(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リール本体と、前記リール本体に回転可能に設けられたスプールと、前記スプールを駆動するモータと、前記スプールの釣り糸の繰り出し方向に作用する回転負荷を調整可能なドラグ機構と、を有する電動リールの前記モータを制御するモータ制御装置であって、
前記スプールの回転速度を検出するスプール速度検出部と、
前記ドラグ機構の動作を検出するドラグ動作検出部と、
前記ドラグ動作検出部が前記ドラグ機構の動作を検出すると、前記モータの回転速度に対して一義的に定まる規定回転速度が、前記スプール速度検出部で検出された検出回転速度よりも所定の差だけ速くなるように前記モータを制御する第1制御部と、
を備える電動リールのモータ制御装置。
前記ドラグ動作検出部は、前記検出回転速度が、前記速度設定部で設定された段階よりも少なくとも一つ低速側の段階の規定回転速度よりも遅いとき、前記ドラグ機構が動作したことを検出する、請求項7又は8に記載の電動リールのモータ制御装置。
前記ドラグ動作検出部は、前記検出回転速度が、前記速度設定部で設定された段階よりも二つ低速側の段階の規定回転速度よりも遅いとき、前記ドラグ機構が動作したことを検出する、請求項9に記載の電動リールのモータ制御装置。
前記検出回転速度が前記規定回転速度よりも遅い状態から前記検出回転速度が前記規定回転速度と同じ状態に戻ったときから所定時間経過するまでに、前記検出回転速度が、前記検出回転速度に対応する段階よりも一つ低速側の段階の前記規定回転速度より遅くなったとき、前記ドラグ動作検出部は、前記ドラグ機構が動作したことを検出する、請求項10に記載の電動リールのモータ制御装置。
前記第1制御部は、前記検出回転速度が所定以下になったとき、前記検出回転速度に対応する段階よりも少なくとも一つ高い段階の一定の規定回転速度で前記モータを制御する、請求項7から11のいずれか1項に記載の電動リールのモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<リールの全体構成>
図1及び
図2において、本発明の一実施形態を採用した電動リール100は、外部電源から供給された電力によりモータ駆動されるリールである。また、電動リール100は糸繰り出し長さ又は糸巻取長さに応じて仕掛けの水深を表示する水深表示機能を有するリールである。
【0027】
電動リール100は、釣り竿に装着可能なリール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール10の回転用のハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3と、水深表示用のカウンタケース4と、を主に備える。
【0028】
リール本体1は、フレーム7と、フレーム7の左右を覆う第1側カバー8a及び第2側カバー8bと、を有する。フレーム7は、例えば、アルミニウム合金等の軽金属製又はガラス繊維で強化されたポリアミド樹脂製であり、第1側板7a及びハンドル2側の第2側板7bと、それらを下部、後部及び前上部の3箇所で連結する複数の連結部材7cと、を有する。第2側板7bは、側板本体9aと、側板本体9aにねじ止めされた機構装着板9bと、を有する。機構装着板9bは、アルミニウム合金などの軽金属製である。
【0029】
図2に示すように、リール本体1の内部には、スプール10に連動して動作するレベルワインド機構13(
図3)、並びハンドル2及びモータ12の回転をスプール10に伝達する回転伝達機構6が設けられている。
【0030】
また、リール本体1の内部には、モータ12及びハンドル2に連結された糸巻用のスプール10が設けられる。スプール10は、リール本体1に回転自在に支持される。スプール10の内部に、スプール10を糸巻取方向に回転駆動するモータ12が配置される。
【0031】
図1に示すように、第2側カバー8bの中央下部には、ハンドル2が回転自在に支持される。また、ハンドル2の支持部分の上方前部には、モータ12の出力を複数段階(例えば31段階)に調整するための調整レバー5が揺動自在に支持される。調整レバー5は、スプール10の回転速度(又はスプール10に釣り糸を介して作用する回転負荷)を複数段階のいずれかに設定するために設けられる。また、調整レバー5は、釣り糸に作用する張力を複数段階のいずれかに設定する張力設定部としても機能する。調整レバー5の後方には、レバー形状のクラッチ操作部材11が揺動自在に配置される。クラッチ操作部材11は、ハンドル2及びモータ12とスプール10との駆動伝達をオンオフするクラッチ機構(図示せず)をオンオフ操作するための部材である。このクラッチをオンすると、仕掛けの自重による糸繰り出し中に、糸繰り出し動作を停止できる。ハンドル2と逆側の第1側カバー8aには、電源ケーブル接続用のケーブルコネクタ14が下向きに装着される。下部の連結部材7cには、電動リール100を釣り竿に装着するための竿装着脚部7dが形成される。
【0032】
回転伝達機構6は、
図2に示すように、先端部にハンドル2が一体回転可能に連結される駆動軸38と、駆動軸38に回転自在に装着される駆動ギア39と、駆動ギア39にかみ合うピニオンギア40と、を有する。駆動軸38は、ローラ式のワンウェイクラッチ42a及び爪式のワンウェイクラッチ42bによって、糸繰り出し方向の回転が禁止される。爪式のワンウェイクラッチ42bは、駆動軸38に一体回転可能に連結されたラチェットホイール42cとラチェットホイール42cの糸繰り出し方向の回転を禁止するストッパ爪(図示せず)とを有する。ストッパ爪は、機構装着板9bに揺動自在に支持される。ラチェットホイール42cは、後述するドラグ機構44も構成する。駆動軸38は、第1側カバー8aと機構装着板9bとに回転自在に支持される。機構装着板9bには、駆動軸38を支持するための軸受31が装着されるボス部9cが設けられる。
【0033】
また、回転伝達機構6は、モータ12の回転を減速してスプール10に伝達する遊星歯車機構43を有する。遊星歯車機構43は、減速機構の一例である。回転伝達機構6の回転伝達経路の途中には、スプール10の糸繰り出し方向の回転を制動するドラグ機構44が設けられている。
【0034】
ドラグ機構44は、スタードラグ3によってドラグ力が調整される。スタードラグ3は、駆動軸38の先端に螺合するナット部3aを有し、ナット部3aがドラグ機構44を押圧することによってドラグ力が調整される。ドラグ機構44は、駆動軸38に一体回転可能に連結される少なくとも1枚(この実施形態では、3枚)の第1ドラグ板45aと、駆動ギア39に一体回転可能に連結される少なくとも1枚(この実施形態では、2枚)の第2ドラグ板45bと、第1ドラグ板45aと第2ドラグ板45bとの間に配置される少なくとも1枚(この実施形態では5枚)のドラグディスク45cと、を有する。また、ドラグ機構44は、駆動軸38に一体回転可能に連結される第1ドラグ板として機能する前述したラチェットホイール42cを有する。最もハンドル2側の第1ドラグ板45aは、複数枚の皿バネ48及びワンウェイクラッチ42aの内輪42dを介してナット部3aによって押圧される。皿バネ48を介した押圧力は、ラチェットホイール42cを介して駆動軸38に設けられた鍔部38aによって受けられる。したがって、釣り糸にスタードラグ3によって調整されたドラグ力を超える力が作用すると、ドラグ機構44が動作する。ドラグ機構44が動作すると、駆動ギア39及び駆動ギア39に一体回転可能に連結された第2ドラグ板45bがラチェットホイール42c及び第1ドラグ板45aに対して滑って糸繰り出し方向に回転する。この結果、駆動ギア39及び第2ドラグ板45bと、ラチェットホイール42c及び第1ドラグ板45aとの間に摩擦による熱が発生する。この発生した熱によるドラグ機構44の温度は、駆動軸38の基端が支持されるボス部9cに設けられた温度センサ29によって計測される。温度センサは、例えば、サーミスタ又は熱電対等のセンサを用いており、温度計測部の一例である。
【0035】
<モータの構成>
モータ12は、例えば、定格出力が120ワット程度のブラシレスモータであり、電動リール100に用いるものとしては比較的大容量のものである。
【0036】
モータ12は、
図3及び
