(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被制御流体の流入部に接続された流入側チャンバと被制御流体の流出部に接続された流出側チャンバの間の流路に設けられた絞り部と、前記流出側チャンバに形成された弁座を有する弁本体部と、
前記流入側チャンバに配置され該流入側チャンバを被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し、前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧しかつ加圧手段によって常時一定圧力で前記第1チャンバ側に加圧される第1ダイヤフラムと、
前記流出側チャンバに配置され該流出側チャンバを被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画し、前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧しかつ前記弁座に対し進退動する弁体を備えた第2ダイヤフラムを有し、
前記第2チャンバに前記第1ダイヤフラムとともに進退動する第1可動部が形成され、かつ
前記第4チャンバに前記第2ダイヤフラムとともに進退動する第2可動部が形成されているとともに、
前記第2チャンバと第4チャンバとの間には湾曲する接続チャンバが形成されていて、該接続チャンバに前記第1可動部及び第2可動部と係合して一の可動部の変動を他の可動部に伝達する複数個の球部材を含む中間伝達部材が配置されていて、前記絞り部前後の圧力変動による前記第1ダイヤフラム及び前記第2ダイヤフラムの進退動により前記弁体を前記弁座に対して進退動させ被制御流体の流量を一定に保持するようにした
ことを特徴とする定流量弁。
前記第1可動部を第1ダイヤフラムに対して前後方向に直動するように規制する第1規制部と、前記第2可動部を第2ダイヤフラムに対して前後方向に直動するように規制する第2規制部とを有する請求項1に記載の定流量弁。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程では、シリコンウエハ(基板)表面を希釈した薬液で洗浄する処理等が行われる。これは、パーティクルや金属汚染物、酸化膜等を除去することを目的としており、複数種の薬液や純水を適当な比率で混合した処理液が使用される。処理液には、APM(アンモニアと過酸化水素水と純水)、HPM(塩酸と過酸化水素水と純水)、DHF(フッ酸と純水)、SPM(硫酸と過酸化水素水)等が挙げられる。例えば、この洗浄処理が枚葉式の装置で実施される場合、水平に保持されて回転しているウエハの表面に処理液等が供給される。
【0003】
枚葉式の洗浄装置では、混合された処理液がタンクに貯蔵されておりその処理液をウエハへ供給するキャビネット方式と、ウエハ直前で混合した処理液を直接供給するインラインミキシング方式がある。装置には流体の混合部があり、高濃度の薬液(原液)や純水が流通する配管が接続され、混合液の生成が行われる。ウエハを1枚ずつ処理する枚葉式の装置によるとウエハ表面に供給される混合液は少量であり、インライン方式を用いる場合、混合部への供給される薬液は微少量となる。例えば、DHFの生成では、フッ酸と純水の流量比は1:100であり、純水の流量が2.0L/minに設定されていると、必要なフッ酸の流量は0.02L/minとなる。このような微少量の薬液を制御する必要がある処理では、わずかな流量変化によりその洗浄効果に大きなばらつきが生じてしまう。そのため、混合部に対し薬液や純水を高精度に供給することができる定流量弁が必要となる。
【0004】
また、半導体製造における大規模集積化、加工の微細化が進み、国際半導体技術ロードマップ(ITRS)において、2014年に24nmプロセスとなることが定められている。プロセスで表される数字(24nm)は、MPUにおける最下層の最も狭い配線のピッチ(線幅+線間隔)の半分(ハーフピッチ)として定義されている。このように配線幅が定められる中にあっては、半導体製造工程内における流体の流通経路に微細なゴミ(パーティクル)の混入は、製品の歩留まりに大きな影響を与える。パーティクルは、配線ピッチの4分の1(2014年のプロセスの場合、12nm)以下とする必要があることから、流体の清浄度を維持しながら流通させる部材は大きな意味を持つ。
【0005】
