(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記封止部を設ける工程は、前記封止部を前記デバイスチップの側面及び上面に沿うような前記封止部を設ける工程であることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の電子部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず比較例1について説明する。
図1(a)は比較例1に係る電子部品100Rを例示する断面図である。
【0020】
図1(a)に示すように、電子部品100Rは、絶縁性基板10、デバイスチップ12、封止部14、リッド16及びメッキ層18を含む。絶縁性基板10の上面(一方の主面)11には端子10a及び端子10bが設けられ、絶縁性基板10の下面(他方の主面)13には端子10cが設けられている。デバイスチップ12は例えばSAWフィルタを含み、デバイスチップ12の絶縁性基板10と対向する面にはIDT(Interdigtal Transducer:櫛型電極)12aが設けられている。すなわち、デバイスチップ12は、IDT12aと上面11との間に空隙が形成されるように、バンプ20を用いて上面11にフリップチップ実装されている。デバイスチップ12の上面にはリッド16が設けられている。デバイスチップ12の周囲に配設された封止部14は、端子10bと電気的に接続され、かつ当該デバイスチップ12の側面、及びリッド16の下面に接触している。封止部14はデバイスチップ12の周囲を囲繞して配設されており、封止部14の上面は例えばデバイスチップ12の上面と同じ平面内に位置する。封止部14及びリッド16がデバイスチップ12を気密封止することにより、IDT12aは異物及び水分から保護される。メッキ層18は封止部14及びリッド16の表面を覆い、これらを保護する。
【0021】
絶縁性基板10は例えばセラミックなどの無機絶縁体により形成されている。端子10a〜10cは例えば金(Au)などの金属を含む。端子10aは、例えばデバイスチップ12と信号の入出力を行う信号端子である。端子10bは接地端子である。端子10cは信号端子及び接地端子を含む。端子10aと端子10c、端子10bと端子10bとは、絶縁性基板10内部の配線(図示せず)により電気的に接続されている。封止部14及びバンプ20は例えば錫銀(Sn−Ag)を含む半田により形成されている。リッド16は例えばコバールなどの金属、又は樹脂などの絶縁体により形成されている。メッキ層18は例えばニッケル(Ni)などの金属により形成されている。
【0022】
図1(b)から
図1(d)は電子部品100Rの製造方法を例示する断面図である。
図1(b)に示すように、絶縁性基板10の上面11に複数個のデバイスチップ12をフリップチップ実装する。そして、デバイスチップ12を封止部14及びリッド16により封止する。しかる後、絶縁性基板10の下面13にテープ(不図示)を貼り付ける。次いで、
図1(c)に矢印で示すように、絶縁性基板10の上面11側から、リッド16及び封止部14を切断するハーフダイシング処理(第1のダイシング処理)を行う。これにより、デバイスチップ12の側面には封止部14からなる側壁が形成される。当該封止部14は、デバイスチップ12の側面を囲繞して形成される。次いで、例えば電解メッキ法により、封止部14の側壁からリッド16の上面までを覆うメッキ層18を形成する。しかる後、
図1(d)に矢印で示すように、絶縁性基板10を上面11側から切断するフルダイシング処理(第2のダイシング処理)を行う。これにより個片化された電子部品100Rが形成される。
【0023】
このような製造工程においては、ハーフダイシング工程におけるダイシングラインと、フルダイシング工程におけるダイシングラインとの間においてクリアランスを確保することが求められる。例えば、フルダイシング工程におけるダイシングラインの幅はハーフダイシング工程におけるダイシングラインの幅より小さい。この結果、
図1(a)に示すように、絶縁性基板10の端部からメッキ層18までの間のクリアランスLが生じる。このため、電子部品100Rの小型化が困難となる。また、ハーフダイシング工程の後、電子部品は絶縁性基板10を介して連結されている状態となる。つまり、絶縁性基板10上において電子部品は孤立した状態となり、例えばハンドリングにおいて絶縁性基板10の割れなど電子部品100Rに破損が発生する可能性が高い。破損を抑制するためには、絶縁性基板10を厚くすればよい。しかし、絶縁性基板10を厚くすると、電子部品100Rの低背化が困難となる。
