(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスエンジンによって駆動される圧縮機、室外熱交換機を有する室外ユニットと、前記室外ユニットと配管接続されて冷凍サイクル回路を構成する室内ユニットと、前記ガスエンジンの駆動力で発電する発電機と、前記発電機の発電電力を商用系統に出力する系統連系インバータとを備える空気調和システムにおいて、
前記商用系統と前記発電電力の系統とを切り替える電源切替盤を備え、この電源切替盤に、当該空気調和システムの自己消費の電力負荷である前記室内ユニットと、空気調和に関係せず、停電時に稼働させたい設備である他の電力負荷とからなる負荷を接続し、前記商用系統に供給される商用電力の停電時には、前記発電電力により前記室外ユニットおよび前記電源切替盤に接続された前記負荷の運転を可能にするとともに、
前記停電時に、前記発電機の発電量が、前記他の電力負荷を含む負荷の接続許容量に基づいて設定された許容量を所定時間継続して超えたか否かを監視し、前記許容量を所定時間継続して超えた場合に、発電停止処理を行うとともに、前記負荷の接続許容量を超えていることを示す旨の警報を出力する監視部を備えることを特徴とする空気調和システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る空気調和システムを示す回路図である。
空気調和システム1は、ビルや学校等の施設に設置されるシステムであり、屋外に設置される室外ユニット2(室外機とも言う)と、屋内に設置される室内ユニット3(室内機とも言う)とを備えている。室外ユニット2と室内ユニット3とは、液管4aおよびガス管4bからなるユニット間配管4で接続され、これによって空調運転を行うための冷凍サイクル回路が構成される。
室外ユニット2には、駆動源として機能するガスエンジン10(エンジン)と、このガスエンジン10の駆動力により発電を行う発電機11と、ガスエンジン10の駆動力により冷媒を圧縮する圧縮機12とが収容される。ガスエンジン10は、燃料調整弁7を経て供給されるガス等の燃料と、スロットル弁8を経て供給される空気との混合気を燃焼させて駆動力を発生する。
【0011】
室内ユニット3は、同じ施設の各箇所に振り分けて設置される複数台(本例では7台)の室内ユニット3a,3b,3c,3d,3e,3f,3gで構成されている。なお、本実施形態では、7台の室内ユニット3a〜3gが接続された場合を例に説明するが、室内ユニット3の台数は設置場所に応じて適宜に増減される。これら室内ユニット3a〜3gには、室内ユニット3a〜3gを操作するためのリモコン5がそれぞれ設けられており、各室内ユニット3a〜3gに電力が供給されている場合、ユーザーによるリモコン操作に応じて個別に運転/運転停止等の操作が可能である。なお、
図1では、電力が供給される線を太線で示している。
【0012】
圧縮機12は、容量が異なる大および小の圧縮機12a,12bで構成され、2台が並列に、ガスエンジン10に対し、それぞれ電磁クラッチ14a,14bを介して接続されている。電磁クラッチ14a,14bによって圧縮機12a,12bとガスエンジン10との接続が切り替えられることで、空調の負荷に応じて圧縮機12a,12bの駆動が制御される。これら圧縮機12a,12bの吐出管12cには、プレート式熱交換器31、四方弁15、室外熱交換器17が順に接続され、この室外熱交換器17には、液管4aを介して、各室内ユニット3の膨張弁19a〜19g(減圧装置とも言う)および室内熱交換器21a〜21gが接続され、室内熱交換器21a〜21gには、ガス管4bを介して、四方弁15が接続され、この四方弁15には、圧縮機12a,12bが接続されている。室内熱交換器21a〜21gには、直流モーターによって駆動される送風機6a〜6g(室内送風機とも言う)がそれぞれ設けられている。
また、圧縮機12a,12bの吐出管12cおよび吸込管12dが、バイパス管18で接続され、このバイパス管18に、アンロード用のバイパス弁20が接続されている。本構成では、上記した各機器を備えて冷媒回路が形成されている。
【0013】
圧縮機12a,12bが駆動されると、四方弁15の切り替え状態が暖房切り替えであれば、
