(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
供給源から電気機械の1つまたは複数の相を励磁するための電流プロファイルを導出し、前記電気機械から所望の出力を獲得する方法であって、前記電気機械は静止部分と前記静止部分に対して相対的に移動する可動部分とを備えて前記所望の出力を提供する、方法において、
パラメータ評価器を用いて、前記電気機械の出力を、相電流および前記静止部分に対して相対的な前記可動部分の検知された位置に関係付ける関数を定義するステップと、
電流プロファイル計算機を用いて、前記電流プロファイルを調整して、前記出力と所望の出力の間における差、および前記出力の前記検知された位置における誤差に対する感度を同時に低減するステップであって、前記電流プロファイルの調整が、前記電流プロファイル内の電流が、前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数に基づいて、前記供給源によって供給可能であることを保証することを含む、ステップと、
電流コントローラを用いて前記電流プロファイルに従って前記1つまたは複数の相内の電流を制御する、または検知された位置によってアドレス可能な前記電流プロファイルを、前記電気機械を制御する際に使用する準備が整った機械読取り可能な記憶媒体に記憶するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
前記関数は、前記1つまたは複数の相のための相電圧を含むベクトルの大きさが、前記供給源が前記電気機械に対して電流を供給するDCリンク電圧を超える場合に非ゼロになることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記電流プロファイルの調整は、関連付けされた式のセットを解くことを含み、前記セットは、前記出力と所望の出力を等しいとする第1の式、検知された位置における誤差に対する前記出力の感度の関数をゼロに等しいとする第2の式、および前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数をゼロに等しいとする第3の式を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
前記電気機械は、同期機械、永久磁石機械、平衡給電スイッチトリラクタンス機械、およびこれらのハイブリッドのうちの1つであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
前記電流プロファイルを使用して前記電気機械を動作させるステップと、前記電気機械の動作の間に受信された信号に基づいて前記電流プロファイルを調整するステップとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記電流プロファイルを使用して前記電気機械を動作させるステップと、前記電気機械の動作の間に受信された信号に応答して、前記電気機械の前記出力を、前記相電流および検知された位置に関係付ける関数のパラメータを調整するステップとを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
供給源から電気機械の1つまたは複数の相を励磁するための電流プロファイルを導出し、前記電気機械の所望の出力を獲得するためのシステムであって、前記電気機械が静止部分と前記静止部分に対して相対的に移動する可動部分とを備えて、前記所望の出力を提供する、システムにおいて、
前記電気機械の出力を、相電流および前記静止部分に対して相対的な前記可動部分の検知された位置に関係付ける関数を定義するための手段と、
前記出力と所望の出力の間における差、および前記出力の前記検知された位置における誤差に対する感度を同時に低減するべく前記電流プロファイルを調整するための手段であって、前記電流プロファイル内の電流が、前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数に基づいて、前記供給源によって供給可能であることを保証するための手段を含む、手段と、
前記電流プロファイルに従って前記1つまたは複数の相内の電流を制御するための手段と、
を含むことを特徴とするシステム。
前記関数は、前記1つまたは複数の相のための相電圧を含むベクトルの大きさが、前記供給源が前記電気機械に対して電流を供給するDCリンク電圧を超える場合に非ゼロになることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
前記電流プロファイルを調整するための手段は、関連付けされた式のセットを解くための手段を含み、前記セットは、前記出力と所望の出力を等しいとする第1の式、検知された位置における誤差に対する前記出力の感度の関数をゼロに等しいとする第2の式、および前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数をゼロに等しいとする第3の式を含むことを特徴とする、請求項10〜14のいずれか1項に記載のシステム。
前記電気機械は、永久磁石機械、平衡給電スイッチトリラクタンス機械、およびこれらのハイブリッドのうちの1つであることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載のシステム。
前記電気機械の動作の間に受信された信号に基づいて前記電流プロファイルを調整するための手段を含むことを特徴とする、請求項10〜16のいずれか1項に記載のシステム。
前記電気機械の動作の間に受信された信号に応答して、前記電気機械の前記出力を、前記相電流および検知された位置に関係付ける関数のパラメータを調整するための手段を含むことを特徴とする、請求項10〜17のいずれか1項に記載のシステム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の制御に関する。より詳細に述べると、本発明は、機械の出力トルク内のリプルが低減されるように当該機械の相巻線内における電流の制御に使用するための電流プロファイルの導出に関する。
【0002】
電気機械は、当該機械が電気的エネルギを力またはトルク等の機械的出力に変換する電動モード、または当該機械が機械的エネルギを電流等の電気的出力に変換する発電モードのいずれかにおいて動作させることが可能である。いずれの場合においても、出力が、機械への入力、機械の物理的設計、または機械の建造における不完全性、たとえば機械的または磁気的な非対称性等に起因し得る時間的変動成分を有する可能性がある。たとえば、モータとして動作しているブラシレス直流(DC)機械は、それの出力トルクに、機械に供給を行なっているDCリンク上の時間的変動に起因するか、ステータ積層体におけるスロットの寸法に起因するか、ロータ上の磁石の強度ならびに位置に起因するか、エンコーダの位置決めに伴う問題等の製造上の変動に起因するか、またはこれらの組合わせに起因するリプル成分を有することがある。
【0003】
