特許第6166788号(P6166788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6166788-自動二輪車 図000002
  • 特許6166788-自動二輪車 図000003
  • 特許6166788-自動二輪車 図000004
  • 特許6166788-自動二輪車 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166788
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   B62J17/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-547289(P2015-547289)
(86)(22)【出願日】2013年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2013006733
(87)【国際公開番号】WO2015071937
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 真司
(72)【発明者】
【氏名】植本 匠
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−281949(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/038055(WO,A1)
【文献】 特開2008−189178(JP,A)
【文献】 特開昭50−152448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 17/00,17/02,23/00,29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプと、
後方に向かうにつれて高くなるように傾斜する傾斜面を有し、フロントフェンダーの上方において車体を覆うフロントカウルと、
前記フロントカウルに取り付けられたウィンドシールドと、を備え、
前記車体の左右方向における前記傾斜面の両端は、前記フロントフェンダーよりも外側に配置され、
前記傾斜面は、前記ヘッドランプの上側に設けられ、前記ヘッドランプよりも左右方向の外側の領域を含み、前記フロントカウルと前記ウィンドシールドとの境界線より左右方向の外側に形成されており、
前記フロントカウルは、前記傾斜面から上方に突出して前後方向に延びて形成され、前記ウィンドシールドを支持するシールド支持部を有しており、
前記傾斜面には、前後方向に延びた段差部であって後方にいくにつれて前記左右方向の内側から外側に向かって延びた段差部が形成されており、
前記傾斜面は、前記シールド支持部と前記段差部との間に挟まれた第1傾斜部を有する自動二輪車
【請求項2】
前記段差部は、前端から後端にわたって一対のフロントフォークよりも前記車体の左右方向の外側に配置されている、請求項に記載の自動二輪車
【請求項3】
前記段差部は、前後方向に延びる突条によって構成されており、
複数の前記段差部が前記車体の左右方向に間隔を隔てて配置されている、請求項またはに記載の自動二輪車
【請求項4】
前記傾斜面のうち前記ウィンドシールドの前側に位置する部分の左右方向寸法は、前記ウィンドシールドの左右方向寸法よりも大きい、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の自動二輪車
【請求項5】
前記フロントカウルは、フロントフォークの上端前方において車体を覆うように配置されており、
前記車体の左右方向における前記傾斜面の両端は、前記フロントフォークよりも外側に配置されている、請求項1ないしのいずれか一項に記載の自動二輪車
【請求項6】
ラジエータコアを有する冷却装置を備え、
前記車体の左右方向における前記傾斜面の両端は、前記ラジエータコアよりも外側に配置されている、請求項1ないしのいずれか一項に記載の自動二輪車
【請求項7】
前記フロントカウルには、左右一対のサイドミラーの基部が取り付けられており、
前記車体の左右方向における前記傾斜面の両端は、前記左右一対のサイドミラーの各基部よりも外側に配置されており、
前記サイドミラーの前記基部は、前記第1傾斜部に取り付けられている、請求項1ないしのいずれか一項に記載の自動二輪車
【請求項8】
前記段差部は、前記ヘッドランプよりも左右方向の外側に配置されている、請求項ないしのいずれか一項に記載の自動二輪車
【請求項9】
前記段差部は、前記ヘッドランプよりも左側に配置された一対の段差部と、前記ヘッドランプよりも右側に配置された一対の段差部とを含む、請求項に記載の自動二輪車
【請求項10】
左右一対のグリップが設けられたステアリングハンドルを備え、
前記傾斜面は、正面視において前記グリップの上方に配置されている、請求項1ないしのいずれか一項に記載の自動二輪車
