特許第6166581号(P6166581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166581
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】乗り物用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/48 20060101AFI20170710BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B60N2/48
   F16F15/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-92947(P2013-92947)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-213746(P2014-213746A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓也
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−226255(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/017539(WO,A1)
【文献】 実開平05−093296(JP,U)
【文献】 特開2011−011003(JP,A)
【文献】 実開平04−046246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/48
F16F 15/02
B60N 2/44
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物に設置されるシート(S)のフレーム(10,12)にダイナミックダンパ(D)を付設してなる,乗り物用シート装置において,
前記ダイナミックダンパ(D)を,重錘(15)と,この重錘(15)を弾性部材(16)を介して支持するダンパ支持体(17)とで構成し,前記ダンパ支持体(17)を,前記シート(S)の前後方向で前側に位置する部分(17A)と後側に位置する部分(17B)とに2分割し,その後側に位置する部分(17B)に,前記フレーム(10,12)にスナップ係合して該ダンパ支持体(17)を保持させる複数の弾性支持部(24A,24B,24C)を設け,これら弾性支持部(24A,24B,24C)は,これらの前記フレーム(10,12)へのスナップ係合のための押し込み方向が,前記シート(S)の前側から後側に向かう同一方向となるように構成されることを特徴とする,乗り物用シート装置。
【請求項2】
請求項1記載の乗り物用シート装置において,
ヘッドレストフレーム(12)が,互いに並列する第1及び第2骨部材(12b,12b;12c,12c)と,これら第1及び第2骨部材(12b,12b;12c,12c)間を連結する第3骨部材(46,12d)を有し,前記ダンパ支持体(17)には,前記第1及び第2骨部材(12b,12b;12c,12c)にスナップ係合する一対の弾性支持部(24A,24B)を設け,これら一対の弾性支持部(24A,24B)は,これらの前記第1及び第2骨部材(12b,12b;12c,12c)へのスナップ係合のための押し込み方向が前記ヘッドレストフレーム(12)の外側から内側に向かうように構成されることを特徴とする,乗り物用シート装置。
【請求項3】
請求項2記載の乗り物用シート装置において,
前記ダンパ支持体(17)には,前記第3骨部材(46,12d)に係合当接して前記第1及び第2弾性支持部(24A,24B)の前記第1及び第2骨部材(12b,12b;12c,12c)に対するスナップ係合位置を規定する位置決め支持部(30)を設けたことを特徴とする,乗り物用シート装置。
【請求項4】
請求項3記載の乗り物用シート装置において,
前記ダンパ支持体を,互いに分離可能に結合される第1及び第2ケース半体(17A,17B)よりなるダンパケース(17)で構成して,このダンパケース(17)に,前記弾性部材(16)で包んだ前記重錘(15)を収容し,前記第1及び第2ケース半体(17A,17B)のうちの前記後側に位置するケース半体(17B)に,前記弾性支持部(24A,24B)及び前記位置決め支持部(30)を一体に形成したことを特徴とする,乗り物用シート装置。
【請求項5】
請求項4記載の乗り物用シート装置において,
