【実施例1】
【0014】
図1に示すように、本実施例の眼科装置は、被検眼100を検査するための測定部10を有している。測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。アライメント光学系は、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0015】
干渉光学系14は、光源12と、光源12からの光を被検眼100の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系(24,72,48)と、光源12からの光を参照面22aに照射すると共にその反射光を導く参照光学系(24,22)と、光源12からの光を反射面(74a,74b)に照射すると共にその反射光を導く波長掃引速度検出用光学系(24,72,74)と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた反射光とが合成された測定用干渉光と、波長掃引速度検出用光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた反射光とが合成された波長掃引速度検出用干渉光とを受光する受光素子26によって構成されている。
【0016】
光源12は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化するようになっている。すなわち、本実施例の眼科装置では、光源12から出射される光を、その波長を変化(掃引)させながら被検眼100に照射する。そして、被検眼100からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得る。被検眼100の深さ方向の光強度分布が得られると、後述するように、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。なお、光源12から照射される光は、その波長が時間に対してリニア(直線的)に変化することが望ましいが、実際には非線形性を有している。また、この非線形性は、光源12毎の特性であるため変化しないが、波長掃引速度が掃引毎(周期毎)に変化する。これを適時に補正するため、本実施例では、光源12の波長掃引の非線形性をリスケーリングデータを用いて補正する際、そのリスケーリングデータを掃引毎に光源12の波長掃引速度で補正する(後で詳述)。掃引毎に波長掃引速度でリスケーリングデータを補正するため、掃引毎の波長掃引速度の変化が補正され、断層画像の精度を向上することができる。
【0017】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ビームスプリッタ72と、ホットミラー48によって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24、ビームスプリッタ72及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ビームスプリッタ72及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。
【0018】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と参照ミラー22によって構成されている。光源12から出射された光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22の参照面22aに照射され、参照ミラー22の参照面22aによって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22は移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に参照ミラー22を移動して、測定光路長と参照光路長を一致させるようになっている。なお、本実施例のように、波長掃引型の光源12を用いたフーリエドメイン方式の場合は、その後の測定中において参照ミラー22は移動しない。
【0019】