図1に実線の矢印で示すように、圧縮機12a,12b(いずれか一方の圧縮機12a,12bの場合も含む)、四方弁15、室内熱交換器21a〜21g、膨張弁19a〜19g、室外熱交換器17の順に冷媒が循環し、室内熱交換器21a〜21gでの冷媒凝縮熱により室内が暖房される。これとは反対に、四方弁15が冷房切り替えであれば、
図1に破線の矢印で示すように、圧縮機12a,12b、四方弁15、室外熱交換器17、膨張弁19a〜19g、室内熱交換器21a〜21gの順に冷媒が循環し、この室内熱交換器21a〜21gでの冷媒蒸発熱により室内が冷房される。
なお、室内ユニット3a〜3gは並列接続されるため、各室内ユニット3a〜3gへ個別に冷媒を供給することができ、各室内ユニット3a〜3gを各々独立して運転することが可能である。
【0014】
次に、ガスエンジン10の冷却装置について説明する。
このガスエンジン10は水冷式であり、このガスエンジン10のウォータージャケットを循環した冷却水は、第1の三方弁22、逆潮流ヒータ23および第2の三方弁24を経て、ラジエータ25に供給される。このラジエータ25は、室外熱交換器17と併設されており、これらは同一の送風機26により送られる空気によって空冷され、このラジエータ25を経た冷却水は、冷却水ポンプ27、排ガス熱交換器29の順に流れて、ガスエンジン10のウォータージャケットに戻される。
排ガス熱交換器29には、ガスエンジン10の排気ガスが通され、この排気ガスは、排気トップ30を経て、室外ユニット2の外に排出される。
【0015】
上述した第1の三方弁22は冷却水温度で自動的に切り替えられる。すなわち、冷却水温度が所定温度よりも低い場合、ガスエンジン10のウォータージャケットからの冷却水を、ラジエータ25をバイパスさせ、直接、冷却水ポンプ27、排ガス熱交換器29に導いて、上記ウォータージャケットに戻す。
第2の三方弁24は、例えば暖房運転時に切り替えられ、冷却水を、ラジエータ25をバイパスさせ、プレート式熱交換器31を経て、冷却水ポンプ27、排ガス熱交換器29の順に流し、ウォータージャケットに戻す。
【0016】
次に、電力系統について説明する。
図2は、空気調和システム1の電力系統を模式的に示している。なお、
図2では電力が流れる線を実線で示し、電力が流れない線を破線で示している。
図1および
図2に示すように、本実施の形態の空気調和システム1では、発電機11を、電力会社の電力系統である商用系統36(商用電源とも称する)に系統連系することにより、発電機11の発電電力を、商用系統36の電力とともに、室外ユニット2、室内ユニット3および他の電力負荷38に供給することができる。
この場合、室外ユニット2および室内ユニット3は、空気調和システム1の自己消費(自己電力消費)の電力負荷に相当しており、他の電力負荷38は、空気調和に関係しない電力負荷(非空調装置)に相当しており、これらの電力負荷が需要家負荷を構成している。他の電力負荷38は、設置場所やユーザーの希望に応じて適宜に接続される需要家負荷であり、以下、「他の需要家負荷38」と表記する。本実施形態の他の需要家負荷38は、室内を照らす照明装置となっている。
なお、需要家負荷は上記のものに限定されるものではなく、例えば、更に別の電力負荷を接続するように構成しても良い。
【0017】
商用系統36は、商用電源線(電灯線とも言う)である上流側給電ライン51aを介して室外ユニット2内の電源切替盤52に接続されており、この商用系統36と電源切替盤52との間には、商用系統36側から順に電力検出器43とブレーカ37が設けられている。
電源切替盤52は、上流側給電ライン51aが接続される第1端子52a(通常運転用端子)と、発電機11の発電電力が供給される後述する電源線34bが接続される第2端子52b(自立運転用端子)と、室内ユニット3および他の需要家負荷38等が接続される下流側給電ライン51bが接続される第3端子52c(給電用端子)とを備え、第3端子52cの接続先を、第1端子52aと第2端子52bとのいずれか一方に切り替えるスイッチ回路として機能する。
このため、第3端子52cと第1端子52aとを接続することにより、商用系統36から商用電力(本実施形態では200Vの交流電力)を下流側給電ライン51bに供給することができ、第3端子52cと第2端子52bとを接続することにより、発電機11の発電電力を下流側給電ライン51bに供給することができる。
つまり、電源切替盤52は、下流側給電ライン51bへの電力源を、商用系統36と発電電力の系統(発電系統とも言う)との間で切り替える切替手段として機能する。この下流側給電ライン51bに供給された電力は、電源線41を介して室外側コントローラ39にも供給され、この電力により圧縮機12や送風機26等を駆動可能に構成されている。