前記弾性支持部(24A,24B)及び前記位置決め支持部(30)は,前記弾性支持部(24A,24B)の前記第1及び第2骨部材(12b,12b;12c,12c)に対する押し込み方向と,前記位置決め支持部(30)の前記第3骨部材(46,12d)に対する押し込み方向とが同一方向となるように構成されることを特徴とする,乗り物用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,乗り物に設置されるシートのフレームにダイナミックダンパを付設してなる,乗り物用シート装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる乗り物用シート装置は,下記特許文献1に開示されるように知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−226255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される乗り物用シート装置では,ダイナミックダンパが,重錘と,この重錘に一端を接続すると共に他端部をボルトでフレームに固着されるばねとで構成されている。このように,ばねのフレームへの取り付けにボルトを使用すると,多数のボルトが必要となることから,その取り付け作業に可なり長い時間を要し,これがシート装置の製作コストの低減を阻害する。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,ボルト等のねじ類を使用せず,極めて簡単にダイナミックダンパをフレームに取り付けることが可能で,製作コストを低減し得る前記乗り物用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために,本発明は,乗り物に設置されるシートのフレームにダイナミックダンパを付設してなる,乗り物用シート装置において,前記ダイナミックダンパを,重錘と,この重錘を弾性部材を介して支持するダンパ支持体とで構成し,前記ダンパ支持体を,前記シートの前後方向で前側に位置する部分と後側に位置する部分とに2分割し,その後側に位置する部分に,前記フレームにスナップ係合して該ダンパ支持体を保持させる複数の弾性支持部を設け,これら弾性支持部は,これらの前記フレームへのスナップ係合のための押し込み方向が,前記シートの前側から後側に向かう同一方向となるように構成されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,ヘッドレストフレームが,互いに並列する第1及び第2骨部材と,これら第1及び第2骨部材間を連結する第3骨部材を有し,前記ダンパ支持体には,前記第1及び第2骨部材にスナップ係合する一対の弾性支持部を設け,これら一対の弾性支持部は,これらの前記第1及び第2骨部材へのスナップ係合のための押し込み方向が前記ヘッドレストフレームの外側から内側に向かうように構成されることを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は,第2の特徴に加えて,前記ダンパ支持体には,前記第3骨部材に係合当接して前記第1及び第2弾性支持部の前記第1及び第2骨部材に対するスナップ係合位置を規定する位置決め支持部を設けたことを第3の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明は,第3の特徴に加えて,前記ダンパ支持体を,互いに分離可能に結合される第1及び第2ケース半体よりなるダンパケースで構成して,このダンパケースに,前記弾性部材で包んだ前記重錘を収容し,前記第1及び第2ケース半体のうちの前記後側に位置するケース半体に,前記弾性支持部及び前記位置決め支持部を一体に形成したことを第4の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は,第4の特徴に加えて,前記弾性支持部及び前記位置決め支持部は,前記弾性支持部の前記第1及び第2骨部材に対する押し込み方向と,前記位置決め支持部の前記第3骨部材に対する押し込み方向とが同一方向となるように構成されることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば,前記ダイナミックダンパを,重錘と,この重錘を弾性部材を介して支持するダンパ支持体とで構成し,前記ダンパ支持体に,前記フレームにスナップ係合して該ダンパ支持体を保持させる複数の弾性支持部を設けたので,ねじ類を用いることなく,ダンパ支持体をシートのフレームに簡単,容易に取り付けることができる。しかも,複数の弾性支持部は,これらの前記フレームへのスナップ係合のための押し込み方向が同一方向となるように構成されるので,複数の弾性支持部をシートのフレームに一挙にスナップ係合することができ,ダンパ支持体の取り付け作業の迅速化を図ることができる。