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントカウルを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された自動二輪車では、フロントフォークの上端の前方から側方にかけて車体を覆うようにフロントカウルが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−132481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自動二輪車に対して、さらなる高速走行安定性が望まれる場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高速走行安定性を向上させることができる、鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る鞍乗型車両は、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜する傾斜面を有し、フロントフェンダーの上方において車体を覆うフロントカウルを備え、前記車体の左右方向における前記傾斜面の両端は、前記フロントフェンダーよりも外側に配置されている。
【0007】
この構成では、車幅方向に関して傾斜面の面積を広くすることができるので、走行風が傾斜面に当たることによって発生する下向きの力(以下、「ダウンフォース」という。)を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フロントカウルに作用するダウンフォースを大きくすることができるので、高速走行安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る鞍乗型車両の構成を示す平面図である。
図2】実施形態に係る鞍乗型車両の構成を示す正面図である。
図3】フロントカウルの左半分の構成を示す正面図である。
図4】変形例に係る傾斜面および段差部の構成を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る鞍乗型車両の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明で用いる各方向は、車体を基準としており、車体を基準とした各方向は、鞍乗型車両に乗った運転者から見た方向と一致する。
【0011】
まず、本実施形態の鞍乗型車両10において、車体にダウンフォースを作用させることが必要な事情を説明する。鞍乗型車両10では、サイドカウル16a,16bは、前端部から後端部に進むにつれて車幅方向外側に進んで傾斜することで、運転者の脚部に向かう走行風を逸らす。サイドカウル16a,16bの後端部は、ラジエータコア22aの近傍に位置する。ラジエータコア22aを通過した走行風は、サイドカウル16a,16bに干渉することなく、車幅方向後方かつ下方に逸れて流れる。サイドカウル16a,16bは、ラジエータコア22aへ走行風を導く導風機能を有する。各サイドカウル16a,16bの車幅方向内側面は、ラジエータコア22aよりも前方に延びて配置される。左のサイドカウル16aと右のサイドカウル16bとの間の空間の上方は、ヘッドランプ55およびフロントカウル14等によって塞がれる。また、左右一対のサイドカウル16a,16b間は、走行風導入可能に開口が形成され、サイドカウル16a,16b間であって、サイドカウル16a,16bの前端部よりも後方にラジエータコア22aが配置される。これによって、サイドカウル16a,16b間で且つサイドカウル16a,16bの前端より後方に導かれた走行風は、車幅方向外側に逸れることが防がれて、ラジエータコア22aに導かれる。
【0012】
高速走行によってサイドカウル16a,16b間空間に導かれる走行風が多量になると、サイドカウル16a,16b間に導かれた走行風によって前輪26を上方に持上げる方向の力が車両10に生じて、前輪26の接地荷重が低下しやすい。本実施形態では、ラジエータコア22aの前面およびエンジン20のシリンダ前面が下方に進むにつれて後方に傾斜するので、前輪26を上方に持ち上げる方向の力が働きやすい。本実施形態では、後述するフロントカウル14が採用されることによって、フロントカウル14の上方に臨む面に衝突する走行風によって、ダウンフォースを発生させて、フロントカウル14を下方に押し付ける力を発生させる。これによって、高速走行時において、前輪26の接地荷重の低下を抑えて、駆動力及び制動力を前輪26から路面に伝えやすくできる。またサイドカウル16a,16b間の空間に導かれる走行風にかかわらず、ダウンフォースを発生させて、前輪26の接地荷重を高めることで、前輪26から路面に与える駆動力および制動力を高めることができ、走行性能を向上させることができる。
【0013】
以下、鞍乗型車両10の構成等を具体的に説明する。図1は、実施形態に係る鞍乗型車両10の構成を示す平面図である。図2は、鞍乗型車両10の構成を示す正面図である。図3は、フロントカウル14の左半分の構成を示す正面図である。本実施形態の鞍乗型車両10は、自動二輪車であり、走行時には、前方から走行風を受ける。図1に示すように、鞍乗型車両10は、車体12と、車体12の前部を上方から覆うフロントカウル14と、車体12を側方から覆う左右一対のサイドカウル16a,16bとを備えている。
【0014】
