(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166632
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】混合水栓使用状況表示システム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20060101AFI20170710BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20170710BHJP
G01F 15/06 20060101ALI20170710BHJP
G01F 15/075 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
G01F1/00 Y
E03C1/044
G01F15/06
G01F15/075
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-199148(P2013-199148)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-64308(P2015-64308A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100107490
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 鉄郎
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西尾美菜子
(72)【発明者】
【氏名】石黒 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菊原 啓明
(72)【発明者】
【氏名】高田 巌
(72)【発明者】
【氏名】椎名 広樹
(72)【発明者】
【氏名】安尾 貴司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 衛
(72)【発明者】
【氏名】林 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】和田 伸也
【審査官】
鈴木 斉子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−237486(JP,A)
【文献】
特開2013−113524(JP,A)
【文献】
特開2013−015284(JP,A)
【文献】
特開2009−025911(JP,A)
【文献】
特開2008−249281(JP,A)
【文献】
特開2010−281485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00
E03C 1/044
G01F 15/06
G01F 15/075
F24D 17/00
F24D 1/00
F24D 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器から給湯を受ける1以上の混合水栓の使用状況を表示するシステムであって、
該混合水栓の水側流量(Fw)及び温度(Tw)を計測する給水流量計測手段及び給水温度計測手段と、
該混合水栓の湯側流量(Fh)及び温度(Th)を計測する給湯流量計測手段及び給湯温度計測手段と、
計測した水側及び湯側の流量及び温度に基づいて、水道使用量、エネルギー使用量又は光熱費のいずれか1以上の瞬時値又は開栓された後閉栓されるまでの開栓1回ごとの積算値のいずれか又は両方を演算する使用量演算手段と、
該混合水栓の連続的又は断続的な行為単位の給湯使用を規定可能とする手段と、
各計測手段による計測結果、使用量演算手段による演算結果を用いて該行為単位の給湯使用を規定可能とする手段により規定された間の該混合水栓の開栓状況を表示する使用状況表示手段と、を備えて成ることを特徴とする混合水栓使用状況表示システム。
【請求項2】
前記使用状況表示手段が、使用者が前記混合水栓の使用状況をリアルタイムで認識可能な設置位置変更自在な装置であることを特徴とする請求項1に記載の混合水栓使用状況表示システム。
【請求項3】
前記水道使用量、前記エネルギー使用量、前記光熱費の瞬時値又は積算値が、それぞれについて予め定めた閾値を超えたときは警報発報又は/及び警報表示する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の混合水栓使用状況表示システム。
【請求項4】
前記閾値を段階的に設定し、かつ、閾値レベルに対応して警報発報回数又は/及び警報音量を段階的に設定したことを特徴とする請求項3に記載の混合水栓使用状況表示システム。
【請求項5】
