(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷用原稿をスキャニングして画像データを得るスキャナ部を一体に備える印刷機により印刷を行う際の印刷機のデータ処理方法であって、異なる複数種類の感熱紙を適用可能な記録紙ロールが前記印刷機にセットされたなら、当該記録紙ロールに付されたIDタグから所定のIDタグ読取手段により紙情報を読取る紙情報読取ステップと、この紙情報に基づいて前記スキャナ部から得る画像データを補正処理して補正画像データを得る第一補正ステップと、この補正画像データに基づいてプリントデータを生成処理するプリントデータ生成ステップと、このプリントデータを前記紙情報に基づいて補正処理することにより前記記録紙ロールからの記録紙に印刷する補正プリントデータを得る第二補正ステップとを備えることを特徴とする印刷機のデータ処理方法。
前記第一補正ステップの補正処理には、少なくとも、前記紙情報に基づき単位面積当たりの発色ドットの数量を増減させることにより前記画像データの明暗を変更した補正画像データを得る補正処理を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷機のデータ処理方法。
前記第二補正ステップの補正処理には、少なくとも、前記紙情報に基づき前記プリントデータの発色ドットの大きさを変更した補正プリントデータを得る補正処理を含むことを特徴とする請求項1,2又は3記載の印刷機のデータ処理方法。
前記印刷機は、前記補正プリントデータを供給することにより前記記録紙に対して感熱方式により印刷を行うサーマルヘッドを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷機のデータ処理方法。
印刷用原稿をスキャニングして画像データを得るスキャナ部を一体に備える印刷機により印刷を行う際の印刷機のデータ処理方法であって、前記印刷機にセットした記録紙ロールに付されたIDタグから所定のIDタグ読取手段により紙情報を読取る紙情報読取ステップと、この紙情報に基づいて前記スキャナ部から得る画像データを補正処理して補正画像データを得る第一補正ステップと、この補正画像データに基づいてプリントデータを生成処理するプリントデータ生成ステップと、このプリントデータを前記紙情報に基づいて補正処理することにより前記記録紙ロールからの記録紙に印刷する補正プリントデータを得る第二補正ステップと、前記補正プリントデータをサーマルヘッドに供給することにより前記記録紙に対して感熱方式により印刷を行うステップとを備えることを特徴とする印刷機のデータ処理方法。
前記第一補正ステップの補正処理には、少なくとも、前記紙情報に基づき単位面積当たりの発色ドットの数量を増減させることにより前記画像データの明暗を変更した補正画像データを得る補正処理を含むことを特徴とする請求項6,7又は8記載の印刷機のデータ処理方法。
前記第二補正ステップの補正処理には、少なくとも、前記紙情報に基づき前記プリントデータの発色ドットの大きさを変更した補正プリントデータを得る補正処理を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の印刷機のデータ処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献2で開示される従来のロールプリンタ(印刷機)は、次のような問題点があった。
【0006】
即ち、記録紙ロールの巻芯に設けられたICタグに格納される、記録紙の製造日時、感度情報等を含む記録紙管理情報を、プリンタ側で読取る(書込む)ため、プリンタ側において、これらの各種情報を含む記録紙管理情報を利用できるメリットはあるものの、プリント画像の品質(画質)をより高める観点からは必ずしも十分とは言えない。特に、画質に関してはある程度の調整は可能であるとしても、写真画像のような中間調画像の階調表現を十分に行うには限界があるなど、記録紙に対してプリント画像を最適化するには更なる改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した印刷機のデータ処理方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る印刷機のデータ処理方法は、上述した課題を解決するため、印刷用原稿Psをスキャニングして画像データDvを得るスキャナ部2を一体に備える印刷機1により印刷を行うに際し、異なる複数種類の感熱紙K1,K2,K3…を適用可能な記録紙ロールRpが印刷機1にセットされたなら、当該記録紙ロールRpに付されたIDタグ3から所定のIDタグ読取手段4により紙情報INpを読取る紙情報読取ステップ(S2)と、この紙情報INpに基づいてスキャナ部2から得る画像データDvを補正処理して補正画像データDvaを得る第一補正ステップ(S30,S14)と、この補正画像データDvaに基づいてプリントデータDpを生成処理するプリントデータ生成ステップ(S15)と、このプリントデータDpを紙情報INpに基づいて補正処理することにより記録紙ロールRpからの記録紙Prに印刷する補正プリントデータDpaを得る第二補正ステップ(S31,S16)とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る印刷機のデータ処理方法は、上述した課題を解決するため、印刷用原稿Psをスキャニングして画像データDvを得るスキャナ部2を一体に備える印刷機1により印刷を行うに際し、印刷機1にセットした記録紙ロールRpに付されたIDタグ3から所定のIDタグ読取手段4により紙情報INpを読取る紙情報読取ステップ(S2)と、この紙情報INpに基づいてスキャナ部2から得る画像データDvを補正処理して補正画像データDvaを得る第一補正ステップ(S30,S14)と、この補正画像データDvaに基づいてプリントデータDpを生成処理するプリントデータ生成ステップ(S15)と、このプリントデータDpを紙情報INpに基づいて補正処理することにより記録紙ロールRpからの記録紙Prに印刷する補正プリントデータDpaを得る第二補正ステップ(S31,S16)と、補正プリントデータDpaをサーマルヘッド11…に供給することにより記録紙Prに対して感熱方式により印刷を行うステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、IDタグ3には、少なくともRFIDタグ3rを含ませることができる。また、第一補正ステップ(S30,S14)の補正処理には、少なくとも、紙情報INpに基づき単位面積当たりの発色ドットCの数量を増減させることにより画像データDvの明暗を変更した補正画像データDvaを得る補正処理を含ませることができるとともに、第二補正ステップ(S31,S16)の補正処理には、少なくとも、紙情報INpに基づきプリントデータDpの発色ドットCの大きさを変更した補正プリントデータDpaを得る補正処理を含ませることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような手法による本発明に係る印刷機のデータ処理方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 紙情報INpに基づいてスキャナ部2から得る画像データDvを補正処理して補正画像データDvaを得る第一補正ステップ(S30,S14)を備えるため、紙情報INpを印刷機1で利用できるという従来からのメリットに加え、スキャナ部2から得る画像データDvを補正処理することにより、特に、写真画像のような中間調画像の階調表現を行う場合の最適化を緻密に行うことができるなど、プリント画像の品質(画質)をより高めることができる。
【0013】
(2) 記録紙ロールRpの記録紙Prには、異なる複数種類の感熱紙K1,K2,K3…を適用可能にしたため、異なる感熱紙K1,K2,K3…の種類毎に最適化を図ることができ、各感熱紙K1,K2,K3…毎に最適な品質(画質)によりプリントできるという、本発明に係るデータ処理方法に基づく作用効果を有効に確保できるとともに、この観点から最大のパフォーマンスを得ることができる。
【0014】
(3) 補正プリントデータDpaを、サーマルヘッド11…に供給することにより記録紙Prに対して感熱方式により印刷を行うようにしたため、本発明に係るデータ処理方法を最も効果的に実施できるとともに、既存の印刷処理系をそのまま利用できるなど、印刷機1の無用な大型化及びコストアップを招く不具合を回避できる。
【0015】
