ましい。
【0029】
(
7)その他
また、上記各成分以外にも、従来公知のカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ケトンワックス、ポリプロピレンワックス、各種脂肪酸アミドのワックス類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸も適宜選択し、配合することとしてもよい。
この場合、これらの成分と、前記ワックス成分(又は前記ワックス成分及び前記追加ワックス成分)との合計含有量は、概ね70重量%以下が好ましい。なお、強度の点に鑑みれば65重量%以下が望ましく、さらにはコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると60重量%以下とすることが望ましい。
その他、本発明において、描線を水で溶解させたり、拭き取ったりする目的で、従来水溶性色鉛筆等で公知の界面活性剤、紫外線吸収剤等各種添加剤をこれまで述べてきた強度、平滑な非吸収面への描画、容易な消去性等の特徴を低下させない範囲で配合してもよい。
【発明の効果】
【0030】
従来の固形描画材では、軟質化のためオイル等配合比を増量してきたが、その結果、強度が低く、また軟らかい割りに平滑面に対しては、オイルのブリード等で滑って十分な着色性が得られていないのが現状であった。
これに対して、本発明の固形描画材では、特定の樹脂、ワックス類の組み合わせ、比率により、オイル等液体成分の含有量を極限まで減量でき、その結果、強く、かつ平滑な非吸収面へ描画可能な固形描画材が得られた。
すなわち、本発明によれば、滑らかな書き味を有し、特にコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対しても格段に濃く描画可能な固形描画材が提供される。さらに詳しくは、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に濃く明確に描画可能でありながら、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい固形描画材が提供される。また、上記の非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具等で容易に消去できる固形描画材が提供される。また、このような固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な固形描画具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施例に係る固形描画材のうち、四角柱状に成形されるもの(A)及び円柱状に成形されるもの(B)をそれぞれ斜視図で示す。
【
図2】
図1の固形描画材に保護シートが巻き回された固形描画具を斜視図で示す。
【
図3】
図2のIII−III断面の一部を拡大して示す。
【
図4】鉛筆削り器により切削した
図2の固形描画具を斜視図で示す。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0033】
(1)実施例及び比較例の組成及び製法
(1−1)実施例1
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク:17重量%
二酸化チタン:14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、加熱溶融させ、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの
図1(A)に示すような緑色の固形描画材20を得た。
【0034】
(1−2)実施例2
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク:18重量%
二酸化チタン:12重量%
パーマネントレッド:11重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径8.0mmの
図1(B)に示すような赤色の固形描画材20を得た。
【0035】
(1−3)実施例3
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
ロジンエステル:6重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃) 21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):15重量%
カオリン:6重量%
二酸化チタン:15重量%
ジスアゾイエローAAA:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの
図1(B)に示すような黄色の固形描画材20を得た。
【0036】
(1−4)実施例4
ウルシロウ(融点52℃):22重量%
ロジン:9重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):23重量%
マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:13重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:15g/分)
タルク:8重量%
二酸化チタン:10重量%
群青:6重量%
フタロシアニンブルー:4重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの
図1(B)に示すような青色の固形描画材20を得た。
【0037】
(1−5)実施例5
ハゼロウ(融点52℃):34重量%
ロジンエステル:12重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):15重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:3重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:40g/分)
炭酸カルシウム:6重量%
二酸化チタン:15重量%
ピラゾロンオレンジ:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの
図1(B)に示すような橙色の固形描画材20を得た。
【0038】
(1−6)実施例6
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク:18重量%
二酸化チタン:12重量%
パーマネントレッド:11重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、
図2に示すような直径7.0mm、長さ120mmの赤色の固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シート30を
