【文献】
CHEN Z.H. et al.,Identification and differentiation of Mycobacterium avium and M. intracellulare by PCR,J. Clin. Microbiol.,1996年 5月,Vol.34,No.5,pp.1267-1269
【文献】
SRITHARAN V. et al.,Specificity of diagnostic PCR amplification for M. avium using the probe pMAV22,Mol. Cell. Probes,1995年 2月,Vol.9,No.1,pp.71-74
【文献】
FROTHINGHAM R. et al.,Sequence-based differentiation of strains in the Mycobacterium avium complex,J. Bacteriol.,1993年 5月,Vol.175,No.10,pp.2818-2825
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に於いて、M.アビウム遺伝子とは、
Mycobacterium aviumの持つ全ゲノム配列における任意の塩基配列単位(領域)をいう。
【0028】
本発明に係るオリゴヌクレオチドとしては、配列表の、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列(但し、Aはアデニン、Cはシトシン、Gはグアニン、Tはチミンを表す。また、任意の位置のTはウラシル(U)と置換されていてもよい。以下同じ。)の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる(以下、本発明のオリゴヌクレオチドと略記する場合がある。)。
【0029】
本発明に係る、配列番号1で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは981塩基、配列番号2で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは326塩基、配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは503塩基、配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは587塩基、配列番号5で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは622塩基、の大きさである。
【0030】
また、配列番号37で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは1020塩基、配列番号38で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは959塩基、配列番号39で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは896塩基、配列番号40で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは744塩基、配列番号41で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは790塩基、配列番号42で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは569塩基、の大きさである。
【0031】
また、配列番号130で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは833塩基、配列番号131で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは955塩基、配列番号132で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは810塩基、配列番号133で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは872塩基、配列番号134で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは933塩基、配列番号135で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは630塩基及び配列番号136で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは1085塩基、の大きさである。
【0032】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドとしては、例えば、(1)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチド、又は(2)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは20塩基以上を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0034】
好ましくは、配列番号130〜136から選択される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号130〜136から選択される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0035】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの好ましい例としては、配列番号130〜136から選択される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0036】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するものが挙げられる。
【0037】
好ましくは、配列番号137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するものが挙げられる。
【0038】
また、配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15塩基以上を含有するオリゴヌクレオチド等が好ましい。
【0039】
配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0040】
その好ましい具体例としては、配列番号137〜205から選択される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号137〜205から選択される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0041】
配列番号1で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号6〜9及び配列番号24〜25から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0042】
配列番号2で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号10〜11及び配列番号26から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0043】
配列番号3で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号12〜13及び配列番号27から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0044】
配列番号4で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号14〜21及び配列番号28〜31から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0045】
配列番号5で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号22〜23及び配列番号32から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0046】
配列番号37で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号43〜54及び配列番号101〜106から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0047】
配列番号38で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、配列番号55〜66及び配列番号107〜112から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0048】
配列番号39で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号67〜74及び配列番号113〜116から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0049】
配列番号40で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号75〜82及び配列番号117〜120から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0050】
配列番号41で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号83〜92及び配列番号121〜125から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0051】
配列番号42で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号93〜100及び配列番号126〜129から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0052】
配列番号130で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号137〜144及び配列番号183〜186ら選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0053】
配列番号131表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号145〜148及び配列番号187〜188から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0054】
配列番号132で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号149〜158及び配列番号189〜193から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0055】
配列番号133で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号159〜164及び配列番号194〜196から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0056】
配列番号134で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号165〜170及び配列番号197〜199から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0057】
配列番号135で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号171〜174及び配列番号200〜201から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0058】
配列番号136で表される塩基配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号175〜182及び配列番号202〜205から選択される塩基配列を含有するものが挙げられる。
【0059】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドとしては、例えば本発明の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする塩基配列の、一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0060】
上記の、本発明の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする塩基配列の一部若しくは全部を有するオリゴヌクレオチドとは、具体的には、本発明の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、ハイストリンジェントな条件又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列の、一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0061】
尚、ここでいう「ハイストリンジェントな条件」とは、具体的には例えば「50%ホルムアミド中で42〜70℃で、好ましくは60〜70℃でハイブリダイゼーションを行い、その後0.2〜2×SSC、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中、25〜70℃で洗浄する。」という条件である。
【0062】
また、「ストリンジェントな条件」とは、具体的には例えば「6×SSC又はこれと同等の塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、50〜70℃の温度の条件下で16時間ハイブリダイゼーションを行い、6×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液等で必要に応じて予備洗浄を行った後、1×SSC又はこれと同等の塩濃度の溶液等で洗浄する。」という条件である。
【0063】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の、一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドとしては、例えば、
(1)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチド、又は
(2)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは20塩基以上を含有することを特徴とするオリゴヌクレオチド、
等が挙げられる。
【0064】
本発明に係る配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0065】
好ましくは、配列番号130〜136から選択される塩基配列に対する相補配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号130〜配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0066】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの好ましい例としては、配列番号130〜136から選択される塩基配列に対する、相補配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0067】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する、相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0068】
好ましくは、配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する、相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0069】
また、配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列中の、連続する10塩基以上、好ましくは15塩基以上を含有するオリゴヌクレオチドが好ましい。
【0070】
配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の全部を含有するオリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0071】
その好ましい具体例としては、配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列からなるオリゴヌクレオチド、又は配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0072】
本発明に係るM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとは、M.アビウム遺伝子の塩基配列とハイストリンジェントな条件又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するオリゴヌクレオチド等が挙げられる。そのハイストリンジェントな条件及びストリンジェントな条件は、上記したとおりである。
【0073】
尚、本発明のオリゴヌクレオチドはデオキシリボ核酸(DNA)でもリボ核酸(RNA)でもよい。リボ核酸の場合はチミジン残基(T)をウリジン残基(U)と読み替えることは言うまでもない。また合成に際して任意の位置のTをUに変えて合成を行なって得られた、ウリジン残基を含むDNAであってもよい。同様に任意の位置のUをTに変えたチミジン残基を含むRNAであってもよい。また、一つ若しくは複数のヌクレオチドが欠失、挿入或いは置換されたオリゴヌクレオチドであってもよい。一つ若しくは複数のヌクレオチドがイノシン(I)のような修飾ヌクレオチドであってもよい。
【0074】
本発明のオリゴヌクレオチドを得る方法としては、特に限定されないが、例えば自体公知の化学合成法により調製する方法が挙げられる。この方法では、ベクター等を用いる遺伝子操作法によりオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを得る方法(クローン化法)に比べ、容易、大量且つ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得ることが可能な方法である。
【0075】
例えば、DNAの合成に通常行われている、DNAシンセサイザーを用い、通常のホスホアミダイト法にてオリゴヌクレオチドを合成し、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いる常法により精製すれば、目的とする本発明のオリゴヌクレオチドを得ることができる。
【0076】
また、オリゴヌクレオチドの合成を業者に委託して、業者から購入してもよい。
【0077】
本発明の目的を達成し得るオリゴヌクレオチドを探索(スクリーニング)する手段としては、FEMS Microbiology Letters 166: 63-70, 1998 あるいはSystematic and Applied Microbiology 24: 109-112, 2001などに示されているサブトラクション法、すなわち標的であるゲノムDNA由来DNAフラグメント群から、区別したい生物種由来のゲノムDNA由来DNAフラグメント群と反応したものを除いて、候補配列を濃縮する方法がある。
【0078】
また、標的であるゲノムDNA及び区別したい生物種由来のゲノムDNAからの増幅産物のディファレンシャルディスプレイを作成するといったアプローチ、すなわち任意にプライムされたポリメラーゼ連鎖反応(AP−PCR)を利用する方法が考えられる(特願平11-155589号公報)。
【0079】
更に、いわゆるマイクロアレイ法と呼ばれる方法を利用することによっても、本発明の目的を達成しうるオリゴヌクレオチドを探索することができるし、本発明のオリゴヌクレオチドを得ることができる。その方法の概略は以下の通りである。
【0080】
すなわち、例えばM.アビウム由来ゲノムDNAのショットガン・クローンを作成し、得られたショットガン・クローンからDNAを精製する。次いで、そのショットガン・クローン由来の精製DNAを、PCR等により増幅させた後、スライドガラス上に配置させて、常法によりマイクロアレイを作成する。別に、標的であるM.アビウム由来のゲノムDNAを蛍光標識(標識1)したDNAフラグメント群を作成する。一方、区別したい生物種由来のゲノムDNAを蛍光標識(標識2)したDNAフラグメント群を別途に作成する。そして、標識1及び標識2の各々を同一反応系で用いる競合ハイブリダイゼーション法を行い、マイクロアレイ上の精製DNAと、標識1及び標識2との反応性(結合性)を検定する。この検定により、標的であるM.アビウムのゲノムDNA由来フラグメント群(標識1)と、より特異的に反応する配列候補群を選定できる(例えば非特許文献1等の記載参照)。
【0081】
以上の方法により、目的の、M.アビウム遺伝子の塩基配列と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを選別することができる。以下にマイクロアレイ法を用いた、本発明のオリゴヌクレオチドの選定方法の一例について詳説する。
【0082】
(1)M.アビウム由来精製ゲノムDNAの調製
まず、M.アビウム由来精製ゲノムDNAを得る。例えば市販のM.アビウム由来ゲノムDNAを入手してもよいし、常法によりM.アビウム菌株からDNAを抽出・精製してもよい。また、業者にM.アビウム菌株からゲノムDNAを抽出・精製を依頼し、それを入手してもよい。
【0083】
市販のM.アビウム由来精製ゲノムDNAとしては、例えば、M.アビウム由来のgenomic DNA(Mycos Research社(米国)製)等がある。
【0084】
市販のM.アビウムの精製DNAは、そのまま使用してもよいが、市販のキット等を用いて通常の核酸増幅反応を行い、得られた増幅産物を用いてもよい。
【0085】
M.アビウム菌株から精製ゲノムDNAを得るには、M.アビウム菌株を、常法(例えばオートクレーブ処理とガラスビーズ等を用いて菌体を粉砕処理する方法。)によって破砕処理した後、常法に従って、DNAの抽出、精製を行えばよい。
【0086】
(2)Whole Genome Shotgun Libraryの作製
M.アビウムのWhole Genome Shotgun Libraryの作製を行う方法の一例として、Venter et al., Science. 2001 Feb 16;291(5507):1304-1351 に記載のWhole Genome Shotgun法を改変した方法を、以下に説明する。
【0087】
まず、上記(1)で得られたM.アビウム由来精製ゲノムDNAを、適当な緩衝液等で希釈した後、例えば終濃度20%のグリセロール存在下で、5kPa〜9kPaの圧力下で、ネビュライザーを用いて約1〜15分間処理し、DNAの断片化処理を行う。この処理により、目的とする500〜1000bpのサイズの画分(DNA断片)を効率よく回収する事ができる。得られた画分を市販の抽出カラムを利用して精製する。
【0088】
その後、常法に従い、得られた画分(DNA断片。目的のDNA断片を含む。)を、ライゲーションによってベクターDNAに組み込み、組み換えDNA(M.アビウムのWhole Genome Shotgun Library)を得る。
【0089】
そのために用いられるベクターDNAとしては、後で形質転換する宿主細胞が大腸菌の場合には、例えば、pBS[例えばpBSII sk+ベクター(Stratagene社)]、pQE-TRIプラスミド (Qiagen社製)、pBluescript、pET、pGEM-3Z、pGEX等のベクターが挙げられる。用いるベクターの種類によっては、ライゲーションの前に、予めDNA断片を、DNAポリメラーゼで処理して、DNA断片の末端を平滑化処理してもよい。
【0090】
次いで、得られた組み換えDNAを用いて、適当な宿主細胞を形質転換して形質転換体を得る。
【0091】
そのために用いられる宿主細胞としては、例えば、大腸菌(
Escherichia.coli)が挙げられ、好ましくはJM109、DH5α、TOP10等が挙げられる。この他、よりプラスミドやファージDNAの導入効率の高い、Competent Cell(コンピテントセル)を用いても良い。例えば、
E.coli JM109 Competent Cells(タカラバイオ社製)等が挙げられる。
【0092】
宿主細胞の形質転換は、例えば、D.M.Morrisonの方法(Method in Enzymology, 68, 326-331,1979)等により行うことができる。また、市販のCompetent Cellを用いる場合には、その製品プロトコールに従って、形質転換を行えばよい。
【0093】
「目的のDNA断片を組み込んだ組換えDNA」が導入された形質転換体を選別する方法として、例えば、形質転換のために用いたベクターの性質を利用する方法がある。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を含有するベクターを用いた場合には、アンピシリンを含有する培地上で形質転換体を培養し、得られたクローンを選択することにより、目的のDNA断片を組み込んだ組換えDNAが導入された、形質転換体(M.アビウムのゲノムDNA由来のWhole Genome Shotgun clone Library)が容易に得られる。
