(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板部には、その表面側における前記支点ピンを挟んで前記幅方向の両側の位置に、前記平板部の裏面を支持するレール状の案内部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の梯子用滑り防止具。
前記シュー部材は、前記基端部に位置する第1部材と、その基端部の先端側に位置する第2部材と、前記第1部材と第2部材とを回動自在に連結する折畳回動軸と、前記第1部材と第2部材とを固定的に保持するストッパピンとを備えており、
前記第2部材には、前記第1部材に離接する方向に延在し前記ストッパピンを前記離接する方向に移動自在に案内する長孔が形成されており、
前記第1部材には、その先端縁に、前記ストッパピンが前記長孔に沿って当該第1部材側に移動した際に当該ストッパピンが嵌り込む形状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の梯子用滑り防止具。
前記凹部は、前記第1部材と前記第2部材とが前記基端部から前記先端部まで直線的に延在した状態において、前記ストッパピンが嵌り込むように前記第1部材の先端縁に形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の梯子用滑り防止具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、屋根の縁に沿う方向においても十分に大きな寸法間隔をもって当該屋根に当接することで当該屋根側において安定的に保持することができ、かつ屋根の縁側から奥に向かう方向においても十分に大きな寸法間隔をもって当該屋根に当接することで当該屋根側において安定的に保持することができ、よって屋根の側においてより安定的に保持することができる梯子用滑り防止具及び梯子を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、並列に配置された支柱を有する梯子における前記各支柱を含む仮想面の少なくとも一方の側に着脱自在に取り付けられる梯子用滑り防止具であって、基礎部材と、この基礎部材に設けられた支点ピンと、この支点ピンに回動自在に設けられた荷重伝達部材と、この荷重伝達部材に設けられた押圧部材とを備えており、前記基礎部材は、少なくとも前記支柱の双方に掛け渡すことが可能な幅に形成され、裏面を前記支柱に向けた状態で前記梯子に固定される基板部を有し、前記支点ピンは、その軸線が前記基板部に直交した状態で、当該基板部の幅方向の中央部に配置され、前記荷重伝達部材は、裏面を前記基板部の表面に向けた状態で前記支点ピンの軸線回りに回動自在に設けられた平板部を有し、前記押圧部材は、前記平板部の表面における前記支点ピンを挟んで当該支点ピンの両側に設けられた支持部材と、これらの各支持部材に揺動自在に設けられたシュー部材と、これらの各シュー部材に弾性力を付与する付勢部材とを備えており、前記各支持部材は、当該各支持部材における同一部位を直線状に貫く位置に設けらた揺動支持軸を有し、前記各シュー部材は、その基端部が前記各揺動支持軸に回動自在に連結され、当該揺動支持軸が水平方向に向けられた状態において、その先端部が上下に移動するように構成され、前記各付勢部材は、前記揺動支持軸が水平方向に向けられた状態において、前記各シュー部材の先端部が下方に移動する方向の弾性力を当該シュー部材に作用するように構成されていることを特徴とする梯子用滑り防止具である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基板部には、その表面側における前記支点ピンを挟んで前記幅方向の両側の位置に、前記平板部の裏面を支持するレール状の案内部材が設けられていることを特徴とする梯子用滑り防止具である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記シュー部材は、前記基端部に位置する第1部材と、その基端部の先端側に位置する第2部材と、前記第1部材と第2部材とを回動自在に連結する折畳回動軸と、前記第1部材と第2部材とを固定的に保持するストッパピンとを備えており、前記第2部材には、前記第1部材に離接する方向に延在し前記ストッパピンを前記離接する方向に移動自在に案内する長孔が形成されており、前記第1部材には、その先端縁に、前記ストッパピンが前記長孔に沿って当該第1部材側に移動した際に当該ストッパピンが嵌り込む形状の凹部が形成されていることを特徴とする梯子用滑り防止具である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記折畳回動軸は、前記揺動支