図3に示すように5周巻き回し、
図2に示すような直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0039】
(1−7)実施例7
上記実施例6の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの二軸延伸ポリプロピレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例6と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0040】
(1−8)実施例8
上記実施例6の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのアート紙製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例6と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0041】
(1−9)実施例9
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク:17重量%
二酸化チタン:14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径7.0mm、長さ120mmの緑色の固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのポリ塩化ビニル製の保護シート30を6周巻き回し、直径7.9mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0042】
(1−10)実施例10
上記実施例9の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのスチレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例9と同様の製法で直径7.9mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0043】
(1−11)比較例1
ハゼロウ(融点52℃): 40重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):10重量%
ホワイトミネラルオイル:10重量%
タルク:16重量%
二酸化チタン:14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、加熱溶融させ、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの緑色固形描画材を得た。
【0045】
(1−1
2)比較例
2
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃):21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):21重量%
カオリン:6重量%
二酸化チタン:15重量%
ジスアゾイエローAAA:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの黄色固形描画材を得た。
【0046】
(1−1
3)比較例
3
ウルシロウ(融点52℃):22重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):23重量%
マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:22重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:15g/分)
タルク:8重量%
二酸化チタン:10重量%
群青:6重量%
フタロシアニンブルー:4重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの青色固形描画材を得た。
【0047】
(1−1
4)比較例
4
ハゼロウ(融点52℃):34重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):15重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):15重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:5重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:40g/分)
炭酸カルシウム:6重量%
二酸化チタン:15重量%
ピラゾロンオレンジ:10重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの橙色固形描画材を得た。
【0048】
(1−1
5)比較例
5
上記実施例6の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの上質紙製の保護シートに置き換えたこと以外は、上記実施例6と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0049】
(1−1
6)比較例
6
上記実施例6と同様の配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物をプランジャー型押出機にて押出成形して、直径7.8mm、長さ120mmの赤色の固形描画材を得た。これに、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シートを
1周巻き回し、合わせ部を接着剤で貼り合わせ、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0050】
(1−17)比較例7
上記比較例6の保護シートを、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのアート紙製の保
護シートに置き換えたこと以外は、上記比較例
6と同様の製法で直径8.0mm、長さ12
0mmの固形描画具を得た。
【0051】
(1−1
8)比較例
8
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃):21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):21重量%
カオリン:6重量%
二酸化チタン:15重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練し、この混練物を射出機にて射出成形し、直径8.0mmの緑色の固形描画材を得た。
【0052】
(1−
19)比較例
9
上記実施例6と同様の固形描画材の外周面に接着剤を塗布し、外径8.0mm、内径7.1の木軸に装填し、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0053】
(2)評価方法(実施例1〜5、比較例1〜
4)
上記実施例1〜5及び比較例1〜
4の固形描画材について、強度、紙、PETフィルム、ガラス、ホワイトボードに描画する際の着色性及び消去性について、評価、確認した。
【0054】
(2−1)強度
各固形描画材について、23℃の温度下、支点間40mmで3点曲げ強度測定し、折損した際の荷重(単位:N)を求めた。
【0055】
(2−2)着色性
実施例1
及び比較例
1に係る固形描画材はカッターナイフで先端を切削して尖らせた。実施例2〜5及び比較例
2〜
4に係る固形描画材は小型ミニシャープナーで先端を切削して尖らせた。これらのそれぞれを用いて、コピー用紙、PETフィルム、ガラス
板、ホワイトボード(WB)に描画し、その時の着色性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は以下のとおりとした。
A:描線が濃く、はっきりと見える。
B:描線に乱れが見られるが、普通に見える。
C:描線は掠れており、見辛い。
D:描線はかなり掠れており、注意しないと見えない。
E:描線はほとんど見えない、もしくは描けない。
【0056】
(2−3)消去性
上記(2−2)でPETフィルム、ガラス
板、ホワイトボードに描いた描線をティッシュペーパーで擦り、その時の消去性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は下記のとおりとした。
A:良く消えて全く跡が残らない。
B:消えるが少し跡が残る。
C:描線の形が消えずに残る。
D:ほとんど消えない。
E:全く消えない(ただし、上記(2−2)の評価がD又はEであった場合はこの評価とした)。
【0057】
(2−4)評価結果
上記実施例1〜5及び比較例1〜
4を用いた上記各評価方法についての評価結果を、下記表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
上記のとおり、本発明の実施例1〜5に係る固形描画材はいずれも良好な結果を示した。すなわち、強度については、実施例1〜5はいずれも実用に十分な数値を示した。また、いずれの描画対象物についても、着色性及び消去性ともにA評価を得た。ただし、ホワイトボードに描いた場合の消去性は、市販のホワイトボード専用マーカーの消去性よりやや劣るためB判定となった。
【0060】
これに対し、本発明の範囲外である比較例1〜
4の試験結果は、コピー紙への着色性の評価以外はいずれも評価が劣るという結果となった。
まず、比較例1はハゼロウのみでロジン等が配合されていないため、描画時に先端が折れやすかった。また、軟らかい割りに平滑面に対して滑ってしまい、濃く描画できない結果となった
。
比較例
2〜
4は強度も強く、紙に描画する場合はほとんど問題なかったが、平滑面に描画する場合、滑って描画ができない、という結果となった。
【0061】
(3)評価方法(実施例6〜10、比較例
5〜
9)
上記実施例6〜10及び比較例
5〜
9の固形描画具について、強度及び鉛筆削り器による切削性について評価した。
【0062】
(3−1)強度
各固形描画材について、23℃又は40℃の温度下、支点間60mmで3点曲げ強度測定し、折損した際の荷重(単位:N)を求めた。
【0063】
(3−2)鉛筆削り器による切削性
モニター5名に、三菱鉛筆製ミニ鉛筆削り器(商品名:ポケットシャープナーDPS−101 PLT)を用いて常温・常湿(23℃、50%)の環境下及び高温・高湿(35℃、80%)の環境下にて先端が尖るように(
図3参照)切削させたうえで、その切削性を下記の1〜5点の5段階で官能評価させ、その平均点を求めた。
1:著しく悪い。
2:悪い。
3:良くも悪くもない。
4:良い。
5:著しく良い。
【0064】
(3−3)評価結果
各実施例及び比較例を用いた上記評価方法についての評価結果を、下記表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
上記のとおり、本発明の実施例6〜10に係る固形描画具はいずれの評価方法も良好な結果を示した。すなわち、固形描画具自体の強度は、23℃及び40℃の両方の温度条件を通じて、少なくとも50N以上の値を示した。また、切削性についても、常温・常湿及び高温・高湿の両方の測定条件を通じて、いずれの実施例でも平均にして4点を上回る高評価であった。また、切削の際、保護シートが剥がれたり破れたりすることもなかった。
【0067】
これに対し、本発明の範囲外である比較例
5〜
9の試験結果においては、各々少なくとも1個の項目において評価結果が劣ることとなった。
比較例
5で保護シートとして使用した上質紙は、堅く吸湿しやすいため、これを巻き回した比較例
5では、固形描画材を同じくする実施例1に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。特に高温・高湿の条件下では、保護シートが破れるという結果となった。
比較例
6及び
7は、保護シートの巻き回しが1周のため弱くて折れやすく、固形描画具としては強度不足であった。また、保護シートの接着材は重ね合わせる部位のみに塗布されていたため、保護シートが固形描画材から剥れやすかった。このことによって、固形描画材を同じくする実施例6に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。
比較例
8は切削性については問題なかったが、強度が著しく弱く、折れやすいため実用には適さないと思われる。
比較例
9は、同じ固形描画材を使用した実施例6よりも木軸を備える分だけ堅牢で強度は強かった。しかし、木軸の厚さが0.1mmと薄かったため、固形描画材との接着強度が弱く、特に高湿条件下では軸が割れてしまい、実施例6に比べ切削性の評価が著しく低下することとなった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、通常の上質紙、画用紙、コピー用紙等の紙類はもちろん、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面にも滑らかに、濃く描画することが可能で、かつ、これら非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具等で容易に消去できる固形描画材及びこれに保護シートを巻き回した固形描画具として利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 固形描画具 20 固形描画材 30 保護シート