図5に示すように、モータケース15と、モータケース15の内周面に設けられた固定子16と、固定子16の内周側に配置された回転子17と、回転子
17が固定された回転軸18と、を有する。モータケース15は、耐食性を高めるためにアルマイト処理されたアルミニウム合金製の部材である。モータケース15は、筒部15aと筒部の一端(
図5右端)にねじ込み固定された底部15bと、を有する有底筒状の部材である。モータケース15の開口は、モータホルダ24によって塞がれる。モータホルダ24は、第1側板7aにねじ止めされる。モータケース15の筒部15aの開口端は、モータホルダ24に芯出された状態でねじ込み固定される。これよりモータ12がリール本体1に固定される。
【0037】
固定子16は、モータケース15に固定された複数(例えば3個)の積層コア16aと、積層コア16aに巻回された、U相、V相及びW相の3つのコイル16bと、を有する。積層コア16aは、例えば無方向性珪素鋼板製である。積層コア16aは、モータケース15の内周面に位置決めされて固定される。固定子16は、露出部分がメッキ等の防食被膜により防食処理される。回転子17は、S極及びN極を有する2極の磁石17aと、磁石17aを保持する磁石ホルダ17bとを含んでいる。磁石ホルダ17bは、回転軸18に一体回転可能に連結される。回転子17は、露出部分がメッキ等の防食被膜により防食処理される。
【0038】
回転軸18は、例えば、ステンレス合金製の軸であり、モータホルダ24及びモータケース15の底部15bに左右一対の軸受27により回転自在に支持される。回転軸18の第1端(
図5左端)には、回転軸18の糸繰り出し方向の回転を禁止するためのワンウェイクラッチ28が装着される。ワンウェイクラッチ28は、モータホルダ24に形成された膨出部24a内に外輪28aが回転不能に装着されたローラクラッチである。
【0039】
<遊星歯車機構の構成>
回転伝達機構6を構成する遊星歯車機構43は、回転軸18の第2端(
図5右端)に設けられる。遊星歯車機構43は、第1遊星機構71と、第2遊星機構72と、を有する。第1遊星機構71は、第1太陽ギア71aと、第1リングギア71bと、複数(例えば2つから4つ)の第1遊星ギア71cと、第1キャリア71dと、を有する。第1太陽ギア71aは、モータ12の回転軸18の第2端に設けられ、回転軸18と一体回転する。第1リングギア71bは、スプール10の内周面に一体又は別体で設けられる。この実施形態では、第1リングギア71bは、スプール10の内周面に一体で設けられる。複数の第1遊星ギア71cは、第1太陽ギア71aと第1リングギア71bとに係合する。この実施形態では、第1遊星ギア71cは、3つ設けられる。第1キャリア71dは、複数の第1遊星ギア71cをそれぞれ回転自在に保持し、モータ12の回転軸18に対して回転可能に設けられる。
【0040】
第2遊星機構72は、第2太陽ギア72aと、第2リングギア72bと、複数(例えば2つから4つ)の第2遊星ギア72cと、第2キャリア72dと、を有する。第2太陽ギア72aは、第1キャリア71dに一体回転可能に連結され、第1キャリア71dとともに回転する。第2リングギア72bは、スプール10の内周面に一体又は別体で設けられる。この実施形態では、第2リングギア72bは、第1リングギア71bと軸方向に並んでスプール10の内周面に一体で設けられる。複数の第2遊星ギア72cは、第2太陽ギア72aと第2リングギア72bとに係合する。この実施形態では、第2遊星ギア72cは、3つ設けられる。第2キャリア72dは、複数の第2遊星ギア72cをそれぞれ回転自在に保持し、モータ12の回転軸18に対して回転可能に設けられる。第2キャリア72dには、ピニオンギア40が一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結される。ピニオンギア40は、クラッチ操作部材11の操作により動作する図示しないクラッチ制御機構によって、第2キャリア72dに一体回転可能に係合するクラッチオン位置と、第2キャリア72dから離脱するクラッチオフ位置とに移動する。ピニオンギア40がクラッチオン位置にあるとき、第2キャリア72dは、ピニオンギア40及び駆動ギア39を介してドラグ機構44に接続される。
【0041】
スプール10には遊星歯車機構43を介してモータ12の回転が伝達される。遊星歯車機構43は、例えば1/500の減速比Rでモータ12の回転を減速する。
【0042】
リール本体1の第1側板7a及び第2側板7bの上部に、
図1及び
図2に示すように、釣り糸の先に装着された仕掛けの水深を表示するカウンタケース4が固定される。
【0043】
<カウンタケース構成>
カウンタケース4は、
図3及び
図4に示すように、リール本体1の前上部に載置されたケース本体19と、液晶ディスプレイを有する水深表示部22と、リール制御部23と、を備える。リール制御部23は、電動リール100の第1制御部及び第2制御部の一例である。電動リール100の制御システム90は、
図6に示すように、調整レバー5と、リール制御部23と、を有する。制御システム90は、電動リール100の制御装置の一例である。調整レバー5は、速度設定部の一例である。
【0044】
図3及び
図4に示すように、ケース本体19は、リール本体1の第1側板7a及び第2側板7bに固定される。ケース本体19は、上面部33を有し、外部に露出する合成樹脂製の上ケース部材30と、上ケース部材30に固定される下ケース部材32と、を有する。
【0045】
上ケース部材30は、例えば、ガラス短繊維で強化されたポリアミド樹脂製である。上ケース部材30は、表示部分が前細りに形成される。上ケース部材30は、内部に下ケース部材32とで収納空間を有する。
【0046】
上面部33の表示部分には、概ね台形形状の表示用に開口する表示枠33aが形成される。表示枠33aの開口は、上ケース部材30に溶着された透明カバー37により塞がれている。
【0047】
また、
図4に示すように、表示枠33aの後方には、メニュースイッチSW1、決定スイッチSW2、及びメモスイッチSW3が配置される。メニュースイッチSW1は、例えば、選択操作を行うためのメニュー操作用のスイッチである。決定スイッチSW2は、例えば、メニュースイッチSW1で選択された操作を決定するためのスイッチである。メモスイッチSW3は、例えば、棚メモ用のスイッチである。メニュースイッチSW1は、水深表示部22内の表示項目を選択するために使用されるボタンである。例えば、メニュースイッチSW1を操作するごとに「上からモード」(仕掛けの水深を水面からの深さで表示するモード)と「底からモード」(仕掛けの水深を水底からの水深で表示するモード)とに切り換える。またメニュースイッチSW1を3秒以上長押しすると、長押しの都度、モータ12の制御モードを「速度一定モード」と「張力一定モード」とに切り換えできる。
【0048】
ここで、速度一定モードは、調整レバー5の揺動位置に応じてスプール10の回転速度の上限速度を複数段階(例えば31段階)に多段速度制御可能なモードである。張力一定モードは、調整レバー5の揺動位置に応じて釣り糸に作用する張力(スプールの回転負荷)の上限張力を複数段階(例えば31段階)に多段張力制御可能なモードである。なお、両モードとも、最高段階の31段階は、100%デューティでモータ12を動作させる速巻速度であり、電流制限は行うが、速度制御は行わない。なお、速度一定モードにおいて、第1段階のスプール回転速度は、28rpm(rpm=1分間の回転速度)から30rpmの範囲に制御される。したがって、モータ12の回転速度は、1400rpmから1500rpmの範囲に制御される。
【0049】
図3に示すように、下ケース部材32は、例えば、アルミニウム合金及びマグネシウム合金等の軽量で熱伝導率が高い金属製の枠状の部材である。下ケース部材32は、複数本(例えば4本)の固定ねじ(図示せず)により上ケース部材30を固定する。水深表示部22及びリール制御部23用の2枚の回路基板20が下ケース部材32に搭載される。
【0050】
