【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持層と、前記支持層に接する少なくとも1つの粘着剤層とを有する粘着テープであって、前記支持層の厚みは0.5〜5μm、前記粘着剤層の厚みは20μm以下であり、前記支持層は、常温における引っ張り弾性率が500〜2000MPaかつショアD硬度が55以上である樹脂からなる粘着テープである。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、支持層と、前記支持層に接する少なくとも1つの粘着剤層とを有する粘着テープにおいて、前記支持層及び前記粘着剤層の厚みを特定範囲に調整し、更に、前記支持層を構成する樹脂の常温における引っ張り弾性率及びショアD硬度を特定範囲に調整することにより、極めて薄いものでありながら、接着性に優れ、かつ、粘着テープを精度よく加工できる、加工が容易な粘着テープを見出した。
【0008】
本発明の粘着テープは、支持層と、上記支持層に接する少なくとも1つの粘着剤層とを有する。
上記支持層は、常温における引っ張り弾性率が500〜2000MPaかつショアD硬度が55以上である樹脂からなる。このような支持層は、粘着テープの支持層として必要な強度と柔軟性とに優れるものである。従って、このような支持層を有することにより、本発明の粘着テープは、極めて薄いものでありながら、接着性に優れ、かつ、幅の狭い帯に加工するときにテープ幅の寸法精度が充分となり、複雑な形状に加工するときにも形状が保たれ、充分な寸法精度が得られる。
なお、上記支持層が無ければ、粘着剤層のみのテープとなり、粘着テープを加工するときに加工刃に粘着剤が付着し、加工刃の圧力で粘着剤層が押しつぶされ、加工精度が悪化しやすい。
【0009】
上記引っ張り弾性率が500MPa未満であると、上記支持層の強度が低下し、粘着テープを加工するときに加工刃の圧力で粘着テープが変形しやすく、粘着テープの加工が難しくなる。上記引っ張り弾性率が2000MPaを超えると、上記支持層の強度が強くなりすぎ、粘着テープが微細な凹凸の多い部材表面には密着しにくくなって、接着性が低下する。上記引っ張り弾性率の好ましい下限は550MPa、好ましい上限は1800MPaであり、より好ましい下限は600MPa、より好ましい上限は1700MPaである。
なお、常温における引っ張り弾性率は、フィルム状に成形した樹脂に対して、引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製のオートグラフ万能試験機AGS−X)を用いて引張速度50mm/minの条件で測定できる。本明細書において常温とは、23±1℃を意味する。また、本明細書において湿度条件を調整する必要が特に無い場合、湿度は50±5%とする。
【0010】
上記ショアD硬度が55未満であると、上記支持層の強度が低下し、粘着テープを加工するときに加工刃の圧力で粘着テープが変形しやすく、粘着テープの加工が難しくなる。上記ショアD硬度の好ましい下限は60、より好ましい下限は70である。
上記ショアD硬度の上限は特に限定されないが、一般的に入手可能な樹脂の硬度を考慮すると、好ましい上限は90である。
なお、ショアD硬度は、平板状に成形した樹脂に対して、常温においてショアD硬度計(例えば、テクロック社製のタイプDデュロメータGS−702N)を用いて測定できる。
【0011】
上記支持層を構成する樹脂は、常温における伸びの好ましい下限が3%、好ましい上限が300%である。上記伸びが3%未満であると、粘着テープが微細な凹凸の多い部材表面には密着しにくくなって、接着性が低下することがある。上記伸びが300%を超えると、加工刃で粘着テープを切り取ったときに生じる余分な粘着テープを除去するときに、上記支持層が引っ張られ、上記支持層が伸びて、所定形状に加工された粘着テープの寸法が変わってしまうことがある。これにより、粘着テープの加工精度が悪化することがある。上記伸びのより好ましい下限は3.5%、より好ましい上限は250%である。
なお、常温における伸びは、フィルム状に成形した樹脂に対して、引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製のオートグラフ万能試験機AGS−X)を用いて引張速度50mm/minの条件で測定できる。
【0012】
上記支持層を構成する樹脂は、常温における破断強度が20N/mm
2以上であることが好ましい。上記破断強度が20N/mm
2未満であると、上記支持層の強度が低下し、粘着テープを加工するときに上記支持層がちぎれる等の不具合が生じ、粘着テープの加工が難しくなることがある。上記破断強度は25N/mm
2以上であることがより好ましい。
