(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166527
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】X線透視撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/10 20060101AFI20170710BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20170710BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
A61B6/10 350
A61B6/00 320Z
A61B6/04 332P
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-254155(P2012-254155)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-100301(P2014-100301A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年1月28日
【審判番号】不服2016-13439(P2016-13439/J1)
【審判請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光毅
【合議体】
【審判長】
三崎 仁
【審判官】
▲高▼橋 祐介
【審判官】
郡山 順
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−272290(JP,A)
【文献】
特許第4470509(JP,B2)
【文献】
特開2003−126084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、
前記被検体を載置する可動式天板を有し、室内に配置された検診台と、
前記検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、
前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段と
を備え、
前記位置制御手段は、
ある時点における前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置を登録する検診台登録手段と、
前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段と
を有し、
前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御する
ことを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項2】
被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、
前記被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、
前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段と
を備え、
前記位置制御手段は、
ある時点における前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置を登録する検診台登録手段と、
前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段と
を有し、
前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御する
ことを特徴とするX線透視撮影装置。
【請求項3】
被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、
室内に配置された可動式あるいは可搬式の周辺機器とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、
前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段と
を備え、
前記位置制御手段は、
ある時点における前記X線撮像手段に対する前記周辺機器の位置を登録する周辺機器登録手段と、
前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段と
を有し、
前記周辺機器の位置が前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記周辺機器と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、前記登録された前記X線撮像手段に対する前記周辺機器の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の周辺機器の位置を考慮することなく、X線撮像手段の動作を制御する
ことを特徴とするX線透視撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置に係り、特に、被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段の位置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置は、例えばハイブリッド手術室システムまたはOperating Roomsシステムに組み込まれる。このハイブリッド手術室システムでは、X線を発生するX線管(X線源)と、X線管に対向して配設され、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、X線管およびX線検出器を保持する保持部とを備え、外科用手術台と組み合わせて使用する。透視あるいは撮影を行いながら手術を行うために、外科用手術台は、被検体を載置する可動式天板を有し、室内に配置された検診台で構成されている。さらに、X線管やX線検出器やそれらを保持する保持部を備えたX線撮像部(X線撮像手段)は、検診台からなる外科用手術台とは独立して室内に配置されている。
【0003】
このように、外科用手術台などに代表される検診台と、X線撮像部とは互いに独立して駆動するように構成されており、検診台およびX線撮像部が互いに干渉するのを防止するために、これらを互いに通信経路で接続する。通信経路で接続することにより、検診台の位置をリアルタイムに検出し、検出された検診台の位置を、通信経路を介してX線撮像部に通知する。
【0004】