前記閾値を段階的に設定し、かつ、閾値レベルに対応する段階的警報表示を、視覚的に判別可能に構成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の混合水栓使用状況表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混合水栓使用状況表示システムに係り、特に家庭等における利用者の節水・節湯意識の向上に効果的な混合水栓使用状況表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭等におけるエネルギー管理の一環として、水道、ガス使用量を表示する装置、システムに関する技術が公知である。
まず、毎月の水道使用量積算値を表示して月別の比較を可能とし、居住者の生活管理と省エネ意識向上を目的とする装置が提案されている(例えば特許文献1)。
また、利用者が水使用量や水道料金、通水時間などの目標の設定や、使用実績の確認を可能とする技術も提案されている(例えば特許文献2)。
【0003】
また、既設の水道メータやガスメータにパルス発生器を取り付けて、計測した流体使用量を宅内などのメータから離れた場所で表示可能な流体使用量表示システムに関する技術も提案されている(例えば特許文献3)。
さらに、家庭内の各水道端末(蛇口)流量表示部及び積算流量表示部を設けることにより、利用者が日常生活のなかで随時、瞬間使用量及び当月の積算流量を知ることができる技術も提案されている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−164591号公報
【特許文献2】特開2002−162281号公報
【特許文献3】特開2005−147722号公報
【特許文献4】特開平11−61906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記各技術は、いずれも水道又はガス個別の使用状況を表示するものであり、混合水栓使用に伴う給水、給湯、ガス使用状況を総合的に表示するものではない。
また、一定期間(例えば月ごと)の累計使用量を表示するものであり、瞬時値を表示するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためのものであって、特定した混合水栓について水道、ガス使用量や光熱費計を表示可能とするシステムを提供するものである。本発明は以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る混合水栓使用状況表示システムは、
(1)給湯器から給湯を受ける1以上の混合水栓の使用状況を表示するシステムであって、
該混合水栓の水側流量(Fw)及び温度(Tw)を計測する給水流量計測手段及び給水温度計測手段と、
該混合水栓の湯側流量(Fh)及び温度(Th)を計測する給湯流量計測手段及び給湯温度計測手段と、
計測した水側及び湯側の流量及び温度に基づいて、水道使用量、エネルギー使用量又は光熱費のいずれか1以上の瞬時値又は開栓ごとの積算値のいずれか又は両方を演算する使用量演算手段と、
該混合水栓の一連の給湯使用行為単位を判定可能とする手段と、
各計測手段による計測結果、使用量演算手段による演算結果、又は、一連の給湯使用行為単位の該混合水栓開栓状況のいずれか1以上を表示する使用状況表示手段と、を備えて成ることを特徴とする。
【0007】
本発明において「光熱費」とは、混合水栓開栓に伴う水道使用及びエネルギー料金(例えば都市ガス、電気料金等)をいう。光熱費の具体的演算内容については後述する。
また、「瞬時値」とは、混合水栓開栓時における単位時間当たり使用量等をいい、「積算値」とは、栓開栓1回ごとの使用量等、単位期間(日、月、年等)当たり使用量等をいう。
また、「混合水栓開栓状況」とは、使用ごとの混合水栓開栓時間、混合水栓開栓回数、1回あたり平均開栓時間等をいう。
また、「一連の給湯使用行為単位」とは、例えばキッチン混合水栓について食器洗いや調理のための連続的又は断続的な使用、風呂混合について入浴、シャワー利用の際の連続的又は断続的な使用をいう。
なお、給湯使用行為単位の判定は、例えば使用状況表示手段にスタート・ストップスイッチを設け、利用者がスイッチのON−OFF操作により可能となる。
さらに、予め標準的な使用パターンに基づく判定テーブルを備えておき、利用者ごとの実績に基づいて学習機能により、随時、テーブルを補正可能とする方法によることもできる。
【0008】
(2)上記発明において、前記使用状況表示手段が、使用者が前記混合水栓の使用状況をリアルタイムで認識可能な設置位置変更自在な装置であることを特徴とする。
上記「設置位置変更自在な装置」としては、タブレット端末装置、スマートフォン等が例示される。汎用のタブレット端末装置、スマートフォンにより表示可能とすることにより、専用の表示装置を必要とせず、コスト削減、及び、利用者の嗜好に合致する表示装置を利用できるという効果がある。
【0009】