多くの努力が、時間的または角度的変動成分を低減する方法、特に、モータの出力におけるトルクのリプルを低減する方法に注ぎ込まれてきた。機械の充分な知識を用いれば、滑らかなトルクを引渡す電流波形(所定のトルク需要のためのロータ角度または時間の関数として指定される各相のための相電流である電流プロファイルとしても知られる)を計算することが可能である。しかしながら、その種のプロファイルは、通常、ステータに対するロータの角度位置を記述する信号に含まれる誤差、すなわち、いわゆる角度誤差に対して非常に鋭敏である。数学的には、この鋭敏性が解の感度と呼ばれる。ゼロ感度の解は、角度誤差によって受ける影響が最小のものである。疑義を回避するために述べると、角度誤差は、たとえば測定誤差、評価誤差、または、たとえば補間を伴うかまたはそれを伴わない参照テーブル内における限られた数の角度において電流制御規則が指定される方法に起因する打ち切り誤差によって生じ得る。
【0004】
出力リプルを低減するための先行技術の方法は存在しており、次に述べる。
たとえば、非常に正確なエンコーダまたはレゾルバを使用してロータ位置を測定することによって、ソースにおける角度誤差の低減を得ようとする方法がある。これらは、有効となり得るが、通常は非常に高価であり(トランスデューサのコストが、ときとして機械自体のコストに届く)、ロータに対する精密な整列を必要とする。大量製造デバイスについてこれらは、コスト効果的な解決手段ではない。これらのほかにもロータ位置センサがモータの回転にわたって誤差を呈することになり、たとえばパワーステアリング応用において要求されることのある低コスト製品の場合においては特にそれが当て嵌まる。
【0005】
ほかの例は、機械に印加される電圧(したがって、供給される電流)に取り組む方法である。これらの方法のほとんどは、角度誤差の問題をまったく考慮しておらず、したがってこれらは、役に立つ解決手段を提供するように見えるが、駆動ごとに角度誤差が異なり、予測不能であることから、実用上それらは、有効性において非常に変動的である。たとえば非特許文献1は、電流波形を決定する方法を提示しているが、解の中で使用されている角度情報における誤差の問題に取り組んでいない。
【0006】
角度誤差と印加電圧との考察を組合わせる試みもなされている。たとえば特許文献1は、滑らかなトルクに帰着し、しかもゼロ(角度)感度も有する電流プロファイルを計算する方法を教示している。しかしながら、発明者らは、速度ならびにトルク需要の所定の動作ポイントのためのモータの動作を達成する方法で相電流を指定することは可能であるが、これらの電流が駆動システムの性能の中に収まらない範囲のDCリンク電圧を必要とすることがあるという点においてこの方法に限界があることに気付いた。産業界には、(a)角度誤差に敏感ではなく、(b)DCリンクにおける限界またはそれの変動に適応可能であり、(c)製造上の変動に敏感ではなく、かつ(d)滑らかな出力を与える機械の出力を生み出すことが必要になる多くの応用が存在する。
【0007】
したがって、利用可能なDCリンク電圧の限界およびロータの位置を記述する信号の品質を考慮に入れた電気機械における出力リプルを低減する方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、周知の方法の限界および欠点を克服するシステムおよび方法を提供し、かつ滑らかな出力を達成する適切な相電流の計算方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、供給源から電気機械の1つまたは複数の相を励磁するための電流プロファイルを導出し、機械の所望の出力を獲得するための方法およびシステムを提供する。
【0012】
本発明は、供給源から電気機械の1つまたは複数の相を励磁するための電流プロファイルを導出し、前記電気機械から所望の出力を獲得する方法であって、前記電気機械は静止部分と前記静止部分に対して相対的に移動する可動部分とを備えて前記所望の出力を提供する、方法において、
前記電気機械の出力を、相電流および前記静止部分に対して相対的な前記可動部分の検知された位置に関係付ける関数を定義するステップと、
前記電流プロファイルを調整して、前記出力と所望の出力の間における差、および前記出力の前記検知された位置における誤差に対する感度を同時に低減するステップであって、前記電流プロファイルの調整が、前記電流プロファイル内の電流が前記供給源によって供給可能であることを保証することを含む、ステップと、
前記電流プロファイルに従って前記1つまたは複数の相内の電流を制御する、または検知された位置によってアドレス可能な前記電流プロファイルを、前記電気機械を制御する際に使用する準備が整った機械読取り可能な記憶媒体に記憶するステップと、
を含むことを特徴とする方法である。
【0013】
本発明において、前記出力はトルクであることを特徴とする。
本発明において、該方法は、前記電流プロファイルを、前記出力と前記所望の出力の間における差、前記検知された位置における誤差に対する前記出力の感度、および前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数を同時に低減するべく調整するステップを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記関数は、前記1つまたは複数の相のための相電圧を含むベクトルの大きさが、前記供給源が前記電気機械に対して電流を供給するDCリンク電圧を超える場合に非ゼロになることを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記DCリンク電圧は、公称DCリンク電圧であることを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記DCリンク電圧は、検知されたDCリンク電圧であることを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記電流プロファイルの調整は、関連付けされた式のセットを解くことを含み、前記セットは、前記出力と所望の出力を等しいとする第1の式、検知された位置における誤差に対する前記出力の感度の関数をゼロに等しいとする第2の式、および前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数をゼロに等しいとする第3の式を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記電気機械は、同期機械、永久磁石機械、平衡給電スイッチトリラクタンス機械、およびこれらのハイブリッドのうちの1つであることを特徴とする。
【0019】
本発明において、該方法は、前記電流プロファイルを使用して前記電気機械を動作させるステップと、前記電気機械の動作の間に受信された信号に基づいて前記電流プロファイルを調整するステップとを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明において、該方法は、前記電流プロファイルを使用して前記電気機械を動作させるステップと、前記電気機械の動作の間に受信された信号に応答して、前記電気機械の前記出力を、前記相電流および検知された位置に関係付ける関数のパラメータを調整するステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明は、供給源から電気機械の1つまたは複数の相を励磁するための電流プロファイルを導出し、前記電気機械の所望の出力を獲得するためのシステムであって、前記電気機械が静止部分と前記静止部分に対して相対的に移動する可動部分とを備えて、前記所望の出力を提供する、システムにおいて、