【0018】
このように、この空気調和システム1では、商用系統36と発電電力の系統とを切り替える電源切替盤52を備え、この電源切替盤52に、室外ユニット2、室内ユニット3および他の需要家負荷38を接続することによって、商用系統36および室外ユニット2の発電機11から供給される電力を利用し、室外ユニット2、室内ユニット3および他の需要家負荷38を駆動する通常運転と、商用系統36から切り離して発電機11の発電電力によって室外ユニット2、室内ユニット3および他の需要家負荷38を駆動する自立運転と、を選択的に行うことができる。
【0019】
次いで、発電電力の系統について説明する。
発電機11の発電電力は、電力線32を介して系統連系インバータ33に出力される。系統連系インバータ33は、発電機11の発電電力である三相交流電力を、AC/DCコンバータを介して、直流電力に変換した後、200Vの交流の電力に再度変換して電源線34(発電電力出力線)に出力する。
この電源線34は、系統連系用の電源線34aと、自立運転用の電源線34bとに分岐し、系統連系用の電源線34aは、室外側コントローラ39を含む室外ユニット2に電力を供給する電源線41を介して下流側給電ライン51bに接続される。また、
図1に示すように、系統連系用の電源線34aと下流側給電ライン51bとの間には、漏電時に遮断する漏電ブレーカ34Xが配設されている。
なお、発電電力の一部は、
図2に示す電源線47bを介してバッテリー49に供給され、バッテリー49に発電電力が蓄電されるように構成されている。
【0020】
自立運転用の電源線34bは、上述した電源切替盤52の第2端子52bに接続されている。このため、上述したように、電源切替盤52の第2端子52bと第3端子52cとを接続することによって、電源切替盤52を介して発電電力を下流側給電ライン51bに直接供給することができる。
ここで、自立運転用の電源線34bには、当該電源線34bに発電電力を流す際にオンにされる自立用リレー34cが設けられており、系統連系用の電源線34aにも、当該電源線34aに発電電力を流す際にオンにされる連系用リレー34dが設けられている。
【0021】
系統連系インバータ33は、室外ユニット2の室外側コントローラ39に、通信線40を介して通信可能に接続されるとともに、電力が逆潮流しないように、上述した逆潮流ヒータ23に適宜に電力を供給する。
室外側コントローラ39は、系統連系用の電源線34aを介して発電電力が供給可能な構成に加え、商用系統36から電源線41を介して動作電源を得ることができ、通信線42を介して各室内ユニット3の室内側コントローラに通信可能に接続されている。
この室外側コントローラ39は、電源線54を介してバッテリー49の電力が直接供給される自立制御部39aと、制御プログラム等の各種データを記憶する記憶部39bと、各種の警報を表示処理や報音処理等により出力可能な警報出力部39cとを備えている。
【0022】
また、室外側コントローラ39は、商用系統36および室外ユニット2の発電機11から供給される電力で室外ユニット2、室内ユニット3および他の需要家負荷38を駆動する通常運転を行う通常運転モードと、停電時等に商用系統36から切り離されて発電機11の発電電力によって室外ユニット2、室内ユニット3および他の需要家負荷38を駆動する自立運転を行う自立運転モードとのいずれかに動作モードを切り替える制御を行う。
自立制御部39aには、ユーザー等が手動で操作する手動スイッチである自立運転切り替えスイッチ56(自立運転スイッチ)が接続され、自立運転切り替えスイッチ56が操作されることで自立制御部39aが、自立運転モードへの切り替え動作を開始する。
【0023】
バッテリー49の電力が供給される電源線54には、電源線48(
図1)を介してガスエンジン10のセルモーター(不図示)がつながっており、室外側コントローラ39の制御の下、バッテリー49の電力でセルモーターを駆動し、ガスエンジン10を始動させることができる。
また、上述した警報出力部39cは、エラーコード等の警報情報を表示する表示部や、エラー音等の警報音声を出力する音声出力部を有し、室外側コントローラ39の制御の下、ユーザーやサービスマン等に対して各種の警報を報知する装置である。なお、本実施形態では、警報出力部39cが、室外ユニット2に設けられている場合を例示しているが、室内ユニット3側に設けても良く、設置箇所は適宜に変更可能である。