特許文献1に開示の定流量弁では、同軸上に配置された複数のダイヤフラムが被制御流体の圧力に対し一体に変動するように構成されている。流入部側に存在する弁座には、各ダイヤフラムと一体に変動する弁体がバルブの開閉動作を行う。これらにより、定流量弁内における差圧が調節されることで被制御流体の流出量を所定の流量に制御することが可能となる。また、流路構造は被制御流体を滞留させることがなく、差圧調節を簡単にできて応答性がよい。
【0006】
しかし、微少流量域で制御を行う場合は、狭い開度で弁体を進退させる必要がある。この定流量弁では、複数のダイヤフラムが軸部で連結され、弁座が形成される流路内に前記軸部を挿通した構成である。このため、制御時の弁体の動作により、弁座と弁体が摺動するおそれがある。
【0007】
特許文献2に開示の流量制御装置では、一次側流体に圧力変動が発生した場合に、第1圧力制御弁部によって第1圧力制御弁部の二次側が所定圧力に維持されて流量が制御される。一方、二次側流体に圧力変動が発生した場合に、第2圧力制御弁部によって第2圧力制御弁部の一次側が所定圧力に維持されて流量が制御される。従って、流量制御装置の一次側または二次側において圧力変動が発生した場合であっても、流体流量の安定化を高精度で実現することが可能である。
【0008】
しかしながら、上記の流量制御装置では、二次側において流体の流出が停止される等により、流量制御装置内の流体圧力が上昇する。その際、第1圧力制御弁部が急激な閉動作を行うことによって、第1圧力制御弁部の弁座に対して弁体が強く衝突するおそれがある。
【0009】
従来の定流量弁や流量制御装置にあっては、それぞれ上記のような作動により弁座と弁体等とが想定外の接触をして発塵する可能性も懸念される。そのため、微少流量を高精度で供給することが可能であり、さらに高い清浄度を維持することが可能な装置が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、弁座と弁体等との想定外の接触を抑制して流体の清浄度をより高い状態で維持することが可能な定流量弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、請求項1の発明は、被制御流体の流入部に接続された流入側チャンバと被制御流体の流出部に接続された流出側チャンバの間の流路に設けられた絞り部と、前記流出側チャンバに形成された弁座を有する弁本体部と、前記流入側チャンバに配置され該流入側チャンバを被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し、前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧しかつ加圧手段によって常時一定圧力で前記第1チャンバ側に加圧される第1ダイヤフラムと、前記流出側チャンバに配置され該流出側チャンバを被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画し、前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧しかつ前記弁座に対し進退動する弁体を備えた第2ダイヤフラムを有し、前記第2チャンバに前記第1ダイヤフラムとともに進退動する第1可動部が形成され、かつ前記第4チャンバに前記第2ダイヤフラムとともに進退動する第2可動部が形成されているとともに、前記第2チャンバと第4チャンバとの間には湾曲する接続チャンバが形成されていて、該接続チャンバに前記第1可動部及び第2可動部と係合して一の可動部の変動を他の可動部に伝達する複数個の球部材を含む中間伝達部材が配置されていて、前記絞り部前後の圧力変動による前記第1ダイヤフラム及び前記第2ダイヤフラムの進退動により前記弁体を前記弁座に対して進退動させ被制御流体の流量を一定に保持するようにしたことを特徴とする定流量弁に係る。
【0013】
請求項2の発明は、前記中間伝達部材の前記複数個の球部材の間に棒状部材が介在されている請求項1に記載の定流量弁に係る。
【0014】
請求項3の発明は、前記第1可動部を第1ダイヤフラムに対して前後方向に直動するように規制する第1規制部と、前記第2可動部を第2ダイヤフラムに対して前後方向に直動するように規制する第2規制部とを有する請求項1に記載の定流量弁に係る。
【0015】
請求項4の発明は、前記加圧手段がバネである請求項1に記載の定流量弁に係る。
【0016】
