【文献】
Clin. Diagn. Lab. Immunol.,2005年,Vol.12 No.11,pp.1285-1291
【文献】
J. Nutr.,1998年,Vol.128,pp.1811-1814
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、関節内注射のために製剤された、関節の刺激若しくは炎症を軽減若しくは低減するため、更なる刺激の結果としての既存の関節の炎症を軽減若しくは低減するため、その既存の炎症の増悪を低減するため又は関節炎を軽減若しくは低減するための注射用医薬製剤を提供することである。
【0006】
より詳細には、本発明により、キシリトールを有効成分として含む、関節内注射のために製剤された、関節の刺激(irritation)を予防するため又は更なる刺激の結果としての既存の関節の炎症(inflammation)の増悪を予防するための注射用医薬製剤が、ここに提供される。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)キシリトールを有効成分として含む、関節内注射のために製剤された、関節の刺激を軽減若しくは低減するため又は更なる刺激の結果としての既存の関節の炎症の増悪を低減するための注射用医薬製剤。
(2)キシリトールが、D−キシリトールである、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(3)キシリトールが、L−キシリトール又はD,L−キシリトールである、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(4)キシリトールの濃度が、水中で0.5%〜10%の間である、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(5)少なくとも1種のポリマーを含有する、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(6)500,000ダルトンを超える分子量を有する陰イオン性ポリマーをさらに含む、非ニュートン剪断減粘性を有するよう製剤された上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(7)陰イオン性ポリマーが、0.01%未満の無機塩の存在下で中和されたヒアルロン酸である、上記(6)に記載の注射用医薬製剤。
(8)中和されたヒアルロン酸の濃度が、0.1%〜5%である、上記(7)に記載の注射用医薬製剤。
(9)陰イオン性ポリマーが、その塩の形態であり、製剤が、無機塩を0.01%未満で含有する、上記(6)に記載の注射用医薬製剤。
(10)いかなる水中油又は水中ワックスエマルジョンも実質的に含まない、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(11)キシリトールが、等張濃度である、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(12)少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は添加剤をさらに含む、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(13)抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、別のポリオール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の更なる医薬剤を含む、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(14)本質的にポリオール有効成分からなり、前記ポリオール有効成分がキシリトールである、上記(1)に記載の注射用医薬製剤。
(15)罹患関節組織に医薬組成物を注射することを含む関節の疾患、障害又は状態を処置する方法であって、前記医薬組成物がキシリトール及び陰イオン性ポリマーを含み、非ニュートン剪断減粘性を示す、方法。
(16)罹患関節組織に医薬組成物を注射することを含む関節の疾患、障害疾患(disorder disease)、障害又は状態を処置する方法であって、前記医薬組成物がキシリトールと、場合により少なくとも1種の第2の治療薬とを含み、前記第2の治療薬が陰イオン性ポリマー、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、第2のポリオール又はそれらの組み合わせを含む、方法。
(17)関節内注射のために製剤される注射用医薬製剤の製造におけるキシリトール及び陰イオン性ポリマーの使用であって、組成物が関節の刺激を軽減若しくは低減するため又は既存の関節の炎症の増悪を低減するために非ニュートン剪断減粘性を示す、使用。
