特許第6166589号(P6166589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166589魚釣用リール本体等の基材の表面を装飾する装飾用被膜
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  • 特許6166589-魚釣用リール本体等の基材の表面を装飾する装飾用被膜 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166589
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】魚釣用リール本体等の基材の表面を装飾する装飾用被膜
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20060101AFI20170710BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20170710BHJP
   A01K 89/01 20060101ALI20170710BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B32B7/02 103
   B32B15/01 E
   A01K89/01 A
   A01K89/015 B
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-113683(P2013-113683)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-231197(P2014-231197A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100125195
【弁理士】
【氏名又は名称】尾畑 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小池 守
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249671(JP,A)
【文献】 特開2006−088500(JP,A)
【文献】 特開平09−313073(JP,A)
【文献】 特開2010−107854(JP,A)
【文献】 特開2006−111857(JP,A)
【文献】 特開2006−045595(JP,A)
【文献】 特開2012−235707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00〜43/00
A01K89/00〜89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面を装飾する装飾用被膜であって、
前記基材の表面に形成された内側膜と、
前記内側膜上に海島状に形成された銀鏡部と、当該銀鏡部が形成された前記内側膜上に形成された外側膜とで構成される半透明な半透明層と、
を備え、前記外側膜の一部は、前記内側膜上に形成され、前記外側膜の該一部以外は、前記銀鏡部上に形成される装飾用被膜。
【請求項2】
前記半透明層は、可視光反射率が80%以下である請求項1記載の装飾用被膜。
【請求項3】
リール本体と、
前記リール本体の表面の少なくとも一部に形成された内側膜と、
前記内側膜上に海島状に形成された銀鏡部と、当該銀鏡部が形成された前記内側膜上に形成された外側膜とで構成される半透明な半透明層と、
を備え、前記外側膜の一部は、前記内側膜上に形成され、前記外側膜の該一部以外は、前記銀鏡部上に形成される魚釣用リール。
【請求項4】
装飾用被膜を形成する方法であって、
基材を準備する工程と、
前記基材の表面に内側膜を形成する工程と、
前記内側膜上に海島状に銀鏡部を形成する工程と、
当該銀鏡部が形成された前記内側膜上に外側膜を形成する工程と、
を備え、前記外側膜を形成する工程は、前記外側膜の一部を、前記内側膜上に形成し、前記外側膜の該一部以外を、前記銀鏡部上に形成する方法。
【請求項5】
前記銀鏡部と前記外側膜とによって半透明な半透明層を構成する請求項4記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾用被膜及びこれを形成する方法、魚釣用リールに関し、詳しくは、基材の表面を装飾する装飾用被膜及びこれを形成する方法、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属やプラスチック等の基材に対して鏡面光沢を付与するために、銀鏡反応を利用した装飾用被膜を形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。この装飾用被膜では、基材に対して内側層を形成し、この内側層の上に銀薄膜層を形成し、この銀薄膜層の上に外側層を形成している。また、銀薄膜層を、アミンを配位子とする銀金属錯体で形成し、この銀薄膜層表層のアミンと内側層及び外側層の樹脂とを反応させることにより、銀薄膜層と内側層及び外側層との結合力の増大を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−235707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした装飾用被膜では、内側層及び外側層は、銀薄膜層の下面及び上面のみに接触して結合するから、その密着性には限界がある。
【0005】
そこで、本発明の様々な実施形態は、基材の表面を装飾する装飾用被膜において層間の密着性を向上させることを目的の一つとする。本発明の様々な実施形態の他の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る装飾用被膜は、基材の表面を装飾する装飾用被膜であって、前記基材の表面に形成された内側膜と、前記内側膜上に海島状に形成された銀鏡部と、当該銀鏡部が形成された前記内側膜上に形成された外側膜とを有し、半透明な半透明層と、を備える。
