(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電解液保持部に電解液が充填された状態で、前記貫通孔が閉口されて前記電解液保持部が封止されていることを特徴とする請求項1に記載の電気モジュール製造用部材。
前記第1電極板及び第2電極板はそれぞれ矩形に形成され、前記矩形の角部に前記突出部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気モジュール製造用部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の電気モジュールの製造方法によれば、前記一端縁の全体を電解液に浸して毛細管現象により電解液保持部に電解液を充填することになるため、この矩形の一端縁の全体に材料コストの高い電解液が大量に付着してしまう。この一端縁の全体に付着した電解液は、洗浄して廃棄される。したがって、従来の電気モジュールの製造方法によれば、電解液の充填時に一端縁の全体に付着して廃棄される電解液の量が多く、原料を大量に無駄にしてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、電気モジュールの製造工程において電解液の使用量を極力削減することのできる電気モジュール製造用部材
を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、一の基板の一方の板面に透明導電膜上に半導体層が形成された第1電極板と、前記第1電極板に対向し、かつ他の基板の一方の板面に対向電極膜が形成された第2電極板と、前記第1電極板の前記一方の板面及び前記第2電極板の前記一方の板面とを、前記半導体層を囲繞するように封止した封止材と、前記第1電極板の外縁部及びこれに対向する前記第2電極板の外縁部の所定箇所が切り欠かれていて、外方に向って突出した突出部と、該突出部
を浸漬する電解液が貯留された容器と、を備え、前記封止材に囲まれた空間で構成される電解液保持部が形成され、前記突出部には、前記電解液保持部とを連通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、前記第1電極板及び前記第2電極板に形成された突出部のみを電解液に浸して貫通孔を介して電解液を電解液保持部に充填することができる。したがって、電解液充填時に第1電極板と第2電極板の表面に電解液が付着することを極力抑制することができる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の電気モジュール製造用部材であって、前記電解液保持部に電解液が充填された状態で、前記貫通孔が閉口されて前記電解液保持部が封止されていることを特徴とする。
本発明によれば、突出部を介して電解液を電解液保持部に充填した後で、貫通孔を閉口して電解液保持部を封止した状態に形成することができる。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の電気モジュール製造用部材であって、前記突出部の外形は、先端に向かって漸次窄むように形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、突出部の外形が、先端に向かって漸次窄むように形成されているため、突出部の表面積をより小さくして電解液の充填時に突出部の表面に付着する電解液の量をより少量に抑えることができる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気モジュール製造用部材であって、前記第1電極板及び第2電極板はそれぞれ矩形に形成され、前記矩形の角部に前記突出部が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、第1電極板及び第2電極板が矩形に形成され、矩形の角部に突出部を形成するため、外縁部から効率的に突出部を切り出すことができ、切断されて廃棄される基板等の材料が最小限に抑えられる。
本発明によれば、第1電極板及び第2電極板に形成された突出部のみを電解液に浸して貫通孔を介して電解液を電解液保持部に充填することができ、電解液充填時に第1電極板と第2電極板の表面に電解液が付着することを極力抑制することができる電気モジュールを効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電気モジュール製造用部材
によれば、電解液に突出部のみを浸して電解液を充填することができるため、第1電極板及び第2電極板の表面に付着する電解液を大幅に削減することができ、電解液を効率的に使用するとともに電解液に掛かるコストが嵩むのを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールを模式的に示した厚さ方向の断面図である。
【