室外側コントローラ39は、上述したように、室外ユニット2の各機器(例えば、ガスエンジン10、電磁クラッチ14a,14b、送風機26、バッテリー49および電源切替盤52等)の動作を中枢的に制御する制御部として機能する。
【0024】
系統連系インバータ33には、通信線44を介して系統連系盤45が接続され、この系統連系盤45には、通信線46を介して、商用系統36とブレーカ37との間に設置された電力検出器43(以下、第1電力検出器43と言う)が接続されている。第1電力検出器43は、商用系統36に供給される電力値をリアルタイムに取得し、この取得した電力値データは、系統連系盤45を介して、系統連系インバータ33に入力され、通信線40を通じて室外側コントローラ39に送られる。系統連系盤45は、図示は省略するが、OVGR/RPR(地絡過電圧継電器/逆電力継電器)、UPR(不足電力継電器)、W/TD(ワット・トランスデューサ)等を備え、受信した第1電力検出器43からの信号とともに、OVGR/RPR、UPR、W/TDからの信号を系統連系インバータ33に送信するようになっている。このため、系統連系インバータ33は、商用系統36の情報を得ることができる。
【0025】
系統連系インバータ33は、発電機11の発電量を制御する機能を有し、必要に応じ、発電量を減少または増大させる。例えば、室内ユニット3の空調要求に応じた圧縮機12a,12bの負荷の増大、および、他の需要家負荷38の増大に応じて発電要求が増大した場合に、発電機11の発電量を増大させる。この場合、他の需要家負荷38は、第1電力検出器43、系統連系盤45、系統連系インバータ33および室外側コントローラ39により常時監視されている。
また、系統連系インバータ33は、自身の出力電力、つまり、電源線54に供給される電力を検出する電力検出器33a(以下、第2電力検出器33aと言う)を有している。
【0026】
続いて、この空気調和システム1の基本動作を説明する。
図2は通常運転時(通常運転モード)の空気調和システム1を示している。
通常運転モードは、商用系統36から電力が供給されている場合の動作モードであり、このモードでは、
図2に示すように、電源切替盤52は第1端子52a側に切り替えられる。このため、商用系統36から供給される電力は、上流側給電ライン51a、下流側給電ライン51bおよび電源線41(
図1)等を介して、室外ユニット2の各部、室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38に供給される。また、発電機11が発電した電力は、系統連系インバータ33の出力線である電源線34、系統連系用の電源線34aおよび電源線41からなる電源線61(
図2)を介して下流側給電ライン51bに流れ、室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38に供給される。
ここで、室内ユニット3a〜3gに供給される電力の大部分は、送風機6a〜6g(
図1参照)で消費される。送風機6a〜6gの手前には、系統連系インバータ33からの交流電力を直流に変換するコンバータが設けられている。
また、この通常運転時には、発電機11は、室外ユニット2を駆動するための駆動電力を全てまかなう発電電力を出力し、発電した余剰の電力を室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38に供給する。
【0027】
図3は、商用系統36の電力供給が停止した直後を示す模式図であり、
図4は、自立運転時(自立運転モード)の電力供給を示す模式図である。この
図3および
図4においても、電力が流れる線を実線で示し、電力が流れない線を破線で示している。
図3に示すように、停電等によって商用系統36からの電力供給が断たれると、室外ユニット2、室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38は電力が供給されなくなって停止する。停電後にユーザーの手動操作によって自立運転切り替えスイッチ56が「オン」に操作されると、このスイッチ56をオンしたタイミングでバッテリー49からの電力が自立制御部39a(