(4) 好適な態様により、IDタグ3に、少なくともRFIDタグ3rを含ませれば、非接触方式により一定の範囲内での検出が可能になるため、RFIDタグ3rに記録されている紙情報INpのみを容易かつ確実に読取れるなど、本発明を容易かつ確実に実施する観点から最も望ましい形態として実施できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、第一補正ステップ(S30,S14)の補正処理として、少なくとも、紙情報INpに基づき単位面積当たりの発色ドットCの数量を増減させることにより画像データDvの明暗を変更した補正画像データDvaを得る補正処理を含ませれば、スキャナ部2からの画像データDvを紙情報INpに基づいて補正できるとともに、特に、プリントデータDpに対しては補正できない補正要素を利用できるため、本発明のデータ処理方法を実施する上で最も効果的な補正要素として機能させることができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、第二補正ステップ(S31,S16)の補正処理として、少なくとも、紙情報INpに基づきプリントデータDpの発色ドットCの大きさを変更した補正プリントデータDpaを得る補正処理を含ませれば、プリントデータDpを紙情報INpに基づいて補正できるとともに、第一補正ステップ(S30,S14)の補正処理と組合わせることにより、相乗的となる、より望ましい効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係るデータ処理方法を実施できる印刷機1の構成について、
図3〜
図7を参照して説明する。
【0021】
印刷機1は、
図3及び
図4に示すように、全体を覆うキャビネット21を備え、このキャビネット21は、下部の本体キャビネット部22と上部のカバーキャビネット部23からなる。カバーキャビネット部23は、本体キャビネット部22に対して図示を省略した後部のヒンジ部により開閉できる。
図3はカバーキャビネット部23の閉状態を示すとともに、
図4はカバーキャビネット部23を本体キャビネット部22に対して前部を略90〔゜〕上方へ回動変位させた開状態を示している。
【0022】
カバーキャビネット部23は、
図3に示すように、上面23uのほぼ中央位置にスキャナ部2を一体に備える。スキャナ部2において、25は印刷用原稿Psをセットする原稿供給トレイ部、26はスキャニング後の印刷用原稿Psを受取る原稿排出トレイ部をそれぞれ示す。また、
図3中、スキャナ部2の右側位置には操作部27を配設する。例示の操作部27は、タッチパネル方式のディスプレイ27tを備える。したがって、このディスプレイ27tは画面上に各種情報等の表示を行う表示部として機能するとともに、画面上に表示される入力キー等をタッチ操作することにより各種設定等を行う設定部(入力部)として機能する。
【0023】
スキャナ部2は公知のスキャナ機能を有している。したがって、印刷用原稿Psを原稿供給トレイ部25にセットし、操作部27に表示されるスタートキーをタッチ(ON)すれば、印刷用原稿Psは前方へ搬送され、イメージセンサによりスキャニングされるとともに、スキャニング後の印刷用原稿Psは原稿排出トレイ部26上に排出される。また、イメージセンサによるスキャニングにより画像データDvが得られ、この画像データDvはスキャナ部2から出力する。なお、
図3中、仮想線で示すPsは、スキャナ部2によるスキャニング中の印刷用原稿を示す。
【0024】
他方、
図4及び
図7に示すように、本体キャビネット部22の内部における後部寄りには、
図5に示す記録紙ロールRpを装填する記録紙装填機構31を備える。この場合、記録紙ロールRpは、中心に配した細長い円筒形の芯管部Rpsの外周面に、連続した長い記録紙Prを巻付けたロールタイプの記録紙である。記録紙Prとしては、例えば、通常感熱紙,コーティング感熱紙,フィルムベース感熱紙,転写紙,長期保存用感熱紙等を含む異なる複数種類のカラー感熱紙K1,K2,K3…を適用可能である。このように、異なる複数種類の感熱紙K1,K2,K3…を適用可能にすれば、異なる感熱紙K1,K2,K3…の種類毎に最適化を図ることができるため、各感熱紙K1,K2,K3…毎に最適な品質(画質)によりプリントできるという、本発明に係るデータ処理方法に基づく作用効果を有効に確保できるとともに、この観点から最大のパフォーマンスを得ることができる。
【0025】
また、芯管部Rpsの外周面における一端寄りには、
図5に示すように、シート状のIDタグ3を貼付ける。IDタグ3には、ICチップとアンテナを内蔵したRFIDタグ3rを用いる。このRFIDタグ3rは、後述するリーダライタユニット51を用いれば、非接触方式により一定の範囲内での検出が可能になる。したがって、RFIDタグ3rに記録されている紙情報INpのみを容易かつ確実に読取れるなど、本発明を容易かつ確実に実施する観点から最も望ましい形態として実施できる。例示のRFIDタグ3rには、