リアルタイムに検出される検診台の位置としては、例えば検診台の天板の高さ等があり、X線撮像部の位置としては、天板の長手方向に関する保持部の位置や、X線管やX線検出器の高さ等がある。通信経路を介してX線撮像部に送り込まれたリアルタイムの検診台の位置と、X線撮像部の位置とに基づいて、距離(例えば、天板の長手方向に関する保持部と検診台の土台部との距離、鉛直方向に関する検診台の天板とX線管との距離)を求める。そして、これらの距離情報により、保持部が長手方向や回転方向やスライド方向にどこまで移動可能なのかを決定して、検診台・X線撮像部が互いに干渉するのを防止する干渉制御を行っている。
【0005】
しかし、例えば通信経路の接続端子を有さない検診台を使用する場合などの検診台あるいはX線撮像部の構造物に起因した事情で、X線撮像部・検診台間でお互いの情報を一切交換することができない場合がある。また、通信経路を介して情報交換していたとしても、検査・治療の内容に応じて検診台の外科用手術台の水平方向に関する位置情報までは、X線撮像部に対して通知されない場合がある。例えば、車輪が付いた可動式の検診台に被検体を載置して検査や治療を行う場合には、車輪により検診台を水平方向に手動で動かすので、水平方向に関する位置情報はその都度変わってしまい、水平方向に関する位置情報が電気的に転送できず、X線撮像部の方で把握することができない。
【0006】
このように、検診台とX線撮像部との干渉を防止するために、検診台およびX線撮像部の3次元モデル外形データをそれぞれ求め、これらの3次元モデル外形データに基づいて検診台およびX線撮像部の両者の相対位置(距離)を求めて、干渉するのを防止する装置が本出願人から提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の場合には、ボクセル形式のデータに基づく3次元モデル外形データをそれぞれ求めることで、両者の相対位置を正確に求めることができ、干渉を確実に防止することができる。
【0007】
また、天板を起倒させる起倒フレームがCアームなどに代表される保持部に連結され、天板がX線撮像部とともに連動する天板・X線撮像部が一体型のX線透視撮影装置において、互いに干渉しないようなX線撮像部の位置や天板の位置を予め登録する位置登録機能を有した装置が本出願人から提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2の場合には、位置登録を検査前に予め行うことで、干渉を確実に防止することができる。また、位置登録以外の干渉防止機能を有することにより天板やX線撮像部などの動作が制限されていたのを、位置登録機能を有することで円滑に動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4470509号(第15−18頁、
図6および
図7)
【特許文献2】特開2003−126084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、上述の特許文献1の装置では3次元モデル外形データが予めわかっていることが前提であり、位置や大きさが予めわからない構造物に対して3次元モデル外形データを求めることができず、干渉制御を行うことができないという問題がある。
【0010】
また、上述の特許文献2の装置では天板・X線撮像部が一体型の装置にしか適用されず、上述したハイブリッド手術室システムのように、外科用手術台などに代表される検診台と、X線撮像部とが互いに独立して駆動する装置の場合には上述した通信経路で両者を接続する必要があるという問題がある。
【0011】
上述の特許文献1の装置や特許文献2の装置のいずれの場合であっても、3次元モデル外形データが予めわかっている、あるいは通信経路で両者の形状や位置を常に知り得ることが前提である。ハイブリッド手術室システムにおいて、X線撮像部・検診台間でお互いの情報を一切交換することができない場合、あるいは通信経路を介して情報交換していたとしても所定方向の位置情報まで知り得ない場合には、検診台の外科用手術台の形状や位置をX線撮像部では知り得ない。よって術者はX線撮像部と検診台とが互いに干渉しないように注意を払いながら操作する必要があり、場合によっては両者が衝突してしまっていた。
【0012】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、X線撮像手段が検診台や周辺機器とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができるX線透視撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係るX線透視撮影装置は、被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、前記被検体を載置する可動式天板を有し、室内に配置された検診台と、前記検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段とを備え、前記位置制御手段は、
ある時点における前記X線撮像手段に対する前記
可動式天板の
鉛直方向の位置を登録する検診台登録手段と、前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段とを有し
、前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記
可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、
前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の
動作を制御することを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]この発明に係るX線透視撮影装置によれば、上述の特許文献2の装置と相違して、室内にそれぞれ配置された検診台とX線撮像手段とが互いに独立して駆動する場合において、X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段は、検診台登録手段とX線撮像手段位置検出手段とを有する。検診台登録手段は、
ある時点におけるX線撮像手段に対する
可動式天板の
鉛直方向の位置を登録し、X線撮像手段位置検出手段は、X線撮像手段の現在の位置を検出する。
可動式天板の鉛直方向の位置を除けば、検査・治療前に登録した検診台の位置を、検査・治療後も含めた位置登録後に途中で変更することは通常ない。
【0015】
よって、
可動式天板の高さが登録した時から変化していないとしたときに、X線撮像手段の動作によって可動式天板とX線撮像手段とが互いに干渉しないように、
登録されたX線撮像手段に対する可動式天板の鉛直方向の位置と、X線撮像手段位置検出手段で検出されたX線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の