図1参照)に供給され、自立制御部39aの制御の下、バッテリー49の電力が不図示のDC/DCコンバータを通してDC200Vとされ、室外側コントローラ39の電源として供給される。
【0028】
続いて、室外側コントローラ39は、通常運転モードから自立運転モードに切り替える動作を開始する。この場合、まず、室外側コントローラ39は、バッテリー49の電力によってセルモーターを駆動し、ガスエンジン10を始動させる。ガスエンジン10が始動すると、発電機11により発電が開始され、系統連系インバータ33を通して自立電源として出力される。自立電源が出力されると、
図4に示すように、電源切替盤52は、自立運転用端子である第2端子52b側に自動的に切り替わる。これにより、商用系統36から系統連系インバータ33を含む室外ユニット2が切り離され、室外ユニット2と室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38とが接続されて閉じた自立運転回路57が形成され、自立運転が開始される。
この自立運転時には、少なくともガスエンジン10を駆動して発電機11で発電する運転(発電運転)を継続し、発電機11が発電した電力は、系統連系インバータ33の出力線である電源線34および自立運転用の電源線34bからなる電源線55(
図2)を介して下流側給電ライン51bに流れる。このため、室内ユニット3a〜3gのいずれかを運転する場合には、室外ユニット2内の電磁クラッチ14a,14bのいずれかをつないだ状態にして圧縮機12a,12bのいずれかを駆動して空調運転を行う。また、この自立運転時には、発電しているため、発電電力によって他の需要家負荷38を運転すること、つまり、照明装置を作動させることもできる。
【0029】
また、この自立運転時には、上流側給電ライン51aは電源切替盤52によって室外ユニット2から切り離されているため、電源切替盤52よりも上流側の商用系統36には発電機11の電力は供給されない。このため、自立運転の際に商用系統36側へ逆潮流が生じることを簡単な構成で防止できるとともに、所望の室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38を運転することができる。
したがって、発電能力が限られている発電機11で電力を供給する場合であっても、停電時に運転したい設備を稼働させることができる。
また、停電時の混乱状態にあっても、運転したい設備をその場で選定することなく、予め選定されて自立運転回路57に配置されている設備を速やかに稼働させることができる。
【0030】
停電時に室内ユニット3a〜3gを稼働させる必要が無い場合には、電磁クラッチ14a,14bの接続が解除され、圧縮機12a,12bの運転が停止される。このため、他の需要家負荷38だけに電力を供給したい場合に圧縮機12a,12bを運転する必要がなく、効率良く電力を供給できる。
また、自立運転時には、電源線61は、発電機11で発電されて電源切替盤52の二次側に供給された電力を室外ユニット2側に戻す電力戻し回路として機能する。すなわち、発電機11から下流側給電ライン51bに流れた電力の一部は、電源線61の一部を構成する電源線41(
図1参照)を通って室外ユニット2に戻り、電源線47a(
図1)等を介して送風機26等の室外ユニット2の各部に供給される。この場合、バッテリー49にも電力が供給され、自立運転中もバッテリー49は充電される。
【0031】
また、
図4の状態から商用系統36が復電すると、系統側の電力を検出する第1電力検出器43(
図1)によって復電が検出され、この検出結果が系統連系盤45および系統連系インバータ33を介して室外側コントローラ39に送られ、室外側コントローラ39は自立運転を自動停止させる。自立運転が停止されると、室外ユニット2、室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38は電力の供給が一度断たれて稼働が停止される。
商用系統36が復電すると、電源切替盤52は、通常運転用端子である第1端子52a側に自動的に切り替わり、これにより、商用系統36の電力が室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38に供給されるようになる。
