(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2−(4−アミノフェニル)−5(6)アミノベンズイミダゾール(DAPBI)、p−フェニレンジアミン(PPD)、およびテレフタロイルジクロライド(TCl)の残基を含むポリマーであって、多分散指数が1〜1.8であり、固有粘度が6dl/g以上であるポリマー。
2−(4−アミノフェニル)−5(6)アミノベンズイミダゾール(DAPBI)、p−フェニレンジアミン(PPD)、およびテレフタロイルジクロライド(TCl)の残基を含むポリマーであって、オリゴマー含有率が0.75重量パーセント以下であり、固有粘度が6dl/g以上であり、オリゴマーがポリp−フェニレンジアミンテレフタルアミド単独重合体を使用して較正されたカラムを用いた場合、3000MW未満で溶出するポリマーまたは種であるポリマー。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
幾つかの態様では、本発明は、2−(4−アミノフェニル)−5(6)アミノベンズイミダゾール(DAPBI)、p−フェニレンジアミン(PPD)、およびテレフタロイルジクロライド(TCl)の残基を含むポリマーに関し、ポリマーは、(a)有機溶媒と無機塩c重量パーセントとを含む溶媒系に、bモルパーセントのDAPBIおよびyモルパーセントのPPDを懸濁したスラリーを形成する工程であって、無機塩が有機溶媒の少なくとも5重量パーセントの量で存在し、DAPBIとPPDが、ポリマー基準で12パーセント以上の固形分の重量パーセントを有するポリマー溶液を提供するのに十分な量で存在する工程;および(b)工程a)のスラリーを化学量論量のテレフタロイルジクロライドと接触させてポリマーを含む生成物を生成する工程を含み、yとbの合計が100であり、b×cの積が225以上である方法で製造される。
【0005】
本発明のあるポリマーの多分散指数(PDI)は、1〜2である。幾つかの実施形態では、PDIは1〜1.8である。特定の実施形態では、PDIは1〜1.5である。
【0006】
本発明の特定のポリマーのオリゴマー含有率は、1.0重量パーセント以下である。あるポリマーのオリゴマー含有率は0.75重量パーセント以下である、または幾つかの実施形態ではオリゴマー含有率は0.5重量パーセント以下である。
【0007】
他の態様では、本発明は、2−(4−アミノフェニル)−5(6)アミノベンズイミダゾール(DAPBI)、p−フェニレンジアミン(PPD)、およびテレフタロイルジクロライド(TCl)の残基を含むポリマークラムおよび/またはポリマーの製造方法であって、(a)有機溶媒と無機塩c重量パーセントとを含む溶媒系に、bモルパーセントのDAPBIおよびyモルパーセントのPPDを懸濁したスラリーを形成する工程であって、無機塩が有機溶媒の少なくとも5重量パーセントの量で存在し、DAPBIとPPDが、ポリマー基準で12パーセント以上の固形分の重量パーセントを有するポリマー溶液を提供するのに十分な量で存在する工程;および(b)工程a)のスラリーを化学量論量のテレフタロイルジクロライドと接触させてポリマーを含む生成物を生成する工程を含み、yとbの合計が100であり、b×cの積が225以上である方法に関する。幾つかの実施形態では、b×cは、300以上または350以上である。
【0008】
比較的多量の無機塩(CaCl
2など)を使用すると、(比較的高い固形分濃度で)固有粘度が驚くほど増加した。繊維などの高分子量材料を製造する場合、この比較的高い固有粘度は有用である。さらに、重合溶液の固形分濃度が高い方が、固形分濃度の低い反応と比較して、製造コストが低減する。
【0009】
幾つかの実施形態では、工程b)におけるテレフタロイルジクロライドの添加は、少なくとも3段階で行われる。幾つかの反応では、最後の添加の前に工程b)でテレフタロイルジクロライドを添加した後毎回、生成物を15℃以下の温度に冷却する。特定の好ましい実施形態では、工程b)を撹拌下で行う。幾つかの方法では、ゲル化点まで1回の添加につき添加されるテレフタロイルジクロライドは10パーセント以下である。テレフタロイルジクロライドの最後の添加は、ゲル化の前に混合することができるように単一量として行うことができる。