前記電気機械の出力を、相電流および前記静止部分に対して相対的な前記可動部分の検知された位置に関係付ける関数を定義するための手段と、
前記出力と所望の出力の間における差、および前記出力の前記検知された位置における誤差に対する感度を同時に低減するべく前記電流プロファイルを調整するための手段であって、前記電流プロファイル内の電流が前記供給源によって供給可能であることを保証するための手段を含む、手段と、
前記電流プロファイルに従って前記1つまたは複数の相内の電流を制御するための手段と、
を含むことを特徴とするシステムである。
本発明において、前記出力はトルクであることを特徴とする。
【0022】
本発明において、該システムは、前記電流プロファイルを、前記出力と前記所望の出力の間における差、前記検知された位置における誤差に対する前記出力の感度、および前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数を同時に低減するべく調整するための手段を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明において、前記関数は、前記1つまたは複数の相のための相電圧を含むベクトルの大きさが、前記供給源が前記電気機械に対して電流を供給するDCリンク電圧を超える場合に非ゼロになることを特徴とする。
【0024】
本発明において、前記DCリンク電圧は、公称DCリンク電圧であることを特徴とする。
【0025】
本発明において、前記DCリンク電圧は、検知されたDCリンク電圧であることを特徴とする。
【0026】
本発明において、前記電流プロファイルを調整するための手段は、関連付けされた式のセットを解くための手段を含み、前記セットは、前記出力と所望の出力を等しいとする第1の式、検知された位置における誤差に対する前記出力の感度の関数をゼロに等しいとする第2の式、および前記供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数をゼロに等しいとする第3の式を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明において、前記電気機械は、永久磁石機械、平衡給電スイッチトリラクタンス機械、およびこれらのハイブリッドのうちの1つであることを特徴とする。
【0028】
本発明において、該システムは、前記電気機械の動作の間に受信された信号に基づいて前記電流プロファイルを調整するための手段を含むことを特徴とする。
【0029】
本発明において、該システムは、前記電気機械の動作の間に受信された信号に応答して、前記電気機械の前記出力を、前記相電流および検知された位置に関係付ける関数のパラメータを調整するための手段を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
いくつかの実施形態において、機械の出力を相電流および検知された位置と関係付ける関数が定義される。電流プロファイルが、出力と所望の出力の間の差をはじめ、検知された位置における誤差に対する出力の感度を同時に低減するべく調整される。電流プロファイルは、電流プロファイル内の電流が供給源によって供給されることが可能であるように調整される。電流プロファイルは、電流プロファイルに従って1つまたは複数の相における電流を制御するために使用されるか、または検知した位置によってアドレス可能となるような方法で、電気機械の制御における使用のための準備が整った機械読取り可能な記憶媒体上に記憶される。
【0031】
出力は、(たとえば、回転機械における)トルクとすることができる。相応じて、線形機械においては、出力が力になる。
【0032】
いくつかの実施形態においては、電流プロファイルが、出力と所望出力との間の差、検知された位置における誤差に対する出力の感度、および供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数を同時に低減するべく調整されて、それにより電流が供給源によって供給されることが可能であることが保証される。いくつかの実施形態においては、関数が、1つまたは複数の相のための相電圧を含むベクトルの大きさが、供給源が機械に対して電流を供給するDCリンク電圧を超える場合に非ゼロになる。DCリンク電圧は、公称DCリンク電圧としてもよく、あるいはDCリンクに接続される電圧センサによって検知されるとしてもよい。電流プロファイルの調整は、いくつかの実施形態においては関連付けされた式のセットを解くことを含むが、ほかの実施形態においては、電流プロファイルを調整するためのこのほかの、たとえば適切なコスト関数の条件付き最適化または条件付きでない最適化といった方法が使用される。いくつかの実施形態においては、式のセットが、出力と所望の出力を等しいとする第1の式、検知された位置における誤差に対する出力の感度の関数をゼロに等しいとする第2の式、および供給源によって供給されることが可能な限界を超える電流にペナルティを課す関数をゼロに等しいとする第3の式を含む。
【0033】
いくつかの実施形態においては、電気機械が永久磁石機械であるか、または同期リラクタンス機械になる。ほかの実施形態においては、電気機械が平衡給電スイッチトリラクタンス機械、または永久磁石機械と平衡給電スイッチトリラクタンス機械とのハイブリッドになる。
【0034】
いくつかの実施形態においては、電流プロファイルを使用して電気機械を動作させ、当該機械の動作の間に受信される信号に基づいて電流プロファイルが調整される。いくつかの実施形態においては、電流プロファイルを使用して機械を動作させ、当該機械の動作の間に受信される信号に応答して当該機械の出力を相電流および検知される位置に対して関係付ける関数のパラメータが調整される。機械の動作の間においてオンラインで計算に使用される電流プロファイルおよび/または関数を適合することによって、時間にわたる機械の変動を追跡すること、および考慮に入れることが可能であり、所望の制御目的の達成について電流プロファイルが常に最新であることが保証される。
【0035】
本発明は、多様な形で実践することが可能であり、それらのいくつかは、以下の本発明の例示的な実施形態の詳細な説明を読むことによって、また添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
使用する記号の定義
以下の説明において使用される記号および量は、次に示すとおりの定義を有する。
【0038】
θ 機械的(ロータ)角度(位置と呼ぶこともある)
T
Actual 電流および機械的角度の関数としての実際のモータのシャフトのトルク
I
αβ=[I
alpha;I
beta] 所定の機械的角度θについてのαβ基準フレームにおける機械の電流
I=[I
1;I
2;…I
N] 所定の機械的角度θについての任意の基準フレーム(関連した基準フレーム内において、成分n=1…N)における機械の電流
T
Demand トルク需要
【0039】
【数1】
ε αβ基準フレーム内の電圧のドット内積と、利用可能なリンク電圧の平方の3分の2の間の差
V
αβ=[V
α;V
β] αβ基準フレーム内の機械(相)電圧
V=[V
1;V
2;…V
N] 任意の基準フレーム内の機械(相)電圧
V
dc DCリンク電圧