動作を制御する干渉制御を行うことができる。このように、X線撮像手段に対する
可動式天板の
鉛直方向の位置を検診台登録手段が登録すれば、検診台の位置や大きさがわからなくても干渉を防止することができる。また、X線撮像手段に対する
可動式天板の
鉛直方向の位置を検診台登録手段が登録すれば、
可動式天板の鉛直方向の位置を含む検診台の現在の位置を検出せずともX線透視撮影装置の方で
可動式天板の
鉛直方向の位置を
少なくとも把握することができるので、通信経路による接続が不要となる。その結果、X線撮像手段が検診台とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができる。
【0016】
上述したX線透視撮影装置とは別の発明に係るX線透視撮影装置は、被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、前記被検体を載置する可動式天板を有して室内に配置された検診台とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記検診台に載置された被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段とを備え、前記位置制御手段は、
ある時点における前記X線撮像手段に対する前記
可動式天板の
鉛直方向の位置を登録する検診台登録手段と、前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段とを有し
、前記可動式天板の高さが前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記
可動式天板と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、
前記登録された前記X線撮像手段に対する前記可動式天板の鉛直方向の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置を考慮することなく、X線撮像手段の
動作を制御することを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]この発明に係るX線透視撮影装置では、検診台がX線透視撮影装置の構成から外れている点を除けば、前者のX線透視撮影装置の作用・効果と同じであるので、その説明を省略する。検診台がX線透視撮影装置の外部構成であっても、可動式天板を有して室内に配置される検診台であれば、前者のX線透視撮影装置と同様に、X線撮像手段が検診台とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができる。
【0018】
上述したこれらのX線透視撮影装置とはさらなる別の発明に係るX線透視撮影装置は、被検体の透視あるいは撮影を行うX線透視撮影装置であって、室内に配置された可動式あるいは可搬式の周辺機器とは独立して室内に配置され、X線源とX線検出器とを保持し、前記被検体の透視あるいは撮影を行うX線撮像手段と、前記X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段とを備え、前記位置制御手段は、
ある時点における前記X線撮像手段に対する前記周辺機器の位置を登録する周辺機器登録手段と、前記X線撮像手段の現在の位置を検出するX線撮像手段位置検出手段とを有し
、前記周辺機器の位置が前記登録した時から変化していないとしたときに、前記X線撮像手段の動作によって前記周辺機器と前記X線撮像手段とが互いに干渉しないように、
前記登録された前記X線撮像手段に対する前記周辺機器の位置と、前記X線撮像手段位置検出手段で検出された前記X線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の周辺機器の位置を考慮することなく、X線撮像手段の位置を制御することを特徴とするものである。
【0019】
[作用・効果]この発明に係るX線透視撮影装置によれば、室内にそれぞれ配置された可動式もしくは可搬式の周辺機器とX線撮像手段とが互いに独立して駆動する場合、または周辺機器が手動で移動する場合において、X線撮像手段の位置を制御する位置制御手段は、周辺機器登録手段とX線撮像手段位置検出手段とを有する。周辺機器登録手段は、
ある時点におけるX線撮像手段に対する周辺機器の位置を登録し、X線撮像手段位置検出手段は、X線撮像手段の現在の位置を検出する。検査・治療前に登録した周辺機器の位置を、検査・治療後も含めた位置登録後に途中で変更することは通常ない。
【0020】
よって、
周辺機器の位置が登録した時から変化していないとしたときに、X線撮像手段の動作によって周辺機器とX線撮像手段とが互いに干渉しないように、
登録されたX線撮像手段に対する周辺機器の位置と、X線撮像手段位置検出手段で検出されたX線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の周辺機器の位置を考慮することなく、X線撮像手段の
動作を制御する干渉制御を行うことができる。このように、X線撮像手段に対する周辺機器の位置を周辺機器登録手段が登録すれば、周辺機器の位置や大きさがわからなくても干渉を防止することができる。また、X線撮像手段に対する周辺機器の位置を周辺機器登録手段が登録すれば、周辺機器の現在の位置を検出せずともX線透視撮影装置の方で周辺機器の位置を把握することができるので、通信経路による接続が不要となる。その結果、X線撮像手段が周辺機器とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係るX線透視撮影装置によれば、
可動式天板の高さや周辺機器の位置が登録した時から変化していないとしたときに、X線撮像手段の動作によって可動式天板や周辺機器とX線撮像手段とが互いに干渉しないように、
登録されたX線撮像手段に対する可動式天板の鉛直方向の位置や周辺機器の位置と、X線撮像手段位置検出手段で検出されたX線撮像手段の現在の位置とに基づいて、現在の可動式天板の位置や現在の周辺機器の位置を考慮することなく、X線撮像手段の
動作を制御する干渉制御を行うことができる。その結果、X線撮像手段が検診台や周辺機器とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1〜3に係るハイブリッド手術室システムの概略構成を示した側面図である。
【
図2】実施例1に係るハイブリッド手術室システムのブロック図である。
【
図3】実施例1に係る一連の検診台に関する位置登録のフローチャートである。
【
図4】(a)、(b)は、それぞれの検診台に関する位置登録の一実施態様の例である。
【
図5】実施例2、3に係るハイブリッド手術室システムのブロック図である。
【実施例1】