【0010】
特定の実施形態では、スラリーを化学量論量のテレフタロイルジクロライドと接触させる前に、工程a)で得たスラリーを20℃以下の温度に冷却する。
【0011】
幾つかの実施形態では、有機溶媒はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはジメチルアセトアミド(DMAC)である。好適な無機塩としては、LiClおよびCaCl
2が挙げられる。幾つかの実施形態では、溶媒の無機塩重量パーセントは、5.0〜10%の範囲である。
【0012】
幾つかの実施形態では、ポリマーを単離することができる。ポリマーは、1つ以上の洗浄工程、中和工程、またはその両方で処理することができる。幾つかの実施形態では、ポリマーを粉砕することができる。洗浄工程および/または中和工程は、ポリマーの粉砕前に行ってもまたは粉砕後に行ってもよい。
【0013】
幾つかの態様では、本発明はさらに、硫酸を含む溶媒にポリマーを溶解し、繊維の紡糸に好適な溶液を形成する工程に関する。溶解されるポリマーとしては、洗浄および/または中和されたものであってもまたは洗浄および/または中和されなかったものであってもよい単離ポリマー、ならびに粉砕されたものであってもまたは粉砕されなかったものであってもよいポリマーが挙げられる。
【0014】
幾つかの実施形態では、本方法のDAPBI対PPDのモル比は、0.25〜4の範囲である。特定の方法では、工程(a)のDAPBIであるスラリーの量は、2〜9重量%の範囲である。特定の方法では、工程(a)のp−フェニレンジアミンは0.8〜6.0重量%である。
【0015】
本発明の方法は、高い固形分濃度で行うことができる。幾つかの実施形態では、生成物溶液中の固形分の重量パーセントは、ポリマー基準で12〜15%である。幾つかの方法では、生成物溶液中の固形分の重量パーセントは、モノマー基準で14〜25%である。幾つかの実施形態では、生成物溶液中の固形分の重量パーセントは、モノマー基準で14〜19%である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
幾つかの態様では、本発明は、2−(4−アミノフェニル)−5(6)アミノベンズイミダゾール(DAPBI)、p−フェニレンジアミン(PPD)、およびテレフタロイルジクロライド(TCl)の残基を含むポリマークラムに関し、ポリマーは、(a)有機溶媒と無機塩c重量パーセントとを含む溶媒系に、bモルパーセントのDAPBIおよびyモルパーセントのPPDを懸濁したスラリーを形成する工程であって、無機塩が有機溶媒の少なくとも5重量パーセントの量で存在し、DAPBIとPPDが、ポリマー基準で12パーセント以上の固形分の重量パーセントを有するポリマー溶液を提供するのに十分な量で存在する工程;および(b)工程a)のスラリーを化学量論量のテレフタロイルジクロライドと接触させてポリマーを含む生成物を生成する工程を含み、yとbの合計が100であり、b×cの積が225以上である方法により製造される。幾つかの実施形態では、b×cは、300以上または350以上である。本発明はまた、前述のポリマーおよび/またはポリマークラムの製造方法にも関する。
【0017】
ポリマーの製造に有用な容器、ならびにポリマーの製造に有用な温度および他の条件としては、例えば、Kwolekらに付与された米国特許第3,063,966号明細書;Kwolekに付与された米国特許第3,600,350号明細書;中川らに付与された米国特許第4,018,735号明細書;Jungらに付与された米国特許第5,646,234号明細書;米良に付与された米国特許第4,172,938号明細書;およびBosに付与された国際公開第2005054337号パンフレットなどの特許に開示されている詳細が挙げられる。
【0018】
溶媒系の無機塩含有率は、溶媒と塩との混合物に基づき、少なくとも5重量パーセントである。幾つかの実施形態では、無機塩含有率は、12重量パーセントもの高さであってもよいと考えられる。幾つかの好ましい実施形態では、無機塩含有率は10重量パーセント以下であり、幾つかの最も好ましい実施形態では、無機塩含有率は8重量パーセント以下である。好ましい有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましい無機塩としては、LiCl、CaCl