上記破断強度の上限は特に限定されないが、一般的に入手可能な樹脂の破断強度を考慮すると、好ましい上限は100N/mm
2である。
なお、常温における破断強度は、フィルム状に成形した樹脂に対して、引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製のオートグラフ万能試験機AGS−X)を用いて引張速度50mm/minの条件で測定できる。
【0013】
上記支持層を構成する樹脂は、常温における引っ張り弾性率、ショアD硬度、更には必要に応じて常温における伸び、常温における破断強度が上記範囲を満たすように選択される必要があり、重量平均分子量5000〜80000及び/又はガラス転移温度(Tg)25〜110℃の樹脂が好ましい。このような樹脂として、例えば、非結晶性ウレタン樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、非結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
なお、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によりポリスチレン換算分子量として測定された値であり、ガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential scanning calorimetry:示差走査熱量測定)法により測定された値である。
【0014】
上記非結晶性ウレタン樹脂は特に限定されず、例えば、脂肪族ジイソシアネートと脂肪族ジオールとを反応させたウレタン樹脂や、多官能イソシアネートと脂肪族ジオールとを反応させたウレタン樹脂等が挙げられる。
上記脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、ジメチレンジイソシアネート、ジエチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
上記脂肪族ジオールとして、例えば、エチレンジオール、プロピレンジオール等のポリエチレングリコールが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記非結晶性ポリエステル樹脂は特に限定されず、例えば、脂肪族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル等と脂肪族ジオールとを反応させたポリエステル樹脂が挙げられる。
上記脂肪族ジカルボン酸として、例えば、フタル酸、アジピン酸等が挙げられる。上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステルとして、例えば、フタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0016】
上記支持層の厚みは、0.5〜5μmである。上記支持層の厚みが0.5μm未満であると、上記支持層の強度が低下し、粘着テープを加工するときに上記支持層がちぎれる等の不具合が生じ、粘着テープの加工が難しくなる。上記支持層の厚みが5μmを超えると、粘着テープが厚くなりすぎるため、携帯電話、スマートフォン等に用いられる粘着テープには適さなくなる。上記支持層の厚みの好ましい下限は1.0μm、好ましい上限は4.5μmであり、より好ましい下限は2.0μm、より好ましい上限は4.0μmである。
【0017】
上記支持層を形成する方法として、上記支持層を構成する樹脂を溶剤に溶かした塗工液を調製し、転写フィルムの上にキャスティング法によって厚み0.5〜5μmのキャスティングフィルムを形成する方法が挙げられる。
【0018】
上記転写フィルムは、離型フィルムであれば特に限定されず、例えば、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系フィルム等が挙げられる。なかでも、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、離型性のあるポリプロピレンフィルムが好ましい。
上記支持層を構成する樹脂を溶かした塗工液に用いる溶剤は、上記樹脂を溶解する溶剤であれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0019】
上記転写フィルムの上にキャスティング法によって厚み0.5〜5μmのキャスティングフィルムを形成する方法は特に限定されないが、上記転写フィルムの上に上記塗工液を塗工した後、上記塗工液を乾燥させる方法が好ましい。より具体的には、例えば、汎用されているキャスティング装置を用いて上記転写フィルムの上に上記塗工液を塗工し、所定厚みの塗工層を形成した後、乾燥炉を通過させることで、所定厚みのキャスティングフィルムを形成することができる。