(18)関節内注射のために製剤される注射用医薬製剤の製造におけるキシリトールと場合により少なくとも1種の第2の治療薬との使用であって、前記第2の治療薬が陰イオン性ポリマー、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、第2のポリオール又はそれらの組み合わせを含み、組成物が関節の刺激を軽減若しくは低減するため又は既存の関節の炎症の増悪を低減するために非ニュートン剪断減粘性を示す、使用。
【発明を実施するための形態】
【0007】
幾つかの実施形態において、本発明は、ポリオール有効成分を含み、ポリオール有効成分がキシリトールである、関節内注射のために製剤された、関節の刺激を軽減若しくは低減するため又は更なる刺激の結果としての既存の関節の炎症の増悪を低減するための注射用医薬製剤を提供する。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態において、キシリトールは、D−キシリトールである。本発明の幾つかの実施形態において、キシリトールは、L−キシリトールであり、又は幾つかの実施形態において、キシリトールは、D,L−キシリトールである。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態において、キシリトールの前記濃度は、水中で0.5%〜10%の間である。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記医薬製剤は、少なくとも1種のポリマーを含有する。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態において、前記医薬製剤は、非ニュートン剪断減粘性を有する製剤を提供するように、500,000ダルトンを超える分子量を有する陰イオン性ポリマーをさらに含む。
【0012】
リン酸塩緩衝液などの無機塩の存在下で、ヒアルロン酸ナトリウムなどの陰イオン性ポリマーが、ニュートン粘性プロファイルを示すことは公知である。
【0013】
非ニュートン剪断減粘性プロファイルの利点は、力が加えられると粘性が直ちに、そして急速に降下することである。これに従い、2枚のヒト軟骨の間に1%ヒアルロン酸ナトリウムを用いて前記2枚のヒト軟骨の間の粘着性をインビトロで測定すると、非ニュートン(塩不含)製剤は通常の製剤よりも低い粘着性になった。
【0014】
24回の測定において(負荷:10N、運動速度1mm/秒、温度36〜37℃)、非ニュートン(ポリオールによる等張性)製剤の動粘性係数は、0.03759±0.01481であったが、ニュートン製剤(0.9%塩化ナトリウムによる等張性)の動粘度は、0.04892±0.01370であり、即ち、より粘着性であった。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態において、中和されたヒアルロン酸の濃度は、0.1%〜5%である。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記陰イオン性ポリマーは、その塩の形態であり、前記製剤は、無機塩を0.01%未満含有する。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態において、前記医薬製剤は、いかなる水中油又は水中ワックスエマルジョンも実質的に含まない。
【0018】
本発明の他の実施形態において、前記キシリトールは、等張濃度である。
【0019】
他の実施形態において、前記医薬製剤は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は添加剤をさらに含む。
【0020】
他の実施形態において、前記医薬製剤は、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、別のポリオール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の更なる医薬剤をさらに含む。
【0021】
一実施形態において、該組成物は、抗炎症剤、例えばベタメタゾン、プレドニゾロン、ピロキシカム、アスピリン、フルルビプロフェン及び(+)−N−{4−[3−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロペンテン−1−イル}−N−ヒドロキシ尿素(hyroxyurea)サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、フェノプロフェン、フェナマート、ケトプロフェン、ナブメトン、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダック、トルメチン、エトドラク、ケトロラク、オキサプロジン、若しくはセレコキシブ;抗ウイルス薬、例えばアシクロビル、ネルフィナビル若しくはVirazole;抗生物質、例えばアンピシリン及びペニシリンG、若しくはペニシリンのファミリーに属する抗生物質、セファロスポリン、アミノグリコシド(aminoglycosidics)、マクロライド、カルバペネム及びペネム、単環β−ラクタム、β−ラクタマーゼの阻害剤、テトラサイクリン、ポリペプチド系抗生物質、クロラムフェニコール及び誘導体、フシジン酸、リンコマイシン、ノボビオシン、スペクチノマイシン、ポリエーテル系イオノフォア、キノロン;抗感染薬、例えば塩化ベンザルコニウム若しくはクロルヘキシジン;ダプソン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、ジクロキサシリン、シクラシリン、ピクロキサシリン、ヘタシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG及びペニシリンVをはじめとするペニシリン、チカルシリン(ticarcillin)、リファンピン(rifampin)及びテトラサイクリン;抗炎症剤、例えばジフルニサル、イブプロフェン、インドメタシン、メクロフェナマート、メフェナミン酸、ナプロキセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダック、トルメチン、アスピリン及びサリチラート、フィトスフィンゴシン型薬剤、又はそれらの組み合わせをさらに含む。
【0022】
一実施形態において、該組成物は、ステロイドをさらに含む。一実施形態において、用語「ステロイド」は、天然由来ステロイド及びその誘導体に加え、ステロイド様活性を有する合成又は半合成ステロイドアナログを指す。一実施形態において、該ステロイドは、グルココルチコイド又はコルチコステロイドである。例えばそのようなステロイドの多くは、シクロペンタノフェナントレンに基づくコア縮合環構造を有する。具体的な天然及び合成ステロイドの例としては、非限定的に、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、イコメタゾン、メプレドニゾン、25−メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトール又はトリアムシノロン、及びそれらの各薬学的に許容される塩又は誘導体が挙げられる。そのようなステロイドの組み合わせも、本発明により用いられてもよいことは理解されよう。
【0023】
他の実施形態において、本発明は、関節の刺激又は既存の関節の炎症の増悪を軽減又は低減するための、関節内注射のために製剤された、注射用医薬製剤の製造におけるキシリトールの使用を対象とする。
【0024】
キシリトールは、先行技術において局所抗刺激薬として公知であるが、関節内注射のために配合された場合に関節の刺激又は既存の関節の炎症の増悪の予防に効果的であることは、予測不能であり、また明白でなかった。このことは、身体の関節が滑膜で覆われていること及び硝子軟骨を有する身体の唯一の構造である点で、身体の他の全ての構造と異なっていることが知られていることから、特に予測不能であった。
【0025】
さらに公知の通り、関節は、身体のいかなる他の構造とも異なる吸収速度を示し、それゆえ、関節に対する特定の化合物の影響を、身体の他の箇所に対する前記化合物の影響から知ることはできない。
【0026】
刺激又は既存の関節の炎症の増悪を軽減又は低減するために、好ましい製剤は、ポリマー、例えばカルボマー、ヒアルロン酸塩、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール又はその類似物を含有していてもよい。注射剤の非ニュートン特性を実現するために、陰イオン性ポリマーが用いられ、上述の通り、非ニュートン剪断減粘性の特性との干渉を防止するために、該製剤は、前記陰イオン性ポリマーの塩以外の無機塩をいかなる顕著な濃度でも含有しないであろう。
【0027】
非ニュートン剪断減粘性特性を実現する1つの具体的方法は、等張性キシリトール及び1%ヒアルロン酸ナトリウムを含む調製物を注射することである。
【0028】
該滅菌溶液は、バイアル内に、又は単回注射剤に、又は実用するのに簡便な任意の他の方法で、分配してもよい。
【0029】
幾つかの実施形態において、用語「接触すること」又は「投与すること」は、指示された材料への直接的及び間接的曝露の両方を指す。