下側の回路基板20の下面には、モータ12駆動用の複数のFET(電界効果トランジスタ)25を含むモータ駆動回路70が搭載される。FET25は、モータ12をPWM(パルス幅変調)する際にデューティ比に応じてスイッチングするスイッチ素子として機能する。また、FET25は、例えば、モータ12の固定子16のコイル16bを順に励磁及び消磁するためのスイッチ素子として機能する。また、下側の回路基板20に、コンデンサ21が接続される。コンデンサ21は、FET25から発生するノイズを平滑化する機能を有する。また、モータ12の逆起電流を整流する機能を有する。この逆起電流を整流することにより、モータ12の回転位相を検出する。この検出された回転位相によりFET25が制御されてコイル16bを順に励磁及び消磁し、モータ12を回転させる。また、この回転位相によりモータ12の回転速度を検出する。
【0051】
図4に示すように、水深表示部22は、例えば、セグメント表示するバックライト付きの液晶表示装置22aを有する。液晶表示装置22aの表示画面は、中央に配置された4桁の16セグメント表示の水深表示領域22bと、その右下方に配置された3桁の7セグメントのメモ水深表示領域22cと、メモ水深表示領域22cの左方に配置された
2桁の7セグメントの段階表示領域22dとを有する。段階表示領域22dは、調整レバー5の位置(段階SC)を、例えば0から30までの31段階で表示する。ここでは、水深表示領域22bに16セグメントの表示を用いているので、水深表示がより視認しやすくなる。
【0052】
<リール制御部の構成>
リール制御部23は、
図6に示すように、機能構成としてモータ12を制御するモータ制御部60(ドラグ動作検出部、第1制御部及び第2制御部の一例)と、水深表示部22を制御する表示制御部61と、を有する。モータ制御部60は、モータ12をPWM制御するとともに、モータ12の固定子16の複数のコイル16bを励磁及び消磁する制御を行う。この励磁及び消磁制御の際には、モータ制御部60は、コンデンサ21でモータ12の逆起電流を整流して得られたデータによりモータ12の回転位相を検出し、検出された回転位相に応じて複数のコイル16bを順次励磁及び消磁する。
【0053】
リール制御部23には、調整レバー5と、メニュースイッチSW1と、決定スイッチSW2と、メモスイッチSW3と、が接続される。また、スプール10の回転速度及び回転方向を検出するためのスプールセンサ41と、コイル16bへの通電をオンオフするとともにモータ12をPWM駆動する5つのFET25及びコンデンサ21を含むモータ駆動回路70と、ブザー47と、水深表示部22と、記憶部46と、他の入出力部と、が接続される。モータ駆動回路70には、モータ12に流れる電流値を検出する電流検出部70aが設けられている。電流検出部70aは、モータに流れる電流値に加えて電流方向も検出可能である。
【0054】
スプールセンサ41は、スプールに設けられる磁石の磁気を検出可能であり、スプール回転方向に並べて配置された2つの磁気センサ(例えばリードスイッチまたはホール素子)から構成される。スプールセンサ41は、いずれの磁気センサが先に検出パルスを発したかによりスプール10の回転方向を検出できる。また、検出パルスによりスプールの回転数及び回転速度を検出できる。
【0055】
記憶部46は、例えばEEPROM等の不揮発メモリから構成される。記憶部46には、
図7に示すように、棚位置等の表示データを記憶する表示データ記憶エリア50と、実際の糸長とスプール回転数との関係を示す糸長データを記憶する糸長データ記憶エリア51と、段階SCに応じたスプール10の回転速度Vd(rpm)及び巻き上げトルク(電流値)を記憶する回転データ記憶エリア52と、種々のデータを記憶するデータ記憶エリア53とが設けられている。
【0056】
回転データ記憶エリア52には、速度一定モードでの段階SC毎の上限速度Vsc、上限速度Vscの下限値Vsc1及び上限値Vsc2のデータと、張力一定モードでの段階SC毎の上限張力Qsの下限値Qsc1及び上限値Qsc2のデータと、が記憶される。なお、速度制御を行う際に、
段階SC毎に上限速度Vscの下限値Vsc1及び上限値Vsc2を設けたのは、下限値Vsc1及び上限値Vsc2の間で速度が変動している場合にはデューティ比が変化せず、デューティ比が頻繁に変動するワウリングが生じなくなり、フィードバック制御が安定するからである。各段階SCの上限速度Vscは、モータ12の回転速度MVに遊星歯車機構43の減速比(例えば1/500)を乗算したスプール10の回転速度の数値で記憶される。データ記憶エリア53には糸長に関する各種のデータが格納される。例えば船縁停止位置が格納される。
【0057】
図6に示すように、モータ制御部60は、ソフトウェアで実現される機能構成として、モータ速度検出部62と、モータ電流制御部63と、スプール速度制御部64と、ドラグ動作検出部66と、回転速度比較部67と、スプール速度検出部68と、モード切換部69と、を有する。モータ速度検出部62は、モータ12の逆起電流を整流して得られたデータによりモータ12の回転位相を検出する回転位相検出部62aを含む。回転位相検出部62aは、ブラシレスモータの励磁及び消磁を制御するために設けられる
。この回転位相検出部62aによって検出された回転位相の時間的な経過によって、モータ速度検出部62は、モータ12の回転速度を検出する。したがって、モータ12の回転速度を検出するセンサが不要である。
【0058】
モータ電流制御部63は、調整レバー5の揺動操作位置に応じて、モータ12に流れる電流値を複数段階(例えば31段階)に制御する。すなわち、張力一定モードの際にモータ12の制御を行う。
【0059】
スプール速度制御部64は、スプール速度設定部としての調整レバー5の揺動操作位置に応じて、スプール10の回転速度が複数段階(例えば31段階)のいずれかになるようにモータを制御する。すなわち、速度一定モードの際にモータ12を制御する。スプール速度制御部64は、調整レバー5によって設定された
段階の上限速度Vscを維持するように通常のスプール速度制御を行う第2制御部64bと、ドラグ機構44が動作したときにスプール10の速度を制御する第1制御部64aと、を有する。第1制御部64aは、ドラグ機構44が動作しているときの低下したスプール10の回転速度Vdに対応する
段階SCよりも一段高速側の
段階SC+1の上限速度Vsc(+1)でスプール10が回転するように、モータ12を制御する。第2制御部64bでは、調整レバー5によって設定された
段階SCに応じた上限速度Vscでスプール10が回転するようにモータを制御するが、第1制御部64aでは、そのときのスプール10の回転速度Vdに応じて、回転速度Vdに対応する
段階SCの一段高速側の
段階SC+1の上限速度Vsc(+1)でスプール10が回転するように、モータ12を制御する。
【0060】
ドラグ動作検出部66は、モータ速度検出部62によって検出されたモータ12の回転速度MVに減速比R(例えば1/500)を乗算した規定回転速度VS(VS=MV×R)と、スプールセンサ41によって検出されたスプール10の回転速度Vdと、に応じて後述する手順によってドラグ機構44が動作状態である否か、つまり、ドラグ機構44の動作状態を検出する。回転速度Vdは、検出回転速度の一例である。
【0061】
回転速度比較部67は、速度一定モードの際に、ドラグ機構44が動作したか否かを判断するために、スプール10の回転速度Vdと、規定回転速度VSと、を比較する。そして、回転速度Vdが規定回転速度VSよりも低下しているとき、その低下の度合い(例えば、回転速度Vdに相当する段階が、規定回転速度VSが対応する段階よりも二段階以上低下している場合など)に応じて、ドラグ機構44が動作したことをドラグ動作検出部66が検出する。
【0062】
スプール速度検出部68は、スプールセンサ41からの出力により、モータ制御部60において使用するスプール10の速度及びスプール10の回転方向を検出する。
【0063】
モード切換部69は、張力一定モードと速度一定モードとを切り換えるものである。前述したように、例えば、メニュースイッチSW1の3秒以上長押し操作により動作モードの切り換え動作が実現される。
【0064】
このような構成の電動リール100では、釣り糸を繰り出す時には、クラッチ操作部材11を手前(後方)に操作することによりクラッチをオフする。クラッチオフすると、スプール10が自由回転状態になり、釣り糸に装着された重りの自重により釣り糸がスプール10から繰り出される。釣り糸が繰り出されるとスプール10が糸繰り出し方向に回転し、スプールセンサ41の検出パルスにより水深表示部22の水深表示が繰り出し量に応じて変化する。仕掛けが棚に到達すると、ハンドル2を糸巻取方向に回して図示しないクラッチ戻し機構によりクラッチをオンして釣り糸の繰り出しを停止する。