【0094】
(3)マイクロアレイ作製
続いて、下記の方法でマイクロアレイを作製する。
【0095】
すなわち、上記(2)で得られた形質転換体のLibrary(M.アビウムのゲノムDNA由来のWhole Genome Shotgun clone Library)から常法に従いDNAを精製する。精製したDNAを鋳型として用い、適当なプライマー[市販のプライマーで良い。例えばM13 Primer M1(タカラバイオ社製)及びプライマーM13 Primer RV(タカラバイオ社製)等]を用い、常法に従ってPCRを行った後、得られたPCR増幅産物を精製する。次いで常法に従って、精製したPCR増幅産物をマイクロアレイ用スライドガラス上にスポットする。これにUV照射(60mJ〜300mJ/cm
2)を行ない、スライドガラス上にPCR増幅産物(ターゲットのM.アビウム由来ゲノムDNAを含む)を固定して、マイクロアレイを作成する。
【0096】
尚、得られたマイクロアレイ上の、M.アビウム遺伝子の塩基配列と特異的にハイブリダイズするDNAフラグメントが含まれるスポットを選択するために、必要に応じコントロールサンプルを上記のマイクロアレイ上に並列させて固定化してもよい。
【0097】
例えば区別したい生物種由来のゲノムDNAフラグメント[例えばrpsl(特許文献1)等のM.イントラセルラーのもつ配列のDNAフラグメント、KATS2 sequence(特開平11-155589号公報)等の
M.kansasiiに特異的な塩基配列のDNAフラグメント、例えば大腸DNA等のマイコバクテリウム属菌以外の菌由来のDNA]や、特異性を比較・評価するための指標となる公知のDNAフラグメント[例えばMAV19K (特許文献1)等の、M.アビウムが持つ公知の塩基配列のDNAフラグメント]を用い、上記のスライドガラス上のshotgunクローン由来PCR産物と並列させて固定する。これをコントロールスポットとして用いることにより、M.アビウム遺伝子の塩基配列と特異的にハイブリダイズするDNA断片のスポットを選択する、検定の精度を高める事ができる。
【0098】
(4)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
i)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
例えばヘキシルアミノ-UTPを用いた間接標識法等の常法により、例えば上記(1)の方法で得られたM.アビウム由来精製ゲノムDNAを標識物質で標識する。また、対照用ゲノム(例えばM.イントラセルラー等の非結核型抗酸菌、ウシ型結核菌等の結核菌等)DNAを、上記のM.アビウム由来精製ゲノムDNAを標識する標識物質とは異なる標識物質で標識する。
【0099】
上記のDNAの標識に用いられる標識物質としては、通常この分野で用いられる標識物質が挙げられるが、汎用されている標識物質としては、Cy3(アマシャムバイオサイエンス株式会社商品名)、Cy5(アマシャムバイオサイエンス株式会社商品名)、Alexa555(インビトロジェン社商品名)、Alexa647(インビトロジェン社商品名)等が挙げられる。
【0100】
例えばDeRisi研究室(www.microarrays.org)が発表したプロトコールを改変した間接標識法で、標識物質としてCy3とCy5を用いた標識方法を例にとって説明する。この方法は、まず、酵素伸長反応を行い、アミノ基をもつαUTPを分子内に取り込ませたDNA鎖を作成する。そしてそのDNA鎖のアミノ基に蛍光色素(サクシニイミド体)を化学的に結合させて、DNAを標識するという方法である。
【0101】
すなわち、まず、出発材料(M.アビウム由来ゲノムDNA及び対照用ゲノムDNA)を、常法に従い熱変性処理する[BioPrime DNA labeling system(インビトロジェン社製)等の市販キットを用いてもよい]。次いで、熱変性処理物に、DTT 2μl、dATP/dCTP/dGTPの混合液、dTTP、Ha-dUTP、Klenow酵素を添加し、37℃で3時間程度の伸長反応を行う。得られた反応産物を限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4分程度遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機等を用いて完全に乾燥させる。次に、乾燥させた上記反応産物にNaHCO
3 を加えて混合し、2〜3 分常温静置する。
【0102】
別にCy3(またはCy5)をDMSO に溶かしたものを調製(Cy-dye Solution Cy3、Cy-dye Solution Cy5)する。このCy-dye Solution Cy3を対照用ゲノム由来DNAを用いて得られた上記反応産物に加える。また、Cy-dye Solution Cy5をM.アビウム由来ゲノムDNAを用いて得られた上記反応産物に加える。それぞれの反応産物を40℃で60 分程度、遮光下にインキュベートする。さらに、それぞれの反応産物に4M NH
2OHを加え、攪拌後に15 分程度、遮光下にインキュベートして、それぞれのゲノム由来DNAの標識産物を得る。その後、得られた標識産物を、限外ろ過カラムにのせ、14000rpm で4 分程度遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機で完全に乾燥させる。
【0103】
ii)標識産物の断片化工程
上記(4)i)で得られた乾燥状態の各ゲノム由来DNAの標識産物に対して、0.04M Tris-acetate(pH8.1)、0.1M 酢酸カリウム、0.03M酢酸マグネシウム四水和物の組成の溶液を調製したものを加える。該溶液に乾燥状態のゲノム由来DNAの標識産物を懸濁混和させる。94℃で15 分間程度加熱処理し、100base〜300 base の、各ゲノム由来DNAの標識産物の、断片化生成物を得る(Cy3標識産物、Cy5標識産物)。
【0104】
得られたCy3標識産物及びCy5標識産物の各々を限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4 分程度遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機等で完全に乾燥させる。
【0105】
次いで、このマイクロチューブに、salmon sperm DNA(10mg/mL)、formamideを含有し、ArrayHyb Hybridization buffer(SIGMA社製)で全量を40〜50μlに調整した試薬溶液(後に使用するマイクロアレイのカバーガラスが24×55mm の大きさの場合の組成である)を加え、上記で得た乾燥物を同一の溶液中で懸濁混和後、95℃で5 分程度インキュベートし、Cy3Cy5標識産物混合溶液(M.アビウム由来ゲノムDNAのCy5標識産物の断片化生成物と対照用ゲノム由来DNAのCy3標識産物の断片化生成物の混合溶液)を調製する。続く(5)のマイクロアレイ・ハイブリダイゼーションに用いるまで70℃に保っておく。
【0106】
(5)マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション(アレイ上でのDNA-DNA hybridization)
次に、M.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun cloneのマイクロアレイに対して、常法によりCy3Cy5標識産物のハイブリダイゼーションを行う。
【0107】
例えば、上記(3)の工程で得られた、M.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun cloneのマイクロアレイ上に、上記(4)ii)で調製したCy3Cy5標識産物混合溶液をのせ、カバーガラスをかぶせる。これをハイブリカセットにセットした後、65℃で8 時間以上、遮光下に反応させて、ハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイをカバーグラスごと2×SSC-0.1%SDS 溶液に室温で浸し、カバーグラスをはずす。1×SSC、0.03%SDS溶液(60℃)で10 分間洗浄、0.2×SSC 溶液(42℃)で10 分間洗浄、0.05×SSC溶液(室温)で約10 分間洗浄後、800prm で約5 分間遠心を行って乾燥させる。
【0108】
(6)蛍光強度の測定;シグナル検出から数量化まで
蛍光読み取りスキャナーを用いて、上記(5)で得られたマイクロアレイ・ハイブリダイゼーション処理したマイクロアレイ上の蛍光強度を測定する。この際、Cy3及びCy5の、2チャンネルでの蛍光強度を測定して、蛍光検出データを得る。蛍光シグナルの数量化を行うには、市販のDNAチップ発現イメージ解析ソフトウェア等を用いればよい。そして、ソフトの操作手順に従って、スポット自動認識、バックグラウンド計算、蛍光強度比の正規化を行えば良い。
【0109】
ハイブリダイゼーションに用いたCy5標識産物は、M.アビウム由来ゲノムDNAを標識したDNAフラグメント群であり、Cy3標識産物は対照用ゲノムDNAを標識したDNAフラグメント群である。そのため、マイクロアレイ上のあるスポットのCy3とCy5のそれぞれの蛍光強度を測定した結果、Cy3に対するCy5の蛍光強度比が高い場合には、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、Cy5標識産物、すなわちM.アビウム由来のゲノムDNAとより強くハイブリダイズしたということを示す。そして、そのDNA断片(PCR産物)は、M.アビウムに対する特異性が高いと判断される。
【0110】
他方、あるスポットのCy3とCy5のそれぞれの蛍光強度を測定した結果、Cy3に対するCy5の蛍光強度比が低い場合は、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、Cy3標識産物、すなわち対照用ゲノムDNAとの交叉反応が観察されたことを示す。この場合と、Cy3及びCy5の蛍光の強さが同程度だった場合と、Cy3及びCy5のどちらの蛍光も検出されなかった場合には、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、M.アビウムに対する特異性が低いと判断される。
【0111】
そこで、例えばマイクロアレイ上で検出されたCy3/Cy5の蛍光強度比(Ratio)を基に、例えば、散布図(スキャッタープロット)を作成する等して、結果を解析する。そして、M.アビウムに特異的な配列のスクリーニングを行う。
【0112】
スクリーニングを行った候補の中から、Cy3/Cy5 Ratioの数値解析の結果、有意にM.アビウム特異的なシグナルが得られ(Cy5の蛍光強度が強い場合)たスポット(クローン)を選択する。
【0113】
尚、マイクロアレイ上に上記したようなポジティブコントロール及びネガティブコントロールがスポットされている場合には、夫々のコントロールのCy3Cy5蛍光強度を測定する。そして、その蛍光強度の傾向をみれば、より正確に目的のスポットを選択できる。
【0114】
例えば、スクリーニングを行った候補の中から、Cy3/Cy5 Ratioの数値解析の結果、有意にM.アビウムに特異的なシグナルが得られ(Cy5の蛍光強度が強い場合)、なおかつ上述のM.アビウムのポジティブコントロールのスポットに比べてRatioの数値が大きい(Cy5の蛍光強度が強い)スポット(クローン)を選択する。
【0115】
次いで、通常この分野で用いられているシークエンサー等の機器を利用し、常法に従い、得られた候補クローンの塩基配列決定を行えばよい。
【0116】
本発明に係るM.アビウム検出用プライマーとしては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するプライマーが挙げられる(以下、本発明のプライマーと記載する場合がある。)。
【0117】
また、本発明のプライマーは、PCR(リアルタイムPCRを含む)等の核酸増幅反応、核酸ハイブリダイゼーション等の条件に合わせて、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドの中から、解離温度(Tm値)などを考慮して、適当な領域の適当な長さを選択して設計すればよい。
【0118】
好ましくはプライマー配列としての特異性を維持するために必要な塩基数と考えられている10〜50塩基、より好ましくは10〜35塩基、更に好ましくは18〜25塩基の長さを有しているオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0119】
プライマーを設計するには、プライマー設計のために一般に用いられているソフトや、例えばプライマーデザイン用のWebツールPrimer3 (Whitehead Institute for Biomedical Research.)等を用いればよい。
【0120】
本発明のプライマーに用いられる、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)の具体例は、上記の本発明のオリゴヌクレオチドの説明に於いて記載したものと同じである。
【0121】
本発明のプライマーの具体例としては、例えば配列番号6〜32、配列番号43〜129及び配列番号137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号6〜32、配列番号43〜129及び配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するものが挙げられる。
【0122】
好ましいプライマーとしては、配列番号6〜23、配列番号43〜100、及び配列番号137〜182から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は配列番号6〜23、配列番号43〜100、及び配列番号137〜182から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0123】
より好ましいプライマーとしては、配列番号6、7、10〜17、22、23、57〜72、75〜94、137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するプライマー、又は配列番号6、7、10〜17,22,23、57〜72、75〜94、137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するプライマーが挙げられる。
【0124】
更により好ましいプライマーとしては、配列番号6、7、10〜17、22、23、59〜72、75〜78、81〜94、137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するプライマー、又は配列番号6、7、10〜17、22、23、59〜72、75〜78、81〜94、137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するプライマーが挙げられる。
【0125】
なお更により好ましいプライマーとしては、配列番号137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するプライマー、又は配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するプライマーが挙げられる。その中でも、配列番号137〜182から選択される塩基配列を含有するプライマー、又は配列番号137〜182から選択される塩基配列に対する相補配列を含有するプライマーが挙げられる。
【0126】
尚、配列番号6〜9で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号1で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0127】
配列番号10〜11で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号2で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0128】
配列番号12〜13で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号3で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0129】
配列番号14〜21で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号4で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0130】
配列番号22〜23で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号5で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0131】
配列番号43〜54で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号37で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0132】
配列番号55〜66で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号38で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0133】
配列番号67〜74で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号39で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0134】
配列番号75〜82で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号40で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0135】
配列番号83〜92で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号41で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0136】
配列番号93〜100で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号42で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0137】
配列番号137〜144で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号130で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0138】
配列番号145〜148で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号131で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0139】
配列番号149〜158で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号132で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0140】
配列番号159〜164で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号133で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0141】
配列番号165〜170で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号134で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0142】
配列番号171〜174で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号135で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0143】
配列番号175〜182で表される塩基配列を含有するプライマーは、配列番号136で表される塩基配列をもとに設計されたものである。
【0144】
また、配列番号1で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号6〜9で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号6(003Fw_1):804位〜823位、
配列番号7(003Rv_1):707位〜725位、
配列番号8(003Fw_2):20位〜37位、
配列番号9(003Rv_2):136位〜153位。
【0145】
配列番号2で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号10〜11で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号10(007Fw_1):3位〜21位、
配列番号11(007Rv_1):122位〜139位。
【0146】
配列番号3で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号12〜13で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号12(11Fw_1):481位〜500位、
配列番号13(11Rv_1):346位〜366位。
【0147】
配列番号4で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号14〜21で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号14(12Fw_1):12位〜32位、
配列番号15(12Rv_1):143位〜161位、
配列番号16(12Fw_4):126位〜145位、
配列番号17(12Rv_4):287位〜308位、
配列番号18(12Fw_2):448位〜465位、
配列番号19(12Rv_2):559位〜579位、
配列番号20(12Fw_3):293位〜312位、
配列番号21(12Rv_3):452位〜472位。
【0148】
配列番号5で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号22〜23で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号22(04Fw_1):574位〜594位、
配列番号23(04Rv_1):397位〜417位。
【0149】
配列番号37で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号43〜54で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号43(RE01Fw_01):765位〜783位、
配列番号44(RE01Rv_01):891位〜910位、
配列番号45(RE01FW_02):813位〜830位、
配列番号46(RE01Rv_02):961位〜978位、
配列番号47(RE01Fw_03):204位〜221位、
配列番号48(RE01Rv_03):386位〜403位、
配列番号49(RE01Fw_04):68位〜87位、
配列番号50(RE01Rv_04):190位〜207位、
配列番号51(RE01Fw_05):386位〜403位、
配列番号52(RE01Rv_05):517位〜535位、
配列番号53(RE01Fw_06):615位〜635位、
配列番号54(RE01Rv_06):734位〜751位。
【0150】
配列番号38で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号55〜66で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号55(RE04Fw_01):206位〜224位、
配列番号56(RE04Rv_01):360位〜378位、
配列番号57(RE04Fw_02):35位〜52位、
配列番号58(RE04Rv_02):206位〜224位、
配列番号59(RE04Fw_03):611位〜630位、
配列番号60(RE04Rv_03):744位〜762位、
配列番号61(RE04Fw_04):570位〜589位、
配列番号62(RE04Rv_04):727位〜746位、
配列番号63(RE04Fw_05):435位〜453位、
配列番号64(RE04Rv_05):572位〜593位、
配列番号65(RE04Fw_06):748位〜767位、
配列番号66(RE04Rv_06):890位〜909位。
【0151】
配列番号39で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号67〜74で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号67(RE10Fw_02):783位〜800位、
配列番号68(RE10Rv_02):879位〜896位、
配列番号69(RE10Fw_03):59位〜77位、
配列番号70(RE10Rv_03):239位〜257位、
配列番号71(RE10Fw_04):590位〜607位、
配列番号72(RE10Rv_04):789位〜809位、