2、これらの混合物が挙げられる。
【0019】
1つの好ましい実施形態では、溶媒系はNMP/CaCl
2である。特定の実施形態では、NMP/CaCl
2溶媒のCaCl
2重量パーセントは、5〜10%の範囲である。NMPに対するCaCl
2の溶解度は約8%であることに留意されたい。従って、8%超のCaCl
2を使用する場合、溶媒系中に不溶のCaCl
2が幾らか存在する。溶媒および塩は販売元から入手し、必要に応じて、当業者に公知の方法で精製することができる。
【0020】
幾つかの方法では、DAPBI対フェニレンジアミンのモル比は、0.25〜4.0の範囲である。この比は、DAPBI/PPD比、20/80〜80/20と同等である。特定の方法では、工程(a)のDAPBIであるスラリーの量は、スラリーの2.0〜9重量%の範囲である。
【0021】
幾つかの実施形態では、ポリマークラムは、無機塩をc重量%含有する有機溶媒の混合物中で、(i)PPD、yモル%;(ii)DAPBI、bモル%;および(iii)TCl、90〜110モル%;を共重合することにより製造される。好ましい実施形態では、重合に使用されるアミンモノマーは、PPDとDAPBIだけである。幾つかの実施形態では、他のアミンモノマーが存在してもよいが、このような実施形態では、PPDおよびDAPBIは、存在するPPDとDAPBIの相対量に基づき、y+b=100となるように存在する。b×cの積は225より大きい。幾つかの実施形態では、b×cの積は300より大きく、好ましくは350より大きい。
【0022】
幾つかの実施形態では、生成物溶液中の固形分の重量パーセントは、ポリマー基準で12〜15%である。「ポリマー基準」とは、ポリマーの重量を、ポリマーと溶媒と(反応副生成物と)からなる全溶液の重量で除したものをパーセンテージとして表したものを意味する。「モノマー基準」とは、個々のモノマーの重量の合計をポリマーと溶媒と(反応副生成物と)からなる全溶液の重量で除したものをパーセンテージとして表したものを意味する。幾つかの方法では、生成物中の固形分の重量パーセントは、モノマー基準で14〜25%である。幾つかの実施形態では、生成物中の固形分の重量パーセントは、モノマー基準で14〜19%である。
【0023】
幾つかの実施形態では、1つ以上の工程段階を撹拌下で行うことができる。
【0024】
溶媒からポリマーを単離することができ、幾つかの実施形態では、本発明は、2−(4−アミノフェニル)−5(6)アミノベンズイミダゾール(DAPBI)、p−フェニレンジアミン、およびテレフタロイルジクロライドの残基を含むポリマー粉末に関する。幾つかの実施形態では、ポリマー粉末の固有粘度は4dl/g以上である。幾つかの好ましい実施形態では、ポリマーの固有粘度は4〜8dl/gであり;幾つかの実施形態では、ポリマーの固有粘度は6dl/g以上である。
【0025】
処理および貯蔵を助けるために、単離されたポリマーを所望の粒度に粉砕することができる。ポリマーは、1つ以上の洗浄工程、中和工程、またはその両方で処理することができる。これらの洗浄工程および/または中和工程は、ポリマーの粉砕前に行ってもまたは粉砕後に行ってもよい。反応混合物の撹拌、洗浄工程および中和工程、ならびにポリマーの粉砕に使用するのに好適な装置は当業者に公知である。
【0026】
ポリマーの分子量は、通常、1つ以上の希薄溶液粘度測定値により監視され、それに相関する。従って、通常、希薄溶液の相対粘度(「V
rel」または「η
rel」または「n
rel」)と固有粘度(「V
inh」または「η
inh」または「n
inh」)の測定値が、ポリマー分子量の監視に使用される。希薄ポリマー溶液の相対粘度と固有粘度には、次式の関係があり
V
inh=ln(V
rel)/C
式中、lnは自然対数関数であり、Cはポリマー溶液の濃度である。V
relは、無名数の比であり、従ってV
inhは、通常、グラム当たりのデシリットル(「dl/g」)として、濃度の逆数の単位で表される。
【0027】
ポリマーの中和は、1つ以上の工程でポリマーを塩基と接触させることにより行うことができる。好適な塩基としては、NaOH;KOH;Na