【0024】
また、ハーフダイシング処理とフルダイシング処理との間において、ダイシングラインにズレが生じると、フルダイシング処理において例えばメッキ層18がカットされてしまう。これによりメッキ層18による封止部14及びリッド16の保護が不十分となる。また、例えば絶縁性基板10の上面11に位置を示すマークを付すことがある(不図示)。マークに基づいてハーフダイシング処理及びフルダイシング処理を行うような工程を採用することがある。しかし、ハーフダイシング処理及びフルダイシング処理は絶縁性基板10の上面11側から行われるため、下面13の端子10cの位置を確認することが困難である。このため、電子部品100Rにおいては端子10cの位置が所望の位置からずれることがある。すなわち、端子10cが当該電子部品100Rの外形に対応した所定の位置に存在しない状態が生じてしまうことがある。次に実施例1について説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1にあっては、前記
図1(b)に示されるところの、大判の絶縁性基板10上に複数個のデバイスチップ12が搭載され、当該デバイスチップ12相互間を埋めて封止部14が配設され、更に当該デバイスチップ12と封止部14の上面にリッド16が配設された状態において、1回のダイシング処理を適用して当該リッド16、封止部14及び絶縁性基板10を厚さ方向にダイシング処理を行う。そして、かかるダイシング処理により分離された個々の絶縁性基板10上のデバイスチップ12における封止部14ならびにリッド16の表面に対するメッキ処理が行われる。
図2(a)から
図3(a)は、実施例1に係る電子部品100の製造工程を例示する断面図である。
図3(b)は、かかる工程を経て形成された電子部品100を例示する断面図である。比較例1と同様に、デバイスチップ12を封止する(
図1(b)参照)。
【0026】
本実施例にあっては、
図2(a)に示すように、先ず前記絶縁性基板10の下面13にレジスト層22を形成する。レジスト層22は、当該絶縁性基板10の下面13の全体に形成され、端子10cも覆う。次いで、
図2(b)に示すように、前記リッド16上にフィルム(ダイシングテープ)24を貼り付けた後、前記レジスト層22側から、絶縁性基板10、封止部14及びリッド16を、これらの厚さ方向に連続して切断・分離する。これにより絶縁性基板10を含めて、電子部品は個片化される。当該切断・分離処理は、フルダイシング処理と称される。しかる後、前記フィルム24をリッド16から剥離する。これにより、電子部品は、この後の工程などにおいて、それぞれ独立して(個片化されて)取り扱い可能となる。
【0027】
本実施例にあっては、次いで、
図2(c)に示すように、前記個片化された電子部品をバレル26内に投入する。バレル26は例えば多孔性の部材を用いて構成された容器であり、回転駆動する際に電子部品を内部に保持しつつ、液体の流入及び流出が可能に構成されている。バレル26が配置されるメッキ浴槽(図示せず)内には、例えば濃度が350〜550g/lのスルファミン酸ニッケル溶液などのメッキ液が貯留されている。バレル26を回転させ、かつバレル26内に通電を行う。すなわち、バレル26を用いた定電流制御の電解メッキである電解バレルメッキ法により、前記封止部14及びリッド16の露出表面に、ニッケル(Ni)メッキ層18を形成する。メッキ層18は、封止部14及びリッド16の表面を被覆して形成される。当該メッキ層18の厚さは、例えば5μmとされる。しかる後、有機溶剤が収容された処理槽(図示せず)内にバレル26を浸漬し、バレル26を回転させることにより、
図3(a)に示すように、前記レジスト層22を除去する。以上の工程により、
図3(b)に示すような電子部品100が形成される。なお、
図2(c)及び
図3(a)並びに後述する
図6(b)、
図7(a)、
図7(b)、
図10(a)、
図10(b)、
図11(a)、
図13(a)及び
図13(b)において、それぞれバレル26内の上方に位置して描かれた電子部品に対しては参照番号を省略しているが、同じバレル内に於いてその下方に位置して描かれた電子部品と同様の構成を有している。
【0028】