図1に示すように、車体12は、車体フレーム18と、車体フレーム18に搭載されたエンジン20と、エンジン20を冷却する冷却装置22とを有している。冷却装置22は、エンジン20から熱を奪った冷却液と走行風との間で熱交換を行うためのラジエータコア22aを有している。ラジエータコア22aは、走行風を受ける面が前方を向くようにして、エンジン20の前方に配置されている。
【0015】
また、図2に示すように、車体12は、車体フレーム18(図1)の前部に設けられた左右一対のフロントフォーク24a,24bと、フロントフォーク24a,24bに支持された前輪26と、車体フレーム18(図1)の後部に設けられたスイングアーム(図示省略)と、スイングアームで支持された後輪28と、フロントフェンダー30とを有している。フロントフェンダー30は、左右一対のフロントフォーク24a,24bの間に、前輪26を上方から覆うように配置されている。フロントフェンダー30には、左右一対の支持部32a,32bが設けられており、これらの支持部32a,32bがフロントフォーク24a,24bのそれぞれに取付けられている。
【0016】
さらに、図1に示すように、車体12は、ステアリングハンドル34と、ステアリングハンドル34の後方に設けられた燃料タンク36と、燃料タンク36の後方に設けられたシート38とを有している。ステアリングハンドル34には、左右一対のグリップ40a,40bが設けられている。運転者は、シート38に跨ってグリップ40a,40bを握り、ステアリングハンドル34を操作する。
【0017】
図2に示すように、フロントカウル14は、フロントフェンダー30の上方、かつ、フロントフォーク24a,24bの上端前方において車体12を覆うように配置されている。フロントカウル14は、ウィンドシールド42を支持する左右一対のシールド支持部44a,44bと、左右方向におけるシールド支持部44a,44bの外方に形成された左右一対の第1傾斜部46a,46bと、左右方向における第1傾斜部46a,46bの外方に形成された左右一対の第2傾斜部48a,48bと、左右一対の第1傾斜部46a,46bの間であって、ウィンドシールド42の前方に形成された第3傾斜部50とを有している。そして、左側の第1傾斜部46aに対して左側のサイドミラー52aが取付けられており、右側の第1傾斜部46bに対して右側のサイドミラー52bが取付けられている。フロントカウル14の前端部14bには、少なくとも1つ(例えば、左右一対)の開口部54a,54bが前方に向けて開くように形成されている。
【0018】
図2に示すように、フロントカウル14のうち、第1傾斜部46a,46b、第2傾斜部48a,48bおよび第3傾斜部50のそれぞれは、前後方向に沿って後方に向かうにつれて高くなるように傾斜する傾斜面70を構成する部分である。傾斜面70は、水平面に対してウィンドシールド42の傾斜角よりも小さい傾斜角に形成される。傾斜面70は、それに沿って流れる走行風が車幅方向外側に案内されることを抑えるために、車幅方向に関して平坦に形成されることが好ましい。具体的には、傾斜面70は、車幅方向内側から車幅方向外側に向かうにつれて前後方向に傾斜する傾斜量が小さく形成されることが好ましい。例えば、傾斜面70は、後方に向かうにつれて上方に傾斜する単位距離当たりの傾斜量(角度)が、車幅方向外側に向かうにつれて下方に傾斜する単位距離あたりの傾斜量(角度)よりも大きく形成される。これにより、傾斜面70を沿って流れる走行風が車幅方向外方に逸れることを抑えることができる。
【0019】
左右一対のシールド支持部44a,44bは、傾斜面70から上方に突出して、略前後方向に延びて形成されている。シールド支持部44a,44bの左右方向外側面によって、走行風が車幅方向内側に逸れることを防いで走行風を後方に導くことができる。ウィンドシールド42とフロントカウル14との境界線Gは、平面視で後方に向けて開かれたV字状またはU字状に形成されている。ウィンドシールド42の前端縁が第3傾斜部50の後端縁に接続されており、ウィンドシールド42の左右両側縁が左右一対のシールド支持部44a,44bに接続されている。ウィンドシールド42の前後方向に垂直な断面は、左右方向中央部が左右方向両端部に対して上方に突出するように湾曲した形状、或いは、左右方向中央部から左右方向両端部に向かうにつれて低くなる形状に形成されている。傾斜面70は、ウィンドシールド42の車幅方向両側にも形成されることで、傾斜面70の上下方向寸法を大きくしてその面積を増やすことができ、発生するダウンフォースを増加させることができる。
【0020】
図1および図2に示すように、フロントカウル14の右半分は、左半分と左右対称に形成されている。以下には、フロントカウル14の構成を、その左半分に着目して詳細に説明する。図3に示すように、フロントカウル14の第1傾斜部46aの上面には、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜した平滑な第1傾斜面47が形成されている。第2傾斜部48aの上面には、左右方向の外方に向かうにつれて低くなるとともに、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜した平滑な第2傾斜面49が形成されている。第3傾斜部50の上面には、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜した平滑な第3傾斜面51が形成されている。つまり、フロントカウル14の左半分の傾斜面70aは、第1傾斜面47と、第2傾斜面49と、第3傾斜面51の左半分とによって構成されている。なお、本実施形態では、正面視において、ヘッドランプ55の左右両側に第2傾斜面49が配置されている。第2傾斜面49の前縁部は、車幅方向内側から外側に進むにつれて水平面に対する後傾角度が小さくなるので、走行抵抗を低減することができる。