その後、自立運転切り替えスイッチ56がユーザー等の意思によって手動で「オフ」に切り替えられると、室外側コントローラ39は室外ユニット2の稼働を許可し、次いで室外ユニット2の主電源スイッチ等によってユーザーによる室外ユニット2の再稼働の意思が入力されると、ガスエンジン10および発電機11を含む室外ユニット2が再稼働され、通常運転が開始される。これにより、通常運転時には、自立運転切り替えスイッチ56は必ず「オフ」に切り替えられていることになるため、停電時にユーザーの意思による自立運転切り替えスイッチ56の手動操作なしに自立運転に切り替えられてしまうことがない。
【0032】
ところで、自立運転の場合、通常運転の場合と違って商用系統36の電力がないため、室内ユニット3a〜3gや他の需要家負荷38等の接続負荷が多くなるほど、接続負荷の分だけ発電する必要が生じ、発電機11の負荷が大きくなる。このため、この空気調和システム1では、自立運転時の接続負荷が発電機11の発電量以下の仕様とされるのが通常である。
しかしながら、ユーザー側の希望や設置場所の条件等によっては、他の需要家負荷38に割り当て可能な電力消費量が値Xに制限されている場合であっても、値Xを超える電力消費量の他の需要家負荷38が接続される場合が考えられる。この場合、自立運転時に他の需要家負荷38等を運転すると、発電機11に過大な負荷がかかってしまうおそれが生じる。
そこで、本実施形態では、発電機11への過大な負荷を防止するために、自立運転時に、発電機11の発電量が予め設定された発電許容量を超えたか否かを監視する監視処理を行うようにしている。
【0033】
この空気調和システム1では、上記監視処理を行うための制御プログラムが、室外側コントローラ39の記憶部39bに記憶されており、室外側コントローラ39の自立制御部39aが、上記制御プログラムを読み出して実行することによって、監視処理が実施されるようになっている。
図5は、監視処理を示すフローチャートである。なお、この監視処理は、空気調和システム1が運転される間、所定の割り込み周期で繰り返し実行される処理である。
室外側コントローラ39は、自立運転中か否かを判定し(ステップ11)、自立運転中であれば続くステップS12へ移行する一方、自立運転中でない場合は、当該処理を一旦終了する。
【0034】
ステップS12において、室外側コントローラ39は、系統連系インバータ33の発電量として、発電電力W1を取得し、この発電電力W1が、予め設定された発電許容量WUを超えたか否かを判定する。この発電電力W1については、系統連系インバータ33が有する第2電力検出器33aが検出し、この検出結果を室外側コントローラ39が取得することによって、室外側コントローラ39で正確な発電電力W1を特定できるように構成されている。
また、上記の発電許容量WUは、空気調和システム1の仕様で定められた自立運転時の負荷の接続容量に基づいて設定され、発電機11の最大発電量と同じ値、或いは、最大発電量から若干低くした値が設定される。
なお、本実施形態では、発電機11の発電量として、発電電力W1を取得するため、この発電電力W1の比較対象となる発電許容量WUも電力値で規定されている。しかし、発電電力を比較する場合に限らず、発電機11の発電量および発電許容量WUを電流値で取得し、電流値同士を比較するように構成しても良い。
【0035】
発電電力W1が発電許容量WUを超えた場合(ステップS12;YES)、室外側コントローラ39は、予め定めた設定時間T1を計測するタイマー処理を開始し、タイマーオーバーフロー(以下、タイマーOVFと言う。)に至ったか否かを判定する(ステップS13)。ここで、タイマーOVFは、タイマーのカウント値が零になった状態、つまり、設定時間T1が経過した状態である。
一方、発電電力W1が発電許容量WU未満であれば(ステップS12;NO)、室外側コントローラ39は、上記の設定時間T1を計測するタイマー処理をリセットするタイマーリセット処理を行う(ステップS14)。
上記設定時間T1は、発電電力W1が所定時間継続して発電許容量WUを超えたと判断できる時間に設定されており、本実施形態では10秒に設定されている。
【0036】
このS12〜S14の処理によれば、発電電力W1が短時間(設定時間T1より短い時間)だけ発電許容量WUを超えた場合には、タイマーOVFが発生せず、自立運転を継続し、つまり、発電機11の発電運転を継続する。