実施例1によれば、絶縁性基板10、封止部14及びリッド16を、これらの厚さ方向に連続して切断・分離する。これにより、これらが薄い状態において電子部品がハンドリングされることがなく、製造工程における電子部品100の破損が防止・抑制される。従って、絶縁性基板10などを厚くする必要がなく、電子部品100の低背化が容易である。そして、ダイシング処理工程は1回であるため、複数回のダイシング処理工程間においてダイシングライン間の整合などを行う必要がない。すなわち、絶縁性基板10の下面13に、位置を示すマークを付し、かつ当該下面13から切断することにより、端子10cの位置を確認しながらフルダイシング処理を行うことができる。この結果、端子10cの位置ズレは効果的に抑制される。加えて、ダイシング処理の際、クリアランスを確保する必要がないため、電子部品100の小型化が可能となる。予め個片化された電子部品100に対しては、電解バレルメッキ法を適用することにより、必要とされるメッキ層18を形成することができる。また、バレル26の回転により絶縁性基板10の角が取れ(面取りされ)ることにより、絶縁性基板10のクラックを抑制することができる。
【0029】
図1(a)から
図3(b)に示す製造工程において図示することは省略したが、フルダイシング工程において、リッド16にバリが発生することがある。
図4(a)はリッド16にバリ16a及び16bが発生した状態を例示する斜視図である。
図4(b)は
図4(a)の線A−Aに沿った断面図である。すなわち、電子部品100の一つの側面端部に沿った断面図である。
図4(c)は
図4(a)の線B−Bに沿った断面図である。すなわち、電子部品100の略中央部に沿った断面を示している図である。なお、レジスト層22の図示は省略している。
【0030】
図4(a)から
図4(c)に格子斜線で示すように、リッド16の上面から突出してバリ16a及び16bが発生する。前記フルダイシング処理にあっては、リッド16の四隅の角部に形成されるバリ16bは、リッド16の四辺の縁部に沿って形成されるバリ16aより突出量が大きくなりやすい。
【0031】
このようなバリ16a及び16bは、前述の電解バレルメッキ処理が適用されることにより、容易に除去される。これは、当該電解バレルメッキ処理工程中において、電子部品100同士が互いに移動・接触して、その接触部が削られることによる。特にリッド16の四隅の角部に形成されたバリ16bは、形成されている位置、形状などからして除去されやすい。
【0032】
図5(a)はバリ16a及び16bが除去された状態を例示する斜視図である。
図5(b)は
図5(a)の線A−Aに沿った断面図であり、
図4(a)の線A−Aに沿った断面に対応している。
図5(c)は
図5(a)の線B−Bに沿った断面図であり、
図4(a)の線B−Bに沿った断面に対応している。
図5(a)から
図5(c)に示すように、前記電解バレルメッキ処理がなされることにより、バリ16a及び16bは除去される。このため
図3(c)に示したように、バリ16a及び16bが除去された状態を維持しつつ、リッド16の表面及び封止部14の露出表面にメッキ層18が形成される。従って、当該電子部品100は、その厚さの増加を招くことがない。すなわち、電子部品100のさらなる低背化を図ることができる。
【0033】
前記
図2において示された如く、絶縁性基板10の下面13における端子10cを覆ってレジスト層22を配設した後に、電解バレルメッキ処理が行われる。このため、ある電子部品100における端子10c、他の電子部品100におけるメッキ層18との接触は防止される。また、封止部14が金属を含むため、電解バレルメッキ法を用いて、封止部14の露出する側面にメッキ層18が形成される。一方、絶縁性基板10の露出表面にはメッキ層18が形成されない。すなわち、当該電解バレルメッキ処理により、電子部品100の所望の部位及び領域に、選択的にメッキ層18が形成される。また、均一な厚さのメッキ層18を効率的に形成することができる。
【0034】
前述の如く、デバイスチップ12はその側面が封止部14によって、またその背面(IDT形成面の裏面)に配設されたリッド16により被覆される。つまり、封止部14及びリッド16によりデバイスチップ12を気密封止する。また、リッド16ならびに封止部14の表面に形成されるメッキ層18は、連続して形成されるため、封止部14の破損が抑制される。例えばリフロー処理などの際において、加熱による封止部14の変形を、リッド16により抑制することができる。従って、前記デバイスチップ12をより効果的に保護することができる。