図6に一覧表で示す各種の紙情報INpが記録されており、本実施形態に係るデータ処理方法では、主に記録紙種類と記録紙発色時の色を利用している。なお、使用帯域周波数としては、HF帯,UHF帯,その他の周波数帯を用いることができ、特に、HF帯は検出可能距離(通信距離)が10〔cm〕前後となるため、本実施形態に係る印刷機のレイアウト構造に用いて好適である。IDタグ3としては、汎用性の高いRFIDタグ3rの使用が望ましいが、他のIDタグを排除するものではない。例えば、露出した芯管部Rpsに貼付けたバーコード等であってもよい。バーコードの場合には、反射型光センサにより検出可能となる。
【0026】
一方、記録紙装填機構31は、左右にそれぞれ配し、かつ上端辺からU形に切欠いた芯管受部32s…を有する芯管支持部32…と、この芯管支持部32…に回動自在に支持された記録紙ロールRpの芯管部Rpsを正方向(紙繰出方向)Ff又は逆方向(紙巻戻方向)Frに回転させる芯管回転駆動機構33(
図7参照)を備える。この芯管回転駆動機構33は、芯管部Rpsに対して同軸上に位置して当該芯管部Rpsの一端に係合(係止)する芯管係合ギア部34と、この芯管係合ギア部34を回転させる芯管回転伝達機構35と、この芯管回転伝達機構35に回転入力する回転駆動部36を備える。
【0027】
他方、本体キャビネット部22の内部における後面には、
図4に示すように、リーダ機能及びライタ機能を有するリーダライタユニット51を取付ける。リーダライタユニット51は、芯管支持部32…に装填した記録紙ロールRpの芯管部Rpsに付したRFIDタグ3rから紙情報INpを読取る所定のIDタグ読取手段4を構成する。したがって、リーダライタユニット51の左右方向における取付位置は、芯管部Rpsに貼付けたRFIDタグ3rの左右方向の位置に一致させる。
【0028】
さらに、本体キャビネット部22の内部における前部寄りには、記録紙フィード機構38を備える。記録紙フィード機構38は、回転可能に支持されたフィードローラ39と、このフィードローラ39を正方向(紙繰出方向)又は逆方向(紙巻戻方向)に回転させるフィードローラ回転駆動機構40を備える。この場合、フィードローラ回転駆動機構40は、フィードローラ39を回転させる回転駆動部36を備える。したがって、この回転駆動部36は、芯管回転駆動機構33とフィードローラ回転駆動機構40の双方に共用させている。このため、各伝達系にはワンウェイクラッチ等を介在させることにより必要な伝達切換を行うことができる。なお、例示の回転駆動部36は、駆動モータ52,共用駆動ギア53及び駆動モータ52の回転を共用駆動ギア53に伝達する回転伝達機構54を備えている。
【0029】
また、カバーキャビネット部23の内面における前寄りの位置には、
図4及び
図7に示すように、サーマルヘッド11を配設する。例示のサーマルヘッド11は左右方向に沿った四つのヘッド部11a,11b,11c,11dの組合わせにより構成し、各ヘッド部11a…はライン方向の1/4領域の印刷をそれぞれ分担する。各ヘッド部11a…は、ライン方向に多数の発熱素子を配列させて構成したものであり、一つの発熱素子に印字されるドット(点)が一つの発色ドットCとなる。例示の各ヘッド部11a…は、交互に前後方向位置を異ならせており、二つのヘッド部11a,11cは搬送方向後寄りに配するとともに、他の二つのヘッド部11b,11dは搬送方向前寄りに配している。このように、印刷機1を、補正プリントデータDpaを供給することにより記録紙Prに対して感熱方式により印刷を行うサーマルヘッド11…を備えて構成すれば、記録紙Prに対して感熱方式による印刷(カラー印刷)を行うことができ、本発明に係るデータ処理方法を最も効果的に実施できるとともに、既存の印刷処理系をそのまま利用できるなど、印刷機1の無用な大型化及びコストアップを招く不具合を回避できる。
【0030】
その他、
図7において、42は記録紙Prの搬送路に配して記録紙Prをガイドするガイドローラ、43は記録紙Prをカットするカッティングユニット、44は印刷された記録紙Prを外部に排出する排出口をそれぞれ示すとともに、55は記録紙Prの有無を検出する記録紙有無検出センサ、56は記録紙Prの先端を検出する記録紙先端検出センサをそれぞれ示す。
【0031】
一方、印刷機1は、