【0012】
本発明の第2の特徴によれば,ヘッドレストフレームが,互いに並列する第1及び第2骨部材と,これら第1及び第2骨部材間を連結する第3骨部材を有し,前記ダンパ支持体には,前記第1及び第2骨部材にスナップ係合する一対の弾性支持部を設け,これら一対の弾性支持部は,これらの前記第1及び第2骨部材へのスナップ係合のための押し込み方向が前記ヘッドレストフレームの外側から内側に向かうように構成されるので,ダンパ支持体をヘッドレストフレームの外側から内側へ押し込むことにより,一対の弾性支持部をヘッドレストフレームの第1及び第2骨部材に一挙にスナップ係合することができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば,前記ダンパ支持体には,前記第3骨部材に係合当接して前記第1及び第2弾性支持部の前記第1及び第2骨部材に対するスナップ係合位置を規定する位置決め支持部を設けたので,ヘッドレストフレーム上でのダンパ支持体の定位置を簡単に決定することができる。
【0014】
本発明の第4の特徴によれば,前記ダンパ支持体を,互いに分離可能に結合される第1及び第2ケース半体よりなるダンパケースで構成して,このダンパケースに,前記弾性部材で包んだ前記重錘を収容したので,ダンパケースに重錘を弾性部材を介して簡単に支持させることができる。しかも,前記第1及び第2ケース半体のうちの後側に位置するケース半体に,前記弾性支持部及び前記位置決め支持部を一体に形成したので,第1及び第2ケース半体のうちの後側に位置するものに弾性支持部及び位置決め支持部を一挙に形成することができる。その際,弾性支持部及び位置決め支持部を有する方のケース半体の形状は複雑となるが,他方のケース半体の形状は単純化されるので,総合的に第1及び第2ケース半体の成形を容易に行うことができる。
【0015】
本発明の第5の特徴によれば,前記弾性支持部及び前記位置決め支持部は,前記弾性支持部の前記第1及び第2骨部材に対する押し込み方向と,前記位置決め支持部の前記第3骨部材に対する押し込み方向とが同一方向となるように構成されるので,弾性支持部の前記第1及び第2骨部材に対するスナップ係合と,位置決め支持部の前記第3骨部材に対する係合当接とを一挙に行うことができ,ダンパ支持体の取り付け作業の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る自動車用シート装置の側面図。
図2図1の2部(ヘッドレスト周辺部)の拡大図。
図3図2の3矢視図。
図4図2の4矢視図。
図5図3の5−5線断面図。
図6図3に対応した斜視図。
図7図6中のダイナミックダンパの分解斜視図。
図8】ヘッドレストのクッション部材の発泡材による成形方法説明図。
図9】本発明の第2実施形態を示す,図3に対応する正面図。
図10】本発明の第1参考形態を示すヘッドレストの斜視図。
図11】本発明の第実施形態を示す,自動車用シート装置の斜視図。
図12】本発明の第実施形態を示す,自動車用シート装置の斜視図。
図13】本発明の第2参考形態を示す,自動車用シート装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
先ず,図1図8に示す本発明の第1実施形態より説明する。尚,以下の説明中,前後,左右とは,本発明を適用する乗り物としての自動車を基準にしていうことにする。
【0018】
図1において,自動車用シートSは,シートクッション2,シートバック3及びヘッドレスト4とよりなっている。シートクッション2は,下部に複数の支持脚7,7を形成したシートクッションフレーム6を有しており,その支持脚7,7が自動車の床Fに固着される。
【0019】
シートクッションフレーム6の後端部には上方に突出する左右一対のブラケット8が連設され,これらブラケット8に,シートバック3が有するシートバックフレーム10が枢軸9を介してリクライニング可能に連結される。
【0020】
またシートバックフレーム10の上端部には,左右一対の支持筒11,11が固設されており,これら支持筒11,11によってヘッドレスト4が昇降及び固定可能に支持される。
【0021】
図2図6に示すように,ヘッドレスト4は,ヘッドレストフレーム12と,それに支持される発泡ウレタン製のクッション部材13と,その表面を被覆する表皮14とよりティアドロップ型に構成され,そのヘッドレストフレーム12にダイナミックダンパDが取り付けられる。
【0022】