【0023】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1〜3に係るハイブリッド手術室システムの概略構成を示した側面図であり、
図2は、実施例1に係るハイブリッド手術室システムのブロック図である。後述する実施例2、3も含めて、本実施例1では、X線透視撮影装置は、ハイブリッド手術室システムに組み込まれる場合を例に採って説明する。
【0024】
後述する実施例2、3も含めて、本実施例1に係るハイブリッド手術室システムは、
図1に示すように、被検体Mを載置する可動式天板11、および可動式天板11を支持する土台部12を有した検診台1と、被検体Mの透視あるいは撮影を行うX線撮像部2と備えるとともに、
図2に示すように、位置制御部4を備えている。各実施例では、可動式天板11は手術台天板として用いられ、検診台1は外科用手術台として用いられる。検診台1は、この発明における検診台に相当し、可動式天板11は、この発明における可動式天板1に相当し、X線撮像部2は、この発明におけるX線撮像手段に相当し、位置制御部4は、この発明における位置制御手段に相当する。
【0025】
先ず、検診台1の機構について
図1を参照して説明する。可動式天板11を土台部12に沿って水平方向(例えば図中のx方向またはy方向)に平行にスライド移動させるように構成されている。土台部12は鉛直方向(図中のz方向)に伸縮自在に構成されており、これによって可動式天板11を鉛直方向に昇降移動させる。
図1では図示していないが、可動式天板11を傾斜させてもよく、水平姿勢・起立姿勢・傾斜姿勢のいずれかに可動式天板11を起倒させてもよい。例えば、モータ(図示省略)と、図示を省略する回転軸を介してモータに取り付けられたギア(図示省略)と、このギアに噛合され可動式天板11を支持したラック(図示省略)とを備えることで、これらの移動を実現する。
【0026】
次に、X線撮像部2について
図1を参照して説明する。X線撮像部2は、天井面(図中のxy平面)に設置された基台部21と、基台部21に支持されたCアーム支持部22と、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23と、Cアーム23の一端に支持されたX線管24と、他端に支持されたフラットパネル型X線検出器(FPD: Flat Panel Detector)25とを備えている。基台部21,Cアーム支持部22およびCアーム23によって、X線管24およびFPD25が互いに対向配置されて保持されている。X線管24は、この発明におけるX線源に相当し、フラットパネル型X線検出器(FPD)25は、この発明におけるX線検出器に相当する。
【0027】
天井面にはx方向に延在した固定レール31が設置されており、この固定レール31に移動レール支持部32が取り付けられ、y方向(紙面の奥行き方向)に延在した移動レール33が移動レール支持部32により懸垂支持されている。移動レール支持部32を介して移動レール33は固定レール31に沿ってx方向に平行にスライド移動する。移動レール33にはキャリッジ34が嵌合し、キャリッジ34は移動レール33に沿ってy方向に平行にスライド移動する。モータ(図示省略)などにより移動レール33やキャリッジ34などを平行移動させる。
【0028】
また、キャリッジ34に対して基台部21を鉛直軸(図中のz軸)心周りに回転移動させる第1撮像駆動部35を備えている。第1撮像駆動部35は、モータやベルトやギアボックスやギア(ギアを除いて図示省略)などを備えている。第1撮像駆動部35によって基台部21が鉛直軸心周りに回転移動することで、基台部21に支持されたCアーム支持部22も鉛直軸心周りに回転移動し、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23も鉛直軸心周りに回転移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も鉛直軸心周りに回転移動する。以上のように、第1撮像駆動部35は、X線撮像部2を鉛直軸心周りに回転移動させる。
【0029】
また、基台部21に対してCアーム支持部22を被検体Mの体軸(図中のx軸)の軸心周りに回転駆動させる第2撮像駆動部36を備えている。第2撮像駆動部36は、モータやベルトやギアボックスやギア(ギアを除いて図示省略)などを備えている。第2撮像駆動部36によって基台部21に対してCアーム支持部22が体軸の軸心周りに回転移動する。また、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23も体軸の軸心周りに回転移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も体軸の軸心周りに回転移動する。以上のように、第2撮像駆動部36は、X線撮像部2を体軸の軸心周りに回転移動させる。
【0030】
また、Cアーム23を被検体Mの体軸(図中のx軸)に対して水平面で直交する軸(図中のy軸)心周りに回転駆動させるために、ベアリング37,ベルト38およびモータ39を備えている。Cアーム23はレール形状で形成されており、2つのベアリング37がCアーム23の溝部に嵌合し、ベルト38がCアーム23の外周面に沿って付設され、モータ39がベルト38の一部を巻き取るように配置されている。モータ39が回転駆動することで、ベルト38が周回し、それに伴ってベアリング37に対してCアーム23が摺動する。この摺動によりCアーム23が、体軸に対して水平面で直交する軸の軸心周りに回転移動する。また、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も体軸に対して水平面で直交する軸の軸心周りに回転移動する。以上のように、ベアリング37,ベルト38およびモータ39は、X線管24およびFPD25を体軸に対して水平面で直交する軸の軸心周りに回転駆動させる。
【0031】
なお、移動レール33が固定レール31に沿ってx方向に平行にスライド移動することで、移動レール33に嵌合したキャリッジ34もx方向に平行移動し、キャリッジ34に支持された基台部21もx方向に平行移動する。また、基台部21に支持されたCアーム支持部22もx方向に平行移動し、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23もx方向に平行移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25もx方向に平行移動する。以上のように、移動レール33は、X線撮像部2をx方向に平行移動させる。
【0032】
また、キャリッジ34が移動レール33に沿ってy方向に平行にスライド移動することで、キャリッジ34に支持された基台部21もy方向に平行移動する。また、基台部21に支持されたCアーム支持部22もy方向に平行移動し、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23もy方向に平行移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25もy方向に平行移動する。以上のように、キャリッジ34は、X線撮像部2をy方向に平行移動させる。
