(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166522
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】ねじ節鉄筋回転用治具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20170710BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
E04C5/18 102
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-217627(P2012-217627)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70432(P2014-70432A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 篤
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−037385(JP,A)
【文献】
実開昭64−034178(JP,U)
【文献】
米国特許第03888596(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ節鉄筋の雄ねじに螺合可能な雌ねじが設けられた鉄筋結合部と、
前記鉄筋結合部と同軸上に一体的に設けられた六角柱状の工具用係合部とを備え、
前記鉄筋結合部は、筒状を呈しその内面に前記雌ねじが設けられた本体部と、前記本体部の軸方向の一端を閉塞する蓋部とを有し、
前記本体部は、機械式継手の雌ねじを有する部分が切断されることで構成され、
前記雌ねじの長さは、前記ねじ節鉄筋の雄ねじが螺合される機械式継手の雌ねじの長さよりも小さい寸法で形成され、
前記工具用係合部は前記蓋部上に設けられ、
前記工具用係合部の対向する2面間の間隔は、前記ねじ節鉄筋の対向する2面間の間隔よりも小さく形成され、
前記工具用係合部は、二つのナットが同軸上で溶接されることで構成されている、
ことを特徴とするねじ節鉄筋回転用治具。
【請求項2】
前記鉄筋結合部の外面は、ねじ節鉄筋に対して目立つ色で着色されている、
ことを特徴とする請求項1記載のねじ節鉄筋回転用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ節鉄筋どうしを機械式継手により接続する際に用いるねじ節鉄筋回転用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、橋脚の構築工事では、橋脚主筋が上下に連結される配筋作業が行われ、あるいは、建物の建築工事では、柱主筋が上下に連結される配筋作業が行われる。
そして、天候や技量に左右されず工期の短縮化を図るため、主筋としてねじ節鉄筋を用い、継手として、ねじ節鉄筋の雄ねじに螺合する雌ねじが形成された機械式継手を用いる場合が多い(特許文献1)。
機械式継手を用いる場合、上記の橋脚工事、建築工事のいずれの工事においても、下方のねじ節鉄筋の上端の雄ねじに機械式継手の下部の雌ねじを結合させ、この機械式継手の上部の雌ねじに対して、上方のねじ節鉄筋を回転させる作業が行われる。
従来、このねじ節鉄筋を回転させる作業は、作業員がパイプレンチやチェーンレンチなどの大型の工具を用い、それらをねじ節鉄筋に係合させ、回転させているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−350737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パイプレンチやチェーンレンチなどの大型の工具はねじ節鉄筋に係合させにくく、そのため作業効率を高めることができず、また、鉄筋を回転させにくいため、それら大型の工具を落とし易いという問題があった。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、機械式継手に結合させるためのねじ節鉄筋の回転作業を簡単に行なえるねじ節鉄筋回転用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明のねじ節鉄筋回転用治具は、ねじ節鉄筋の雄ねじに螺合可能な雌ねじが設けられた鉄筋結合部と、前記鉄筋結合部と同軸上に一体的に設けられた六角柱状の工具用係合部とを備え、前記鉄筋結合部は、筒状を呈しその内面に前記雌ねじが設けられた本体部と、前記本体部の軸方向の一端を閉塞する蓋部とを有し、前記本体部は、
機械式継手の雌ねじを有する部分が切断されることで構成され、前記雌ねじの長さは、前記ねじ節鉄筋の雄ねじが螺合される機械式継手の雌ねじの長さよりも小さい寸法で形成され、前記工具用係合部は前記蓋部上に設けられ、前記工具用係合部の対向する2面間の間隔は、前記ねじ節鉄筋の対向する2面間の間隔よりも小さく形成され、前記工具用係合部は、
二つのナットが同軸上で溶接されることで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、工具用係合部は六角柱状を呈していることから、スパナやラチェットなどの小型の工具を簡単に確実に係合でき、また、小型の工具を回転させることでねじ節鉄筋を機械式継手に簡単に結合させることができる。
したがって、ねじ節鉄筋の機械式継手への結合作業の効率を格段と高めることが可能となり、また、工具を落とすという不具合を防止する上でも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)はねじ節鉄筋回転用治具の平面図、(B)はねじ節鉄筋回転用治具の一部断面正面図である。
【