【0065】
魚の当たりがあると、調整レバー5を操作し釣り糸を巻き上げる。調整レバー5を
図1時計回りに揺動させると、その揺動角度に応じてスプール10の回転速度Vd又は釣り糸に作用する張力の最大値を段階的に設定できる。
【0066】
<リール制御部の動作>
次にリール制御部23の具体的な制御動作について、
図8から
図13に示す制御フローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明の制御手順の一例であり、本発明の制御手順は以下のフローチャートで示した内容に限定されない。
【0067】
電動リール100に図示しない電源ケーブルを介して電源が投入されると、
図8のステップS1において初期設定を行う。この初期設定では各種の変数やフラグをリセットしたりする。また、船縁停止位置FNを標準的な船縁停止位置である第1糸長L1(例えば、6m)にセットする。
【0068】
次にステップS2では表示処理を行う。表示処理では、水深表示等の各種の表示処理を行う。ここで、段階表示領域22dに段階SCを表示する。
【0069】
ステップS3では、後述する各動作モードで算出される水深LXが第1糸長L1以下か否かを判断する。ステップS4では、いずれかのスイッチSW1〜スイッチSW3又は調整レバー5が押されたか否かのスイッチ入力の判断を行う。またステップS5ではスプール10が回転しているか否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41の出力により判断する。ステップS6では、その他の指令や入力がなされたか否かを判断する。
【0070】
水深LXが第1糸長L1以下のときには、ステップS3からステップS7に移行する。ステップS7では、その水深で5秒以上停止するか否かを判断する。6m以下の水深で5秒以上停止するのは、船縁で釣った魚を取り込んだり、仕掛けに餌を付け直したりする等の動作を行っているときが多い。このため、5秒以上停止していると判断するとステップS8に移行し、そのときの水深LXを船縁停止位置FNにセットする。5秒未満の時はステップS7からステップS4に移行する。
【0071】
スイッチ入力がなされた場合にはステップS4からステップS9に移行して
図9に示すスイッチ入力の処理を実行する。またスプール10の回転が検出された場合にはステップS5からステップS10に移行する。ステップS10では各動作モード処理を実行する。その他の指令あるいは入力がなされた場合にはステップS6からステップS11に移行してその他の処理を実行する。
【0072】
ステップS9のスイッチ入力処理では、
図9のステップS15で調整レバー5が操作されたか否かを判断する。ステップS16では、メニュースイッチSW1が3秒以上長押されたか否かを判断する。ステップS17では、その他のスイッチが操作されたか否かを判断する。その他のスイッチの操作にはメニュースイッチSW1の通常操作、決定スイッチSW2、及びメモスイッチSW3等の操作を含んでいる。
【0073】
調整レバー5が揺動操作されたと判断すると、ステップS15からステップS18に移行する。ステップS18では、調整レバー5の
段階SCを取り込む。調整レバー5には図示しないロータリエンコーダが設けられており、ロータリエンコーダの出力を取り込む。ステップS19では、調整レバー5が段階SC=0に操作されたか否かを判断する。段階SCが「0」の場合は、ステップS20に移行し、モータ12をオフし、ステップS16に移行する。段階SCが「0」ではない場合は、ステップS21に移行する。
【0074】
ステップS21では、メニュースイッチSW1の長押し操作により速度一定モードか張力一定モードのいずれか設定されたか否かを判断する。速度一定モードが設定されている場合は、ステップS21からステップS22に移行する。ステップS22では速度一定モードを実現するための
図10に示すスプール速度制御処理を行い、ステップS16に移行する。速度一定モードではなく張力一定モードが設定されている場合は、ステップS21からステップS23に移行する。ステップS23では、張力一定モードを実現するための
図12に示す電流制御処理を行い、ステップS16に移行する。
【0075】
メニュースイッチSW1が長押し操作されると、ステップS16からステップS24に移行する。ステップS24では、速度一定モードが設定されるか否かを判断する。速度一定モードが設定される場合は、ステップS24からステップS25に移行して張力
一定モードに設定し、ステップS17に移行する。張力一定モードが設定される場合は、ステップS24からステップS26に移行して
速度一定モードに設定し、ステップS17に移行する
他のスイッチ入力がなされると、ステップS17からステップS27に移行し、例えば、底からモードへの変更やその他のモードの設定等の他のスイッチ入力処理を行い、
図8に示すメインルーチンに戻る。
【0076】
ステップS22のスプール速度制御処理では、
図10のステップS31で調整レバー5により設定された
段階SC、スプールセンサ41の出力により算出されたスプール10の回転速度Vd、及びモータ速度検出部62で検出されたモータ12の回転速度MVを取り込む。ステップS32では、スプール10の回転速度Vdが
段階SCに応じた上限速度Vscの下限値Vsc1未満であるか否かを判断する。
【0077】
ステップS33では、スプール10の回転速度Vdが
段階SCに応じた上限速度Vscの上限値Vsc2を超えているか否かを判断する。ステップS34では、ドラグ機構44が動作していることを示すドラグフラグDFがすでにオンしているか否かを判断する。ステップS33で回転速度Vdが上限速度Vscの上限値Vsc2を超えていないと判断した場合は、スプール10の回転速度Vdが設定された段階SCの上限速度
Vscと実質的に同じであり、ドラグ機構44が動作していないので、ステップS34でドラグフラグDFがオンしている場合は、ドラグフラグDFをオフする。このドラグフラグDFは、後述するステップS49でオンする。また、タイマTをオンする。タイマTは、ドラグ機構44が動作し終わると所定時間(例えば、40秒から60秒の範囲)オンするタイマであり、後述するステップS46での判断に用いられる。ただし、ドラグ機構44が動作を開始するとステップS49でオフされる。
【0078】
回転速度Vdが下限値Vsc1未満の場合には、ステップS32からステップS40に移行する。ステップS40では、スプール10の回転速度Vdが規定回転速度VSよりも低下しているか否かを判断する。低下していない場合は、ステップS41に移行する。ステップS41では、現在の第1デューティ比D1を取り込む。この第1デューティ比D1は、回転データ記憶エリア52に設定が変更される都度記憶されている。また、
段階SC毎に最大値DUscと最小値DLscが回転データ記憶エリア52に設定されており、最初に各
段階SCに設定されたときには、例えばその中間の第1デューティ比D1=((DUsc+DLsc)/2)にセットされる。ステップS42では、現在の第1デューティ比D1が設定された
段階SCの最大値DUscを超えているか否かを判断する。第1デューティ比D1が設定された
段階SCの最大値DUscを超えている場合は、ステップS42からステップS43に移行して第1デューティ比D1に最大値DUscをセットする。第1デューティ比D1が設定された
段階SCの最大値DUscを超えていない場合には、ステップS42からステップS44に移行し、第1デューティ比D1を所定の増分DI(例えば1%)だけ増やしてステップS33に移行する。なお、最高
段階(SC=31)のデューティ比は、100%に設定されているが、それより前までの
段階(SC=1から30)では最大値DUscはデューティ比が85%以下に設定されている。
【0079】
回転速度Vdが規定回転速度VSよりも低下している場合は、ステップS40からステップS45に移行する。ステップS45では、規定回転速度VSと回転速度Vdとの差が調整レバー5の31個の段階において、一段階以上であるか否か、つまり、規定回転速度VSに対応する段階SCに対して一段階以上離れた段階SC−1の範囲の回転速度(例えば上限