【0033】
この他に、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸心周りに回転移動させるFPD移動部(図示省略)などを備えている。また、Cアーム支持部22またはCアーム23を鉛直軸に沿って昇降移動させることで、X線撮像部2を鉛直軸に沿って平行駆動させる撮像部昇降部(図示省略)を備えてもよい。
【0034】
なお、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸方向に沿って、FPD25を平行移動させるFPD移動部(図示省略)を備えてもよい。この場合には、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸が、X線管24からFPD25に下ろした垂線(すなわち照射中心軸)方向に平行であるので、FPD移動部が支持軸方向に沿ってFPD25を平行移動させることで、FPD25を垂線方向に沿って平行移動させることになる。すなわち、X線管24からFPD25に垂線を下ろした距離(すなわちSID: Source Image Distance)をFPD移動部が可変にして、FPD25を垂線方向に沿って平行移動させる。
【0035】
検診台1やX線撮像部2を上述のように移動させて、X線管24から照射されたX線をFPD25が検出して得られたX線検出信号を、後述する画像処理部7(
図2を参照)で処理することで被検体MのX線画像を得る。このようにして、当該被検体Mの透視あるいは撮影を行う。被検体Mの透視については、撮影時よりも微弱な線量のX線を照射して得られたX線画像を逐次にリアルタイムで表示することにより行う。被検体Mの撮影については、通常の線量のX線を照射して得られたX線画像を、RAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体(図示省略)に一旦に書き込んで記憶してから、読み出して表示あるいは印刷することにより行う。
【0036】
また、可動式天板11の傍らには操作部41が可動式天板11に着脱自在に設置される。この操作部41は、X線撮像部2の各構成(基台部21やCアーム支持部22やCアーム23など)や移動レール33やキャリッジ34などを遠隔操作にて移動制御可能に構成され、これらに対して無線により送信あるいは電気ケーブルにより接続されている。ハイブリッド手術室システムでは、被検体Mに対して透視あるいは撮影を行いながら術者が手術を行うために、手術を行いやすくすべく可動式天板11の傍らに操作部41を設置しているが、操作部41を自在に持ち運んで、室内の任意の場所において遠隔操作にて移動制御することができる。
【0037】
次に、位置制御部4周辺の機構について
図2を参照して説明する。本実施例1では、
図2に示すように、X線透視撮影装置は符号Aの範囲であり、検診台1や検診台制御部5もX線透視撮影装置Aの構成に含まれる。本実施例1では、X線透視撮影装置Aの構成は全て室内に配置される。X線透視撮影装置Aは、
図1に示す検診台1(
図2も参照)やX線撮像部2(
図2も参照)の他にX線撮像部2の位置を制御する位置制御部4を備え、さらに、検診台1の位置を制御する検診台制御部5と、X線管24に管電圧や管電流を付与してX線管24を制御するX線管制御部6と、FPD25で検出されたX線検出信号をX線画像として処理する画像処理部7と、検診台1や検診台制御部5を除くこれらを統括制御するコントローラ8とを備えている。この他に、画像処理部7で処理されたX線画像などを記憶するメモリ部(すなわち記憶媒体)(図示省略)や、入力設定を行う入力部(図示省略)や、画像処理部7で処理された画像などを出力する出力部(図示省略)などを備えているが、操作部41を除けば、これらの構成については特徴部分と関連しないので、それらの説明について省略する。
【0038】
位置制御部4は、X線撮像部2に対する検診台1の位置を登録する操作部41(
図1も参照)と、X線撮像部2の現在の位置を検出するポテンショメータ42とを備えている。この操作部41で登録された検診台1の位置と、ポテンショメータ42で検出されたX線撮像部2の現在の位置とに基づいて、可動式天板11(
図1を参照)の水平位置に依らず、位置制御部4は、検診台1とX線撮像部2とが互いに干渉しないように、X線撮像部2の位置を制御する。位置制御部4や、検診台制御部5やX線管制御部6や画像処理部7やコントローラ8は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。操作部41は、この発明における検診台登録手段に相当し、ポテンショメータ42は、この発明におけるX線撮像手段位置検出手段に相当する。
【0039】
後述する実施例2、3も含めて、本実施例1では、操作部41は、手術台登録スイッチなどに代表される入力部を有している。この手術台登録スイッチを1回押すことで手術台登録モードに移行する。そして、手術台登録スイッチをさらに1回押すことで押下時の長手方向(被検体Mの体軸方向)に関するCアーム23と検診台1の土台部12(
図1を参照)との距離D1(
図4を参照)を登録する。そして、手術台登録スイッチをさらに1回押すことで押下時の鉛直方向に関する検診台1の可動式天板11とX線管24との距離D2(
図4を参照)を登録した後に、手術台登録モードから自動的に抜けるようにプログラミングされている。
【0040】
また、上述したように、操作部41は、X線撮像部2の各構成や移動レール33(
図1を参照)やキャリッジ34(
図1を参照)などを遠隔操作にて移動制御可能に構成されている。術者が操作部41に操作入力を行い、操作部41の操作入力に応じて、第1/第2撮像駆動部35,36(
図1を参照)の各モータ(図示省略)や、モータ39(
図1を参照)や、移動レール33やキャリッジ34の各モータ(図示省略)を回転制御することで、X線撮像部2の各構成や移動レール33やキャリッジ34を
図1中の矢印の方向にそれぞれ駆動させる。
【0041】
ポテンショメータ42は、検診台1との干渉を起こしやすく動作軸ともなるCアーム23に設けられており、Cアーム23の現在の位置や、Cアーム23の現在の位置に基づいてX線管24の現在の位置をリアルタイムに検出する。X線管24はCアーム23に固定されており、Cアーム23の位置によってX線管24の位置は一意に決定されるので、ポテンショメータ42をX線管24に設ける必要はない。なお、この発明における位置検出手段については、ポテンショメータ42に限定されず、通常に用いられる位置検出機能を有するものであればよい。また、後述する実施例2、3も含めて、本実施例1の場合には、