【0007】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、リール本体と、前記リール本体の表面の少なくとも一部に形成された内側膜と、前記内側膜上に海島状に形成された銀鏡部と、当該銀鏡部が形成された前記内側膜上に形成された外側膜とを有し、半透明な半透明層と、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る方法は、装飾用被膜を形成する方法であって、基材を準備する工程と、前記基材の表面に内側膜を形成する工程と、前記内側膜上に海島状に銀鏡部を形成する工程と、当該銀鏡部が形成された前記内側膜上に外側膜を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々な実施形態によって、基材の表面を装飾する装飾用被膜において層間の密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る装飾用被膜の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、様々な実施形態を適宜図面を参照して説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る装飾用被膜10の断面を模式的に表す模式図である。一実施形態における装飾用被膜10は、図示するように、釣り用リールのリール本体等の基材12の表面に形成された内側膜14と、この内側膜14上に形成され半透明な半透明層16とを備え、半透明層16は、内側膜14上に海島状に疎らに形成された銀鏡部18と、この銀鏡部18が形成された内側膜14上に形成された外側膜20とを有する。なお、図1は、本発明の一実施形態に係る装飾用被膜10の構成を模式的に表すものであり、その寸法は必ずしも正確に図示されていない点に留意されたい。
【0013】
基材12は、本発明の一実施形態に係る装飾用被膜10を用いて装飾する様々な被装飾物の表層を構成する基材であり、様々な材質、形状等とすることができる。例えば、釣り用リールのリール本体を装飾する場合、基材12は、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属や、ABS樹脂、PA樹脂等の高強度樹脂、CFRP、GFRP等の繊維強化樹脂等によって形成される。
【0014】
内側膜14は、銀鏡部18の下地(アンダーコート層)として機能し、例えば、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等を主成分とする樹脂性のコーティング成分を基材12の表面にスプレー等を利用して液状で吹き付け、その後、所定温度での硬化処理(例えば、60℃で180分間加熱する)を行うことにより形成することができる。内側膜14の膜厚は特に限定されず、例えば、5〜30μmの膜厚で形成することができる。
【0015】
銀鏡部18は、内側膜14上に銀鏡反応によって形成され、例えば、一般的な銀鏡塗装プロセスを用いて形成することができる。より具体的には、硝酸銀及びアンモニアを含むアンモニア性硝酸銀溶液と、アルデヒド等の還元剤溶液とを内側膜14の表層上で混合されるように塗布することによって形成され、例えば、両溶液を別々のスプレーガン等によって噴射することによって形成される。ここで、図1に示すように、銀鏡部18は内側膜14上に海島状に疎らに形成される。例えば、アンモニア性硝酸銀溶液における銀の含有率を銀鏡部を均一な銀薄膜層として形成する場合の値よりも小さな値としたり、内側膜14の表層上に塗布する時間を短く(塗布スピードを早く)したり、又は、これらを組み合せることにより、銀鏡部18を海島状に疎らに形成することができる。図1においては、銀鏡部18は、略均等な間隔で形成されているように示されているが、スプレーガン等からの溶液の噴射によって形成される場合には、不規則的な間隔、形状で形成される。また、銀鏡部18の膜厚は特に限定されず、例えば、0.05〜0.1μmの膜厚で形成することができる。なお、銀鏡部18を形成する前に、内側膜14上に予め触媒層を形成しても良い。この触媒層は、内側膜14と銀鏡部18との間のカップリング効果を奏し、銀を析出するためのスターターの役割も果たす。こうした触媒層は、例えば、第一塩化スズを水に溶解させた第一塩化スズ溶液を塗布することによって形成することができる。
【0016】
外側膜20は、銀鏡部18の上塗り(トップコート層)として機能する。外側膜20は、前述した内側膜14と同様に形成することができ、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等を主成分とする樹脂性のコーティング成分を銀鏡部18が形成された内側膜14の表面にスプレー等を利用して液状で吹きつけ、その後、所定温度での硬化処理(例えば、70℃で60分間加熱する)を行うことにより形成することができる。図1に示すように、銀鏡部18が内側膜14上に海島状に疎らに形成されているから、外側膜20は、銀鏡部18の海島間の隙間に入り込んで、各海島を内側膜14と共に囲い込むように形成される。なお、銀鏡部18を形成した後、腐食防止剤を塗布し、この腐食防止剤の上から外側膜20を形成することもできる。また、外側膜20は、無色透明、又は、着色剤を添加して有色透明に形成されている。さらに、外側膜20の膜厚は特に限定されず、例えば、5〜30μmの膜厚で形成することができる。
【0017】
ここで、内側膜14上に海島状に疎らに形成された銀鏡部18と、この銀鏡部18が形成された内側膜14上に形成された外側膜20とによって、一実施形態における半透明層16が構成される。半透明層16は、海島状に疎らに形成された銀鏡部18と透明な外側層20とによって半透明となっており、より具体的には、一般的な銀の可視光反射率(98%)より小さな可視光反射率となっており、例えば、80%以下の可視光反射率となっている。こうして構成された半透明層16において、外側膜20の表面からの入射光は、一部が銀鏡部18によって反射し、一部が内側膜14に達する。こうした入射光の挙動によって、一実施形態における装飾用被膜10は、従来の銀鏡塗装では実現されない装飾性を得ることができる。
【0018】
以上説明した一実施形態における装飾用被膜10では、内側膜14上に海島状に疎らに銀鏡部18を形成し、この銀鏡部18が形成された内側膜14上に外側膜20を形成する。従って、外側膜20が、銀鏡部18の海島間の隙間に入り込んで、各海島を内側膜14と共に囲い込むように形成されるから、内側膜14と外側膜20とが直接接触して密着し、装飾用被膜を構成する層間の密着性を向上させることができる。また、銀鏡部18を外側膜20と内側膜14とによって包み込むから、銀鏡部18の耐食性が向上し、仮に銀鏡部18の一部(海島)が腐食しても、腐食が銀鏡部18全体に拡がりに難い。さらに、銀鏡部18と外側膜20とによって構成される半透明な(一般的な銀の可視光反射率よりも小さな可視光反射率である)半透明層16を表層に備えるから、従来の銀鏡塗装では実現されない装飾性を得ることができる。
【符号の説明】
【0019】
10 装飾用被膜
12 基材
14 内側膜
16 半透明層
18 銀鏡部
20 外側膜
図1