持軸と平行に配置されていることを特徴とする梯子用滑り防止具である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、前記凹部は、前記第1部材と前記第2部材とが前記基端部から前記先端部まで直線的に延在した状態において、前記ストッパピンが嵌り込むように前記第1部材の先端縁に形成されていることを特徴とする梯子用滑り防止具である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5の何れかに記載の発明において、前記ストッパピンの両端部には、前記長孔からの抜け落ちを防止する抜止部材が設けられており、前記抜止部材のうち一方には、当該一方の抜止部材から前記第2部材に弾性力を付与する制動用付勢部材が設けられていることを特徴とする梯子用滑り防止具である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の梯子用滑り防止具を備えたことを特徴とする梯子である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、基礎部材の基板部を梯子に固定することで、当該発明の梯子用滑り防止具を梯子における仮想面の例えば一方の側に取り付けることができる。この状態で、梯子用滑り防止具を建物の側に向けた上で、当該梯子を例えば切妻屋根のケラバ側に立て掛けることが必要になる場合がある。この場合には、まず各シュー部材が傾斜した屋根の上下の各位置に当たるように梯子の立て掛け角度を調整する。この際、荷重伝達部材が支点ピンの軸線回りに自動的に回動し、当該各シュー部材が屋根の上面における高低の各位置に確実に当接した状態になる。即ち、基板部の幅寸法等に基づいて、一方のシュー部材と他方のシュー部材との間の寸法として取り得る十分に大きな寸法間隔をもって、各シュー部材を屋根の縁に沿う位置に当接することができる。
【0015】
しかも、各シュー部材は、梯子の立て掛け角度に応じて、揺動支持軸を中心にして上下に回動することにより、当該各シュー部材の下面が全体的に屋根の上面に当接することになる。更に、各シュー部材は、付勢部材からの弾性力を受けて屋根の上面に所定の圧力で当接することになる。例えば、梯子を地面に対して70°の角度で立て掛けた場合には、シュー部材は水平方向に対してほぼ20°回動することによって屋根の上面に当接した状態になる。即ち、各シュー部材における基端側から先端側までの十分に大きな寸法間隔をもって、当該各シュー部材を屋根の縁側から奥に向かう方向に沿う位置に当接することができる。
【0016】
以上より、梯子をケラバ側に立て掛けた場合でも、屋根の縁に沿う方向にも、屋根の縁側から奥に向かう方向にも、十分に長い寸法間隔をもって各シュー部材を当該屋根の上面に当接させることができると共に、当該各シュー部材を所定の圧力で(即ち、所定の摩擦力をもって)当該屋根の上面に当接させることができる。従って、梯子を屋根側において極めて安定的に保持することができる。即ち、梯子が屋根の縁に沿って滑ったり、屋根の縁から離れる方向に倒れたりするのを確実に防止することができる。
【0017】
なお、梯子を軒先側に立て掛けた場合には、各シュー部材が水平方向に所定の間隔をおいて屋根の上面に当接した状態になる。また、各シュー部材は屋根の傾斜角度に応じて揺動支持軸を中心にして回動し、各シュー部材の下面が全体的に屋根の上面に当接することになる。即ち、屋根の縁に沿う方向にも、屋根の縁側から奥に向かう方向にも、十分に大きな寸法間隔をもって各シュー部材を当該屋根の上面に当接させることができると共に、当該各シュー部材を所定の圧力で当該屋根の上面に当接させることができる。即ち、梯子が屋根の縁に沿って滑ったり、屋根の縁から離れる方向に倒れたりするのを確実に防止することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、基板部の表面側における支点ピンを挟んで幅方向の両側の位置に、平板部の裏面を支持するレール状の案内部材が設けられているので、各シュー部材から揺動支持軸及び支持部材を介して平板部に作用する外力を案内部材でも受け止めることができ、当該外力が支点ピンに作用する割合を極力低減することができる。従って、荷重伝達部材を支点ピンの軸線回りに円滑に回動することができる。また、基板部の表面側にリベット等の凸部が存在する場合でも、荷重伝達部材の回動に支障を来すことがないという利点がある。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、シュー部材が第1部材と、その先端側に位置する第2部材と、第1部材と第2部材とを回動自在に連結する折畳回動軸を備えた構成になっているので、第2部材を折畳回動軸を介して基礎部材の基板部側に倒すことにより、シュー部材が基板部から突出する量を低減することができる。従って、梯子用滑り防止具の搬送や収納の際の効率を向上させることができる。
