(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明が適用された携帯式のプリンター1の外観斜視図であり、
図2は、携帯式のプリンター1の内部構成を示した概略縦断面図である。
【0013】
これらの図における携帯式のプリンター1は、ハウジング2と、供給部21と、位置検出部22と、印字部23と、バッテリー収納室25と、アダプター接続端子26(外部電源接続端子)と、入力部27と、表示部28(表示手段)と、制御部29と、電源スイッチ30と、を備えて構成されている。
【0014】
ハウジング2は、プリンター1の外壁を形成してプリンター1の内部と外部とを画成する。ハウジング2は、プリンター1を構成する各種部品を支持してプリンター1として一体の装置を構成する。
【0015】
このハウジング2は、プリンター1を作業者が携帯できるような大きさに形成されている。ハウジング2の上部、即ち、プリンター1の上面の左右隅部には一対のベルト掛け部32が設けられている。その一対のベルト掛け部32に肩掛けベルト(不図示)を取り付けることで、作業者は、ベルト掛け部32を上側にした状態でプリンター1を肩から吊り下げた状態で携帯することができる。
【0016】
供給部21はプリンター1内の底部に設けられている。印字用紙である未使用のラベル連続体9が供給部21に収容され、そのラベル連続体9が印字部23に供給される。
【0017】
ラベル連続体9は、帯状の台紙34と、その台紙34上に一定間隔で仮着された複数枚のラベル片35とから構成されている。供給部21には、そのラベル連続体9をロール状に巻回したものが収容される。供給部21から印字部23にラベル連続体9を供給する際には、供給部21のロール状のラベル連続体9が外周側から帯状に繰り出される。
【0018】
ラベル片35は、いわゆるサーマルラベルであって、その表面に感熱発色層が塗工されている。このラベル片35に熱を加えると、その部分が発色する。
【0019】
なお、台紙34の裏面側には、所定ピッチで位置検出用マーク36があらかじめ印刷されている。
【0020】
また、プリンター1の前面(正面)の下部には、開閉カバー3が設けられている。開閉カバー3は、下方隅部のカバー軸17のまわりに回転可能に支持されている。開閉カバー3の開閉によってプリンター1の内部を外部に露呈させ、又は、内部を外部から遮蔽することができる。
【0021】
開閉カバー3の開閉機構についての構成は省略するが、プリンター1の前面に設けられた開放用押しボタン43を押すと、開閉カバー3を開放することができる。そしてロール状のラベル連続体9を供給部21に挿入した後、開閉カバー3を閉鎖することによりラベル連続体9を供給部21の規定位置に収容することができる。
【0022】
位置検出部22は、位置検出センサー37を有している。位置検出センサー37は、例えば開閉カバー3に取り付けられており、供給部21から繰り出されたラベル連続体9が搬送される用紙搬送路のうち、印字部23(サーマルヘッド7)よりも上流側の位置において用紙搬送路に対向して配置されている。
【0023】
この位置検出センサー37が、用紙搬送路に沿って搬送されているラベル連続体9の位置検出用マーク36を検出することによって、印字部23に対するラベル連続体9(ラベル片35)の相対位置が検出され、ラベル片35に対して適切な位置に印字が行われる。
【0024】
印字部23は、プリンター1内の前側(ラベル連続体9の搬送方向の下流側)であって上下方向の中央付近に配置されている。印字部23は、サーマルヘッド7と、プラテンローラー8と、駆動モーター38とを備えている。
【0025】
サーマルヘッド7は、例えばハウジング2に取り付けられており、ラベル連続体9を搬送する用紙搬送路よりも上側に配置されている。サーマルヘッド7には、用紙搬送路の搬送面(ラベル連続体9が走行する面)に平行で、かつ、ラベル連続体9の搬送方向に対して直交する方向に沿って列状に配列された複数の発熱素子7Aが設けられている。それらの発熱素子7Aが用紙搬送路のラベル連続体9のラベル片35に接触するとともに、ラベル片35に熱を加えてラベル片35を発色させる。
【0026】
プラテンローラー8は、例えば開閉カバー3に取り付けられおり、用紙搬送路の下側においてサーマルヘッド7に対向して配置されている。このプラテンローラー8が用紙搬送路のラベル連続体9の裏面に当接することによって、ラベル連続体9の表面側のラベル片35をサーマルヘッド7の発熱素子7Aに押し当てる。
【0027】
