特許第6166647号(P6166647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166647
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】飛行方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20170710BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20170710BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   G01C21/26 Z
   G01C21/34
   B64C13/20 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-244602(P2013-244602)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-102479(P2015-102479A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸英
(72)【発明者】
【氏名】平木 健太郎
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−77273(JP,A)
【文献】 特開平9−193897(JP,A)
【文献】 特開平7−165193(JP,A)
【文献】 特表2000−512015(JP,A)
【文献】 特開2011−143774(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0022294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
B64C 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に設けられた航路制御装置を用い、経由する順番が定められた複数のウェイポイントを順次目標にして飛行する飛行方法であって、
前記航路制御装置が、
航路に相当する方向を撮像した画像中の航路に対応する位置に設定された判定領域において、雲の占有率が予め定められた第1閾値以上であるか否かを判定し、
前記判定領域の雲の占有率が前記第1閾値以上であれば、前記画像を分割して形成される複数の分割領域のうち、次回以降に選択されるウェイポイントに対する該分割領域において、雲の占有率が予め定められた第2閾値以上であるか否かを判定し、
前記次回以降に選択されるウェイポイントに対する前記分割領域において雲の占有率が前記第2閾値未満であれば、該次回以降に選択されるウェイポイントを目標とすることを特徴とする飛行方法。
【請求項2】
前記次回以降に選択されるウェイポイントに対する前記分割領域において、雲の占有率が前記第2閾値以上であれば、該次回以降に選択されるウェイポイントに対する該分割領域以外の前記分割領域に対応する航路に臨時のウェイポイントを設定し、該臨時のウェイポイントを目標とすることを特徴とする請求項1に記載の飛行方法。
【請求項3】
前記次回以降に選択されるウェイポイントに対する前記分割領域において、雲の占有率が前記第2閾値以上であれば、該次回以降に選択されるウェイポイントに対する該分割領域が複数に跨っていたか否かを判定し、
前記分割領域が複数に跨っていれば、跨っている該複数の分割領域のうち、雲の占有率が前記第2閾値未満である分割領域があるか否かを判定し、
雲の占有率が前記第2閾値未満である前記分割領域があれば、該分割領域に航路を変更することを特徴とする請求項1に記載の飛行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機が、航路に存在する雲への進入を回避しつつ飛行する飛行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機が飛行する際、航空機が雲に進入すると、操縦者の視界が妨げられて操縦が困難となる。このため、計器指示による飛行である計器飛行方式(IFR:Instrument Flight Rules)の適用を受けずに飛行する場合(有視界飛行方式、VFR:Visual Flight Rules)は、航空機自体を雲に進入させないことが前提となる。仮に航空機が雲に進入してしまうと、視界が妨げられるだけでなく、機体に水滴が接触して凍結(着氷)する場合がある。例えば翼に着氷が起こると航空機の揚力が減少し、飛行が不安定となるおそれがある。したがって、航空機は雲を回避して飛行する必要がある。
【0003】