図2】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の電極板形成工程を示した図であり、(a)は第1電極板と第2電極板とを対向配置した状態を示す断面図であり、(b)は(a)をX1−X1線で矢視した図である。
【
図3】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の封止材配置工程を示した図であり、(a)は
図2(a)をX1−X1線で矢視した図であり、(b)は
図2(a)をX2−X2線で矢視した図である。
【
図4】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の接着工程を示した断面図である。
【
図5】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の接着工程を示した図であり、(a)は第1電極板と第2電極板とを貼り合わせた状態を示す断面図であり、(b)は(a)の平面図である。
【
図6】(a),(b)は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の突出部形成工程を示した平面図である。
【
図7】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の貫通孔形成工程を示した断面図である。
【
図8】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の電解液注入工程を示した説明図である。
【
図9】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の電解液注入工程を示した図であり、(a)は厚さ方向の断面図、(b)は(a)の平面図である。
【
図10】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の封止工程を示した図であり、(a)は厚さ方向の断面図、(b)は(a)の平面図である。
【
図11】は、本発明の第1の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の突出部を切断する工程を示した図であり、(a)は厚さ方向の断面図、(b)は(a)の平面図である。
【
図12】(a),(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例として示した電気モジュールの製造方法の工程の一部を示した説明図である。
【
図13】(a),(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例として示した電気モジュールの製造方法の工程の一部を示した説明図である。
【
図14】(a),(b)は、本発明の第2の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の工程の一部を示した図であり、(a)は(b)をX3−X3線で矢視した図であり、(b)は第1電極板と第2電極板とを対向配置した状態を示す断面図である。
【
図15】は、本発明の第2の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の接着工程を示した断面図である。
【
図16】は、本発明の第2の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の突出部形成工程を示した平面図である。
【
図17】は、本発明の第2の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の電解液注入工程を示した説明図である。
【
図18】は、本発明の第2の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の電解液注入工程を示した説明図である。
【
図19】は、本発明の第2の実施形態として示した電気モジュールの製造方法の突出部切断工程を示した説明図である。
【
図20】は、本発明の第2の実施形態の変形例として示した電気モジュールの製造方法の工程の一部を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の電気モジュール製造用部材
の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の電気モジュールの一例として示された色素増感太陽電池1Aを実際の寸法及び比率に関係なく模式的に示したもの(以下全ての図において同様)である。
同図に示すように、色素増感太陽電池1Aは、一の基板2上に透明導電膜3と半導体層4とを備えた第1電極板5と、他の基板6上に対向電極膜7と触媒層8とを備えた第2電極板9との間に、セパレータ10を介装し、第1電極板5及び第2電極板9の外縁部に沿って封止材11,11を配するとともに、内部に電解液12を充填して液密に封止したものである。
【0010】