図1からも明らかなようにFPD25よりもX線管24の方が検診台1に近接して透視あるいは撮影を行う。したがって、FPD25に関しては検診台1と干渉する可能性が低い。ただし、FPD25を前後方向(SID方向)に動作させるためにFPD25の箇所にポテンショメータ42などの位置検出手段を設けている。もちろん、撮像形態に応じて、FPD25に関しても検診台1と干渉する可能性があれば、検診台1との干渉制御のためにFPD25の箇所にポテンショメータ42などの位置検出手段を設けてもよい。
【0042】
検診台制御部5は、モータ(図示省略)を回転制御することで、可動式天板11や土台部12を
図1中の矢印の方向にそれぞれ駆動させる。検診台制御部5は、コントローラ8に接続されておらず、コントローラ8に接続された位置制御部4やX線管制御部6とは独立して検診台1の位置を制御する。したがって、室内にそれぞれ配置された検診台1とX線撮像部2とが互いに独立して駆動する。その結果、X線撮像部2は、検診台1とは独立して室内に配置される。
【0043】
X線管制御部6は、X線管24に管電圧や管電流を付与してX線管24を制御する。また、図示を省略するコリメータをX線管制御部6が制御することで、X線管24からそれぞれ照射されたX線の照視野を制御する。画像処理部7は、X線管24から照射されて被検体Mを透過してFPD25で検出されたX線(X線検出信号)に対して各種の画像処理(例えばラグ補正やゲイン補正など)を行うことで被検体MのX線画像を得る。
【0044】
次に、
図1に示すように、X線管24およびFPD25をCアーム23の両端が支持して、横臥した状態で被検体Mを可動式天板11に載置して、術者が操作部41を操作しながら被検体Mの透視あるいは撮影を行う前の検診台11の位置登録について、
図3〜
図4を参照して説明する。
図3は、実施例1に係る一連の検診台に関する位置登録のフローチャートであり、
図4は、それぞれの検診台に関する位置登録の一実施態様の例である。なお、
図3や
図4では、可動式天板11を傾斜させずに透視あるいは撮影を行うので、位置登録の際も可動式天板11は傾斜せずにそれぞれの位置登録が行われる。また、
図3や
図4では、血管のための造影剤を被検体Mに投与して透視あるいは撮影を行う前の検診台11の位置登録を例に採って説明する。なお、
図3のフローチャートのステップS1〜S7では検査・治療の対象となる被検体Mを載置せずに位置登録を行う。
【0045】
(ステップS1)検診台の移動
土台部12を鉛直方向に昇降移動させて、可動式天板11を検査・治療で使用する高さに移動させる。また、後述する実施例2のように、車輪が付いた可動式の検診台1の場合には、検査・治療を行う位置にまで土台部12を水平方向に移動させた後に、土台部12を鉛直方向に昇降移動させて、可動式天板11を検査・治療で使用する高さに移動させる。なお、高さについては、検査・治療の内容や術者の好みによって異なるが、検査・治療前に決めた検診台1の可動式天板11の高さを、検査・治療後も含めた位置登録後に途中で変更することは通常ない。ただし、可動式天板11を土台部12に沿って水平方向に平行にスライド移動しながら透視あるいは撮影を行いつつ検査・治療を行う場合がある。ただ、その場合においても、可動式天板11の高さを途中で変更することは通常ないし、土台部12自体は固定されるので、後述する距離D1,D2を登録しても干渉制御に悪影響を及ぼすことはない。
【0046】
(ステップS2)手術台登録モードへの移行
次に、操作部41(
図1および
図2を参照)の手術台登録スイッチを押すと、手術台登録モードに移行する。
【0047】
(ステップS3)水平方向で停止
図1や
図4に示すように、土台部12を直方体とみなしたとき、Cアーム23を水平方向(
図1,
図4中のx方向またはy方向)およびスライド方向に(
図1,
図4中のy軸心周りに回転)移動させ、X線管24をこれ以上当該直方体に水平方向に接近させたくないという位置で停止させる。このときの長手方向(被検体Mの体軸方向)に関するCアーム23と検診台1の土台部12との距離を、
図4(a)に示すようにD1とする。
【0048】
(ステップS4)水平方向(長手方向)の位置登録
ステップS3での停止時に手術台登録スイッチを再度押すと、押下時の距離D1を登録する。つまり、水平方向(長手方向)に関してCアーム23と検診台1の土台部12との距離が最短となる距離D1を登録することで、それ以降の透視あるいは撮影時にはCアーム23と検診台1の土台部12との距離が距離D1未満にならないようにX線撮像部2の位置を制御して、水平方向(長手方向)に関する干渉制御を行う。このステップS4により水平方向(長手方向)の位置登録を完了する。
【0049】
(ステップS5)鉛直方向で停止
続いて、
図1や
図4に示すように、Cアーム23を水平方向およびスライド方向に移動させ、X線管24をこれ以上可動式天板11に鉛直方向に接近させたくないという位置で停止させる。このときの鉛直方向に関する検診台1の可動式天板11とX線管24との距離を、
図4(b)に示すようにD2とする。
【0050】
なお、
図4(a)の状態からCアーム23をスライド方向に単に移動させると、距離D1未満になる可能性がある。そこで、例えば移動レール33を固定レール31に沿って
図1,
図4中のx方向(紙面の左方向)に平行にスライド移動させて、Cアーム23を同方向のx方向(紙面の左方向)に平行移動させて距離D1以上にさせてから、Cアーム23をスライド方向に移動させればよい。もちろん、実際の透視あるいは撮影時でないので、Cアーム23と土台部12とが干渉さえしなければ、距離D1未満であっても位置登録時にはCアーム23を移動させ続けてもよい。
【0051】
(ステップS6)鉛直方向の位置登録
ステップS5での停止時に手術台登録スイッチを再度押すと、押下時の距離D2を登録する。つまり、鉛直方向に関して検診台1の可動式天板11とX線管24との距離が最短となる距離D2を登録することで、それ以降の透視あるいは撮影時には検診台1の可動式天板11とX線管24との距離が距離D2未満にならないようにX線撮像部2の位置を制御して、鉛直方向に関する干渉制御を行う。このステップS6により鉛直方向の位置登録を完了する。
【0052】
(ステップS7)手術台登録モードから抜ける
ステップS6で手術台登録スイッチを再度押せば、手術台登録スイッチを再度押すことなく手術台登録モードから自動的に抜ける。もちろん、ステップS6の後に、手術台登録スイッチを再度押してから手術台登録モードから抜けるようにプログラミングされていてもよい。
【0053】
上述のステップS1〜S7では、Cアーム23やX線管24との干渉を防止するために、X線撮像部2のうち、Cアーム23やX線管24に対する検診台1(の可動式天板11や土台部12)の位置(