図2】工具用係合部とねじ節鉄筋との関係図である。
【
図3】ねじ節鉄筋回転用治具を用いたねじ節鉄筋の機械式継手への連結作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施の形態のねじ節鉄筋回転用治具10は金属製であり、鉄筋結合部12と工具用係合部14とを備えている。
鉄筋結合部12は、筒状の本体部1202と、本体部1202の軸方向の一端を閉塞する蓋部1204とを有している。
本体部1202の内周部には、ねじ節鉄筋50の雄ねじ5002に螺合可能な雌ねじ1206が設けられている。本実施の形態では、本体部1202は、市販品である機械式継手の雌ねじを有する部分が切断されることで構成され、雌ねじ1206の長さは、ねじ節鉄筋50の雄ねじ5002が螺合される機械式継手の雌ねじの長さよりも小さい寸法で形成されている。
工具用係合部14は六角柱状を呈し、蓋部1204上に、鉄筋結合部12と同軸上で一体的に設けられている。本実施の形態では、工具用係合部14は、市販品である二つのナットNが同軸上で溶接されることで構成されている。
図2に示すように、工具用係合部14の対向する2面間の間隔L1は、ねじ節鉄筋50の対向する2面間の間隔L2よりも小さい。
【0009】
次に、ねじ節鉄筋回転用治具10の使用方法について説明する。
例えば、橋脚を構築する際、鉄筋の配筋作業を行ない、コンクリート型枠を作り、コンクリートを打設し、コンクリートの養生後、その上方で鉄筋の配筋作業を行ない、コンクリート型枠を作り、コンクリートを打設し、このような作業の繰り返しにより橋脚を上方へと構築していく。
図3に示すように、上述の配筋作業では、コンクリートに埋設された下方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の上端に機械式継手52を結合し、この機械式継手52に、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の下端が結合される。
【0010】
本実施の形態では、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の上端付近の足場上において、まず、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の上端の雄ねじ5002に、ねじ節鉄筋回転用治具10の鉄筋結合部12の雌ねじ1206を結合させる。この雄ねじ5002と雌ねじ1206との結合は、ねじ節鉄筋回転用治具10を直接回転させてもよく、あるいは、工具用係合部14にスパナやラチェットなどの小型の工具を係合させ、工具を回転させることで行なってもよい。
上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の上端にねじ節鉄筋回転用治具10を結合させたならば、次に、工具用係合部14にスパナやラチェットなどの小型の工具を係合させ、工具を回転させることで上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50を回転させ、機械式継手52の上部に、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の下端の雄ねじ5002を結合させることで行なう。
上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の下端の雄ねじ5002を機械式継手52の上部に結合したならば、ねじ節鉄筋回転用治具10を、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の上端から取り外し、上記と同様に、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の下端の雄ねじ5002をねじ節鉄筋回転用治具10を、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の上端から取り外し機械式継手52の上部に順次結合させる。
この場合、雌ねじ1206の長さは、ねじ節鉄筋50の雄ねじ5002が螺合される機械式継手の雌ねじの長さよりも小さい寸法で形成されているので、ねじ節鉄筋回転用治具10の、上方の橋脚主筋をなすねじ節鉄筋50の上端からの取り外しがより簡単になされる。
【0011】
本実施の形態では、工具用係合部14は六角柱状を呈していることから、スパナやラチェットなどの小型の工具を簡単に確実に係合でき、また、小型の工具を回転させることで橋脚主筋の下端を機械式継手52の上部に簡単に結合させることができる。
したがって、橋脚主筋の機械式継手52への結合作業の効率を格段と高めることが可能となり、また、工具を落とすという不具合を防止する上でも有利となる。
また、実施の形態では、工具用係合部14の対向する2面間の間隔L1を、ねじ節鉄筋50の対向する2面間の間隔L2よりも小さい寸法にしたので、より小型の工具を用いることができ、橋脚主筋の機械式継手52への結合作業の効率を格段と高める上で有利となる。
【0012】
また、鉄筋結合部12の外面を、鉄筋の色とは別の色で着色しておくと、ねじ節鉄筋回転用治具10が目立つため、ねじ節鉄筋回転用治具10の置き忘れを防止する上で有利となる。この場合の色は、例えば、明度および彩度が高く鉄筋に対して目立つ色、例えば、赤色や黄色などが好適となる。
【0013】
なお、本発明は土木工事に限定されず、建築工事など、ねじ節鉄筋50を用いるその他の工事全般に広く適用される。
【符号の説明】
【0014】
10……ねじ節鉄筋回転用治具、12……鉄筋結合部、1202……本体部、1204……蓋部、1206……雌ねじ、14……工具用係合部、50……ねじ節鉄筋、5002……雌ねじ、52……機械式継手。