【0020】
本発明の粘着テープは、上記支持層に接する少なくとも1つの粘着剤層を有する。
なお、本発明の粘着テープは、上記支持層と、上記支持層に接する少なくとも1つの粘着剤層とを有していれば、上記支持層の片面に上記粘着剤層が形成された片面粘着テープであってもよいし、上記支持層の両面に上記粘着剤層が形成された両面粘着テープであってもよい。
上記粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂粘着剤、ウレタン樹脂粘着剤、合成ゴム粘着剤、ポリエステル樹脂粘着剤等が挙げられる。
【0021】
上記粘着剤層の厚みは、20μm以下である。上記粘着剤層の厚みが20μmを超えると、粘着テープが厚くなりすぎるため、携帯電話、スマートフォン等に用いられる粘着テープには適さなくなる。上記粘着剤層の厚みの好ましい上限は18μm、より好ましい上限は16μmである。
上記粘着剤層の厚みの下限は特に限定されないが、好ましい下限は0.5μmである。上記粘着剤層の厚みが0.5μm未満であると、上記粘着剤層の接着性が低下し、携帯電話、スマートフォン等に用いられる粘着テープには適さなくなる。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は1.0μmである。
【0022】
上記粘着剤層を形成する方法として、上記支持層の片面又は両面に厚み20μm以下の粘着剤層を形成する方法が好ましい。より具体的には、例えば、上記支持層の一方の表面にキャスティング法等を用いて厚み20μm以下の粘着剤層を形成した後、上記支持層から上記転写フィルムを剥がす方法が挙げられる。
なお、両面粘着テープを製造するには、続けて上記支持層の他方の表面にキャスティング法等を用いて厚み20μm以下の粘着剤層を更に形成する。両面粘着テープを製造する際には、上記支持層の片面にいずれかの粘着剤層を先に形成してもよく、上記支持層の両面に粘着剤層を同時に形成してもよい。また、上記支持層から上記転写フィルムを剥がすタイミングは、特に限定されない。
本発明の粘着テープは、上記支持層がキャスティングフィルムであり、上記支持層の片面又は両面に上記粘着剤層を形成させて得たものであることが好ましい。
【0023】
本発明の粘着テープは、常温における引っ張り弾性率の好ましい下限が50MPa、好ましい上限が300MPaである。上記引っ張り弾性率が50MPa未満であると、粘着テープを加工するときに加工刃の圧力で粘着テープが変形しやすく、粘着テープの加工が難しくなることがある。上記引っ張り弾性率が300MPaを超えると、粘着テープが微細な凹凸の多い部材表面には密着しにくくなって、接着性が低下することがある。上記引っ張り弾性率のより好ましい下限は55MPa、より好ましい上限は200MPaである。
なお、常温における引っ張り弾性率は、引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製のオートグラフ万能試験機AGS−X)を用いて引張速度200mm/minの条件で測定できる。
【0024】
本発明の粘着テープは、常温における破断強度が1.0N/mm
2以上であることが好ましい。上記破断強度が1.0N/mm
2未満であると、粘着テープを加工するときに上記支持層がちぎれる等の不具合が生じ、粘着テープの加工が難しくなることがある。上記破断強度は1.2N/mm
2以上であることがより好ましい。
上記破断強度の上限は特に限定されないが、好ましい上限は10.5N/mm
2である。
なお、常温における破断強度は、引っ張り試験機(例えば、島津製作所社製のオートグラフ万能試験機AGS−X)を用いて引張速度200mm/minの条件で測定できる。
【0025】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、本発明の粘着テープは、極めて薄い粘着テープが要望されている用途に適しており、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット等における表示部材用カバーガラス、太陽電池用カバーガラス、プラズマディスプレイ用カバーガラス等を固定する両面粘着テープとして使用することができる。また、本発明の粘着テープは、携帯電話、スマートフォン、タブレット等における電子部品の端子、配線フィルム基板等を固定する片面粘着テープとして使用することもできる。
本発明の粘着テープは、精度よく加工できる、加工が容易な粘着テープであり、幅の狭い帯に加工するときにテープ幅の寸法精度が充分となり、複雑な形状に加工するときにも形状が保たれ、充分な寸法精度が得られる。