有人航空機では、操縦者の目視、あるいは、航空機に搭載されたアクティブな気象レーダやセンサによって航空機の前方(航路に相当する方向)の状況が把握されて航路が修正される(例えば、特許文献1、2)。一方、無人航空機では、消費電力や占有体積が大きいアクティブな気象レーダやセンサの搭載が困難な場合があるため、消費電力や占有体積が比較的小さいパッシブな撮像装置が利用される。例えば、航空機に搭載され、航空機前方(航路方向)を撮像するテレビカメラの画像をもとに、地上の操縦者によって航空機前方の状況が把握され、航路が修正される(例えば、特許文献3、4)。また、このような技術に対し、画像から雲を検出する技術(例えば、特許文献5)も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−321475号公報
【特許文献2】特開2000−62698号公報
【特許文献3】特開平1−247298号公報
【特許文献4】特開平9−193897号公報
【特許文献5】特開平5−333160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2、5には航空機の前方に雲がある場合、航空機をどの方向へどの程度飛行させて雲を回避するかを決定する具体的な方法についての記載がないので、雲の位置によっては回避できない状況も起こりうる。また、特許文献3、4では、操縦者による煩雑な操作が必要となっていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、操縦者による操作を要することなく、航空機が、効率的に雲への進入を回避しつつ飛行する飛行方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の飛行方法は、航空機に設けられた航路制御装置を用い、経由する順番が定められた複数のウェイポイントを順次目標にして飛行する飛行方法であって、航路制御装置が、航路に相当する方向を撮像した画像中の航路に対応する位置に設定された判定領域において、雲の占有率が予め定められた第1閾値以上であるか否かを判定し、判定領域の雲の占有率が第1閾値以上であれば、画像を分割して形成される複数の分割領域のうち、次回以降に選択されるウェイポイントに対する分割領域において、雲の占有率が予め定められた第2閾値以上であるか否かを判定し、次回以降に選択されるウェイポイントに対する分割領域において雲の占有率が第2閾値未満であれば、次回以降に選択されるウェイポイントを目標とすることを特徴とする。
【0008】
また、次回以降に選択されるウェイポイントに対する分割領域において、雲の占有率が第2閾値以上であれば、次回以降に選択されるウェイポイントに対する分割領域以外の分割領域に対応する航路に臨時のウェイポイントを設定し、臨時のウェイポイントを目標とするとしてもよい。
【0009】
また、次回以降に選択されるウェイポイントに対する分割領域において、雲の占有率が第2閾値以上であれば、次回以降に選択されるウェイポイントに対する分割領域が複数に跨っていたか否かを判定し、分割領域が複数に跨っていれば、跨っている複数の分割領域のうち、雲の占有率が第2閾値未満である分割領域があるか否かを判定し、雲の占有率が第2閾値未満である分割領域があれば、当該分割領域に航路を変更するとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操縦者による操作を要することなく、航空機が、効率的に雲への進入を回避しつつ飛行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】無人航空機の飛行制御について説明するための図である。
図2】無人航空機の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図3】判定領域を説明するための図である。
図4】分割領域を説明するための図である。
図5】航路決定部が設定するウェイポイントを説明するための図である。
図6】変形例にかかる分割領域を説明するための図である。
図7】本実施形態にかかる飛行方法の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
ここでは、まず、無人航空機100の飛行制御について説明した後、本実施形態の飛行方法に係る航路制御装置130を説明する。
【0014】
図1は無人航空機100の飛行制御について説明するための図である。無人航空機100は、予め設定された複数のウェイポイントWPを、定められた順番で経由しつつ飛行するように制御されている。ウェイポイントWPは、三次元情報(例えば、緯度、経度、高度)で定義された、特定の位置を表す地点情報である。
【0015】
図1では、第1ウェイポイントWP1が、無人航空機100が現在目標とするウェイポイントWPである。そして、第2ウェイポイントWP2が第1ウェイポイントWP1の次に目標とする(次回に選択される)ウェイポイントWPであり、第3ウェイポイントWP3が第2ウェイポイントWP2の次に目標とするウェイポイントWPである。したがって、無人航空機100は、第1ウェイポイントWP1、第2ウェイポイントWP2、第3ウェイポイントWP3を順次目標にして飛行する。