【0040】
【数2】
w
Voltage(x) xにおいて評価された電圧包絡線関数
w
Sensitivity(x) xにおいて評価された感度包絡線関数
【0042】
ソルバ需要、すなわちトルク需要、電圧包絡線関数の値についての需要、および感度包絡線関数の値についての需要からなる3×1行列
【0043】
【数4】
トルク、電圧包絡線関数、および感度包絡線関数についての実際の値の3×1ベクトル
【0045】
トルクおよび電圧ならびに感度の包絡線関数について評価されたアルファ−ベータ電流に関するヤコビアン行列
【0047】
トルクおよび電圧ならびに感度の包絡線関数について評価された任意の基準フレームにおける電流に関する
δI
αβ ニュートン反復ソルバの1ステップから結果として生じるアルファ−ベータ電流に対する反復変化
δI 任意の基準フレーム内における電流についての反復変化
I
αβ(new) ニュートン反復ソルバによって計算されるアルファ−ベータ電流についての新しい値
I(new) 任意の基準フレーム内における電流についての新しい値
I
αβ(old) ニュートン反復ソルバによって計算されるアルファ−ベータ電流についての古い値
I(old) 任意の基準フレーム内における電流についての古い値
W 3×3の重み付け行列
【0048】
ここでは「d軸電流注入」という用語が使用されることに注意されたい。この分野において使用されている代替となる用語は、「弱め界磁」および「位相進み」であり、これらは類似の意味を有する。
【0049】
本発明は、低減感度、滑らかなトルク、制限があるか、または時間的に変動するDCリンク電圧を考慮に入れた電流プロファイルを計算することによって先行技術のテクニックに対する向上をもたらしている。これらの解決手段は、必要時に角度誤差に対する感度の増加を許すことによって可能となる。計算は、感度が変動することを可能にし、すなわちそれが単一の固定された値以外であることを許し、そのことは、解の生成および駆動装置の実際的な動作条件を満たす試みにおける、より大きな柔軟性を可能にする。
【0050】
これらの改良は、所望の特性を有する電流曲線の生成を、特に、DCリンクの値および動作の速度が与えられたときに望ましい鋭敏性の程度を伴って必要なトルクを提供することを可能にする。明らかに、システムの状態を前提とする解の要件と、特にDCリンク電圧の間をバランスさせることは必要である。提案スキームの1つの利点は、システム設計者が、トルク出力、感度、および「インボルト」(利用可能なDCリンク電圧によって達成し得る電流)であることを駆動装置のすべての動作ポイントにわたって明示的にバランスさせることが可能であるということである。
【0051】
トルクリプルを最小化するか、または排除する電流プロファイルを機械的角度の関数として導出するためには、電流、機械的角度、および機械のパラメータの関数としてトルクを提供する数学モデルが必要である。これは、機械モデリングの分野において周知のとおり、多くの形式のうちの1つを取ることが可能であり、特定の形式のモデルが本発明にとって重要であるということはない。適切なモデルが、たとえば特許文献1の中で論じられている。望ましい場合には、このモデルが、より一般的に定義される機械パラメータ(たとえば、位相抵抗、位相インダクタンス等)に加えて、相巻線間における相互インダクタンスおよび磁気回路内における非線形性といった効果を含むことが可能である。これらのモデルパラメータは、機械から、あるいは計算から収集されたテストデータから獲得することが可能である。磁束についてのモデルを解くことによって、機械のトルク出力を、システムの共エネルギを考察することにより計算することが可能になる。方法は、機械を動作させているときにモデルパラメータの更新が行なわれるのであれば、たとえば適切なパラメータ評価スキームを使用して新しいデータを収集することによってそれが更新されるのであれば、適応型とすることが可能である。
【0052】
磁束モデルの定義ならびに評価および対応するトルクモデルの導出は、非特許文献2の中で論じられており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0053】
モデル構造が選択された後は、当業者が認識することになるように、テストデータからモデルパラメータを評価するための多数の方法のうちの任意の1つを使用することが可能である。実験室開発においては、グラムの行列方法を使用することが好ましかったが、実践的な機械駆動においては、数値的に複雑な問題を考慮した結果として、帰納的最小二乗法が好ましいと見られる。グラムの行列方法は、非特許文献3の中で論じられており、帰納的最小二乗法は、非特許文献4の中で論じられており、これらの文献は両方ともに参照によって本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態においては、モデルパラメータが、機械の設計、製造、または組立ての間に一度だけ評価され、その後は固定されたまま維持される。ほかの実施形態においては、モデルパラメータが、機械の動作寿命の間にわたって周期的に評価されるか、または機械の動作の間にわたって連続的に評価される。いずれの場合においても、偏導関数の計算を可能にする機械の角度および電流の関数としての出力トルクについての解析モデルが獲得される。
【0054】
この分野において周知のとおり、相電流は、考察中の機械のタイプに応じて異なる基準フレームにおいて考察すると好都合である。異なる基準フレームの使用および対応する座標変換は、上述の非特許文献2の中で論じられている。いくつかの機械、特に永久磁石(PM)機械、平衡給電スイッチトリラクタンス(SR)機械、またはこれらのハイブリッドについては、abc基準フレームではなく、αβ基準フレームにおいて作業を行なう方が、これが式における複雑性の次数を低減することから数学的に好都合である。より一般的な任意の基準フレームの場合についても以下において考察する。
【0055】
上で述べたモデルは、電流についての解析解を有することがなく、すなわち、一般に、要求されたトルクを指定すること、および電流を計算することが可能でないということになり、これは式が閉じた形式を有していないことによる。それに代えて、反復的方法を採用することが可能であり、それにおいては試行電流値が選択され、トルクが計算される。その後、計算されたトルク値を要求された値に向けて移動するべく電流が調整されて、トルクが再計算される。この種の方法は、数値解析法の分野ではよく知られており、たとえば、参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献5を参照されたい。
【0056】
図1は、本発明の1つの実施形態に従った駆動システムについてのブロック図である。このシステムは、駆動システムの機械の相を励磁するためのインバータを含む駆動装置2を含む。機械は、静止部分(ステータ)および、静止部分に対して相対的に移動する、出力トルクを提供するためのシャフトに結合された部分(ロータ)を有する。インバータは、この分野で周知のとおり、電流コントローラ4の制御の下に置かれる。電流コントローラ4のための望ましい電流は、相電流プロファイル6によって設定され、これは、DCリンク電圧8(駆動装置のための公称DCリンク電圧または検知されたDCリンク電圧のいずれか)の入力およびトルク需要、角度、および速度の入力を速度/トルクコントローラ10から受信するが、これについてもこの分野で周知である。たとえば、上で引用されている非特許文献2を参照されたい。理解されるであろうが、速度の入力はオプションであり、いくつかの実施形態においては存在しない。