ヘッドレストフレーム12は,パイプ材を屈曲させてなるもので,前記一対の支持筒11,11に支持される左右一対の主骨部材12a,12aと,これら主骨部材12a,12aの上端から前方へ屈曲した上骨部材12b,12bと,これら上骨部材12b,12bの前端から下方へ屈曲して延びる左右一対の前縦骨部材12c,12cと,これら前縦骨部材12c,12cの下端部を相互に一体に連結する前横骨部材12dとで構成され,左右の前縦骨部材12c,12cには,上記パイプ材より小径の補強用クロスバー19が橋渡されるように溶接される。而して,主骨部材12a,12aの上部から前横骨部材12dに亙りヘッドレストフレーム12を包むようにクッション部材13が形成され,このクッション部材13は表皮14で被覆される。
【0023】
このクッション部材13の形成前に,前縦骨部材12c,12cと前横骨部材12dを利用してダイナミックダンパDが取り付けられる。そのダイナミックダンパDは,重錘15と,この重錘15を,その外面に重なるように包むシート状の弾性部材16と,これら重錘15及び弾性部材16を収容するダンパケース17とよりなる。
【0024】
図2図5及び図7に明示するように,上記重錘15は鋳鉄製で,前後方向に偏平な六面体をなしており,その前面15fは,平面もしくはそれに近い凸状の湾曲面に形成され,後面15rは,前面15fより大きく突出した湾曲面に形成される。さらに重錘15は,その前後方向の肉厚が上方に向かって漸増するように形成され,これによって重錘15の重心Gは,重錘15の中心Cよりも上方位置を占めることになる。
【0025】
弾性部材16はウレタンフォーム製であって,重錘の後面15rに対応する方形の中央部16aから四枚のシート片16b〜16eを張り出してなるもので,この弾性部材16により重錘15を包むに当たっては,弾性部材16の中央部16aに重錘15の前面15fを載せた後,四枚のシート片16b〜16eをそれぞれ起立させてから重錘15の後面15r側に折って,その前面15fに両面接着テープ18を介して接着する。こうして弾性部材16で包んだ重錘15は,前後二つ割りのダンパケース17内に収容される。而して,重錘15は,弾性部材16を介してダンパケース17に支持されることになる。
【0026】
図2図7に示すように,ダンパケース17は,上記重錘15の外形に相似する形状をなすもので,したがって前後方向に偏平な箱型をなしており,その前壁17fは,重錘15の前面15fに対応して平面もしくはそれに近い湾曲面に形成され,後壁17rは,重錘15の後面15rに対応して後方へ大きく突出するように湾曲した湾曲面に形成される。
【0027】
このダンパケース17は,弾性部材16で包んだ重錘15を収容し得るように,前側に位置する第1ケース半体17Aと,後側に位置する第2ケース半体17Bとに二分割され,各ケース半体17A,17Bは,それぞれ合成樹脂で成形される。両ケース半体17A,17Bの対向面の一方と他方には,互いに嵌合し得る方形の嵌合溝20と嵌合突壁21とがそれぞれ形成され,また嵌合突壁21の先端部には,外側方へ突出する複数の連結爪22,22…が形成され,これら連結爪22,22…が弾性的にスナップ係合し得る複数の連結孔23,23…が嵌合溝20の底部に形成される。
【0028】
第2ケース半体17Bの左右両側壁に第1及び第2弾性支持部24A,24Bが一体に形成される。これら第1及び第2弾性支持部24A,24Bは,それぞれ第2ケース半体17Bの左右両側壁から外方へ突出する板状のアーム25a,25bと,このアーム25a,25bの先端に連設されて前記前縦骨部材12c,12cに,それを把持するようにスナップ係合し得る優弧状の把持爪26a,26bとで構成される。即ち,優弧状の把持爪26a,26bは,前縦骨部材12c,12cを,それぞれの半周を超えて弾性的に把持することができる。この優弧状の把持爪26a,26bは,前縦骨部材12c,12cに前方から係合するように,各開口部27a,27bを後方へ向けている。したがって,乗員の頭部からの後向き荷重は,第1及び第2弾性支持部24A,24Bの把持爪26a,26bを前縦骨部材12c,12cに係合させる方向に作用することになり,把持爪26a,26bの離脱を防ぐことができる。またアーム25a,25bの長さの選定により,両把持爪26a,26bの中心間距離を,両前縦骨部材12c,12cの中心間距離に一致させ,把持爪26a,26bの前縦骨部材12c,12cへの係合を的確に行わせることができる。
【0029】
優弧状の把持爪26a,26bは,それらの内径D1,D2が互いに異なるように形成される。図示例では,第2弾性支持部24Bの把持爪26bの内径D2は,第1弾性支持部24Aの把持爪26aの内径D1より大きく設定される。また優弧状の把持爪26a,26bは,それらの剛性が互いに異なるように形成される。図示例では,第1弾性支持部24Aの把持爪26aの剛性を,第2弾性支持部24Bの把持爪26bより低くするように,第1弾性支持部24Aの把持爪26aの先端部に切欠き28が設けられ,或いは把持爪26aの肉厚が把持爪26bより薄く設定される。また上記第1及び第2弾性支持部24A,24Bは,前記重錘15の重心Gを挟むように配置される。