請求項5の発明は、前記加圧手段が加圧気体である請求項1に記載の定流量弁に係る。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に係る定流量弁によると、被制御流体の流入部に接続された流入側チャンバと被制御流体の流出部に接続された流出側チャンバの間の流路に設けられた絞り部と、前記流出側チャンバに形成された弁座を有する弁本体部と、前記流入側チャンバに配置され該流入側チャンバを被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し、前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧しかつ加圧手段によって常時一定圧力で前記第1チャンバ側に加圧される第1ダイヤフラムと、前記流出側チャンバに配置され該流出側チャンバを被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画し、前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧しかつ前記弁座に対し進退動する弁体を備えた第2ダイヤフラムを有し、前記第2チャンバに前記第1ダイヤフラムとともに進退動する第1可動部が形成され、かつ前記第4チャンバに前記第2ダイヤフラムとともに進退動する第2可動部が形成されているとともに、前記第2チャンバと第4チャンバとの間には湾曲する接続チャンバが形成されていて、該接続チャンバに前記第1可動部及び第2可動部と係合して一の可動部の変動を他の可動部に伝達する複数個の球部材を含む中間伝達部材が配置されていて、前記絞り部前後の圧力変動による前記第1ダイヤフラム及び前記第2ダイヤフラムの進退動により前記弁体を前記弁座に対して進退動させ被制御流体の流量を一定に保持するようにしたため、弁座と弁体等との想定外の接触を抑制することができ、被制御流体の清浄度をより高い状態で維持することが可能となる。
【0018】
請求項2の発明に係る定流量弁によると、請求項1において、前記中間伝達部材の前記複数個の球部材の間に棒状部材が介在されているため、一の可動部の変動をより確実に他の可動部へ伝達することが可能となる。
【0019】
請求項3の発明に係る定流量弁によると、請求項1において、前記第1可動部を第1ダイヤフラムに対して前後方向に直動するように規制する第1規制部と、前記第2可動部を第2ダイヤフラムに対して前後方向に直動するように規制する第2規制部とを有するため、横ずれ等が発生せず、一の可動部の変動を他の可動部に対して無駄なく伝達することができる。
【0020】
請求項4の発明に係る定流量弁によると、請求項1において、前記加圧手段がバネであるため、安価かつ簡易な構成で第1ダイヤフラムを付勢することができる。
【0021】
請求項5の発明に係る定流量弁によると、請求項1において、前記加圧手段が加圧気体であるため、容易に所望する圧力で第1ダイヤフラムを付勢することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1ないし
図3に示す本発明の第1実施例に係る定流量弁10は、弁本体部11と、第1ダイヤフラム30と、第2ダイヤフラム35とを有し、主に半導体製造工場や半導体製造装置等の流体管路に配設される。定流量弁10は、超純水、フッ酸、過酸化水素水、アンモニア水、塩酸等の各種の被制御流体の流通流量を一定化することができる装置である。特に、シリコンウエハの枚葉方式による洗浄に対応した被制御流体の制御を可能とする。
【0024】
定流量弁10の弁本体部11、第1ダイヤフラム30、第2ダイヤフラム35等の主要部材は、被制御流体からの腐食、あるいは被制御流体の清浄度に影響を与えない性質が求められる。このため、定流量弁10の主要部材は、PTFE、PFA、PVDF等のフッ素樹脂、または、ステンレス鋼等の耐食性金属、もしくはこれらの組み合わせ等、耐食性及び耐薬品性の高い材料によって形成される。図示の定流量弁10はフッ素樹脂のブロックから切削により加工、形成される。
【0025】
弁本体部11は、
図1ないし