一の基板2及び他の基板6は、透明導電膜3及び対向電極膜7の基台となる部材であり、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明の合成樹脂材料を略矩形に打ち抜いて形成されたものである。
【0011】
透明導電膜3は、いわゆる第1電極となるものである。透明導電膜3の材料としては、酸化スズ(ITO)、酸化亜鉛等が用いられ、一の基板2の板面2a全体に成膜されている。
【0012】
半導体層4は、後述する増感色素から電子を受け取り輸送する機能を有するものであり、金属酸化物からなる半導体により透明導電膜3の表面3aに設けられている。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、等が用いられる。
【0013】
半導体層4は、増感色素を担持している。増感色素は、有機色素または金属錯体色素で構成されている。有機色素としては、例えば、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系、等の各種有機色素を用いることができる。金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム錯体等が好適に用いられる。
以上の構成の下に、第1電極板5は、一の基板2の一方の板面2aの全体に透明導電膜3を成膜し、透明導電膜3の表面3aに形成された半導体層4を備えて形成されている。
【0014】
対向電極膜7は、いわゆる第2電極となるものであり、他の基板6の板面6a全体に成膜されている。
この対向電極膜7には、例えば、酸化スズ(ITO)、酸化亜鉛等、透明導電膜3と同材料が用いられている。
【0015】
触媒層8は、透明導電膜3と対向電極膜7との間の電子の授受を促進させるものであり、プラチナ、ポリアニリン、PEDOT、カーボン等が用いられる。
この構成の下に、第2電極板9は、他の基板6の一方の板面6aの全体に対向電極膜7を成膜し、対向電極膜7の表面7aに設けられた触媒層8を備えて形成されている。
【0016】
セパレータ10は、電解液12及び封止材11を通過させる多数の孔(不図示)を有した不織布等のシート材により形成されたものであり、第1電極板5と第2電極板9との間に介装され封止材11,11により挟持されている。
【0017】
封止材11は、半導体層4を囲繞するように第1電極板5と第2電極板9の外縁部に沿って配され、第1電極板5と第2電極板9との間に隙間を形成した状態でこれらを接着するとともに、これら第1電極板5と第2電極板9との間に電解液12を保持して封止している。封止材11の材料には、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂等が用いられる。
【0018】
電解液12としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等の非水系溶剤;ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム又はヨウ化ブチルメチルイミダゾリウム等のイオン液体などの液体成分に、ヨウ化リチウム等の支持電解液とヨウ素とが混合された溶液等が用いられている。また、電解液12は、逆電子移動反応を防止するため、t−ブチルピリジンを含むものでもよい。
【0019】
次に、色素増感太陽電池1Aの製造方法について
図2〜
図13を用いて説明する。
第1の実施形態の色素増感太陽電池1Aの製造方法は、以下の工程を有するものである。すなわち、
(I)
図2(a),(b)に示すように、一の基板2の一方の板面2aに透明導電膜3を成膜するとともに半導体層4を形成して第1電極板5を形成する工程と、他の基板6の一方の板面6aに対向電極膜7を成膜するとともに触媒層8を形成して第2電極板9を形成する工程<電極板形成工程>
(II)
図3(a),(b)に示すように、透明導電膜3の表面3a(第1電極板5の一方の板面)及び触媒層8の表面8a(第2電極板9の一方の板面)の双方に、第1電極板5と第2電極板9とを対向させた際に半導体層4を囲繞するように封止材11を設ける工程<封止材配置工程>
(III)
図4及び
図5(a),(b)に示すように、第1電極板5と第2電極板9と間にセパレータ10を介装させて封止材11によって第1電極板5と第2電極板9とを接着し、封止材11に囲まれた空間で構成される電解液保持部17を形成する工程<接着工程>
(IV)
図6(a)、(b)に示すように、第1電極板5の外縁部及びこれに対向する第2電極板9の外縁部の所定箇所を切り欠いて、外方に向って突出した突出部20を形成する工程<突出部形成工程>
(V)
図7に示すように、突出部20に、電解液保持部17に連通する貫通孔18を形成する工程<貫通孔形成工程>
(VI)
図8及び
図9(a)、(b)に示すように、突出部20を電解液12に浸漬し、貫通孔18を介して電解液保持部17に電解液12を充填する工程<電解液注入工程>
(VII)
図10に示すように、貫通孔18を閉口して電解液保持部17を封止する工程<封止工程>