図7に示す印刷機コントローラ61を内蔵する。印刷機コントローラ61は、CPU等を含むコンピュータ機能を備え、印刷機1全体の制御を司る機能を備える。また、印刷機コントローラ61は、内部メモリユニット61mを内蔵し、この内部メモリユニット61mには、各種制御及び各種処理等を実行するプログラムを格納したプログラムエリア61mp及び各種データ類を書込んだデータエリア61mdを有する。特に、プログラムには、本実施形態に係るデータ処理方法を実行するためのプログラム、即ち、記録紙ロールRpに付したIDタグ3から所定のIDタグ読取手段4により紙情報INpを読取る紙情報読取ステップと、この紙情報INpに基づいてスキャナ部2から得る画像データDvを補正処理して補正画像データDvaを得る第一補正ステップと、この補正画像データDvaに基づいてプリントデータDpを生成処理するプリントデータ生成ステップと、このプリントデータDpを紙情報INpに基づいて補正処理することにより記録紙ロールRpからの記録紙Prに印刷する補正プリントデータDpaを得る第二補正ステップとを実行するプログラムが含まれる。さらに、印刷機コントローラ61には、前述したスキャナ部2及び操作部27を接続するとともに、サーマルヘッド11,カッティングユニット43,記録紙有無検出センサ55及び記録紙先端検出センサ56をそれぞれ接続する。
【0032】
次に、本実施形態に係るデータ処理方法を含む印刷機1全体の機能及び使用方法について、各図を参照しつつ
図1及び
図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0033】
印刷機1を使用するに際しては、
図1に示すように、最初に、記録紙ロールRpのセッティング処理を行う。この場合、
図4に示すように、カバーキャビネット部23を開き、本体キャビネット部22内部の記録紙装填機構31に記録紙ロールRpを装填する(ステップS1)。この際、記録紙ロールRpの芯管部Rpsにおける両端側を左右一対の芯管受部32s…に収容する。これにより、芯管部Rpsの両端が芯管受部32s…により回動自在に支持されるとともに、同時に、芯管部Rpsの一端は芯管係合ギア部34の軸上に係合(係止)する。そして、記録紙ロールRpにおける記録紙Prの先端側を引き出し、フィードローラ39の上に載せるとともに、さらに、先端側を排出口44に導いた後、カバーキャビネット部23を閉じれば、不図示のインターロックスイッチがONするとともに、記録紙有無検出センサ55がONし、紙情報読取モードに基づく紙情報読取処理が自動で実行される(ステップS2)。
【0034】
次に、紙情報読取処理(ステップS2)について、主に、
図2に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。
【0035】
紙情報読取モードの開始により、RFIDタグ3rの検出処理が行われる。この場合、記録紙ロールRpを装填したのみでは、RFIDタグ3rの位置が不明であるとともに、リーダライタユニット51の読取可能範囲(感度)により、RFIDタグ3rを読取れない場合があるため、所定の回転動作を行わせることによりRFIDタグ3rの有無を検出する処理を行う。まず、駆動モータ52を駆動制御し、記録紙ロールRpを正方向(紙繰出方向)Ffへ回転、即ち、芯管部Rpsを正方向へ回転させる(ステップS21)。これにより、RFIDタグ3rも芯管部Rpsを中心にして旋回変位する。一方、リーダライタユニット51はポーリング処理によりRFIDタグ3rに対する検出有無を監視する(ステップS22,S23)。
【0036】
そして、リーダライタユニット51がRFIDタグ3rを検出したなら駆動モータ52に対して回転停止処理を行う(ステップS24)。回転停止処理では、以下の処理手順に従って停止させる。即ち、RFIDタグ3rを検出したなら、駆動モータ52の回転をスローダウンさせることにより停止させる。この結果、正規の停止位置から若干行き過ぎた位置で停止するため、停止したなら、駆動モータ52を低速による逆回転制御し、設定距離だけ逆戻しさせて停止させる。この設定距離は、正規の停止位置まで逆戻しする距離を設定する。正規の位置で停止したなら、リーダライタユニット51によりRFIDタグ3rに記録された紙情報INpの読取処理を行う(ステップS25)。読取った紙情報INpに係わるデータは、印刷機コントローラ61における内部メモリユニット61mのデータエリア61mdに書き込む。以上により、紙情報読取処理が終了する。この紙情報読取処理は、印刷機1にセットした記録紙ロールRpに付したIDタグ3(RFIDタグ3r)から、所定のIDタグ読取手段4(リーダライタユニット51)により紙情報INpを読取る紙情報読取ステップとなる。
【0037】