図3に示すように、被制御流体の流入部12に接続された流入側チャンバ20と被制御流体の流出部13に接続された流出側チャンバ25の間の流路に設けられた絞り部15と、流出側チャンバ25に形成された弁座16を有する。この弁本体部11は、複数の本体ブロック11A,11B,11C,11Dを組み合わせて形成される。また、絞り部15は、流路内の流体圧力を損失させて流入側チャンバ20と流出側チャンバ25の流体圧力に差圧を生じさせる。図の符号17は流出側チャンバ25と流出部13とを接続する弁座16の流出開口部である。
【0026】
実施例の弁本体部11では、本体ブロック11Aに流入部12、流出部13、絞り部15、弁座16がそれぞれ形成される。本体ブロック11Aと本体ブロック11Bは組み合わされ、流入側チャンバ20と流出側チャンバ25が形成される。また、本体ブロック11Cと本体ブロック11Dは組み合わされ、接続チャンバ70が形成される。
【0027】
第1ダイヤフラム30は、
図1ないし
図3に示すように、流入側チャンバ20に配置され該流入側チャンバ20を被制御流体と接する第1チャンバ21と、第1チャンバ21の背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバ22とに区画する。実施例の第1ダイヤフラム30は、ダイヤフラム面となる肉薄の可動膜部31と、可動膜部31の外周に配置される外周部32を有する。第1ダイヤフラム30は、第2チャンバ22側に配置された第1可動部40と接続される。図示の第1ダイヤフラム30と第1可動部40は、機械的な接続ではなく互いに接触(当接)しているのみである。外周部32は、本体ブロック11Aと本体ブロック11Bとの間に狭着されて固定される。
【0028】
第1チャンバ21は、本体ブロック11Aに形成されて、流入部12から絞り部15へ至る流体の流路を構成する。第2チャンバ22は、本体ブロック11Bに形成され、第1可動部40のピストン部42が進退可能なシリンダー部23を有する。なお、図中の符号24は第2チャンバ22に接続された呼吸穴である。
【0029】
第1可動部40は棒状部材41からなり、前端41aが第1ダイヤフラム30に接続されるとともに、第2チャンバ22のシリンダー部23を貫通して後端41bが接続チャンバ70側に突出して配置される。この第1可動部40は、第1ダイヤフラム30とともに進退動する。第1可動部40(棒状部材41)は、第1規制部14aにより、第1ダイヤフラム30に対して前後する直動方向に規制される。第1規制部14aは本体ブロック11C,11Dに形成された壁部であり、第1可動部40の後端41bの側部は第1規制部14aにより摺動可能に保持される。
【0030】
第1ダイヤフラム30は、第1チャンバ21内の流体圧力を受圧しかつ加圧手段60によって常時一定圧力で第1チャンバ21側に加圧される。加圧手段60としては、第1ダイヤフラム30を常時一定圧力で第1チャンバ21側に加圧することが可能なバネや加圧気体等の適宜である。第1実施例の加圧手段60はバネ61である。バネを使用した際の作用は次のとおりとなる。加圧手段60のバネ61は第2チャンバ22のシリンダー部23内に配置され、第1可動部40のピストン部42は第1ダイヤフラム30側へ付勢される。そのため、第1ダイヤフラム30には第1チャンバ21側に常時一定の荷重が加わる。加圧手段60としてバネ61を用いることにより、比較的機構は簡便となりその分安価にすることができる。
【0031】
第2ダイヤフラム35は、
図1ないし
図3に示すように、流出側チャンバ25に配置され該流出側チャンバ25を被制御流体と接する第3チャンバ26と、該第3チャンバ26の背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバ27とに区画する。実施例の第2ダイヤフラム35は、ダイヤフラム面となる肉薄の可動膜部36と、可動膜部36の外周に配置される外周部37を有する。該第2ダイヤフラム35は、第4チャンバ27側に配置された第2可動部50に接続される。外周部37は、本体ブロック11Aと本体ブロック11Bとの間に狭着されて固定される。
【0032】
第3チャンバ26は、本体ブロック11Aに形成されて、絞り部15から流出開口部17を介して流出部13へ至る流体の流路を構成する。第4チャンバ27は、本体ブロック11Bに形成され、第2可動部50のピストン部52が進退可能なシリンダー部28を有する。なお、図中の符号29は第4チャンバ27に接続された呼吸穴である。
【0033】
