特許第6166563号(P6166563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166563
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170710BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170710BHJP
【FI】
   F21S8/10 385
   F21S8/10 352
   F21S8/10 330
   F21S8/10 372
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-60034(P2013-60034)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-186827(P2014-186827A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直幹
(72)【発明者】
【氏名】上田 康博
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−009191(JP,A)
【文献】 実開昭60−075902(JP,U)
【文献】 特開昭58−209001(JP,A)
【文献】 特開2012−171566(JP,A)
【文献】 特開昭53−090680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
B60Q 3/00−3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源に対向配置され前記光源から出射された光を拡散させつつ前方へ反射させる拡散反射面と、
前記拡散反射面の前方に配置されるとともに乳白色の透光材料で形成され、前記拡散反射面で反射された光を拡散させつつ前方へ透過させるレンズ部材と、
一の前記拡散反射面を有するリフレクタと、
前面が開口するとともに、前記光源、前記レンズ部材及び前記リフレクタを内部に収容するハウジングと、
を備え
前記ハウジングは、前記リフレクタの前記一の拡散反射面に隣接する他の前記拡散反射面と、当該他の拡散反射面が設けられた後板部とを有し、
前記光源は、前記リフレクタの前記一の拡散反射面に対向するものと、前記ハウジングの前記他の拡散反射面に対向するものとの複数が、当該一の拡散反射面と当該他の拡散反射面との隣接方向に沿って配列され、
前記レンズ部材は、前記一の拡散反射面と前記他の拡散反射面との両方の前方に亘って配置されており、
前記ハウジングの前記後板部は、前記隣接方向のうち前記他の拡散反射面側の部分が、前記一の拡散反射面側の部分よりも前方に迫り出しており、
前記他の拡散反射面は、前記ハウジングの前記後板部のうち、前方に迫り出した前記他の拡散反射面側の部分の前面に設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記拡散反射面にはシボ加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記他の拡散反射面は、前記ハウジングの素地面を下地面とする面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
当該車両用灯具が、車両後部のリフトゲートに設けられるリッドランプであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される各種の車両用灯具として、図5に示すように、光源からの光をリフレクタなどで配光制御した後にインナーレンズ及びアウターレンズを透過させて前方へ照射するものが知られている。この種の車両用灯具では、アウターレンズが素通しとされるのに対してインナーレンズはシボ加工を施したものとされており、当該インナーレンズによってリフレクタ(反射面)からの反射光を拡散させることで、輝度ムラの無い均一な発光態様の実現を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−9191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シボ加工を施したインナーレンズによる拡散では、シボ加工面の凹凸によって光を屈折させるだけのものであるため、その拡散光量が十分ではなく、発光態様の均一化も十分ではなかった。そのため、より確実に輝度ムラの無い均一な発光態様を実現しようとすると、光源(例えば発光ダイオード)の数量を増やすといった別の構成による対策が必要であった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、光源の数量を増やすことなく、従来よりも均一な発光態様を実現することができる車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両用灯具において、
光源と、
前記光源に対向配置され前記光源から出射された光を拡散させつつ前方へ反射させる拡散反射面と、
前記拡散反射面の前方に配置されるとともに乳白色の透光材料で形成され、前記拡散反射面で反射された光を拡散させつつ前方へ透過させるレンズ部材と、
一の前記拡散反射面を有するリフレクタと、
前面が開口するとともに、前記光源、前記レンズ部材及び前記リフレクタを内部に収容するハウジングと、
を備え
前記ハウジングは、前記リフレクタの前記一の拡散反射面に隣接する他の前記拡散反射面と、当該他の拡散反射面が設けられた後板部とを有し、
前記光源は、前記リフレクタの前記一の拡散反射面に対向するものと、前記ハウジングの前記他の拡散反射面に対向するものとの複数が、当該一の拡散反射面と当該他の拡散反射面との隣接方向に沿って配列され、