【実施例2】
【0035】
実施例2は封止部14及びリッド16の露出表面にメッキ層18を形成し、かつ絶縁性基板10の下面13に配設されている端子10cに対してもメッキ層18を形成するものである。
図6(a)及び
図6(b)は実施例2に係る電子部品200の製造方法を例示する断面図である。
図6(c)は電子部品200を例示する断面図である。
【0036】
図6(a)に示すように、本実施例にあっては、絶縁性基板10の他方の主面(下面13)にレジスト層22を設けずにフルダイシング処理を行う。そして
図6(b)に示すように、下面13に端子10cが露出した状態で電解バレルメッキ法を行い、メッキ層18を形成する。メッキ層18はNi層18a及びAu層18bを含む。Ni層18aが形成された後、Au層18bが形成される。従って、Ni層18aは封止部14、リッド16及び端子10cに接触する。Au層18bがNi層18aを覆い、メッキ層18の表面を形成する。以上の工程により、
図6(c)に示す電子部品200が形成される。
【0037】
図6(c)に示すように、電子部品200においては、絶縁性基板10の下面13における端子10cの表面にもメッキ層18が形成される。端子10cと、当該端子10cの表面に形成されたメッキ層18とをもって、当該電子部品200の外部接続用の端子10dとして機能する。端子10dの最表層はAu層18bであり、端子10cと同じ材質により形成されている。従って、端子10dは端子10cと同等の機能を果たす。なお、
図6(b),
図6(c)においては、端子10cの側面にNi層18aならびにAu層18bが描かれていないが、端子10cの側面にも当該二つの金属層からなるメッキ層18が形成される。かかる実施例2による製造工程にあっては、絶縁性基板10の下面13に対してレジスト層22を被着ならびに除去する工程を含まない。従って、製造工程の簡略化を図ることができる。そして、実施例1と同様に、電子部品200の小型化、低背化、端子10cの位置ズレの抑制、及び封止部14の破損の防止・抑制が可能である。メッキ層18は、端子10cと同じ材料を含んでいればよい。メッキ層18の最表層が端子10cと同じ材料により形成されていることが好ましい。
【実施例3】
【0038】
実施例3はメッキ層18を選択的にその厚さを相違させて形成する、又はメッキ層18を選択的に残存させる工程を含む例である。
図7(a)及び
図7(b)は実施例3に係る電子部品300の製造方法を例示する断面図である。
図8は電子部品300を例示する断面図である。
【0039】
実施例3においても、実施例2と同様に、絶縁性基板10の下面13にレジスト層22を設けずに、フルダイシング処理を行う。
図7(a)に示すように、電解バレルメッキ法により、例えばNiからなるメッキ層18c及びメッキ層18dを選択的に形成する。すなわち、メッキ層18c(第1メッキ層)は封止部14及びリッド16の表面に形成される。一方、メッキ層18d(第2メッキ層)は、絶縁性基板10の下面13における端子10cの表面に形成される。封止部14及びリッド16における通電効率は、端子10cにおける通電効率より高い。従って電解バレルメッキは、封止部14及びリッド16において、端子10cよりも効率的に進行する。この結果、メッキ層18cはメッキ層18dより厚く形成される。
【0040】
図7(b)に示すように、かかる電解バレルメッキ処理の後、例えば硝酸(HNO
3)からなるエッチング液が収容された処理槽(図示せず)内にバレル26を浸漬し、当該バレル26を回転せしめる。かかるバレルエッチング処理により、絶縁性基板10の下面13における端子10cの表面に形成されメッキ層18dは除去され、端子10cが露出する。一方、メッキ層18cはメッキ層18dより厚いため、当該バレルエッチング処理後も残存する。以上の工程により、
図8に示すような電子部品300が形成される。このように、封止部14及びリッド16における通電効率と端子10cにおける通電効率との相違を利用して、これらの領域に形成されるメッキ層18cとメッキ層18dとにおいて厚さを選択・相違させること、及び形成されたメッキ層18c及びメッキ層18dをバレルエッチングすることにより、最終的に所定の部位・領域に選択的にメッキ層18cを形成することができる。
【0041】