また、プラテンローラー8は中心軸となるプラテンローラー軸13を備え、そのプラテンローラー軸13が用紙搬送路の搬送面に平行で、かつ、ラベル連続体9の搬送方向に対して直交する方向に沿って配置されるとともに回転可能に支持されている。
【0028】
そのプラテンローラー軸13の一方の端部には、プラテンローラーギア39が設けられている。
【0029】
駆動モーター38は、例えばハウジング2に取り付けられており、プリンター1内の前側であってサーマルヘッド7よりも上側に配置されている。駆動モーター38には、その動力により回転する連結ギア40が不図示の動力伝達機構を介して連結されており、その連結ギア40がプラテンローラーギア39に噛合している。
【0030】
これによって、駆動モーター38の動力によりプラテンローラー8が回転し、用紙搬送路のラベル連続体9(ラベル片35)がサーマルヘッド7の発熱素子7Aに接触しながら搬送される。
【0031】
このように構成された印字部23によれば、供給部21から印字部23に供給されたラベル連続体9がサーマルヘッド7の発熱素子7Aとプラテンローラー8との間に挟持されるとともに、駆動モーター38によりプラテンローラー8が回転駆動されてラベル連続体9がラベル片35を発熱素子7Aに接触させながら搬送される。そして、ラベル連続体9の搬送と共に制御部29からサーマルヘッド7に与えられる印字データに基づいて発熱素子7Aの発熱が制御されることで、ラベル連続体9(ラベル片35)にサーマル印字が行われる。
【0032】
印字が行われたラベル連続体9は、プリンター1の前面に設けられた発行口44を通じてプリンター1の内部から外部に排出される。
【0033】
バッテリー収納室25は、プリンター1内の後側であって上下方向の中央付近に配置されており、充電バッテリー24を収脱可能に収納する。
【0034】
なお、充電バッテリー24として、ニッケル・水素蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池等のリチウムイオン二次電池以外の種類の二次電池を採用することもできる。
【0035】
プリンター1の一方の側面には、開閉可能なバッテリーカバー25Aが設けられており、バッテリーカバー25Aを開放することによって、バッテリー収納室25に充電バッテリー24を収納し、又はバッテリー収納室25から充電バッテリー24を取り外すことできる。
【0036】
アダプター接続端子26は、プリンター1のバッテリーカバー25Aと反対側の側面に設けられている。外部電源として、交流商用電源に接続したACアダプター41A、又はACアダプター41Bが、このアダプター接続端子26に接続される。
【0037】
入力部27は、プリンター1の前面の上側に設けられており、この入力部27に対する操作によりプリンター1に必要なデータやコマンドの入力を行うことができる。
【0038】
表示部28は、プリンター1の前面において入力部27に隣接して設けられており、入力部27により入力された情報やその他の必要な情報が表示部28により表示される。
【0039】
制御部29は、プリンター1内の上部に配置されており、電子基板29A、29B上に実装された電子部品等から構成されている。この制御部29は、上述した位置検出部22、印字部23、充電バッテリー24、アダプター接続端子26、入力部27、表示部28との間でデータ、コマンド、電源の授受を行うとともに、これらを適宜制御する。
【0040】
電源スイッチ30は、プリンター1の前面のほぼ中央部に設けられており、電源スイッチ30を押下操作するごとに、プリンター1の電源がオンとオフとで切り替えられる。
【0041】
本実施形態のプリンター1では、電源として、少なくとも、ACアダプター41A若しくはACアダプター41B又は充電バッテリー24が使用される。
【0042】
ACアダプター41Aは、サーマルヘッド7で印字動作を行える容量を有しておらず、主として充電バッテリー24を充電するために使用される。ACアダプター41Aの外形寸法は比較的小型である。
【0043】
ACアダプター41Bは、サーマルヘッド7の複数の発熱素子7Aに対して一括印字できる容量を有している。ACアダプター41Bの外形寸法は比較的大型である。一括印字できる容量とは、サーマルヘッド7を構成する複数の発熱素子7Aの全てに同時にエネルギーを印加して印字するのに耐えうる容量を意味する。
【0044】