【0020】
一方、ストッパピンを第1部材の凹部に嵌め込むことによって、第1部材と第2部材とが揺動支持軸とストッパピンの二つの軸で連結された状態なることから、第1部材と第2部材とが相対的に変位不能な強固に一体化されたシュー部材を得ることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、折畳回動軸が揺動支持軸と平行に配置されているので、第1部材や第2部材に作用する折畳回動軸回り及び揺動支持軸回りの曲げモーメントの方向が同一になる。従って、第1部材、第2部材等における強度の計算が簡単になり、安全性の高いものを容易に設計することができるという利点がある。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、第1部材と第2部材とが基端部から先端部まで直線状に延在した状態において、ストッパピンが嵌り込むように、凹部が第1部材の先端縁に形成されているので、第1部材と第2部材とが一体となった直線状に延在する長尺のシュー部材を得ることができると共に、当該シュー部材をコンパクトに折り畳むことができるという利点がある。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、ストッパピンの両端部には長孔から抜け落ちるのを防止する抜止部材が設けられており、抜止部材のうち一方には、当該一方の抜止部材から第2部材に弾性力を付与する制動用付勢部材が設けられているので、他方の抜止部材と第2部材との間等の部位に生じる摩擦力によって、ストッパピンを長孔に沿う方向の所定の位置に確実に保持することができる。従って、ストッパピンを第1部材の凹部に嵌め込んだ状態に確実に保持することができる。また、第1部材と第2部材とを折り畳んだ状態にする際には、ストッパピンを凹部から抜け出した状態に保持することもできる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6の何れかに記載の梯子用滑り防止具を備えているので、屋根側の上部において滑りが生じるのを確実に防止することができる。従って、切妻屋根におけるケラバ側に立て掛けた場合においても、安全に上り下りすることができると共に、支柱間に掛け渡された例えば踏桟に留まった状態で安全に作業することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態として示した梯子用滑り防止具及びこれを備えた梯子について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この実施形態で示す梯子用滑り防止具1は、
図1〜
図8に示すように、並列に配置された支柱101、101の間に複数掛け渡された踏桟102を有する梯子100における各支柱101、101を含む仮想面の一方の側又は他方の側に着脱自在に取り付けられるように構成されている。なお、この例では、支柱101、101は所定の間隔をおいて平行に配置されたものを示しており、各踏桟102は支柱101の長手方向に一定の間隔をおいて設けられたものを示している。
【0028】
梯子用滑り防止具1は、基礎部材2と、この基礎部材2に設けられた支点ピン3と、この支点ピン3を介して基礎部材2に回動自在に設けられた荷重伝達部材4と、この荷重伝達部材4に設けられた押圧部材5とを備えている。
【0029】
基礎部材2は、
図1〜
図3に示すように、少なくとも支柱101、101の双方に掛け渡すことが可能な幅に形成され、裏面を支柱101、101に向けかつ当該裏面の幅方向の両側部分を各支柱101に当てた状態で梯子100に固定される基板部21を有している。即ち、基礎部材2は、幅方向及び縦方向の長さが所定の寸法に形成された直角四角形状のアルミニウム板に基づいて形成されたものであり、縦方向の各縁部が一定の幅で表面側に直角に折り曲げられることによって補強リブ22、22が形成され、この補強リブ22、22の間に上述した基板部21が形成されたものとなっている。これにより、基板部21は直角四角形状の平板状に形成されている。なお、基礎部材2の幅は、通常市販されている梯子における各支柱の外縁間の寸法より大きな寸法とすることが好ましい。但し、当該基礎部材2の幅は、市販されている所定の梯子における各支柱の外縁間の寸法より単に大きな寸法であってもよい。
【0030】
基板部21には、
図1(b)及び
