特許第6166609号(P6166609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166609
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】蒸気を用いた庫内冷蔵食品の加熱方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/16 20060101AFI20170710BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20170710BHJP
   F24C 1/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   A47J27/16 D
   F25D11/00 101Y
   F24C1/00 340Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-150221(P2013-150221)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-19839(P2015-19839A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−339454(JP,A)
【文献】 特開2006−170612(JP,A)
【文献】 特開2010−249327(JP,A)
【文献】 特開2009−047417(JP,A)
【文献】 特開2009−106378(JP,A)
【文献】 特開平09−313348(JP,A)
【文献】 特開2006−258369(JP,A)
【文献】 特開2012−002462(JP,A)
【文献】 米国特許第04722321(US,A)
【文献】 特開昭61−041419(JP,A)
【文献】 特開2006−105592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/16
F24C 1/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配膳車の庫内で約0〜10℃に冷蔵された食品を、蒸気を供給しながら加熱する方法であって、庫内で冷蔵された食品に対して加熱を行いつつ、蒸気を段階的に増加して供給する加熱ステップと、加熱ステップの終期で庫内を所定時間、所定の最高温度帯に維持した後、食品に対する加熱を停止し、蒸気だけを所定時間継続して供給するクールダウンステップとを有することを特徴とする、蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法。
【請求項2】
加熱ステップで、当初は食品の加熱だけを所定時間行った後、該加熱を継続しつつ、蒸気を段階的に増加して供給することを特徴とする、請求項1記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法。
【請求項3】
クールダウンステップで、蒸気の供給量を段階的に減少させることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法。
【請求項4】
加熱ステップで、蒸気の供給を断続的に行うことを特徴とする、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法。
【請求項5】
加熱ステップで、蒸気の供給を庫内温度が70〜80℃の範囲内で開始することを特徴とする、請求項2〜請求項4のうちのいずれか一項記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法。
【請求項6】
加熱ステップで、庫内の食品の中心温度が75℃以上で1分以上加熱されるように、庫内温度を所定時間、所定の最高温度帯に維持することを特徴とする、請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法。
【請求項7】
加熱ステップで、庫内の食品の中心温度を75℃以上とするための庫内の最高温度帯が100〜130℃の範囲である、請求項6記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法。
食品の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配膳車等の庫内に収容された冷蔵食品に蒸気を供給しつつ、加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配膳車等の庫内をヒータで加熱することにより、庫内に収容した食品を温めるための加熱装置が知られている。該加熱装置は、具体的には、複数のヒータと、各ヒータへの通電を個別に制御するための制御手段とを備え、該制御手段によって、庫内を昇温するときには全てのヒータに通電し、庫内を一定温度に維持するときには一部のヒータにのみ通電し、庫内の温度を低下させるときには全ヒータへの通電を停止するものであった。
【0003】
また、飽和蒸気を発生する飽和蒸気発生装置と、前記飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を発生する過熱蒸気発生装置と、前記過熱蒸気を受け入れて処理に供する過熱蒸気処理装置と、前記過熱蒸気発生装置の発熱体に給電する高周波電源と、前記過熱蒸気処理装置の検出温度が処理部目標温度になるように前記飽和蒸気の流量を制御する第1フィードバック制御手段と、前記過熱蒸気発生装置の前記発熱体の温度が発熱体目標温度になるように前記高周波電源の出力を制御する第2フィードバック制御手段等を備えた過熱蒸気処理システムも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−47417号公報
【特許文献2】特開2009−106378号公報
【特許文献3】特開2010−249327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術のうち、前者は庫内の加熱温度の上昇を確保しつつ、短時間でのクールダウンを図るために、複数のヒータへの通電を制御するものであるが、このように庫内を単に加熱するだけでは、庫内の食品が乾燥してその食感や味を損ねるという問題があった。特に、日本人の主食である御飯においては、乾燥によってパサパサの食感となり、味わいも悪くなるのが実情であった。
【0006】
一方、後者の場合は、庫内への蒸気供給を前提とするものではあるが、フィードバック制御によって、熱効率の向上等を図ることを主目的としており、蒸気供給を行った際の庫内の結露防止等については考慮されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、配膳車等の庫内に収容された冷蔵食品に蒸気を供給しつつ、加熱する場合において、庫内の冷蔵食品に対して必要な加熱を行いつつ、これに伴う食品の乾燥を防止すると共に、上記蒸気供給に伴う結露の問題をも解消する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、配膳車の庫内で約0〜10℃に冷蔵された食品を、蒸気を供給しながら加熱する方法であって、庫内で冷蔵された食品に対して加熱を行いつつ、蒸気を段階的に増加して供給する加熱ステップと、加熱ステップの終期で庫内を所定時間、所定の最高温度帯に維持した後、食品に対する加熱を停止し、蒸気だけを所定時間継続して供給するクールダウンステップとを有することを特徴とする蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法である。