図4では距離D1,D2)を登録したが、Cアーム23やX線管24に限定されない。例えば、FPD25にも干渉する恐れがある場合には、FPD25に対する検診台1の位置を登録してもよい。
【0054】
また、Cアーム23がスライド方向に(
図1,
図4中のy軸心周りに回転)移動するので、水平方向のうち長手方向に関するCアーム23と検診台1の土台部12との距離をステップS4で登録したが、水平方向の位置登録については長手方向の位置登録に限定されない。例えば、被検体Mの体軸(
図1,
図4中のx軸)の軸心周りにCアーム23が回転移動する場合には、水平方向のうち短手方向(
図1,
図4中のy方向)に関するCアーム23あるいはX線管24と検診台1の可動式天板11あるいは土台部12との距離を登録してもよい。
【0055】
以上の登録が正常に完了すると、
図1に示すように、X線管24およびFPD25をCアーム23の両端が支持して、横臥した状態で被検体Mを可動式天板11に載置して、術者が操作部41を操作しながら被検体Mの透視あるいは撮影を行いつつ検査・治療を行う。検査・治療のための位置決めも含め、登録以降の検査・治療の際には、ステップS4,S6において操作部41の手術台登録スイッチで登録された検診台1の位置(
図4では距離D1,D2)と、ポテンショメータ42(
図2を参照)で検出されたX線撮像部2の現在の位置とに基づいて干渉制御を行う。
【0056】
図4の実施態様の場合には、検診台1とX線撮像部2とが互いに干渉しないように、ポテンショメータ42で、Cアーム23の現在の位置やX線管24の現在の位置をリアルタイムに検出しつつ、距離D1未満になる位置には、Cアーム23の水平方向,回転方向(
図1,
図4中のx軸心周りの回転)およびスライド方向に移動できなくなるように制御する。同様に、検診台1とX線撮像部2とが互いに干渉しないように、ポテンショメータ42で、Cアーム23の現在の位置やX線管23の現在の位置をリアルタイムに検出しつつ、距離D2未満になる位置には、Cアーム23の水平方向,回転方向およびスライド方向に移動できなくなるように制御する。
【0057】
本実施例1に係るX線透視撮影装置Aによれば、上述の特許文献2の装置と相違して、室内にそれぞれ配置された検診台1とX線撮像部2とが互いに独立して駆動する場合において、X線撮像部2の位置を制御する位置制御部4は、手術台登録スイッチを有した操作部41とポテンショメータ42とを有する。操作部41の手術台登録スイッチは、X線撮像部2に対する検診台1の位置(
図4では距離D1,D2)を登録し、ポテンショメータ42は、X線撮像部2(各実施例ではCアーム23やX線管24)の現在の位置を検出する。検査・治療前に登録した検診台1の位置(各実施例では高さ)を、検査・治療後も含めた位置登録後に途中で変更することは通常ない。
【0058】
よって、操作部41の手術台登録スイッチで登録された検診台1の位置(距離D1,D2)と、ポテンショメータ42で検出されたX線撮像部2(Cアーム23やX線管24)の現在の位置とに基づいて、位置制御部4は、可動式天板11の水平位置に依らず、検診台1とX線撮像部2(Cアーム23やX線管24)とが互いに干渉しないように、X線撮像部2の位置を制御する干渉制御を行うことができる。このように、X線撮像部2に対する検診台1の位置(距離D1,D2)を操作部41の手術台登録スイッチが登録すれば、検診台1の位置や大きさがわからなくても干渉を防止することができる。また、X線撮像部2に対する検診台1の位置(距離D1,D2)を操作部41の手術台登録スイッチが登録すれば、検診台1の現在の位置を検出せずともX線透視撮影装置Aの方で検診台1の位置を把握することができるので、通信経路による接続が不要となる。その結果、X線撮像部2が検診台1とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができる。
【実施例2】
【0059】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図5は、実施例2、3に係るハイブリッド手術室システムのブロック図である。なお、本実施例2ではハイブリッド手術室システムの概略構成については、上述した実施例1と同じ構成であるので、
図1を流用する。また、上述した実施例1と共通する箇所については、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
上述した実施例1と相違して、本実施例2では、
図5に示すように、検診台1および検診台制御部5が、X線透視撮影装置Aの構成から外れている。ただし、操作部41を含む位置制御部4は、X線透視撮影装置Aの構成に含まれる。
図1では車輪が付いていない検診台1で図示しているが、本実施例2の場合には検診台1はX線透視撮影装置Aの外部構成であるので、車輪が付いた可動式の検診台1に適用してもよい。そして、透視あるいは撮影を行うときのみ、検診台1をCアーム23の傍らに設置してもよい。
【0061】
本実施例2に係るX線透視撮影装置Aでは、検診台1がX線透視撮影装置Aの構成から外れている点を除けば、実施例1に係るX線透視撮影装置Aの作用・効果と同じであるので、その説明を省略する。検診台1がX線透視撮影装置Aの外部構成であっても、可動式天板11を有して室内に配置される検診台1であれば、実施例1に係るX線透視撮影装置Aと同様に、X線撮像部2が検診台1とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができる。
【実施例3】
【0062】
次に、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。
なお、本実施例3ではハイブリッド手術室システムの概略構成については、上述した実施例1、2と同じ構成であるので、
図1を流用する。また、本実施例3ではハイブリッド手術室システムのブロック図については、上述した実施例2と同じ構成であるので、
図5を流用する。なお、上述した実施例1、2と共通する箇所については、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
上述した実施例1、2と相違して、本実施例3では、
図1や
図5に示す操作部41は、X線撮像部2に対する検診台1の位置を登録する他に、室内にそれぞれ配置された可動式もしくは可搬式の周辺機器(図示省略)に関して、X線撮像部2に対する周辺機器の位置を登録する。そして、この操作部41で登録された周辺機器の位置と、ポテンショメータ42で検出されたX線撮像部2の現在の位置とに基づいて、可動式天板11の水平位置に依らず、位置制御部4は、周辺機器とX線撮像部2とが互いに干渉しないように、X線撮像部2の位置を制御する。本実施例3の操作部41は、この発明における検診台登録手段に相当し、この発明における周辺機器登録手段にも相当する。
【0064】