2CO
3;NaHCO
3;NH
4OH;Ca(OH)
2;K
2CO
3;KHCO
3;またはトリアルキルアミン、好ましくはトリブチルアミン;他のアミン;またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、塩基は水溶性である。幾つかの好ましい実施例では、中和溶液は塩基の水溶液である。
【0028】
ポリマーは、中和工程と独立して、または中和工程の前および/または中和工程の後に、水で洗浄することもできる。
【0029】
幾つかの態様では、本発明はさらに、硫酸を含む溶媒にポリマーを溶解し、繊維の紡糸に好適な溶液(「紡糸原液」とも称される)を形成する工程に関する。溶解されるポリマーとしては、洗浄および/または中和されたものであってもまたは洗浄および/または中和されなかったものであってもよい単離ポリマー、ならびに粉砕されたものであってもまたは粉砕されなかったものであってもよいポリマーが挙げられる。任意の好適な溶媒を使用してポリマーを溶解することができるが、幾つかの実施形態では、溶媒はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはジメチルアセトアミド(DMAC)と無機塩とを含み、繊維の紡糸に好適な溶液を形成する。当業者に公知の従来の方法により、溶解したポリマーを繊維に紡糸することができる。
【0030】
多くの方法を使用して、本明細書に記載の共重合体を含有する紡糸原液をドープフィラメントに紡糸することができるが;湿式紡糸および「エアギャップ」紡糸が最もよく知られている。これらの紡糸法用の紡糸口金と浴の一般的な配置は当該技術分野で周知であり、米国特許第3,227,793号明細書;米国特許第3,414,645号明細書;米国特許第3,767,756号明細書;および米国特許第5,667,743号明細書の図は、このような高強度ポリマーの紡糸法を説明している。「エアギャップ」紡糸では、通常、水浴にて凝固させる前に、まず紡糸口金で空気などの気体中に繊維を押し出す。これはフィラメントの形成に好ましい方法である。
【0031】
本明細書で使用する場合、フィラメントおよび繊維という用語は、互換的に使用される。
【0032】
繊維を1つ以上の洗浄浴または洗浄キャビネットと接触させることができる。洗浄は、繊維を浴に浸漬することにより達成されても、または繊維に水溶液を噴霧することにより達成されてもよい。洗浄キャビネットは、通常、1本以上のロールを収容する密閉キャビネットを含み、糸は、キャビネットから出る前に何回もロールの周囲、およびロール間を走行する。糸がロールの周囲を走行する時、それに洗浄液が噴霧される。洗浄液は、キャビネットの底部で連続的に回収され、それから排液される。
【0033】
洗浄液の温度は、好ましくは30℃より高い。洗浄液は蒸気の形態(スチーム)で塗布することもできるが、より好都合には液体の形態で使用される。好ましくは、多数の洗浄浴または洗浄キャビネットを使用する。いずれか1つの洗浄浴または洗浄キャビネット中での糸の滞留時間は、糸中の所望の残留硫黄濃度に依存することになる。連続法では、好ましい複数の洗浄浴および/または洗浄キャビネット中における全洗浄工程の所要時間は、好ましくは約10分以下、より好ましくは約5秒以下である。幾つかの実施形態では、全洗浄工程の所要時間は20秒以上であり;幾つかの実施形態では、全洗浄工程は400秒以内に達成される。バッチ法では、全洗浄工程の所要時間は、12〜24時間以上もの、時間のオーダーであってもよい。
【0034】
必要に応じて、塩基による糸中の酸(硫酸溶媒など)の中和は、浴またはキャビネット中で行うことができる。幾つかの実施形態では、中和浴または中和キャビネットが、1つ以上の洗浄浴または洗浄キャビネットの後に続いてもよい。洗浄は、繊維を浴に浸漬することにより達成されても、または繊維に水溶液を噴霧することにより達成されてもよい。中和は、1つの浴もしくはキャビネット中で行っても、または複数の浴もしくはキャビネット中で行ってもよい。幾つかの実施形態では、硫酸不純物の中和に好ましい塩基としては、NaOH;KOH;Na
2CO
3;NaHCO
3;NH
4OH;Ca(OH)