実施例3によれば、実施例1と同様に電子部品200の小型化、低背化、位置ズレの抑制及び破損の抑制が可能である。また実施例2と同様に、レジスト層22を設ける工程及びレジスト層22を除去する工程を行わなくてよいため、製造工程の簡略化が可能である。メッキ層18cを厚くするためには、封止部14及びリッド16が金属を含むことが好ましい。エッチング処理によりメッキ層18cを薄くしかつメッキ層18dを除去するためには、メッキ層18c及び18dは端子10cと異なる材料、特にエッチング選択性を有する材料により形成されていることが好ましい。
【実施例4】
【0042】
実施例4は封止部14を絶縁体により形成する例である。
図9(a)から
図11(a)は実施例4に係る電子部品400の製造方法を例示する断面図である。
図11(b)は電子部品400を例示する断面図である。
【0043】
本実施例にあっては、
図9(a)に示すように、まず絶縁性基板10の上面11に互いに離間して搭載・載置された複数個のデバイスチップ12を、封止部14により一括して封止する。かかる封止部14は例えばエポキシ樹脂などの絶縁物質により形成されており、デバイスチップ12の上面を被覆すると共に、当該デバイスチップ12の側面を被覆して、その先端は端子10bに到達している。ここでは封止部14上にリッド16は配設されていない。
図9(b)に示すように、絶縁性基板10の下面13にレジスト層22を配設する。そして、前記封止部14上にフィルム24を貼り付けた後、前記レジスト層22側から、絶縁性基板10及び封止部14を、これらの厚さ方向に連続して切断・分離する。
【0044】
しかる後、前記封止部14の露出表面に、メッキ層18を形成する。すなわち、
図10(a)に示すように、バレル26に収納された電子部品に対し、例えばパラジウム(Pd)を触媒とする無電解バレルメッキ法を行い、封止部14に選択的にメッキ層18e(第3メッキ層)を形成する。メッキ層18eは、封止部14の表面を覆い、絶縁性基板10の表面には形成されない。メッキ液として例えば酸性無電解ニッケルメッキ液、ニッケル−リン(Ni−P)合金メッキ液、又は中性無電解ニッケル−ホウ素(Ni−B)合金メッキ液を用いることができる。
図10(b)に示すように、電解バレルメッキ法により、メッキ層18e上にメッキ層18f(第4メッキ層)を形成する。メッキ層18eが電解メッキのシードメタルとして機能する。このため、メッキ層18fはメッキ層18eに接触し、かつメッキ層18eの表面を覆う。当該メッキ層18fは絶縁性基板10の表面には形成されない。メッキ層18e及びメッキ層18fは例えばNiなどの金属により形成されている。メッキ層18e及びメッキ層18fが一体となりメッキ層18として機能する。
図11(a)に示すように、メッキ処理の後、有機溶剤が収容された処理槽(図示せず)内にバレル26を浸漬させ、レジスト層22を除去する。以上の工程により、
図11(b)に示すような電子部品400が形成される。
【0045】
実施例4によれば、封止部14が絶縁体からなる場合でも、メッキ層18eをシードメタルとして用い、電解バレルメッキ法を行うことができる。実施例1と同様に電子部品400の小型化、低背化、位置ズレの抑制及び破損の抑制が可能である。
【0046】
封止部14の表面を覆うメッキ層18を形成するために、封止部14の表面には先ずメッキ層18eが形成される。当該メッキ層18eは絶縁性基板10の表面には形成されない。封止部14と絶縁性基板10の端子10cとが短絡することを防止するためである。Pdなどの触媒を用い、メッキ液の種類を適当に選択することにより、メッキ層18eの形成される範囲を限定することができる。例えば絶縁性基板10をセラミック、封止部14をエポキシ樹脂などの樹脂により形成し、メッキ液として上記のように酸性無電解ニッケルメッキ液、Ni−P合金メッキ液、又は中性無電解Ni−B合金メッキ液などを用いる。材料は上記以外のものでもよく、絶縁性基板10の材料が封止部14の材料と異なることが好ましい。
【実施例5】
【0047】
実施例5は、実施例1〜4と比較して、より薄い封止部14を設ける例である。
図12(a)から
図13(b)は実施例5に係る電子部品500の製造方法を例示する断面図である。
図14は電子部品500を例示する断面図である。
【0048】
図12(a)に示すように、本実施例においては、まず絶縁性基板10の上面11に互いに離間して搭載・載置された複数個のデバイスチップ12の上面及び側面に沿って、樹脂層14aを設ける。樹脂層14aは例えば厚さ10〜20μmの、耐熱性ポリマー樹脂などの樹脂により形成されており、端子10bの上面、デバイスチップ12の側面及び上面を被覆し、これらに接触している。次いで、