【0030】
また各把持爪26a,26bには窓孔29が設けられ,この窓孔29から,各把持爪26a,26bと前縦骨部材12c,12cとの係合状態を目視で確認し得るようになっている。
【0031】
また第2ケース半体17Bの下側壁には位置決め支持部30が一体に形成される。この位置決め支持部30は,第2ケース半体17Bの下側壁から下方へ突出する板状のアーム30aと,このアーム30aの下端に連設されて前記前横骨部材12dに当接係合し得るU字状の当接爪30bとで構成され,この当接爪30bが,前横骨部材12dに前方から係合当接することで,前記把持爪26a,26bと左右の前縦骨部材12c,12cとの係合位置が規定される。こうしてヘッドレストフレーム12上でのダンパケース17の取り付け位置が決定される。
【0032】
第1,第2弾性支持部24A,24B及び位置決め支持部30の各アーム25a,25b,30aの根元には,その根元の剛性を強化する増肉部31が形成され,さらに,第1,第2弾性支持部24A,24Bのアーム25a,25bに当接してそれらの前方への撓み,即ち把持爪26a,26bの開口部27a,27bと反対側へアーム25a,25bの撓みを規制する一対のストッパ32,32が第1ケース半体17Aの左右両側壁に形成される。各ストッパ32は,対応する把持爪26a,26bの背面に直線的に当接する中央壁部32aと,この中央壁部32aの両側端に連なっていて対応するアーム25a,25bから把持爪26a,26bの背面にわたる湾曲面に当接する一対の側壁部32b,32bとで,断面コ字状に構成される。このような構成のストッパ32は,剛性が高い上,対応するアーム25a,25bから把持爪26a,26bにわたる背面との当接面積を広く確保し得るので,集中応力を極力回避しつゝ,アーム25a,25bの撓みを効果的に規制することができる。したがって,乗員の頭部からダンパケース17に大きな後向きの荷重が作用しても,ストッパ32,32がアーム25a,25bの前面に当接して,アーム25a,25bの前方への撓みを規制することになり,ダンパケース17の無用な後方移動を規制することができる。
【0033】
また上記ストッパ32は,前記嵌合溝20の外側壁に一体に連結されるので,嵌合溝20の外側壁の剛性強化に寄与することにもなる。
【0034】
また位置決め支持部30のアーム部30aには,第1ケース半体17Aの下側壁と当接爪30bとの間を連結する複数条の補強リブ33が形成される。
【0035】
次に,上記ダイナミックダンパDの,ヘッドレスト4への埋設方法について図8により説明する。
【0036】
機台35の下面には,ヘッドレストフレーム12を除くヘッドレスト4の外形に対応するキャビティ36を形成する,上下開閉可能な成形型37a,37bが取り付けられており,そのキャビティ36の内面には,予めヘッドレスト4の表皮14を張設しておく。
【0037】
表皮14には,その上面に開口する発泡性合成樹脂流し込み口38が設けられており,成形台35の上面に固定される支持板39には,発泡材流し込み口38に挿入されるノズルガイド筒40が設けられる。また支持板39には,ノズルガイド筒40にノズル41を挿入させる発泡材供給装置40を取り付ける。さらに支持板39上に設けられるブラケット43には,ノズルガイド筒40内に配置されるヘッドレストフレーム12の主骨部材12a,12aを支持させる。而して,表皮14内において,ヘッドレストフレーム12の前縦骨部材12c,12cに支持されるダイナミックダンパDは,発泡材流し込み口38の一側方へオフセットして配置されることになる。
【0038】
而して,発泡材供給装置40からノズル41を通してウレタン等の発泡材44をキャビティ36内面に密着した袋状の表皮14内に注入し,それを発泡させることにより,表皮14内に,ヘッドレストフレーム12及びダイナミックダンパDを包むクッション部材13を形成することができる。その際,前縦骨部材12c,12cに支持されるダイナミックダンパDは,発泡材流し込み口38の一側方にオフセットして配置されることで,発泡材流し込み口38への発泡材44の流し込み圧力がダイナミックダンパDに直接作用することはなく,したがってその流し込み圧力によるダイナミックダンパDの弾性支持部24A,24Bの前縦骨部材12c,12cからの離脱の心配はない。また第1及び第2ケース半体17A,17Bは,その結合に際して,相対向面の嵌合溝20及び嵌合突壁21を互いに嵌合させているので,発泡材44が両ケース半体17A,17Bの接合面から浸入することをラビリンス効果により確実に阻止することができ,ダイナミックダンパDの適正な制振機能を維持することができる。