【0021】
図3に示すように、第1傾斜面47と第2傾斜面49との境界には、略前後方向に延びる第1突条56が形成されている。また、第1傾斜面47と第3傾斜面51との境界には、略前後方向に延びる第2突条58が、前後方向においてシールド支持部44aと連続するように形成されている。第1突条56と第2突条58とは、左右方向に間隔を隔てて配置されている。第1突条56は、半円状の横断面を有する線状の突起であり、第1突条56によって、車体12(図2)の左右方向の内側から外側に向かって高くなり、かつ、前後方向に延びる内側の段差部56aと、左右方向の外側から内側に向かって高くなり、かつ、前後方向に延びる外側の段差部56bとが構成されている。第2突条58は、三角状の横断面を有する線状の突起であり、第2突条58によって、車体12(図2)の左右方向の内側から外側に向かって高くなり、かつ、前後方向に延びる内側の段差部58aと、左右方向の外側から内側に向かって高くなり、かつ、前後方向に延びる外側の段差部58bとが構成されている。これらの段差部56a,56b,58a,58bによって、走行風を後方に導くことができる。図2に示すように、第1突条56および第2突条58のうち左右方向の外側に位置する第1突条56は、前端から後端にわたって一対のフロントフォーク24a,24bよりも左右方向の外側に配置されている。これにより、傾斜面70を幅広にすることができ、走行風による下向きの力を高めることができる。突条56,58は、左右方向に間隔をあけて複数、より好ましくは、車幅方向中心に対して車幅方向両側に2組以上配置されることで、走行風が傾斜面70から左右方向両側に逸れることが抑制され、傾斜面70に沿って走行風を流すことができる。なお、フロントカウル14の車幅方向一側に形成される突条の数は1本または3本以上でもよいし、この突条は省略されてもよい。また、突条の横断面形状は、半円状または三角状に限定されるものではなく、四角状や逆L字状でもよい。
【0022】
図3に示すように、サイドミラー52aは、基部60aと、ミラーステー60bと、ミラーハウジング60cと、ミラーハウジング60cに収容されたミラー(図示省略)とを有している。第1傾斜部46aの上面におけるフロントカウル14の前端部14bよりも後方に位置する部分には、サイドミラー52aの基部60aを載置するための座部62が形成されている。図示していないが、この座部62には、孔が形成されており、基部60aは、この孔に挿通された取付具(ボルト等)によってフロントカウル14の裏側に配置された取付部に取付けられている。
【0023】
図3に示すように、フロントカウル14の前端部14bにおける第1傾斜部46aおよび第2傾斜部48aの下方には、開口部54aが形成されている。本実施形態では、左側の第1傾斜部46aの下方にラムダクト64が配置されており、このラムダクト64が左側の開口部54aに接続されている。開口部54aからラムダクト64に取り込まれた空気は、図示しないエアクリーナー等を通して、エンジン20(図1)に供給される。なお、ラムダクト64は、右側の開口部54b(図2)に接続されてもよく、右側の第1傾斜部46b(図2)の下方に配置されてもよい。
【0024】
図1および図2に示すように、フロントカウル14の右半分は、左半分に対して左右対称に形成されているので、フロントカウル14の上面14aには、左右一対の傾斜面70a(図3に片方だけを示す。)によって傾斜面70が構成されている。図1に示すように、傾斜面70は、前方に向かうにつれて左右方向寸法が小さくなり、後方に向かうにつれて左右方向寸法が大きくなるような先細形状(例えば、V字状またはU字状)に形成されている。この傾斜面70は、左右方向の両側において、フロントカウル14とウィンドシールド42との境界線Gよりも外側に形成されている。
【0025】
図示していないが、傾斜面70の前後方向に垂直な断面は、左右方向中央部から左右方向両端部に向かうにつれて低くなるように湾曲した形状、或いは、左右方向中央部から左右方向両端部に向かうにつれて低くなるように傾斜した直線状に形成されている。傾斜面70の断面を湾曲した形状に形成する場合、その傾斜面70の曲率は、ウィンドシールド42の曲率よりも小さく設定される。一方、傾斜面70の断面を傾斜した直線状に形成する場合、その傾斜面70の水平面に対する傾斜角度は、ウィンドシールド42の傾斜角度に比べて小さく設定される。
【0026】