2;K
2CO
3;KHCO
3;またはトリアルキルアミン、好ましくはトリブチルアミン;他のアミン;またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、塩基は水溶性である。幾つかの好ましい実施例では、中和溶液は、1リットル当たり塩基0.01〜1.25モル、好ましくは1リットル当たり塩基0.01〜0.5モルを含有する水溶液である。カチオンの量は、塩基への暴露時間および温度、ならびに洗浄方法にも依存する。幾つかの好ましい実施形態では、塩基はNaOHまたはCa(OH)
2である。
【0035】
繊維を塩基で処理した後、本方法は、水を含有する洗浄溶液または酸と糸を接触させて、過剰の塩基を全部または実質的に全部除去する工程を含んでもよい。この洗浄溶液は、1つ以上の洗浄浴または洗浄キャビネット中で塗布することができる。
【0036】
洗浄および中和の後、繊維または糸を乾燥機で乾燥させて、水および他の液体を除去することができる。1つ以上の乾燥機を使用することができる。特定の実施形態では、乾燥機は、繊維の乾燥に熱風を使用するオーブンであってもよい。他の実施形態では、熱ロールを使用して繊維を加熱することができる。繊維の含水率が繊維の20重量パーセント以下になるまで、繊維を乾燥機で約20℃以上、約100℃未満の温度に加熱する。幾つかの実施形態では、繊維を85℃以下に加熱する。幾つかの実施形態では、繊維の含水率が繊維の14重量パーセント以下になるまで、繊維をそれらの条件で加熱する。幾つかの実施形態では、繊維は少なくとも約30℃に加熱され;幾つかの実施形態では、繊維は少なくとも約40℃に加熱される。
【0037】
乾燥機滞留時間は10分未満であり、好ましくは180秒未満である。乾燥機は窒素雰囲気または他の非反応性雰囲気を備えてもよい。乾燥工程は、通常、大気圧で行われる。しかし、必要に応じて、減圧下で工程を行うことができる。一実施形態では、フィラメントを少なくとも0.1gpdの張力下で、好ましくは2gpd以上の張力下で乾燥させる。
【0038】
定義
本明細書で使用する場合、化学種の「残基」という用語は、特定の反応式中の化学種から得られる生成物またはその後の配合物もしくは化学製品である部分を指し、その部分が実際にその化学種から得られるかどうかは関係ない。従って、p−フェニレンジアミンの残基を含む共重合体は、式:
【化1】
の単位を1個以上有する共重合体を指す。同様に、DAPBIの残基を含む共重合体は、構造:
【化2】
の単位を1個以上含有する。テレフタロイルジクロライドの残基を有する共重合体は、構造:
【化3】
の単位を1個以上含有する。
【0039】
「ポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、同じ種類であるかまたは異なる種類であるかにかかわらず、モノマーの重合により製造されたポリマー化合物を意味する。「共重合体」(2種類の異なるモノマーから製造されたポリマーを指す)という用語、「三元共重合体」(3種類の異なるモノマーから製造されたポリマーを指す)という用語、および四元共重合体(4種類の異なるモノマーから製造されたポリマーを指す)という用語は、ポリマーの定義に含まれる。
【0040】
「多分散指数」(PDI)は、所与のポリマーサンプル中の分子質量の分布の尺度である。算出されるPDIは、重量平均分子量を数平均分子量で除したものである。それは、ポリマーのバッチ中の個々の分子質量の分布を示す。PDIの値は1以上であるが、ポリマー鎖が均一な鎖長に近付くにつれ、PDIは1に近付く。重合によるPDIは、
PDI=Mw/Mn
と表されることが多い。
【0041】
「オリゴマー」とは、ポリp−フェニレンジアミンテレフタルアミド単独重合体を使用して較正されたカラムを用いた場合、<3000MWで溶出するポリマーまたは種を意味する。
【0042】