【0039】
こうして製造されたヘッドレスト4は,成形型37a,37bを上下に開くことにより,型外に取り出すことができる。
【0040】
この第1実施形態の作用について説明する。
【0041】
ダイナミックダンパDの組み立てに当たっては,前述のように弾性部材16で包んだ重錘15をダンパケース17の第1ケース半体17A又は第2ケース半体17Bに嵌め込んでから,両ケース半体17A,17Bの開口部を合わせて,一方の開口部の嵌合溝20に他方の開口部の嵌合突壁21を深く嵌入すると,連結爪22,22…と係止孔23,23…との係合により,両ケース半体17A,17Bをねじ類を用いることなく,簡単に結合することができ,同時に重錘15を,その全方向において弾性部材16を介してダンパケース17に支持させることができる。
【0042】
こうして組み立てたダイナミックダンパDをヘッドレストフレーム12に取り付けるに当たっては,先ず,第1及び第2弾性支持部24A,24Bの把持爪26a,26bをヘッドレストフレーム12の左右の前縦骨部材12c,12cに,また位置決め支持部30を前横骨部材12dにそれぞれ対向させた後,ダンパケース17を前方から後方へ押し込むと,把持爪26a,26bの前縦骨部材12c,12cへのスナップ係合と,位置決め支持部30の前横骨部材12dへの係合当接とを一挙に行うことができる。したがって,ねじ類を用いることなく,ダンパケース17をヘッドレストフレーム12に簡単,容易,迅速に取り付けることができ,しかも把持爪26a,26bのスナップ係合のために,左右の前縦骨部材12c,12cに特別な加工を施す必要もない。
【0043】
その際,第1弾性支持部24Aの把持爪26aの内径D1よりも,第2弾性支持部24Bの把持爪26bの内径D2が大きく設定され,把持爪26a,26bは,その剛性が互いに異なっているので,左右の前縦骨部材12c,12cの中心間距離と,左右の把持爪26a,26bの中心間距離との製作誤差を,左右の把持爪26a,26bの比較的少ない弾性変形により吸収することができ,したがって前記製作誤差にも拘らず,両把持爪26a,26bを両前縦骨部材12c,12cに容易,確実に取り付けることができる。
【0044】
ところで,ダンパケース17を構成する第1及び第2ケース半体17A,17Bの一方,図示例では,第2ケース半体17Bに,第1及び第2弾性支持部24A,24Bのみならず,位置決め支持部30が一体に形成されるので,第1及び第2弾性支持部24A,24B及び位置決め支持部30を有する第2ケース半体17Bの形状は複雑となるが,他方の第1ケース半体17Aの形状は単純化され,総合的に第1及び第2ケース半体17A,17Bの成形を容易に行うことができる。
【0045】
自動車の走行中,自動車の床Fからシートクッション2及び枢軸9を経てシートバック3及びヘッドレスト4に伝達したとき,ダイナミックダンパDにおいて重錘22が弾性部材16の弾性変形を伴って共振して,シートバック3及びヘッドレスト4の振動エネルギを代替吸収することになり,シートバック3及びヘッドレスト4を制振することができる。
【0046】
その際,重錘15の振動は,ダンパケース17によってクッション部材13への伝達が抑えられので,乗員に違和感を与えない。
【0047】
また上記第1及び第2弾性支持部24A,24Bは,重錘15の重心Gを挟むように配置されるので,重錘15の振動衝撃力を第2ケース半体17Bを介して安定良く支承することができる。
【0048】
また重錘15は,その重心Gが,重錘15の中心Cより上方に来るように形成されるので,重錘22の重心Gは,シートクッション2及びヘッドレスト4よりなる振動系の支持点より極力離れた位置を占めることになり,したがって比較的小質量の重錘22をもってダイナミックダンパDの制振機能を付与することができる。
【0049】
またダンパケース17は,重錘15の外形に対応して前後方向に偏平な箱型をなし,その前壁17fは,重錘15の前面15fに対応して平面もしくはそれに近い湾曲面に形成され,後壁17rは,重錘15の後面15rに対応して後方に凸側を向けて前壁17fより大きく湾曲した湾曲面に形成されるので,乗員の頭部がクッション部材13を介してダンパケース17の前壁17fに強く押しつけられるときでも,ダンパケース17の前壁17fの比較的広い面積で乗員の頭部を支承することになり,乗員に違和感を与えない。一方,大きく湾曲した重錘15の後面及びダンパケース17の後壁17rは,ヘッドレスト4内のスペースを有効に利用して重錘15の肉厚増を許容し,ダイナミックダンパDの制振機能の向上に寄与し得る。