可動式の周辺機器としては、例えば可動式の棚があり、可搬式の周辺機器としては、例えば麻酔機器がある。もちろん、周辺機器については、可動式あるいは可搬式の構造であれば、棚や麻酔機器に限定されない。これらはX線透視撮影装置Aの構成から外れている。これらについては、常時動かすことができるが、検診台1と同様に、棚や麻酔機器などの周辺機器を、検査・治療後も含めた位置登録後に途中で変更することは通常ない。よって、実施例1でも述べたように、
図3のフローチャートと同様のステップで周辺機器についても位置登録を行えば、周辺機器に関しても干渉制御を行うことができる。
【0065】
また、本実施例3の場合には、FPD23の傍らに周辺機器を設置する可能性があるので、周辺機器とFPD23とが干渉を起こしやすい場合には、周辺機器との干渉制御のためにFPD23の箇所にもポテンショメータ42を設けるのが好ましく、FPD23に対する周辺機器の位置を登録するのが好ましい。実施例1と同様に、水平方向(例えば長手方向や短手方向)に関するX線撮像部2と周辺機器との距離を登録し、鉛直方向に関するX線撮像部2と周辺機器との距離を登録する。
【0066】
本実施例3に係るX線透視撮影装置Aによれば、室内にそれぞれ配置された可動式もしくは可搬式の周辺機器(本実施例3では棚や麻酔機器)とX線撮像部2とが互いに独立して駆動する場合、または周辺機器(例えば麻酔機器)が手動で移動する場合において、X線撮像部2の位置を制御する位置制御部4は、手術台登録スイッチを有した操作部41とポテンショメータ42とを有する。操作部41の手術台登録スイッチは、X線撮像部2に対する周辺機器(棚や麻酔機器)の位置を登録し、ポテンショメータ42は、X線撮像部2の現在の位置を検出する。検査・治療前に登録した周辺機器(棚や麻酔機器)の位置を、検査・治療後も含めた位置登録後に途中で変更することは通常ない。
【0067】
よって、操作部41の手術台登録スイッチで登録された周辺機器(棚や麻酔機器)の位置と、ポテンショメータ42で検出されたX線撮像部2の現在の位置とに基づいて、位置制御部4は、周辺機器(棚や麻酔機器)の位置に依らず、周辺機器(棚や麻酔機器)とX線撮像部2とが互いに干渉しないように、X線撮像部2の位置を制御する干渉制御を行うことができる。このように、X線撮像部2に対する周辺機器(棚や麻酔機器)の位置を操作部41の手術台登録スイッチが登録すれば、周辺機器(棚や麻酔機器)の位置や大きさがわからなくても干渉を防止することができる。また、X線撮像部2に対する周辺機器(棚や麻酔機器)の位置を操作部41の手術台登録スイッチが登録すれば、周辺機器(棚や麻酔機器)の現在の位置を検出せずともX線透視撮影装置Aの方で周辺機器(棚や麻酔機器)の位置を把握することができるので、通信経路による接続が不要となる。その結果、X線撮像部2が周辺機器(棚や麻酔機器)とは独立して室内に配置される場合であっても干渉制御を行うことができる。
【0068】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0069】
(1)上述した各実施例では、
図1に示すようにCアームを備えたX線透視撮影装置を例に採って説明したが、保持部がX線源(X線管)とX線検出器とを保持する構成であれば、Cアーム以外の保持部であってもよい。
【0070】
(2)上述した各実施例では、天井から吊り掛けられたX線透視撮影装置を例に採って説明したが、室内に配置されるX線透視撮影装置であれば、例えば床面に据え付けられたX線透視撮影装置であってもよい。
【0071】
(3)上述した各実施例では、X線検出器として、フラットパネル型X線検出器(FPD)を例に採って説明したが、イメージインテンシファイア(I.I)などに例示されるように、通常において用いられるX線を検出するX線検出器であれば、特に限定されない。
【0072】
(4)上述した各実施例では、X線撮像手段(X線撮像部)に対する検診台あるいは周辺機器の位置(距離)は直交座標系(x,y,z)であったが、極座標系(例えば円柱座標系や球座標系)のように角度であってもよい。例えば、Cアームが被検体の頭から挿入するとき(「頭入れ」とも呼ぶ)以外の挿入角度に対しても同様に適用される。具体的には、検診台や周辺機器に対するCアームの挿入角度θについて位置登録し、挿入角度θ未満のときにCアームが移動できなくなるように制御する。
【0073】
(5)上述した各実施例では、検査・治療前に登録した検診台1の高さを、検査・治療後も含めた位置登録後に途中で変更することは通常ないことを前提としていたが、高さ以外の位置(例えば水平方向の位置)を位置登録後に途中で変更することは通常ないことを前提とする場合にも適用することができる。
【0074】
(6)上述した各実施例では、横臥した状態で被検体を載置するときの位置登録であったが、可動式天板を傾斜させて、起立姿勢・傾斜姿勢のいずれかで載置するときの位置登録にも適用することができる。
【0075】
(7)上述した各実施例では、検診台や周辺機器と干渉する可能性のあるX線撮像手段(X線撮像部)は、CアームやX線源(X線管)、あるいは実施例3のようなX線検出器(各実施例ではFPD)であって、これらに対して位置検出手段(各実施例ではポテンショメータ)をそれぞれ設けたが、位置検出手段を設ける箇所はこれらに限定されない。検診台や周辺機器と干渉する可能性のあるX線撮像手段であれば、例えば
図1に示すような基台部21やCアーム支持部22に位置検出手段を設け、基台部21やCアーム支持部22に対する検診台や周辺機器の位置を登録すればよい。
【0076】
(8)上述した各実施例では、最短となる距離を登録することで、当該距離未満のときにX線撮像手段(X線撮像部)が移動しないような制御を行ったが、段階的に干渉制御を行ってもよい。例えば、X線撮像部と被検体との距離を狭めて被検体に近接した状態で拡大して透視あるいは撮影を行うモードと、通常の位置から透視あるいは撮影を行うモードとを2段階に設定して、各モードでの距離をそれぞれ登録して、選択されたモードで干渉制御を行ってもよい。このように距離を複数に段階的に登録してもよい。
【0077】
(9)上述した実施例3では、周辺機器の位置を登録する際にも、実施例1、2と同様にX線撮像手段(X線撮像部)が検診台とは独立に室内に配置されるX線透視撮影装置に適用したが、周辺機器との干渉制御のみを行うのであれば、検診台・X線撮像部が一体型のX線透視撮影装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
A … X線透視撮影装置
1 … 検診台
11 … 可動式天板
2 … X線撮像部
23 … Cアーム
24 … X線管
25 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
4 … 位置制御部
41 … 操作部
42 … ポテンショメータ
D1,D2 … 距離
M … 被検体