第2可動部50は棒状部材51からなり、前端51aが第2ダイヤフラム35に接続されるとともに、第4チャンバ27のシリンダー部28を貫通して後端51bが接続チャンバ70内に突出して配置される。この第2可動部50は、第2ダイヤフラム35とともに進退動する。図示の第2ダイヤフラム35と第2可動部50は、機械的な接続ではなく互いに接触(当接)しているのみである。また、第2可動部50(棒状部材51)は、第2規制部14bにより、第2ダイヤフラム35に対して前後する直動方向に規制される。第2規制部14bも本体ブロック11C,11Dに形成された壁部であり、第2可動部50の後端51bの側部は第2規制部14bにより摺動可能に保持される。
【0034】
また、第2ダイヤフラム35は、第3チャンバ26内の流体圧力を受圧しかつ弁座16に対し進退動する弁体38を備える。弁体38は、弁座16側に向かって突出して形成された突出部であり、実施例ではテーパ状に形成されている。この弁体38は、弁座16に対して接触して流出開口部17を閉鎖(閉弁)することはなく、常時適度な間隙を形成する。むろん、第2ダイヤフラム35に形成される弁体38の形状は図示の円錐形状に限られず、適宜である。
【0035】
第1ダイヤフラム30及び第2ダイヤフラム35による流入側チャンバ20及び流出側チャンバ25の区画から容易に理解できるように、流路を流通する被制御流体の接触(接液)部位は限定される。そのため、本発明の定流量弁内を流通する被制御流体は高い清浄度で維持される。
【0036】
接続チャンバ70は、
図1ないし
図3に示すように、流入側チャンバ20の第2チャンバ22と流出側チャンバ25の第4チャンバ27との間に双方を繋ぐように湾曲した管路状に形成され、その内部に中間伝達部材80が配置される。接続チャンバ70の円弧形状としては、半円状や半楕円状等の適宜の逆U字形状である。また、図示しないが、接続チャンバ70の断面形状は正方形または円形であり、全長に亘って一定間隔で形成される。
【0037】
図1ないし
図3に示すように、中間伝達部材80には複数個の球部材81が含まれている。中間伝達部材80を構成する複数個の球部材81は、第1可動部40及び第2可動部50と係合して、一の可動部40(50)の変動を他の可動部50(40)に伝達する。複数個の球部材81は接続チャンバ70の内壁に転動または摺動可能に保持され、接続チャンバ70内において第1可動部40の後端41bから第2可動部50の後端51bに亘って互いに連接される。
【0038】
中間伝達部材80による各可動部40,50の変動の伝達について説明する。
図2に示すように、中間伝達部材80が第1可動部40の変動を第2可動部50に伝達する場合、まず第1可動部40が後退する。このとき、第1可動部40の後端41bと係合している球部材81aを介して連接する他の球部材81が第2可動部50側(図の右側)方向へ押し込まれて移動する。そして、各球部材81が移動することにより、第2可動部50の後端51bと係合している球部材81bを介して第2可動部50は第2ダイヤフラム35側へ押し込まれるとともに前進する。
【0039】
次に
図3のとおり、中間伝達部材80が第2可動部50の変動を第1可動部40に伝達する場合、まず第2可動部50が後退する。このとき、第2可動部50の後端51bと係合している球部材81bを介して連接する他の球部材81が第1可動部40側(図の左側)方向へ押し込まれて移動する。そして、各球部材81が移動することにより、第1可動部40の後端41bと係合している球部材81aを介して第1可動部40は第1ダイヤフラム30側へ押し込まれるとともに前進する。
【0040】
第1可動部40及び第2可動部50は、それぞれ第1規制部14a,第2規制部14bにより、前後方向に直動するように規制されている。このため、球部材81と係合して移動する場合でも横ずれ等が発生せず、一の可動部40(50)の変動を他の可動部50(40)に対して無駄なく伝達することができる。
【0041】
上記のように、中間伝達部材80(球部材81)は、接続チャンバ70内を転動または摺動することによって変動を伝達する構成であることから、摩擦抵抗が低い材料が好ましく、グリスやコーティング処理等を行うことで摩擦を軽減することもできる。これにより、本体ブロック11C,11Dと中間伝達部材80(球部材81)との不要な摩擦が軽減されて、より円滑に変動を伝達することができる。
【0042】
当該定流量弁10では、
図2,3に示すように、絞り部15前後の圧力変動による第1ダイヤフラム30及び第2ダイヤフラム35の進退動により、弁体38は弁座16に対して進退動する。そこで、被制御流体の流量は一定に保持される。