【0030】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物及び/又は方法は、細胞、組織又は臓器に投与するための非滅菌又は滅菌の担体又は複数の担体、例えば個体への投与に適した医薬担体を含むか、又は使用する。そのような担体としては、非限定的に、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物及び/又は方法は、水性又は非水性の溶液、懸濁液、エマルジョン又はオイルであってもよい薬学的に許容される担体を含むか、又は使用する。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、生理食塩水及び緩衝された媒体を含めた、水、アルコール/水溶液、エマルジョン又は懸濁液が挙げられる。オイルの例は、石油、動物、植物、又は合成起源のもの、例えばピーナッツオイル、大豆オイル、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油、及び魚肝油である。
【0032】
加えて、本発明の組成物は、結合剤(例えば、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、デンプングリコール酸ナトリウム)、様々なpH及びイオン強度の緩衝剤(例えば、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を妨げるアルブミン又はゼラチンなどの添加剤、洗剤(例えば、Tween20、Tween80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味剤(例えば、アスパルテーム、クエン酸)、保存剤(例えば、Thimerosal、ベンジルアルコール、パラベン)、滑沢剤(lubricants)(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑化剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)、コーティング及び被膜形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩)及び/又はアジュバントをさらに含んでいてもよい。
【0033】
固形担体/希釈剤としては、非限定的に、ガム、デンプン(例えば、コーンスターチ、アルファー化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリラート(例えば、ポリメタクリラート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、又はその混合物が挙げられる。
【0034】
一実施形態において、本発明の組成物は薬学的に許容される。一実施形態において、用語「薬学的に許容される」は、安全であり、本発明における使用のための少なくとも1種の化合物の有効量の所望の投与経路についての適切な送達を提供する任意の製剤を指す。この用語は、化合物の安定性及び投与経路に従って、pH4.0〜pH9.0の範囲内の特定の所望の値にpHが維持される、緩衝された製剤の使用も指す。
【0035】
一実施形態において、適切な薬学的に許容される担体としては、非限定的に、水、塩溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロース又はデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、白色パラフィン、グリセロール、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、コラーゲン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。別の実施形態において、医薬調製物は、滅菌することができ、所望であれば、活性化合物と有害に反応しない助剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、着香剤、及び/又は芳香物質などと混合することができる。別の実施形態において、医薬調製物は、所望であれば、他の活性剤、例えばビタミンと混和することもできる。
【0036】
発明の主旨又は範囲を逸脱することなく、本発明の組成物、使用及び調製物において様々な改良及び変更を施すことができることは、当業者には明白であろう。
【0037】
哺乳動物、特にヒトへの投与については、薬物治療の場合には、医師又は他の適格な健康管理提供者が、個体に最も適しており、特定の個体の年齢、体重及び応答により変動し得る実際の投与量及び処置期間を決定できることは予測される。
【0038】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物のいずれも、本明細書に記載された任意の形態又は実施形態のキシリトールであるポリオール有効成分を含むであろう。幾つかの実施形態において、本発明の組成物のいずれも、本明細書に記載された任意の形態又は実施形態のキシリトールであるポリオール有効成分からなるであろう。幾つかの実施形態において、本発明の組成物のいずれも、本質的に本明細書に記載された任意の形態又は実施形態のキシリトールであるポリオール有効成分からなるであろう。