図7に示すように、4つの各角部に、幅方向に延在する長孔21aが形成されている。各長孔21aは、基礎部材2を支柱101、101に固定するためのクランプ23の取り付け位置を幅方向に調整可能とすることで、間隔の異なる支柱101、101に対してもクランプ23による固定を可能にするものである。この場合、クランプ23は、ボルト24の締付力に基づいて、当該クランプ23と基板部21の裏面との間で支柱101の主要部を挟持し、これにより基礎部材2を支柱101、101の長手方向の任意の位置に固定するようになっている。
【0031】
ボルト24は、ねじを有する軸部が長孔21aに挿入された状態で、当該長孔21aに沿って移動可能な径に形成されていると共に、その軸部がクランプ23に溶接されたナット25に螺合するようになっている。即ち、ボルト24に伴ってクランプ23も長孔21aに沿って移動し、ボルト24を締め付けることでクランプ23と基板部21の裏面との間で支柱101の主要部を強力に挟持するようになっている。
【0032】
支点ピン3は、
図1に示すように、その軸線が基板部21に直交した状態で、当該基板部21の幅方向の中央の位置(中央部)でかつ縦方向のほぼ中央の位置(中央部)に配置されている。即ち、基板部21には、幅方向の中央位置でかつ縦方向のほぼ中央位置に貫通孔が形成されており、この貫通孔に支点ピン3が挿入された状態に設けられている。特にこの例では、支点ピン3は、ボルトによって形成されており、荷重伝達部材4を、その軸線回りに回動自在に支持するように構成されている。
【0033】
荷重伝達部材4は、裏面を基板部21の表面に向けた状態で支点ピン3の軸線回りに回動自在に設けられた平板部41を有している。即ち、荷重伝達部材4は、直線状に延在する所定の幅の平板部41と、この平板部41の幅方向の一方の縁部から表面側に直角に立ち上がるように形成された直板部42とによって断面L字状に形成されている。平板部41には、その長手方向の中央位置でかつ幅方向のほぼ中央位置に支点ピン3におけるねじを有する軸部が挿入する貫通孔が形成されている。
【0034】
上記支点ピン3は、その軸部が平板部41の表面側から当該平板部41の貫通孔及び基板部21の貫通孔に挿入された状態になっていると共に、当該基板部21の裏面から突出する軸部にナット3bが螺合された状態になっている。(なお、支点ピンの軸部は、基板部21の裏面側から挿入し、平板部41の表面側に設けたナット3bに螺合するように設けてもよい。)ナット3bは緩み防止機能を有するものとなっている。
【0035】
また、支点ピン3の軸部には、当該支点ピン3の六角形状の頭部3aと平板部41との間、及びナット3bと基板部21との間に平座金3cが設けられている。更に、支点ピン3の軸部には、基板部21と平板部41との間に所定の枚数の平座金3cが設けられている。基板部21と平板部41との間の平座金3cは、基板部21と平板部41との間隔を段階的に調整可能なスペーサとして機能する特性を有すると共に、回動時の摩擦低減手段として機能する特性を有している。
【0036】
そして、基板部21には、その表面側における支点ピン3を挟んで幅方向の両側の位置に、平板部41の裏面を摺動自在に支持するレール状の案内部材26が設けられている。各案内部材26は、縦方向に延在した状態で、基板部21にリベットRによって固定されている。なお、各案内部材26は、支点ピン3から等しい位置となっている。
【0037】
押圧部材5は、平板部41の表面における支点ピン3を挟んで当該支点ピン3の両側の位置であって、当該支点ピン3から等しい位置に設けられた支持部材6、6と、各支持部材6に揺動自在に設けられたシュー部材7と、各シュー部材7に弾性力を付与するコイルスプリング(付勢部材)8とを備えている。
【0038】
各支持部材6は、
図4に示すように、直角四角形状に形成された連結板部61と、この連結板部61における一組の平行な各辺部から直角に立ち上がり平行に対向する支持壁部62、62を備えた形状になっている。この支持部材6は、各支持壁部62が荷重伝達部材4の直板部42に対して直交する方向に向けられ、かつ連結板部61が平板部41の表面に載置された状態で、当該連結板部61が平板部41にリベットRで固定されている。更に、支持部材6は、各支持壁部62から直板部42に沿うように直角に形成されたフランジ部63を有しており、この各フランジ部63が直板部42にリベットRで固定されている。
【0039】
なお、直板部42には、各支持部材6が設けられた部位の裏側に摺動安定部材43が設けられている。この摺動安定部材43は、平板部41より幅の狭い平板43a及び直板43bによって断面L字状に形成されたものであり、平板43aの下面が平板部41の下面と同一面状(面一状)にされた状態で、直板43bが直板部42に固定されている。この場合、直板43bは、支持部材6の各フランジ部63を直板部42に固定するリベットRを用いて当該直板部42に固定されている。そして、摺動安定部材43は、平板部41と共に案内部材26上を摺動し、荷重伝達部材4が支点ピン3回りに円滑に回動するのを補助するようになっている。なお、摺動安定部材43は、荷重伝達部材4における支持部材6を取り付ける部位を補強する特性も有している。