充電バッテリー24は、ACアダプター41Aより大きく、かつACアダプター41Bより小さい容量を有している。充電バッテリー24は、サーマルヘッド7の複数の発熱素子7Aに対して一括印字できる容量を有していないが、サーマルヘッド7の複数の発熱素子7Aに対して分割印字できる容量を有している。分割印字できる容量とは、サーマルヘッド7を構成する複数の発熱素子7Aを複数のブロックに分割し、そのブロック単位で発熱素子7Aにエネルギーを印加して印字するのに耐えうる容量を意味する。また、充電バッテリー24は内部抵抗を有している。充電バッテリー24からエネルギーをサーマルヘッド7に印加する場合、内部抵抗による電圧降下が生じる。充電バッテリー24の充放電の繰り返しなどにより、内部抵抗は増大する特性を有している。つまり、経時劣化した充電バッテリー24を使用した場合、より大きな電圧降下が生じる。さらに、内部抵抗は、環境温度により変化する特性も有している。
【0045】
本実施形態では、上述したような異なる特性を有する駆動電源からエネルギーを供給した場合でも、適正なサーマル印字を行うことができる。
【0046】
図3は、制御部29の構成例を示すブロック図である。
【0047】
制御部29は、CPU(central processing unit:中央演算装置)51と、ROM(read only memory)52と、RAM(random access memory)53と、搬送制御回路54と、印字制御回路55と、用紙検出回路57と、通信インタフェース58(通信手段)と、IOポート59と、電源部60とを含んでおり、これらはバスラインを介して相互に接続されて、各種データの送受が相互に行うことができる。
【0048】
各部の主な作用について簡単に説明すると、CPU51は、所定の制御プログラムを実行することによって、制御部29全体を統括的に制御するとともに、各部に所要の処理や制御を実行させる。
【0049】
ROM52は、CPU51が読み出して実行する上記制御プログラムを記憶している。
【0050】
RAM53は、CPU51が実行する処理に必要な各種データや印字に必要な印字データ、印字フォーマットなどを記憶する。
【0051】
搬送制御回路54は、CPU51からの指示信号にしたがいプラテンローラー8に連結された駆動モーター38を制御し、プラテンローラー8の回転/停止を制御する。これにより、用紙搬送路のラベル連続体9の搬送が制御される。
【0052】
印字制御手段である印字制御回路55は、CPU51から供給される印字すべき文字、図形、及びバーコードなどの印字データに対応する印字信号を生成し、その印字信号をサーマルヘッド7に供給してラベル連続体9への印字を行う。
【0053】
用紙検出回路57は、位置検出部22の位置検出センサー37により用紙搬送路のラベル連続体9が有する上記の位置検出用マーク36を検出してCPU51にその情報を与える。CPU51は、搬送制御回路54によるラベル連続体9の搬送の制御と共に、用紙検出回路57からの情報に基づいてサーマルヘッド7による印字のタイミングを制御してラベル片35の適切な位置への印字を実施する。
【0054】
通信インタフェース58は、パーソナルコンピュータ(PC)やハンディターミナルなどの外部機器(ホスト機器70)と接続して通信を行うためのものであり、印字データを供給するホスト機器70との間で印字データやコマンドの送受信を行うことができる。通信インタフェース58としては無線によるものが望ましく、例えば、2.45GHz帯の電波を利用したBluetooth(登録商標)規格のインタフェースが採用される。ただし、通信インタフェース58は、赤外線を利用したIrDA(Infrared Data Association)規格の通信インタフェースや、無線LANに用いられる規格の通信インタフェース等、任意の規格の無線通信インタフェースでよい。また、有線により通信を行うための通信インタフェースであってもよい。
【0055】
IOポート59は、表示部28及び入力部27が接続され、CPU51から供給される表示すべき情報を示す表示データを表示部28に出力してその情報を表示部28に表示させる。また、入力部27の操作に対応した操作信号をCPU51に与える。
【0056】
電源部60は電源回路を備えており、電源スイッチ30に対する押下操作を監視する。プリンター1の電源がオン状態で、電源スイッチ30押下されるとCPU51は電源部60に制御信号を出力し、電源をオフする。また、プリンター1の電源がオフ状態で、電源スイッチ30押下されるとCPU51は電源部60に制御信号を出力し、電源をオンする。
【0057】