【0039】
幾つかの実施形態において、用語「含む」は、指示された活性剤、例えばキシリトールを含むことに加え、医薬業界において公知である他の活性剤及び薬学的に許容される担体、賦形剤、エモリエント(emollients)、安定化剤などを含むことを指す。
【0040】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、本質的に本明細書に記載されたキシリトールであるポリオール有効成分からなるであろう。幾つかの実施形態において、用語「本質的に・・・からなる」は、特定の分類の薬剤の唯一の有効成分が指示された有効成分である、即ち、唯一の有効なポリオールがキシリトールであるが、指示された有効成分の治療効果に直接関与する他の化合物が含まれ得る組成物を指す。幾つかの実施形態において、本発明の組成物に関連して、キシリトールであるポリオール有効成分から本質的になる組成物を指す場合、そのような参照は、非ニュートン剪断減粘性を示す製剤を実現するために、具体的には組成物中に0.01%を上回る無機塩を組み入れることを除外する。
【0041】
幾つかの実施形態において、用語「本質的に・・・からなる」は、特定のメカニズムを標的とする、又は特定の経路を介して作用する唯一の有効成分が、指示された有効成分であるが、指示された有効成分の治療効果に直接関与し、例えば指示された薬剤に直接ではないが関係する作用機序を有する他の化合物が含まれ得る組成物を指す。
【0042】
例として、そして本発明の実施形態を代表して、キシリトールであるポリオール有効成分から本質的になる本発明の組成物は、さらに関節の状態の処置を支援する抗炎症剤又は抗感染薬からなってもよいが、この第2の処置はキシリトールの効果に関係しない。
【0043】
幾つかの実施形態において、用語「本質的に・・・からなる」は、唯一の有効成分が指示された有効成分であるが、製剤の安定化、維持などを行うが、指示された有効成分の治療効果に直接関与しない他の化合物が含まれ得る組成物を指す。幾つかの実施形態において、用語「本質的に・・・からなる」は、有効成分の放出を促進する化合物を指す場合がある。幾つかの実施形態において、用語「からなる」は、有効成分及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有する組成物を指す。
【0044】
本明細書に示された医薬組成物は、ヒトへの投与に適している医薬組成物を主として対象とするが、そのような組成物が一般に、全ての種類の動物への投与に適することは、当業者に理解されよう。様々な動物への投与に適した組成物にするための、ヒトへの投与に適した医薬組成物の改良は、十分に理解されており、通常の技能を有する獣医薬理学者は、もし行うとしてもわずかな実験で、そのような改良を設計及び実施することができる。本発明の医薬組成物の投与が企図される対象としては、非限定的に、ヒト及び他の霊長類、並びに他の哺乳動物が挙げられる。
【0045】
幾つかの実施形態において、本発明は、キシリトールであるポリオールと陰イオン性ポリマーとを含み、非ニュートン剪断減粘性を示す医薬組成物を、罹患関節組織に注射することを含む、関節の疾患、障害又は状態を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、関節内注射のために製剤された注射用医薬製剤の製造における、キシリトールであるポリオールと陰イオン性ポリマーとの使用であって、組成物が関節の刺激を軽減若しくは低減するため又は既存の関節の炎症の増悪を低減するために非ニュートン剪断減粘性を示す、使用を提供する。
【0046】
幾つかの実施形態において、本発明は、キシリトールと、場合により陰イオン性ポリマー、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、第2のポリオール又はそれらの組み合わせを含む少なくとも1種の第2の治療薬とを含む医薬組成物を、罹患関節組織に注射することを含む、関節の疾患、障害疾患(disorder disease)、障害又は状態を処置する方法を提供する。
【0047】
幾つかの実施形態において、本発明は、関節内注射のために製剤された注射用医薬製剤の製造における、キシリトールと、場合により陰イオン性ポリマー、抗炎症剤、抗酸化剤、ビタミン、第2のポリオール又はそれらの組み合わせを含む少なくとも1種の第2の治療薬との使用であって、組成物が関節の刺激を軽減若しくは低減するため又は既存の関節の炎症の増悪を低減するために非ニュートン剪断減粘性を示す、使用を提供する。
【0048】
一実施形態において、本発明の組成物は、一過性の状態の急性処置のために急性投与されてもよく、又は特に進行性疾患、再発疾患、又は変性疾患の場合に、慢性的に投与されてもよい。一実施形態において、本発明の1又は2以上の化合物は、同時に投与することができ、又は別の実施形態において、それらは、交互方式で投与されてもよい。一実施形態において、交互方式は、疾患の段階又は相により指定されてもよい。