「クラム」という用語は、ポリマーが、一般に有効粒子径100マイクロメートル超、場合により1mm超の破壊可能な塊または粒子を有することを意味する。幾つかの実施形態では、クラムはさらに、有効粒子径1000マイクロメートル以下の粗粉末を含む。有効粒子径は、平面上への粒子の投影面積に等しい面積を有する円の直径である。「粉末」という用語は、ポリマーに言及する場合、繊維またはパルプのような繊維性も、フィブリドのようなフィルム状の繊維性も有していない共重合体の粒子を意味する。個々の粒子は、フィブリル非含有の傾向があり、不規則な形状を有し、幾つかの実施形態では、有効粒子径840マイクロメートル以下である。例として米国特許第5,474,842号明細書および米国特許第5,811,042号明細書がある。
【0043】
本明細書で使用する場合、「化学量論量」は、第2の成分の反応性基全部と反応するのに理論的に必要な成分の量を意味する。例えば、「化学量論量」は、アミン成分(p−フェニレンジアミンおよびDAPBI)のアミン基の実質的に全部と反応するのに必要なテレフタロイルジクロライドのモル数を指す。「化学量論量」という用語は、通常、理論量の10%以内の範囲の量を指すものと当業者に理解される。例えば、重合反応に使用されるテレフタロイルジクロライドの化学量論量は、p−フェニレンジアミンおよびDPABIのアミン基全部と反応するのに理論的に必要なテレフタロイルジクロライドの量の90〜110%とすることができる。
【0044】
「繊維」とは、長さ対その長さに垂直な断面積を横切る幅の比が大きい、比較的柔軟で巨視的に均質な物体を指す。
【0045】
「有機溶媒」という用語は、本明細書では、一成分の有機溶媒または2種類以上の有機溶媒の混合物を含むものと理解される。幾つかの実施形態では、有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、またはジメチルスルホキシドである。幾つかの好ましい実施形態では、有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルアセトアミドである。
【0046】
「無機塩」という用語は、単一の無機塩または2種類以上の無機塩の混合物を指す。幾つかの実施形態では、無機塩は溶媒に十分可溶であり、ハロゲン原子のイオンを遊離する。幾つかの実施形態では、好ましい無機塩は、KCl、ZnCl
2、LiClまたはCaCl
2である。特定の好ましい実施形態では、無機塩は、LiClまたはCaCl
2である。
【0047】
「未乾燥(never−dried)」とは、繊維の含水率が繊維の少なくとも75重量パーセントであることを意味する。
【0048】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は複数形を含み、特定の数値の言及は、特記しない限り、少なくともその特定の値を含むものとする。値の範囲を示す場合、別の実施形態は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までの範囲を含む。同様に、値が「約」という先行詞の使用により近似値として示される場合、特定の値は別の実施形態を構成するものと理解されるであろう。範囲は全て両端値を含み、組み合わせ可能である。任意の構成成分中にまたは任意の式中に任意の変数が2回以上出現する場合、各出現におけるその定義は、他のどの出現におけるその定義とも独立している。置換基および/または変数の組み合わせは、このような組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合のみ許容できる。
【0049】
以下の実施例で本発明を説明するが、それらは本発明を限定するものではない。
【0050】
試験方法
固有粘度は、ポリマーが濃度96重量%の濃硫酸にポリマー濃度(C)0.5g/dlおよび温度25℃で溶解している溶液を使用して測定することができる。次いで、固有粘度をln(t
poly/t
solv)/C(式中、t
polyはポリマー溶液の滴下時間であり、t
solvは純粋な溶媒の滴下時間である)として算出する。
【0051】