(VIII)
図11(a)、(b)に示すように、電解液保持部17が封止された後に、突出部20を切断する工程<切断工程>
【0020】
(I)<電極板形成工程>
基板形成工程においては、
図2(a)に示すように、一の基板2の一方の板面2aに半導体層4が透明導電膜3の表面3aに形成された第1電極板5と、他の基板6の一方の板面6aに対向電極膜7及び触媒層8が形成された第2電極板9とを形成する。具体的には、第1電極板5は以下のようにして形成される。
【0021】
図2(a)に示すように、一の基板2として、PETフィルム等を用い、該PETフィルム等の板面2aに酸化インジウムスズ(ITO)等をスパッタリングし透明導電膜3を形成する。
半導体層4は、例えば焼成が可能な酸化チタン含有ペーストをマスクや印刷法等により透明導電膜3の表面3aに塗布し、多孔質となるよう焼結することにより形成する。
【0022】
図2(b)に示すように、酸化チタン含有ペーストを塗布する際には、透明導電膜3の端部3e,3f,3g,3hを、電流の取り出し又は封止材11を配する外周部G1とするとともに、端部3eを後述する突出部20を形成する領域G2(外縁部)とし、これらの外周部G1及び領域G2以外の表面3aに酸化チタン含有ペーストを塗布する。なお、半導体層4は低温焼成法やエアロゾルデポジション法によって作成されたものでもよい。
【0023】
半導体層4を形成した後、増感色素を溶剤に溶かした増感色素溶液に半導体層4を浸漬させ、該半導体層4に増感色素を担持させる。なお、半導体層4に増感色素を担持させる方法は、上記に限定されず、増感色素溶液中に半導体層4を移動させながら連続的に投入・浸漬・引き上げを行う方法なども採用される。
【0024】
第2電極板9は、
図2(a)に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等よりなる他の基板6の一方の板面6aにITO又は酸化亜鉛等をスパッタリングして対向電極膜7として成膜し、更に対向電極膜7の表面7aにプラチナ等を触媒層8として設けて形成される。対向電極膜7は、印刷法やスプレー法等にて形成されたものであってもよい。
【0025】
(II)<封止材配置工程>
図3(a),(b)に示すように、封止材配置工程においては、透明導電膜3の表面3aのうち、電流を取り出す領域、すなわち半導体層4の周辺部を除いた外周部G1と領域G2に封止材11を塗布して半導体層4を囲繞する。また、透明導電膜3上の封止材11の塗布位置に対向する触媒層8の表面8aにも封止材11を塗布する。
【0026】
この際、後述する貫通孔形成工程の一環として、封止材11を塗布する前に離型性樹脂シート19を配置する。封止材11は、離型性樹脂シート19の表面にも塗布する。
離型性樹脂シート19は、ポリエステル,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等の樹脂シートを短冊状に切断して形成し、領域G2上に塗布された封止材11又は領域G2に対向する触媒層8の表面に帯状に配された封止材11に、この封止材11の端縁から突出するように配置する。
【0027】
(III)<接着工程>
接着工程は、
図4及び
図5(a)に示すように、封止材配置工程の後に、第1電極板5と第2電極板9と間にセパレータ10を介装させた状態で透明導電膜3と触媒層8とを対向させて貼り合わせ、外周部G1及び領域G2に塗布された封止材11を熱硬化等させて第1電極板5と第2電極板9とを接着する。この際、離型性樹脂シート19は、耐熱温度が封止材11の硬化温度よりも高く、かつ、非接着性に優れているので、封止材11への加熱や光照射等では離型性樹脂シート19上の封止材11とも第2電極板9とも接着しない。したがって、
図5(b)に示すように、離型性樹脂シート19が配された両側方は封止材11により接着される一方、
図5(a)に示すように、離型性樹脂シート19の両板面においては、第1電極板5とも第2電極板9とも接着されていない状態で、第1電極板5と第2電極板9と封止材11とに囲まれた電解液保持部17が形成される。
【0028】
(IV)<突出部形成工程>
突出部形成工程は、
図6(a)、(b)に示すように、接着工程の後に離型性樹脂シート19の長手方向に延びる両側縁19a、19bから間隔をおいた位置で、一体化された第1電極板5の外縁部15a,15bと第2電極板9の外縁部16a,16bとを両側縁19a、19bに沿って切り欠き、幅方向中央部に離型性樹脂シート19を保持した状態で外方に向って略矩形に突出した突出部20を形成する。
【0029】
(V)<貫通孔形成工程>
貫通孔形成工程は、
図7に示すように、突出部形成工程の後に突出部20の先端から離型性樹脂シート19を引き抜き、電解液保持部17と連通する貫通孔18を形成する。この貫通孔18が電解液保持部17に電解液12を吸い込む孔となる。
【0030】
(VI),(VII)<電解液注入工程>及び<封止工程>
電解液注入工程は、