電源部60は充電回路を備えており、ACアダプター41A,41Bの何れかが接続された状態で、充電バッテリー24の残量が少ない場合には、ACアダプター41A,41Bの電力を、充電回路を介して充電バッテリー24に供給し、充電処理を行う。
以下、本実施の形態の印字動作について説明する。
図4のフローチャートに示すように、プリンター1の電源がオンされると、アダプター接続端子26にACアダプター(41A又は41B)が接続されているか否かを判別する(ステップ10)。例えば、ACアダプター41Aは、出力電圧が10Vであり、最大電流が1A(アンペア)の特性を有し、ACアダプター41Bは、出力電圧が10Vであり、最大電流が20A(アンペア)の特性を有する。ACアダプター41AとACアダプター41Bとは出力される電圧値に差はないが、容量の大きさが異なる。
【0058】
CPU51は、電圧値を測定するための電圧検出手段としてAD変換器56を備えている。AD変換器56は、アダプター接続端子26の電圧を検出してアダプター接続端子26にACアダプター(41A又は41B)が接続されているか否かを判別する。判別の結果がCPU51に制御信号として出力される。
【0059】
この時点で、AD変換器56では、接続されているACアダプターの種類を特定できないが、アダプター接続端子26にACアダプター(41A又は41B)の何れかが接続されているか否を判別することができる。
【0060】
ACアダプター41A,41Bの何れかが接続されていると判断されると、次に接続されたACアダプターが、印字可能な容量を有するか、印字不可の容量を有するか、つまり、ACアダプターによる印字の可否が判断される(ステップ20)。
【0061】
図5に示すように、ACアダプター(41A又は41B)が接続されているとの出力信号を受けている場合、CPU51からの制御命令により印字制御回路55を介して、ACアダプター(41A又は41B)から、サーマルヘッド7を構成する全ての発熱素子7Aに数百μsecのオーダーで、20Aの電流が印加される。発熱素子7Aに20Aの電流が通電されると、電圧降下が生じる。この電圧降下をAD変換器56で測定する。
図6は、ACアダプター(41A又は41B)の電圧と時間との関係を示すグラフである。
図6において点線はACアダプター41Aの電圧変化を示し、実線はACアダプター41Bの電圧変化を示している。ACアダプター(41A又は41B)の容量の大きさにより電圧降下の変化が異なる。ACアダプター41Bの最大電流は20Aであるので、その容量は大きい。電圧の変化は小さくなる。一方、ACアダプター41Aの最大電流が1Aであるので、その容量は小さい。電圧の変化は大きくなる。この電圧の変化をAD変換器56で測定することで、接続されたACアダプターがACアダプター41A,41Bの何れかであることを特定することができる。つまり、電圧の変化が大きい場合、接続されたACアダプターは印字不可の容量しか持たないACアダプター41Aと判断され、電圧の変化が小さい場合、接続されたACアダプターは印字可能な容量を有するACアダプター41Bと判断される。判断の結果が、CPU51の内部で制御信号として出力される。なお、ACアダプター41Aの最大電流は1Aであるが、数百μsecのオーダーであれば、20Aを流しても、ACアダプター41Aが壊れたりすることはない。
ACアダプターが印字不可の容量しか持たないACアダプター41A、又は印字可能な容量を有するACアダプター41Bの判断は、以下にして行うことができる。上述したように、容量の小さいACアダプター41Aは電圧降下が大きく、容量の大きいACアダプター41Bは電圧降下が小さい。例えば、
図6に示すように、ACアダプター41Aでは8.0Vまで電圧降下し、ACアダプター41Bでは9.5Vまで電圧降下する。このとき、電圧降下の閾値を8.5Vと設定する。このような条件において、
図7に示す回路で容量の大小を判別することができる。コンパレータ80がCPU51に接続されている。コンパレータ80の非反転入力端子であるVin(+)に設定された8.5Vの閾値電圧が入力される。コンパレータ80の反転入力端子であるVin(−)には電圧降下後の電圧値が入力される。ACアダプター41Aである場合、Vin(−)に8.0Vが入力される。Vin(+)>Vin(−)となり、コンパレータ80が出力する。一方、ACアダプター41Bである場合、Vin(−)に9.5Vが入力される。Vin(+)<Vin(−)となり、コンパレータ80が出力しない。この出力をCPU51で検出することで、接続された外部電源がACアダプター41AかACアダプター41Bかを判別できる。
【0062】