【0016】
また、無人航空機100はウェイポイントWP同士を繋ぐ線であるレグL上を飛行する。図1の航路では、無人航空機100は、現在地Pから第1レグL1上を飛行し第1ウェイポイントWP1へ向かう。そして、第1ウェイポイントWP1を通過後、第2レグL2上を飛行し第2ウェイポイントWP2へ向かい、第2ウェイポイントWP2を通過後、第3レグL3上を飛行し第3ウェイポイントWP3へ向かい、第3ウェイポイントWP3を通過する。
【0017】
なお、大気の条件等により、無人航空機100が位置ずれすることなくレグL上を飛行しウェイポイントWPを通過することは困難である。このため、ウェイポイントWPには無人航空機100が通過したとみなせる許容範囲Rが設定される。したがって、ウェイポイントWPに設定された許容範囲R内を無人航空機100が通過した際に、無人航空機100がウェイポイントWPを通過したとみなされる。また、許容範囲Rの形状に制限はなく、任意に設定が可能である。
【0018】
本実施形態では、上記のように経由する順番が定められた複数のウェイポイントWPを目標にして飛行する無人航空機100において、効率的に雲を回避して飛行することを目的とする。以下では、無人航空機100の航路を制御する航路制御装置130について詳述する。
【0019】
図2は、無人航空機100の概略的な構成を示した機能ブロック図である。図2に示すように、無人航空機100は、撮像装置110と、飛行機構120と、航路制御装置130とを含んで構成される。
【0020】
撮像装置110は可視光線を受光する可視光線カメラや、赤外線を受光する赤外線カメラであり、無人航空機100の前方(航路に相当する方向)を撮像するように無人航空機100に設けられる。このように、本実施形態では消費電力や占有体積が大きい気象レーダやセンサ等に代えて撮像装置110を使用するため、消費電力および占有体積を低減することができる。
【0021】
飛行機構120は、内燃機関(例えばジェットエンジンやレシプロエンジン)を有し、推進力により固定翼周りに揚力を生じさせることで機体を移動させる。ただし、揚力を生じさせる機構は、かかる場合に限らず、回転翼機(ヘリコプター)のように、内燃機関によって回転翼を回転させて揚力を生じさせ、機体を大気中に浮上した状態に維持する機構で構成することもできる。
【0022】
航路制御装置130は、I/F部132と、データ保持部134と、中央制御部136とを含んで構成される。
【0023】
I/F部132は、撮像装置110との双方向の情報交換を行うためのインターフェースである。データ保持部134は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、以下に示す各機能部の処理に必要な様々な情報を保持し、また、撮像装置110から受信した画像データを一時的に保持する。
【0024】
中央制御部136は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、システムバス138を通じてI/F部132、データ保持部134等を制御する。また、本実施形態において、中央制御部136は、画像処理部140、判定領域雲占有率導出部142、判定領域雲占有率判定部144、分割領域雲占有率導出部146、分割領域雲占有率判定部148、分割領域数照会部150、航路決定部152として機能する。
【0025】
画像処理部140は、撮像装置110が撮像した無人航空機100の前方(航路に相当する方向)の画像データを取得し、画像処理(例えば、二値化処理)を行って二値化画像を生成する。二値化処理は、雲の有無を区別可能な輝度値を予め閾値として設定し、画像データにおける各画素の輝度値が当該閾値以上であれば1(白)とし、当該閾値未満であれば0(黒)とする処理である。したがって、二値化画像において、雲は白く示され、雲がない部分は黒く示される。
【0026】
図3は、判定領域160を説明するための図である。図3中、判定領域160をハッチングで示す。図3に示すように、判定領域160は、例えば、楕円形の領域であり、無人航空機100の航路に対応する位置に設定される。無人航空機100は第1ウェイポイントWP1を目標として飛行し、撮像装置110は無人航空機100の前方(航路に相当する方向)を撮像する。したがって、第1ウェイポイントWP1は、二値化画像110aの中心付近に位置していると想定される。このため、判定領域160は二値化画像110aの中心の位置に設定される。なお、判定領域160の形状は楕円形に限らず、円形や方形であってもよい。
【0027】
判定領域雲占有率導出部142は、この判定領域160内に存在する雲Cを検出し、判定領域160内での雲Cの占有率(判定領域160において雲Cが占める面積の割合)(以下、「判定領域雲占有率」と称する。)を導出する。
【0028】