図8に示すように、貫通孔形成工程の後に電解液12を貯留させた容器Cに突出部20の先端部を浸漬し、貫通孔18から毛細管現象を生じさせる。そして、
図9(a)、(b)に示すように、電解液保持部17に電解液12を充填する。
封止工程では、
図10(a)、(b)に示すように、電解液注入工程の後に貫通孔18を接着剤等で閉口して接着し電解液保持部17を封止する。
なお、封止材配置工程において、離型性樹脂シート19が配される位置及びその周辺にホットメルト等の熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂等、熱硬化をする接着剤以外の接着剤を塗布しておいた場合には、離型性樹脂シート19を引き抜いて貫通孔18を形成し、電解液注入工程を経た後で、貫通孔18部分を加熱,紫外線照射等をして押圧することにより、電解液の注入後突出部20よりも電解液保持部17寄りの封止材11が塗布された位置Pで簡便に封止することができる。
【0031】
(VIII)<切断工程>
封止工程の後は、
図11に示すように、電解液12が表面に付着した先端部を含む突出部20を根元から裁断してこの突出部20を廃棄し、色素増感太陽電池1Aを得る。
【0032】
以上のように、第1の実施形態の色素増感太陽電池1Aの製造方法によれば、突出部形成工程及び貫通孔形成工程によって、貫通孔18を有し端部3eにおいて外方に突出する突出部20が形成され、この突出部20のみを電解液12に浸漬して電解液12を電解液保持部17に充填することができる。したがって、第1電極板5及び第2電極板9の表面に付着する電解液12の量を最小限に抑えることができ、材料コストの無駄を削減して製造コストが嵩むのを抑制することができるという効果が得られる。
【0033】
また、封止工程において電解液保持部17を封止した後は、突出部20を根元から裁断して表面に付着した電解液12と共に廃棄してしまえばよいため、電解液保持部17の封止後に色素増感太陽電池1Aを洗浄する手間を省いて、最終処理を簡便に行うことができるという効果が得られる。また、色素増感太陽電池1Aを洗浄するためのコストを省き、色素増感太陽電池1Aの製造コストを抑制することができるという効果が得られる。
【0034】
上記第1の実施形態において、突出部20は外方に向って略矩形に突出するように、一体化された第1電極板5の外縁部15a,15bと不図示の第2電極板9の外縁部16a,16bとが切り欠かれているが、突出部20の外形は、矩形形状に限定されるものではなく、例えば、
図12(a),(b)に示すように、先端に向かって漸次窄むように形成される等、突出部20の表面積が可及的に小さくなるように形成されていることが望ましい。
このように突出部20の表面積が小さくなるように突出部20が形成された場合、電解液12を充填する際に突出部20の表面に付着する電解液12の量を可及的に削減することができ、色素増感太陽電池1Aの製造に必要な材料コストを抑えることができる。
【0035】
また、第1の実施形態において、突出部20は端部3eの長手方向中央部に形成されているが、突出部20の形成位置はこの位置に限定されるものではなく、例えば、
図13に示すように、互いに接着された矩形の第1電極板5及び第2電極板9の角部Kに形成されたものであってもよい。
突出部20を角部Kに形成する場合には、角部Kが既に先端に向かって漸次窄む形状となっているため、この形状を利用して角部Kの先端から所定の位置で離型性樹脂シート19の側縁に沿う辺を有するように端部3e,3fを切り欠くだけで突出部20を形成することができる。
【0036】
このように、突出部20を角部Kにおいて形成することにより、上述した場合と同様に色素増感太陽電池1Aの電解液12の使用量を削減することができるとともに、切り欠かれる第1電極板5の外縁部、第2電極板9の外縁部、セパレータ10及び封止材11の分量を抑えることができ、色素増感太陽電池1Aの製造に要する材料コストを一層抑えることができるという効果が得られる。
【0037】
なお、上記の実施形態において、突出部20は、第1電極板5と第2電極板9との接着工程の後に形成したが、接着工程の後であることは必須ではなく、第1電極板5の突出部と第2電極板9の突出部とが対向して適切に接着される限り、電解液注入工程の前であればどの工程において形成してもよい。
また、封止材11は、第1電極板5の透明導電膜3の表面3a及び第2電極板9の触媒層8の表面8aの双方に塗布したが、透明導電膜3の表面3a又は触媒層8の表面8aのいずれか一方に塗布してもよい。
また、離型性樹脂シート19は、封止材11の塗布前に第2電極板9側に配置したが、第1電極板5側に配置してもよく、また、封止材11の塗布後、接着工程前に配置してもよい。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態について
図14から
図20を用いて説明する。