図12(b)に示すように、例えばスパッタリング法により、樹脂層14aに接触しかつ樹脂層14aの表面を覆うような金属層14bを形成する。金属層14bは例えば厚さ10〜20μmの、銅(Cu)などの金属により形成されている。樹脂層14a及び金属層14bが封止部14を形成する。次いで、
図12(c)に示すように、絶縁性基板10の下面13にレジスト層22を設ける。そして
図12(d)に示すように、前記封止部14上にフィルム24を貼り付けた後、下面13側からフルダイシング工程を行う。つまりレジスト層22側から絶縁性基板10及び封止部14を、これらの厚さ方向に連続して切断・分離する。
【0049】
図13(a)に示すように、しかる後、電解バレルメッキ法により、金属層14bの表面にメッキ層18を設ける。メッキ層18は、例えば厚さ10μmのNiなどの金属により形成され、端子10bの側面に接触している。かかるメッキ処理の後、
図13(b)に示すように、有機溶剤が収容された処理槽(図示せず)内にバレル26を浸漬させて、レジスト層22を除去する。以上の工程により、
図14に示すような電子部品500が形成される。
【0050】
封止部14は、デバイスチップ12の側面及び上面に沿って配設された樹脂層14a、当該樹脂層14aの表面に配設された金属層14b、並びにかかる金属層14bの表面に形成されたメッキ層18をもって形成されている。メッキ層18は封止部14に沿って設けられている。このため実施例5における封止部14は、実施例1〜4における封止部14より薄くなる。従って、電子部品500を低背化することができる。実施例1と同様に電子部品500の小型化、低背化、位置ズレの抑制及び破損の抑制が可能である。
【0051】
封止部14は例えば1層構造でもよいし、3層以上が積層されたラミネート構造を有してもよい。封止部14は金属を含むことが好ましい。電解バレルメッキ法を用いてメッキ層18を形成することができるからである。メッキ層18は端子10bに接触しなくてもよい。メッキ層18及び金属層14bのシールドとしての機能を高めるためには、メッキ層18が端子10bに接触していることが好ましい。実施例5に実施例2又は3を組み合わせてもよい。これにより製造工程の簡略化が可能である。実施例5に実施例4を組み合わせてもよい。つまり、絶縁体の封止部14をデバイスチップ12に沿って形成し、無電解バレルメッキ法及び電解バレルメッキ法を用いてメッキ層18を設ける。
【0052】
デバイスチップ12は、SAWフィルタ以外に例えば弾性境界波フィルタ又は圧電薄膜共振子フィルタなどの弾性波フィルタを含む弾性波フィルタチップでもよいし、弾性波フィルタチップ以外のチップでもよい。デバイスチップ12はフリップチップ実装以外の方法により絶縁性基板10に実装されていてもよい。
【実施例6】
【0053】
実施例6はNi層18aを無電解メッキ法、Au層18bを電解メッキ法で形成する例である。
図15(a)は実施例6に係る電子部品600の製造方法を例示する断面図である。
図15(b)は電子部品600を例示する断面図である。実施例6においても、実施例2と同様に、
図6(a)に示すフルダイシング処理を行う。
【0054】
図15(a)に示すように、無電解バレルメッキ法を行い、端子10c及び封止部14にNi層18aを形成する。Ni層18aの形成後、
図6(b)と同様に電解バレルメッキ法によりAu層18bを形成する。以上の工程により、
図15(b)に示す電子部品600が形成される。
【実施例7】
【0055】
実施例7は端子10c及び封止部14にCu層18g(第5及び第6メッキ層)を形成する例である。
図16(a)及び
図16(b)は実施例7に係る電子部品700の製造方法を例示する断面図である。
図17は電子部品700を例示する断面図である。実施例7においても、実施例2と同様に、
図6(a)に示すフルダイシング処理を行う。
【0056】
図16(a)に示すように、バレルメッキ法により、端子10c及び封止部14にNi層18aを形成する。Ni層18aの形成には、電解バレルメッキ法及び無電解バレルメッキ法のどちらを用いてもよい。
図16(b)に示すように、Ni層18aの形成後に、電解バレルメッキ法を用いて、Ni層18aの表面を覆うCu層18gを形成する。つまり、端子10dの表面はCuである。以上の工程により、
図17に示す電子部品700が形成される。
【実施例8】
【0057】