判定領域雲占有率判定部144は、判定領域雲占有率導出部142によって導出された判定領域雲占有率が、予め定められた第1閾値以上であるか否かを判定する。第1閾値は、雲Cが少なく、無人航空機100が飛行することができる値(例えば10%)とする。なお、第1閾値は無人航空機100の飛行前および飛行中に適宜変更することができる。
【0029】
図4は、分割領域170を説明するための図である。図4(a)に示すように、本実施形態において、分割領域170は、方形の二値化画像110aの対角線により二値化画像110aを上下左右に分割して形成される領域である。具体的には、分割領域170は、二値化画像110aにおいて上側に位置する上側分割領域170a、下側に位置する下側分割領域170b、右側に位置する右側分割領域170c、左側に位置する左側分割領域170dの4つの領域である。
【0030】
二値化画像110aにおける判定領域雲占有率が第1閾値以上である場合、すなわち、無人航空機100の航路に相当する方向に雲Cが多い場合、第1ウェイポイントWP1へ向かうのを諦め、雲Cを回避して飛行するために別の航路を設定する必要がある。このときの新たな航路としては、第1ウェイポイントWP1の次の目標である第2ウェイポイントWP2を目標とする航路を選択するのが望ましい。
【0031】
そこで、分割領域雲占有率導出部146は、4つの分割領域170のうち、第2ウェイポイントWP2に対応する分割領域170(以下、「対応分割領域172」と称する。)を特定する。図4中、対応分割領域172をハッチングで示す。そして、分割領域雲占有率導出部146は、対応分割領域172における雲Cの占有率(対応分割領域172に対して雲Cが占める面積の割合)(以下、「分割領域雲占有率」と称する。)を導出する。
【0032】
例えば、対応分割領域172が右側分割領域170cである場合、図4(a)に示すように、分割領域雲占有率導出部146は、対応分割領域172として第2ウェイポイントWP2が位置すると想定される右側分割領域170cを導出し、右側分割領域170cにおける分割領域雲占有率を導出する。
【0033】
また、対応分割領域172が複数の分割領域170に跨っている場合、すなわち、第2ウェイポイントWP2に対応する分割領域170が2つある場合がある。例えば、図4(b)に示すように、対応分割領域172が、上側分割領域170aと右側分割領域170cとに跨っている場合、分割領域雲占有率導出部146は、上側分割領域170aと右側分割領域170cとを合わせた対応分割領域172における雲Cの占有率を導出する。
【0034】
分割領域雲占有率判定部148は、分割領域雲占有率導出部146によって導出された分割領域雲占有率が、予め定められた第2閾値以上であるか否かを判定する。第2閾値は、雲Cがあっても、無人航空機100が雲Cに進入せずに飛行できる可能性がある値(例えば、50%)とする。なお、第2閾値は無人航空機100の飛行前および飛行中に適宜変更することができる。
【0035】
分割領域数照会部150は、分割領域雲占有率導出部146が分割領域雲占有率を導出した対応分割領域172における、分割領域170の数を照会する。
【0036】
航路決定部152は、まず、無人航空機100が目標とするウェイポイントWPを設定し、無人航空機100が目標とするウェイポイントWPを通過したら、次に目標とするウェイポイントWPを設定する。目標とするウェイポイントWPが設定されると、飛行機構120により無人航空機100の飛行が制御される。
【0037】
図5は、航路決定部152が設定するウェイポイントWPを説明するための図である。ここでは、無人航空機100が第1ウェイポイントWP1を目標として飛行している場合を例に挙げて説明する。図5中、判定領域160および対応分割領域172をハッチングで示す。
【0038】
図5(a)に示す二値化画像110aでは、例えば、判定領域雲占有率が第1閾値(10%)以上でない、すなわち10%未満であったとする。つまり、無人航空機100の航路に相当する方向の雲Cが少なく回避する必要がないとき、航路決定部152は、現在目標としているウェイポイントWPである第1ウェイポイントWP1を継続して目標とし、無人航空機100は第1ウェイポイントWP1に向かって飛行する。
【0039】
次に、判定領域雲占有率が第1閾値以上である場合、すなわち、無人航空機100の航路に相当する方向に雲Cが多い場合について説明する。図5(b)に示す二値化画像110aでは、判定領域雲占有率が第1閾値(10%)以上であるとする。このとき、無人航空機100の航路に相当する方向には雲Cが多いため、無人航空機100は第1ウェイポイントWP1を目標として飛行することが困難である。そこで、航路決定部152は、別の航路を設定して雲Cを回避する。
【0040】
例えば、図5(c)に示すように、二値化画像110aにおいて、対応分割領域172は左側分割領域170dであり、左側分割領域170dにおける分割領域雲占有率は第2閾値(50%)以上ではない、すなわち50%未満であるとする。このとき、無人航空機100は、左側分割領域170dの方向ならば、雲Cに進入せずに飛行できる可能性がある。そこで、航路決定部152は、目標とするウェイポイントWPを、第1ウェイポイントWP1から第2ウェイポイントWP2へ変更することで航路を更新する。