(3)上記各発明において、前記水道使用量、前記エネルギー使用量、前記光熱費の瞬時値又は積算値が、それぞれについて予め定めた閾値を超えたときは警報発報する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
【0010】
(4)上記発明において、前記閾値を段階的に設定し、かつ、閾値レベルに対応して警報発報回数又は/及び警報音量を段階的に設定したことを特徴とする。
【0011】
(5)上記発明において、前記閾値を段階的に設定し、かつ、閾値レベルに対応する段階的警報表示を、視覚的に判別可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記各発明によれば、給湯使用状況の瞬時値を「見える化」したため、利用者が給湯使用に伴うエネルギー消費実態を時系列的、かつ、視覚的に把握することができ、省資源、省エネルギー意識の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一の実施形態に係る混合水栓使用状況表示システム1の全体構成を示す図である。
【
図2】混合水栓使用状況表示システム1の給湯制御フローを示す図である。
【
図3】第一の実施形態に係るタブレット端末6の表示内容の例を示す図である。
【
図4】第二の実施形態に係るタブレット端末20の表示内容の例を示す図である。
【
図5】第二の実施形態における給湯制御フローを示す図である。
【
図6】多段階の閾値レベルに対応するタブレット端末6’の表示内容の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る混合水栓使用状況表示システムの各実施形態について、
図1乃至5を参照してさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0015】
(第一の実施形態)
図1を参照して、本実施形態に係る混合水栓使用状況表示システム1は、給湯系統1A及び制御系統1Bにより構成されている。
給湯系統1Aは、キッチンシンク(図示せず)に配設される混合水栓(以下、適宜、水栓と略記する)2と、混合水栓2に湯を供給する給湯器7と、水道配管8に直結する給水配管8aと、給湯器7と混合水栓2とを結ぶ給湯配管8bと、を主要構成として備えている。給湯器7は、都市ガス配管7aから供給される13A都市ガスをエネルギー源として、分岐配管8cを介して供給される水をバーナ(図示せず)で加熱して湯を作り、混合水栓2に供給可能に構成されている。
【0016】
制御系統1Bは、給水配管8a経路内に配設される温度センサS1,流量センサS2と、給湯配管8b経路内に配設される温度センサS3,流量センサS4と、各センサ(S1〜S4)の計測データを取り込んでインターネット通信プロトコルに変換して送信するデータ変換装置3と、データ送受信を中継するルーター4と、混合水栓使用状況表示用のタブレット端末6と、データ処理及び本システムの制御を司るサーバー(PC)5と、を主要構成として備えている。また、サーバー5、データ変換装置3、ルーター4、タブレット端末6を含んで、家庭内LANを構築している。
【0017】
データ変換装置3は、各センサから取り込んだ計測値データをインターネット・プロトコルに準拠してデータ変換し、ルーター4を中継してサーバー5に送信可能に構成されている。データ変換装置3はCPU、RAM、ROM、メモリ,クロックを主要構成として備えたマイコンにより実装可能である。
サーバー5は、取り込んだ計測値データに基づいて後述する演算処理を行い、表示用データに加工してタブレット端末6に送信する一連の制御プログラムを格納している。
【0018】
タブレット端末6は、サーバー5から受信する表示用データを後述する形式で画面に表示するアプリケーション・ソフトウエアを格納している。また、表示画面には警告灯6aが設けられており、後述するように所定の場合にこれを点滅させて、注意を喚起するように構成されている。
タブレット端末6は、利用者が使用量等をその場で確認できるようにシンク脇に置かれている(見える化)。また、水に濡れることを考慮して防水ケース(図示せず)内に収められている。
【0019】
混合水栓使用状況表示システム1は以上のように構成されており、次に
図2を参照して混合水栓2開栓時の水栓使用状況表示制御フローについて説明する。
水栓2が開栓されると(S100)、各センサ(S1〜S4)により水側、湯側の流量、温度が計測される(S101)。計測データはデータ変換装置3に取り込まれ、ここでインターネット・プロトコル(TCP/IP)に準拠してデータ変換され、ルーター4を中継してサーバー5に送信される(S102)。
【0020】
サーバー5では計測データ及び開栓時間データに基づいて、水道、ガス使用量(瞬時値)の演算処理を行う。演算の具体的内容については後述する(S103)。なお、計測データ及び演算結果については、メモリ部(図示せず)に随時格納される。
表示対象データは、ルーター4を中継してタブレット端末6に送信される(S104)。