配列番号73(RE10Fw_05):377位〜396位、
配列番号74(RE10Rv_05):501位〜518位。
【0152】
配列番号40で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号75〜82で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号75(RE11Fw_01):264位〜281位、
配列番号76(RE11Rv_01):379位〜397位、
配列番号77(RE11Fw_02):106位〜123位、
配列番号78(RE11Rv_02):278位〜296位、
配列番号79(RE11Fv_03):375位〜392位、
配列番号80(RE11Rv_03):531位〜548位、
配列番号81(RE11Fw_04):526位〜543位、
配列番号82(RE11Rv_04):709位〜726位。
【0153】
配列番号41で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号83〜92で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号83(RE23Fw_01):34位〜53位、
配列番号84(RE23Rv_01):157位〜176位、
配列番号85(RE23Fw_02):159位〜178位、
配列番号86(RE23Rv_02):305位〜322位、
配列番号87(RE23Fw_03):462位〜481位、
配列番号88(RE23Rv_03):584位〜603位、
配列番号89(RE23Fw_04):436位〜453位、
配列番号90(RE23Rv_04):535位〜552位、
配列番号91(RE23FW_05):279位〜298位、
配列番号92(RE23Rv_05):401位〜419位。
【0154】
配列番号42で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号93〜100で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号93(RE24Fw_01):328位〜347位、
配列番号94(RE24Rv_01):414位〜433位、
配列番号95(RE24Fw_02):178位〜196位、
配列番号96(RE24Rv_02):328位〜347位、
配列番号97(RE24Fw_03):103位〜120位、
配列番号98(RE24Rv_03):274位〜291位、
配列番号99(RE24FW_04):387位〜406位、
配列番号100(RE24Rv_04):537位〜555位。
【0155】
配列番号130で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号137〜144で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号137(Mac_06Fw01):88位〜105位、
配列番号138(Mac_06Rv01):223位〜241位、
配列番号139(Mac_06Fw02):156位〜175位、
配列番号140(Mac_06Rv02):312位〜331位、
配列番号141(Mac_06Fw03):460位〜478位、
配列番号142(Mac_06Rv03):604位〜623位、
配列番号143(Mac_06Fw04):604位〜623位、
配列番号144(Mac_06Rv04):743位〜760位、
【0156】
配列番号131で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号145〜148で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号145(Mac_10Fw01):94位〜113位、
配列番号146(Mac_10Rv01):228位〜245位、
配列番号147(Mac_10Fw02):280位〜299位、
配列番号148(Mac_10Rv02):453位〜472位、
【0157】
配列番号132で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号149〜158で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号149(Mac_11Fw01):71位〜88位、
配列番号150(Mac_11Rv01):228位〜248位、
配列番号151(Mac_11Fw02):477位〜496位、
配列番号152(Mac_11Rv02):596位〜615位、
配列番号153(Mac_11Fw03):536位〜554位、
配列番号154(Mac_11Rv03):617位〜635位、
配列番号155(Mac_11Fw04):558位〜575位、
配列番号156(Mac_11Rv04):671位〜688位、
配列番号157(Mac_11Fw05):299位〜316位、
配列番号158(Mac_11Rv05):391位〜410位、
【0158】
配列番号133で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号159〜164で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号159(Mac_12Fw01):271位〜290位、
配列番号160(Mac_12Rv01):416位〜433位、
配列番号161(Mac_12Fw02):603位〜622位、
配列番号162(Mac_12Rv02):747位〜765位、
配列番号163(Mac_12Fw03):58位〜75位、
配列番号164(Mac_12Rv03):198位〜216位、
【0159】
配列番号134で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号165〜170で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号165(Mac_13Fw01):108位〜126位、
配列番号166(Mac_13Rv01):288位〜305位、
配列番号167(Mac_13Fw02):321位〜339位、
配列番号168(Mac_13Rv02):453位〜472位、
配列番号169(Mac_13Fw03):576位〜595位、
配列番号170(Mac_13Rv03):720位〜739位、
【0160】
配列番号135で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号171〜174で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号171(Mac_15Fw01):233位〜250位、
配列番号172(Mac_15Rv01):326位〜346位、
配列番号173(Mac_15Fw02):442位〜460位、
配列番号174(Mac_15Rv02):527位〜546位、
【0161】
配列番号136で表される塩基配列上の、プライマーとして設計した配列番号175〜182で表される塩基配列の存在位置は、夫々次の通りである。
配列番号175(Mac_16Fw02):848位〜867位、
配列番号176(Mac_16Rv02):952位〜969位、
配列番号177(Mac_16Fw03):135位〜152位、
配列番号178(Mac_16Rv03):222位〜240位、
配列番号179(Mac_16Fw05):544位〜562位、
配列番号180(Mac_16Rv05):669位〜688位、
配列番号181(Mac_16Fw07):703位〜720位、
配列番号182(Mac_16Rv07):792位〜812位、
【0162】
尚、上記において、各配列番号の後の( )内に、本発明で命名したプライマーの名称を示す。
【0163】
本発明のプライマーを得る方法は、上記の本発明のヌクレオチドを得る方法に於いて記載した通りである。
【0164】
また、本発明のプライマーは、標識物質で標識されていてもよい。
【0165】
本発明のプライマーを標識する方法としては、この分野で通常行われているオリゴヌクレオチドの標識方法が挙げられ、標識物質ごとに適宜方法を選択すればよい。
【0166】
本発明のプライマーを標識物質で標識するために用いられる標識物質としては、放射性同位体や酵素、蛍光物質、発光物質、ビオチンなど公知の標識物質であれば何れも用いることができる。
【0167】
例えば、放射性同位体としては
32P,
33P,
35S等、酵素としてはアルカリホスファターゼ,西洋ワサビペルオキシダーゼ等、蛍光物質としてはCyanine Dye系のCy3,Cy5(アマシャムバイオサイエンス株式会社)や、Alexa555、Alexa647(インビトロジェン社)、フルオレセイン等、発光物質としてはAcridinium Esterを含む化学発光試薬等が挙げられる。
【0168】
本発明のプライマーを放射性同位体により標識する方法としては、プライマーを合成する際に、放射性同位体で標識されたヌクレオチドを取り込ませることによって、プライマーを標識する方法や、プライマーを合成した後、放射性同位体で標識する方法等が挙げられる。具体的には、一般によく用いられているランダムプライマー法、ニックトランスレーション法、T4ポリヌクレオチド キナーゼによる5'−末端標識法、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを用いた3'−末端標識法、RNAラベリング法等が挙げられる。
【0169】
本発明のプライマーを酵素で標識する方法としては、アルカリホスファターゼ,西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素分子を、標識するプライマーに直接共有結合させる等の、この分野に於ける常法である直接標識法が挙げられる。
【0170】
本発明のプライマーを蛍光物質で標識する方法としては、例えばフルオレセイン標識したヌクレオチドをこの分野に於ける常法の標識手法によりプライマーに取り込ませる方法が挙げられる。また、リンカーアームを有するヌクレオチドを配列中のオリゴヌクレオチドと置換する方法(例えば、Nucleic Acids Res.,1986年, 第14巻, p.6115参照)でもヌクレオチドを蛍光物質で標識することができる。その場合、5位にリンカーアームを有するウリジンを特開昭60-500717 号公報に開示された合成法によりデオキシウリジンから化学合成し、上記オリゴヌクレオチド鎖に蛍光物質を導入する方法もある。
【0171】
本発明のプライマーを発光物質で標識する方法及びビオチンで標識する方法としては、通常この分野で行われているヌクレオチドを発光標識又はビオチン標識する常法が挙げられる。
【0172】
本発明に係るM.アビウム検出用プローブとしては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)を含有するプローブが挙げられる(以下、本発明のプローブと記載する場合がある。)。
【0173】
本発明のプローブは、PCR(リアルタイムPCRを含む)等の核酸増幅反応、核酸ハイブリダイゼーション等の条件に合わせて、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチド、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するオリゴヌクレオチドから、解離温度(Tm値)などを考慮して、適当な領域の適当な長さを選択して使用すればよい。但し、プローブに十分な特異性を持たせたいのならば、プローブ配列としての特異性を維持するために必要な塩基数を考慮して設計することが望ましい。
【0174】
例えば、核酸ハイブリダイゼーション法(例えばサザン・ハイブリダイゼーション等)等に用いるプローブとしては、10〜700塩基、好ましくは100〜600塩基、更に好ましくは200〜500塩基の長さを有しているプローブが好ましい。
【0175】
また、例えばリアルタイムPCR増幅法(例えばTaqMan
TM法、Molecular Beacon法等)等に用いるプローブとしては、10〜50塩基、好ましくは15〜40塩基、更に好ましくは20〜30塩基の長さを有しているものが挙げられる。
【0176】
本発明のプローブに用いられる、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)の具体例は、上記の本発明のオリゴヌクレオチドの説明に於いて記載したものと同じである。
【0177】
本発明のプローブの好ましい具体例としては、配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するプローブ、又は配列番号6〜32、配列番号43〜129、及び配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するプローブが挙げられる。
【0178】
より好ましいプローブとしては、配列番号6、7、10〜17、22〜24、26〜29、32、57〜72、75〜94、108〜115、117〜126、137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するプローブ、又は配列番号6、7、10〜17、22〜24、26〜29、32、57〜72、75〜94、108〜115、117〜126、137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するプローブが挙げられる。
【0179】
更に好ましいプローブとしては、配列番号137〜205から選択される塩基配列の一部若しくは全部を含有するプローブ、又は配列番号137〜205から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有するプローブが挙げられる。
【0180】
尚、配列番号24〜32、配列番号101〜129、及び配列番号183〜205から選択される塩基配列又はこれらに対する相補配列は、本発明のプライマーを用いたPCRにより増幅されるオリゴヌクレオチドの塩基配列である。フォワードプライマーとリバースプライマーの組合せと、それを用いたPCRにより増幅される塩基配列の配列番号を表1に併せて示す。例えば、配列番号24で表される塩基配列は、配列番号6で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとし、配列番号7で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用いたPCRにより増幅されるオリゴヌクレオチドの塩基配列であることを示す。
【0181】
【表1】
【0182】
本発明のプローブを得る方法は、上記の本発明のヌクレオチドを得る方法に於いて記載した通りである。
【0183】
本発明のプローブは、標識物質で標識されていてもよい。
【0184】
本発明のプローブを標識物質で標識するために用いられる標識物質としては、放射性同位体や酵素、蛍光物質、発光物質、ビオチンなど公知の標識物質であれば何れも用いることができる。
【0185】
本発明のプローブを標識物質で標識するために用いられる、標識物質の具体例及び標識方法は、本発明のプライマーの標識方法の説明に於いて記載したとおりである。
【0186】
また、後述するリアルタイムPCRによる検出法に於いて用いられる標識プローブとしては、本発明のプローブを、リアルタイムPCR法において通常用いられている標識物質で標識したものが挙げられる。例えば、5'末端がレポーター蛍光物質[カルボキシフルオレセイン(FAM)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テトラクロロフルオレセイン(TET)等]で標識され、3'末端がクエンチャー色素[例えばカルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)等の蛍光物質、Black Hole Quencher色素(BHQ),4-((4-(dimethylamino) phenyl)azo)benzoic acid (DABCYL)等の非蛍光物質]で標識された本発明のプローブが挙げられる。
【0187】
後述するTaqMan
TMリアルタイムPCRによる検出法においても、上記した標識プローブを用いることができる。
【0188】
本発明に係るM.アビウムの検出に用いられる試料(被検試料)としては、喀痰,血液,咽頭粘液,胃液,気管支洗浄液,経気管支採取物,胸水などの穿刺液,尿,膿等の各種臨床検体が挙げられる。また、検体から単離、培養された培養菌体、これらより単離、精製された核酸、又は核酸増幅検出系等で増幅された核酸でもよい。
【0189】
上記試料からDNAを抽出・精製するには、検体からの抗酸菌(結核菌)DNA抽出に用いられる常法に従って行えばよい。
【0190】
まず、試料中の結核菌の細胞壁を破壊する必要がある。その方法としては、例えば菌体を試料とする場合には、例えばSDS等の界面活性剤や、グアニジンチオシアネート(GTC)等の蛋白変性剤で菌体を処理して結核菌の膜構造を破壊する方法、又は菌体をガラスビーズ等によって物理的に破砕する方法等が挙げられる。
【0191】
喀痰を検体として用いる場合には、まず前処理として、米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention、略称CDC)で推奨しているNALC (N-acetyl-L-cysteine) -NaOH法(Kent PT, Kubica GP, Pubric Health Mycobacteriology, A Guide for the Level III Laboratory, U.S.Department of Health and Human Services, Public Health Service, Center for Disease Control, Atlanta, U.S.A., 1985年, p.31-55)による検体の均質化を行うのが望ましい。
【0192】
結核菌の細胞壁を破壊した後、この分野で一般的なDNAの調製法(フェノール・クロロホルム抽出、エタノール沈殿法等 Rapid and simple method for purification of nucleic acids, J. Clin. Microbiol., 1990, Mar;28(3), 495-503, Boom R, Sol CJ, Salimans MM, Jansen CL, Wertheim-van Dillen PM, van der Noordaa J)、イソプロパノールを用いて沈殿する方法等によりDNAの抽出及び精製を行えばよい。
【0193】
DNAの抽出精製には、そのための様々なキットが市販されているので、それを用いてもよい。例えば(株)キアゲン製イオン交換樹脂タイプ DNA抽出精製キットGenomic-tip等を用いてDNAの抽出、精製を行えばよい。
【0194】
検体から単離、培養された培養菌体を試料として用いる場合を例にとって示すと次のとおりである。
【0195】
例えば小川培地上のコロニーを採取し、滅菌蒸留水に懸濁、遠心分離して菌体を集めた後、蒸留水に再懸濁する。次いで菌体の懸濁液をオートクレーブ処理した後、菌体の粉砕処理(ガラスビーズによる物理的破砕等)を行い、さらに遠心分離して上清を回収する。得られた上清から、上記した方法でDNAを抽出・精製すればよい。
【0196】
本発明に係るM.アビウムの検出方法としては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)をプライマー又は/及びプローブとして用いる方法(本発明のプライマー又は/及びプローブを用いる方法)が挙げられる。
【0197】
例えば、
(A)本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物を検出する方法、
(B)本発明のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識したものを標識プローブとして用いる方法、
等が挙げられる。以下に、夫々の方法について説明する。
【0198】
(A)本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物を検出する方法
【0199】
(A)の方法において、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて核酸増幅反応を行う方法としては、例えば、本発明のプライマーを用い、試料中の核酸を鋳型として用いてDNAポリメラーゼ等による核酸増幅反応[例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(特開昭60-281号公報)、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法(Tsugunori Notomi et al., Nucleic Acid Res., 28, e63, 2000)、ICANTM(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法(臨床病理, 51(11), 1061-1067, 2003, Nov)、LCR(ligase chain reaction)法(特開平4-211399号)、SDA(strand displacement amplification)法(特開平8-19394号)]を行ってプライマー伸長させる方法が挙げられる。これによりM.アビウムの塩基配列の特定の領域の配列を増幅させることができるので、得られたプライマー伸長産物を測定することにより、M.アビウムを検出することができる。
【0200】
上記の核酸増幅反応を行う方法の中でも、PCR法が最も一般的な方法として挙げられ、PCR法の例としては、例えばリアルタイム増幅検出法(例えば米国特許第5210015号、米国特許第5538848号の記載参照)を用いることができる。また、リアルタイム増幅検出法による検出法の例として、例えばリアルタイムPCR検出法が挙げられる。
【0201】
リアルタイムPCR検出法の例としては、TaqMan
TMリアルタイムPCR法(例えば米国特許第5538848号の記載参照)、MGB Eclipse Probe System法(例えば米国特許第5,801,155号の記載参照)、Molecular Beacons Probe Technology法(例えば米国特許第5925517号の記載参照)、LUX Fluorogenic Primer法(Invitrogen Corporation)、Quenching probe-PCR(QP)法(例えば米国特許第6,492,121号の記載参照)等が挙げられる。
【0202】
PCR等の核酸増幅反応において用いられる本発明のプライマーの具体例は、上記したとおりである。
【0203】
また、核酸増幅反応に用いられる、好ましいフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せとしては、上記表1で示される組合せが挙げられる。
【0204】
その中でも好ましいフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せとしては、例えば下記表2に記載の組み合わせが挙げられる。
【0205】
表2において、例えば番号1の組み合わせは、「フォワードプライマーが配列番号6で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドで、リバースプライマーが配列番号7で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドである組合せ。」を示す。
【0206】
【表2】
【0207】
上記プライマーを用いたリアルタイムPCR等の核酸増幅反応に用いられるその他のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、DNAポリメラーゼ等の試薬は、通常この分野で用いられているものを用いればよく、その条件、手法等は、本発明のプライマー及びプローブを用いる以外は、PCR法の一般的なプロトコルに従って行えばよい。
【0208】
核酸増幅反応で得られたプライマー伸長産物を検出する方法は、通常この分野で行われている常法で良く、限定されるものではない。
【0209】
例えばインターカレーター法、TaqMan
TMリアルタイムPCR法(例えば米国特許第5538848号の記載参照)、MGB Eclipse Probe System法(例えば米国特許第5,801,155号の記載参照)、Molecular Beacons Probe Technology法(例えば米国特許第5925517号の記載参照)、LUX Fluorogenic Primer法(Invitrogen Corporation)、Quenching probe-PCR(QP)法(例えば米国特許第6,492,121号の記載参照)、核酸増幅反応を行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいて行う方法、標識プライマーを用いた核酸増幅反応を行って得られたプライマー伸長産物の標識を測定する方法等、様々な検出法が挙げられる。
【0210】
これらのうち、一般によく用いられる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0211】
(A−1)インターカレーター法、
(A−2)TaqMan
TMリアルタイムPCR法(TaqMan
TMプローブ法)、
(A−3)核酸増幅反応を行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいて行う方法、
(A−4)標識プライマーを用いた核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物の標識を測定する方法。
【0212】
以下に、夫々の方法について説明する。
【0213】