【0043】
例えば、
図2のように、定流量弁10の一次側圧力の上昇により第1ダイヤフラム30側の流体圧力が高まると、第1可動部40は第1ダイヤフラム30とともに後退し、その変動は中間伝達部材80(球部材81)を介して第2可動部50へ伝達される。これにより、第1ダイヤフラム30から第2ダイヤフラム35へ前進方向(弁座16方向)への荷重が加わり、第2ダイヤフラム35及び弁体38は弁座16に対して前進し、流通開口部17の開度は縮小される。
【0044】
また、
図3のように、定流量弁10の二次側圧力の上昇により第2ダイヤフラム35側の流体圧力が高まると、第2ダイヤフラム35に第1ダイヤフラム30からの荷重を押し戻す方向に作用が加わる。第2ダイヤフラム35及び第2可動部50は弁体38とともに弁座16から後退し、流通開口部17の開度は拡大される。そして、第2可動部50の変動が中間伝達部材80を介して第1可動部40へ伝達され、第1可動部40を通じて第1ダイヤフラム30が前進する。
【0045】
このように、各ダイヤフラム30,35は絞り部15前後の被制御流体の圧力変動を受ける。そして、第1可動部40及び第2可動部50の変動は中間伝達部材80(球部材81)を介してそれぞれに伝達される。この結果、生じた変動は第2ダイヤフラム35と弁体38の進退動作に正確に反映され、定差圧、定流量を維持するように、流通開口部17の開度は調整される。また、第1可動部40,第2可動部50,中間伝達部材80をそれぞれ摩擦係数が低い材料で形成すれば、各ダイヤフラム30,35が流体より受ける圧力を荷重として極力損失させずに伝達することが可能となる。
【0046】
次に、当該定流量弁10における被制御流体の流量と流体圧力の関係について説明する。以下の説明では、第1ダイヤフラム30に加わる流体圧力をP1、第2ダイヤフラム35に加わる流体圧力をP2、第2ダイヤフラム35に加わる流出部13側の流体圧力をP3、加圧手段60により第1ダイヤフラムに加わる荷重をSP、第1ダイヤフラム30の有効受圧面積をS1、第2ダイヤフラム35の有効受圧面積をS2、弁座16の流通開口部17の面積をS3、流量をQ、絞り部15の開度面積により設定される流量係数をA、絞り部15の前後に生じる差圧(P1−P2)をΔPで表す。なお、第1ダイヤフラム30の有効受圧面積S1と第2ダイヤフラム35の有効受圧面積S2は等しい(S1=S2)とする。また、ダイヤフラムにおける有効受圧面積とは、その可動部である薄肉の膜部からなるダイヤフラム面の可動膜部が有効に圧力を受ける面積である。
【0047】
第1ダイヤフラム30を後退させる力(F1)、第2ダイヤフラム35を後退させる力(F2)は、それぞれ下記の式で表される。
F1=S1×P1
F2=(S2−S3)×P2+S3×P3+SP
【0048】
ここで、弁座16の流通開口部17の面積S3をごく小さくすることにより、第2ダイヤフラム35に加わる流出部13側の流体圧力P3は無視可能となる。これらから、バランス式(F1=F2)は、下記のとおりである。
S1×P1=S1×P2+SP
S1(P1−P2)=SP
ΔP=SP/S1
【0049】
上記の式から理解されるように、当該定流量弁10の絞り部15による差圧(ΔP)は、加圧手段60の荷重(SP)及び第1ダイヤフラム30、第2ダイヤフラム35の有効受圧面積(S1=S2)により決定される。そこで、流体の流量(Q)は、差圧(ΔP)によって決定されることから、下記の式で表すことができる。
Q=A×√(ΔP)
=A×√(SP/S1)
【0050】
従って、当該定流量弁10では、加圧手段60の荷重(SP)を可変とすることで差圧(ΔP)を変化させて、流体の流量(Q)を変更させることが可能となる。加圧手段60の加圧量を変化させる方法としては、バネの場合、バネ自体の交換、手動あるいはモーター駆動等によりバネ荷重を変化させる方法がある。加圧気体の場合、流入量を制御して圧力を調整する方法である。
【0051】
図4に示す第2実施例に係る定流量弁10Aは、中間伝達部材80Aの複数個の球部材81の間に棒状部材82が介在されている。この定流量弁10Aの接続チャンバ70Aでは、第1可動部40側の複数の球部材81a,81cが転動または摺動可能な第1湾曲部71aと、第2可動部50側の複数の球部材81b,81dが転動または摺動可能な第2湾曲部71bと、各湾曲部71a,71bと連通するとともに棒状部材82が直線的に摺動可能な直線部72を有する。以下の説明において、第1実施例と同一の符号は同一の構成を表すものとして、その説明を省略する。