外部電源が印字可能な容量を有するACアダプター41Bであると判断された場合、駆動電源が外部電源であるACアダプター41Bであることが記憶される(ステップ30)。CPU51の制御命令により、駆動電源記憶手段であるRAM53に駆動電源がACアダプター41Bであることが記憶され、駆動電源記憶ステップを構成する。
【0063】
外部電源が印字不可な容量を有するACアダプター41Aであると判断された場合、充電バッテリー24の有無が判断される(ステップ40)。例えば、充電バッテリー24は2セルを有し、出力電圧が8.4Vであり、最大電流が5Aの特性を有する。CPU51のAD変換器56により、充電バッテリー24の電圧を測定することができる。充電バッテリー24の電圧を測定することで、充電バッテリー24の有無を判別することができる。充電バッテリー24がバッテリー収納室25に収納されていない場合、AD変換器56で測定される電圧値は0Vであり、充電バッテリー24が「無し」と判断される。充電バッテリー24がバッテリー収納室25に収納されている場合、AD変換器56で測定される充電バッテリー24の電圧値が設定された基準電圧値以上であれば、充電バッテリー24が「有り」と判断される。AD変換器56で測定される充電バッテリー24の電圧値が基準電圧値未満であれば、サーマルヘッド7の発熱素子7Aにエネルギーを印加できないので、充電バッテリー24が「無し」と判断される。判別の結果がCPU51内部に制御信号として出力される。
【0064】
充電バッテリー24が有りと判断された場合、駆動電源が充電バッテリー24であることが記憶される(ステップ50)。CPU51の制御命令により、RAM53に駆動電源が充電バッテリー24であることが記憶され、駆動電源記憶ステップを構成する。
【0065】
上述したように、CPU51のAD変換器56が第1判別手段として機能し、ACアダプター(41A又は41B)の接続の有無、及び充電バッテリーの有無、プリンター1に供給する駆動電源がACアダプター(41A又は41B)であるか充電バッテリーであるかが判別され、第1判別ステップを構成する。
【0066】
さらに、CPU51のAD変換器56と印字制御回路55とが第2判別手段
として機能し、印字可能な容量をACアダプターが有するかを判断され、第2判別ステップを構成する。
【0067】
なお、ステップ10〜ステップ50までは、プリンター1の電源がオンされてから比較的初期の段階で実行される。印字要求がなされるまでは待機状態となる。
【0068】
次に、CPU51から印字要求の制御信号が印字制御回路55に出力される(ステップ60)。
【0069】
印字制御回路55は印字要求の信号を受けると、駆動電源がACアダプター41Bか充電バッテリー24であるかを判別する(ステップ70)。印字制御回路55は、RAM53に記録された情報にアクセスし、ACアダプター41Bか充電バッテリー24であるかを判別する。
【0070】
駆動電源がACアダプター41Bであると判断されると、印字制御回路55は一括印字制御を実行する(ステップ80)。一括印字制御では、CPU51はRAM53に記憶した印字データを読み出し、印字データからドットに展開し、エネルギーを印加すべき発熱素子7Aを、全ての発熱素子7Aの中から決定する。決定された発熱素子7Aに濃度値に見合うエネルギーが決定される。
一つの発熱素子7Aに印加されるエネルギーEは以下の式を満たす。
E=I
2×R×(T+ΔT)・・・・(1)
I=V/R・・・・・(2)
(Iは発熱素子7Aを流れる電流(A)、Rは発熱素子7Aの抵抗値(Ω)、Tは通電時間(s)、VはACアダプター41Bの電圧(V)、ΔTは発熱素子7Aの温度による印字時間補正(s))
なお、ΔRtは、発熱素子7Aの環境温度に対する変化であり、あらかじめ温度と発熱素子7Aの抵抗値との関係をデータテーブルとして作成するのが好ましい。ΔRtを求めるため、印字を行う前にサーマルヘッド7の環境温度がサーミスタにより測定される。
【0071】
ACアダプター41Bの容量は大きいので、サーマルヘッド7に対して大きなエネルギーを加えることができる。その結果、印字時間Tを短くすることできるので、高速印字が可能となる。
【0072】
次に、印字制御回路55が、駆動電源が充電バッテリー24であると判断すると、充電バッテリー24の電圧降下量を測定し、測定結果から充電バッテリー24の内部抵抗rを求め、内部抵抗rに基づいて補正値を算出する(ステップ90)。
【0073】
最初に、