これに対し、発電電力W1が設定時間T1以上継続して発電許容量WUを超えた場合には、タイマーOVFとなり、室外側コントローラ39は、発電機11の発電を停止させる発電停止処理を実行するとともに(ステップS15)、負荷の接続許容量を超えていることを示す旨の警報を出力する警報処理を実行する(ステップS16)。
より具体的には、室外側コントローラ39は、発電停止処理として、系統連系インバータ33により発電機11の発電を停止させる処理を行うとともに、ガスエンジン10を停止させる処理を行い、空気調和システム1の運転を強制的に停止させる。また、室外側コントローラ39は、警報処理として、警報出力部39cにより、負荷の接続許容量を超えていることを示す所定のエラー情報を表示するとともに、所定のエラー音を報音する。なお、警報処理として、通信回線を介して接続された外部の装置に、警報情報を送信するようにしても良い。
【0037】
このようにして、発電電力W1が発電許容量WUを所定時間超えている場合には、接続負荷が空気調和システム1の仕様の範囲を超えると判断し、運転停止により発電機11への過大な負荷を直ちに回避するとともに、接続負荷が空気調和システム1の仕様の範囲を超える旨の報知を行う。
この報知により、ユーザー或いはサービスマンは、自立運転が停止した原因を容易に把握することができ、以降の対処を適切に図ることができる。例えば、ユーザー或いはサービスマンは、運転対象の接続負荷(室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38)を減らすようにして、室外ユニット2を再稼働させることにより、自立運転を再開させることができる。
なお、上記監視処理は、室外側コントローラ39の自立制御部39aが行っており、つまり、自立制御部39aは、停電時に自立運転を行う制御部として機能するとともに、停電時に監視処理を行う監視部としても機能している。
【0038】
以上説明したように、この空気調和システム1では、商用系統36と発電電力の系統とを切り替える電源切替盤52を備え、この電源切替盤52に室内ユニット3a〜3gおよび他の需要家負荷38を含む負荷を接続し、商用系統36に供給される商用電力の停電時には、発電電力により室内ユニット3a〜3gおよび電源切替盤52に接続された上記負荷の運転を可能にするとともに、停電時に、発電量が予め定めた発電許容量WUを所定時間継続して超えたか否かを監視し、発電量が発電許容量WUを所定時間継続して超えた場合に、負荷の接続許容量を超えている旨の警報を出力するようにしたので、停電時に発電電力で負荷の運転を可能にしながら、発電量が発電許容量WUを所定時間継続して超えた場合に警報を出力することができる。
この警報は、発電量が発電許容量WUを所定時間継続して超えない場合は出力されないので、負荷の運転始動時等に生じやすい瞬間的な消費電力の上昇(例えば、突入電流)程度では警報を出力しないようにすることができ、負荷の接続許容量を超えている場合に限って警報を出力することができる。
これにより、適切な警報が出力でき、この警報によって、停電時に発電機11に過大な負荷がかかることを抑制することができる。
【0039】
さらに、本構成では、発電量が発電許容量WUを所定時間継続して超えた場合に、発電停止処理を更に行うため、停電時に発電機11に過大な負荷がかかることをより適切に抑制することができる。
また、発電許容量は、空気調和システム1で定められた負荷の接続容量に基づいて設定されるので、室内ユニット3a〜3g以外に割り当て可能な電力消費量を超える他の需要家負荷38を接続し、停電時にこの需要家負荷38を運転した場合に警報を出力することができる。この警報により、負荷の接続許容量を超える原因を容易に特定することができる。
【0040】
また、室外ユニット2は、停電時にガスエンジン10を始動させるための電力を蓄えるバッテリー49を備え、停電時に手動スイッチである自立運転切り替えスイッチ56が操作された場合にバッテリー49の電力を利用してガスエンジン10が始動し、発電機11が発電するので、ユーザーの意思に応じて確実に且つ簡単に自立運転を開始でき、負荷の接続許容量の範囲内であればユーザーは所望の負荷を運転させることができる。従って、停電時にユーザーにとって利便性の高い空気調和システム1を提供することができる。また、自立運転を停止してもバッテリー49の電力を利用して、自立運転を再開させることも可能である。
【0041】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。