波長掃引速度検出用光学系は、ビームスプリッタ24と、ビームスプリッタ72と、光学部材74によって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24及びビームスプリッタ72を介して光学部材74に照射される。すなわち、光源12から出射された光は、ビームスプリッタ72によって測定光学系から分岐され、分岐された光が光学部材74に照射される。光学部材74は、その一端に設けられた第1反射面74aと、その他端に設けられた第2反射面74bを有している。したがって、光学部材74に照射される光の一部は、第1反射面74aで反射され、その残りが光学部材74内に入射する。光学部材74内に入射した光の一部は、第2反射面74bで反射され、残りは光学部材74から外部に照射される。第1反射面74aで反射された光と第2反射面74bで反射された光は、ビームスプリッタ72及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。本実施例では、光源12の波長掃引速度を検出するために、一方の反射面(例えば、第1反射面74a)から反射された反射光が利用される。なお、光学部材74の形状は既知であるため、第1反射面74aと第2反射面74bとの距離も既知となる。このため、第1反射面74aで反射された反射光と第2反射面74bで反射された反射光の両者を用いることで、被検眼100の各部の寸法(眼軸方向の寸法(例えば、眼軸長))を正確に算出することができる。また、光学部材74の形状精度を高めることで、この光路長の差を精度良く管理することが可能となり、被検眼100の各部の寸法を精度よく算出することができる。
【0020】
ここで、本実施例の波長掃引速度検出用光学系では、光学部材74が光軸方向に移動可能となっている。具体的には、光学部材74は、第2駆動装置56(
図2に図示)が第2位置調整機構18(
図2に図示)を駆動することで、光軸方向の位置が調整可能となっている。これによって、光源12から各反射面74a,74bまでの光路長が調整可能となっている。本実施例では、被検眼100の断層画像を撮影する際は、ゼロ点から第1反射面74aまでの光路長、及び、ゼロ点から第2反射面74bまでの光路長が、ゼロ点から被検眼100(実際に検査対象となる被検眼)の網膜までの距離よりも長くなるように、光学部材74が位置決めされる。これによって、被検眼100の断層画像を撮影する際に、光学部材74による影響を無くすことができる。ここで、ゼロ点とは、参照光学系の光路長(参照光路長)と物体光学系の光路長(物体光路長)とが同一となる点を意味する(
図3参照)。
【0021】
なお、光学部材74としては、例えば、光学ガラスを用いることができる。光源12からの光を光学ガラスに照射することで、光学ガラスの一端(入射面)を第1反射面74aとして機能させ、光学ガラスの他端(出射面)を第2反射面74bとして機能させることができる。光学部材74の他の例としては、例えば、光学プラスチック等を用いることができる。
【0022】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した測定用干渉光と、参照光学系により導かれた光と波長掃引速度検出用光学系により導かれた光とを合成した波長掃引速度検出用干渉光を検出する。上述の説明から明らかなように、波長掃引速度検出用干渉光には、第1反射面74aで反射された光(第1光路部により導かれた光)と参照光学系により導かれた光を合成した第1波長掃引速度検出用干渉光と、第2反射面74bで反射された光(第2光路部により導かれた光)と参照光学系により導かれた光を合成した第2波長掃引速度検出用干渉光が含まれる。したがって、受光素子26は、測定用干渉光と第1波長掃引速度検出用干渉光と第2波長掃引速度検出用干渉光を検出する。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
【0023】
観察光学系50は、被検眼100にホットミラー48を介して観察光を照射すると共に、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された観察光の反射光)を撮影する。ここで、ホットミラー48は、干渉光学系の光源12からの光を反射する一方で、観察光学系50の光源からの光を透過する。このため、本実施例の眼科装置では、干渉光学系による測定と、観察光学系50による前眼部の観察を同時に行うことができる。なお、観察光学系50には、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
【0024】
なお、本実施例の眼科装置では、被検眼100に対して測定部10の位置を調整するための第1位置調整機構16(
図2に図示)と、その第1位置調整機構16を駆動する第1駆動装置54(
図2に図示)を備えている。第1駆動装置54を駆動することで、被検眼100に対する測定部10の位置が調整される。
【0025】
次に、本実施例の眼科装置の制御系の構成を説明する。