(A−1)インターカレーター法
公知のインターカレーターを利用してリアルタイムPCRを行う、通常のインターカレーター法が利用できる。
【0214】
例えば、本発明のプライマーと、インターカレーターを用い、通常のインターカレーター法を利用したリアルタイムPCRを行う方法が挙げられる。
【0215】
すなわち、インターカレーターは、二本鎖DNAに特異的に結合して蛍光を発する試薬であり、励起光を照射すると蛍光を発する。PCR反応によって増幅を繰り返してDNAが増えると、インターカレーターがそのDNAに取り込まれるので、プライマー伸長産物の生成量に比例して、DNAに取り込まれていくため、インターカレーターに由来する蛍光強度を検出することにより、プライマー伸長産物の量を知ることができる。
【0216】
但しインターカレーターは全ての二本鎖DNAに結合するので、得られた蛍光強度の測定結果を基に、必要に応じ、融解曲線を作成して、融解曲線解析を行う。すなわち、PCR反応後にPCR反応液の温度を徐々に上げながら、インターカレーター由来の蛍光強度を測定する。最初はPCR増幅産物は二本鎖を形成しているので蛍光を発しているが、PCR反応液の温度がある一定の温度に達すると一本鎖に解離するので、インターカレーター由来の蛍光は急激に低下する。この時の温度が融解温度(Tm値)であり、プライマー伸長産物の配列に固有の値である。融解曲線のピークが、目的とする特異産物のピークか、又は特異産物と非特異産物のピークかについては、このTm値から判定することができる。
【0217】
このインターカレーター法は、リアルタイムPCRの後に電気泳動を行う必要がないので、臨床検査の分野等において、迅速に検出を行う必要がある場合には、有効な方法である。
【0218】
本発明に用いられるインターカレーターとしては、通常この分野で用いられているインターカレーターであれば、何でも用いることができるが、例えばSYBR
TM Green I (Molecular Probe社商品名)、エチジウムブロマイド、フルオレン等がある。
【0219】
本発明に係る「インターカレーター法を利用したM.アビウムの検出方法」の例を説明すると、以下の通りである。
【0220】
本発明のプライマーと、インターカレーター(例えばSYBR
TM Green I)を用い、M.アビウムを検出すべき試料(被検試料)から精製した精製DNA試料を鋳型として用いて、Taq DNA ポリメラーゼ等のポリメラーゼを用いたリアルタイムPCRを行う。そして上記した温度を下げる方法で、プライマー伸長産物の増幅量と相関してインターカレーションするSYBR
TM Green Iの蛍光強度を測定する。
【0221】
次いで、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成する。これを用いて、プライマー伸長産物の融解曲線解析を行い、ピークの検出を行い、単一のピークが得られた場合に、被検試料はM.アビウム陽性と判定される。
【0222】
又は、精製DNA試料溶液の希釈系列を調製し、各希釈系列毎に、上記と同様にリアルタイムPCRを行う、
【0223】
次いで、リアルタイムPCRに於いて鋳型として用いた精製DNA試料溶液の各希釈系列毎に、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成する。そして、プライマー伸長産物の融解曲線解析を行い、検出ピークの解析を行う。各希釈系列に対する各プライマー伸長産物について、同一のTm値のピークが検出された場合に、被検試料はM.アビウム陽性(すなわち、M.アビウム菌、又はその遺伝子が存在する。以下同じ。)と判定される。
【0224】
また、対照として、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属菌由来DNAを常法により抽出・精製し、これを鋳型として用いる以外は、上記と同様の方法にしてリアルタイムPCRを行い、同様にSYBR
TM Green Iの蛍光強度を測定し、融解曲線解析を行ってもよい。この場合は、試料中にM.アビウム由来の配列がないので、融解曲線解析でピークは出現しないはずである。M.アビウムの有無の判定をより確実にするためには、上記した対照実験を一緒に行うことが望ましい。
【0225】
更に、インターカレーター法を利用した方法で得られた測定値をもとに、リアルタイムPCRで行われる常法に従って、検量線を作成することもできるので、その検量線を用いて試料中にあるM.アビウムのゲノムDNA量(コピー数)を得ることができる。
【0226】
検量線の作成方法及びそれを用いたM.アビウムの定量方法は後記する。
【0227】
本発明に係るインターカレーターを用いたリアルタイムPCR検出法によるM.アビウムの検出方法の一例として、上記した本発明の「プライマー12Fw_1」と「プライマー12Rv_1」を用いて、M.アビウムを検出する場合を例にとって説明すると、以下の通りである。
【0228】
まず、公知の方法により、M.アビウムを検出すべき試料(被検試料)中から精製DNA試料を得る。
【0229】
別に、DNAシンセサイザーを用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号14で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(12Fw_1)、及び配列番号15で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(12Rv_1)を合成する。
【0230】
合成した12Fw_1をフォワードプライマーとして、12Rv_1をリバースプライマーとして用い、例えば下記の通りリアルタイムPCRを行う。
【0231】
すなわち、プライマー12Fw_1と、プライマー12Rv_1を各50〜2000nM、インターカレーター[例えばSYBR
TM Green I (Molecular Probe社商品名)]を原液の約5〜100000倍希釈、1.0〜4.0mM MgCl
2、KCl、BSA、コール酸ナトリウム、0.005〜0.2%TritonX-100、夫々0.2mM程度のdATP、dCTP、dGTP、dTTP、10〜80単位/mlのポリメラーゼ(例えばTaq DNA ポリメラーゼ)を含有する10mM Tris-HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とする。該PCR用反応液に、M.アビウムを検出すべき試料(被検試料)から精製した精製DNA試料を加え、PCR用試料とする。このPCR用試料を96穴反応プレートのウェルに入れ、リアルタイムPCR検出装置等を用いてリアルタイムPCRを行う。反応は30〜50回サイクル繰り返し、1サイクル毎にプライマー伸長産物の増幅量と相関してインターカレーションするSYBR
TM Green Iの蛍光強度を測定する。
【0232】
次いで、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成する。これを用いて、プライマー伸長産物の融解曲線解析を行い、ピークの検出を行い、単一のピークが得られた場合に、被検試料はM.アビウム陽性と判定される。
【0233】
又は、精製DNA試料溶液の希釈系列を調製し、各希釈系列毎に、上記と同様にリアルタイムPCRを行う。次いで、リアルタイムPCRに於いて鋳型として用いた精製DNA試料溶液の各希釈系列毎に、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成する。そして、プライマー伸長産物の融解曲線解析を行い、検出ピークの解析を行う。
【0234】
この場合のM.アビウムの検出方法としては、融解曲線解析で各希釈系列に対する各プライマー伸長産物について、同一のTm値のピークが検出された場合に、被検試料はM.アビウム陽性と判定される。
【0235】
また、対照として、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属菌由来DNAを常法により抽出・精製し、これを鋳型として用いる以外は、上記と同様の方法にしてリアルタイムPCRを行い、同様にSYBR
TM Green Iの蛍光強度を測定し、融解曲線解析を行ってもよい。この場合は、試料中にM.アビウム由来の配列がないので、融解曲線解析でピークは出現しないはずである。M.アビウムの有無の判定をより確実にするためには、上記した対照実験を一緒に行うことが望ましい。
【0236】
更に、検量線を作成することによって、試料中のM.アビウムのゲノムDNAの数(コピー数)を得ることができる。また、その数はM.アビウムの数に比例するので、試料(被検試料)中のM.アビウムの数も知ることができる。
【0237】
(A−2)TaqMan
TMリアルタイムPCR法(TaqMan
TMプローブ法)
5'末端を例えばFAM等の蛍光色素(レポーター)で、3'末端を例えばTAMRA等のクエンチャー色素で標識したプローブを用いたリアルタイムPCR法により、目的の微量なDNAを高感度且つ定量的に検出する方法である(例えば米国特許第5,538,848号の記載参照)。
【0238】
具体的には、本発明のプライマーと、本発明のプローブの5'末端がレポーター蛍光色素で標識され、3'末端がクエンチャー色素で標識された標識プローブを用いて、試料中の核酸を鋳型としてPCRを行い、該標識プローブから遊離された標識物質の標識を検出する方法である。
【0239】
TaqMan
TMリアルタイムPCR法の原理は以下の通りである。
【0240】
この方法には、5'末端を蛍光色素(レポーター)で、3'末端をクエンチャー色素で標識した、目的遺伝子の特定領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが使用される。該プローブは、通常の状態ではクエンチャー色素によってレポーターの蛍光が抑制されている。この蛍光標識プローブを目的遺伝子に完全にハイブリダイズさせた状態で、その外側からDNAポリメラーゼを用いてPCRを行う。DNAポリメラーゼによる伸長反応が進むと、そのエキソヌクレアーゼ活性により蛍光標識プローブが5'端から加水分解され、レポーター色素が遊離し、蛍光を発する。リアルタイムPCR法は、この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングする方法であり、これにより、鋳型DNAの初期量を正確に定量することができる。
【0241】
本発明に係るTaqMan
TMリアルタイムPCR検出法に用いられるフォワードプライマー及びリバースプライマーには、本発明のプライマーが用いられる。好ましいプライマーとしては、上記したPCR法等の核酸増幅反応において用いられるものが挙げられ、その好ましい具体例及び好ましい組合せも上記したとおりである。
【0242】
本発明に係るTaqMan
TMリアルタイムPCR検出法に用いられる5'末端を蛍光色素(レポーター)で、3'末端をクエンチャー色素で標識したプローブに用いられるプローブとしては、上記した本発明のプローブであればよい。実際には、選択したフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せでリアルタイムPCRを行った場合に得られると予測されるプライマー伸長産物の塩基配列を含有するプローブ、又は更にその配列から設計される塩基配列を含有するプローブが用いられる。
【0243】
例えば、プライマー12Fw_1とプライマー12Rv_1を用いてリアルタイムPCRを行う場合に用いられるプローブは、そのリアルタイムPCRで増幅されると予想される配列番号28で表される塩基配列の一部又は全部を含有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0244】
5’末端を標識するレポーター蛍光物質としてはカルボキシフルオレセイン(FAM)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、Cy5、VIC等が挙げられるが、中でもFAMがよく用いられる。3’末端を標識するクエンチャー色素としては、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)等の蛍光物質、Black Hole Quencher色素(例えばBHQ2),4-((4-(dimethylamino) phenyl)azo)benzoic acid (DABCYL)等の非蛍光物質が挙げられるが、中でもTAMRAがよく用いられる。
【0245】
リアルタイムPCR検出法に用いられるその他のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、DNAポリメラーゼ等の試薬は、通常のリアルタイムPCRで用いられているものを用いればよく、リアルタイムPCRの手法は、本発明のプライマー及びプローブを用いる以外は、リアルタイムPCRの一般的なプロトコルに従って行えばよい。
【0246】
本発明に係るTaqMan
TMリアルタイムPCR検出法によるM.アビウムの検出方法の一例として、本発明のプライマー「12Fw_1」と「12Rv_1」を用いて、M.アビウムを検出する場合を例にとって説明すると、以下の通りである。
【0247】
まず、公知の方法により、M.アビウムを検出すべき試料(被検試料)中から精製DNA試料を得る。
【0248】
別に、DNAシンセサイザーを用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号14で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(12Fw_1)、及び配列番号15で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(12Rv_1)を合成する。
【0249】
また、12Fw_1及び12Rv_1をプライマーとして用いたPCRで増幅されると予想される配列番号28の塩基配列から、プローブとして利用するための配列を設計し、この塩基配列のオリゴヌクレオチドを合成する。このオリゴヌクレオチドの5'末端にレポーター色素のFAMを、3’末端にレポーター消光体のTAMRAを常法により結合し、蛍光標識プローブを得る。
【0250】
上記で調製した12Fw_1をフォワードプライマーとして、12Rv_1をリバースプライマーとして用い、例えば下記の通りリアルタイムPCRを行う。
【0251】
すなわち、各 0.1〜2μM、好ましくは各1μMのプライマー12Fw_1及びプライマー12Rv_1、100〜1000nMの蛍光標識プローブ、1.0〜4.0mM MgCl
2、KCl、BSA、コール酸ナトリウム、0.005〜0.2%TritonX-100、夫々0.2mM程度のdATP、dCTP、dGTP、dTTP、10〜80単位/mlのTaq DNA ポリメラーゼを含有する10mM Tris-HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とする。このPCR用反応液20μlに精製DNA試料1ngを加え、PCR用試料を得る。このPCR用試料を96穴反応プレートのウェルに入れ、リアルタイムPCR検出装置等を用いてリアルタイムPCRを行う。反応は30〜50回サイクル繰り返し、1サイクル毎にレポーター色素の蛍光強度量を測定する。
【0252】
この場合のM.アビウム検出方法としては、レポーター色素由来の蛍光が測定された場合に、被検試料はM.アビウム陽性と判定される。
【0253】
また、リアルタイムPCR法では、検量線を作成することができるので、試料中のM.アビウムのゲノムDNAの数(コピー数)を得ることがでる。また、その数はM.アビウムの数に比例するので、試料(被検試料)中のM.アビウムの数も知ることができる。
【0254】
検量線の作成方法は、リアルタイムPCR法において通常行われている常法に従えばよい。例えば、標準としてコピー数既知のM.アビウムのゲノムDNA試料を用い、希釈系列の濃度(コピー数)のPCR用DNA試料を調製する。次いで各希釈系列のPCR用DNA試料を用いて上記方法に従いリアルタイムPCRを行い、レポーター色素由来の蛍光強度を測定する。各希釈系列のPCR用DNA試料毎に、PCRの各サイクル数(x軸)に対する、測定した蛍光強度の測定値(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成する。次いで、蛍光強度が指数関数的に増幅しているRn部を選択し、Threshold line(Th)を引く。Thと各PCR用DNA試料の増幅曲線が交差した点をThreshold cycle(Ct)値とする。次いで用いた各PCR用DNA試料のコピー数の対数値(x軸)に対するCt値(y軸)をプロットし、各Ctに対して得られた近似曲線を検量線とすればよい。
【0255】
先に記載した、インターカレーター法によるリアルタイムPCRを行た場合も、得られた測定値を基に同様に検量線を作成することができる。例えば、PCRの各サイクル数(x軸)に対するインターカレーター由来の蛍光強度の測定値(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成する。次いで、上記と同じ方法でCt値を得、リアルタイムPCRに用いた各PCR用DNA試料のコピー数の対数値(x軸)に対するCt値(y軸)をプロットし、各Ctに対して得られた近似曲線を検量線とすればよい。
【0256】
試料中のM.アビウムのゲノムDNAの数(コピー数)を定量するには、先ずM.アビウムを検出すべき試料中からDNAを分離精製した後、得られたDNA試料についてリアルタイムPCRを行い、同様に増幅曲線を作成する。検量線を作成したときのThと得られた増幅曲線が交差したCt値を得る。そのCt値を検量線に当てはめることにより、試料中のM.アビウムのゲノムDNA量(コピー数)を得ることができる。
【0257】
(A−3)核酸増幅反応を行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいて行う方法
【0258】
この方法としては、例えば
「下記工程を包含することを特徴とする、M.アビウムの検出方法、
(i)配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー(本発明のプライマー)として用い、試料中の核酸を鋳型として核酸増幅反応を行う、
(ii)(i)で得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、その結果に基づいてM.アビウムの有無を判定する。」
が挙げられる。
【0259】
電気泳動を行い、その結果に基づいて、M.アビウムの有無を判定する方法としては、例えば
(A−3−1)目的とする大きさ(塩基対数)のプライマー伸長産物画分を確認することにより判定する方法、
(A−3−2)標識プローブを用いたハイブリダイゼーションにより検出する方法、
等が挙げられる。
【0260】
核酸増幅反応の具体例は、上記したとおりである。
【0261】
電気泳動法の条件、操作方法等は、この分野で通常行われている常法に従えばよい。
【0262】
以下に、(A−3−1)及び(A−3−2)の方法について説明する。
【0263】
(A−3−1)目的とする大きさ(塩基対数)のプライマー伸長産物画分を確認することにより判定する方法
【0264】
例えば、まず本発明のプライマーから、適当なフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを選択し、それを用いてPCR等の核酸増幅反応を行う。次いで、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。予め、核酸増幅反応に用いたフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せから、増幅されるであろうプライマー伸長産物の大きさ(塩基対数)を予測しておき、得られた電気泳動画分が予測された大きさのプライマー伸長産物に該当するか否かを、常法により確認すればよい。例えば、得られた電気泳動画分をエチジウムブロマイド等で染色して核酸種を視覚化するといった方法で、該画分を染色し、そのプライマー伸長産物の大きさを確認する等の方法が挙げられる。
【0265】
(A−3−1)の方法による具体的な判定方法としては、例えば上記の表1に記載されたフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、そのプライマーの組合せで増幅されると予想される、表1に記載の配列番号で表される塩基配列のオリゴヌクレオチド、又はその塩基対数の大きさの画分が確認された場合に、被検試料はM.アビウム陽性と判定する方法が挙げられる。
【0266】
(A−3−1)の方法の具体例を、下記表3にまとめて示す。
【0267】
すなわち、例えば表3における番号1の方法とは「フォワードプライマーとして配列番号6で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを用い、リバースプライマーとして配列番号7で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行い、119塩基対の画分又は配列番号24で表される塩基配列を持つオリゴヌクレオチドの画分が確認されたものを陽性と判定する方法。」である。
【0268】
【表3】
【0269】
以上の中でも番号1、3〜6、9、17〜24、26〜35、39〜61の方法が好ましい。
これらの中でも、番号39〜61の方法が、特に好ましい。
【0270】
(A−3−2)標識プローブを用いたハイブリダイゼーションにより検出する方法
【0271】
例えば核酸増幅反応を行って得られたプライマー伸長産物について、電気泳動を行う。得られた電気泳動画分について、本発明のプローブを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行う。該標識プローブの標識を検出することによって、該標識プローブとハイブリダイズした画分の存在が確認された場合に、その被検試料は、M.アビウム陽性と判定する方法が挙げられる。
【0272】
用いられるプローブ及びプローブを標識する標識物質の具体例、並びにプローブの標識方法は、上記したとおりである。
【0273】
その一例を示すと、次の通りである。すなわち、上記した表1に記載のフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。予め、PCRに用いたフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せで増幅されると予測される、表1に記載の配列番号の塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブを調製しておく。電気泳動画分の該標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分の存在が確認された場合に、その被検試料はM.アビウム陽性と判定する方法、が挙げられる。
【0274】
これらの方法の好ましい具体例を、下記表4にまとめて示す。
【0275】
例えば、表4において、番号1の方法とは、「フォワードプライマーとして配列番号6で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを用い、リバースプライマーとして配列番号7で表される塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行った後、得られたプライマー伸長産物について電気泳動を行う。次いで、得られた画分について、配列番号24で表される塩基配列の一部又は全部を含有する塩基配列を含有するオリゴヌクレオチドを標識物質で標識した標識プローブに対するハイブリダイゼーションを行い、該標識プローブの標識を検出することによって該標識プローブとハイブリダイズした画分が確認されたものを陽性と判定する方法。」である。
【0276】
【表4】
【0277】
以上の中でも、番号1、3〜6、9、17〜24、26〜35,39〜61の方法が好ましい。
【0278】
これらの中でも、特に番号39〜61の方法が好ましい。
【0279】
(A−3)の方法による本発明のM.アビウムの検出方法の詳細を、例えば12Fw_1(配列番号14)をフォワードプライマーとして用い、12Rv_1(配列番号15)をリバースプライマーとして用いたPCR、及び電気泳動を行った後、目的とする塩基対数のプライマー伸長産物画分を確認する方法によって検出する場合(上記の(A−3−1)の番号5の方法、表3参照)を例に挙げて説明すると、以下の通りである。
【0280】
まず、公知の方法により、M.アビウムの有無を検出すべき試料(被検試料)中から精製DNA試料を得る。
【0281】
別に、DNAシンセサイザーを用いてホスホアミダイト法にて、12Fw_1(配列番号14で表される配列からなるオリゴヌクレオチド)及び12Rv_1(配列番号15で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド)を合成する。
【0282】
各0.1〜2μM、好ましくは各1μMのプライマー12Fv_1及びプライマー12Rv_1、1.0〜4.0mM MgCl
2、KCl、BSA、コール酸ナトリウム、0.005〜0.2%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、夫々0.1〜0.6mM程度のdATP、dCTP、dGTP、dTTP及び10〜80単位/mlのTaq DNA ポリメラーゼを含有する10mM Tris-HCl(pH8.9)緩衝液を調製し、PCR用反応液とする。
【0283】