ところで、紙情報読取モードの実行時に、RFIDタグ3rを検出しない場合がある。例えば、記録紙ロールRpにRFIDタグ3rが付されていない場合,RFIDタグ3rが不良の場合,記録紙ロールRpの左右を反対にして装填した場合,等においては、RFIDタグ3rを検出しない。したがって、印刷機コントローラ61には、予め、記録紙ロールRpを一回転させるに要する駆動モータ52の回転量(又は対応する記録紙Prの繰出長等の物理量)を最大設定値として設定し、紙情報読取モード時に、駆動モータ52の回転数等を監視する。そして、最大設定値に達してもRFIDタグ3rの存在を検出しない場合には、所定のエラー処理を行う(ステップS22,S26)。具体的には、紙情報読取モードの実行を停止し、アラームランプの点滅制御やエラーメッセージの表示処理等を行う。なお、例示の場合、最大設定値として記録紙Prの繰出長により設定するとともに、一例として300〔mm〕を設定した。
【0038】
一方、紙情報読取処理が正常に終了したなら補正データ設定処理を行う(ステップS3,S4)。
図8に示すように、印刷機コントローラ61の内部メモリユニット61mには、予め、
図9に示す明暗調整パラメータX1,X2,X3…X18がデータテーブル71xとして設定されるとともに、
図10に示す印刷パラメータY1,Y2,Y3…Y9がデータテーブル71yとして設定される。この場合、明暗調整パラメータX1…は、スキャナ部2から得られる画像データDvを補正するためのパラメータであり、具体的には、
図11(a)に示すように、紙情報INpに基づき単位面積当たりの発色ドットCの数量を増減させることにより画像データDvの明暗を変更するパラメータである。また、印刷パラメータY1…は、サーマルヘッド11に供給するプリントデータDpを補正するためのパラメータであり、具体的には、
図11(b)に示すように、紙情報INpに基づきプリントデータDpの発色ドットCの大きさを変更するパラメータである。
【0039】
したがって、データテーブル71xの各パラメータX1…については、前述した紙情報読取処理により読込んだ紙情報INpに基づき最適パラメータが選択される(ステップS27)。この選択に係る処理は後述する第一補正ステップの補正要素となる。
図8中、符号72が印刷機コントローラ61におけるデータテーブル71xに対する選択機能を示している。また、データテーブル71yの各パラメータY1…については、紙情報INpに基づき最適パラメータが選択される(ステップS28)。この選択に係る処理は後述する第二補正ステップの補正要素となる。
図8中、符号73が印刷機コントローラ61におけるデータテーブル71yに対する選択機能を示している。
【0040】
今、データテーブル71xから選択された最適パラメータがXn、データテーブル71yから選択された最適パラメータがYnであるとする。この選択されたパラメータXn,Ynは、紙情報INp、即ち、使用する記録紙Prの種類に対応した補正データとして設定される(ステップS29)。なお、パラメータXnについては、印刷用原稿Psが不明なため、この時点ではプリントモード(線画(2値)モード又は写真(多値)モード)が設定されない。したがって、この時点では、線画モードと写真モードに対応する二つのパラメータがパラメータXnに含まれる。よって、このような補正データ設定処理により、紙情報INpに基づき選択された明暗調整パラメータXnによって画像データDvが最適化されるとともに、選択された印刷パラメータYnによってプリントデータDpが最適化される。
【0041】
最適化する一例を挙げれば、次のようになる。今、記録紙Prに濃色のエリアを印刷する場合を想定する。従来の方法では、サーマルヘッド11の発熱素子に対して濃色の表現に対応するエネルギを供給し、対応する熱量を発生させて濃色を印刷していた。この場合、記録紙(感熱紙)Prの特性が
図11(b)に示す特性、即ち、熱量を多くすることにより発色ドットCの大きさが発色ドットCmのように広がる特性を有していれば、プリントデータDpによる制御のみで目的の濃色を印刷できる。しかし、記録紙(感熱紙)Prの種類により、特性が
図11(a)に示す特性、即ち、熱量を多くしても発色ドットCの大きさがあまり広がらない特性を有していれば、従来の方法では、熱量(エネルギ)を多くしても十分な濃色を表現できない。即ち、プリントデータDpによる制御のみでは十分な階調表現を実現できない。一方、この場合において、本実施形態に係るデータ処理方法を用いれば、プリントデータDpに対して、本来の熱量よりも抑える制御を行うとともに、スキャナ部2から得られる画像データDvに対して発色ドットCの数量を増やす制御を行う。これにより、