速度Vscの下限値Vsc1と上限値Vsc2との間の回転速度)よりも回転速度Vdが低下しているか否かを判断する。スプール10の回転速度Vdが、規定回転速度VSよりも一段階以上低下している場合は、ステップS45からステップS46に移行する。ステップS46では、前述したタイマTがオンしているか否かを判断する。タイマTは、前述したように、一度ドラグ機構44が動作してから動作を終わるとステップS35でスタート(オン)するタイマである。ステップS46でタイマTがまだオンしていないと判断すると、ステップS46からステップS47に移行する。ステップS47では、スプール10の回転速度Vdが、規定回転速度VSよりも二段階以上低下しているか否かを判断する。これによって、ドラグ機構44が動作したか否かを判断する。このように、ドラグ機構44が動作しないと、そのときのスプール回転速度となる規定回転速度VSと実際のスプール10の回転速度Vdとを比較してドラグ機構44が動作したか否かを検出することによってドラグ機構44の動作を精度良く検出できる。
【0080】
タイマTがオンしていると判断すると、ステップS47をスキップしてステップS48に移行する。これは、一度ドラグ機構44が動作した後にドラグ機構44の動作状態が解消してから所定時間(タイマTの値)経過するまでに、スプール10の回転速度Vdが、規定回転速度VSに対応する段階SCよりも一段階低速側の段階SC−1の上限速度Vscよりも遅い場合は、ドラグ機構44が再度動作したと判断するためである。したがって、ドラグ機構44が動作して、そのドラグ機構44の動作状態が解消した後、所定時間
(タイマTの値)内は、通常のドラグ動作の判断よりも、規定回転速度VSに対する回転速度Vdの判断基準を一段階高速側でドラグ機構44の動作を判断している。これにより、魚が掛かった状態などで、いったん、ドラグ機構44が動作した後にドラグ機構44が動作しなくなった場合には、スプール10の回転速度Vdが少し(一段階)下がっただけで、ドラグ機構44が動作したと判断して、第1制御部64aによるモータ制御が行われる。これにより、いったんドラグ機構44が動作した後のドラグ機構44の動作に迅速に対応でき、電動リール100の発熱をさらに抑えることができる。
【0081】
スプール10の回転速度Vdが、規定回転速度VSに対応する段階よりも二段階低速側の段階SC−2の上限速度Vscよりも速い場合は、ドラグ機構44が動作していない(又は、ドラグ機構44が動作していても、高熱を発生する状況ではない)と判断し、ステップS46からステップS41に移行し、通常のスプール速度制御処理を実行する。スプール10の回転速度Vdが、規定回転速度VSに対応する段階SCよりも二段階低速側の段階SC−2の上限速度Vscよりも遅い場合は、ドラグ機構44が動作している(又は、ドラグ機構44が動作して、高熱を発生する状況である)と判断し、ステップS47からステップS48に移行する。ステップS48では、ドラグ機構44が動作していることを示すドラグフラグDFがすでにオンしているか否かを判断する。ドラグフラグDFがオンしていない場合は、ステップS49に移行し、ドラグフラグDFをオンする。また、タイマTをオフする。ドラグフラグDFがすでにオンしている場合は、ステップS49をスキップしてステップS50に移行する。ステップS50では、
図11に示すドラグ動作制御処理を行い、スイッチ入力処理に戻る。
【0082】
スプール10の回転速度Vdが上限値Vsc2を超えている場合には、ステップS33からステップS51に移行する。ステップS51では、現在の第1デューティ比D1を取り込む。この第1デューティ比D1は、ステップS41と同じである。ステップS52では、現在の第1デューティ比D1が設定された
段階の最小値DLsc未満であるか否かを判断する。第1デューティ比D1が設定された
段階の最小値DLsc未満である場合は、ステップS53に移行する。ステップS53では、第1デューティ比D1に最小値DLscをセットしてスイッチ入力処理に戻る。第1デューティ比D1が設定された
段階の最小値DLsc未満ではない場合には、ステップS52からステップS54に移行し、第1デューティ比D1を所定の減分DI(例えば1%)だけ減らしてスイッチ入力処理に戻る。
【0083】
ステップS50ドラグ動作制御処理では、
図11のステップS55で、現在のモータ12の規定回転速度VSが31段階の三段目の段階SC(3)の上限速度Vsc(3)を超えているかを判断する。これは、ドラグ機構44の動作状態が解消した際に、スムーズにスプールを巻き取り方向に回転させるためである。現在の規定回転速度VSが段階(3)の上限速度Vsc(3)を超えている場合は、ステップS55からステップS56に移行する。ステップS56では、現在のスプール
10の回転速度Vdに対応する段階SCの一段高速側の段階SC+1の上限速度Vscの下限値をスプール10の回転速度Vdの目標回転速度として設定する。したがって、ドラグ動作制御処理では、調整
レバー5によって調整された段階SCは無効になる。現在の規定回転速度VSが段階(3)の上限速度Vsc(3)よりも遅い場合は、ステップS55からステップS57に移行する。ステップS57では、三段目の段階SC(3)の上限速度Vscの下限値をスプールの回転速度Vdの目標回転速度として設定する。
【0084】
これらの目標回転速度の設定が終わるとステップS58に移行する。ステップS58、ステップS59、及びステップS61からステップS67は、
図10のスプール速度制御のステップS32、ステップS33、ステップS41からステップS44、及びステップS51からステップS54と同じ処理であるので説明を省略する。ステップS60では、ステップS56及びステップS57で設定された段階SCをリセットし、調整レバー5に調整される段階に戻す。
【0085】
図14から
図17にドラグ動作制御時の具体的な動作の一例を示す。なお、
図14から
図17に関しては、ドラグ機構44が動作している状態を「≠」で示し、ドラグ機構44が動作していない状態
を「=」で示す。
【0086】
図14では、通常のスプール速度制御において、ドラグ機構44が動作しない場合を示し、1行目は、調整レバー5によって段階10(SC=10)に設定された場合を示す。その後、掛った魚が釣糸を引き、負荷がかかると、2行目に示すように、例えば、スプール10の回転速度Vdが段階5の上限速度Vscにまで、落ちることがある。この場合、ドラグ機構44が動作していないので、モータ12の回転数も、段階5(SC=5)に対応する規定回転速度VSまで下がる。このとき、スプール速度制御によって、調整レバー5によって、設定された段階10(SC=10)となるようにモータ12が制御され、3行目に示すように、スプールの回転速度Vdを一定に保つように、制御される。
【0087】
一方、この実施形態では、
図15に示すように、掛った魚が釣糸を強く引き、負荷がかかる場合で、ドラグ機構44が動作した場合を示している。ここでは、調整レバー5は、上記と同様に、段階10(SC=10)に設定されている状態で、掛った魚が釣り糸を強く引き、負荷がかかり、スプール10の回転速度Vdが段階5に対応する回転速度まで降下したときに、ドラグ機構44が動作した場合を示している。このとき、モータ12の回転速度MVは、例えば、段階7(SC=7)にまで、低下している。
【0088】
本実施形態の制御がない場合(通常の速度制御)では、低下した速度、この場合、段階7に相当する回転速度MVを、設定された段階10の速度へと制御され、スプールの回転数、この場合では、段階5に相当する速度との速度差
が、さらに大きくなり、摩擦によって、大きな発熱が生じる。
【0089】
本実施形態では、モータ12の回転速度MV、この例では、段階7に相当する規定回転速度MVと、スプール10の回転速度Vd、この例では、段階5に相当する回転速度Vdと、の差が二段階以上であるか否かを判定し、規定回転速度MVよりも
スプール10の回転速度Vdが二段階以上低下すると、ドラグ機構44が動作しているものと判断し、ドラグ機構44の動作状態での制御を行う。具体的には、ドラグ機構44の動作状態が検出されると、第1制御部64aは、現在のスプール10の回転速度Vdに対応する段階(この場合段階5)よりも一段階高速側の段階(この場合段階6)の上限速度Vsc(6)となるようにモータ12を制御する。すなわち、スプール10の回転速度Vdが段階5に対応する回転速度の場合、スプール10が段階6の回転速度となるようにモータ12を制御する。