【0049】
本明細書において用いられる用語「処置すること」は、予防的処置及び障害軽減処置を含む。幾つかの実施形態において、関節の状態、疾患又は障害を処置するための本明細書に記載された組成物の処置/使用の方法は、それを低減、抑制又は阻害することを含む。幾つかの実施形態において、用語「低減すること」、「抑制すること」及び「阻害すること」は、縮小又は減少させることの一般に理解された意味を有する。幾つかの実施形態において、関節の状態、疾患又は障害を処置するための本明細書に記載された組成物の処置/使用の方法は、疾患の進行を停止させることを含む。本明細書において用いられる用語「進行」は、範囲又は重症度の増大、進展、成長、又は増悪を意味する。幾つかの実施形態において、関節の状態、疾患又は障害を処置するための本明細書に記載された組成物の処置/使用の方法は、疾患の再発を予防することを含む。本明細書において用いられる用語「再発」は、寛解後に疾患に戻ることを意味する。
【0050】
本明細書において用いられる用語「投与すること」は、対象を本発明の化合物と接触させることを指す。本明細書において用いられる投与は、インビトロ、即ち試験管内で、又はインビボ、即ち生存している生物、例えばヒトの細胞若しくは組織において達成させることができる。一実施形態において、本発明は、本発明の化合物を対象に投与することを包含する。
【0051】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物、方法及び/又は使用は、関節の刺激を軽減若しくは低減するため、及び/又は関節の炎症を軽減若しくは低減するため、及び/又は関節の軟骨損傷を軽減若しくは低減するため、及び/又は関節炎を軽減若しくは低減するための手段を提供する。
【0052】
一実施形態において、「予防すること」又は「処置すること」は、以下の事柄のいずれか1つ又は2つ以上を指す:症状の発症を遅延させること、症状の重症度を低下させること、急性エピソードの重症度を低下させること、症状の数を減少させること、疾患に関連する症状の発生率を低下させること、症状の潜伏期間を短縮すること、症状を改善させること、二次症状を低減すること、二次感染を低減すること、患者の生存期間を延長すること、疾患の再発を予防すること、再発エピソードの数又は頻度を低減すること、症状エピソード間の潜伏期間を延長すること、持続的進行までの時間を延長すること、寛解を促進すること、寛解を誘導すること、寛解を増進すること、回復を加速すること、又は別の治療の有効性を上昇させること、若しくは別の治療への抵抗性を低下させること。一実施形態において、「処置すること」は、治療的処置及び防護的若しくは予防的手段の両方を指し、その目的は、本明細書の先に記載された標的となる病的状態又は障害を予防又は縮小することである。
【0053】
別の実施形態において、「症状」は、本明細書の先に記載された疾患又は病的状態の任意の徴候であってよい。
【0054】
本発明の化合物及び組成物の投与様式、投与のタイミング及び投与量、即ち処置レジメンは、疾患のタイプ及び重症度、並びに対象の年齢及び状態に依存するであろう。一実施形態において、該化合物及び組成物は、同時に投与してもよい。別の実施形態において、該化合物及び組成物は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、又はそれを超える時間間隔で投与してもよい。
【0055】
本発明を以下の実施例において特定の好ましい実施形態と関連させてここに記載することで、その態様をより完全に理解及び認識することができるが、これらの特定の実施形態の発明を限定することは意図しない。これとは逆に、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲に含まれ得る別法、変形形態及び均等物の全てを包含することを意図する。即ち、好ましい実施形態を含む以下の実施例は、本発明の実践を例示するためのものであり、示された詳細は例であり、本発明の好ましい実施形態の例示的考察のみを目的としており、製剤手順に加え、本発明の原理及び概念的態様の最も有用で容易に理解される記述と考えられるものを立証するために示されていることを理解されたい。
[実施例]
【実施例1】
【0056】
非ニュートン粘性特性を有するヒアルロン酸塩を含む関節内注射剤
ヒアルロン酸塩 1g
キシリトール 4.5g
水を加えて100gにする
pHは約7.0に調整
単回又は連続注射により使用する。
非常に粘性であるが、非ニュートン剪断減粘性特性であるため、注射が容易である。滑沢作用も有する。
【実施例2】
【0057】
ヒアルロン酸塩を含まない関節内注射剤
キシリトール 4.5g