【0041】
このように、目標とするウェイポイントWPを第2ウェイポイントWP2に変更することで、無人航空機100は、航路に相当する方向の雲Cを回避しながら、航路における目的地点の1つである第2ウェイポイントWP2へ到達することができる。したがって、設定されていた航路からの逸脱を極小化でき、効率的に雲Cを回避することができる。
【0042】
また、仮に、図5(d)に示すように、二値化画像110aにおいて、対応分割領域172が右側分割領域170cであり、右側分割領域170cにおける分割領域雲占有率が第2閾値以上である、すなわち50%以上であったとする。このとき、無人航空機100は、雲Cに進入せずに第2ウェイポイントWP2に対応する分割領域170の方向へ飛行することは困難である。
【0043】
そこで、無人航空機100が雲Cを回避して飛行するため、航路決定部152は、一時的な処置として、臨時のウェイポイントである臨時ウェイポイントを設定する。臨時ウェイポイントは、分割領域雲占有率が第2閾値以上であった分割領域170(ここでは、右側分割領域170c)以外の分割領域170(例えば、左側分割領域170d)に対応する航路に設定される。このとき、分割領域雲占有率導出部146が、分割領域雲占有率が第2閾値以上であった分割領域170以外の分割領域170における雲Cの占有率を導出し、雲Cの占有率が低い分割領域170に臨時ウェイポイントを設定するとしてもよい。
【0044】
そして、航路決定部152は目標とするウェイポイントWPを、第1ウェイポイントWP1から臨時ウェイポイントに変更することで、航路を更新する。このように、臨時ウェイポイントを設定することで、無人航空機100は、第1ウェイポイントWP1を目標とする航路、および、第2ウェイポイントWP2を目標とする航路に相当する方向の雲Cを回避して飛行することができる。
【0045】
次に、判定領域雲占有率が第1閾値以上である場合、すなわち、無人航空機100の航路に相当する方向に雲Cが多く第1ウェイポイントWP1を目標として飛行することが困難である場合であって、対応分割領域172が複数の分割領域170に跨っている場合について説明する。
【0046】
図5(e)に示す二値化画像110aでは、判定領域160における判定領域雲占有率が第1閾値以上であるとする。そして、図5(f)に示すように、二値化画像110aにおいて、対応分割領域172は下側分割領域170bと右側分割領域170cを合わせた領域であり、対応分割領域172における分割領域雲占有率は第2閾値以上であるとする。
【0047】
一方で、対応分割領域172のうち、下側分割領域170bにおける分割領域雲占有率は第2閾値未満であり、右側分割領域170cにおける分割領域雲占有率は第2閾値以上である。つまり、対応分割領域172全体では雲Cは多いが、雲Cは右側分割領域170cに偏って位置しており、下側分割領域170bには雲Cが少ない。したがって、下側分割領域170bの方向へは、無人航空機100が雲Cに進入せずに飛行できる可能性がある。
【0048】
このとき、航路決定部152は、判定領域雲占有率判定部144が判定領域160における判定領域雲占有率が第1閾値未満であると判定するまで、対応分割領域172のうち、第2閾値未満である分割領域170(ここでは、下側分割領域170b)へ一時的に航路を変更する。その後、判定領域160における判定領域雲占有率が第1閾値未満となったとき、航路決定部152は、目標とするウェイポイントWPを第2ウェイポイントWP2へ変更することで、航路を更新する。したがって、対応分割領域172が複数の分割領域170に跨っており、分割領域雲占有率が第2閾値未満の分割領域170がある場合にも、第2ウェイポイントWP2を目標とすることで、設定されていた航路からの逸脱を低減でき、効率的に雲Cを回避することができる。
【0049】
また、対応分割領域172が複数の分割領域170に跨っていて、複数の分割領域170それぞれの分割領域雲占有率が第2閾値以上である場合は、航路決定部152は臨時ウェイポイントを設定する。例えば、図5(g)に示す二値化画像110aでは、判定領域雲占有率は第1閾値以上であるとする。
【0050】
そして、図5(h)に示すように、二値化画像110aにおいて、対応分割領域172は下側分割領域170bと右側分割領域170cとを合わせた領域であり、対応分割領域172における分割領域雲占有率は第2閾値以上であるとする。また、下側分割領域170bおよび右側分割領域170cのそれぞれにおける分割領域雲占有率も第2閾値以上である。つまり、対応分割領域172全体で雲Cが多く、下側分割領域170bおよび右側分割領域170cそれぞれにおいても雲Cが多い。このため、対応分割領域172の方向へは、無人航空機100が雲Cに進入せずに飛行することは困難である。