【0090】
このようにモータ12を制御することにより、速度差を最小限にして、ドラグ機構44の発熱を最小限に抑えるとともに、ドラグ機構が動作状態(摩擦滑り状態)から、ドラグ機構の動作しない状態(摩擦滑りが解消した状態)への復帰を助長させることができるので、さらに、発熱を抑えることができるという効果を発揮する。このような制御によって、モータ12の回転速度MVを減速比で乗算した規定回転速度と検出回転速度が同じになる、つまりは、ドラグ機構44が動作しない状態となると、ドラグ動作制御を終了して、第2制御部64bによる従来の制御に移行し、調整レバー5によって設定された段階、この場合、段階10(SC=10)の回転になるように、制御する。
【0091】
また、上記の
図15の制御では、ドラグ機構44が動作している第1制御部64aで制御している状態から、ドラグ機構44が動作しなくなった第2制御部64bで制御している状態に移行した場合を説明したが、
図16では、ドラグ機構44が動作している第1制御部64aで制御している状態から、ドラグ機構44が動作しなくなった第2制御部64bで制御している状態に移行した後、再び、所定時間
(タイマTの値)内に、負荷がかかった場合を示すものである。
【0092】
この場合、モータ12の規定回転速度VSよりも二段階ではなく一段階スプール10の回転速度Vdが低下しても、ドラグ機構44が動作したことをドラグ動作検出部66が検出するように制御されている。具体的には、
図16は、重複の説明を避けるため、
図15と同様、調整レバー5は、段階10(SC=10)に設定されている状態で、掛った魚が釣糸を強く引き、負荷がかかり、モータ12の回転数が段階7に対応する速度まで低下し、また、スプール10の回転速度Vdが段階5に対応する回転速度まで低下して、ドラグ機構44が動作した場合を示している状態から始める。
図15と同様に、モータ12の規定回転速度VSは、この例では、段階7に相当し、スプール10の回転速度Vdは、段階5に相当するので規定回転速度VSである。したがって、回転速度Vdが二段階以上低下していると判断し、ドラグ機構44が動作しているものと判断し、ドラグ機構44の動作状態での制御を行う。
【0093】
ドラグ機構44の動作状態が検出されると、上述と同様に、第1制御部64aは、現在のスプール10の回転速度Vdに対応する段階(この場合段階5)よりも一段階高速側の段階(この場合6)の上限速度Vsc(6)となるようにモータ12を制御する。その後、ドラグ機構44の動作状態が解消される
。この場合では、段階8に相当する規定回転速度VSと回転速度Vdとが実質的に同じになると、ドラグ動作制御を一旦終了して、第2制御部64bによる従来の制御に移行する。これにより、調整レバー5によって設定された段階、この場合、段階10(SC=10)の回転になるようにモータ12を制御する。
【0094】
しかしながら、所定時間
(タイマTの値)内に、再び負荷がかかり、スプール10の回転速度Vdが低下した場合、モータ12の規定回転速度VSが段階9に相当する回転速度であり、スプールの回転速度Vdが段階8に相当する回転速度
であり、規定回転速度VSと回転速度Vdとの差が一段階であっても、第1制御部64aは,ドラグ機構44が動作しているものと判断し、ドラグ動作状態での制御を行う。実際には、1回の釣り上げで、ドラグ機構44のドラグ動作状態が、1回だけであることは珍しく、複数回、ドラグ機構44がドラグ動作状態となることが多い。このような場合であっても、効果的にドラグ機構44の発熱を抑えることができる。
【0095】
図15、
図16は、いずれも、ドラグ機構44がドラグ動作状態であっても、スプール10が糸巻き取り方向に回転している場合を説明した。
図17においては、さらに、大きな負荷(釣った魚の引き力)があった場合のドラグ動作状態での制御について説明する。
【0096】
図15及び
図16と同様に、モータ12の規定回転速度VSが、この例では、段階7に相当する回転速度であり、スプール10の回転速度Vdが段階5に相当する回転速度である場合、ドラグ機構44が動作しているものと判断し、ドラグ動作状態での制御を行う。その後、一旦は、段階7に相当する規定回転速度VSとなり、規定回転速度VSとスプール10の回転速度Vdとが同じになると、ドラグ動作制御を終了する。しかし、再び、より強い負荷がかかり、スプール10の回転速度Vdが、段階3に相当する速度まで低下したとき、第1制御部64aは、現在のスプール10の回転速度Vdに対応する段階(この場合段階3)よりも一段階高速側の段階(この場合4)の上限速度Vsc(4)となるようにモータ12を制御する。
図17の例では、さらに、負荷が大きくなり、スプール10は、段階2に相当する速度へと低下し、それに伴って、第1制御部64aは、さらに、モータの回転数を上限速度Vsc(3)となるようにモータ12を制御する。さらに、
図17の例では、負荷が大きくなり、スプールは、段階1に相当する速度へと低下し、また、スプールの回転が0となり、さらに、逆転する状況にまでになっている。
【0097】
このような場合においては、モータの回転速度MVを所定以下、この場合では、モータ12の規定回転速度VSを上限速度Vsc(3)以下に低下させて、スプール10の回転に追従させると、ドラグ動作状態が解消されたとしても、再び、設定速度(この場合、段階10)に復帰させるのは、難しく、モータ12を停止させてしまうと、その起動には、極めて大きなトルクが必要となることから、第1制御部64aは、ドラグ動作状態の制御であっても、モータ12の回転速度MVを上限速度Vscの下限を設けている。
図17の実施例の場合では、モータ12の規定回転速度VSが上限速度Vsc(3)の下限値に設定されている。
【0098】
ステップS23のモータ電流制御処理では、
図12のステップS71で調整レバー5により設定された
段階SCと、電流検出部70aの検出結果(トルク)を糸巻径によって乗算して得られる張力Qdと、を取り込む。この張力Qdは、回転データ記憶エリア52に記憶される。ステップS72では、張力Qdが
段階SCに応じた上限張力Qsの下限値Qsc1未満か否かを判断する。ステップS73では、張力Qdが
段階SCに応じた上限張力Qsの上限値Qsc2を超えているか否かを判断し、いずれの判断も「NO」のときはスイッチ入力処理に戻る。
【0099】
なお、張力制御を行う際に、
段階SC毎に上限張力
Qsの下限値Qsc1及び上限値Qsc2を設けたのは、速度一定モードと同様に両張力Qsc1,Qsc2の間で張力が変動している場合にはデューティ比が変化せず、デューティ比が頻繁に変動するワウリングが生じなくなり、フィードバック制御が安定するからである。
【0100】
張力Qdが下限値Qsc1未満の場合には、ステップS72からステップS74に移行する。ステップS74では、現在の第2デューティ比D4を取り込む。この第2デューティ比D4は、回転データ記憶エリア52に設定が変更される都度記憶されている。ステップS75では、第2デューティ比D4を所定の増分DI(例えば1%)だけ増やしてステップS
73に移行する。これを張力Qdが下限値Qsc1を超えるまで続ける。
【0101】
張力Qdが上限値Qsc2を超えている場合には、ステップS73からステップS76に移行して現在の第2デューティ比D4を取り込む。この第2デューティ比D4もステップS74と同様である。ステップS77では、第2デューティ比D4を所定の減分DI(例えば1%)だけ減らしてスイッチ入力処理に戻る。これを張力Qdが上限値Qsc2を下回るまで続ける。
【0102】
ステップS10の各動作モード処理では、
図13のステップS81でスプール10の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41のいずれの磁気センサが先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール10の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS81からステップS82に移行する。ステップS82では、スプール回転数が減少する毎にスプール回転数から糸長データ記憶エリア51に記憶されたデータを読み出して水深(放出された糸長)LXを算出する。この水深LXがステップS2の表示処理で表示される。ステップS83では、得られた水深LXが棚又は底位置に一致したか、つまり、仕掛けが棚又は底に到達したか否かを判断する。棚又は底位置は、仕掛けが棚又は底に到達したときにメモスイッチSW3を押すことで記憶部46の表示データ記憶エリア50にセットされる。ステップS84では、学習モード等の他のモードか否かを判断する。