図2に示すように、眼科装置は演算装置64によって制御される。演算装置64は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)と高速演算用ゲートアレイによって構成されている。演算装置64には、光源12と、第1駆動装置54と、モニタ62と、第2駆動装置56と、観察光学系50が接続されている。演算装置64は、光源12のオン/オフを制御し、第1駆動装置54を制御することで第1位置調整機構16を駆動し、第2駆動装置56を制御することで第2位置調整機構18を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。また、演算装置64には、受光素子26が接続され、受光素子26で検出される干渉光(すなわち、測定用干渉光,第1波長掃引速度検出用干渉光,第2波長掃引速度検出用干渉光)の強度に応じた干渉信号が入力される。演算装置64のメモリには、光源12の波長掃引速度の非線形性を補正するためのリスケーリングデータ(後述)が格納されている。演算装置64は、受光素子26からの干渉信号から、周期毎に光源12の波長掃引速度の変動量を特定し、特定した波長掃引速度の変動量に基づいてリスケーリングデータを補正する。そして、補正したリスケーリングデータを用いて、等時間間隔でサンプリングされた測定用干渉信号を等周波数間隔でリスケーリングし、そのリスケーリングされた干渉信号をフーリエ変換する。これによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、これらを用いて被検眼100の断層画像を撮影する。なお、演算装置64による処理の詳細については後述する。
【0026】
ここで、演算装置64のメモリに格納されるリスケーリングデータについて説明する。リスケーリングデータは、光源12からの光の波長を掃引した時における光の「周波数(波数)−時間」の関係を規定する。すなわち、
図4に示すように、光源12から出射される光の波数kは、時間tに対して比例関係とはならない。このため、波数k
iからk
i+1となるまでの時間(t
i+1−t
i)は一定とはならず、波数(周波数)により変化する。
図4の例では、波数kが大きくなるほど、その波数がk
iからk
i+1となるまでの時間が短くなる。このため、受光素子26から出力される干渉信号を等時間間隔でサンプリングすると、光源12の周波数(波長)と時間の関係が比例関係でないことから、等時間間隔でサンプリングした干渉信号には、周波数の誤差が含まれることになる。その結果、等時間間隔でサンプリングした信号をフーリエ変換しても、被検眼100の各部の位置が正確には現れないこととなる。そこで、本実施例では、
図4示すリスケーリングデータを用いて、等時間間隔でサンプリングした信号を等周波数間隔でリスケーリングする。なお、リスケーリングデータの作成、及び、リスケーリングデータを用いたリスケーリングは、公知の方法により行うことができる。
【0027】
次に、本実施例の眼科装置により断層画像を撮影する際の手順を説明する。
図8に示すように、まず、演算装置64は、被検眼100に対して測定部10の位置合わせを行う(S10)。具体的には、検査者は、被検眼100の検査を行うために、図示しないジョイスティック等の操作部材を操作する。演算装置64は、検査者の操作部材の操作に応じて、第1駆動装置54により位置調整機構16を駆動する。これによって、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。また、演算装置64は、図示しない焦点調整機構及びゼロ点調整機構を調整することで、光源12から被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、網膜106)となり、また、物体光路長と参照光路長が一致するゼロ点の位置が被検眼100に対して所定の位置(例えば、角膜102の前面からわずかに光源12側にずれた位置)となる。なお、ゼロ点の位置は、網膜106に対して光源12側にわずかにずれた位置に調整してもよい。なお、本実施例では、光学部材74は、ゼロ点から第1反射面74aまでの光路長、及び、ゼロ点から第2反射面74bまでの光路長が、ゼロ点から被検眼100の網膜までの距離よりも長くなるように位置決めされている。
【0028】
次に、演算装置64は、光源12から照射される光の周波数(例えば、f
1〜f
2))を周期的に変化させながら、受光素子26で検出される信号を等時間間隔で取り込む(S12)。既に説明したように、被検眼100の断層画像を撮影する際に、受光素子26で受光する干渉光には、被検眼100の深さ方向の各部位から反射された光が含まれている。すなわち、受光素子26から出力される干渉信号は、光源12から照射される光の掃引(周期)毎に、