図8に示すように、充電バッテリー24から、サーマルヘッド7を構成する全ての発熱素子7Aに数百μsecのオーダーで、20Aの電流が印加される。発熱素子7Aに20Aの電流が通電されると、電圧降下が生じる。この電圧降下をAD変換器56で測定する。
図9は、充電バッテリー24の電圧と電流との関係を示すグラフである。充電バッテリー24には内部抵抗rが存在する。充電バッテリー24の使用回数が多くなるにしたがって、つまり劣化により内部抵抗rはその抵抗値が大きくなる特性を有している。したがって、充電バッテリー24の使用回数に応じて、電圧降下量も大きくなる。
図9の中で実線は、ほとんど使用していない(充放電を行っていない)充電バッテリー24の電圧降下を示している。
図9の中で点線は、例えば、数百回程度使用した充電バッテリー24の電圧降下を示している。このグラフにみられるように、使用頻度(内部抵抗rの大きさ)により電圧降下に差が表れる。
この内部抵抗rは以下の式で求められる。
r=Ib/(Vb(0)−Vb(1))=Ib/ΔVr・・・・(3)
(Ibは発熱素子7Aを流れる電流(A)、Vb(0)は実質的に未使用の充電バッテリー24の電圧(V)、Vb(1)は使用された充電バッテリー24の電圧(V))
なお、Vb(0)は、初期状態の充電バッテリー24の電圧降下後の電圧であり、あらかじめ電圧値をデータテーブルとして作成するのが好ましい。これにより、印字前に充電バッテリー24の電圧降下後の電圧Vb(1)を測定することにより、内部抵抗rを計算で求めることができる。
【0074】
次に、内部抵抗rを考慮して補正値を算出する。この補正値は、次のようにして求めることができる。充電バッテリー24の電圧がVb(0)である場合のエネルギーEb(0)を基準として、充電バッテリー24の電圧がVb(1)である場合のエネルギーEb(1)との差を求め、エネルギーの差を補うための付加時間ΔTbを補正値として求める。
Eb(0)=Ib(0)
2×R×Tb・・・・(4)
Ib(0)=(Vb(0)−ΔVbt)/R・・・・・(5)
次に、印字直前での充電バッテリー24の電圧がVb(1)である場合のエネルギーEb(1)を求める。
Eb(1)=Ib(1)
2×R×Tb・・・・(6)
Ib(1)=(Vb(0)−ΔVbt−ΔVr)/R・・・・・(7)
Eb(0)とEb(1)との差を求める。
ΔEb=Eb(0)−Eb(1)・・・・(8)
このエネルギー差ΔEbを補うための補正値としての付加時間ΔTbが求められる。補正値を加えたエネルギーEb(1)が発熱素子7Aに印加される。
Eb(1)=Ib(1)
2×R×(Tb+ΔTb)・・・・(9)
(Ibは発熱素子7Aを流れる電流(A)、Rは発熱素子7Aの抵抗値(Ω)、Tbは通電時間(s)、Vb(0)は初期状態の充電バッテリー24の電圧(V)、ΔVbtは充電バッテリー24の温度変化に伴う内部抵抗rの変化に起因よる電圧降下量(V)、ΔVrは充電バッテリー24の使用よる内部抵抗rの変化に起因する電圧降下量(V))
補正値が求められると、印字制御回路55は分割印字制御を実行する(ステップ100)。
【0075】
分割印字制御では、CPU51はRAM53に記憶した印字データを読み出す。印字データからドットに展開し、エネルギーを印加すべき発熱素子7Aを、全ての発熱素子7Aの中から決定し、印字率を求める。印字率と充電バッテリー24の容量とに応じて、サーマルヘッド7を構成する複数の発熱素子7Aが、複数のブロックに分割、例えば、2分割、3分割等される。複数に分割されたブロック単位で、発熱素子7Aに対する、補正値を加えたエネルギーEb(1)が決定される。
【0076】
一括印字制御(ステップ80)、又は分割印字制御(ステップ100)である印字制御ステップを終えると、印字が決定された発熱素子7Aに濃度値に見合うエネルギーが印加され、ラベル等の印字対象物に印字が行われる(ステップ110)。駆動電源がACアダプター41Bであれば、印字すべき全ての発熱素子7Aに一括してエネルギーが印加される。駆動電源が充電バッテリー24であれば、ブロック単位で印字すべき全ての発熱素子7Aに分割してエネルギーが印加される。印字が終了すると、新たな印字要求(ステップ60)があるまで待機状態となる。新たな印字要求(ステップ60)があれば、上述したフローにしたがい、印字が実行される。
【0077】
上記実施の形態では、プリンター1として携帯式のものとしたが、本発明は、携帯式のプリンターに限らず、充電バッテリーとACアダプターとを駆動電源とするプリンターの全てに適用できる。また、ラベル連続体9に限らず、任意の種類の用紙に印字を行う任意のプリンターに適用できる。