【0103】
水深が棚位置又は底位置に一致するとステップS83からステップS85に移行し、仕掛けが棚又は底に到達したことを報知するためにブザー47を鳴らす。他のモードの場合には、ステップS84からステップS86に移行し、指定された他のモードを実行する。他のモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
【0104】
スプール10の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS81からステップS87に移行する。ステップS87では、スプール回転数から糸長データ記憶エリア51に記憶されたデータを読み出して水深LXを算出する。この水深LXがステップS2の表示処理で表示される。
【0105】
ステップS88では、船縁停止位置に到達したか否かを判断する。船縁停止位置FNに到達するとステップS88からステップS89に移行する。ステップS89では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー47を鳴らす。ステップS90では、モータ12をオフする。これにより魚
が釣れたときや仕掛けを回収して餌を交換するときに、取り込みやすい位置に魚や仕掛けが配置される。船縁停止位置まで巻き取っていない場合にはメインルーチンに戻る。
【0106】
ここでは、モータ12の回転速度MVに減速比Rを乗算した規定回転速度MV×Rとスプール10の回転速度Vd(検出回転速度)とを比較してドラグ機構44の動作状態を検出するので、ドラグ機構44の動作状態を精度良く検出できるようになる。
【0107】
また、ドラグ機構44が動作すると、回転速度Vdよりも一段階高速側の上限速度Vsc(+1)となるようにモータ12が制御される。このため、モータ12の回転速度が低下し、ドラグ機構44での摩擦滑りの回転速度差が小さくなり、ドラグ機構44の発熱及びモータ12の発熱が低減し、電動リール100の発熱を抑えることができる。
【0108】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0109】
(a)前記実施形態では、張力一定制御と、速度一定モードとを切り換え可能にしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、速度一定制御だけを行ってもよい。
【0110】
(b)前記実施形態では、モータ12のスプールの内部に収納したが、モータをスプール外に装着した電動リールにも本発明を適用できる。
【0111】
(c)前記実施形態では、モータ操作部材として調整レバー
5を例示したが本発明はこれに限定されない。例えば、押しボタンの押圧操作時間等により段階を増加及び減少してもよい。
【0112】
(d)前記実施形態では、ブラシレスモータを使用して逆起電流によって回転位相を検出し、モータ12の回転速度を検出したが、本発明はこれに限定されない。モータ12の回転速度をセンサによって検出してもよい。
【0113】
(e)前記実施形態では、ドラグ機構44が動作状態であると判断すると、モータ12の出力を一段階増加させたが、増加の割合
はこれに限定されない。
【0114】
(f)前記実施形態では、スプール10の回転速度Vdに対応する段階が低い段階(例えば、段階3以下の段階)のとき、モータ12の回転をスプール10の回転に追随させることなく、モータ12が最低回転数を維持するように制御してもよい。この場合、
図17に示すように、ドラグ機構44が動作して、スプール10の回転速度Vdに対応する段階が3以下になったとき、モータ12の回転速度MVをスプール10の回転速度Vdに対応する段階よりも一段階増加させるのではなく、モータ12の回転速度を段階3に対応する規定回転速度となるように制御している。これにより、ドラグ機構44が動作しなくなくまでの復帰動作が容易になる。この場合、スプール10が逆転(−1)になってもモータ12は最低回転速度(段階3)で糸巻取方向に回転する。
【0115】
(g)前記実施形態では、規定回転速度VSとスプール10の回転速度V
dの比較結果及び規定回転速度VSと回転速度Vdとの差に応じてモータ12を制御したが、本発明はこれに限定されない。
図18のステップS100では、モータ12の回転速度MVに減速比R(1/500)を乗算した回転速度(MV×R)、すなわち、ドラグ機構44が動作していないときのスプール10の規定回転速度V
Sと、スプールセンサ41の出力によって検出された
回転速度Vd(検出回転速度
)との差に応じてドラグ機構44が動作したことを検出している。
図18のステップS91からステップS95は、概ね
図10のステップS31からステップS35と同様である。なお、この実施形態では、タイマ
Tが不要なため、ステップS95ではタイマ
Tのオン(スタート)処理は行わない。また、ステップS100からステップS104及びステップS110からステップS113も
図10に示す処理と同様な処理を行う。ステップS100でスプール10の回転速度Vdが規定回転速度MV/Rよりも低いとき、ステップS107に移行してドラグフラグDFがオンしているか否かを判断する。ステップS108及びステップS109は、ステップS4
9及びステップS
50と同様である。ただし、ステップS108でタイマ
Tのオフ処理は行わない。このような実施形態では、実際に検出されたモータ12の回転速度によってドラグ機構44が動作したか否か、すなわち摩擦滑りが生じたか否かを判断している。このためドラグ機構44の動作を精度良く検出できる。特に、モータ12がブラシレスモータの場合、モータの回転子17の回転位相を検出可能なため、別にモータの回転速度を検出するセンサを設けることなく、モータ12の回転速度を検出可能である。
【0116】
また、速度ではなく、電流検出部70aで検出されたモータ12に流れる電流の急激な上昇によってドラグ機構44が動作したことを検出してもよい。さらにドラグ機構44に設けられた温度センサ29の検出結果によってドラグ機構4
4が動作したか否かを判断してもよい。
【0117】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0118】
(A)制御システム90は、リール本体1と、リール本体1に回転可能に設けられたスプール10と、スプール10を駆動するモータ12と、スプール10の釣り糸の繰り出し方向に作用する回転負荷を調整可能なドラグ機構44と、を有する電動リール100のモータ12を制御する装置である。制御システム90は、スプール速度検出部68と、ドラグ動作検出部66と、第1制御部64aと、を備える。スプール速度検出部68は、スプールの回転速度Vdを検出する。ドラグ動作検出部66は、調整された回転負荷以上の釣り糸繰り出し方向への回転負荷がスプール10に作用したときにドラグ機構44の動作を検出する。第1制御部64aは、ドラグ動作検出部66がドラグ機構44の動作を検出すると、モータ12の回転速度MVに対して一義的に定まるスプールの規定回転速度が、スプール速度検出部68で検出された
回転速度Vd(検出回転速度
)よりも所定の差だけ速くなるようにモータ12を制御する。
【0119】
この制御システム90では、ドラグ機構44が動作し、モータ12の回転速度MVに対して例えば減速比(1/50)分減速したスプール10の上限速度Vscに対して検出された実際のスプール10の回転速度Vdが遅くなると、規定回転速度が実際に検出された回転速度Vdよりも所定の差だけ速くなるようにモータ
12が制御される。これによって、スプール10に回転負荷が作用してドラグ機構44が動作した場合、ドラグ動作時の上限速度Vscを維持するようにモータ12が制御されるのではなく、回転速度Vdよりも所定の差だけ速い上限速度Vscとなるようにモータ12が制御される。ここでは、ドラグ機構44が動作すると、スプール10の回転速度Vdよりも所定の差だけ速い上限速度Vscとなるようにモータ12が制御される。このため、モータ12の回転速度が低下し、ドラグ機構44での摩擦滑りの回転速度差が小さくなり、ドラグ機構44の発熱及びモータ12の発熱が低減し、電動リール100の発熱を抑えることができる。