水を加えて100gにする
pHは約7.0に調整
単回又は連続注射により使用する。
【実施例3】
【0058】
脂質を含む関節内注射剤
キシリトール 4.5g
レシチンエマルジョン 1g
水を加えて100gにする
pHは約7.0に調整
単回又は連続注射により使用する。
レシチンは滑沢性を与える。
【実施例4】
【0059】
ヒアルロン酸塩を含む関節内注射剤
ヒアルロン酸塩 1g
キシリトール 3g
緩衝生理食塩水 0.3g
水を加えて100gにする
pHは約7.0に調整
単回又は連続注射により使用する。
【実施例5】
【0060】
抗炎症剤を用いる関節内注射剤
キシリトール 4.5g
酢酸メチルプレドニゾロン 4g(懸濁液中)
緩衝生理食塩水 0.3g
水を加えて100gにする
pHは約7.0に調整
単回又は連続注射により使用する。
【実施例6】
【0061】
非ステロイド系抗炎症剤を用いる関節内注射剤
キシリトール 3.0g
ジクロフェナクナトリウム 0.3g
緩衝生理食塩水 0.3g
水を加えて100gにする
pHは約7.0に調整
単回又は連続注射により使用する。
【実施例7】
【0062】
関節炎又は関節症の関節の処置
体重2〜3kgのウサギの後足の膝関節に、先の実施例に従って、以下の表に記載された通り調製された滅菌溶液を注射した。24時間後、ウサギを屠殺して関節を取り出し、滑膜の組織学的試験を実施した。
以下の組織学的所見それぞれを、0〜3で評価した。
a.滑膜表層過形成
b.フィブリンの存在
c.炎症性浸潤
d.壊死
0.5%SLS 0.25mlを注射したことによる重篤な刺激及び炎症の徴候が見出された(表1参照)。0.5%SLS 0.25mlを含む特定の化合物を注射した場合に、滑膜損傷の軽減が見出された。
【0063】
結果
【0064】
【表1】
【0065】
上記表の結果を参照すると、生理食塩水中0.5%SLSの注射が5.8の結果を与え、それは最大刺激の結果であり、生理食塩水のみの注射が1.4の結果を与え、刺激又は炎症を有さず正常な状態であると見なされることは気付かれよう。
【0066】
表の最後から2番目の行に、公知の抗刺激性抗炎症剤である生理食塩水中1%ヒアルロン酸ナトリウムと混和した0.5%SLS注射の結果が示されており、その結果は0.8であり、生理食塩水の陰性対照単独での結果と有意に異なっていない。
【0067】
気付かれるであろうが、表の最終行に、蒸留水中4.5%キシリトール溶液中0.5%SLSの注射の結果が示されており、その結果は0.4で、同じく生理食塩水陰性対照単独での結果と有意に異なっておらず、実際にキシリトールがこの関連において驚くほど効果的であることを立証している。
【0068】
前記表の4行目から気付かれる通り、キシリトールと類似の構造を有し、それゆえ類似の手法で機能すると予測されたマンニトールの、蒸留水中の単独のものは、3.4の結果を与え、ウサギの膝への関節内注射により注射された場合に、刺激を予防しないことが示されている。同様に、刺激を予防しないことが、同等の状況で検査された幾つかの他のポリオール(例えば、グリセロール又はグルシトール)で示されている(データは示さず)。
【0069】
この理由からも、関節内注射のために配合されたキシリトールが、関節の刺激を予防するのに、又は更なる刺激の結果としての既存の関節の炎症の増悪を予防するのに効果的であることは、驚くべきことであり予測できなかった。
【実施例8】
【0070】
異なる滑沢剤の存在下でのヒト軟骨試料中の摩擦係数の比較
ヒト軟骨試料を得て、ヒト関節摩擦試験を、Merkher Y. et .al., (2006) Tribology Letters 22: 29 - 36に記載された通り実施した。上側のヒト軟骨試料は、およそ4mm口径を有し、下側のヒト軟骨試料は、およそ6mm口径を有していた。試料1d及び2sの2種の滑沢剤を検査した。1dは、等張性塩を含まない非ニュートン粘性プロファイル製剤中の1%ヒアルロン酸ナトリウムに対応し、2sは、等張性生理食塩水の存在下であり、それゆえニュートン粘性プロファイル製剤である1%ヒアルロン酸ナトリウムに対応している。負荷10Nを、距離4mmにわたり温度36〜37℃、速度1mm/sで加えた。
【0071】
表2に、得られた平均動的及び静的摩擦係数を記載する。
【0072】
【表2】
【0073】
滑沢剤2sの存在下では、軟骨試料は、滑沢剤1dの存在下よりもかなり強く、互いに接着した。
【0074】
本発明が前述の例示的実施例の詳細に限定されないこと、及び本発明が本質的特性から逸脱せずに他の特定の形態に具体化され得ることは当業者に明白であり、それゆえ本発明の実施形態及び実施例が、全ての点において例示であり、限定でないと見なされ、前述の記載よりむしろ添付の特許請求の範囲を参照することが望ましく、それゆえ特許請求の範囲の意味及び均等性の範囲内に含まれる全ての変更が、包含されるものとする。