【0057】
パラメータ評価器12は、相電圧、電流、速度、および角度フィードバックを受信し、より詳細を以下において述べるとおり、電気モデル14のパラメータを評価する。いくつかの実施形態においては、パラメータ評価がオンラインで生じ、パラメータ評価器12は、前述のとおりにデータを受信し、評価されたパラメータを、駆動装置が動作している最中に更新する。いくつかの実施形態においては、パラメータ評価器が、帰納的最小二乗評価器であり、忘却因子を含む。ほかの実施形態は、異なる評価器、たとえばカルマンフィルタを使用する。パラメータ評価の品質は、いくつかの実施形態においては、電気モデル14からの出力と駆動装置2からのフィードバックとの間における残余を試験することによってオンラインで試験される。電流プロファイル計算機16は、電気モデル14のパラメータを受信し、詳細を後述するとおり、トルクモデルを使用して電流プロファイル6を計算するか、または更新する。
【0058】
いくつかの実施形態においては、パラメータ評価器12および電流プロファイル計算機16が、通常の制御動作(ブロック2,4,6,8,10)が生じている間にバックグラウンドで動作する。パラメータ評価およびその後の電流プロファイル計算が完了したことがわかると、たとえば上で言及した残余が閾値より小さくなり、プロファイル計算が完了すると、相電流プロファイルが、電流プロファイル計算機16からの更新後のプロファイルを用いて更新される。
【0059】
いくつかの実施形態においては、工場デフォルト設定を提供する実験室セットアップにおける特定の機械および駆動装置についての初期電気モデルが定義され、初期パラメータが評価される。使用においては、実施形態に応じて速度ループコントローラの出力から、またはトルクコントローラから駆動装置がトルク需要を作り出す。トルク需要は、上で述べた情報とともに、電流コントローラ4に対して入力する相についての望ましい電流の参照に使用され、続いてそれが駆動装置2を制御する。
【0060】
ここで電流プロファイルの計算に目を転ずると、展開されるトルクには、それがトルク需要と等しいこと、たとえば駆動装置のユーザによって設定されたトルク需要と等しいことを必要とするという制約を課すことが可能である。これは、次式のとおりに表すことができる。
【0062】
さらに、角度に関するトルクの導関数をゼロに強制する制約、すなわちそれがゼロ感度を有するという制約を課すことが可能である。
【0064】
ニュートン反復ソルバの系(たとえば、上で引用した非特許文献5参照)は、結合した式(1)および(2)について解く(すなわち、相電流を見つけ出す)のための方法の適切な集合である。
【0065】
式(1)および(2)において上記の条件を満たす相電流を見つけることは可能であるが、発明者らは、これらの電流の生成に必要とされる電圧が駆動システムの性能を超越する場合にはこの情報が学術的な関連性のみに属し得ること、したがって必要とされる電圧がDCリンク電圧より大きくないことを保証する追加の制約を導入する必要があることに気付いた。数学的には、機械が定常状態で動作しているとき、電圧が次のとおりに定義される。
【0067】
これにおいてkは、適用される任意の座標変換によって決定される定数である(変換が行なわれず、相電圧および電流が直接使用される場合にはk=1、電流がαβ基準フレームに変換される場合にはk=2/3)。理解されることになろうが、「インボルト」のコンセプトを捕らえる式であれば、このほかの式も等しく可能であり、たとえばε=|V|−kV
dcがある。
【0068】
これらの式においては、εがゼロに等しいかそれより小さいときに実用的な解が与えられる。DCリンク電圧V
dcは、供給電流に対して供給源が見積もられる公称の固定電圧値とするか、または瞬時的なDCリンク電圧の変動を考慮に入れる実施形態においては実際に検知された瞬時的なDCリンク電圧とすることができる。
【0069】
先行技術においては、特許文献1によって代表されるように、εまたは「インボルト」を測定する類似の量が、ソルバによって考慮に入れられていない。「インボルト」であるとする要件を考慮に入れるため、本発明の実施形態は、負またはゼロの値に対して基本的にゼロとなり(要求された電圧が利用可能なDCリンク電圧内にあるとき)、非負の値に対しては正となる(すなわち、DCリンク電圧が、必要とされる電流を維持するに不充分であるときのいわゆる「アウトオブボルト」条件)重み付けまたはコスト関数を定義する。区分的線形関数がこれに適しているが、シグモイド関数等のこのほかの関数もまた可能である。
図2に、いくつかの実施形態に従った区分的線形重み付けまたはコスト関数を示す。この一般形式の重み付け関数の使用は、電流についての反復的解法が、課せられたほかの制約の中で駆動装置から獲得され得る最小のトルクリプルがもたらされる実際的な範囲内に駆動されることを可能にする。
【0070】
DCリンク電圧に対する制約の存在下において実行可能な解を見つけるために、必要時に感度値が範囲内に移動されることを可能にしなければならない。これの達成においても重み付け関数が、上で述べた方法と類似の方法に従って使用することができる。この方法により、許容可能な範囲、たとえば[0,6]内に入る感度を有する解を達成することが可能である。感度は、Nm/(角度誤差のラジアン)を単位として有する。
図3は、いくつかの実施形態に従って感度値に適用される適切な重み付け関数を表わしている。これは区分線形関数であり、感度がゼロときに関数が最小値を有し、感度が増加するに従って重みが増加するように選択されており、したがって、この重み付け関数は、ほかの、たとえば電圧制約からのペナルティが課せられない場合には解がゼロ感度に向かって移動することを促進する。前述と同様に、多くの異なる重み付け関数が可能であり、たとえば
図4に示されるとおり、解がより迅速に許容可能なエリア内に強制されるように感度がゼロから移動するに従って増加する勾配を各線分が有する、より短い線分が使用されることも可能である。制約の重要度は、重み付け関数のyスケールを調整することによって調整することが可能である。
【0071】
さて、3つの結合された式[(1),(2)および(3)]を得たところで、解を見つけ出すべく解を駆動することになる
図2または
図3に示されているような重み付け関数を考慮に入れてそれらを解く必要がある。式(2)および(3)は、次の式(4)および(5)のように変形して重み付け関数を反映させることが可能である。
【0075】
ソルバの詳細な構成は、独立の電流の数に依存する。機械が、独立した電気回路内の相巻線を用いて伝統的に運転が行なわれているとおりのスイッチトリラクタンス機械である場合には、各相について1つの独立した電流が存在することになる。しかしながら、電流の瞬時的合計がゼロとなるように機械の相巻線が共通接続されている場合(いわゆる「平行給電」配置の場合)には、2つの独立した電流が存在する。この状況は、平行給電スイッチトリラクタンス機械はもとより、誘導、同期、および永久磁石機械において遭遇する。その種の、独立した電流の数と相の数(たとえば、いくつかの実施形態において3)が異なる状況では、反復ソルバ内においてムーア−ペンローズ擬似逆行列(スターのサフィクスによって示される)を使用することが可能である(上で引用した非特許文献5参照)。