図19に示す第2の実施形態の色素増感太陽電池1Bの製造方法は、(i)一の基板の一方の板面に透明導電膜を成膜するとともに複数の半導体層を間隔をおいて形成し第1電極板を形成する工程と、他の基板の一方の板面に対向電極膜を成膜して第2電極板を形成する工程と、(ii)前記第1電極板の前記一方の板面及び前記第2電極板の前記一方の板面の少なくともいずれか一方に、前記第1電極板と前記第2電極板とを対向させた際に前記各半導体層を囲繞するように封止材を設ける工程と、(iii)前記第1電極板と前記第2電極板との間にセパレータを介装させ、前記封止材によって前記第1電極板と前記第2電極板とを接着し、前記封止材に囲まれた空間で構成される電解液保持部を複数形成する工程と、(iv)前記第1電極板の外縁部及び前記第2電極板の外縁部の所定箇所を切り欠いて、外方に向って突出した突出部を複数形成する工程と、(v)前記複数の突出部に、前記電解液保持部に連通する貫通孔を形成する工程と、(vi)前記複数の突出部を電解液に浸漬し、前記貫通孔を介して前記複数の電解液保持部に前記電解液を充填する工程と、(vii)前記複数の貫通孔を閉口して前記複数の電解液保持部を封止する工程とを備えている。
本実施形態において第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0039】
本実施形態においては、
図19に示すように、第1の実施形態の製造方法で得た一の色素増感太陽電池1Aが複数連設して形成された色素増感太陽電池1Bを製造するものである点で第1の実施形態の製造方法と異なる。
【0040】
以下、各工程において、第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点を詳細に説明する。
(i)電極板形成工程においては、
図14(a),(b)に示すように、透明導電膜3を成膜した一の基板2の端部3eに突出部20を形成する領域G2を帯状に設け、領域G2に掛からないように半導体層4を例えば等間隔に複数形成する。
(ii)封止材形成工程においては、半導体層4が形成された領域以外の透明導電膜3の表面3aにおいて、電流を取り出す領域、すなわち半導体層4の周辺部を残して、封止材11を塗布して半導体層4を1つずつ囲繞するとともに、透明導電膜3の表面3aの封止材11に対向する位置の触媒層8の表面8aに封止材11を塗布する。この工程においては、封止材11の塗布前に、離型性樹脂シート19を、封止材11により囲繞された各領域と端部3eの外縁とに跨るように、かつ、それぞれが等間隔で平行になるよう配置する。
【0041】
(iii)接着工程においては、
図15に示すように、第1電極板5と第2電極板9とを対向させて封止材11によって接着することにより、封止材11に囲まれた空間により構成される複数の電解液保持部17,17・・を形成する。
(iv)突出部形成工程においては、
図16に示すように、離型性樹脂シート19の両側縁19a、19bに沿って端部3eのうち外縁部25,25・・を切り欠き、等間隔に平行に突出した突出部20,20・・を形成する。
(v)貫通孔形成工程においては、各突出部20から離型性樹脂シート19,19・・を引き抜き各電解液保持部17に連通する貫通孔18(
図17参照)を形成する。
【0042】
(vi)電解液充填工程においては、
図17に示すように、突出部20,20・・を、その先端を下方に向けて電解液12が貯留された容器Cに同時に浸漬し、毛細管現象によって、
図18に示すように、電解液12を各電解液保持部17に充填する。
(vii)封止工程においては、
図19に示すように、各電解液保持部17を電解液保持部17の近傍P,P・・で第1の実施形態において示した封止方法と同様の方法で封止する。その後、電解液12が付着した突出部20を切断して廃棄し、色素増感太陽電池1Bを得る。
【0043】
以上のように、第2の実施形態の製造方法によれば、第1の実施形態の製造方法と同様の効果が得られるとともに、同方向に向けて形成された突出部20,20・・を1つずつ備えた複数の電解液保持部17,17・・を等間隔に形成しているため、各電解液保持部17への電解液12の充填を同時に効率良くかつ簡便に行うことができる。したがって、複数の色素増感太陽電池1Aを連設させた色素増感太陽電池1Bを効率的に製造することができるという効果が得られる。
【0044】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、突出部20,20・・を先端に向かうにしたがって漸次窄ませた形状とすることができる。
また、
図20に示すように、離型性樹脂シート19を互いに隣り合う2つの電解液保持部17,17に跨るように矩形に形成された電解液保持部17,17の角部Kに配置するとともに、各離型性樹脂シート19に沿って突出部20を形成してもよい。
【0045】
このようにすることで、電解液12に浸漬する突出部20の数量を削減し、突出部20の先端部に付着する電解液12の量を一層削減して効率的かつ安価に色素増感太陽電池1Bを製造することができるという効果を奏する。