【0050】
次に,図9に示す本発明の第2実施形態について説明する。
【0051】
この第2実施形態では,ヘッドレストフレーム12に支持される三個以上の弾性支持部24A〜24Cが重錘15の重心Gを囲む多角形34の頂点に位置するようにダンパケース17に形成されるもので,具体的には,ダンパケース17に,三個の第1〜第3弾性支持部24A〜24Cが逆三角形34の三頂点に配置されるように形成され,その逆三角形34の領域に重錘15の重心Gが位置するように重錘15が形成される。第3弾性支持部24Cは,第1及び第2弾性支持部24A,24Bと同様に,第2ケース半体17Bに一体に形成されるもので,その構成も,第1及び第2弾性支持部24A,24Bと同様にアーム25cと優弧状の把持爪26cとよりなっている。
【0052】
而して,ダンパケース17のヘッドレストフレーム12への取り付け時には,前実施形態の場合と同様に,ダンパケース17をヘッドレストフレーム12の前方から後方へ押し込むことにより,第1及び第2弾性支持部24A,24Bを左右の前縦骨部材12c,12cに,第3弾性支持部材24Cを前横骨部材12dにそれぞれ一挙にスナップ係合することができる。
【0053】
その他の構成は,前実施形態と同様であるので,図9中,前実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0054】
この第2実施形態によれば,ヘッドレストフレーム12に支持される三個以上の弾性支持部24A〜24Cが重錘15の重心Gを囲む多角形34の頂点に位置するようにダンパケース17に形成されることで,重錘15の振動衝撃力をダンパケース17を介して全部の弾性支持部24A〜24Cに略均等に分散させて,ダンパケース17の振動を効果的に小さく抑え,乗り心地の向上に寄与し得る。
【0055】
次に,図10に示す本発明の第1参考形態について説明する。
【0056】
この第1参考形態では,前記第1実施形態中のダイナミックダンパDがヘッドレストフレーム12の左右の上骨部材12b,12bに取り付けられる。即ち,ダンパケース17の第1及び第2弾性支持部24A,24Bは,左右の上骨部材12b,12bに上方からスナップ係合され,位置決め支持部30は,左右の上骨部材12b,12bの後端部間を連結するクロスメンバ46に上方から係合当接する。したがって,ダンパケース17をヘッドレストフレーム12の上方から下方へ向かって押し込むことにより,ダンパケース17をヘッドレストフレーム12に位置決めして取り付けることができる。
【0057】
その他の構成は,前記第1実施形態と同様であるので,図10中,第1実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0058】
この第1参考形態によれば,左右の上骨部材12b,12b間のスペースをダイナミックダンパDの設置に有効利用することで,ヘッドレスト4のクッション部材13において,乗員の頭部が当接する前部の肉厚を充分に確保すると共に,シートクッション2及びヘッドレスト4よりなる振動系の支持点から重錘22の重心Gまでの距離を充分に得て,ダイナミックダンパDの制振機能を高めることができる。
【0059】
次に,図11に示す本発明の第実施形態について説明する。
【0060】
この第実施形態では,シートバック3において,そのシートバックフレーム10の上部の左右の角部の内隅に,正面視で略直角三角形状のダンパケース17を備えたダイナミックダンパDを配置し,そのダンパケース17の上面及び一側面に形成される一対の弾性支持部24A,24Bがシートバックフレーム10の縦骨部材10a及び横骨部材10bにそれぞれスナップ係合される。この場合も,ダンパケース17の後方への押し込みにより,一対の弾性支持部24A,24Bをシートバックフレーム10に一挙にスナップ係合することができる。ダイナミックダンパDの構造は,ダンパケース17及びそれに収容される重錘15の形状が第1実施形態のものと異なるのみで,基本的には同一である。
【0061】
この第実施形態によれば,シートバックフレーム10の最上部に配置されるダイナミックダンパDの作用により,シートバック3の制振を効果的に行うことができる。しかもシートバックフレーム10の上部角部の内隅のデッドスペースをダイナミックダンパDの設置に有効利用することができる。尚,上記ダイナミックダンパDは,シートバックフレーム10の上部の左右何れか一方の角部の内隅のみに配設することもある。
【0062】