【0076】
ニュートン反復ソルバの反復ごとに解かれる式を示す。
需要:
【0082】
理解されることになろうが、伝統的な動作が行なわれている、独立に接続される巻線および3つの相を伴うスイッチトリラクタンス機械の場合においては、ヤコビアンが正方行列になり、かつM
*=M
−1、すなわちヤコビアンの逆行列になる。電流の新しい値が、その後に続く反復におけるトルク(たとえば、前述したとおり、磁束モデルおよび共エネルギまたは界磁エネルギマッピングを介して導出されたトルクについての式を使用することによる)、感度、および電圧要件等の量の計算に使用される。ニュートン反復方法における通常の改善、たとえば反復ごとにヤコビアン行列の更新を行なわないといった改善は、有効のまま残る(上で引用した非特許文献5参照)。
【0083】
αβ基準フレーム内において定義された電流および電圧の場合においては(たとえば、同期、PM、または平衡給電SR機械の場合においては)式(3)が次式のとおりとなる。
【0085】
この場合においては、式(8)に示されていたヤコビアン行列が次のとおり、3×2の行列になる。
【0087】
その結果として、上のアスタリスクのサフィクスによって示されているとおり、式(9)の評価においてムーア−ペンローズ擬似逆行列が使用される。これ以外についてはニュートン反復方法が無変更のまま残り、式(1),(9)および(10)が、IをI
αβによって置換することによって相応じて変更される。
【0088】
いくつかの実施形態においては、重み付け行列がソルバ内に配置され、ニュートン反復ソルバのこの成分を
【0090】
【数21】
に変更する。この重み付け行列の存在は、柔軟性を追加する。たとえば、感度とは独立に電圧制約に関して解を得ようとするときには、行列内の適切な対角の項をゼロにセットすることによってそれが達成される。
【0092】
重み付け行列は、0および1の対角の項に限定されず、任意の実値の項を対角に使用することによって異なる重みを割当てることが可能である(対角以外の項は0に維持する)。
【0093】
ソルバは、開始ポイント(すなわち「シード」)の値に応じて任意数の解に到達することができる。したがって、迅速かつ信頼性をもって望ましい解に到達することを助ける一貫性のある方法でソルバにシードすることが重要である。経験からは、初期値を、正常動作において機械に期待される値に設定することによって極めて単純にこれがなされることが示されている。たとえば、3相PM機械においては、これが通常の正弦曲線形状となり、SR機械については、より一般的なユニポーラ電流波形が使用されることになる。この方法に従って、それが動作する各角度についてソルバをシードするか、あるいは最後の角度において獲得された解を使用することができる。その種のシードストラテジは、同期、PM、およびハイブリッドまたは平衡給電スイッチトリラクタンス機械について有効である。
【0094】
いくつかの実施形態においては、充分な処理パワーを前提として(所定のトルク需要のための)相電流が、機械が動作している間にオンラインにおいて角度毎角度で計算される。ほかの実施形態においては、トルク需要および角度の離散的な集合についての電流値が一度計算された後に2次元(2D)参照テーブル内に記憶される。いくつかの実施形態においては、これら2つのアプローチのハイブリッドが使用され、たとえば、トルク需要が変化するときの角度に対する電流の1次元(1D)参照テーブルをオンザフライで計算するか、または当該1Dまたは前述した2Dテーブルを周期的に再計算して機械における変化を考慮に入れる。この分野において周知のとおり、1Dまたは2Dテーブルを直接使用して相電流を参照すること、または、望ましい場合には1次元または2次元補間を適宜使用して相電流を導出することが可能である。テーブルの参照は、電流需要値を、相応じて相電流を制御するための電流コントローラの入力として返す。いくつかの実施形態においては、トルク需要および角度によってインデクスされる2次元参照テーブルが生成される。DCリンク電圧の変動および/または速度を考慮に入れるために、対応する、より高い次元の参照テーブルが、いくつかの実施形態においては使用される。
【0095】
1つの実施形態においては、システムが最初に使用されるとき、機械パラメータが「工場設定」され、すなわちそれらが概念的な値に設定される。時間が経過するに従って、また機械の駆動システムが使用されるに従ってデータが収集される。電気モデルは、これらのパラメータおよびデータを使用して評価されるとき、観察されたものと比較して異なる出力を作り出す可能性がある。たとえば、電気モデルは、既知の電流、角度、および速度を使用して評価される。その後、適切な手段が使用され、モデルによって使用されたパラメータが充分に正確であるか否かが決定される。それが否であれば、それらが新しいパラメータのセットと置換される。
【0096】
機械および駆動装置が使用されるに従ってデータが収集される。このデータが、機械モデルの更新に使用される。すなわち、パラメータの新しい評価が、前述した最小二乗法のような適切なパラメータ評価器を使用して計算される。この更新プロセスの停止ポイントは、モデルが、既知の印加電圧の予測において充分に正確(たとえば、誤差の値に対する閾値によって指定されるとおり)となったときをもって決定される。
【0097】
新しい、より正確なパラメータのセットが生成されると、続いてそれが電流プロファイルの更新に使用される。以下、どのようにして電気モデル内のパラメータが機械のトルクモデル内に自然に流れていくかについて考察する。角度に関する解析的偏導関数とともにプロファイルソルバプロセスにおいて使用されるモデルは、このトルクモデルである。新しいパラメータが、アウトオブボルト条件を評価する式において使用されることについてもここで言及しておくことが有用であろう。多様なトルク、速度、およびDCリンク電圧(V
dc)値についての電流プロファイルが評価された後は、新しい参照テーブルを用いて古い参照テーブルが置換される。すなわち、駆動装置の動作において適応型ステップが生じる。DCリンク電圧内の変動は、いくつかの実施形態においてそれらがテーブル内の参照インデクスとなることから、自然に適応される。
【0098】
当然のことながら、性能の損失が無視可能であるか、または許容可能である場合には、パラメータの更新を行なわない選択をシステムが行うこともできる。その種の決定が、多様な運用上の理由から行われる可能性がある。
【0099】
ここで参照問題の演算の複雑性が、いくつかの実施形態においては軽減されることに言及しておくことは有用であろう。たとえば、機械が低い抵抗を有している場合には、速度およびDCリンク電圧のインデクスを単一の正規化された速度インデクスにより置換可能であることに注目することによって参照テーブルの次元が下げられる。
【0100】
いくつかの実施形態においては、速度フィードバックが、速度誤差の計算および速度ループコントローラの駆動に使用されるが、ほかの実施形態においては、トルクにより制御されるシステムが提供される。速度自体もまた、モデルパラメータ評価プロセスにおける値として使用され、それが電気の式の中に現れる。
【0101】