図5に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号には被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)及び第1、第2反射面74a,74bから反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号が含まれている。本実施例では、演算装置64は、受光素子26から出力される干渉信号(すなわち、被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)及び第1、第2反射面74a,74bから反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号)を等時間間隔でサンプリングするため、サンプリングした干渉信号には、光源12の非線形性(周波数による掃引速度変化、掃引毎の掃引速度変化)による誤差が含まれている。そこで、演算装置64は、ステップ12で得られた干渉信号の中の第1反射面74aからの反射光と参照光との合波による干渉波から得られた信号を波長掃引速度検出用干渉信号とし、この波長掃引速度検出用干渉信号と、メモリに格納されたリスケーリングデータを用いて、測定用干渉信号(被検眼からの反射光と参照光との合波による干渉信号)をリスケーリングする補正処理を実行する(S14)。
【0029】
ステップS14の補正処理について、
図9のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
図9に示すように、演算装置64は、まず、ステップS12で得られたデータ群の中から、光源12の周波数を1周期だけ変化させたときに得られた1つのデータ群を選択し、その選択したデータ群を処理することで第1反射面74aの基準深さ位置z(O)を保存する(S26)。すなわち、ステップS12では、光源12から被検眼100に照射される光の周波数を掃引し、演算装置64は、そのときに受光素子26から出力される干渉信号を等時間間隔でサンプリングする。したがって、光源12の周波数を複数周期だけ掃引すると、演算装置64には、複数周期分の干渉信号がサンプリングされ記憶される。ステップS26では、ステップS12で得られる複数の干渉信号の中から1つの干渉信号を選択する。そして、選択された干渉信号のうち波長掃引速度検出用の干渉信号(すなわち、第1反射面74aから反射される反射光と参照光により生成される干渉信号)に対して、メモリに格納されているリスケーリングデータを用いてリスケーリングする。すなわち、等時間間隔でサンプリングされた波長掃引速度検出用干渉信号を、等周波数間隔でサンプリングされた波長掃引速度検出用干渉信号に変換する。次いで、リスケーリングした干渉信号(等周波数間隔でサンプリングした波長掃引速度検出用干渉信号)をフーリエ変換することで、第1反射面74aの深さ位置z(O)を算出し、その算出した深さ位置を基準深さ位置z(O)としてメモリに保存する。
【0030】
なお、上述した例では、ステップS12で取得されたデータ群(干渉信号群)の中から基準となる干渉信号(詳細には、波長掃引速度検出用干渉信号)を選択する方法は、種々の方法を採ることができる。例えば、最初に取得された干渉信号(波長掃引速度検出用干渉信号)を選択してもよい。あるいは、被検眼100の断層画像を撮影する前に、複数周期分の干渉信号を取得し、その中の1つを任意に選択してもよい。さらには、取得した複数周期分の干渉信号を平均し、その平均した干渉信号を用いてもよい。
【0031】
次に、演算装置64は、被検眼100の断層画像の撮影を開始する(S28)。すなわち、演算装置64は、光源12から照射される光の周波数(例えば、f
1〜f
2)を周期的に変化させながら、受光素子26から出力される干渉信号(測定用干渉信号及び波長掃引速度検出用干渉信号)を等時間間隔で取り込む。これにより、演算装置64は、等時間間隔でサンプリングされた干渉信号を取得する。既に説明したことから明らかなように、演算装置64で取得される干渉信号には、第1反射面74aからの反射光と参照光とから生成される波長掃引速度検出用干渉信号と、被検眼からの反射光と参照光とから生成される測定用干渉信号とが含まれている。
【0032】
次に、演算装置64は、ステップS28で取得した干渉信号から、第1反射面74aの深さ位置z(n)を算出する(S30)。具体的には、ステップS28で取得した干渉信号に含まれる波長掃引速度検出用干渉信号(等時間間隔でサンプリングされたデータ)を、メモリに格納されているリスケーリングデータを用いてリスケーリングする。これによって、ステップS28で取得した波長掃引速度検出用干渉信号が、等周波数間隔でサンプリングされた波長掃引速度検出用干渉信号となる。次いで、リスケーリングした波長掃引速度検出用干渉信号(等周波数間隔でサンプリングされたデータ)をフーリエ変換し、第1反射面74aの深さ位置z(n)を算出する。
【0033】