【0052】
定流量弁10Aにあっては、中間伝達部材80Aが第1可動部40の変動を第2可動部50に伝達する場合、まず第1可動部40が後退することにより、第1可動部40の後端41bと係合している球部材81aを介して連接する第1可動部40側の他の球部材81cは接続チャンバ70Aの第1湾曲部71a内を転動または摺動して直線部72側の方向へ押し込まれて移動する。このようにして移動した球部材81cにより、連接する棒状部材82は接続チャンバ70Aの直線部72内を摺動して第2湾曲部71b側へ押し込まれて移動し、第2可動部50側の球部材81dを第2湾曲部71b内で転動または摺動するように第2可動部50側へ押し込み移動させる。そして、球部材81dが移動することにより、第2可動部50は第2可動部50の後端51bと係合している球部材81bを介して第2ダイヤフラム35側へ押し込まれて前進する。
【0053】
中間伝達部材80Aが第2可動部50の変動を第1可動部40に伝達する場合、まず第2可動部50が後退することにより、第2可動部50の後端51bと係合している球部材81bを介して連接する第2可動部50側の他の球部材81dが接続チャンバ70Aの第2湾曲部71b内を転動または摺動して直線部72側の方向へ押し込まれて移動する。このようにして移動した球部材81dにより、連接する棒状部材82は接続チャンバ70Aの直線部72内を摺動して第1湾曲部71a側へ押し込まれて移動し、第1可動部40側の球部材81cを第1湾曲部71a内で転動または摺動するように第1可動部40側へ押し込み移動させる。そして、球部材81cが移動することにより、第1可動部40は第1可動部40の後端41bと係合している球部材81aを介して第1ダイヤフラム30側へ押し込まれて前進する。
【0054】
上のように、中間伝達部材80Aの複数個の球部材81の間に棒状部材82を介在させることにより、一の可動部の変動をより確実に他の可動部へ伝達することが可能となる。また、棒状部材に球部材よりも軽量な部材を採用することもでき、中間伝達部材の軽量化を図り、伝達に要する負荷を軽減することもできる。
【0055】
また、この定流量弁10Aでは、
図4に示すように、第4チャンバ27のシリンダー部28内に加圧手段60としてバネ61Aが配置されて、第2可動部50のピストン部52Aを中間伝達部材80A側(図の上側)へ付勢することにより、中間伝達部材80Aを介して第1ダイヤフラム30を常時一定圧力で第1チャンバ21側に押し下げている。実施例では、ピストン部52Aが棒状部材51Aの接続チャンバ70A側に設けられて、シリンダー部28の第2ダイヤフラム35側にバネ61Aが配置される。さらに、第2可動部50(棒状部材51A)と第2ダイヤフラム35の動作の連動性を高めるため、双方は螺合等により結合される。
【0056】
このように、第4チャンバ27のシリンダー部28内に加圧手段60としてのバネ61Aを配置していることにより、被制御流体の流量減少や停止により被制御流体の流体圧力が低下した場合であっても、第2ダイヤフラム35(弁体38)の弁座16への接触は防止される。
【0057】
図5に示す第3実施例に係る定流量弁10Bでは、加圧手段60として第2チャンバ22に接続されたレギュレータ(図示せず)により所定圧力に調節された加圧気体62が使用される。第1ダイヤフラム30は常時一定圧力で第1チャンバ21側に加圧される。加圧手段60として加圧気体62を用いることにより、容易に所望する圧力で第1ダイヤフラム30を加圧(付勢)することができる。図中、符号62Aは加圧気体62の流入口である。
【0058】
図6に示す第4実施例に係る定流量弁10Cでは、中間伝達部材80の複数個の球部材81のそれぞれの間に球保持部材83(ベアリングリテーナー)が介在される。球部材81とともに球保持部材83が備えられることにより、球部材81同士の接触による摩擦が軽減されて伝達効率が高まる。
【0059】
なお、本発明の定流量弁は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、第1実施例ないし第4実施例における各加圧手段の構成は、それぞれ各実施例のみに限定されるものではなく、それぞれ入れ替えて構成することも可能である。