前記レンズ部材は、前記一の拡散反射面と前記他の拡散反射面との両方の前方に亘って配置されており、
前記ハウジングの前記後板部は、前記隣接方向のうち前記他の拡散反射面側の部分が、前記一の拡散反射面側の部分よりも前方に迫り出しており、
前記他の拡散反射面は、前記ハウジングの前記後板部のうち、前方に迫り出した前記他の拡散反射面側の部分の前面に設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具において、
前記拡散反射面にはシボ加工が施されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用灯具において、
前記他の拡散反射面は、前記ハウジングの素地面を下地面とする面であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具において、
当該車両用灯具が、車両後部のリフトゲートに設けられるリッドランプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光源から出射された光が、拡散反射面によって拡散されつつ前方へ反射された後に、乳白色の透光材料で形成されたレンズ部材によって更に拡散されつつ前方へ透過される。これにより、シボ加工が施されたインナーレンズによる従来の拡散に比べ、乳白色のレンズ部材によって透過光の全光線透過率を下げて拡散率を増加させることができるうえに、拡散反射面によって更に拡散光量を増やすことができる。したがって、光源の数量を増やすことなく、従来よりも拡散光量を増やして、より均一な発光態様を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における車両用灯具の要部の分解斜視図である。
図2】実施形態における車両用灯具の要部の正面図である。
図3図2のIII−III線での断面図である。
図4図2のIV−IV線での断面図である。
図5】従来の車両用灯具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
<車両用灯具の構成>
図1は、本実施形態における車両用灯具1の要部の分解斜視図であり、図2は、車両用灯具1の要部の正面図であり、図3及び図4は、図2のIII−III線及びIV−IV線での断面図である。
【0014】
車両用灯具1は、車両後部のリフトゲート(図示せず)の左右両側端にそれぞれ設けられるリッドランプである。
なお、以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、特に断りのない限り、車両用灯具1から見た方向、すなわち、図示しない車両から見た方向とは前後左右を逆にした方向を意味するものとする。また、車両用灯具1は車両(リフトゲート)の左右両側端にそれぞれ設けられるものであるが、この左右2つの車両用灯具1,1は互いに左右対称構造となっているため、以下では、車両の後部右側に設けられる車両用灯具1のみについて説明し、車両の後部左側に設けられるものについての説明は省略する。
【0015】
具体的には、図1図4に示すように、車両用灯具1は、前面が開口したハウジング2と、当該ハウジング2の前面開口を覆う素通しのアウターレンズ3とを備えている。
なお、図1及び図2では、車両用灯具1のうち、当該車両用灯具1が設けられる図示しないリフトゲートの左端側に位置する左側下部のみを図示している。また、図2では、アウターレンズ3の図示を省略している。
【0016】
ハウジング2は、その左端がリフトゲートの左端に略一致するように配置されており、その略左半部では前後方向の奥行きが制限されている。そのため、ハウジング2の後板部は、その略左半部が他の部分よりも前方に迫り出している。また、このハウジング2の後板部のうちの略左半部には、第二反射面2aが設けられている。この第二反射面2aの詳細については後述する。
【0017】
ハウジング2とアウターレンズ3とで画成される灯室の内部には、3つのLED(発光ダイオード)4,…と、リフレクタ5と、インナーレンズ6とが収容されている。つまり、これら3つのLED4,…、リフレクタ5及びインナーレンズ6は、ハウジング2の内部に収容されている。
【0018】
このうち、3つのLED4,…は、それぞれ発光面を下方へ向けた状態で、左右方向に略沿って等間隔に配列され、共通する基板41の下面に実装されている。基板41は図示しないブラケットに固定されており、複数のLED4,…と当該基板41及びブラケットとでLEDユニットが構成されている。
【0019】
リフレクタ5は、正面視で左右方向に長尺な矩形状の外枠部51を有しており、この外枠部51の上辺部が基板41の前方に位置するように配置されている。外枠部51の内側部分は、前後方向に貫通する開口部51aとなっており、外枠部51には、正面視で当該開口部51aのうちの略左半部を覆う反射板部52が設けられている。
【0020】
反射板部52は、外枠部51の下辺部のうちの略左半部から後上がりに延出しつつ上方へ反るように湾曲する湾曲板状に形成されるとともに、左右方向と直交する断面が略一様な形状に形成されている。この反射板部52の上面(前面)は、前方斜め上方へ開口する凹面状に形成された第一反射面52aとなっている。
【0021】
第一反射面52aは、3つのLED4,…のうち、右側の2つのLED4,4の下方を覆うように左右方向へ延在した状態に配置され、当該2つのLED4,4の発光面に対向配置されている。また、第一反射面52aには、アルミニウム皮膜が蒸着されるとともに、反射光を拡散させるためのシボ加工が施されている。このような構成により、第一反射面52aは、右側の2つのLED4,4から下方へ出射された光を、拡散させつつ前方へ反射させる。