PCR用反応液に精製DNA試料を添加したものをPCR用試料として用い、DNAサーマルサイクラーにて、20〜40回PCRを行う。得られたPCR後の反応液を、1.5%アガロースゲル電気泳動する。次いでエチジウムブロマイド染色した後、紫外線での蛍光を検出する。また、分子量マーカーも反応液と同時に泳動し、相対泳動度の比較により、検出されたDNA断片の長さを算出する。フォワードプライマーとして12Fw_1(配列番号14で表される配列を持つ。)、及びリバースプライマーとして12Rv_1(配列番号15で表される配列を持つ。)を用いたPCRでは、M.アビウムの塩基配列中の150塩基対のDNA断片(配列番号28で表される配列を持つ。)が複製されると予測される(表3参照)。そこで、150塩基対の大きさの蛍光バンドが確認された場合に、被検試料はM.アビウム陽性と判定すればよい。
【0284】
また本発明は、核酸増幅工程において、RNA転写産物を利用した検出法を適用する事ができる。例えば、NASBA(nucleic acid sequence based amplification)法(特許第2650159号)、3SR(self-sustained sequence replication)法(特公平7-114718号)、TAS(transcription based amplification system)法(特表平2-500565号:国際公開WO88/10315号)、TMA(transcription mediated amplification)法(特開平11-46778号)などが挙げられる。中でも逆転写酵素及びRNAポリメラーゼの協奏的作用(逆転写酵素及びRNAポリメラーゼが協奏的に作用するような条件下で反応させる。)を利用する一定温度核酸増幅法は、測定系を自動化する場合には適した方法である。
【0285】
(A−4)標識プライマーを用いた核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物の標識を測定する方法、
【0286】
(A−4)の方法としては、本発明のプライマーを上記した方法で標識した標識プライマーを用い、被検試料中の核酸を鋳型として用いてPCR等の核酸増幅反応を行い、得られたプライマー伸長産物の標識を検出・測定し、標識を検出できた場合には、その被検試料はM.アビウム陽性であると判定する方法が挙げられる。
【0287】
この方法に用いられるフォワードプライマー及びリバースプライマーとしては、上記のPCR法において用いられるものが挙げられ、その好ましい具体例及び好ましい組合せも上記したとおりである。
【0288】
上記方法の場合、核酸増幅反応を行ったのち、遊離の標識プライマーを除き、プライマー伸長産物の標識を測定し、標識を検出できた場合に、被検試料はM.アビウム陽性であると判定される。
【0289】
遊離の標識プライマーを除く方法としては、核酸増幅反応反応を行って得られた反応物中のプライマー伸長産物を、核酸を沈殿させる常法(エタノール沈殿法、イソプロパノールを用いた沈殿法等)により沈殿させた後、沈殿しなかった遊離の標識プライマーを含有する上清を除去する方法等が挙げられる。
【0290】
また、核酸増幅反応を行って得られた反応物を適当な条件下、ゲルクロマトグラフィーで処理して、プライマー伸長産物と遊離の標識プライマーを分離する方法、電気泳動法により分離する方法等も挙げられる。
【0291】
(B)本発明のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識したものを標識プローブとして用いる方法、
【0292】
更に、本発明のM.アビウムの検出方法として、本発明のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識したものを標識プローブとして用い、該標識プローブを試料中の核酸とハイブリダイゼーションさせ、遊離の標識プローブを除いた後、ハイブリダイズした複合体の標識を検出する方法が挙げられる。
【0293】
具体的には、例えば下記のような方法が挙げられる。
【0294】
(B−1)本発明のオリゴヌクレオチドを固相担体に結合させたものを捕捉プローブとして用い、被検試料中の核酸とハイブリダイゼーションさせて、試料中のM.アビウム由来の核酸を固相上に固定化させる検出法(例えば、特開昭62-265999号の記載参照)。この場合、本発明のオリゴヌクレオチドあるいは固相担体が、標識物質で標識されていてもよい。
【0295】
(B−2)標識されていない(B-1)の捕捉プローブと、本発明のプローブを標識した標識プローブを用い、被検試料中の核酸とハイブリダイゼーションさせて、固相担体上に補足プローブとM.アビウム由来の核酸と標識プローブの複合体を形成させて、標識プローブの標識を測定するサンドイッチアッセイ(例えば、特開昭58-40099号の記載参照)を行う方法。
【0296】
(B−3)ビオチンで標識した本発明のプローブを用い、試料中の核酸とハイブリダイゼーション後、試料中のM.アビウム由来の核酸をアビジン結合担体で捕捉する方法。
【0297】
尚、本発明のM.アビウムの検出方法に用いられる試薬中には、通常この分野で用いられる試薬類、例えば緩衝剤、安定化剤、防腐剤等であって、共存する試薬等の安定性を阻害せず、PCR等の核酸増幅反応やハイブリダイゼーション反応を阻害しないものを用いることができる。また、その濃度も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
【0298】
緩衝液の具体例を挙げると、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等、通常のPCR等の核酸増幅反応やハイブリダイゼーション反応を実施する場合に用いられている緩衝液は全て挙げられ、そのpHも特に限定されないが、通常5〜9の範囲が好ましい。
【0299】
また、必要に応じて核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素など)、酵素に応じた基質(dNTP、rNTPなど)、また二本鎖インターカレーター(エチジウムブロマイド、SYBR
TM Greenなど)あるいはFAMやTAMRA等の標識検出物質などが用いられる。
【0300】
本発明に係るM.アビウム検出用試薬キットとしては、「配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマー(本発明のプライマー)又は/及びプローブ(本発明のプローブ)として含んでなるM.アビウム検出用試薬キット。」が挙げられる。
【0301】
上記キットを構成する本発明のプライマー及び本発明のプローブの具体例は、上記した「本発明のプライマー」、「本発明のプローブ」についての説明に記載したとおりである。
【0302】
本発明のプライマーは標識物質で標識されたものであってもよい。その標識物質の具体例は上記したとおりである。
【0303】
本発明のプライマーを含んでなるキットには、フォワードプライマーとリバースプライマーの一組のプライマーを含む組成も含まれる。その例を下記表5にまとめて示す。
【0304】
例えば、下記表5において、番号1のキットとは、「(a)配列番号6で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号6で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーと、(b)配列番号7で表される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号7で表される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマー、を構成試薬として含んでなるもの。」である。
【0305】
【表5】
【0306】
更に好ましいプライマー、及びその組み合わせは、上記した核酸増幅法の説明に記載したとおりである。
【0307】
また、上記キットは、更に、本発明のオリゴヌクレオチドを標識物質で標識したものを標識プローブとして含んでいてもよい。
【0308】
更に、「配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列の一部若しくは全部、又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135及び配列番号136から選択される塩基配列に対する相補配列の一部若しくは全部を含有し、且つM.アビウム遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(本発明のオリゴヌクレオチド)をプローブとして含んでなるM.アビウム検出用試薬キット。」が挙げられる。該プローブは標識物質で標識されたものであってもよい。
【0309】
これらのキットを構成する構成試薬の好ましい態様及び具体例は上記したとおりである。
【0310】
尚、本発明のM.アビウムの検出用試薬キットには、例えば緩衝剤、安定化剤、防腐剤等であって、共存する試薬等の安定性を阻害せず、PCRやハイブリダイゼーション反応を阻害しないものが含まれていてもよい。また、その濃度も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
【0311】
緩衝液の具体例を挙げると、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等、通常のPCRやハイブリダイゼーション反応を実施する場合に用いられている緩衝液は全て挙げられ、そのpHも特に限定されないが、通常5〜9の範囲が好ましい。
【0312】
また、必要に応じて核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素など)、酵素に応じた基質(dNTP、rNTPなど)、また二本鎖インターカレーター(SYBR
TM Green、エチジウムブロマイドなど)あるいはFAMやTAMRA等の標識検出物質などを含んでいてもよい。
【0313】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
【0314】
尚、実施例で用いられる細菌はいずれも臨床分離株であり、培養後、コロニーの形状や従来の各種生化学的試験などによって菌種がすでに鑑別されているものである。
【実施例】
【0315】
実施例1.M.アビウムゲノム由来のクローンの選択1
(1)M.アビウム由来DNA試料の調製
Mycos Research社(米国)より、高純度に精製された
Mycobacterium avium TMC16741株由来のgenomic DNAを入手した。
【0316】
入手したM.アビウム由来genomic DNA 試料1〜10ngを材料(鋳型)として用い、Genomiphi V2 DNA Amplification Kit(GE ヘルスケア バイオサイエンス社製)を使用して全ゲノム増幅反応を行い、100μg以上の増幅産物を得た。この増幅産物を、「M.アビウム由来精製ゲノムDNA」として、以下の実験に使用した。尚、得られたM.アビウム由来精製ゲノムDNAは、吸光度測定レベルでの純度が良好であることを確認している。
【0317】
また、このM.アビウム由来精製ゲノムDNAを、最終400ng/μl(10mM Tris-HCl緩衝液、pH8.9)になるように調製したものを、「M.アビウム由来DNA試料」として用いた。
【0318】
(2)Whole Genome Shotgun Libraryの作製
上記(1)で得られたM.アビウム由来DNA試料24μgを材料として用い、以下の方法(Science, 2001 Feb 16;291(5507):1304-1351, Venter et al.に記載のWhole Genome Shotgun法を改変)で、Whole Genome Shotgun Libraryの作製を行った。
【0319】
まず、終濃度20%のグリセロール存在下で、M.アビウム由来DNA試料を5kPa〜9kPaの圧力下、ネビュライザー(インビトロジェン社製)を用いて、約10分間処理して、M.アビウム由来DNA試料を断片化した。この処理により、目的とする500〜1000bpのサイズの画分(DNA断片)を効率よく回収する事ができた。得られた画分を(株)キアゲン製の抽出カラムを利用して精製した。
【0320】
次に、タカラバイオ社製のDNA Blunting Kitを用い、T4 DNA Polymeraseの5'→3'polymerase活性と3'→5'exonuclease活性を利用して、得られたDNA断片の末端を平滑化した。このDNA断片と、平滑末端処理済みpBSII sk+ベクター(Stratagene社)とでライゲーション反応を行い、DNA断片をpBSII sk+ベクター(
ampr)に組み込んだ組み換えDNAを作製した。
【0321】
タカラバイオ社製
E. coli JM109 Competent Cellsを用い、その製品プロトコールに従って、上記で得られた組み換えDNAを用いて
E. coli JM109 Competent Cellsの形質転換を行った。得られた形質転換体を100μg/mlのアンピシリン、0.2 mM IPTG、40μg/ml X-Galを含むLB-寒天培地で培養した。白色コロニーをピックアップし、「目的のDNA断片を組み込んだ組み換えDNA」が導入された、形質転換体のLibrary(M.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun clone Library)を得た。
【0322】
(3)マイクロアレイ作製
上記(2)で得られた形質転換体のlibrary(M.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun clone Library)を用い、下記の方法でPCRを行って、スライドガラス上に固定するプローブ材料を調製した。
【0323】
まず、各1μMのプライマーM13 Primer M1(タカラバイオ社製)及びプライマーM13 Primer RV(タカラバイオ社製)、1.5mM MgCl
2、80mM KCl、500μg/ml BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1% Triton X-100(トリトンX-100、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ローム アンド ハース社商品名)、夫々0.2mM のdATP、dCTP、dGTP、dTTP及びTaq DNA ポリメラーゼ((株)ニッポン・ジーン製)40単位/ml を含有する10mM Tris-HCl緩衝液(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0324】
上記(2)で得られた形質転換体(M.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun clone )のそれぞれから、常法に従いDNAを精製した。この精製したDNA(テンプレートとなる)をPCR用反応液20μlに懸濁添加したものを調製し、PCR用試料とした。このPCR試料を用い、MJ Research社のDNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200)を使用して、下記の反応条件で30サイクル PCRを行った。
【0325】
PCR反応条件:
熱変性: 94℃、0.5分
アニーリング:55℃、1分
重合反応: 75℃、0.5分。
【0326】
得られたPCR増幅産物を精製後、固定化Buffer(終濃度3x SSC)と混合した。
【0327】
スポットされるPCR増幅産物の終濃度が300ng/μLとなるように調整し、装置内の湿度を55%に設定したタイピング用装置(GTMAS Stamp II; 日本レーザ電子社製)を使用し、スライドガラス(CMT GAPS-II; Corning社製)上に、上記で得られたPCR産物をスポットした(スポット径150-250μm)。スポットが終了したスライドガラスをUVクロスリンカー(UV Stratalinker1800; Stratagene社製)に移し、150mJ/cm
2のUV照射を行なって、PCR増幅産物(目的のDNA)をスライドガラス上に固定化し、マイクロアレイ(M.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun clone Libraryを材料としたマイクロアレイ、合計1600クローン)を作製した。
【0328】
(4)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
i)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
BioPrime DNA labeling system(インビトロジェン社製)を利用し、標的ゲノムDNAの蛍光色素標識を行った。
【0329】
まず、上記(1)で得られたM.アビウム由来精製ゲノムDNA 2μgに、製品中のrandom primer solution 20μLを混合した後、熱変性(95℃、5分間)処理を行い、サンプル溶液を得た。別に、M.イントラセルラー(ATCC 13950)から常法によりゲノムDNAを抽出・精製し(対照用ゲノムDNA)、同様に処理を行い、サンプル溶液を得た。
【0330】
次いで、得られたサンプル溶液夫々に、0.1M DTT 2μl、dATP/dCTP/dGTP(各5mM)の混合液 2μl、2.5mM dTTP 0.8μl、5mM Ha-dUTP 1.6μl、Klenow酵素(40U/μL) 1μlを添加し、total volume=50μLとなるように脱イオン化滅菌水を加え、37℃で3時間の伸長反応を行った。マイクロコンYM-30(ミリポア社製)の限外ろ過カラムを付属の1.5ml チューブにセットし、上記で得られた反応産物をカラムにのせ、14,000rpm で4 分遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。
【0331】
乾燥させた上記反応産物に50mM NaHCO
3 を10μl 加え混合し、2〜3 分常温で静置した(以下、「反応産物溶液」と称する。)。
【0332】
別に、1mg のCy5(アマシャムバイオサイエンス株式会社)またはCy3(アマシャムバイオサイエンス株式会社)を105μl のDMSO に溶かしたものを調製した(Cy-dye Solution Cy3、Cy-dye Solution Cy5)。このCy-dye Solution Cy5 10μl をM.アビウム由来ゲノムDNAを用いて得られた上記反応産物溶液に加え、同様に40℃で60 分インキュベート(遮光)した。また、Cy-dye Solution Cy3 10μl を対照用ゲノムDNA(M.イントラセルラー由来)を用いて得られた上記反応産物溶液に加え、40℃で60 分インキュベート(遮光)した。
【0333】
さらに、インキュベート後の、夫々の上記反応産物溶液に、4M NH
2OH(使う直前に作成する)を10μl 加え、攪拌後、15 分インキュベート(遮光)を行い、夫々の標識産物、すなわちM.アビウム由来ゲノムDNAをCy5で標識した標識産物、及びM.イントラセルラー由来ゲノムDNAをCy3で標識した標識産物を得た。
【0334】
マイクロコンYM-30(ミリポア社製)の限外ろ過カラムを付属の1.5ml チューブにセットし、上記で得られた各ゲノムDNAの標識産物をカラムにのせ、14,000rpmで4分遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。
【0335】
ii)標識産物の断片化工程
上記(4) i)で得られた乾燥状態の各ゲノムDNAの標識産物に対して、終濃度が0.04M Tris-acetate(pH8.1)、0.1M 酢酸カリウム、0.03M酢酸マグネシウム四水和物の組成の溶液40μLを調製したものを加え、懸濁混和させた。次いで94℃で15 分間加熱処理し、100base〜300 base の、各ゲノムDNAの標識産物の、断片化生成物を得た。
【0336】
なお、BcaBEST DNA Polymerase(タカラバイオ社製)及びrBst DNA Polymerase(EPICENTRE社製)を用いてラベル化効率(base/dye)を調べた結果、Cy3標識の実験結果では、M.イントラセルラー由来の対照用ゲノムを材料とした標識産物(DNAフラグメント)の約28塩基にdye 1分子が取り込まれていることを確認している。また、Cy5標識の実験結果では、M.アビウム由来ゲノムを材料とした標識産物(DNAフラグメント)DNAの約36塩基にdye 1分子が取り込まれていることを確認している。
【0337】
得られたCy5標識産物溶液及びCy3標識産物溶液の各々をマイクロコンYM-10(ミリポア社製)の限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4 分遠心した後、濃縮液を同一のマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。次いで、このマイクロチューブに以下の試薬を加え、懸濁混和させ、標識産物の乾燥物を溶解させた。以上の操作により、M.アビウム由来ゲノムDNACy5標識産物の断片化生成物と、M.イントラセルラー由来の対照用ゲノムDNACy3標識産物の断片化生成物との、Cy3Cy5標識産物混合溶液が得られた。
【0338】
ArrayHyb Hybridization buffer(SIGMA社製);40μL
salmon sperm DNA(10mg/mL) ;0.5μL
formamide ;5μL
Total 40〜50μL
得られたCy3Cy5標識産物混合溶液を95℃で5 分インキュベートし、ハイブリダイゼーションまで70℃に保っておいた。
【0339】
(5)マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション
上記(3)の工程で得られた、M.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun clone Libraryのマイクロアレイ上に、上記(4)ii)で調製したCy3Cy5標識産物混合溶液を全てのせ、気泡が入らないようにカバーガラスをかぶせた。これをハイブリカセットにセットし、タッパーに蒸留水で湿らせたキムタオルをひいたものの上にのせて密閉し、遮光下に65℃で8 時間以上反応させてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイをカバーグラスごと2×SSC-0.1%SDS 溶液に室温で浸し、溶液中でマイクロアレイを静かに揺らしてカバーグラスをはずした。次いで1×SSC、0.03%SDS溶液(60℃)で10 分間洗浄、 0.2×SSC 溶液(42℃)で10 分間洗浄、0.05×SSC溶液(室温)で10 分間洗浄した後、新しい乾いたラックにマイクロアレイをすばやく移し、すぐに800prm で5 分間遠心を行って乾燥させた。
【0340】
(6)蛍光強度の測定:シグナル検出から数量化まで
蛍光読み取りスキャナー GenePix 4000B(Axon Instruments Inc.製)を用いて、上記(5)で得られた、マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション処理したマイクロアレイ上の蛍光強度を測定した。この際、Cy3標識産物とCy5標識産物の競合ハイブリダイゼーションの結果を解析するため、2チャンネル、すなわち2ch(Cy3、Cy5)での蛍光を検出した。
【0341】
蛍光シグナル(蛍光検出データ)の数量化は日立ソフト社製のDNASIS
TM-Array(DNAチップ発現イメージ解析ソフトウェア)を用い、ソフトの操作手順に従って、スポット自動認識、バックグラウンド計算、蛍光強度比の正規化を行った。また、信頼性限界ラインを定め、それ以下の領域のデータは扱わないようにして、正規化され信頼性のある蛍光強度(比)を求めた。
【0342】
さらに、マイクロアレイ上で検出されたCy3/Cy5の蛍光強度比(Ratio)を基に、常法に従い、散布図(スキャッタープロット)解析を行った。
【0343】
すなわち、あるマイクロアレイ上のスポットのCy3に対するCy5の蛍光強度比が高い場合には、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、Cy5標識産物、即ちM.アビウム由来のゲノムDNAとより強くハイブリダイズしたことを示す。他方、あるスポットのCy3に対するCy5の蛍光強度比が低い場合は、そのスポットのDNA断片は、M.アビウム由来のゲノムDNAに対する特異性が低く、Cy3標識産物、すなわちM.イントラセルラー由来の対照用ゲノムDNAとの交叉反応が観察された(M.イントラセルラー由来の対照用ゲノムDNAとハイブリダイズした)ことを示す。
【0344】
この方法で、マイクロアレイの全てのスポットの蛍光強度比を算出した。そして、蛍光強度が高く、且つCy3に対するCy5の蛍光強度比が高いスポットを選択した。
【0345】
その結果、M.アビウム由来のゲノムDNAとより強くハイブリダイズした24クローンを、候補クローンとして選択した。
【0346】
(7)候補クローンの塩基配列決定
次に、上記(6)で選択された候補24クローンについて、下記の方法で塩基配列決定を行った。
【0347】
すなわち、Big Dye Terminatorキット(アプライドバイオシステムズ社製)を使用し、製品プロトコールに従い以下の手順でシークエンス解析を行った。
【0348】
候補DNA(候補クローン) ;2μL(100ng)
M13 Primer M1 ;1μL(5pmol)
premix ;8μL
上記の混合物に、総volume=20μLとなるように脱イオン化滅菌水を加え、MJ Research社のDNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200)を使用して、下記の反応条件で30サイクルのPCRを行った。
96℃ 2 min → (96℃ 10sec→50℃ 5sec→60℃ 4min)×25 →4℃
【0349】
得られたPCR産物をQIAGEN社製ゲルろ過カラムで精製後、MJ Research社製のシークエンサー(BaseStation)を用い、機器付属の手順書に従い候補クローンの塩基配列すべてのシークエンス(塩基配列)解読を完了した。
【0350】