実施例8は端子10cにCu層18h(第7メッキ層)を形成する例である。
図18(a)から
図19(a)は実施例8に係る電子部品800の製造方法を例示する断面図である。
図19(b)は電子部品800を例示する断面図である。
図1(b)に示すように、デバイスチップ12を封止する。
【0058】
図18(a)に示すように、封止部14の上面にレジスト層23を形成する。レジスト層23を形成した後、例えば電解メッキ法により端子10cにNi層18aを形成し、Ni層18aの表面にCu層18hを形成する。
図18(b)に示すように、レジスト層23を除去する。レジスト層22を絶縁性基板10の下面13の全体に形成する。レジスト層22は、端子10c、Ni層18a及びCu層18hを覆う。
図18(c)に示すようにフルダイシング処理を行う。
【0059】
図19(a)に示すように、電解バレルメッキ法を用いて、封止部14の表面に、メッキ層18を形成する。レジスト層23を除去する。これにより電子部品800が形成される。
【0060】
電子部品を多層基板に埋め込むことがある。電子部品700及び800のように、端子10dの表面がCu層である場合、電子部品と多層基板との電気的な接続の信頼性が向上する。
【0061】
図20は多層基板810を例示する断面図である。
図20に示すように、絶縁層30、32、34、及び36が上から順に重ねられている。絶縁層34と同層にコア40が設けられている。絶縁層30の上面に導体層42及びソルダーレジスト50が設けられ、絶縁層30と絶縁層32との間には導体層44が設けられている。絶縁層34の下面には導体層46及びソルダーレジスト50が設けられている。導体層間は各絶縁層を上下に貫通するビア配線52により接続されている。またコア40はビア配線52を介して導体層44及び46と接続されている。各導体層、コア40、及びビア配線52は例えばCu等の金属からなる。各絶縁層は例えばエポキシ樹脂等からなる樹脂層である。
【0062】
電子部品800は絶縁層34に埋め込まれている。絶縁層34の外側にはコア40が配置されている。電子部品800の端子10dは、ビア配線52を介して導体層44と接続されている。多層基板810の上面には、2つのチップ部品54がフリップチップ実装されている。チップ部品54は、半田ボール56を介して導体層42に接続され、さらに電子部品800と電気的に接続されている。チップ部品54は、例えば抵抗、チップインダクタ、チップコンダクタ等の受動素子、又はIC(Integrated Circuit:集積回路)等の能動素子である。
【0063】
端子10dのCu層18hと、ビア配線52とは、共にCuにより形成されている。このため、端子10dとビア配線52との電気的な接続の信頼性が向上する。また、コア40、ビア配線52、及び各導体層は、いずれも金属からなり、電子部品800において発生した熱を外部に放出するための放出経路として機能する。このため、高い放熱性を確保することができる。またコア40は、絶縁層30、32及び36より厚く、かつ金属により形成されている。従って、多層基板810の強度が高くなる。
【0064】
ソルダーレジスト50は、半田ボール56の半田、及び多層基板810を外部機器に実装するために導体層46の一部に接合される半田が、導体層42及び46の他の部分に付着することを抑制する。なお、多層基板810に電子部品100〜700を埋め込んでもよい。特に端子10dがCu層を含む電子部品700及び800を埋め込むことで、良好な電気的な接続を得ることができる。
【実施例9】
【0065】
デバイスチップ12を多層基板に実装する例である。まず比較例2について説明する。
図21は比較例2に係る電子部品900Rを例示する断面図であり、後述する
図22(a)から
図22(c)の線C−Cに沿った断面に対応する。
【0066】
図21に示すように、絶縁性基板60は、多層基板であり、上から順に重ねられた絶縁層60a及び60bを含む。絶縁層60aの上面には導体層62が形成されている。絶縁層60a及び60b間には導体層64が設けられている。絶縁層60bの下面には導体層66が形成されている。デバイスチップ12は導体層62に電気的に接続されている。導体層64は内部配線として機能する。導体層66はフットパッドとして機能する。導体層間はビア配線68により接続されている。
【0067】
図22(a)は導体層62を例示する平面図である。
図22(b)は導体層64を例示する平面図である。