多分散指数(PDI)の算出に使用する分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定される。共重合体のオリゴマー含有率は、また、PPD−T単独重合体から作成される較正曲線との比較により極微量の検査で求められる。SECシステムは、強酸移動相と十分な適合性があるようにカスタマイズされたPL−GPC50(商標)クロマトグラフィーシステムである(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USAから入手可能)。強酸移動相で使用されるようにカスタマイズされた可変波長UV検出器(波長190〜740nm)(Agilent製)を使用する。データ整理に使用されるソフトウェアは、GPCオプションを有するEmpower 2(商標)Data Manager(Waters Technologies,Milford,MA,USA)である。分離に使用されるカラムは、直列接続したAgilent製の2本のシリカ系SECカラム:Zorbax PSM bimodal(6.2×250mm、粒度5ミクロン)およびZorbax PSM 60(6.2×250mm、粒度5ミクロン)であり、これらは共に酸用にカスタマイズされたフリットを有する。移動相は、1.09g/L硝酸(69.0〜70.0%、J.T Baker(NJ,USA)製、を含有するメタンスルホン酸(MSA、99%一級、Acros Organics,NJ,USA製)である。クロマトグラフ条件は、(a)温度:周囲温度;(b)流量:0.08ml/分;(c)注入量:10マイクロリットル;(d)実行時間:140分;(e)UV検出器波長:320nm;および(f)サンプル溶液:100%MSA中0.2mg/mL;である。サンプルは、100%MSA中に周囲温度にて中速で撹拌しながら終夜溶解することにより調製する(Agilent製の自動サンプル前処理システムPL 260(商標))。データ整理法は、UV検出器からデータを取り込む単一検出法である。カラム較正は、予めキャラクタリゼーションを行ったPPD−T単独重合体およびそのオリゴマーを広い標準物質および狭い標準物質として使用して行う。Empowerソフトウェアに組み込まれた標準的な単一検出器GPC法を使用して、分子量分布、平均分子量、および低分子量画分の重量パーセントを算出する。
【実施例】
【0052】
NMP、CaCl
2、DAPBI、PPD、およびTClは、販売元から入手した。
【0053】
比較例1
2.94%のCaCl
2(「c」値2.94)を含有するNMP溶媒31.82kgをFM130D Littleford Reactorに仕込んだ。次いで、PPD456g(「y」値30)およびDAPBI2200g(「b」値70)を仕込んだ。次いで、工程を7℃に冷却した。テレフタロイルジクロライドを3回:997g、997gおよび855g添加した。最初の添加後、混合物を7Cに冷却し、2回目の添加後、混合物を11℃に冷却した。反応終了時、反応器の付着物を検査したが、壁面に大きいDAPBI塊は認められなかった。(b×c)の積は206であった。
【0054】
この反応の固形分はポリマー基準で12%であり、全モノマー基準で14.7%であった。最終的な固有粘度は3.9であった。
【0055】
比較例2
3.91%のCaCl
2(「c」値3.91)を含有するNMP溶媒31.82kgをFM130D Littleford Reactorに仕込んだ。次いで、PPD455g(「y」値30)およびDAPBI2202g(「b」値70)を仕込んだ。次いで、工程を8℃に冷却した。テレフタロイルジクロライドを3回:997g、997gおよび853g添加した。最初の添加後、混合物を10Cに冷却し、2回目の添加後、混合物を12℃に冷却した。反応終了時、反応器の付着物を検査したが、壁面に大きいDAPBI塊は認められなかった。(b×c)の積は274であった。
【0056】
この反応の固形分はポリマー基準で12%であり、全モノマー基準で14.7%であった。最終的な固有粘度は4.6であった。
【0057】
実施例1
5.38%のCaCl
2(「c」値5.38)を含有するNMP溶媒31.82kgをFM130D Littleford Reactorに仕込んだ。次いで、PPD455g(「y」値30)およびDAPBI2180g(「b」値70)を仕込んだ。次いで、工程を7℃に冷却した。テレフタロイルジクロライドを3回:998g、997gおよび834g添加した。最初の添加後、混合物を10Cに冷却し、2回目の添加後、混合物を10℃に冷却した。反応終了時、反応器の付着物を検査したが、壁面に大きいDAPBI塊は認められなかった。(b×c)の積は377であった。