次に、演算装置64は、ステップS26でメモリに保存した基準深さ位置z(O)と、ステップS30で算出された深さ位置z(n)の変動量から、メモリに格納されているリスケーリングデータを補正する(S32)。すなわち、ステップS26で処理した干渉信号が得られたときの光源12の波長掃引速度と、ステップS28で取得された干渉信号が得られたときの光源12の波長掃引速度とが同一であると、ステップS30で算出された深さ位置z(n)は基準深さ位置z(O)と同一となる。しかしながら、光源12の波長掃引速度が異なると、深さ位置z(n)は基準深さ位置z(O)と相違することとなる。例えば、
図7に示すように、基準深さ位置z(O)を取得したときの波長掃引速度vaより、深さ位置z(n)を取得したときの波長掃引速度vbが速くなると(vb>va)、深さ位置z(n)は基準深さ位置z(O)より深い位置に移動する。一方、基準深さ位置z(O)を取得したときの波長掃引速度vaより、深さ位置z(n)を取得したときの波長掃引速度vcが遅くなると(vc<va)、深さ位置z(n)は基準深さ位置z(O)より浅い位置に移動する。したがって、演算装置64は、深さ位置z(n)と基準深さ位置z(O)のずれ量から、波長掃引速度vの変動量を算出する。演算装置64は、波長掃引速度vの変動量を算出すると、その算出された変動量を用いて、メモリに格納されているリスケーリングデータを補正する。例えば、
図6に示す例では、波長掃引速度vaからvb(>va)となると、リスケーリングデータAがリスケーリングデータBとなり、また、波長掃引速度vaからvc(<va)となると、リスケーリングデータAがリスケーリングデータCとなる。リスケーリングデータのずれ量は、波長掃引速度のずれ量から算出することができるため、演算装置64は、波長掃引速度のずれ量が算出されると、その算出された波長掃引速度のずれ量を用いてリスケーリングデータを補正する。
【0034】
次に、演算装置64は、ステップS28で取得した干渉信号に含まれる測定用干渉信号(等時間間隔でサンプリングされた干渉信号の一部)を、ステップS32で補正したリスケーリングデータを用いてリスケーリングする(S34)。これによって、ステップS28で取得した測定用干渉信号(等時間間隔でサンプリングされたデータ)が、等周波数間隔でサンプリングされた測定用干渉信号となる。
【0035】
次に、演算装置64は、ステップS34でリスケーリングした測定用干渉信号(等周波数間隔でサンプリングされた測定用干渉信号)をフーリエ変換し、1次元の断層画像(以下、1次元の断層画像を表すデータをA−scanデータという)を作成する(S36)。作成されたA−scanデータは、演算装置64のメモリに格納される。
【0036】
次に、演算装置64は、ステップS28で開始した断層画像の撮影が終了しているか否かを判断する(S38)。断層画像の撮影が終了している場合(ステップS38でYES)は、演算装置64は、補正処理を終了する。一方、断層画像の撮影が終了していない場合(ステップS38でNO)は、演算装置64は、ステップS28に戻って、ステップS28からの処理を繰返す。これによって、ステップS28で取得される各周期の測定用干渉信号について補正処理が行われ、それらの測定用干渉信号から取得される各A−scanデータが演算装置64のメモリに格納される。
【0037】
図9に示す補正処理が終了すると、
図8のステップS16に戻り、演算装置64は、メモリに格納された複数のA−scanデータに対して積算処理などを実施して、被検眼の1次元断層画像(A−scan画像)を作成する(S16)。なお、演算装置64は、作成された1次元断層画像から、被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置を特定する(
図5参照)。被検眼100の1次元断層画像が作成されると、演算装置64は、その1次元断層画像をモニタ62に表示する(S18)。
【0038】
上述の説明から明らかように、本実施例に係る眼科装置では、光源12の波長掃引の周期毎に、その周期における波長掃引速度の変動量でリスケーリングデータを補正し、その補正したリスケーリングデータを用いて、等時間間隔でサンプリングされた測定用干渉信号を等周波数間隔でサンプリングされた測定用干渉信号に変換する。したがって、光源12の非線形の補正がなされると共に、波長掃引速度の変動(揺らぎ)の影響を排除した精度の高いA−scan画像(断層画像)を得ることができる。また、光学部材74の第1反射面74aの位置から特定される波長掃引速度の変動量と、予め作成したリスケーリングデータとを用いて補正するだけであるので、演算装置64が処理しなければならないデータ量が増大することを効果的に抑制することができる。
【0039】