図22(c)は導体層66を例示する平面図である。接地端子及び接地配線には格子斜線を付した。信号端子及び信号配線には斜線を付した。ビア配線68は白抜きの丸として図示している。
図22(b)、後述する
図24(b)及び
図24(c)では給電線を除去していない状態を図示している。
【0068】
図22(a)に示すように、導体層62は、接地端子62a及び信号端子62bを含む。
図22(b)に示すように、導体層64は、接地配線64a及び信号配線64bを含む。
図22(c)に示すように、導体層66は、接地端子66a及び信号端子66bを含む。接地端子62aと接地配線64aとは接続され、接地配線64aと接地端子66aとは接続されている。信号端子62bと信号配線64bとは接続され、信号配線64bと信号端子66bとは接続されている。
【0069】
例えばダイシング前の集合基板において、導体層62、64及び66は電解メッキ法により形成される。接地配線64aは給電線64cと接続されている。信号配線64bは給電線64dと接続されている。給電線64c及び64dは絶縁性基板60の外部に突出する。給電線64c及び64dに電流を供給することにより、各導体層を形成するための電解メッキ処理が行われる。
【0070】
図2(a)から
図3(a)に示した工程により電子部品900Rを形成する。
図2(b)に示したダイシング処理において、給電線64c及び64dは除去される。絶縁性基板60の側面からは、接地配線64a及び信号配線64bが露出する。例えば
図2(c)に示したような電解バレルメッキ法を行うと、接地配線64a及び信号配線64bにも電解メッキ処理が施される。この結果、
図21に示すように、接地配線64a及び信号配線64bの露出部分にNi層70が形成される。接地配線64aには大きなNi層70が形成される。信号配線64bには微小なNi層70が形成される。接地配線64aは、接地端子62aを介して封止部14及びリッド16と電気的に接続されている。封止部14及びリッド16は面積が大きいため、大きな電流が流れる。従って、接地配線64aにも大きな電流が流れ、Ni層70が大きくなる。Ni層70は短絡の原因、及びハンドリングの妨げとなりうる。
【0071】
次に実施例9について説明する。
図23(a)は実施例9に係る電子部品900を例示する断面図である。
図23(b)は導体層64を例示する平面図である。導体層62及び64は
図22(a)及び
図22(c)に示したため、図示を省略する。
【0072】
図23(a)及び
図23(b)に示すように、給電線64c及び64dが設けられていない。導体層62、64及び66を無電解メッキ法により形成するため、給電線は不要だからである。このため、ダイシング処理後に、接地配線64a及び信号配線64bは絶縁性基板60の側面から露出しない。従ってNi層70の形成は抑制される。Ni層70に起因する短絡は抑制され、ハンドリングを円滑に行うこともできる。
【実施例10】
【0073】
実施例10は、接地配線64aが露出しない例である。
図24(a)は実施例10に係る電子部品1000を例示する断面図である。
図24(b)は導体層62を例示する平面図である。
図24(c)は導体層64を例示する断面図である。
【0074】
図24(b)に示すように、複数の接地端子62aのうち絶縁層60aの外周部に位置する接地端子62aには、給電線62cが接続されている。
図24(c)に示すように、接地配線64aには給電線が接続されていない。信号配線64bには給電線64dが接続されている。給電線64dは、絶縁性基板60と厚さ方向で重ならない位置において引き回されている。給電線62c及び64dを用いた電解メッキ法により、導体層62、64及び66を形成する。
【0075】
図2(b)に示したダイシング処理により、給電線62c及び64dは除去される。接地配線64aは絶縁性基板60から露出しないため、接地配線64aにはNi層70は形成されない。信号配線64bは絶縁性基板60の側面から露出する。このため、
図24(a)に示すように、信号配線64bには微小なNi層70が形成される。しかし、Ni層70は小さいため、短絡、及びハンドリングの支障などは生じ難い。給電線64dを絶縁性基板60内で引き回していない。従って、給電線64dと、信号配線及び接地配線との容量結合などが抑制される。容量結合による電子部品1000の特性悪化も抑制される。
【0076】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。