例示的な磁束モデルおよび対応するトルクモデルならびに相電圧モデルの詳細は、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1の中に見ることができる。特許文献1はまた、トルクモデルならびに対応するソルバおよびトルクならびに感度に関するヤコビアンの計算を含む統合されたコントローラの例も提供する。
【0102】
次に、いくつかの実施形態において使用されるモデルを考察する。もっとも重要な式を次に挙げる。
磁束 式(15)
電気 式(19)
トルク 式(25)
【0103】
全般に関して言えば、磁束についてのモデルは、関数と係数との積の総和を含み、それは角度の調和関数における三角関数および相電流における多項式のnタプルである。これらのnタプルは全体を張る集合を形成し、厳密に言うとこれは直交である必要がある。これが真であるためには、多項式もまた直交である必要がある。しかしながら、比較的低いパワーの電流を用いる場合には、この追加の複雑性を回避することが可能である。その後、磁束についての式が、電圧を電流、速度、および角度と関係付ける電気の式に代入される。モデルの係数は、テストデータを使用して評価することが可能である。続いて磁束についてのモデルを使用し、当該モデルを、共エネルギを通じて適切にトルクに変換することによって、トルクモデルを生成することが可能である。このプロセスが行なわれるとき、電気モデルからトルクモデルへのパラメータの自然な流れが生じる。
【0104】
ここで注意する必要があるが、その種のアプローチを用いる場合には、より一層複雑なモデルを定義することによって電気の式の残余を任意に小さくすることが可能である。しかしながら、共エネルギを通じてトルクにマップした後は、結果として得られるモデルが、サイクル毎ベースの修正であってさえ根本的に誤っていることがあり得る。その種の問題は、上で引用したBillingsの中で考察されている。この問題は、2つの方法のうちの1つにおいて取扱われる。すなわち、電気モデルが慎重に構築され、かつトルク評価に対する影響が考慮されるか、または電気およびトルクのモデルを使用し、電気およびトルクのデータを用いてパラメータの同時当て嵌めを行なうかのいずれかである。
【0105】
全体を張る集合は、要素の集合として示される。これらの要素は、角度の調和関数の三角関数および電流における多項式のnタプルである。
(g
1,g
2,…)
【0106】
このことから磁束モデルが、全体を張る集合の要素の線形の和であるとして推測される。
【0107】
【数23】
したがって、電気の式が次式によって与えられる。
【0109】
これは、パラメータ評価プロセスにおいて計算される一定の係数であり、直接、瞬時トルクモデルになる。
【0110】
3相機械の位相φは、集合{1,2,3}に属するが、それについての電気の式は、次式によって与えられる。
【0112】
機械のシャフトの角度(θ)、機械のシャフトの速度(ω)、3相電流(I
φ)、および3相電圧(V
φ)のパラメータが、モデルの式の中で使用される。機械の磁気等価回路内における概念的な電流フロー(I
d)もまた必要である。磁束について採用されるモデル構造は、サイン、コサイン、電流のべき乗の多項式を使用する5タプルを基礎とし、次の式(15)によって示される。
【0114】
サインおよびコサインの5タプルを両方ともに有することによって、ロータ角度に関するバックEMFまたはインダクタンスの間の関係に関する仮定条件を設ける必要性がまったく存在しなくなる。上に示したような磁束モデルは、有意の数のパラメータを必然的に伴う。パラメータ数の縮小は、適切な仮定条件を使用することによって可能である。パーク変換の適用は、電流変数の数を3(abc基準フレーム)から2(αβ0基準フレーム)に減ずる。その種の仮定条件とともに次式を導入する。
【0116】
【数28】
これにより(15)が次のように書き直される。
【0118】
式(18)に与えられている磁束の導関数を式(17)に代入することによって次式が得られる。
【0120】
式(19)は、平衡給電3相永久磁石機械についての基準(abcおよびαβ0)電気モデルの混合静止フレームである。
【0121】
ロータ磁石の存在は、関連付けされる電流I
dが一定であり、かつ時間に関する導関数が恒等的にゼロである等価回路を使用することによってモデリングされる。この仮定条件は、機械の温度が変化し、結果として磁石の効力に変化をもたらすとき、保たれない。たとえば、高エネルギ磁石には、1℃ごとに約0.1%の変化がある。その種の考慮は、適応機構の使用に起因して安定状態で動作しているか、または妥当な冷却の存在するシステムについて案ずる必要はないが、熱遷移の間においていくらかの性能の低下があることは確かに暗示される。4つの有用な恒等式が、式(20)〜(23)によって導入される。
【0126】
上記の恒等式および磁気等価回路に関する仮定条件から、式(18)および(19)を次式のとおりに書き直すことが可能になる。
【0129】
式(25)は、適応型パラメータ評価スキームによって使用され、式(20)および(21)の右辺にある係数が評価される係数となる。電流測定に関連付けされた問題のいくつか、たとえばオフセット等は、機械のダイナミクスと関係がないいくつかの追加の項を式(25)に導入することによって取扱うことが可能である。特に、モデルの抵抗成分は、次式によって置換することが可能である。
【0131】
瞬時トルクについての式は、標準的な方法を使用し、共エネルギについての式を介して電気モデルから導かれる(たとえば、上で引用されている非特許文献2を参照されたい)。電気モデルから評価された係数がトルクについての式に直接マップされることがわかる。
【0133】
定数項は、ここで概説したアプローチを使用する境界変数を介して直接的に観察可能でないが、式(26)の3番目の二重総和の中に現れ、次のとおりにグループ化される。
【0136】
式(27)および(28)によって定義される定数項を式(26)に代入することによって次式が得られる。
【0138】
式(29)によって与えられるモデルは、モータにおけるトルク生成機構の有意の力学を含み、滑らかなトルクについて解く上で決定的であり、かつ瞬時トルクの評価を提供する。それに加えて、このトルク評価についての定式化は、積分タイプの活動を行なう必要性を巧妙にかわす。特に、これは、ステータ電流フローと磁石との相互作用、電流依存コギング成分として記述可能な項をはじめ、線形および非線形の飽和効果の結果としてもたらされるトルク成分を含む。この種の成分は、機械が飽和状態で動作する場合、または一定トルクからの振れが問題となる場合に重要となる可能性がある。その種の式の複雑性をマネージすることが望ましく、モデルの複雑性は、有意のトルク調和関数および非線形成分のみを扱いたいという希望によって左右される。これは、提案されている解の周波数成分および機械の駆動装置がそれに課せられた要求を満たす能力に直接影響を及ぼす。
【0139】
式(29)の単一の総和の係数(c
d0qnおよびd
d0qn)の観察可能でない性質の正式な証明は示されていないが、式(26)から、それらが境界変数を使用して直接評価可能でないことは明らかである。実験室においては、これらの観察可能でないパラメータを、ダイナモメータの使用、および機械の相が開放回路となっている間に測定されたトルクリプルに対するフーリエ級数の当て嵌めを通じて評価することが可能である。より直接的でないが、より実践的な方法が、特許文献1の中で述べられている。制御可能または観察可能なタイプのシステムについての一般的な考察は、たとえば非特許文献6から得ることができる。