【0040】
また、荷重伝達部材4における直板部42と直板43bとが重ねられた部分には、後述するコイルスプリング8の一方のフック8aを引っ掛けるための係止部4aが形成されている。係止部4aは、直板部42及び直板43bに貫通する小貫通孔4bと大貫通孔4cとの間の部分によって形成されている。この場合、小貫通孔4bについては、フック8aの線径より少なくとも大きな径に形成され、大貫通孔4cについては、少なくともフック8aが挿入可能な径に形成されている。
【0041】
一方、各支持部材6には、揺動支持軸64が設けられている。各揺動支持軸64は、ボルトによって構成されたものであり、そのねじを有する軸部が左右の各支持部材6における各支持壁部62の同一の位置であって当該各支持壁部62に直交する方向に直線状に延在する位置に配置されている。即ち、各揺動支持軸64は、各支持部材6における同軸状の位置に配置されていると共に、支点ピン3の軸線に対して直交する方向でかつ平板部41の長手方向に平行な方向に延在するように設けられている。
【0042】
この場合、各支持壁部62には、同軸状に形成された貫通孔が形成されており、揺動支持軸64の軸部は、その貫通孔に挿入された状態になっている。この場合、揺動支持軸64は、平行に配置された支持壁部62、62の一方の外側に当該揺動支持軸64の六角形状の頭部64aが配置され、他方の外側に当該揺動支持軸64の軸部に螺合する緩み防止機能を有するナット64bが配置された状態になっている。即ち、揺動支持軸64は、その軸部が支持壁部62、22に掛け渡された状態で、頭部64a及びナット64bによって当該支持壁部62、62からの脱落が確実に防止された状態になっている。揺動支持軸64の軸部には、頭部64aと一方の支持壁部62との間、及びナット64bと他方の支持壁部62との間に平座金64cが設けられている。
【0043】
シュー部材7は、
図2〜
図6に示すように、その基端部が揺動支持軸64に回動自在に連結されており、当該揺動支持軸64が水平方向に向けられた状態において、その先端部が上下に移動するように構成されている。
【0044】
そして、シュー部材7は、上記基端部に位置する第1部材71と、その第1部材71の先端側に位置する第2部材72と、第1部材71と第2部材72とを回動自在に連結する折畳回動軸73と、第1部材71と第2部材72とを固定的に保持するストッパピン74とを備えた構成になっている。
【0045】
第1部材71は、平面状に形成されたアルミニウム板を断面コ字状に形成したものであり、平行に対向する平行板部71a、71a及びこれらの下縁をつなぐ下面部71bを有する形状となっている。平行板部71a、71aは、その間隔が支持部材6の支持壁部62、62間内に納まるように設定されていると共に、揺動支持軸64の軸部と回動自在に嵌合する貫通孔を有するものとなっている。更に、平行板部71a、71aの各先端縁には、後述のストッパピン74を嵌合するための凹部71cが形成されている。
【0046】
また、下面部71bには、
図3(b)に示すように、その基端縁にU字状の切欠き71dが形成され、この切欠き71dの底部に対して所定の間隔をおいて貫通孔71eが形成されている。そして、この切欠き71dと貫通孔71eとの間の部分が後述するコイルスプリング8の他方のフック8aを係止する係止部71fとなっている。この場合、切欠き71dについては、フック8aの線径より少なくとも大きな幅に形成され、貫通孔71eについては、フック8aの線径より少なくとも大きな径に形成されている。
【0047】
更に、下面部71bは、
図3(b)及び
図5に示すように、その基端縁が支持部材6の連結板部61に当接することで、第1部材の回動を停止するストッパ71gとなっている。即ち、ストッパ71gは、第1部材71の下面部71bが連結板部61に対してほぼ直角になった状態で当該連結板部61に当接し、コイルスプリング8の弾性力により第1部材71の先端側が更に下方に変位するのを防止するようになっている。
【0048】
第2部材72は、平面状に形成されたアルミニウム板を断面コ字状に形成したものであり、平行に対向する平行板部72a、72a及びその下縁をつなぐ下面部72bを有する形状となっている。平行板部72a、72aは、その間隔が支持部材6の支持壁部62、62の外側に位置するように設定されている。
【0049】
また、各平行板部72bは、