得られた結果をデータベース(NCBI BLAST及びCHEMICAL ABSTRACT)で検索した結果、データベース上では候補の24クローンの塩基配列は、未登録の新規な配列であることが推定できた。
【0351】
実施例2.候補クローン13のM.アビウム特異性評価
(1)本発明のプライマーの合成
まず、上記した実施例1で決定された候補の24クローンのうち、候補クローン13のシークエンス(塩基配列)の解析結果に基づき、その候補配列13から、プライマーデザイン用のWebツールPrimer3(Whitehead Institute for Biomedical Research.)を用いてPCRに用いるためのプライマー配列、すなわち「5’−AAGGCTCATGGCTACCAAGTC−3’」(配列番号14。以下、12Fw_1と呼ぶ)、及び「5’−TGGCCGAGTTCGTGATTCT−3’」(配列番号15。以下、12Rv_1と呼ぶ)を設計した。
【0352】
尚、シークエンスの解析結果から得られた、候補クローン13の塩基配列は、配列番号4で表されるものである。また、そのクローンID番号をR11_2dと付番した(発明者が命名した。以下同じ)。
【0353】
次に、ABI社DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、設計したオリゴヌクレオチドを合成した。合成はABI社マニュアルに従った。各種オリゴヌクレオチドの脱保護はオリゴヌクレオチドのアンモニア水溶液を55℃で一夜加熱することにより実施した。
【0354】
次いでファルマシア社製FPLCを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを行い、合成オリゴヌクレオチドを精製した。この合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた。
【0355】
(2)DNA試料の調製
以下に示す各細菌のDNA試料を、それぞれ下記の方法で調製した。
【0356】
a:
Escherichia coli (
E. coli、大腸菌)(ATCC11775)
b:
Mycobacterium tuberculosis(マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ヒト型結核菌)(TMC102[H37Rv])
c:
Mycobacterium kansasii(M.カンサシ)(ATCC12478)
d:
Mycobacterium marinum(マイコバクテリウム・マリナム)(ATCC927)
e:
Mycobacterium simiae(マイコバクテリウム・シミアエ)(ATCC25275)
f:
Mycobacterium scrofulaceum(マイコバクテリウム・スクロフラセウム)(ATCC19981)
g:
Mycobacterium gordonae(マイコバクテリウム・ゴルドネア)(ATCC14470)
h:
Mycobacterium szulgai(マイコバクテリウム・スズルガイ)(ATCC35799)
i:M.アビウム(TNC16741)
j:M.イントラセルラー(マイコバクテリウム・イントラセルラー)(ATCC13950)
k:
Mycobacterium gastri(マイコバクテリウム・ガストリ)(ATCC15754)
l:
Mycobacterium xenopi(マイコバクテリウム・ゼノピ)(ATCC19250)
m:
Mycobacterium nonchromogenicum(マイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム)(ATCC19530)
n:
Mycobacterium terrae(マイコバクテリウム・テレ)(ATCC15755)
o:
Mycobacterium triviale(マイコバクテリウム・トリビアレ)(ATCC23292)
p:
Mycobacterium fortuitum(マイコバクテリウム・フォーチュイタム)(ATCC6841)
q:
Mycobacterium chelonei(マイコバクテリウム・セロネイ)(ATCC35752)
r:
Mycobacterium abscessus(マイコバクテリウム・アプセッサス)(ATCC19977)
s:
Mycobacterium peregrinum(マイコバクテリウム・ペレグリナム)(ATCC14467)
【0357】
まず、
Mycobacterium tuberculosisとM.アビウムは、Mycos Research, LLCから精製ゲノムDNAを入手し、それを精製DNAとして用いた。
【0358】
それ以外の細菌については、American Type Culture Collection (ATCC)から菌株を入手し、下記の方法でDNAを抽出・精製した。細菌はいずれも臨床分離株であり、培養後、コロニーの形状や従来の各種生化学的試験などによって菌種がすでに鑑別されているものである。
【0359】
すなわち、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属細菌については、まず、小川培地上のコロニーを精製水に懸濁し、オートクレーブ処理(120℃・2気圧、20分)した。次いで菌体を粉砕処理(直径2mmガラスビーズによる物理的破砕)した後、遠心分離し、上清を得た。得られた上清から、(株)キアゲン製のイオン交換樹脂タイプ DNA抽出精製キットGenomic-tipを用いてDNAの抽出、精製を行った。
【0360】
また、大腸菌については、大腸菌のDNA抽出方法の常法に従い、DNAを抽出、精製した。
【0361】
得られたそれぞれの精製DNAを、最終1ng/μl(10mM Tris-HCl緩衝液、pH8.9)になるように調製し、DNA試料とした。
【0362】
(3)リアルタイムPCR
上記(1)で設計、合成した12Fw_1をフォワードプライマーとして、12Rv_1をリバースプライマーとして用い、下記の通りPCRを行った。
【0363】
i)PCR用反応液の調製
上記(1)で得られたプライマー12Fw_1及び12Rv_1を各300nM、SYBR
TM Green I (Molecular Probe社商品名)を原液の30倍希釈(最終濃度は原液の30000倍希釈)、1.5mM MgCl
2 、80mM KCl、500μg/ml BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1% TritonX-100、それぞれ0.2mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP、及びTaq DNA ポリメラーゼ(ニッポンジーン製)40単位/ml を含有する10mM Tris-HCl(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0364】
ii)リアルタイムPCR
PCRにおける増幅ターゲットとなる鋳型DNAとして、上記(2)で調製した各マイコバクテリウム属細菌由来又は大腸菌由来のDNA試料を用い、以下の通り、インターカレーション法によるリアルタイムPCRを行い、蛍光の定量モニタリングを行った。
【0365】
まず、上記(3)i)で調製したPCR用反応液20μlに、上記(2)で調製したDNA試料1μL(1ng)を添加し、PCR用試料とした。
【0366】
そのPCR用試料を、96 穴反応プレート(マイクロアンプ・オプチカル・96ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqMan
TM PCR専用サーマルサイクラー・検出器(ABI 7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。すなわち、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃ で1分間の反応を40サイクル繰り返し、プライマー伸長産物の増幅量と相関してインターカレーションするSYBR
TM Green Iの蛍光強度を測定した。
【0367】
尚、フォワードプライマー12_Fw1、及びリバースプライマー12_Rv1を用いた上記のリアルタイムPCRにより、鋳型として用いたDNA試料中に候補クローン13の塩基配列が存在すれば、M.アビウムゲノムDNA中に存在する候補クローン13の塩基配列中の、配列番号28で表される配列(150塩基対)のDNA断片が複製され、蛍光が検出されると予測される。
【0368】
(4)融解曲線解析
各DNA試料に対して各々増幅されてきた産物について、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成し、ピークの検出を行った。
【0369】
(5)結果
各DNA試料について得られた融解曲線解析の結果を1つのグラフにまとめて、
図1に示す。
【0370】
図1の結果から明らかな如く、本発明のプライマー12_Fw1、及びプライマー12_Rv1を用いて、SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った結果、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いた場合のみに、核酸増幅の結果生じる蛍光が確認でき(
図1:M.avium)、陽性と判定できた。
【0371】
これに対し、
図1から明らかな如く、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属細菌や他の属の細菌である大腸菌由来のDNAを鋳型として用いて、同じプライマーの組合せを用いて同様にリアルタイムPCRを行った場合には、該当する蛍光が確認できず(
図1:other species)、すべて陰性と判定できた。
【0372】
更に、
図1から明らかな如く、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いた場合の融解曲線解析の結果、単一の明瞭なピークが得られたことから、行った検出法は、M.アビウムに極めて特異性の高い、検出方法であることが判る。
【0373】
以上のことから、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRに用いることにより、M.アビウムを特異的に検出することが出来ることが判る。また、PCRなどの核酸増幅による検出は高感度が期待できるため、細菌を単離する必要がなく、臨床材料をそのまま検出に用いることが可能であるため、従来の細菌を培養してから検出する方法では培養に数週間かかっていたM.アビウムの検出を、長くても1日以内に終わらせることができることが判る。
【0374】
実施例3.その他の候補クローンのM.アビウム特異性評価1
(1)本発明のプライマーの合成
実施例1で決定された候補の24クローンのうち、候補クローン08のシークエンス(塩基配列)の解析結果に基づき、その候補配列08から、プライマーデザイン用のWebツールPrimer3(Whitehead Institute for Biomedical Research.)を用いてPCRに用いるためのプライマー配列、すなわち「5’−cattgtgcgctgcttatgac−3’」(配列番号6。以下、003Fw_1と呼ぶ)及び「5’−gaagtgaatcggccttgct−3'」(配列番号7。以下、003Rv_1と呼ぶ)を設計した。
【0375】
尚、シークエンスの解析結果から得られた、候補クローン08の塩基配列は、配列番号1で示されるものである。また、そのクローンID番号をR07_12qと付番した。
【0376】
次いで、実施例2(1)と同じ機器を用い、同様の方法で、設計したリゴヌクレオチドを合成・精製した。この合成オリゴヌクレオチドを本発明のプライマーとして用いた。
【0377】
同様の方法で、他の候補クローンの塩基配列をもとに、下記のプライマーを設計した。
【0378】
(i)候補配列09(配列番号2、クローンID番号 R07_7a)をもとに、「5’−tgcaggtcgtgtagtcctc−3’」(配列番号10、以下、「007Fw_1」と呼ぶ)及び「5’−aaggtcgagttgcgcttg−3’」(配列番号11、以下、「007Rv_1」と呼ぶ)を設計した。
【0379】
(ii)候補配列12(配列番号3、クローンID番号 R11_12b)をもとに、「5’−accagttgatgttgccttcc−3’」(配列番号12、以下、「11Fw_1」と呼ぶ)及び「5’−tctcgatcttcaccgtcagtt−3’」(配列番号13、以下、「11Rv_1」と呼ぶ)を設計した。
【0380】
(iii)候補配列13(配列番号4、クローンID番号 R11_2d)をもとに、「5’−acctcaacccaggctacaga−3’」(配列番号16、以下、「12Fw_4」と呼ぶ)及び「5’−gaataagggaaagtgcatacga−3’」(配列番号17、以下、「12Rv_4」と呼ぶ)を設計した。
【0381】
(iv)候補配列22(配列番号5、クローンID番号 R16_6h)をもとに、「5’−agggcgaacaaaacgatctac−3’」(配列番号22、以下、「04Fw_1」と呼ぶ)及び「5’−cccaaaacaacttctgcctct−3’」(配列番号23、以下、「04Rv_1」と呼ぶ)を設計した。
【0382】
次いで、実施例2(1)と同様の方法で、設計した各オリゴヌクレオチドを合成・精製した。この合成オリゴヌクレオチドを本発明のプライマーとして用いた。
【0383】
(2)DNA試料の調製
実施例2(2)で用いたのと同じ細菌を用い、実施例2(2)と同様の方法で、DNA試料を調製した。
【0384】
(3)リアルタイムPCR
上記(1)で設計、合成したプライマーを、下記表6の組み合わせで用いる以外は、実施例2(3)と同様の方法で、リアルタイムPCRを行った。
【0385】
【表6】
【0386】
(4)融解曲線解析
実施例2(4)と同様の方法で、各DNA試料に対して各々増幅されてきた産物について、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成し、ピークの検出を行った。
【0387】
(5)結果
実施例2と同様に、本発明のプライマーを用いて、SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った結果、表6記載のどのプライマーの組み合わせを用いた場合でも、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いてリアルタイムPCRを行った場合のみに、核酸増幅の結果生じる蛍光が確認でき、陽性と判定できた。
【0388】
これに対し、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属細菌や他の属の細菌である大腸菌由来のDNAを鋳型として用いて、表6記載のどの同じプライマーの組合せを用いて同様にリアルタイムPCRを行った場合にも、該当する蛍光が確認できず、すべて陰性と判定できた。
【0389】
更に、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いた場合の融解曲線解析の結果、実施例2の場合と同様、単一の明瞭なピークが得られたことから、行った検出法は、M.アビウムに極めて特異性の高い、検出方法であることが分かる。
【0390】
以上のことから、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRに用いることにより、M.アビウムを特異的に検出することが出来ることが判った。また、PCRなどの核酸増幅による検出は高感度が期待できるため、細菌を単離する必要がなく、臨床材料をそのまま検出に用いることが可能であるため、従来の細菌を培養してから検出する方法では培養に数週間かかっていたM.アビウムの検出を、長くても1日以内に終わらせることができる。
【0391】
実施例4.その他の候補クローンのM.アビウム特異性評価2
(1)本発明のプライマーの合成
実施例1で決定された候補の24クローンのうち、候補クローン10のシークエンス(塩基配列)の解析結果に基づき、その候補配列10から、プライマーデザイン用のWebツールPrimer3(Whitehead Institute for Biomedical Research.)を用いてPCR増幅検出のためのプライマー配列、すなわち「5’−caccggccaatccctaac−3’」(配列番号67。以下、RE10Fw_02と呼ぶ)及び「5’−agcgcgatgcgtagttcc−3'」(配列番号68。以下、RE10Rv_02と呼ぶ)を設計した。
【0392】
尚、シークエンスの解析結果から得られた、候補クローン10の塩基配列は、配列番号39で示されるものである。
【0393】
次いで、実施例2(1)と同じ機器を用い、同様の方法で、設計したリゴヌクレオチドを合成・精製した。この合成オリゴヌクレオチドを本発明のプライマーとして用いた。
【0394】
同様の方法で、他の候補クローンの塩基配列をもとに、プライマーを設計した。
【0395】
各候補配列の名称(番号)、その候補配列の塩基配列の配列番号、その候補配列をもとに設計したプライマーの名称(発明者が命名した。以下同じ。)及びその塩基配列の配列番号、続いて行うPCRにおいて用いたフォワードプライマーとリバースプライマーの組み合わせを表7に併せて示す。また、各候補配列のクローンID番号を、候補配列の名称の下に、( )内に示す。
【0396】
【表7】
【0397】
次いで、実施例2(1)と同様の方法で、設計した各オリゴヌクレオチドを合成・精製した。この合成オリゴヌクレオチドを本発明のプライマーとして用いた。
【0398】
(2)DNA試料の調製
実施例2(2)で用いたのと同じ細菌を用い、同様の方法で、DNA試料を調製した。
【0399】
(3)リアルタイムPCR
上記(1)で調製したプライマーを、上記表7の組み合わせで用いる以外は、実施例2(3)と同様の方法で、リアルタイムPCRを行った。
【0400】
(4)融解曲線解析
実施例2(4)と同様の方法で、各DNA試料に対して各々増幅されてきた産物について、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成し、ピークの検出を行った。
【0401】
(5)結果
実施例2と同様に、本発明のプライマーを用いて、SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った結果、表7記載のどのプライマーの組み合わせを用いた場合でも、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いてリアルタイムPCRを行った場合、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認でき、陽性と判定できた。
【0402】
特に、下記表8のプライマーの組み合わせを用いたリアルタイムPCRが、M.アビウムに対する特異性が高いという結果が得られた。
【0403】
【表8】
【0404】
尚、M.アビウム 104(Kathleen L.Horan, et al., J. Clin. Microbiol., vol.44, No.3, pp.783-789、2006)の全ゲノム配列が、2006年12月12日に大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 日本DNAデータバンクのDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のWeb上で公開された。
【0405】
そこで、実施例4で用いたプライマー及び実施例4で得られた伸長産物の塩基配列を、この
Mycobacterium avium 104の全ゲノム配列と比較したところ、特に下記表9に記載したプライマー対の伸長産物に、M.アビウム 104の全ゲノム配列とマッチングしている部位があることが判った。このことから、本発明に係る候補配列をターゲットとして利用すれば、M.アビウム種の広範な検出を行えることが示唆された。
【0406】
【表9】
【0407】
以上のことから、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRに用いることにより、M.アビウムを特異的に検出することが出来ることが判った。また、PCRなどの核酸増幅による検出は高感度が期待できるため、細菌を単離する必要がなく、臨床材料をそのまま検出に用いることが可能であるため、従来の細菌を培養してから検出する方法では培養に数週間かかっていたM.アビウムの検出を、長くても1日以内に終わらせることができる。
【0408】
実施例5.最小検出感度試験1
リアルタイム検出法を利用し、候補配列13をターゲットとした場合の検出感度の検定を行った。
【0409】
(1)本発明のプライマーの合成
実施例2(1)と同じ機器を用い、同様の操作で12Fw_1、及び12Rv_1のオリゴヌクレオチドを合成した。これをプライマーとして用いた。
【0410】
(2)DNA試料の調製
Mycos Research社(米国)より、高純度に精製されたM.アビウム由来のgenomic DNAを入手した。これを10mM Tris-HCl緩衝液に溶解し、吸光度を測定して試料中のDNA量を測定した。得られたDNA量を、濃度既知のM.アビウムのゲノムDNAを試料として同様に吸光度を測定して得られた測定値と比較することにより、試料中のゲノムDNA量(ゲノムコピー数)を決定した。
【0411】
次いで10mM Tris-HCl緩衝液、pH8.9を用いてDNA試料を10
5, 10
4, 10
3, 10
2, 10, 5, 2.5コピー/μLの希釈系列に希釈したものを調製し、PCR用DNA試料とした。
【0412】
(3)リアルタイムPCR
i)PCR用反応液の調製
上記(1)で得られたプライマー12_Fw1及びプライマー12_Rv1を各300nM、SYBR
TM Green I (Molecular Probe社商品名)を原液の30倍希釈(最終濃度は原液の30000倍希釈)、1.5mM MgCl
2 、80mM KCl、500μg/ml BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1% TritonX-100、各0.2mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP、及びTaq DNA ポリメラーゼ(ニッポンジーン製)40単位/ml を含有する10mM Tris-HCl(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0413】
ii)リアルタイムPCR
PCRにおける増幅ターゲットとなる鋳型DNAとして、上記(2)で調製したM.アビウム由来のPCR用DNA試料を用い、以下の通り、インターカレーション法によるリアルタイムPCRを行い、蛍光の定量モニタリングを行った。
【0414】
まず、上記(3)i)で調製したPCR用反応液20μLに、上記(2)で調製したPCR用DNA試料1μL(1ng)を添加し、PCR用試料とした。
【0415】
そのPCR用試料を、96 穴反応プレート(マイクロアンプ・オプチカル・96ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqMan
TM PCR 専用サーマルサイクラー・検出器(ABI 7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製) を用いてリアルタイムPCRを行った。すなわち、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃ で1分間の反応を40サイクル繰り返し、プライマー伸長産物の増幅量と相関してインターカレーションするSYBR
TM Green Iの蛍光強度を測定した。
【0416】
尚、蛍光強度は、測定に供した96穴反応プレート1プレート毎に、測定に用いたサーマルサイクラーの、相対的な蛍光強度比を数値化する機能を用いて求めた。
【0417】
(4)結果
得られた実験データから、リアルタイムPCR法において行われている常法に従って、検量線を作成した。
【0418】
すなわち、各濃度のPCR用DNA試料毎に、PCRのサイクル数(x軸)に対するSYBR
TM Green Iの蛍光強度(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成した。次いで、蛍光強度が指数関数的に増幅しているRn部を選択し、Threshold line(Th)を引いた。Thと各PCR用DNA試料の蛍光強度が交差した点をThreshold cycle(Ct)値とした。次いで用いた各PCR用DNA試料のゲノムのコピー数(x軸、対数値)に対するCt値(y軸)をプロットし、各Ctに対して得られた近似曲線を検量線とした。得られた検量線を
図2に示す。
【0419】
y=−3.173x+33.00
R
2=0.996
【0420】
以上の結果、まずリアルタイムPCRで蛍光が検出されたことから、本発明に係るオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、リアルタイムPCRを行えば、M.アビウムが検出できることが判った。
【0421】
また、検量線が作成できたことより、本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムPCR法によれば、M.アビウムの定量が可能であることが判った。更に、
図2より、本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムPCR法では、M.アビウムのゲノムDNAが初期量として2.5コピー存在する条件でもM.アビウムの検出が可能である事がわかる。
【0422】
更に、リアルタイムPCR法を利用した場合では、この蛍光強度をリアルタイムでモニタリングするので、鋳型DNAの初期量を正確に定量することができ、M.アビウムの検出に有効である。
【0423】
実施例6.