【0009】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法について、その加熱ステップで、当初は食品の加熱だけを所定時間行った後、該加熱を継続しつつ、蒸気を段階的に増加して供給することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法について、クールダウンステップで、蒸気の供給量を段階的に減少させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法について、加熱ステップで、蒸気の供給を断続的に行うことを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の本発明は、前記請求項2〜請求項4のうちのいずれか一項記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法について、加熱ステップで、蒸気の供給を庫内温度が70〜80℃の範囲内で開始することを特徴とするものである。すなわち、加熱ステップにおける蒸気の供給を庫内温度70℃未満で開始した場合には、庫内における結露の進行が早い傾向があり、また蒸気の供給を、80℃を超えた段階で開始した場合には庫内の乾燥が進行し過ぎる傾向があることから、70〜80℃の範囲がより好適である。
【0013】
請求項6記載の本発明は、前記請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法について、加熱ステップで、庫内の食品の中心温度が75℃以上で1分以上加熱されるように、庫内温度を所定時間、所定の最高温度帯に維持することを特徴とするものである。
【0014】
請求項7記載の本発明は、前記請求項6記載の蒸気を用いた配膳車における庫内冷蔵食品の加熱方法について、加熱ステップで、庫内の食品の中心温度を75℃以上とするための庫内の最高温度帯を100〜130℃の範囲とすることを特徴とするものである。すなわち、庫内の最高温度が100℃未満の場合には、庫内の食品の中心温度を75℃以上とするのに時間がかかり過ぎる一方、庫内の最高温度が130℃を超える場合には庫内の食品が加熱され過ぎ、また乾燥が起こり易くなることから、最高温度帯を100〜130℃とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る蒸気を用いた庫内冷蔵食品の加熱方法によれば、配膳車等の本体内で冷蔵されている庫内の食品を乾燥させることなく、適切に加熱することができる。そのため、病院に入院中の患者や老人ホームの入居者等に上記食品として提供される御飯等の食感や味を損なうことがなく、しかも蒸気供給に伴う配膳車本体内の結露の発生を有効に防止することができるという格別の効果を得られる。
【0016】
また、本発明によれば、冷蔵食品を最終的にその中心温度が75℃で少なくとも1分間確実且つ容易に加熱することができ、しかも上述した通り、供給する適度の蒸気によって御飯等の食感や味を損なうこともないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が使用される配膳車の一例を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を配膳車内に収容された冷蔵食品の加熱に適用した場合の実施形態について説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1に示す配膳車1は、本発明に係る冷蔵食品の加熱方法が使用されるものの一例であって、中央壁2aによって前後二室2b・2cに分けられた配膳車本体2と、配膳車本体2の下側に取り付けられた自在輪3並びに駆動輪4と、配膳車本体2の前後外面2f・2gにそれぞれ取り付けられた左右方向に伸びる略棒状のハンドル9を備えている。
【0020】
配膳車本体2は、前述した通り、前後二室2b・2cに分けられ、これらの部屋2b・2cの中央には仕切り壁部材5が上下方向に列設されて仕切壁が構成され、上下に隣り合う仕切り壁部材5間にはトレイ通路6が形成されており、また各トレイ通路6と同じ高さ位置には、中央壁2aと両側壁2dに、互いに対向するトレイ受け7が取り付けられ、トレイ通路6から差し込まれたトレイTの両側縁がそれぞれトレイ受け7によって支持される。
【0021】
前述した配膳車1の前後二室2b・2cには当該配膳車1に設けられた冷却装置(図示せず)によって冷気が供給され、該冷気によって前記各トレイT上の食品が配膳前の所定時間まで冷蔵され、そして、前記中央壁2aの両側の庫内2eに蒸気が供給されつつ、加熱が行われるようになされている。この場合、蒸気供給は当該配膳車1に設けられた蒸気発生装置(図示せず)によって行われ、また該蒸気の供給経路に設けられた加熱ヒータ(図示せず)によって、食品の加熱が適宜行われる。
【0022】
次に、前述した配膳車1において、本発明に係る蒸気を用いた庫内冷蔵食品の加熱方法を使用する場合について説明すると、先ずその基本は、配膳車1の庫内2eで冷蔵された食品に、蒸気を供給しながら加熱する方法であって、庫内2eで冷蔵された食品に対して加熱を行いつつ、蒸気を段階的に増加して供給する加熱ステップS1と、加熱ステップS1の終期で庫内を所定時間、所定の最高温度帯に維持した後、食品に対する加熱を停止し、蒸気だけを所定時間継続して供給するクールダウンステップS2とを有することを特徴とするものである。
【0023】
そして、より詳細には、図2に示すように、配膳車1の庫内2eに収容されたトレイT上の冷蔵食品が0〜10℃の庫内温度状態下において、これを開始点M0として、配膳車本体2の庫内2eに収容されたトレイT上の食品に対して、先ず加熱だけを所定時間行って庫内温度が約70℃になった時点で、加熱を更に継続しつつ、蒸気をA1〜A3へと段階的に増加させながら供給し、庫内温度を最終的に100〜130度範囲の最高温度域M1に達するようにする。ここまでが前記加熱ステップS1であって、このステップS1における加熱ヒータの運転は本実施形態では、パルス制御によって断続的に行い、配膳時間から逆算して食品が所定時間ごとに所定温度に段階的に上昇していくように制御するのである。また、この加熱ステップにおいて、前記蒸気の供給は、通常、庫内2eが70〜80℃の範囲内で開始する。
【0024】
次に、クールダウンステップS2では、前記最高温度帯M1を出発点として前述した通り、加熱を停止し、蒸気だけを供給するのであるが、本実施形態では蒸気の供給量をA4〜A5へと段階的に減少させ、庫内温度が約70℃になった時点M2で蒸気供給を停止し、クールダウンステップS2が終了する。
【0025】
以上のような蒸気供給を伴う加熱方法によって、庫内食品はその中心温度が少なくとも75℃で1分以上加熱されることとなり、また該加熱に伴う食品の乾燥も防止される。
【0026】
なお、前記加熱ステップS1の所要時間は35〜45分程度が好ましく、クールダウンステップS2の所要時間は15〜25程度が好ましいが、各ステップS1・S2における具体的な所要時間は対象食品によって個別に設定される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、配膳車等の分野において、庫内に冷蔵されている食品を乾燥させずに、食感を損なうことなく加熱することができるため、幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0028】
1 配膳車
2 配膳車本体
2a 配膳車本体の中央壁
2b・2c 配膳車本体内の分割室
5 仕切壁部材
6 トレイ通路
7 トレイ受け
T トレイ
図1
図2