【0058】
この反応の固形分はポリマー基準で12%であり、全モノマー基準で14.7%であった。最終的な固有粘度は7.5であった。最終ポリマーの多分散度は約1.5であり、<3000MWのオリゴマー含有率は約0.45%であった。
【0059】
比較例3
2.43%のCaCl
2(「c」値2.43)を含有するNMP溶媒35.21kgをFM130D Littleford Reactorに仕込んだ。次いで、PPD455g(「y」値30)およびDAPBI2199g(「b」値70)を仕込んだ。次いで、工程を9℃に冷却した。テレフタロイルジクロライドを3回:996g、995gおよび853g添加した。最初の添加後、混合物を10Cに冷却し、2回目の添加後、混合物を11℃に冷却した。反応終了時、反応器の付着物を検査したが、壁面に大きいDAPBI塊は認められなかった。(b×c)の積は170であった。
【0060】
この反応の固形分はポリマー基準で11%であり、全モノマー基準で13.4%であった。最終的な固有粘度は6.4であった。
【0061】
実施例2
5.91%のCaCl
2(「c」値5.91)を含有するNMP溶媒31.36kgをFM130D Littleford Reactorに仕込んだ。次いで、PPD493g(「y」値30)およびDAPBI2382g(「b」値70)を仕込んだ。次いで、工程を8℃に冷却した。テレフタロイルジクロライドを3回:772g、773gおよび1538g添加した。最初の添加後、混合物を10Cに冷却し、2回目の添加後、混合物を11℃に冷却した。反応終了時、反応器の付着物を検査したが、壁面に大きいDAPBI塊は認められなかった。(b×c)の積は414であった。
【0062】
この反応の固形分はポリマー基準で13%であり、全モノマー基準で16.0%であった。最終的な固有粘度は7.1であった。
【0063】
実施例3
実施例2の方法を使用してポリマーを製造し、重量平均分子量および数平均分子量を求める。このポリマーのPDIは1.5未満である。
【0064】
比較例4
2.4%のCaCl
2(「c」値2.4)を含有するNMP溶媒34.08kgを反応器に仕込んだ。次いで、PPD459g(「y」値30)およびDAPBI2212g(「b」値70)を仕込んだ。次いで、工程を20℃に冷却した。テレフタロイルジクロライドを2回:1003gおよび1862g添加した。最初の添加後、混合物を9Cに冷却した。反応終了時、反応器の付着物を検査したが、壁面に大きいDAPBI塊は認められなかった。(b×c)の積は168であった。
【0065】
この反応の固形分はポリマー基準で11%であり、全モノマー基準で14.0%であった。最終的な固有粘度は5.6であった。最終ポリマーの多分散度は、約1.87であり、<3000MWのオリゴマー含有率は約0.87%であった。
【0066】
比較例5
2.0%のCaCl
2(「c」値2.0)を含有するNMP溶媒1780部を反応器に仕込んだ。次いで、PPD23部(「y」値30)およびDAPBI111.2部(「b」値70)を仕込んだ。次いで、工程を9℃に冷却した。テレフタロイルジクロライドを2回:各50.4部添加した。最初の添加後、混合物を8Cに再冷却した。次いで、最後にテレフタロイルクロライドを43.2部添加した。反応終了時、反応器の付着物を検査したが、壁面に大きいDAPBI塊は認められなかった。(b×c)の積は140であった。
【0067】
この反応の固形分はポリマー基準で11%であり、全モノマー基準で14.0%であった。最終的な固有粘度は4.8であった。最終ポリマーの多分散度は、約1.90であり、<3000MWのオリゴマー含有率約0.95%であった。
【0068】
実施例
4
実施例1および実施例2のポリマーを個々に、(1)硫酸含有溶媒、または(2)N−メチル−2−ピロリドン(NMP)もしくはジメチルアセトアミド(DMAC)と無機塩とを含有する溶媒、のいずれかと混合する。ポリマーが溶媒に十分に溶解し、繊維の紡糸に好適な溶液が形成されるまで、必要に応じて冷却して温度を制御しながら、混合物を撹拌する。溶液を紡糸口金から押し出し、エアギャップ紡糸し、凝固させてフィラメントにし、それを洗浄し、乾燥し、ボビンに巻き取る。