リアルタイムPCR検出法を利用し、新規候補配列13(候補クローン13の塩基配列、配列番号4で表される塩基配列からなる。)をターゲットとした場合のM.アビウムの検出を行った。
【0424】
(1)本発明のM.アビウム検出用プライマーの合成
実施例2(1)と同じ機器を用い、同様の操作で12Fw_1(配列番号14)、及び12Rv_1(配列番号15)のオリゴヌクレオチドを合成・精製した。
【0425】
(2)PCR用DNA試料の調製
実施例2(2)でM.アビウム菌体から調製したDNA試料を用いた。まず、該DNA試料について、吸光度を測定して試料中のDNA量を測定した。得られたDNA量を、濃度既知のM.アビウムのゲノムDNAを試料として同様に吸光度を測定して得られた測定値と量と比較することにより、試料中のゲノムDNA量(ゲノムコピー数)を決定した。10
8コピー/μlのゲノムDNAが得られた。
【0426】
次いで10mM Tris-HCl緩衝液、pH8.9を用いてDNA試料を10
5, 10
4, 10
3, 10
2, 10, 0コピー/μLの希釈系列に希釈したものを調製し、PCR用DNA試料とした。
【0427】
(3)リアルタイムPCR
i)PCR用反応液の調製
上記(1)で得られたプライマー12_Fw1及びプライマー12_Rv1を各300nM、SYBR Green I (Molecular Probe社)を原液の30倍希釈(x0.3 concentrate、最終濃度は原液の30000倍希釈)、1.5mM MgCl
2、80mM KCl、500μg/ml BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1%TritonX-100、それぞれ0.2mM のdATP、dCTP、dGTP、dTTP、及びTaq DNA ポリメラーゼ(ニッポンジーン製)40単位/ml を含有する10mM Tris-HCl(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0428】
ii)リアルタイムPCR
上記(3)i)で得られたPCR用反応液20μlに、上記(2)で調製したPCR用DNA試料1μLを添加し、PCR用試料とした。
【0429】
このPCR用試料を、96 穴反応プレート( マイクロアンプ・オプチカル・96 ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqMan
TM PCR 専用サーマルサイクラー・検出器(ABI7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製) を用いてリアルタイムPCRを行った。すなわち、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃ で1分間の反応を40サイクル繰り返し、プライマー伸長産物の増幅量と相関してインターカレーションするSYBR Green Iの蛍光強度を測定した。
【0430】
尚、蛍光強度は、測定に供した96穴1プレート毎に、測定に用いたサーマルサイクラーの、反応プレート相対的な蛍光強度比を数値化する機能を用いて求めた。
【0431】
得られた実験データから、リアルタイムPCR法において行われている常法に従い、各PCR用DNA試料毎に、実施例5(4)と同様の方法で、PCRのサイクル数(x軸)に対するレポーター色素の発光強度(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成した。
【0432】
結果を
図3に実線で示す。
【0433】
図3において、(1)〜(6)はそれぞれ以下の場合を示す。
【0434】
(1)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
5コピーで、新規候補配列13をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(2)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
4コピーで、新規候補配列13をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(3)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
3コピーで、新規候補配列13をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(4)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
2コピーで、新規候補配列13をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(5)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10コピーで、新規候補配列13をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(6)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が0コピーで、新規候補配列13をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
【0435】
比較例1.
公知のプライマー配列を使用し、M.アビウムの19キロダルトンタンパク質遺伝子領域をターゲットとした場合のM.アビウムの検出を行った。
【0436】
(1)公知のM.アビウム検出用プライマーの調製
特開平11−69999号(特許文献1、EP0887425)に開示された公知のM.アビウム検出用プライマーMAV19K_F1(配列「5’−cggctgttcgagtggcaacaagtc−3’」、配列番号35)をもとに、プライマー配列「5’−ctgttcgagtggcaacaagtc−3’」(以下、MAV19K_F1sと呼ぶ。配列番号33)を設計し、MAV19K_R1(配列「5’−ccgtcgatgatgaccttggtccc−3’」、配列番号36)をもとに「5’−gtcgatgatgaccttggtcc−3’」(以下、MAV19K_R1sと呼ぶ。配列番号34)を設計した。
【0437】
ここで、特開平11−69999号に開示された公知のM.アビウム検出用プライマーであるMAV19K_F1及びMAV19K_R1を以下のPCRにそのまま用いなかったのは、下記の理由による。
【0438】
すなわち、リアルタイムPCRに使用するプライマーは、あまり長い塩基配列のものは好ましくない。しかし、特開平11−69999号の出願された当時は、リアルタイムPCRの技術が確立されていなかったことにもよるが、特開平11−69999号に開示されたプライマーMAV19K_F1及びMAV19K_R1は、リアルタイムPCRに使用するには少し長めで、また、その塩基配列から、このままリアルタイムPCRに使用した場合、プライマー同士がアニールしてプライマーダイマーを形成し、その結果、PCR増幅効率の低下を引き起こす等の問題が生じる可能性が高いと考えられた。
【0439】
そこで、リアルタイムPCRに使用するのに都合のよい長さのプライマーを得るため、本発明者は、特開平11−69999号に開示されたプライマーMAV19K_F1の塩基配列の5’側の3つの塩基「cgg」を削除した配列であるMAV19K_F1s、及びMAV19K_R1の5’側の2つの塩基「cc」を削除した配列であるMAV19K_R1sを設計した。
【0440】
実施例2(1)と同じ機器を用い、同様の操作で、設計したMAV19K_F1s(配列番号33)及びMAV19K_R1s(配列番号34)のオリゴヌクレオチドを合成・精製した。
【0441】
(2)PCR用DNA試料の調製
実施例6で調製したものと同じものを用いた。
【0442】
(3)リアルタイムPCR
上記(1)で調製したMAV19K_F1sをフォワードプライマーとして、MAV19K_R1sをリバースプライマーとして用る以外は、実施例6(3)と同様の方法で、リアルタイムPCRを行った。
【0443】
得られた実験データから、リアルタイムPCR法において行われている常法に従い、各PCR用DNA試料毎に、実施例5(4)と同様の方法で、PCRのサイクル数(x軸)に対するレポーター色素の発光強度(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成した。
【0444】
結果を
図3に波線で示す。
【0445】
図3において、(7)〜(12)はそれぞれ以下の場合を示す。
【0446】
(7)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
5コピーで、M.アビウムの19キロダルトンタンパク質遺伝子領域をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(8)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
4コピーで、M.アビウムの19キロダルトンタンパク質遺伝子領域をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(9)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
3コピーで、M.アビウムの19キロダルトンタンパク質遺伝子領域をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(10)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10
2コピーで、M.アビウムの19キロダルトンタンパク質遺伝子領域をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(11)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が10コピーで、M.アビウムの19キロダルトンタンパク質遺伝子領域をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
(12)PCR用DNA試料中の初期DNAの濃度が0コピーで、M.アビウムの19キロダルトンタンパク質遺伝子領域をターゲットとしてリアルタイムPCRを行った場合。
【0447】
(4)結果
以上の結果より、本発明のプライマー12Fw_1と12Rv_1を用い、新規候補配列13をターゲットとしてM.アビウムの検出を行った場合(実施例6)と、特開平11-69999号に開示された公知のプライマーを用い、公知のM.アビウムの持つ配列をターゲットとした場合(比較例1)で、リアルタイムPCRによるM.アビウム検出法を比較した。
【0448】
図3の結果から明らかなごとく、いずれのDNA試料(10
5, 10
4, 10
3, 10
2, 10, 0コピー/μLの希釈系列)を対象とした場合においても、実施例6で得られた増幅曲線の立ち上がりが、比較例1で得られた増幅曲線の立ち上がりと比較して4サイクル程度早いことがわかる。このことから、実施例6の方法は、比較例1の方法と比較して約10〜20倍程度増幅効率の高い検出法であることが考察できる。
【0449】
以上のことから、本発明のプライマーを用い、本発明の新規候補配列13をターゲットとした検出方法の方が、公知の特開平11-69999号に記載されたプライマーを用い、公知の配列をターゲットとした場合に比較して、明らかに核酸増幅効率の優れている検出法であることが明らかである。
【0450】
実施例7.M.アビウムゲノム由来のクローンの選択2
(1)M.アビウム由来DNA試料の調製
まず、M.アビウムの基準株である
Mycobacterium avium IID 585 (日本細菌学会より分譲された。国立大学法人 東京大学 医科学研究所 感染症国際センター 病原微生物資源室由来)を精製水に懸濁し、オートクレーブ処理(120℃・2気圧、20分)した。次いで、菌体を粉砕処理(直径2mmガラスビーズによる物理的破砕)した後、遠心分離し、上清を得た。得られた上清から、(株)キアゲン製のイオン交換樹脂タイプ DNA抽出精製キットGenomic-tipを用いてDNAの抽出、精製を行い、M.アビウム(
Mycobacterium avium IID 585)由来の精製ゲノムDNAを得た。
【0451】
得られたM.アビウム由来精製ゲノムDNAを、最終400ng/μl(10mM Tris-HCl緩衝液、pH8.9)になるように調製し、それを「M.アビウム由来DNA試料」として用いた。
【0452】
(2)Whole Genome Shotgun Libraryの作製とマイクロアレイの作製
上記(1)で得られたM.アビウム由来DNA試料24μgを材料として用い、上記実施例1(2)〜(3)と同じ試薬を用い、同様の方法で、Whole Genome Shotgum Libraryの作製、マイクロアレイ(M.アビウム由来ゲノムのWhole Genome Shotgun clone libraryのマイクロアレイ、合計1000クローン)を作製した。
【0453】
(3)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
i)標的ゲノムDNAの蛍光色素標識
BioPrime DNA labeling system(インビトロジェン社製)を利用し、標的ゲノムDNAの蛍光色素標識を行った。
【0454】
まず、上記(1)で得られたM.アビウム由来精製ゲノムDNA 2μgに、製品中のrandom primer solution 20μLを混合した後、熱変性(95℃、5分間)処理を行い、サンプル溶液を得た。別に、M.イントラセルラー(ATCC 13950)から常法によりゲノムDNAを抽出・精製し(対照用ゲノムDNA)、同様に処理を行い、サンプル溶液を得た。
【0455】
次いで、得られたサンプル溶液夫々に、0.1M DTT 2μl、dATP/dCTP/dGTP(各5mM)の混合液 2μl、2.5mM dTTP 0.8μl、5mM Ha-dUTP 1.6μl、Klenow酵素(40U/μL) 1μlを添加し、total volume=50μLとなるように脱イオン化滅菌水を加え、37℃で3時間の伸長反応を行った。マイクロコンYM-30(ミリポア社製)の限外ろ過カラムを付属の1.5ml チューブにセットし、上記で得られた反応産物をカラムにのせ、14,000rpm で4 分遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。
【0456】
乾燥させた上記反応産物に50mM NaHCO
3 を10μl 加え混合し、2〜3 分常温で静置した(以下、「反応産物溶液」と称する。)。
【0457】
別に、1mg のAlexa647(インビトロジェン社製)またはAlexa555(インビトロジェン社製)を105μl のDMSO に溶かしたものを調製した(dye Solution Alexa647、 dye Solution Alexa555)。この、dye Solution Alexa647 10μl をM.アビウム由来ゲノムDNAを用いて得られた上記反応産物溶液に加え、40℃で60 分インキュベート(遮光)を行った。また、dye Solution Alexa555 10μl を対照用ゲノムDNA(M.イントラセルラー由来)を用いて得られた上記反応産物溶液に加え、同様に40℃で60 分インキュベート(遮光)した。
【0458】
さらに、インキュベート後の、夫々の上記反応産物溶液に、4M NH
2OH(使う直前に作成する)を10μl 加え、攪拌後、15 分インキュベート(遮光)を行い、夫々の標識産物、すなわちM.アビウム由来ゲノムDNAをAlexa647で標識した標識産物、及びM.イントラセルラー由来ゲノムDNAをAlexa555で標識した標識産物を得た。
【0459】
マイクロコンYM-30(ミリポア社製)の限外ろ過カラムを付属の1.5ml チューブにセットし、上記で得られた各ゲノムDNAの標識産物をカラムにのせ、14,000rpmで4分遠心した後、濃縮液をマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。
【0460】
ii)標識産物の断片化工程
上記(3) i)で得られた乾燥状態の各ゲノムDNAの標識産物に対して、終濃度が0.04M Tris-acetate(pH8.1)、0.1M 酢酸カリウム、0.03M酢酸マグネシウム四水和物の組成の溶液40μLを調製したものを加え、懸濁混和させた。次いで94℃で15 分間加熱処理し、100base〜300 base の、各ゲノムDNAの標識産物の、断片化生成物を得た。
【0461】
なお、間接標識法を利用してラベル化効率(base/dye)を調べた結果、Alexa647に関しては、約100〜200塩基にdye1分子が取り込まれることを確認している。また、Alexa555に関しては、約150塩基にdye 1分子が取り込まれることを確認している。
【0462】
得られたAlexa647標識産物溶液及びAlexa555標識産物溶液の各々をマイクロコンYM-10(ミリポア社製)の限外ろ過カラムにのせ14000rpm で4 分遠心した後、濃縮液を同一のマイクロチューブに回収して、真空乾燥遠心機(CentriVap concentrator; LABCONCO社製)で完全に乾燥させた。次いで、このマイクロチューブに以下の試薬を加え、懸濁混和させ、標識産物の乾燥物を溶解させた。以上の操作により、M.アビウム由来ゲノムDNA Alexa647標識産物の断片化生成物と、M.イントラセルラー由来の対照用ゲノムDNA Alexa555標識産物の断片化生成物との、Alexa555Alexa647標識産物混合溶液が得られた。
【0463】
ArrayHyb Hybridization buffer(SIGMA社製);40μL
salmon sperm DNA(10mg/mL) ;0.5μL
formamide ;5μL
Total 40〜50μL
【0464】
得られたAlexa555Alexa647標識産物混合溶液を95℃で5 分インキュベートし、ハイブリダイゼーションまで70℃に保っておいた。
【0465】
(4)マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション
上記(3)の工程で得られたAlexa555Alexa647標識産物混合溶液を用いる以外は、上記実施例1(5)と同様の方法で、上記(2)で得られたM.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun clone libraryのマイクロアレイに対する、Alexa555標識産物とAlexa647標識産物の競合ハイブリダイゼーションを行った。
【0466】
(5)蛍光強度の測定:シグナル検出から数量化まで
蛍光読み取りスキャナー GenePix 4000B(Axon Instruments Inc.製)を用いて、上記(4)で得られた、マイクロアレイ・ハイブリダイゼーション処理したマイクロアレイ上の蛍光強度を測定した。この際、Alexa555標識産物とAlexa647標識産物の競合ハイブリダイゼーションの結果を解析するため、2チャンネル、すなわち2ch(Alexa555、Alexa647)での蛍光を検出した。
【0467】
また、上記実施例1(6)と同様の装置を用い、得られた蛍光シグナル(蛍光検出データ)の数量化を行った。
【0468】
さらに、マイクロアレイ上で検出されたAlexa555/ Alexa647の蛍光強度比(Ratio)を基に、常法に従い、散布図(スキャッタープロット)解析を行った。
【0469】
この場合は、すなわち、あるマイクロアレイ上のスポットのAlexa555に対するAlexa647の蛍光強度比が高い場合には、そのスポットのDNA断片(PCR産物)は、Alexa647標識産物、即ちM.アビウム由来のゲノムDNAとより強くハイブリダイズしたことを示す。他方、あるスポットのAlexa555に対するAlexa647の蛍光強度比が低い場合は、そのスポットのDNA断片は、M.アビウム由来のゲノムDNAに対する特異性が低く、Alexa555標識産物、すなわちM.イントラセルラー由来の対照用ゲノムDNAとの交叉反応が観察された(M.イントラセルラー由来の対照用ゲノムDNAとハイブリダイズした)ことを示す。
【0470】
この方法で、マイクロアレイの全てのスポットの蛍光強度比を算出した。そして、蛍光強度が高く、且つAlexa555に対するAlexa647の蛍光強度比が高いスポットを選択した。
【0471】
(6)その他のM.アビウム株(strain)を用いた二次検出
下記表10に記載のM.アビウム菌株各種(日本細菌学会より分譲された)を用い、上記(1)と同様の方法で、各菌株から「M.アビウム由来DNA試料」を調製した。
【0472】
【表10】
【0473】
次いで、上記(3)i)〜ii)と同様の方法で、各M.アビウム菌株由来ゲノムDNAをAlexa647で標識した標識産物を得、その断片化産物を得た。
【0474】
また、上記(3)i)〜ii)と同様の方法で、M.イントラセルラー由来ゲノムDNAをAlexa555で標識した標識産物を得、その断片化産物を得た。
【0475】
それから、上記(3)i)〜ii)と同様の方法で、各M.アビウム菌株由来ゲノムDNA Alexa647標識産物の断片化生成物と、M.イントラセルラー由来の対照用ゲノム Alexa555標識産物の断片化生成物の、Alexa555Alexa647標識産物混合溶液を得た。
【0476】
得られた各Alexa555Alexa647標識産物混合溶液を用い、実施例7(2)で得られたM.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun cloneのマイクロアレイに対する、Alexa647標識産物とAlexa555標識産物の競合ハイブリダイゼーション、及び蛍光強度の測定を、上記(4)〜(5)と同様の方法で行った。
【0477】
さらに、上記(5)と同様の方法で、マイクロアレイ上で検出されたAlexa555/ Alexa647の蛍光強度比(Ratio)を基に、常法に従い、散布図(スキャッタープロット)解析を行った。
【0478】
得られた解析結果に基づいて、上記(5)と同様の方法で、マイクロアレイの全てのスポットの蛍光強度比を算出し、蛍光強度が高く、且つAlexa555に対するAlexa647の蛍光強度比が高いスポットを選択した。
【0479】
(7)候補クローンの選択
以上の結果を基に、コンセンサス配列としての候補を選択する上での一つの目安として、上記(6)の検出で、これらのM.アビウム菌株とハイブリダイズし、且つ上記(5)の検出で、M.イントラセルラーとはハイブリダイズしなかったスポットをM.アビウム由来ゲノムDNAのWhole Genome Shotgun cloneのマイクロアレイ上から選択した。その結果、7つのスポット(候補クローン)が選択された。
【0480】
(8)候補クローンの塩基配列決定