【0120】
(B)制御システム90は、上限速度Vscと回転速度Vdとを比較する回転速度比較部67をさらに備えもよい。ドラグ動作検出部66は、上限速度Vscよりも回転速度Vdが遅いとき、ドラグ機構44が動作したことを検出する。この場合には、モータ12の回転速度MVに対応する上限速度Vscとスプールの回転速度Vdとを比較してドラグ機構44の動作状態を検出するので、ドラグ機構44の動作状態を精度良く検出できる。
【0121】
(C)制御システム90は、モータ12の回転速度MVを検出するモータ速度検出部62を、さらに備えてもよい。第1制御部64aは、モータ速度検出部62の検出結果に基づいた上限速度Vscに応じて、モータ12を制御する。この場合には、モータ12の回転速度MVを検出できるので、検出され
たモータ12の回転速度MVに基づいた上限速度Vscによってモータ12を制御できる。このため、第1制御部64aによるモータ制御を精度良く行える。
【0122】
(D)電動リール100は、モータ12の回転を減速して伝達する遊星歯車機構43を有してもよい。上限速度Vscは、モータ12の回転速度MVに遊星歯車機構43の減速比を乗算して得られる回転速度である。
【0123】
(E)遊星歯車機構43は、第1太陽ギア71aと、第1リングギア71bと、複数の第1遊星ギア71cと、第1キャリア71dと、を有してよい。第1太陽ギア71aは、モータ12の回転軸18に設けられ、回転軸18と一体回転する。第1リングギア71bは、スプール10の内周面に設けられる。複数の第1遊星ギア71cは、第1太陽ギア71aと第1リングギア71bとに係合する。第1キャリア71
dは、複数の第1遊星ギア71cをそれぞれ回転可能に保持し、モータ12の回転軸18に対して回転可能に設けられる。第1キャリア71dは、ドラグ機構44に接続されている。
【0124】
この場合には、第1キャリア71dは、ドラグ機構44に接続されて、例えば糸繰り出し方向の回転が規制される。ドラグ機構44が動作していないときは、第1キャリア71dは回転せずに、モータ12の回転が第1太陽ギア71a、
第1遊星ギア71c及び第1リングギア71bを介してスプール10に伝達される。また、ドラグ機構44が動作すると、第1キャリア71dは、糸繰り出し方向に回転して、モータ12の回転がさらに減速してスプール10に伝達される。ここでは、遊星歯車機構43によってモータ12の回転をスプール10に伝達しているので、大きな減速比を得ることができるとともに、ドラグ機構44が作動したときに、遊星歯車機構43に無理な力が作用しにくい。
【0125】
(F)遊星歯車機構43は、第1太陽ギア71aと、第1リングギア71bと、複数の第1遊星ギア71cと、第1キャリア71dと、第2太陽ギア72aと、第2リングギア72bと、複数の第2遊星ギア72cと、第2キャリア72dと、を有してもよい。第1太陽ギア71aは、モータ12の回転軸18に設けられ、回転軸18と一体回転する。第1リングギア71bは、スプール10の内周面に設けられる。複数の第1遊星ギア71cは、第1太陽ギア71aと第1リングギア71bとに係合する。第2太陽ギア72aは、第1キャリア71dとともに回転する。第2リングギア72bは、スプール10の内周面に設けられる。複数の第2遊星ギア72cは、第2太陽ギア72aと第2リングギア72bとに係合する。第2キャリア72dは、複数の第2遊星ギア72cをそれぞれ回転可能に保持し、モータ12の回転軸18に対して回転可能に設けられる。第2キャリア72dは、ドラグ機構44に接続されている。
【0126】
この場合には、第2キャリア72dは、ドラグ機構44に接続されて、例えば糸繰り出し方向の回転が規制される。ドラグ機構44が動作していないときは、第2キャリア72dは回転せずに、モータ12の回転が第1太陽ギア71a、第1遊星ギア71c、第1キャリア71d、第2太陽ギア72a、第2遊星ギア72cを介して第2リングギア72bを介してスプール10に伝達される。また、ドラグ機構44が動作すると、第2キャリア72dは、糸繰り出し方向に回転して、モータ12の回転がさらに減速してスプール10に伝達される。ここでは、直列接続された2つの遊星歯車機構によってモータ12の回転をスプール10に伝達しているので、さらに大きな減速比を得ることができるとともに、ドラグ機構44が作動したときに、遊星歯車機構43に無理な力が作用しにくい。
【0127】
(G)制御システム90は、上限速度Vscを、複数段階に設定可能な調整レバー5をさらに備えてもよい。第1制御部64aは、上限速度Vscよりも回転速度Vdが遅いとき、回転速度Vdに対応する段階よりも少なくとも一つ速い段階SC+1の上限速度Vsc(+1)になるようにモータ12を制御する。この場合には、ドラグ機構44が動作してスプール10の回転速度Vdが遅くなると、調整レバー5で設定された段階SCの上限速度Vscではなく、回転速度Vdに対応する段階SCよりも少なくとも1つ速い段階SC(+1)の上限速度Vsc(+1)になるようにモータ12が制御される。このため、ドラグ機構44が動作する前よりもモータ12の回転速度が遅くなる。また、ドラグ機構44での摩擦滑りの回転速度差が小さくなる。これにより、ドラグ機構44の発熱及びモータ12の発熱が低減し、電動リール100の発熱を抑えることができる。
【0128】
(H)上限速度Vscと回転速度Vdとが実質的に同じとき、回転速度Vdが調整レバー5で設定された上限速度Vscとなるようにモータ12を制御する第2制御部64bをさらに備えてもよい。この場合には、第2制御部64bは、スプール10の回転速度Vdを複数の段階SCの上限速度Vscとなるように、複数の段階SCで速度一定制御を行う。
【0129】
(I)ドラグ動作検出部66は、回転速度Vdが、調整レバー5で設定された段階SCよりも少なくとも一つ低速側の段階SC(−1)の規定回転速度VS(−1)よりも遅いとき、ドラグ機構44が動作したことを検出する。この場合には、ドラグ動作検出部66が、回転速度Vdが設定部で設定された段階よりも少なくとも一つ低速側の段階の規定回転速度VS(−1)よりも遅いときにドラグ機構44の動作を検出するので、回転速度Vdが規定回転速度VS(−1)よりも遅いときに検出する場合に比べて誤検出が減少する。
【0130】
(J)ドラグ動作検出部66は、回転速度Vdが、調整レバー5で設定された段階よりも二つ低速側の段階SC(−2)の規定回転速度VS(−2)よりも遅いとき、ドラグ機構44が動作したことを検出する。この場合には、一段低速側の段階の上限速度Vsc(−1)との比較の場合よりも検出タイミングが遅れるおそれがあるが、ドラグ機構44の動作の検出をさらに精度よく行える。
【0131】
(K)回転速度Vdが規定回転速度VSよりも遅い状態から回転速度Vdが規定回転速度VSと同じ状態に戻ったときから所定時間
(タイマTの値)経過するまでに、回転速度Vdが、回転速度Vdに対応する段階よりも一つ低い段階の規定回転速度VS(−1)より遅くなったとき、第1制御部64aはモータ12を制御してもよい。この場合には、魚が掛かった状態などで、いったん、ドラグ機構44が動作した後にドラグ機構44が動作しなくなった場合には、スプール10の検出回転速度が少し下がっただけで、ドラグ機構44が動作したと判断して、第1制御部64aによるモータ12の制御が行われる。これにより、いったんドラグ機構44が動作した後にまだ発熱が残っている状態でドラグ機構44の動作に迅速に対応でき、電動リールの発熱をさらに抑えることができる。
【0132】
(L)第1制御部64aは、回転速度Vdが所定以下になったとき、回転速度
Vdに対応する
段階よりも少なくとも一つ高い
段階の一定の規定回転速度でモータ12を制御してもよい。この場合には、ドラグ機構44の動作しているときに、回転速度Vdが所定以下に遅くなったとしても、モータ12が一定の規定回転速度VSに制御されるので、ドラグ機構44のドラグ動作状態が解消されたとき、スムーズにモータ12の制御を行える。また、スプール10が糸繰り出し方向に回転した場合でも、同様に、スムーズなモータ12の制御を行えるとともに、ドラグ機構の動作状態の解消を促す作用もある。