図11(a)に示すように、発色ドットCの大きさ(面積)を実質的に広げ、濃色に対する十分な階調表現を実現させている。
【0042】
また、記録紙Prの場合、このような異なる特性を有するのみならず、発色時の色においても特性が異なる。例えば、赤色が強めに表現される特性を有する記録紙Prや反対に赤色が弱めに表現される特性を有する記録紙Pr等も存在する。さらに、プリントモードによっても特性が異なり、例えば、印刷画像が線画(2値データ)の場合と写真(多値データ)の場合では異なる表現となる。したがって、このような異なる特性に対して、予め最適化するためのパラメータX1…,Y1…を選択できるデータテーブル71x,71yを設定し、記録紙Prの種類K1,K2,K3、発色時の色、プリントモードに対応して各パラメータX1…,Y1…を選択可能にした。
図9に画像データDvを補正するための明暗調整パラメータX1…X18を選択できるデータテーブル71xのデータ内容を示すとともに、
図10にプリントデータDpを補正するための印刷パラメータY1…Y9を選択できるデータテーブル71yのデータ内容を示す。特に、本実施形態に係るデータ処理方法では、印刷機1にスキャナ部2を一体に備えることを前提とするため、スキャナ部2から得られる画像データDvに対しても調整処理が可能となり、この調整処理にはプリントデータDpに対しては補正できない補正要素を含ませることができる。
【0043】
なお、紙情報読取処理が正常に終了したなら記録紙ロールRpに対して巻き戻し処理を行う。即ち、紙情報読取処理では、RFIDタグ3rをリーダライタユニット51により読取可能となる位置まで、記録紙ロールRpを回転させるため、紙情報読取処理が終了した段階では、記録紙Prの先端側が余分に繰出された状態になり、本体キャビネット部22の排出口44から露出した状態となる。そこで、紙情報読取処理が正常に終了したなら、記録紙ロールRpの巻き戻し処理を行う。この場合、紙情報読取処理が終了したタイミングで駆動モータ52を低速で逆回転させ、記録紙ロールRpを逆方向へ巻き戻す制御を行う(ステップS3,S30)。そして、記録紙ロールRpを前方へ繰り出した分だけ巻き戻したなら駆動モータ52の回転を停止させる制御を行う(ステップS31,S32)。これにより、記録紙ロールRpのセッティング処理が終了する。
【0044】
次に、記録紙ロールRpをセットした印刷機1を用いて、所定のプリント処理を行う場合について、主に、
図1に示すフローチャートを参照して説明する。
【0045】
最初に、操作部27によりプリントする枚数や印刷濃度等の初期設定を行う(ステップS10)。次いで、印刷用原稿Psをスキャナ部2の原稿供給トレイ部25にセットする(ステップS11)。この後、操作部27のスタートキーをタッチ(ON)すれば、印刷用原稿Psは前方へ搬送され、イメージセンサによりスキャニングされる(ステップS12)。そして、スキャニングされた印刷用原稿Psは原稿排出トレイ部26上に排出される。一方、イメージセンサによるスキャニングにより画像データDvが得られ、この画像データDvはスキャナ部2から出力し、
図8に示すように、印刷機コントローラ61に付与される(ステップS13)。
【0046】
また、この際、印刷用原稿Psが線画(2値データ)であるか又は写真(多値データ)であるかを判別し、対応するプリントモードを設定する。この設定は、操作部27を用いてオペレータが手動設定してもよいし、印刷機コントローラ61における判別機能により自動設定されるようにしてもよい。このプリントモードが設定されることにより最終的な明暗調整パラメータXnが設定される。即ち、前述したように、プリントモードが設定されていない段階では、暫定的に二つの明暗調整パラメータXnが設定されたが、プリントモードが設定されることにより、対応する一つの明暗調整パラメータXnのみが設定される。
【0047】
一方、印刷機コントローラ61に付与された画像データDvに対しては、
図8に示すように、明暗調整機能74により、設定された明暗調整パラメータXnに基づいて画像データDvが補正処理される(ステップS14)。これにより、補正された画像データとなる補正画像データDvaが得られる。この補正処理が、スキャナ部2から得られる画像データDvが紙情報INpに基づいて補正処理される第一補正ステップとなる。例示の場合、この第一補正ステップでは、紙情報INpに基づき単位面積当たりの発色ドットCの数量を増減させることにより画像データDvの明暗を変更した補正画像データDvaを得る処理が行われる(