次に、上記(7)で選択された候補7クローンについて、実施例1(7)と同様の方法でシークエンス解析を行い、それぞれのクローンの塩基配列決定を行った。
【0481】
決定された各候補クローンの候補配列の名称、クローンID番号、および塩基配列の配列番号を下記表11にまとめて示す。
【0482】
【表11】
【0483】
実施例8.候補配列DのM.アビウム株間保存性評価1
(1)本発明のプライマーの合成
実施例7(8)で決定された候補クローンのうち、候補クローンDのシークエンス(塩基配列)の各解析結果に基づき、その候補配列Dから、プライマーデザイン用のWebツールPrimer3(Whitehead Institute for Biomedical Research.)を用いて、PCRに用いるためのプライマー配列、すなわち「5'−AGTGGGCAACAATCCAAGAG−3'」(配列番号159、以下、「Mac_12 Fw01」と呼ぶ。)、及び「5'−CCCGACACAACGAGGTTT−3'」(配列番号160,以下、「Mac_12 Rv01」と呼ぶ。)を設計した。
【0484】
次に、ABI社DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、設計したオリゴヌクレオチドを合成した。合成手法はABI社マニュアルに従った。各種オリゴヌクレオチドの脱保護はオリゴヌクレオチドのアンモニア水溶液を55℃で一夜加熱することにより実施した。
【0485】
次いでファルマシア社製FPLCを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを行い、合成オリゴヌクレオチドを精製した。この合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた。
【0486】
(2)M.アビウム菌株由来DNA試料の調製
実施例2(2)のマイコバクテリウム属細菌の調製方法に従って、上記表10に記載のM.アビウム菌株を処理し、DNAの抽出、精製を行った。得られたそれぞれの精製DNAを、最終1ng/μl(10mM Tris-HCl緩衝液、pH8.9)になるように調製し、各M.アビウム菌株由来のDNA試料とした。
【0487】
(3)リアルタイムPCR
上記(1)で設計、合成したMac_12Fw01をフォワードプライマーとして、Mac_12Rv01をリバースプライマーとして用い、下記の通りPCRを行った。
【0488】
i)PCR用反応液の調製
上記(1)で得られたプライマーMac_12Fw01及びMac_12Rv01を各300nM、SYBR
TM Green I (Molecular Probe社商品名)を原液の30倍希釈(最終濃度は原液の30000倍希釈)、1.5mM MgCl
2 、80mM KCl、500μg/ml BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1% TritonX-100、dATP、それぞれ0.2mMのdCTP、dGTP、dTTP、及びTaq DNA ポリメラーゼ(ニッポンジーン製)40単位/ml を含有する10mM Tris-HCl(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0489】
ii)リアルタイムPCR
PCRにおける増幅ターゲットとなる鋳型DNAとして、上記(2)で調製した各M.アビウム菌株由来のDNA試料を用い、以下の通り、インターカレーション法によるリアルタイムPCRを行い、蛍光の定量モニタリングを行った。
【0490】
まず、上記(3)i)で調製したPCR用反応液20μlに、上記(2)で調製したDNA試料1μL(1ng)を添加し、PCR用試料とした。
【0491】
該PCR用試料を、96 穴反応プレート(マイクロアンプ・オプチカル・96ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqMan
TM PCR専用サーマルサイクラー・検出器(ABI 7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。すなわち、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃ で1分間の反応を40サイクル繰り返し、プライマー伸長産物の増幅量と相関してインターカレーションするSYBR
TM Green Iの蛍光強度を測定した。
【0492】
尚、フォワードプライマーMac_12Fw01とリバースプライマーMac_12Rv01を用いた上記のリアルタイムPCRにより、鋳型として用いた各M.アビウム株のゲノムDNA中に候補クローンDの塩基配列が存在すれば、候補クローンDの塩基配列中の、配列番号194で表される配列(193塩基)のDNA断片が複製され、蛍光が検出されると予測される。
【0493】
(4)融解曲線解析
各DNA試料に対して各々増幅されてきた産物について、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成し、ピークの検出を行った。
【0494】
(5)結果
各DNA試料について得られた融解曲線解析の結果を1つのグラフにまとめて、
図4に示す。
【0495】
図4の結果から明らかな如く、本発明のプライマーMac_12Fw01及びプライマーMac_12Rv01を用い、10種類のM.アビウム株から得られたDNA試料それぞれを鋳型として用いてリアルタイムPCRを行い、SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った結果、いずれの場合でも、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認できた(
図4:
M.avium)。しかも、得られたシグナルのピークはいずれも単一ピークであった。更にピークの位置は、ほぼ重っていた。
【0496】
別に、上記(1)〜(4)と同様の方法で、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属菌(
M. chimaera及び
M.velatum)から得られたDNA試料を鋳型として用い、同じプライマーを用いてPCRを行った。この場合には、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認できなかった(
図4:other species)。
【0497】
以上のことから、本発明のプライマーMac_12Fw01及びプライマーMac_12Rv01を用いてPCRを行えば、上記10種類のM.アビウム株の何れかが存在していればその検出が可能であり、しかもM.アビウム属に特異的な検出が行えることが判る。そして、このことからターゲットとした候補配列Dは、M.アビウムのコンセンサス配列である可能性が高いことも示唆された。
【0498】
実施例9.その他の候補クローンのM.アビウム株間における塩基配列の保存性評価
実施例7(8)で決定された候補クローンA〜Gのシークエンス(塩基配列)の解析結果に基づき、その各候補クローンの候補配列A〜Gから、プライマーデザイン用のWebツールPrimer3(Whitehead Institute for Biomedical Research.)を用いて、PCR増幅検出のためのプライマー配列をそれぞれ設計した。
【0499】
候補配列の名称及びその候補配列の塩基配列の配列番号、その候補配列をもとに設計したプライマーの名称(発明者が命名)及びその塩基配列の配列番号、更にこの後行うPCRで用いた、フォワードプライマーとリバースプライマーの組み合わせを、表12にまとめて示す。
【0500】
【表12】
【0501】
次いで、実施例8(1)と同様の方法で設計した各オリゴヌクレオチドを合成、精製した。この合成オリゴヌクレオチドを本発明のプライマーとして用い、表12記載のフォワードプライマーとリバースプライマーの組み合わせで、実施例8(2)〜(4)と同様の方法で、DNA試料の調製、リアルタイムPCR、融解曲線解析を行った。
【0502】
その結果、いずれのプライマーの組み合わせを用いてリアルタイムPCRを行った場合も実施例8の
図4と同様の融解曲線が得られた。すなわち、表12記載のプライマーの組み合わせを用い、10種類のM.アビウム株から得られたDNA試料それぞれを鋳型として用いてリアルタイムPCRを行った。SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った。その結果、いずれの場合でも、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認できた。得られたシグナルのピークはいずれも単一ピークであった。しかもピークの位置は、ほぼ重っていた。
【0503】
また、実施例8と同様に、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属菌(
M. chimaera及び
M.velatum)から得られたDNA試料を鋳型として用い、同じプライマーを用いてPCRを行った。この場合には、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認できなかった。
【0504】
以上のことから、表12に記載された本発明のプライマーを用いてPCRを行えば、上記10種類のM.アビウム株の何れかが存在していればその検出が可能であり、しかもM.アビウム属に特異的な検出が行えることが判る。
【0505】
すなわち、本発明のプライマーを用いれば、複数の血液型のM.アビウムを、一回の測定で、他のマイコバクテリウム属細菌と区別して、検出することが出来ることが判る。
【0506】
そして、このことからターゲットとした候補配列A〜Gは、いずれもM.アビウムのコンセンサス配列である可能性が高いことも示唆された。
【0507】
実施例10.候補クローンDのM.アビウム特異性評価
(1)プライマーの合成
実施例8(1)と同じ機器を用い、同様の操作で、Mac_12Fw01、及びMac_12Rv01のオリゴヌクレオチドを合成、精製した。
【0508】
(2)DNA試料の調製
以下に示す、実施例2で用いたのと同じ細菌を用い、実施例2(2)と同様の方法で調製したDNA試料を得た。
【0509】
a:
Escherichia coli (
E. coli、大腸菌)(ATCC11775)
b:
Mycobacterium tuberculosis(マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ヒト型結核菌)(TMC102[H37Rv])
c:
Mycobacterium kansasii(M.カンサシ)(ATCC12478)
d:
Mycobacterium marinum(マイコバクテリウム・マリナム)(ATCC927)
e:
Mycobacterium simiae(マイコバクテリウム・シミアエ)(ATCC25275)
f:
Mycobacterium scrofulaceum(マイコバクテリウム・スクロフラセウム)(ATCC19981)
g:
Mycobacterium gordonae(マイコバクテリウム・ゴルドネア)(ATCC14470)
h:
Mycobacterium szulgai(マイコバクテリウム・スズルガイ)(ATCC35799)
i:M.アビウム(IIID 585)
j:M.イントラセルラー(マイコバクテリウム・イントラセルラー)(ATCC13950)
k:
Mycobacterium gastri(マイコバクテリウム・ガストリ)(ATCC15754)
l:
Mycobacterium xenopi(マイコバクテリウム・ゼノピ)(ATCC19250)
m:
Mycobacterium nonchromogenicum(マイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム)(ATCC19530)
n:
Mycobacterium terrae(マイコバクテリウム・テレ)(ATCC15755)
o:
Mycobacterium triviale(マイコバクテリウム・トリビアレ)(ATCC23292)
p:
Mycobacterium fortuitum(マイコバクテリウム・フォーチュイタム)(ATCC6841)
q:
Mycobacterium chelonei(マイコバクテリウム・セロネイ)(ATCC35752)
r:
Mycobacterium abscessus(マイコバクテリウム・アプセッサス)(ATCC19977)
s:
Mycobacterium peregrinum(マイコバクテリウム・ペレグリナム)(ATCC14467)
【0510】
(3)リアルタイムPCR
上記(1)で設計、合成したプライマーMac_12Fw01、及びMac_12Rv01を用いる以外は、実施例2(3)と同様の方法でリアルタイムPCRを行った。
【0511】
(4)融解曲線解析
実施例2(4)と同様の方法で、各DNA試料に対して各々増幅されてきた産物について、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成し、ピークの検出を行った。
【0512】
(5)結果
各DNA試料について得られた融解曲線解析の結果を1つのグラフにまとめて、
図5に示す。
【0513】
図5の結果から明らかな如く、本発明のプライマーMac_12Fw01、及びMac_12Rv01を用いて、SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った結果、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いてリアルタイムPCRを行った場合のみに、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認でき(
図5:
M.avium)、陽性と判定できた。
【0514】
これに対し、
図5から明らかな如く、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属細菌や他の属の細菌である大腸菌由来のDNAを鋳型として用いて、同じプライマーの組合せを用いて同様にリアルタイムPCRを行った場合には、該当する蛍光シグナルが確認できず(
図5:other species)、すべて陰性と判定できた。
【0515】
更に、
図5から明らかな如く、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いた場合の融解曲線解析の結果、単一の明瞭なピークが得られたことから、行った検出法は、M.アビウムに極めて特異性の高い、検出方法であることが判る。
【0516】
以上のことから、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRに用いることにより、M.アビウムを特異的に検出することが出来ることが判る。また、PCRなどの核酸増幅による検出は高感度が期待できるため、細菌を単離する必要がなく、臨床材料をそのまま検出に用いることが可能であるため、従来の細菌を培養してから検出する方法では培養に数週間かかっていたM.アビウムの検出を、長くても1日以内に終わらせることができることが判る。
【0517】
実施例11.その他の候補クローンのM.アビウム特異性評価2
(1)本発明のプライマーの合成
実施例8(1)と同じ機器を用い、同様の操作で、上記表12に記載された、Mac_12Fw01及びMac_12Rv01以外のオリゴヌクレオチドを合成、精製した。
【0518】
この合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた。
【0519】
(2)DNA試料の調製
実施例10で用いたのと同じ細菌を用い、実施例2(2)と同様の方法で、DNA試料を調製した。
【0520】
(3)リアルタイムPCR
上記(1)で設計、合成したプライマーを、上記表12の組み合わせで用いる以外は、実施例2(3)と同様の方法で、リアルタイムPCRを行った。
【0521】
(4)融解曲線解析
実施例2(4)と同様の方法で、各DNA試料に対して各々増幅されてきた産物について、横軸をプライマー伸長産物(2本鎖DNA)の解離温度、縦軸に蛍光強度の1次微分(変化量)をとった融解曲線を作成し、ピークの検出を行った。
【0522】
(5)結果
実施例10の結果と同様、本発明のプライマーを用いて、SYBR Green I存在下で増幅された核酸の融解曲線解析を行った結果、表12記載のどのプライマーの組み合わせを用いた場合でも、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いてリアルタイムPCRを行った場合のみに、核酸増幅の結果生じる蛍光シグナルが確認でき、陽性と判定できた。
【0523】
これに対し、M.アビウム以外のマイコバクテリウム属細菌や他の属の細菌である大腸菌由来のDNAを鋳型として用いて、表12記載のどの同じプライマーの組合せを用いて同様にリアルタイムPCRを行った場合にも、該当する蛍光シグナルが確認できず、すべて陰性と判定できた。
【0524】
更に、M.アビウム由来のDNA試料を鋳型として用いた場合の融解曲線解析の結果、実施例10の場合と同様、単一の明瞭なピークが得られたことから、行った検出法は、M.アビウムに極めて特異性の高い、検出方法であることが分かる。
【0525】
以上のことから、本発明のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRに用いることにより、M.アビウムを特異的に検出することが出来ることが判った。また、PCRなどの核酸増幅による検出は高感度が期待できるため、細菌を単離する必要がなく、臨床材料をそのまま検出に用いることが可能であるため、従来の細菌を培養してから検出する方法では培養に数週間かかっていたM.アビウムの検出を、長くても1日以内に終わらせることができる。
【0526】
実施例12.最小検出感度試験2
リアルタイムPCR検出法を利用し、候補配列Dをターゲットとした場合の検出感度の検定を行った。
【0527】
(1)本発明のM.アビウム検出用プライマーの調製
実施例2(1)と同じ機器を用い、同様の操作でMac_12Fw01、及びMac_12Rv01のオリゴヌクレオチドを合成・精製した。これをプライマーとして用いた。
【0528】
(2)DNA試料の調製
実施例7(1)で、M.アビウム(
Mycobacterium avium IID 585)から調製したDNA試料を用いた。
【0529】
該DNA試料の吸光度を測定して試料中のDNA量を測定した。得られたDNA量を、濃度既知のM.アビウムのゲノムDNAを試料として同様に吸光度を測定して得られた測定値と量と比較することにより、試料中のゲノムDNA量(ゲノムコピー数)を決定した。10
8コピー/μlのゲノムDNAが得られた。
【0530】
次いで10mM Tris-HCl緩衝液、pH8.9を用いてDNA試料を10
5, 10
4, 10
3, 10
2, 10, 5コピー/μLの希釈系列に希釈したものを調製し、PCR用DNA試料とした。
【0531】
(3)リアルタイムPCR
i)PCR用反応液の調製
上記(1)で得られたプライマーMac_12Fw1及びプライマーMac_12Rv1を各300nM、SYBR Green I (Molecular Probe社)を原液の30倍希釈(最終濃度は原液の30000倍希釈)、1.5mM MgCl
2、80mM KCl、500μg/ml BSA、0.1% コール酸ナトリウム、0.1%TritonX-100、それぞれ0.2mM のdATP、dCTP、dGTP、dTTP、及びTaq DNA ポリメラーゼ(ニッポンジーン製)40単位/ml を含有する10mM Tris-HCl(pH8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
【0532】
ii)リアルタイムPCR
上記(3)i)で調製したPCR用反応液20μlに、上記(2)で調製したPCR用DNA試料1μLを添加したものを、PCR用試料とした。
【0533】
このPCR用試料を、96 穴反応プレート( マイクロアンプ・オプチカル・96 ウェル・リアクション・プレート、アプライドバイオシステムズジャパン社製)のウェルに入れ、TaqMan
TM PCR 専用サーマルサイクラー・検出器(ABI7500、アプライドバイオシステムズジャパン社製) を用いてリアルタイムPCRを行った。すなわち、95℃ で10分間保温の後、95℃で15秒間、60℃ で1分間の反応を40サイクル繰り返し、プライマー伸長産物の増幅量と相関してインターカレーションするSYBR Green Iの蛍光強度を測定した。
【0534】
尚、蛍光強度は、測定に供した96穴反応プレート1プレート毎に、測定に用いたサーマルサイクラーの、相対的な蛍光強度比を数値化する機能を用いて求めた。
【0535】
(4)結果
得られた実験データから、リアルタイムPCR法において行われている常法に従って、各PCR用DNA試料毎に、実施例5(4)と同様の方法で、PCRのサイクル数(x軸)に対するSYBR Green Iの蛍光強度(Rn、y軸)をプロットした増幅曲線を作成した。得られた増幅曲線を
図6に示す。
【0536】
次いで、得られた増幅曲線から、下記の方法によって、検量線を作成した。
【0537】
すなわち、得られた増幅曲線(
図6)の、蛍光強度が指数関数的に増幅しているRn部を選択し、Threshold line(Th)を引いた。Thと各PCR用DNA試料の蛍光強度が交差した点をThreshold cycle(Ct)値とした。次いで用いた各PCR用DNA試料のゲノムのコピー数(x軸、対数値)に対するCt値(y軸)をプロットし、各Ctに対して得られた近似曲線を検量線とした。得られた検量線を
図7に示す。
【0538】
y=−3.272x+34.00
R
2=0.994
【0539】
以上の結果、まずリアルタイムPCRで蛍光が検出されたことから、本発明に係るオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、リアルタイムPCRを行えば、M.アビウムが検出できることが判った。
【0540】
また、検量線が作成できたことより、本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムPCR法によれば、M.アビウムの定量が可能であることが判った。更に、
図7より、本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムPCR法では、M.アビウムのゲノムDNAが初期量として5コピー存在する条件でもM.アビウムの検出が可能である事がわかる。
【0541】
また、本法によるPCRの増幅効率は、計算上102.2%となり、高い反応性を確認できた。
【0542】
更に、上記表12に記載された他のプライマーの組み合わせを用いて同様に実験を行った結果、ほぼ同等の成績を得ることが出来た。以上のことから、候補配列A〜Gを標的としてリアルタイムPCRを行うことにより、M.アビウム株の検出及び定量を行うことが出来ることが明らかになった。