特許第6166660号(P6166660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166660
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】有機半導体
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20170710BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20170710BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20170710BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   H05B33/10
   H01L31/04 152D
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-543885(P2013-543885)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公表番号】特表2014-507782(P2014-507782A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】GB2011052503
(87)【国際公開番号】WO2012080750
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】1021382.5
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フアーン,ジユインフオン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,フオン
(72)【発明者】
【氏名】バルリケビツツ,ボド
(72)【発明者】
【氏名】パセ,ギウセツピーナ
(72)【発明者】
【氏名】フレンド,リチヤード・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】フツク,ビルヘルムス・テー・エス
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−509816(JP,A)
【文献】 特開2010−067959(JP,A)
【文献】 FREDERIK C. KREBS,DYE SENSITIZED PHOTOVOLTAIC CELLS: ATTACHING CONJUGATED POLYMERS TO ZWITTERIONIC RUTHENIUM DYES,SOLAR ENERGY MATERIALS AND SOLAR CELLS,2005年 4月18日,V90,P142-165
【文献】 AYYAPPANPILLAI AJAYAGHOSH,CHEMISTRY OF SQUARAINE-DERIVED MATERIALS: NEAR-IR DYES, LOW BAND GAP SYSTEMS, AND CATION SENSORS,ACCOUNTS OF CHEMICAL RESEARCH,2005年 8月 4日,V38 N6,P449-459
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H05B 33/26
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の双性イオンを含む第1の半導体ポリマーを含む電荷輸送層を含み、前記第1の半導体ポリマーが、少なくとも1つの双性イオン性置換基を有する第1の繰り返しユニットと、第2の繰り返しユニットとを含み、
前記双性イオン性置換基が少なくとも1つの四級アミン基と、スルホネート基とを含み、該四級アミン基と該スルホネート基とが少なくとも1つの炭素原子によって分離されており、
前記第1の繰り返しユニットが以下の構造:
【化1】

式中、Rは、前記双性イオン性置換基であり、Rは、前記双性イオン性置換基、HまたはCからC10直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖である
を含み、
前記第2の繰り返しユニットが、フルオレン残基を含む、オプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項2】
およびRが、同じ双性イオン性置換基である、請求項に記載のオプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項3】
前記第1の半導体ポリマーが、前記第1の繰り返しユニットおよび前記第2の繰り返しユニットの交互コポリマーを含む、請求項または請求項に記載のオプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項4】
前記電荷輸送層が、発光性層とカソードとの間に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項5】
前記電荷輸送層が、光起電性層とカソードとの間に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項6】
前記カソードが、アルミニウム、カルシウム、インジウムスズオキシド(ITO)、金、銀から選択される1つ以上の材料を含む、請求項またはに記載のオプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項7】
前記電荷輸送層が少なくとも1nmの厚さである、請求項1からのいずれか一項に記載のオプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項8】
前記電荷輸送層が1nmから20nmの厚さである、請求項に記載のオプトエレクトロニクスデバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの双性イオン性置換基を有する第1の繰り返しユニットと、第2の繰り返しユニットとを含む半導体ポリマーであって、
前記双性イオン性置換基が少なくとも1つの四級アミン基と、スルホネート基とを含み、該四級アミン基と該スルホネート基とが少なくとも1つの炭素原子によって分離されており、
前記第1の繰り返しユニットが以下の構造:
【化2】

式中、Rは、前記双性イオン性置換基であり、Rは、前記双性イオン性置換基、HまたはCからC10直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖である
を含み、
前記第2の繰り返しユニットが、フルオレン残基を含む、該ポリマー。
【請求項10】
およびRが同じ双性イオン性置換基である、請求項に記載の半導体ポリマー。
【請求項11】
前記第1の繰り返しユニットおよび前記第2の繰り返しユニットの交互コポリマーを含む、請求項または10に記載の半導体ポリマー。
【請求項12】
請求項から11のいずれか一項に記載の半導体ポリマーを含む電子注入材料。
【請求項13】
請求項から11のいずれか一項に記載の半導体ポリマーを含む電子輸送材料。
【請求項14】
少なくとも1つの双性イオン性置換基を有する第1の繰り返しユニットと、第2の繰り返しユニットとを含む電気半導体双性イオン性ポリマーであって、
前記双性イオン性置換基が少なくとも1つの四級アミン基と、スルホネート基とを含み、該四級アミン基と該スルホネート基とが少なくとも1つの炭素原子によって分離されており、
前記第1の繰り返しユニットが以下の構造:
【化3】

式中、Rは、前記双性イオン性置換基であり、Rは、前記双性イオン性置換基、HまたはCからC10直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖である
を含み、
前記第2の繰り返しユニットが、フルオレン残基を含む、電気半導体双性イオン性ポリマーを製造する方法であって、
1の共役モノマーと少なくとも1つのさらなるモノマーと重合して、伝導性ポリマーを形成する工程;および
前記伝導性ポリマーを少なくとも1つの双性イオン形成反応体と反応させて、伝導性双性イオン性ポリマーを形成する工程
を含む、電気半導体双性イオン性ポリマーを製造する方法。
【請求項15】
前記第1の共役モノマーが、少なくとも1つの三級アミン置換を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の双性イオン形成反応体が、負電荷保持種またはそれらの前駆体を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記負電荷保持種またはそれらの前駆体が、スルホンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記重合が、スズキ重合を含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記重合が、ヤマモトまたはStille重合を含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体に関し、特に、これらに限定されないが、オプトエレクトロニクス、例えば光応答性のデバイスに有用なポリマー性半導体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体有機材料は、発光ダイオード(LED)、光起電性(PV)ダイオード、電界効果トランジスタ(FET)、およびレーザーを含むオプトエレクトロニクスデバイスの範囲において、従来の無機半導体の非常に有効な代替となる。一般的なクラスの有機半導体のうち、共役ポリマーは、有機半導体が無機半導体に優り得る顕著な材料利点(化学的に調整可能なオプトエレクトロニクス特性およびプリンテッドエレクトロニクスに好適な低温の溶液系加工処理を含む)を実証する。
【0003】
ペンダントした電荷部位を有する半導体ポリマー骨格およびそうした電荷部位と関連した対イオンを含む共役高分子電解質(CPE)は、例えば電荷輸送(例えば電子輸送または電子注入)材料として使用される場合のように、オプトエレクトロニクスデバイスにおけるものが示されている。特に、CPEの電子特性により、極性溶媒におけるそれらの溶解度と組み合わせて、例えばLEDおよびPVにおける材料に関して魅力的な選択肢となる。
【0004】
しかし、CPEを含むオプトエレクトロニクスデバイスは、ターンオン時間が遅い。いかなる特定の理論にも束縛されないが、これは、少なくとも部分的には、対イオンの移動によるものであり、それが内部電界の再分配を導き得ることが仮定される。さらに、これらの移動性対イオンはまた、1つまたは両方の電極の仕事関数を変更し得るので、デバイスの操作機構がより複雑化するようである。さらに、OLEDにおいて、例えば対イオンは、発光層のドーピング特徴に影響し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述のような欠点を最小限にすると共に、CPEの利点を有する電子デバイスのための材料を提供することである。さらに、こうした材料を含む電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、1つ以上の双性イオンを含む第1の半導体ポリマーを含む電荷輸送層を含むオプトエレクトロニクスデバイスを提供する。
【0007】
第2の態様において、本発明は、ポリマーに共有結合した1つ以上の双性イオンを含む第1の半導体ポリマーを含む電荷輸送層を含むオプトエレクトロニクスデバイスを提供する。
【0008】
本明細書において、「双性イオン」という用語は、少なくとも1つの形式的な正電荷中心および少なくとも1つの負電荷中心を有する安定な電荷中性形態で存在する部位を指す。
【0009】
本明細書において、「双性イオン置換基」という用語は、分子(例えばポリマー)に結合した双性イオンの特徴を有する区別可能な部位を指す。
【0010】
好ましくは、1つ以上の双性イオンは、半導体ポリマー骨格に共有結合する。
【0011】
好ましくは、第1の半導体ポリマーは、少なくとも1つの双性イオン置換基を有する第1の繰り返しユニットを含む。
【0012】
好ましくは、双性イオン置換基は、少なくとも1つの四級アミン基を含む。
【0013】
好ましくは、双性イオン置換基は、スルホネート基を含む。
【0014】
好ましくは、双性イオン置換基は、少なくとも1つ、例えば2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上、例えば2〜20、例えば2〜10の整数の原子(例えば炭素)中心によって分離されたカチオン性中心およびアニオン性中心を含む。
【0015】
好ましくは第1の繰り返しユニットは、フルオレン残基を含む。
【0016】
好ましくは第1の繰り返しユニットは、以下の構造を含む:
【0017】
【化1】
式中、Rは、前記のまたはさらに別の双性イオン置換基を含む。
【0018】
好ましくは、Rは、前記のまたはさらに別の双性イオン基(例えば異なる双性イオン基)、HまたはCからC10直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖を含む。
【0019】
より好ましくは、RおよびRの両方は、双性イオン性置換基、例えば同じ双性イオン性置換基を含む。
【0020】
好ましくは、1つ以上の双性イオン性置換基は、2つを超える原子(例えば炭素)中心により、第1のアニオン性中心から分離した第1のカチオン性電荷中心を含む。
【0021】
好ましくは、第1の半導体ポリマーは、第2の繰り返しユニットを含む。
【0022】
好ましくは、第2の繰り返しユニットは、フルオレン残基、例えば9,9−ジオクチルフルオレンを含む。
【0023】
好ましくは、第1の半導体ポリマーは、第1の繰り返しユニットおよび前記のまたはさらに別の第2の繰り返しユニットの交互コポリマーを含む。
【0024】
一部の実施形態において、電荷輸送層は、発光性層とカソードとの間に配置され、例えば電荷輸送層は、発光性層および/またはカソードに直接隣接して配置される。
【0025】
他の実施形態において、電荷輸送層は、光起電性層とカソードとの間に配置され、例えば電荷輸送層は、光起電性層および/またはカソードに直接隣接して配置される。
【0026】
好ましくは、カソードは、アルミニウム、カルシウム、インジウムスズオキシド(ITO)から選択される1つ以上の材料を含む。
【0027】
好ましくは、電荷輸送層(例えば、電子輸送層)は、少なくとも1nm(例えば、少なくとも2nm、少なくとも5nm、少なくとも7nmまたは少なくとも9nm)の厚さを有する。
【0028】
好ましくは、電荷輸送層(例えば電子輸送層)は、1nm〜20nmの厚さを有する。より好ましくは、電荷輸送層は2nm〜10nmの厚さを有する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つの双性イオン性置換基を有する第1の繰り返しユニットを含む半導体ポリマーを提供し、ここでこの双性イオン性置換基は、2つを超える原子(例えば炭素)中心により第1のアニオン性電荷中心と分離した第1のカチオン性電荷中心を含む。
【0030】
好ましくは、双性イオン性置換基は、少なくとも1つの四級アミン基を含む。
【0031】
好ましくは、双性イオン性置換基は、スルホネート基を含む。
【0032】
好ましくは、第1の繰り返しユニットは、フルオレン残基を含む。
【0033】
好ましくは、第1の繰り返しユニットは、以下の構造を含む:
【0034】
【化2】
式中、Rは、前記のまたはさらに別の双性イオン性置換基を含む。
【0035】
好ましくは、Rは、前記のまたはさらに別の双性イオン基(例えば異なる双性イオン基)、HまたはCからC10直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖を含む。
【0036】
より好ましくは、RおよびRの両方は、双性イオン性置換基、例えば同じ双性イオン性置換基を含む。
【0037】
好ましくは、半導体ポリマーは、第2の繰り返しユニットを含む。
【0038】
好ましくは、第2の繰り返しユニットは、フルオレン残基、例えば9,9−ジオクチルフルオレンを含む。
【0039】
好ましくは、半導体ポリマーは、第1の繰り返しユニットおよび/または第2の繰り返しユニットの交互コポリマーを含む。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、上述のような半導体ポリマーを含む電子注入材料を含む。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、上述のようなポリマーを含む電子輸送材料を提供する。
【0042】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも第1の共役モノマーを重合して、伝導性ポリマーを形成する工程、およびこのポリマーを少なくとも1つの双性イオン形成反応体と反応させて、伝導性双性イオン性ポリマーを形成する工程を含む、電気半導体双性イオン性ポリマーを製造する方法を含む。
【0043】
好ましくは、第1の共役モノマーは、少なくとも1つの三級アミン置換を含み、例えばそれから形成された半導体ポリマーは、三級アミン置換されたポリマーを含むようになる。
【0044】
好ましくは、第1の双性イオン形成反応体は、例えば前記のまたはさらに別の三級アミン基と反応するための、負電荷保持種またはそれらの前駆体を含む。
【0045】
好ましくは、負電荷保持種またはそれらの前駆体はスルホンを含む。
【0046】
好ましくは、この方法は、第1のモノマーを、少なくとも1つのさらなるモノマー、例えばアミンを含まないモノマーと共重合させる工程を含む。
【0047】
好ましくは、重合は、スズキ重合を含む。
【0048】
一部の実施形態において、重合は、ヤマモトまたはStille重合を含む。
【0049】
本発明をさらに理解するために、ここで本発明を、以下の図面を参照して、実施例によってのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の伝導性ポリマーの合成経路を示す。
図2】本発明のオプトエレクトロニクスデバイスの概略図を示す。
図3】本発明および先行技術のデバイスに関する、電圧に対する輝度のプロットを示す。
図4】本発明および先行技術のデバイスに関する、電圧に対する効率のプロットを示す。
図5】本発明および先行技術の材料に関する、波長に対する吸収強度のプロットを示す。
図6】本発明および先行技術の材料に関する、波長に対するフォトルミネッセンス強度のプロットを示す。
図7】本発明のデバイスに関する、時間に対するルミネッセンスおよび電流密度のプロットを示す。
図8】本発明および先行技術のデバイスに関する、電圧に対する容量電荷および電荷密度のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
電荷中性共役高分子電解質は、以下の方法に従って合成された。
【0052】
中性三級アミンポリマーは、当該技術分野において周知の条件下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(1)と2,7−ジブロモ−9,9−ビス((N,N−ジメチルアミノ)エタニル)フルオレン(2)のPd媒介されたスズキ縮合重合によって合成された。こうして形成された中性三級アミンポリマー(3)は、クロロホルム、THFおよびトルエンのような有機溶媒中に可溶性であるが、メタノール、DMSOおよび水には不溶性である。
【0053】
次いでポリマーは、トルエン/メタノール中、70℃にて3日間、1,4−ブタンスルトンと共に還流することによって四級化した。得られた双性イオン性共役高分子電解質(4)は、メタノールおよびDMSO中に可溶性であった。高分子電解質の元素分析は、第1のポリマーの三級アミンのスルホベタイン双性イオン性基へのほぼ100%の転化を示した。
【0054】
上述の一連の反応に関する合成経路を図1に示す。
【0055】
図2は、本発明に従う単純なオプトエレクトロニクスデバイス10を示す。デバイス10は、順番に、アルミニウムカソード層12、双性イオン性高分子電解質を含む2nm厚さの電子輸送層14、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)−co−ベノチアダゾール(F8BT)を含む100nm厚さの発光性層16およびITO/PEDOT:PSSアノード18を含む。
【0056】
デバイス10は、アノード18、発光性層18および電子輸送層14をガラス基板上に連続的にスピンコーティングし、続いて電子輸送層14上にアルミニウムカソード12を堆積させることによって製造された。
【実施例1】
【0057】
上述のようなデバイス10を、電圧に対する輝度に関して試験した。試験の結果を図3にプロットする。ターンオン電圧(輝度が1cd/mに到達する電圧として定義される)は2.3Vであり、ブライトネスは3Vで1900cd/mに増大し、5.8Vでは最大80000cd/mであった。
【実施例2】
【0058】
同じデバイス10を、電圧に対する電流効率に関して試験した。試験の結果を図4にプロットする。5.8Vでの効率は、8.8cd/Aであるとわかり(対応する電流密度は910.5cd/mである)、最大効率は10.4cd/A(26000cd/mのブライトネスにて)であった。デバイス効率は、操作電圧において安定であり、5.8Vまで顕著な低下は観測されないことは注目に値する。
【0059】
比較例
第1の比較デバイスは、順番に、アルミニウム/カルシウムカソード、F8BT発光層およびPEDOT:PSSアノードを含むように調製された。
【0060】
第2の比較デバイスは、順番に、アルミニウムカソード、F8BT発光層およびPEDOT:PSSアノードを含むように調製された。
【0061】
比較例1
第1の比較デバイスを、電圧に対する輝度および電圧に対する効率について試験した。結果を、それぞれ図3および4にプロットする。
【0062】
予測されるように、第1の比較デバイスは、電子注入が乏しいため、両方の試験において非常に劣っていた。特に、ターンオン電圧は、実施例1に関して観測された2.3Vより相当高い約7.5Vであったことに留意する。
【0063】
比較例2
また、第2の比較デバイスを、電圧に対する輝度および電圧に対する効率に関して試験した。結果を、それぞれ図3および4にプロットする。
【0064】
第2の比較デバイスのターンオン電圧は、実施例1と実質的に同じであることがわかったが、これはF8BTのLUMO(2.94eV)とCaの仕事関数(2.87eV)との差が小さいことにより説明できる。しかし、第2の比較デバイスの最大ブライトネスは、実施例1のデバイスの半分未満である30,000cd/mに過ぎないことがわかった。さらに、第2の比較デバイスのエネルギー変換効率は、実施例2で観測された効率のおおよそ半分であることがわかった。
【実施例3】
【0065】
双性イオン性高分子電解質のフィルムを、その吸収(実施例3a)およびフォトルミネッセンス(実施例3b)特性について試験した。結果をそれぞれ図5および6にプロットする。
【0066】
比較例3
中性三級アミンポリマー(3)のフィルムを、その吸収(比較例3a)およびフォトルミネッセンス(比較例3b)特性について試験した。結果をそれぞれ図5および6にプロットする。
【実施例4】
【0067】
メタノール中の双性イオン性高分子電解質の溶液を、その溶液吸収(実施例4a)および溶液フォトルミネッセンス特性(実施例4b)について試験した。結果をそれぞれ図5および6にプロットする。
【0068】
比較例4
クロロホルム中の中性三級アミンポリマー(3)の溶液を、その溶液吸収(比較例4a)および溶液フォトルミネッセンス特性(比較例4b)について試験した。結果をそれぞれ図5および6にプロットする。
【0069】
図5および6からわかるように、双性イオン性高分子電解質および中性ポリマーF8BTについてのフィルム吸収およびフォトルミネッセンススペクトルは、非常に類似しており、双性イオン性高分子電解質の電子特性は、双性イオン性側鎖の強い双極子によって影響を受けないことを示唆している。
【0070】
双性イオン性高分子電解質およびF8BTのHOMOは、サイクリックボルタンメトリーによって、それぞれ5.6eVであることがわかった。対応するLUMOは、吸収オンセットにより、それぞれ2.67eVおよび2.64eVであることがわかった。これらの図は、当業者に対して、アルミニウム電極(仕事関数4.28eV)とF8BT発光層との間の追加の双性イオン性高分子電解質層を含むことが、実際、電子注入バリアを増大させることを示唆し得る。驚くべきことに、反対のこともその通りであることが示された。
【実施例5】
【0071】
実施例1にて試験したデバイスと同様であるが、双性イオン性高分子電解質を含む7nm厚さの電子輸送層を有するデバイスを、4.9Vの長方形1Hz電圧パルスの間に、そのルミネッセンス(実施例5a)および電流密度ダイナミクス(実施例5b)を測定するために試験した。結果を図7にプロットする。
【0072】
4.9eVでの応答時間はおおよそ10μsであったことが観測されたが、これは金属電極の使用に一致している。応答時間は、電子注入層として共役高分子電解質を利用する他のデバイスに関しての応答時間よりも速いことが理解される。
[実施例6および7]
【0073】
実施例5にて測定された電流の時間依存性(図7に示されるように)および10nm厚さの双性イオン性ポリマーを含む電子輸送層を有する同様のデバイスに関する等価データ(それぞれ実施例6および7)を統合し、デバイスに蓄積された電荷を示す。容量電荷蓄積および電荷密度を、おいて電圧に対してプロットして図8に示すして。
【0074】
比較例5
標準比較デバイスに関する同様の電流時間依存性を統合して、デバイスにおいて蓄積された電荷を示す。容量電荷蓄積および電荷密度を、電圧に対してプロットして図8に示す。
【0075】
これらのデータは、双性イオン含有デバイスが、電圧に関して線形に上昇する標準デバイスの容量帯電に加えて、3V付近の閾値を超えて追加の帯電を示すことを示している。理論に束縛されないが、この追加の帯電は、0〜10μsのタイムスケールの間に、双性イオンの再配向から生じると仮定される。
【0076】
そのため、本発明の双性イオン性高分子電解質は、電荷輸送材料として優れた性能を与えると同時に、発光周波数における妥協なしに、迅速な切り替え時間および高効率を維持する。
【0077】
代替または追加のイオン種は、ポリマー性構造に組み込まれてもよいことが、当業者には容易に理解される。さらに、他の双性イオン性CPEおよび分子半導体(例えばフラーレン)が、本明細書に概要される本発明に使用されてもよいことが理解される。
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