タブレット端末6はその内容を表示する(S105)。利用者は使用量を定量的、かつ、視覚的に知ることができ判断でき、湯量を絞る等、節水、節湯行動を容易に取ることができる。
【0021】
開栓中は、瞬時又は積算使用量が予め設定した閾値を超えているか否かが判定される(S106)。これに該当するときは(S106においてYES)、タブレット端末6の警告灯6aが点滅して注意を喚起する(S107)。この場合、注意喚起を段階的に設定し、例えば閾値の90%超えの場合に警告灯点滅、100%超えの場合に警報発報のようにしてもよい。
その後、混合水栓2が閉栓されるまでは(S103においてYES)、以上のステップが継続的に行われる。
【0022】
次に、サーバー5が行う計測データに基づく水使用量、ガス使用量等の演算は、表1に基づいて行われる。なお、ガス使用量はセンサS3,S4の計測値を用いて推定演算される。
【0024】
なお、本実施形態ではタブレット端末6の表示項目を表1の内容としたが、さらに各項目について月間、年間の値を表示してもよい。
【0025】
また、本実施形態では、キッチン混合水栓の使用状況のみ表示する例を示したが、これに限らず他の混合水栓、又は単水栓の使用状況をタブレット端末等で選択表示可能とする構成としてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、警告灯点滅、警報発報を2段階とする例を示したが、さらに閾値レベルを多段階(例えば5段階)に設定してもよい。さらに、
図6のタブレット端末6’に示すように5段階のドット表示部を有する警告灯6bとし、閾値レベルに対応して点灯する表示部の数を順次増加させる構成とすることができる。これにより、利用者は視覚により定量的な使用状況を容易に確認できるため、注意喚起のさらなる促進が可能となる。
また、警報発報の回数、音量を多階的に設定して、閾値レベルに対応して発報の回数、音量を順次増加させる構成とすることにより、聴覚を利用して上記と同様の効果をもたらすことができる。
【0027】
(第二の実施形態)
次に本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態の構成が第一の実施形態と異なる点は、タブレット端末の構成である。すなわち、
図4を参照して、本実施形態に係るタブレット端末20は、給湯使用行為単位を判定可能とするための操作スイッチ21を備えていることである。さらに、サーバ5は上述の各機能に加えて、スイッチ21のON−OFF間の時間データに基づいて、給湯使用行為単位ごとの使用状態累積値の演算、表示データの作成を行う機能を備えている。その他の構成は上述の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
【0028】
次に、
図5を参照して、本実施形態におけるタブレット端末20への給湯使用行為単位の表示の態様について説明する。利用者が例えば食器洗いに先立って、予め操作スイッチ21を押すことにより(S201においてYES)、給湯使用行為単位表示のフローが適用される。すなわち、水栓2の開栓により(S202)、各センサ(S1〜S4)により水側、湯側の流量、温度が計測される(S203)。計測データはデータ変換装置3に取り込まれ、ルーター4を中継してサーバー5に送信される(S204)。
【0029】
サーバー5では、操作スイッチ21がONの状態にある間は、混合水栓2の開閉の都度の水道、ガス使用量、光熱費の瞬時値及び累積値の演算処理を行う(S205)。表示対象データはルーター4を中継してタブレット端末6に送信され(S206)、タブレット端末21に瞬時データ22及び積算データ23が表示される(S207)。
その後、操作スイッチ21が再度押されるまで(S208においてNO)、上記ステップが継続的に行われる。
【0030】
S201においてNO、すなわち利用者が開栓前に操作スイッチ21を押さなかった場合には、上述の実施形態のS100〜S108(
図2参照)のステップが行われる(S209)。
【0031】
なお、本実施形態においても上述の実施形態と同様、操作スイッチON継続中の瞬時又は累積使用量が閾値超えの場合に、警告灯点滅、警報発報を行う態様とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、エネルギー源、加熱方式(瞬間式、貯湯式)を問わず、給湯配管を介してお湯を供給する給湯器に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・・・混合水栓使用状況表示システム
1A・・・・給湯系統
1B・・・・制御系統
2・・・・・混合水栓
3・・・・・データ変換装置
4・・・・・ルーター
5・・・・・サーバー
6、6’、20・・・・・タブレット端末
7・・・・・給湯器
8a・・・・給水配管
8b・・・・給湯配管
S1、S3・・・・温度センサ
S2、S4・・・・流量センサ