次に,図12に示す本発明の第実施形態について説明する。
【0063】
この第実施形態では,シートバックフレーム10の左右の縦骨部材10a,10aの上部間を一体に連結する波状骨部材49の中央部で互いに反対方向へ傾斜した一対の傾斜骨部49a,49aに,ダンパケース17の左右両側面に形成される一対の弾性支持部24A,24Bがそれぞれスナップ係合される。その際,一対の弾性支持部24A,24Bは,一対の傾斜骨部49a,49aに対応して斜めに配置され,これにより一対の弾性支持部24A,24Bは,一対の傾斜骨部49a,49aでの上下動が阻止される。この場合も,ダンパケース17の後方への押し込みにより,一対の弾性支持部24A,24Bを波状骨部材49に一挙にスナップ係合することができる。ダイナミックダンパDの基本構造は,第1実施形態のものと同じである。こうしてシートバックフレーム10の上部且つ中央部に取り付けられる一個のダイナミックダンパDの作用により,シートバック3の制振を効果的に行うことができる。
【0064】
最後に,図13に示す本発明の第2参考形態について説明する。
【0065】
この第2参考形態では,シートクッション2の制振のために,シートクッションフレーム6の前部に溶接されて左右方向に延びる前部補強板6aにダイナミックダンパDのダンパケース17が取り付けられる。この場合のダンパケース17には,その上面に一対の弾性支持部50,50が形成される。各弾性支持部50は,ダンパケース17の外側面から突出する軸部50aと,この軸部50aの先端に形成される矢尻状の係止突起50bとで構成され,係止突起50bの弾性的な縮径を可能にすべく,係止突起50bの先端から軸部50aに亙りスリット50cが設けられる。また軸部50aには,ゴム製の弾性カラー52が嵌装される。一方,前部補強板6aには,上記一対の弾性支持部50,50に対応して一対の係止孔51,51が穿設され,これら係止孔51,51に弾性支持部50,50の係止突起50bを下方から押し込むことで,各係止突起50bは弾性的に縮径しないが対応する係止孔51を通過した後,原形に拡径し,即ちスナップ係合して係止孔51からの離脱が阻止される。その際,軸部50aに嵌装された弾性カラー52が前部補強板6aとダンパケース17との間で圧縮され,その反発力により,係止突起50bは前部補強板6aの前面にガタ無く保持される。したがって,この場合も,ダンパケース17を一方向へ押し込むことにより,一対の弾性支持部50,50を前部補強板6aに一挙にスナップ係合することができる。
【0066】
上記弾性支持部50,50以外,ダンパケース17及びそれに収容される重錘15及びそれを包む弾性部材16の構造は,前記第1実施形態のものと基本的に同一である。したがって,図13中,第1実施形態と対応する部分には同一の参照符号を付して,重複する説明を省略する。
【0067】
この第2参考形態によれば,シートクッションフレーム6の前端部に配置されるダイナミックダンパDの作用により,シートクッション2の制振を効果的に行うことができる。しかもシートクッションフレーム6の前端の前部補強板6a下方のデッドスペースをダイナミックダンパDの設置に有効利用することができ,さらに単純な押し込み操作により弾性支持部50,50を前部補強板6aの係止孔51,51にスナップ係合させることができ,ダンパケース17の取り付けを容易に行うことができる。
【0068】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,第1実施形態に,第及び第実施形態を併用することもできる。またダンパケース17を構成する第1及び第2半体17A,17Bの一方を,開口部を有する箱状に,他方を,上記開口部を閉鎖する蓋状に形成することもできる。また本発明のシート装置は,自動車用に限らず,鉄道車両,航空機等にも適用可能である。またシートSは,乗り物の壁面から張り出して設置することもできる。
【符号の説明】
【0069】
D・・・・・・ダイナミックダンパ
S・・・・・・シート
6・・・・・・フレーム(シートクッションフレーム)
10・・・・・フレーム(シートバックフレーム)
12・・・・・フレーム(ヘッドレストフレーム)
12b・・・・第1骨部材(上骨部材)
12c・・・・第2骨部材(前縦骨部材)
12d・・・・第3骨部材(前横骨部材)
15・・・・・重錘
16・・・・・弾性部材
17・・・・・ダンパ支持体(ダンパケース)
24A,24B,24C・・・弾性支持部
30・・・・・位置決め支持部
46・・・・・第3骨部材(クロスメンバ)
50・・・・・弾性支持部
図1
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