【0051】
そこで、航路決定部152は、対応分割領域172(下側分割領域170bおよび右側分割領域170c)以外の分割領域170(例えば、左側分割領域170d)に臨時ウェイポイントを設定する。そして、航路決定部152は目標とするウェイポイントWPを第1ウェイポイントWP1から臨時ウェイポイントへ変更することで、航路を更新する。臨時ウェイポイントを設定することで、無人航空機100は、第1ウェイポイントWP1を目標とする航路、および、第2ウェイポイントWP2を目標とする航路に相当する方向の雲Cを回避して飛行することができる。
【0052】
このように、本実施形態における飛行方法では、二値化画像110aにおいて判定領域160および分割領域170における雲Cの占有率によって航路が変更される。このため、判定領域160の大きさを変えることで、目的に合った飛行を行うことができる。具体的には、無人航空機100を小さく旋回させて雲Cを回避する場合は、判定領域160の大きさを相対的に小さくする。判定領域160の大きさを相対的に小さくすることで、航路制御装置130では、無人航空機100の前方に多くの雲Cがあっても、無人航空機100の航路に相当する位置における雲Cの占有率のみを導出して航路を制御する。その結果、無人航空機100は雲Cの間を、小さく旋回しながら、すり抜けるように飛行することができる。
【0053】
一方で、無人航空機100が大きく旋回して雲Cを回避する場合は、判定領域160の大きさを相対的に大きくする。判定領域160の大きさを相対的に大きくすることで、航路制御装置130では、無人航空機100の前方の広い範囲における雲Cの占有率を導出して航路を制御する。その結果、航路に相当する方向に雲Cが存在していると、判定領域160が小さい場合よりも早期に判定領域雲占有率が第1閾値以上であると判定される。したがって、無人航空機100は早期に旋回して雲Cが少なく広い領域を飛行する、すなわち、雲Cを大きく旋回して回避することができる。
【0054】
(判定領域160の変形例)
図6は、変形例にかかる分割領域270、370を説明するための図であり、図6(a)は分割領域270を説明するための図であり、図6(b)は分割領域370を説明するための図である。図6中、対応分割領域172をハッチングで示す。
【0055】
図6(a)に示すように、分割領域270はそれぞれ三角形の形状で形成され、二値化画像110aにおいて上側に位置する上側分割領域270a、下側に位置する下側分割領域270b、右側に位置する右側分割領域270c、左側に位置する左側分割領域270dの4つの領域である。また、図6(b)に示すように、分割領域370は三角形と方形とを合わせたホームベース形状で形成され、二値化画像110aにおいて上側に位置する上側分割領域370a、下側に位置する下側分割領域370b、右側に位置する右側分割領域370c、左側に位置する左側分割領域370dの4つの領域である。分割領域270、370は、上述の分割領域170よりも小さく、分割領域170のうち、無人航空機100が短時間で実質的に移動できる位置に相当する領域に限定された領域である。
【0056】
例えば、図6(a)および図6(b)に示すように、下側分割領域270b、370bが対応分割領域172であり、上述の下側分割領域170bに相当する領域(二値化画像110aを対角線により分割したときに下側に位置する領域)の分割領域雲占有率は第2閾値以上であったとする。しかし、下側分割領域270b、370bでの分割領域雲占有率が第2閾値未満であれば、航路制御装置130は、臨時ウェイポイントを設定することなく、第2ウェイポイントWP2を目標とする。
【0057】
このように、分割領域270、370を、無人航空機100が短時間で実質的に移動できる領域に限定することで、移動不能な領域に雲Cが存在するために第2ウェイポイントWP2が航路として選択されないといった非効率な事象を回避でき、効率的に飛行を制御することができる。
【0058】
図7は、本実施形態にかかる飛行方法の流れを説明するためのフローチャートである。当該飛行方法における処理は、予め定められた周期毎に割込処理として繰り返し行われる。当該飛行方法を開始する前に、航路決定部152は、目標とするウェイポイントWP(初期値は第1ウェイポイントWP1)を設定する。
【0059】
撮像装置110は、無人航空機100の前方を撮像する。撮像装置110により撮像された画像の画像データは、航路制御装置130の画像処理部140へ送信される(ステップS200)。画像処理部140は、撮像装置110により撮像された画像を二値化処理して二値化画像110aを生成する(ステップS202)。
【0060】
次に、判定領域雲占有率導出部142は二値化画像110aの判定領域160における判定領域雲占有率を導出する(ステップS204)。そして、判定領域雲占有率判定部144は、導出された判定領域雲占有率が第1閾値以上であるか判定する(ステップS206)。
【0061】
判定領域雲占有率が第1閾値未満である場合(ステップS206におけるNO)、航路決定部152は、現在目標としているウェイポイントWPを継続して目標とし、当該飛行方法を終了する。
【0062】
判定領域雲占有率が第1閾値以上である場合(ステップS206におけるYES)、航路決定部152は現在目標としているウェイポイントWPの次回に選択されるウェイポイントWP(次に目標とするウェイポイントWP)に対応する分割領域170を導出する。なお、次に目標とするウェイポイントWPに対応する分割領域170が複数の分割領域170に跨っている場合は、複数の分割領域170を合わせた領域における雲Cの占有率を導出する(ステップS208)。
【0063】
分割領域雲占有率導出部146は、ステップS208で決定された、次に目標とするウェイポイントWPに対応する分割領域170における分割領域雲占有率を導出する(ステップS210)。そして、分割領域雲占有率判定部148は、導出された分割領域雲占有率が第2閾値以上であるか判定する(ステップS212)。
【0064】
分割領域雲占有率が第2閾値未満である場合(ステップS212におけるNO)、航路決定部152は、目標とするウェイポイントWPを、次に目標とするウェイポイントWPに変更して(ステップS226)、当該飛行方法を終了する。
【0065】
分割領域雲占有率が第2閾値以上である場合(ステップS212におけるYES)、分割領域数照会部150は、上記のステップS208で、分割領域雲占有率導出部146が分割領域雲占有率を導出した次回に選択されるウェイポイントWPに対応する分割領域170において分割領域170の数を照会する(ステップS214)。
【0066】
分割領域雲占有率を導出した領域における分割領域170の数が2つでない(1つである)場合(ステップS216におけるNO)、航路決定部152は、分割領域雲占有率が導出された分割領域170(次回に目標とするウェイポイントWPに対応する分割領域170)以外の分割領域170に、臨時ウェイポイントを設定する。そして、航路決定部152は、目標とするウェイポイントWPを臨時ウェイポイントに変更して(ステップS218)、当該飛行方法を終了する。
【0067】
分割領域雲占有率を導出した分割領域170の数が2つである場合(ステップS216におけるYES)、分割領域雲占有率導出部146は、2つの分割領域170それぞれについて分割領域雲占有率を導出する(ステップS220)。そして、分割領域雲占有率判定部148は、ステップS220で分割領域雲占有率を導出した2の分割領域170の中で、分割領域雲占有率が第2閾値未満の分割領域170があるかを判定する(ステップS222)。
【0068】
分割領域雲占有率が第2閾値未満の分割領域170がない場合(ステップS222におけるNO)、航路決定部152は、分割領域雲占有率が導出された分割領域170(次に目標とするウェイポイントWPに対応する分割領域170)以外の分割領域170に、臨時ウェイポイントを設定する。そして、航路決定部152は、目標とするウェイポイントWPを臨時ウェイポイントに変更して(ステップS218)、当該飛行方法を終了する。
【0069】
分割領域雲占有率が第2閾値未満の分割領域170がある場合(ステップS222におけるYES)、航路決定部152は、分割領域雲占有率が第2閾値未満の分割領域170へ航路を変更する(ステップS224)。その後、航路決定部152は、目標とするウェイポイントWPを、次に目標とするウェイポイントWPに変更して(ステップS226)、当該飛行方法を終了する。
【0070】
このように、本実施形態によれば、無人航空機100において操縦者による操作を要することなく、効率的に雲Cへの進入を回避しつつ飛行することができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、上述の実施形態において、分割領域雲占有率導出部146は、分割領域雲占有率を導出する分割領域170、270、370として、対応分割領域172を設定した。しかしながら、分割領域雲占有率導出部146が設定する分割領域170、270、370は、第2ウェイポイント以降のウェイポイントWP(次回以降に選択されるウェイポイントWP)に対する分割領域170、270、370であればよく、例えば第3ウェイポイントWP3等に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、航空機が、航路に存在する雲への進入を回避しつつ飛行する飛行方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
WP ウェイポイント
100 航空機(無人航空機)
130 航路制御装置
160 判定領域
170、270、370 分割領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7