図11(a)参照)。このような第一補正ステップを設けることにより、スキャナ部2からの画像データDvを紙情報INpに基づいて補正できるとともに、特に、プリントデータDpに対しては補正できない補正要素を利用できるため、本実施形態のデータ処理方法を実施する上で最も効果的な補正要素として機能させることができる。
【0048】
次いで、プリントデータ生成機能75により、補正画像データDvaからプリントデータDpが生成処理される(ステップS15)。この生成処理は、補正画像データDvaから、サーマルヘッド11により印刷を行うためのプリントデータDpを得る汎用的な(公知の)プリントデータ生成ステップとなる。この後、得られたプリントデータDpは、
図8に示すように、プリントデータ補正機能76により、設定された印刷パラメータYnに基づいてプリントデータDpが補正処理される(ステップS16)。これにより、補正されたプリントデータとなる補正プリントデータDpaが得られる。この補正処理が、プリントデータDpが紙情報INpに基づいて補正処理される第二補正ステップとなる。例示の場合、この第二補正ステップでは、紙情報INpに基づきプリントデータDpの発色ドットCの大きさを変更した補正プリントデータDpaを得る処理が行われる(
図11(b)参照)。このような第二補正ステップを設けることにより、プリントデータDpを紙情報INpに基づいて補正できるとともに、上述した第一補正ステップの補正処理と組合わせることにより、相乗的となる、より望ましい効果を得ることができる。
【0049】
そして、得られた補正プリントデータDpaは、サーマルヘッド11を構成する各ヘッド部11a,11b,11c,11dに供給される。この際、ライン単位として順次供給されるとともに、分割されることにより所定の印刷処理が行われる(ステップS17,S18)。なお、
図7中、搬送中の記録紙Prを仮想線で示すとともに、
図3中、排出口44から排出される記録紙Prを仮想線で示す。一方、以上の一連の印刷処理は、設定した印刷枚数に達するまで同様に行われる(ステップS19)。
【0050】
よって、このような本実施形態に係る印刷機1のデータ処理方法によれば、印刷機1にセットした記録紙ロールRpに付したIDタグ3から紙情報INpを読取る紙情報読取ステップ(ステップS2)と、この紙情報INpに基づいてスキャナ部2から得る画像データDvを補正処理して補正画像データDvaを得る第一補正ステップ(ステップS30,S14)と、この補正画像データDvaに基づいてプリントデータDpを生成処理するプリントデータ生成ステップ(ステップS15)と、このプリントデータDpを紙情報INpに基づいて補正処理することにより記録紙ロールRpからの記録紙Prに印刷する補正プリントデータDpaを得る第二補正ステップ(ステップS31,S16)とを備えるため、紙情報INpを印刷機1で利用できるという従来からのメリットに加え、スキャナ部2から得る画像データDvを補正処理することにより、特に、写真画像のような中間調画像の階調表現を行う場合の最適化を緻密に行うことができるなど、プリント画像の品質(画質)をより高めることができる。
【0051】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0052】
例えば、本発明におけるスキャナ部2を一体に備える印刷機1とは、一体に使用するという意味であり、必ずしも機械的に一体であることを要しない。したがって、機械的に分離され、コード接続されている場合であってもよい。また、操作部27として、タッチパネル方式のディスプレイ27tを例示したが、押ボタン等の入力パネルと表示部を組合わせた操作部等、他の各種タイプの操作部を適用できる。さらに、紙情報INpは、例示した情報(項目)に限定されるものではなく、他の各種情報、特に、より詳細な情報を含ませることもできる。一方、IDタグ3は、芯管部Rpsの外周面に取付けた場合を示したが内周面に取付けてもよい。他方、第一補正ステップ(ステップS30,S14)の補正処理として、紙情報INpに基づき単位面積当たりの発色ドットCの数量を増減させることにより画像データDvの明暗を変更した補正画像データDvaを得る補正処理を含ませたが、他の補正処理を排除するものではない。同様に、第二補正ステップ(ステップS31,S16)の補正処理として、紙情報INpに基づきプリントデータDpの発色ドットCの大きさを変更した補正プリントデータDpaを得る補正処理を含ませたが、他の補正処理を排除するものではない。