なお、上述した実施例では、1次元の断層画像である眼軸長測定を行う眼科装置を例として説明したが、本明細書に開示の技術は、複数の1次元の断層画像からなる2次元の断層画像や、さらに複数の2次元の断層画像からなる3次元断層画像を得る眼科装置にも使用することができる。すなわち、2次元の断層画像や3次元断層画像はいずれも複数の1次元の断層画像からなるため、2次元の断層画像や3次元断層画像を構成する複数の1次元の断層画像のそれぞれに対して、本明細書に開示の補正技術を実施することにより、より精度の高い2次元断層画像及び/又は3次元断層画像を得ることができる。
【0040】
以上、実施例の光断層画像撮影装置について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0041】
例えば、上述した実施例では、リスケーリングデータを各周期における波長掃引速度の変動量で補正し、その補正したリスケーリングデータを用いて干渉信号を等周波数間隔のサンプリングデータに変換したが、本明細書に開示の技術は、このような例に限られない。例えば、干渉信号を波長掃引速度で補正し、その補正した干渉信号をリスケーリングデータによって変換してもよい。このような構成によっても、光源の周期毎の波長掃引速度の変化による非線形性を補正することができる。
【0042】
また、上述した実施例では、波長掃引速度検出用光学系に2つの反射面74a,74bが設けられていたが、波長掃引速度検出用光学系に設けられる反射面は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。すなわち、波長掃引速度検出用光学系に反射面が少なくとも一つ備えられれば、波長掃引速度検出用干渉光を得ることができるため、その波長掃引速度検出用干渉光からリスケーリングデータを作成でき、また、波長掃引速度を特定することができる。
【0043】
また、上述した実施例では、波長掃引速度検出用光学系で得られる波長掃引速度検出用干渉光と測定光学系で得られる測定用干渉光とを同一の受光素子26で受光していたが、これらの干渉光を異なる受光素子で検出するようにしてもよい。
【0044】
また、上述した実施例では、波長掃引速度検出用光学系で得られる干渉光から算出される反射面の位置から光源12の波長掃引速度の変動量を特定していたが、光源12の波長掃引速度の変動量は、種々の方法によって特定することができる。例えば、
図10,11に示す光学系のように、マッハ・ツェンダー・干渉計を用いて波長掃引速度の変動量を特定してもよい。すなわち、
図10,11に示す撮影装置では、光源12からの光がファイバーカプラで分岐され、一方が被検眼100の断層画像を撮影するための光学系110,112に導かれ、他方が波長掃引速度検出用光学系114,116に導かれる。
図10の波長掃引速度検出用光学系114は、マッハ・ツェンダー・干渉計と、その干渉計で生成される波長掃引速度検出用干渉光を検出する受光素子(BPD)で構成される。
図11の波長掃引速度検出用光学系116は、マッハ・ツェンダー・干渉計によって構成され、その波長掃引速度検出用干渉光は、断層画像を撮影するための受光素子112によって検出される。このような光学系を用いても、光源12の波長掃引速度の変動量を検出することができる。
【0045】
さらには、
図12,13に示す撮影装置のように、波長掃引速度検出用光学系が偏光感受型OCT干渉計の中に組み込まれた形となっていてもよい。すなわち、光源12からの光は、ファイバーカプラによって参照光(参照アーム)とサンプルアームに分岐され、サンプルアーム内に偏光依存型光遅延機構124,132を配置する。偏光依存型光遅延機構124,132は、光の水平直線偏光成分と垂直直線偏光成分それぞれに異なる遅延を与える。偏光依存型光遅延機構124,132に入射した光は、直線偏光子によって斜め直線偏光状態となり、偏光ビームスプリッタで水平・垂直直線偏光成分が分離される。それぞれの偏光成分は、偏光ビームスプリッタから異なる距離に配置された直角プリズムによってそれぞれ反射され、再び偏光ビームスプリッタへ入射し、合波され、ファイバーへカップリングされる。偏光依存型光遅延機構124,132によって、直角ビームスプリッタから反射された2つの偏光成分が偏光ビームスプリッタへ入射する際、偏光ビームスプリッタにおいて微量の漏れ光が発生する。この漏れ光は、偏光ビームスプリッタから異なる距離に配置された直角プリズムどうしの光路長差に起因する干渉信号を持っており、この干渉信号を利用して光源12の波長掃引速度の変動量を検出することができる。
【0046】
すなわち、本明細書に開示の技術は、通常のSS−OCT(波長掃引型OCT)だけでなく、偏向感受型のSS−OCTにも適用することができる。
【0047】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。