なお、第一反射面52aは、LED4からの光を拡散反射可能なように形成されていればよく、シボ加工以外の拡散反射加工(例えば、マット加工や、つや消し白色塗装など)が施されたものであってもよい。
【0022】
また、リフレクタ5の外枠部51の開口部51aのうち、正面視で反射板部52に覆われていない略右半部には、ハウジング2に設けられた上述の第二反射面2aが前方に露出している。言い換えれば、第二反射面2aは、ハウジング2の後板部のうち、リフレクタ5の反射板部52(第一反射面52a)と左右方向に隣接する部分の前面に設けられている。
【0023】
第二反射面2aは、第一反射面52aと同様に、左右方向と直交する断面形状が略一様であって、前方斜め上方へ開口する凹面状に形成されている。この第二反射面2aは、3つのLED4,…のうち、最も左側のLED4の下方を覆うように左右方向へ延在しており、当該LED4の発光面に対向配置されている。また、第二反射面2aは、所定の表面粗さに成形されてライトグレー色又は白色とされたハウジング2の素地面に、反射光を拡散させるためのシボ加工が施された面となっている。このような構成により、第二反射面2aは、最も左側のLED4から下方へ出射された光と、左右方向中央のLED4から下方へ出射された光の一部とを、拡散させつつ前方へ反射させる。
なお、第二反射面2aは、LED4からの光を拡散反射可能なように形成されていればよく、シボ加工以外の拡散反射加工(例えば、マット加工や、つや消し白色塗装など)が施されたものであってもよい。
【0024】
インナーレンズ6は、前後方向と略直交する矩形平板状に形成されるとともに、その周縁部が後方へ突出した形状に形成されている。このインナーレンズ6は、リフレクタ5の外枠部51よりも一回り小さいサイズに形成されており、この外枠部51の開口部51aを前方から覆いつつ、周縁部が当該外枠部51に支持されている。したがって、インナーレンズ6は、リフレクタ5の第一反射面52aとハウジング2の第二反射面2aとの両方の前方に亘って配置されている。また、インナーレンズ6は、乳白色の透光材料で形成されており、本実施形態では、乳白色のPMMA(アクリルガラス)で形成されている。このような構成により、インナーレンズ6は、3つのLED4,…から下方へ出射されて、リフレクタ5の第一反射面52a及びハウジング2の第二反射面2aで前方へ反射された光を、拡散させつつ前方へ透過させる。また、インナーレンズ6は、乳白色の透光材料で形成されていることにより、車両用灯具1の非点灯時に当該インナーレンズ6を透して前方から灯具内部が視認されることを防止する。
なお、インナーレンズ6の材質は、乳白色の透光材料であればPMMAでなくともよく、例えばPC(ポリカーボネート)などでもよい。また、インナーレンズ6には、透過光の拡散度合いを高める拡散剤が混入されていることが、より好ましい。
【0025】
<作用・効果>
以上のように、本実施形態の車両用灯具1によれば、LED4から出射された光が、拡散反射加工を施した第一反射面52a又は第二反射面2aによって拡散されつつ前方へ反射された後に、乳白色の透光材料で形成されたインナーレンズ6によって更に拡散されつつ前方へ透過される。これにより、シボ加工が施されたインナーレンズによる従来の拡散に比べ、乳白色のインナーレンズ6によって透過光の全光線透過率を下げて拡散率を増加させることができるうえに、拡散反射加工が施された第一反射面52a又は第二反射面2aによって更に拡散光量を増やすことができる。したがって、LED4(光源)の数量を増やすことなく、従来よりも拡散光量を増やして、より均一な発光態様を実現することができる。
【0026】
また、インナーレンズ6が乳白色の透光材料で形成されているので、シボ加工が施されたインナーレンズを用いていた従来と異なり、車両用灯具1の非点灯時に当該インナーレンズ6を透して前方から灯具内部が視認されることを防止することができる。したがって、非点灯時の見栄えを向上させることができる。
【0027】
また、リフレクタ5の第一反射面52aとハウジング2の第二反射面2aとが左右方向に隣接しており、インナーレンズ6がこれら第一反射面52aと第二反射面2aとの両方の前方に亘って配置されているので、第一反射面52aと第二反射面2aとで反射された光をインナーレンズ6によって好適に拡散させて、当該インナーレンズ6を均一に発光させることができる。つまり、異なる2つの反射面からの反射光であっても、これら2つの反射面の境界が判別できない程度に十分に拡散させて、インナーレンズ6を均一に発光させることができる。したがって、灯室の奥行きが制限されてリフレクタ5を配置できないような灯具端部であっても、当該端部のハウジング2部分に第二反射面2aを設けて、その反射光をインナーレンズ6で拡散させることによって、リフレクタ5の第一反射面52aによる発光部分との間で輝度ムラを生じさせることなく、インナーレンズ6を均一に発光させることができる。
【0028】
<変形例>
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0029】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る車両用灯具としてリッドランプを挙げて説明したが、本発明は、リッドランプ以外の車両用灯具にも広く適用可能である。
また、本発明に係る光源はLEDでなくともよく、またその個数も特に限定されない。
【符号の説明】
【0030】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2a 第二反射面(他の反射面)
3 アウターレンズ
4 LED(光源)
5 リフレクタ
52 反射板部
52a 第一反射面(一の反射面)
6 インナーレンズ(レンズ部材)
図1
図2
図3
図4
図5