【0140】
上で考察したヤコビアン行列は、電流に関するトルクの偏導関数および電流に関する感度の導関数からなる。ここで感度が、それ自体、角度に関するトルクの偏導関数であったことを想起されたい。ヤコビアン行列を評価するために、それぞれの解析的偏導関数が、上で考察した式または特定の機械のために適合された類似の式を使用して計算される。
【0141】
次に、どのようにして解が特定のタイプの機械に対して適用可能となるかについて述べる。
【0142】
以下の例においては、トルクリプルが次式により定義される。
Ripple = (T
max - T
min) / T
mean …(14)
【0143】
ここで、T
maxは、ロータサイクルにわたる瞬時トルクの最大値であり、T
minは、ロータサイクルにわたる瞬時トルクの最小値であり、T
meanは、ロータサイクルにわたる平均トルクであり、それぞれ一定のトルク需要に対するものである。この分野ではこのほかの定義、たとえばT
meanに置き換わる最大定格トルク等も知られており、等しく使用することができる。
【0144】
ここに述べられている電流を決定する方法は、同期、永久磁石、ハイブリッド、およびSR機械を含む多くの電気機械に対して適用することが可能である。例示としてではあるが、ここではそれが、出力の20%〜30%を提供することができるリラクタンストルクを伴った3相平衡給電PM機械に適用されている。先行技術の正弦波電流プロファイルを計算する方法、たとえば、非特許文献1の中で述べられている方法を使用してトルク需要を設定し、この需要を満たす電流プロファイルを、ロータサイクルにわたる適切な数のポイントにおける電流について解くことによって求める(この解は、当然のことながら、角度情報が誤差を有してないこと、および打ち切り誤差が存在しないことを前提としている)。
図5の点Aがこの条件に対応し、すなわち、ゼロ角度誤差(測定または打ち切り関連)に対してリプルがゼロである。ここで、電流プロファイルが一定に維持され、角度情報に誤差が存在する一連のポイントについてトルクが計算されたとすると、各ポイントについてトルクリプルを計算することが可能であり、それが
図5にプロットされている。これは、PとしてマークされたV字形状のグラフを与える。このグラフは、角度誤差がゼロのとき(すなわち、ポイントA)はトルクリプルがゼロであるが、角度情報の中に存在する誤差の量が小さいときでさえ、リプルが極めて急に上昇すること、すなわち実用的な駆動システムにおいて一般的な状況を示している。
【0145】
ここで前述した、「インボルト」であることを念頭に置き、角度誤差に対するトルクリプルの感度を用いて(すなわち、式(1)〜(13)によって述べられているとおり)設計された電流プロファイルを計算する方法を使用して上記を繰り返すことができる。それらの電流プロファイルを
図6に示す。トルクリプルについての結果を
図5のグラフQに示す。
図5および
図6に示されているプロットおよび結果は、6つのロータ極対を有する410ボルトのDCリンクのために設計された内部永久磁石機械から収集された実験データを使用して当て嵌められたモデルに基づいている。この機械は、定格が8kWに設定されている。
【0146】
結果は、記述されている方法が、角度情報における誤差に対する感受性が従来の解よりはるかに低い電流の解をもたらすことを示している。小さい誤差については実質的にトルクリプルにおける増加がなく、より大きな誤差については、先行技術の解を用いて経験されるトルクリプルにおける増加の半分に満たない。これは、このアプローチの有効性を実証している。
【0147】
本発明は、永久磁石、スイッチトリラクタンス、およびハイブリッド機械に適用できるが、実装の詳細は機械ごとに異なるものとなるであろう。類似の結果を、独立給電巻線を伴う機械、たとえば典型的なスイッチトリラクタンス機械についても達成することが可能である。この種の方法が有用であるとみられる産業上の応用は、滑らかなトルクまたは機械サイクルにわたる瞬時トルクの実質的な量の制御、角度誤差に対するトルクのゼロ感度または低減された感度、および機械の製造上の変動に対する制御システムのある程度の適合性のうちの1つまたは複数を呈する電流プロファイルを必要とする応用である。
【0148】
本発明が、機械の内部の測定によってではなく、機械の端子において収集可能なデータを使用することによってパラメータが評価される機械の数学的モデルを使用することから、磁気回路の非線形性、相間の相互インダクタンス等が機械の振る舞いにおける有意の役割を演ずる状況について特に適する。適応機構の利点もまた明らかである。これらの要件のいくつかまたはすべてが存在する典型的応用は、牽引システム、エレベータホイスト、舶用推進機構、パワーステアリング等である。
【0149】
開示されている配置の変形は、本発明から逸脱することなく可能であることは、当業者は理解するであろう。特に、本発明は、任意の実用的な数の相N=1,2,3,4,…を有する駆動装置または発電機に適用することができる。
【0150】
上記の説明は、「機械的角度」の項における計算に言及しているが、機械の可動部分の位置がそれの静止部分と相対的に提供される限り、本発明が角度測定についていずれかの特定の座標系に限定されないことは認識されるであろう。したがって、角度測定の完全なサイクルが可動部分の完全な回転(回転機械の場合)、電気的サイクル、またはそのほかの任意の適切なサイクルに対応する座標系を使用することが可能である。
【0151】
いくつかの異なる方法が存在し、それらのうちの任意の1つを使用して、上で考察した制約を同時に満たす数値問題を解くことができる。たとえば、一般的にニューラルネットワークおよび/またはファジィロジックを含む学習アルゴリズム、汎用アルゴリズム、またはこれらの類のアルゴリズムとしてソルバを実装することが可能である。具体的に言えば、最適化の点からソルバにアプローチし、最適化(最小化/最大化)される量をコスト関数のドット内積として、F’(x
*)・F(x
*)が最小/最大となるようなx
*を求めることを選択できる。その種のアプローチを用いて、多様な制約を課すかまたは課さないかの選択(制約付きまたは制約なしの最適化)を行うことができる。
【0152】
以上は、回転機械に関しての具体的な説明が出力シャフトのトルク、機械的またはロータ角度を参照して行なわれているが、ここで理解されるとおり、本発明は線形機械(たとえば、力の出力を有する)に対しても等しく適用可能であり、その場合には、以上行なってきた説明が、ロータという用語は線形移動部材を意味するものとの理解、および機械的またはロータ角度はそれの線形変位を言うとの理解をもって、相応じて解釈されることになる。ゆえに、以上のいくつかの実施形態の説明は、例示の手段としてのみなされたものであり、限定を目的とするためではない。当業者には明らかであるとおり、以上述べた動作に対して有意の変更を行なうことなく、配置に対して軽微な修正を行なうことは可能である。本発明には、特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている。