特許第6166707号(P6166707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166707
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   H01R13/629
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-206482(P2014-206482)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-76401(P2016-76401A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100189049
【弁理士】
【氏名又は名称】花坂 達也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】金 大成
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−071677(JP,A)
【文献】 特開2005−141993(JP,A)
【文献】 特開2012−243676(JP,A)
【文献】 特開2015−220048(JP,A)
【文献】 特開2010−086869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56 − 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合可能な二つのハウジングを備え、前記ハウジング同士を接合させることで前記ハウジングにそれぞれ保持された端子同士が導通接続されるコネクタであって、
一方の前記ハウジングは、他方の前記ハウジングが嵌合可能な嵌合凹部を有し、
他方の前記ハウジングの外周における前記ハウジング同士の接合方向後方側には、前記ハウジング同士の接合方向と交差する方向へ突出する当接部が設けられ、
前記当接部は、前記ハウジング同士を接合させた状態で、前記嵌合凹部の内面に当接され
前記当接部は、他方の前記ハウジングの外周の対向位置にそれぞれ設けられ、
前記ハウジング同士の接合が進行する過程において、一方の前記当接部が前記嵌合凹部の内面と当接するタイミングと、他方の前記当接部が前記嵌合凹部の内面と当接するタイミングとが異なるように構成された
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
一方の前記当接部は、他方の前記ハウジングにおける幅方向の2箇所のみに設けられ、他方の前記当接部は、他方の前記ハウジングにおける幅方向の全域に亘って設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
一方の前記端子は、他方の前記端子へ向かって突出する接続ピン部を有し、他方の前記端子は、前記接続ピン部に対して側方から接触する接点部を有し、
前記当接部は、前記接続ピン部に対する前記接点部の接触方向に沿う方向へ突出されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングには、互いに係合して前記ハウジング同士の接合状態を維持するロック部が設けられ、
前記当接部が前記嵌合凹部の内面と当接するタイミングと、前記ハウジング同士を接合させる際にコネクタ挿入力が最大となるタイミングとがずらされている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接合されることで、端子同士を導通させるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタとして、雌コネクタと雄コネクタとを接合させた状態で、雄端子と雌端子との間に生じ得る摺動距離が、雄端子と雌端子の接点部との接触部分における接触痕の範囲よりも小さくなるように構成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このコネクタでは、振動などの影響によって雄端子と雌端子との接触箇所に長期間にわたり微摺動が生じても、微摺動距離が雄端子と雌端子との間の接触痕の範囲内に設定されているので、接点部にガスタイト面が残され、ガスタイト面では、酸化およびアブレッシブ摩耗の発生が抑制されるため、雄雌端子の接触部間の微摺動による摩耗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−141993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、互いに接合されるコネクタのハウジング間にがたつきがある状態では、振動が生じた際に、雄端子と雌端子との動きを抑制しきれず、雄端子と雌端子との接触箇所が摩耗して接続信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハウジング間のがたつきを抑制して端子同士の高い接続信頼性を維持することが可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 互いに接合可能な二つのハウジングを備え、前記ハウジング同士を接合させることで前記ハウジングにそれぞれ保持された端子同士が導通接続されるコネクタであって、
一方の前記ハウジングは、他方の前記ハウジングが嵌合可能な嵌合凹部を有し、
他方の前記ハウジングの外周における前記ハウジング同士の接合方向後方側には、前記ハウジング同士の接合方向と交差する方向へ突出する当接部が設けられ、
前記当接部は、前記ハウジング同士を接合させた状態で、前記嵌合凹部の内面に当接され
前記当接部は、他方の前記ハウジングの外周の対向位置にそれぞれ設けられ、
前記ハウジング同士の接合が進行する過程において、一方の前記当接部が前記嵌合凹部の内面と当接するタイミングと、他方の前記当接部が前記嵌合凹部の内面と当接するタイミングとが異なるように構成された
ことを特徴とするコネクタ。
(2) 一方の前記当接部は、他方の前記ハウジングにおける幅方向の2箇所のみに設けられ、他方の前記当接部は、他方の前記ハウジングにおける幅方向の全域に亘って設けられている
ことを特徴とする(1)に記載のコネクタ。
) 一方の前記端子は、他方の前記端子へ向かって突出する接続ピン部を有し、他方の前記端子は、前記接続ピン部に対して側方から接触する接点部を有し、
前記当接部は、前記接続ピン部に対する前記接点部の接触方向に沿う方向へ突出されている
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載のコネクタ。
(4) 前記ハウジングには、互いに係合して前記ハウジング同士の接合状態を維持するロック部が設けられ、
前記当接部が前記嵌合凹部の内面と当接するタイミングと、前記ハウジング同士を接合させる際にコネクタ挿入力が最大となるタイミングとがずらされている
ことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタ。
【0008】
上記(1)及び(2)の構成のコネクタでは、ハウジング同士を接合させることで当接部が嵌合凹部の内面に当接されるので、接合状態におけるハウジング同士のがたつきを抑制することができ、それぞれのハウジングに保持された端子同士の接触安定性を向上させることができる。これにより、例えば、走行時に振動が生じるような自動車等の車両に用いても、振動による端子同士の接触箇所での摩耗を極力抑えることができ、端子同士の高い接続信頼性を維持することができる。
加えて、ハウジング同士を接合させることで、一方のハウジングの嵌合凹部の内面に対して他方のハウジングの対向位置に設けられた当接部がそれぞれ当接される。これにより、ハウジング同士のがたつきをバランス良く抑制することができ、端子同士の接触安定性をより高めることができる。
上記()の構成のコネクタでは、当接部が嵌合凹部の内面に当接することで、ハウジング同士の接続ピン部に対する前記接点部の接触方向のがたつきを抑制することができる。これにより、接続ピン部と接点部との接触安定性を向上させることができる。
上記(4)の構成のコネクタでは、ハウジング同士を接合させるためのコネクタ挿入力の最大値を大きくしてハウジングの挿抜時の操作性を低下させてしまうことなく、ハウジング同士のがたつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハウジング間のがたつきを抑制して端子同士の高い接続信頼性を維持することが可能なコネクタを提供できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係るコネクタを示す図であって、図1(a)は第1ハウジングと第2ハウジングとが接合された状態の当接突部の配置位置における断面図、図1(b)は図1(a)におけるA部拡大図である。
図2図2は、本実施形態に係るコネクタを示す図であって、図2(a)は第1ハウジング及び第2ハウジングの幅方向中央部分における断面図、図2(b)は第1ハウジング及び第2ハウジングの当接突部の配置位置における断面図である。
図3図3は、第1ハウジングを示す図であって、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。
図4図4は、第1ハウジングを示す図であって、図4(a)は上面側から視た斜視図、図4(b)は下面側から視た斜視図である。
図5図5は、第1ハウジングと第2ハウジングとの接合状態を示す図であって、図5(a)から図5(d)はそれぞれコネクタの断面図である。
図6図6は、第1ハウジングと第2ハウジングとの接合位置とコネクタ挿入力との関係を示すグラフである。
図7図7は、当接突部と嵌合部の内縁との位置関係を示す図であって、図7(a)は図5(b)におけるB部拡大図、図7(b)は図5(c)におけるC部拡大図である。
図8図8は、比較例に係るコネクタの第1ハウジングと第2ハウジングとの接合状態を示す図であって、図8(a)から図8(c)はそれぞれコネクタの断面図である。
図9図9は、比較例に係るコネクタの第1ハウジングと第2ハウジングとの接合位置とコネクタ挿入力との関係を示すグラフである。
図10図10は、第1ハウジングの変形例を示す図であって、図10(a)及び図10(b)はそれぞれ正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るコネクタを示す図であって、図1(a)は第1ハウジングと第2ハウジングとが接合された状態の当接突部の配置位置における断面図、図1(b)は図1(a)におけるA部拡大図である。図2は、本実施形態に係るコネクタを示す図であって、図2(a)は第1ハウジング及び第2ハウジングの幅方向中央部分における断面図、図2(b)は第1ハウジング及び第2ハウジングの当接突部の配置位置における断面図である。
【0014】
図1(a)及び図2(a)(b)に示すように、本実施形態に係るコネクタ1は、雌端子(端子)10を保持する第1ハウジング(ハウジング)20と、雄端子(端子)50を保持する第2ハウジング(ハウジング)60と、を備える。第1ハウジング20と第2ハウジング60とは、互いに接合される。第1ハウジング20と第2ハウジング60とが接合されることで、雌端子10と雄端子50とが導通接続される。
【0015】
雌端子10は、金属板のプレス成形品で、端子嵌合部11と、芯線加締め片12と、被覆加締め片13とを備えている。端子嵌合部11は、角筒状に形成されており、内側へ突出する接点部14を有している。端子嵌合部11には、接点部14と対向する底面部11aに、ランス係合部15と、ランス嵌入孔16とが形成されている。ランス係合部15は、ランス嵌入孔16の縁部に形成されており、端子嵌合部11の底面部11aから下方に隆起している。芯線加締め片12及び被覆加締め片13には、電線41が接続されている。
【0016】
電線41は、外被42によって導体43を覆った絶縁電線であり、端部において導体43が外被42から露出されている。芯線加締め片12は、外被42から露出された電線41の導体43に加締められており、これにより、電線41の導体43が雌端子10に圧着されている。被覆加締め片13は、外被42の端部に加締められており、これにより、電線41の外被42が雌端子10に固定されている。
【0017】
図3は、第1ハウジングを示す図であって、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。図4は、第1ハウジングを示す図であって、図4(a)は上面側から視た斜視図、図4(b)は下面側から視た斜視図である。
【0018】
図3(a)(b)に示すように、第1ハウジング20は、雌端子収容部21を有している。第1ハウジング20は、合成樹脂からなる成形品である。第1ハウジング20の雌端子収容部21には、複数の雌端子キャビティ22が形成されており、これらの雌端子キャビティ22には、第1ハウジング20の第2ハウジング60への接合方向後方側である後端(以降、後端と称す)側から雌端子10が挿入されて収容される。雌端子キャビティ22には、第1ハウジング20の第2ハウジング60への接合方向前方である先端(以降、先端と称す)側に、雄端子挿入孔23が形成されている。この雄端子挿入孔23は、第1ハウジング20の先端へ向かって次第に広がるテーパ形状に形成されたガイド面24を有している。
【0019】
また、雌端子収容部21には、ランス25が形成されている。ランス25は、その一部が雌端子キャビティ22内へ突出された係合部26を有している。ランス25は、その係合部26が、雌端子キャビティ22内に挿入された雌端子10のランス嵌入孔16に入り込む。これにより、雌端子10は、そのランス係合部15に係合部26が係合され、第1ハウジング20の後端側への抜け出しが防止される。
【0020】
図4(a)に示すように、第1ハウジング20は、その上面20a側における幅方向の中央部分に、ロックアーム30を有している。ロックアーム30は、雌端子収容部21における先端側に連結されている。ロックアーム30は、第1ハウジング20の先端から後端へ延在されており、その後端側の端部には、上方へ突出するロック爪(ロック部)31が形成されている。ロックアーム30は、雌端子収容部21との連結箇所を支点として揺動するように弾性変形可能とされている。
【0021】
第1ハウジング20の上面20aには、内側ガイド壁33及び外側ガイド壁34が突設されている。これらの内側ガイド壁33及び外側ガイド壁34は、それぞれ第2ハウジング40との接合方向に沿って形成されている。内側ガイド壁33には、第1ハウジング20の後端側に、上方へ突出する当接突部(当接部)35が形成されている。この当接突部35における第1ハウジング20の先端側には、導入部36が設けられている。導入部36は、第1ハウジング20の後端側へ向かって次第に上方へ傾斜されている。
【0022】
図4(b)に示すように、第1ハウジング20には、その下面20bにおける第1ハウジング20の後端側に、下方へ突出する当接面(当接部)37が設けられている。この当接面37は、幅方向にわたって形成されている。この当接面37における第1ハウジング20の先端側には、ガイド部38が設けられている。ガイド部38は、第1ハウジング20の後端側へ向かって次第に下方へ傾斜されている。
【0023】
雄端子50は、金属板のプレス成形品で、端子接続部51と、芯線加締め片52と、被覆加締め片53とを備えている。端子接続部51は、角筒状に形成されており、その先端には、棒状に形成された接続ピン部54が突出されている。接続ピン部54は、雌端子10の端子嵌合部11に対して、その先端側から挿し込まれる。そして、この接続ピン部54が端子嵌合部11内の接点部14と底面部11aとの間に挿し込まれ、接点部14が接続ピン部54に押し付けられて接触する。これにより、雌端子10と雄端子50とが導通接続される。端子接続部51には、その底面部51aに、ランス係合部55と、ランス嵌入孔56とが形成されている。ランス係合部55は、ランス嵌入孔56の縁部に形成されており、端子接続部51の底面部51aから下方に隆起している。
【0024】
芯線加締め片52及び被覆加締め片53には、電線41が接続されている。芯線加締め片52は、外被42から露出された電線41の導体43に加締められており、これにより、電線41の導体43が雄端子50に圧着されている。被覆加締め片53は、外被42の端部に加締められており、これにより、電線41の外被42が雄端子50に固定されている。
【0025】
第2ハウジング60は、合成樹脂からなる成形品であり、雄端子収容部61を有している。雄端子収容部61には、複数の雄端子キャビティ62が形成されており、これらの雄端子キャビティ62には、第2ハウジング60の第1ハウジング20への接合方向後方側である後端(以降、後端と称す)側から雄端子50が挿入されて収容される。雄端子キャビティ62には、第2ハウジング60の第1ハウジング20への接合方向前方である先端(以降、先端と称す)側に、雄端子突出孔63が形成されている。この雄端子突出孔63には、雄端子キャビティ62に収容される雄端子50の接続ピン部54が挿通され、接続ピン部54は、雄端子収容部61の先端から突出される。
【0026】
また、雄端子収容部61には、ランス65が形成されている。ランス65は、その一部が雄端子キャビティ62内へ突出された係合部66を有している。ランス65は、その係合部66が、雄端子キャビティ62内に挿入された雄端子50のランス嵌入孔56に入り込む。これにより、雄端子50は、そのランス係合部55に係合部66が係合され、第2ハウジング60の後端側への抜け出しが防止される。
【0027】
第2ハウジング60は、雄端子収容部61の前方に、嵌合部71を有している。嵌合部71は、前方側が開口した嵌合凹部72を有している。この嵌合凹部72には、第1ハウジング20が嵌合される。嵌合部71は、その上方側における先端部分に係止爪(ロック部)73を有している。係止爪73は、嵌合部71の幅方向の中央部分に形成されており、嵌合凹部72の内側へ突設されている。
【0028】
上記のように構成されたコネクタ1では、第1ハウジング20の当接突部35及び当接面37が、第1ハウジング20と第2ハウジング60との接合方向と交差する方向へ突出するように、第1ハウジング20の外周の対向位置に設けられている。また、第1ハウジング20の当接突部35及び当接面37は、雄端子50の接続ピン部54に対する雌端子10の接点部14の接触方向に沿う方向へ突出されている。
【0029】
次に、上記コネクタ1を構成する第1ハウジング20と第2ハウジング60とを接合させる場合について説明する。
【0030】
図5は、第1ハウジングと第2ハウジングとの接合状態を示す図であって、図5(a)から図5(d)はそれぞれコネクタの断面図である。図6は、第1ハウジングと第2ハウジングとの接合位置とコネクタ挿入力との関係を示すグラフである。図7は、当接突部と嵌合部の内縁との位置関係を示す図であって、図7(a)は図5(b)におけるB部拡大図、図7(b)は図5(c)におけるC部拡大図である。
【0031】
図5(a)に示すように、第1ハウジング20と第2ハウジング60とを接合させるには、第2ハウジング60の嵌合部71に形成された嵌合凹部72に、第1ハウジング20の雌端子収容部21を嵌め込む。
【0032】
ここで、第1ハウジング20と第2ハウジング60とを接合させるためのコネクタ挿入力Fは、嵌合凹部72への雌端子収容部21の嵌合開始時点(図6中S1参照)から増加する。
【0033】
このように、嵌合凹部72へ雌端子収容部21を嵌合させると、雌端子収容部21の各雌端子キャビティ22に形成された雄端子挿入孔23に雄端子50の接続ピン部54の先端が挿入される。このとき、接続ピン部54は、ガイド面24によって雄端子挿入孔23へ案内されて円滑に挿入される。また、第2ハウジング60の嵌合部71の下方側の内縁71aが第1ハウジング20の下面20bのガイド部38を越えて当接面37に接触する。これにより、図1(b)に示すように、第1ハウジング20の当接面37以外の先端側の下面20bと第2ハウジング60との間には、僅かなクリアランスCが形成された状態となる。したがって、接続ピン部54がガイド面24によって雄端子挿入孔23へ案内されるまでは、第2ハウジング60に対して第1ハウジング20の先端側が容易に変位され、よって、接続ピン部54の雄端子挿入孔23への挿入のさらなる円滑化が図られる。
【0034】
また、第2ハウジング60の嵌合部71の嵌合凹部72に、第1ハウジング20の雌端子収容部21を嵌め込むと、第2ハウジング60の嵌合部71に形成された係止爪73が第1ハウジング20のロックアーム30に形成されたロック爪31に当接される。
【0035】
図5(b)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71の嵌合凹部72に、第1ハウジング20の雌端子収容部21をさらに嵌め込むと、雄端子挿入孔23に挿入された雄端子50の接続ピン部54が雌端子10の端子嵌合部11に挿し込まれる。
【0036】
この時点において、嵌合部71の係止爪73がロックアーム30のロック爪31に乗り上げることで、コネクタ挿入力Fが最大となり(図6中S2参照)、以降はコネクタ挿入力Fが減少する。
【0037】
また、図7(a)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71の上方側の内縁71bが第1ハウジング20の当接突部35の導入部36に当接される。
【0038】
図5(c)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71の嵌合凹部72に、第1ハウジング20の雌端子収容部21をさらに嵌め込むと、雄端子50の接続ピン部54が雌端子10の端子嵌合部11にさらに挿し込まれる。これにより、接続ピン部54が端子嵌合部11の接点部14と底面部11aとの間に入り込み、接続ピン部54に接点部14が押し付けられて接触して雌端子10と雄端子50とが導通接続される。また、図7(b)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71の上方側の内縁71bが第1ハウジング20の当接突部35の導入部36に沿って当接突部35へ案内される。このように、嵌合部71の上方側の内縁71bが当接突部35の導入部36に沿って当接突部35へ案内されることにより、コネクタ挿入力Fの減少が一旦止まり(図6中S3参照)、その後、再び減少する。
【0039】
図5(d)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71の嵌合凹部72に、第1ハウジング20の雌端子収容部21をさらに嵌め込むと、雄端子50の接続ピン部54が雌端子10の端子嵌合部11のさらに奥まで挿し込まれる。また、第1ハウジング20の当接突部35及び当接面37が第2ハウジング60の嵌合凹部72の内面に当接した状態となる。これにより、第2ハウジング60の嵌合部71の嵌合凹部72に対して第1ハウジング20の雌端子収容部21が隙間なく嵌合された状態となり、第1ハウジング20と第2ハウジング60とのがたつきがなくされる。
【0040】
この状態において、係止爪73がロックアーム30のロック爪31を乗り越えてロック爪31よりも第1ハウジング20の後端側に到達する。これにより、押し下げられて弾性変形されていたロックアーム30が復元し、ロック爪31と係止爪73とが互いに係合する。したがって、第1ハウジング20と第2ハウジング60との接合状態が維持される。また、この時点で接合が完了し、コネクタ挿入力Fがなくなる(図6中S4参照)。
【0041】
このように、上記実施形態に係るコネクタによれば、第1ハウジング20と第2ハウジング60とを接合させることで当接突部35及び当接面37が嵌合凹部72の内面に当接されるので、接合状態における第1ハウジング20と第2ハウジング60とのがたつきを抑制することができ、第1ハウジング20と第2ハウジング60にそれぞれ保持された雌端子10と雄端子50との接触安定性を向上させることができる。これにより、例えば、走行時に振動が生じるような自動車等の車両に用いても、振動による雌端子10と雄端子50との接触箇所での摩耗を極力抑えることができ、雌端子10と雄端子50との高い接続信頼性を維持することができる。
【0042】
特に、当接突部35及び当接面37は、接続ピン部54に対する接点部14の接触方向に沿う方向へ突出されている。したがって、当接突部35及び当接面37が嵌合凹部72の内面に当接することで、第1ハウジング20と第2ハウジング60との接続ピン部54に対する接点部14の接触方向のがたつきを抑制することができる。これにより、接続ピン部54と接点部14との接触安定性を確実に向上させることができる。
【0043】
また、第1ハウジング20の外周の対向位置である上面20a及び下面20bに当接突部35及び当接面37を設けたので、第1ハウジング20と第2ハウジング60とのがたつきをバランス良く抑制することができ、雌端子10と雄端子50との接触安定性をより高めることができる。
【0044】
ここで、第1ハウジング20に当接突部35及び当接面37を設けない比較例に係るコネクタの第1ハウジング20と第2ハウジング60との接合について説明する。
【0045】
図8は、比較例に係るコネクタの第1ハウジングと第2ハウジングとの接合状態を示す図であって、図8(a)から図8(c)はそれぞれコネクタの断面図である。図9は、比較例に係るコネクタの第1ハウジングと第2ハウジングとの接合位置とコネクタ挿入力との関係を示すグラフである。
【0046】
図8(a)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71に形成された嵌合凹部72に第1ハウジング20の雌端子収容部21を嵌め込むと、コネクタ挿入力Fは、嵌合凹部72への雌端子収容部21の嵌合開始時点(図9中S11参照)から増加する。
【0047】
嵌合部71の係止爪73がロックアーム30のロック爪31に当接された後、図8(b)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71の嵌合凹部72に、第1ハウジング20の雌端子収容部21をさらに嵌め込むと、嵌合部71の係止爪73がロックアーム30のロック爪31が乗り上げることで、コネクタ挿入力Fが最大となり(図9中S12参照)、以降はコネクタ挿入力Fが減少する。
【0048】
図8(c)に示すように、第2ハウジング60の嵌合部71の嵌合凹部72に、第1ハウジング20の雌端子収容部21をさらに嵌め込むと、係止爪73がロックアーム30のロック爪31を乗り越えてロック爪31よりも第1ハウジング20の後端側に到達する。これにより、押し下げられて弾性変形されていたロックアーム30が復元し、ロック爪31と係止爪73とが互いに係合する。したがって、第1ハウジング20と第2ハウジング60との接合状態が維持され、また、接合が完了したことで、コネクタ挿入力Fがなくなる(図9中S13参照)。
【0049】
このように、第1ハウジング20に当接突部35及び当接面37を設けない場合、そのコネクタ挿入力Fは、嵌合部71の係止爪73がロックアーム30のロック爪31を乗り上げる際に最大となる。
【0050】
これに対して、本実施形態に係るコネクタ1の場合も、コネクタ挿入力Fが最大となるのは、嵌合部71の係止爪73がロックアーム30のロック爪31を乗り上げるときである(図6参照)。つまり、本実施形態に係るコネクタ1では、当接突部35及び当接面37が嵌合凹部72の内面と当接するタイミングと、第1ハウジング20と第2ハウジング60とを接合させる際にコネクタ挿入力Fが最大となるタイミングとがずらされている。これにより、第1ハウジング20に当接突部35及び当接面37を設けることで、接合後におけるがたつきを抑制する構造としても、コネクタ挿入力Fの最大値は、第1ハウジング20に当接突部35及び当接面37を設けない場合と同等に抑えることができる。
【0051】
つまり、本実施形態では、コネクタ挿入力Fの最大値を大きくして第1ハウジング20と第2ハウジング60との挿抜時の操作性を低下させてしまうことなく、接合時における第1ハウジング20と第2ハウジング60とのがたつきを抑制し、雌端子10と雄端子50との良好な接続信頼性を維持させることができる。
【0052】
なお、上記実施形態では、当接突部35を内側ガイド壁33に形成したが、当接突部35の形成位置は、内側ガイド壁33に限らない。
【0053】
図10は、第1ハウジングの変形例を示す図であって、図10(a)及び図10(b)はそれぞれ正面図である。
【0054】
例えば、当接突部35は、図10(a)に示すように、第1ハウジング20の外側ガイド壁34に形成しても良く、また、図10(b)に示すように、第1ハウジング20の上面20aにおける内側ガイド壁33と外側ガイド壁34との間に形成しても良い。
【0055】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0056】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(4)に簡潔に纏めて列記する。
(1) 互いに接合可能な二つのハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)を備え、前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)同士を接合させることで前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)にそれぞれ保持された端子(雌端子10,雄端子50)同士が導通接続されるコネクタ(1)であって、
一方の前記ハウジング(第2ハウジング60)は、他方の前記ハウジング(第1ハウジング20)が嵌合可能な嵌合凹部(72)を有し、
他方の前記ハウジング(第1ハウジング20)の外周における前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)同士の接合方向後方側には、前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)同士の接合方向と交差する方向へ突出する当接部(当接突部35,当接面37)が設けられ、
前記当接部(当接突部35,当接面37)は、前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)同士を接合させた状態で、前記嵌合凹部(72)の内面に当接される
ことを特徴とするコネクタ。
(2) 一方の前記端子(雄端子50)は、他方の前記端子(雌端子10)へ向かって突出する接続ピン部(54)を有し、他方の前記端子(雌端子10)は、前記接続ピン部(54)に対して側方から接触する接点部(14)を有し、
前記当接部(当接突部35,当接面37)は、前記接続ピン部(54)に対する前記接点部(14)の接触方向に沿う方向へ突出されている
ことを特徴とする(1)に記載のコネクタ。
(3) 前記当接部(当接突部35,当接面37)は、他方の前記ハウジング(第1ハウジング20)の外周の対向位置にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする(1)または(2)に記載のコネクタ。
(4) 前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)には、互いに係合して前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)同士の接合状態を維持するロック部(ロック爪31,係止爪73)が設けられ、
前記当接部(当接突部35,当接面37)が前記嵌合凹部(72)の内面と当接するタイミングと、前記ハウジング(第1ハウジング20,第2ハウジング60)同士を接合させる際にコネクタ挿入力(F)が最大となるタイミングとがずらされている
ことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタ。
【符号の説明】
【0057】
1:コネクタ
10:雌端子(端子)
14:接点部
20:第1ハウジング(ハウジング)
31:ロック爪(ロック部)
35:当接突部(当接部)
37:当接面(当接部)
50:雄端子(端子)
54:接続ピン部
60:第2ハウジング(ハウジング)
72:嵌合凹部
73:係止爪(ロック部)
F:コネクタ挿入力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10