図2及び3に示すように、傾斜面70の左右方向両外側縁72a,72b、すなわち左右一対の第2傾斜面49(図3に片方だけを示す。)のそれぞれの左右方向外側縁72a,72bは、開口部54a,54bのそれぞれの左右方向の外側部から後方に延びて形成されており、これらは、前端から後端にわたって、フロントフェンダー30および左右一対のフロントフォーク24a,24bのそれぞれよりも左右方向外側に配置されている。左右方向における傾斜面70の一方端74aおよび他方端74bは、一方側縁72aおよび他方側縁72bのそれぞれの後端に位置している。また、傾斜面70の左右方向両内側縁73a,73b、すなわち左右一対の第1傾斜面47(図3に片方だけを示す。)のそれぞれの左右方向内側縁73a,73bは、前端から後端にわたって、フロントフェンダー30よりも左右方向外側に配置されている。フロントカウル14には、傾斜面70の車幅方向外側で、略鉛直線に沿って前後方向に延びる車体側面53が形成される。本実施形態では、フロントカウル14のうち、傾斜面70と車体側面53とが所定の角度をもって接続されて、傾斜面70から屈曲して車体側面53が設けられることで、傾斜面と車体側面とが滑らかに接続される場合に比べ、傾斜面70の車幅方向寸法を大きくすることができる。
【0027】
図2に示すように、左右方向における傾斜面70の両端74a,74b間の間隔をW0とし、フロントフェンダー30の左右方向寸法をW1とし、左右一対のフロントフォーク24a,24bの左右方向寸法をW2とし、ラジエータコア22aの左右方向寸法をW3とすると、W0>W3>W2>W1の関係が成立する。また、ウィンドシールド42の左右方向寸法をW4とし、左右一対のサイドミラー52a,52bの最外部間の左右方向寸法をW5とし、左右一対のグリップ40a,40b間の左右方向寸法をW6とすると、W0>W6>W5>W4の関係が成立する。本実施形態では、ウィンドシールド42の左右方向寸法W4は、ラジエータコア22aの左右方向寸法W3よりも大きくなっている。したがって、W0>W6>W5>W4>W3>W2>W1の関係が成立する。つまり、本実施形態では、左右方向における傾斜面70の両端74a,74bが、フロントフェンダー30、フロントフォーク24a,24b、ラジエータコア22a、ウィンドシールド42、サイドミラー52a,52b、グリップ40a,40bの基端部のそれぞれよりも左右方向外側に配置されている。第2傾斜面49(図3参照)は、ラジエータコア22aよりも車幅方向外側に配置される。さらに、図1に示すように、傾斜面70のうちウィンドシールド42の前側に位置する部分の左右方向寸法をW7とすると、W7>W4の関係が成立する。
【0028】
図1に示す鞍乗型車両10の走行時には、フロントカウル14の傾斜面70に走行風が当たり、この走行風がフロントカウル14の上面14aを後方に流れる。図2に示すように、左右方向における傾斜面70の最大寸法は、傾斜面70の両端74a,74b間の間隔W0と一致しており、上記の左右方向寸法W1〜W6の少なくとも1つよりも大きい(本実施形態では、左右方向寸法W1〜W6のいずれよりも大きい)ので、傾斜面70の面積を広く確保することができる。これにより、傾斜面70において大きなダウンフォースを発生させることができ、高速走行安定性を向上させることができる。
【0029】
図2に示すように、段差部56a,56bを構成する第1突条56は、前端から後端にわたって一対のフロントフォーク24a,24bよりも左右方向の外側に配置されているので、傾斜面70の左右方向寸法を大きくすることができ、傾斜面70において大きなダウンフォースを発生させることができる。
【0030】
図1に示すように、傾斜面70は、左右方向の両側において、フロントカウル14とウィンドシールド42との境界線Gよりも外側に形成されている。また、傾斜面70のうちウィンドシールド42の前側に位置する部分の左右方向寸法W7は、ウィンドシールド42の左右方向寸法W4よりも大きく設定されている。したがって、ウィンドシールド42で走行風を防ぎながら、傾斜面70において大きなダウンフォースを発生させることができる。
【0031】
図1に示すように、傾斜面70は、前方に向かうにつれて左右方向寸法が小さくなり、後方に向かうにつれて左右方向寸法が大きくなるような先細形状に形成されているので、空気抵抗を抑えつつ、大きなダウンフォースを発生させることができる。
【0032】
図3に示すように、傾斜面70を構成する第1傾斜部46aの下方にラムダクト64が配置されているので、傾斜面70の下方の空間を有効利用できる。
【0033】
上述の実施形態では、左右方向の内側から外側に向かって高くなる段差部56a,58aを突条56,58で構成しているが、このような段差部は傾斜面70に高低差を設けることによって構成してもよい。例えば、図4に示すように、左右方向における傾斜面70の外側部分80を内側部分82よりも高く形成し、これらの部分の境界に、内側から外側に向かって高くなる段差部84を構成してもよい。フロントカウル14には、ミラーステー60a,60bが装着されていなくてもよい。フロントカウル14には、開口部54a,54bが形成されていなくてもよく、左右一方のみに開口部が形成されていてもよい。
【0034】
本発明に係る鞍乗型車両は、上述の実施形態で示した自動二輪車の他、鞍乗型の三輪車両や四輪車両等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 鞍乗型車両(自動二輪車)
12 車体
14 フロントカウル
30 フロントフェンダー
70 傾斜面
74a 一方端
74b 他方端
図1
図2
図3
図4