図3(b)に示すように、その基端部が重なるように配置された第1部材71の各平行板部71aに、折畳回動軸73によって回動自在に連結されている。折畳回動軸73は、ボルトによって構成されたものであり、一方の平行板部71a、72aを連結する部位及び他方の平行板部71a、72aを連結する部位のそれぞれに設けられている。
【0050】
即ち、一方の折畳回動軸73は、そのねじを有する軸部が一方の平行板部72a、71aのそれぞれに形成された貫通孔に挿入され、平行板部71aから突出する軸部に緩み防止機能を有するナット73bが螺合されるようになっている。これにより、一方の折畳回動軸73は、その六角形状の頭部73a及びナット73bが一方の平行板部72a、71aの外側に配置された状態になり、これらの貫通孔からの脱落が防止されるようになっている。そして、折畳回動軸73は、揺動支持軸64と平行に配置されたものとなっている。
【0051】
更に、一方の折畳回動軸73の軸部には、一方の平行板部72a、71aの間に所定の枚数の平座金73cが設けられている。これらの平座金73cは、一方の平行板部72aが支持部材6における一方の支持壁部62の外側に所定の間隔をおいて位置すべく保持するためのスペーサとして機能する特性を有するものとなっている。
【0052】
他方の折畳回動軸73についても、一方の折畳回動軸73と同様に、他方の平行板部72a、71aに設けられているので、
図3(b)において同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
また、下面部72bには、
図5及び
図6に示すように、基端側の部分に切欠部72cが形成されている。切欠部72cは、
図6に示すように、第2部材72を折畳回動軸73の回りに下方に回動した際に、下面部72bが第1部材71の下面部71bや、支持部材6等に当たることによって、回動範囲が制限されるのを防止するようになっている。但し、下面部72bの基端側の部分は、
図5に示すように、第1部材71の下面部71bの先端部に当接するように形成されており、この当接によって、第2部材72の下面部72bが第1部材71の下面部71bと同方向を向くように維持されると共に、第2部材72が更に上方に回動する力を第1部材71に伝えるようになっている。また、第2部材72の下面部72bには、
図1及び
図3に示すように、複数の肉抜孔72dが形成されている。
【0054】
また、第2部材72は、
図2、
図5及び
図6に示すように、各平行板部72a、72aに、第1部材71に離接する方向に延在しストッパピン74をその離接する方向に移動自在に案内する長孔72eが形成されている。この長孔72eは、下面部72bの基端部が第1部材71の下面部71bの先端部に当接した状態において(即ち、下面部72bが第1部材71の下面部71bと同方向を向いた状態において)、ストッパピン74を第1部材71側に案内すすることで、当該ストッパピン74が凹部71cに嵌り込むことが可能なように、各平行板部72aにおける位置及び延在方向が設定されている。換言すれば、第1部材71における凹部71cは、当該第1部材71と第2部材72とがその基端部から先端部まで直線的に延在した状態において、ストッパピン74が嵌り込むように当該第1部材71の先端縁に形成されている。なお、この例において、長孔72eは、下面部72bと平行な直線状に延在している。
【0055】
ストッパピン74は、
図3(b)に示すように、ボルトによって構成されたものであり、そのねじを有する軸部が一方の平行板部72aの長孔72eから他方の平行板部72aの長孔72eに挿入され、当該他方の長孔72eから突出した軸部に緩み防止機能を有するナット74bが螺合されている。そして、ストッパピン74の軸部には、他方の平行板部72aとナット74bとの間に2枚の平座金74c、74cが設けられていると共に、この平座金74c、74cの間に圧縮コイルスプリング74dが設けられた状態になっている。なお、ストッパピン74における六角形状の頭部74aと、一方の平行板部72aとの間にも平座金74dが設けられている。
【0056】
圧縮コイルスプリング74dは、平座金74c、74cにこれらの間隔を広げる方向に弾性力を作用させることにより、ストッパピン74における頭部74a側の平座金74dを一方の平行板部72aに所定の弾性力で当接させると共に、ナット74b側の一つの平座金74cを他方の平行板部72aに所定の弾性力で当接させるようになっている。即ち、ストッパピン74は、頭部74a側の平座金74dと一方の平行板部72aとの間の摩擦力、及びナット74b側の平座金74cと他方の平行板部72aとの間の摩擦力によって、長孔72eにおける任意の位置に保持されるようになっている。これにより、ストッパピン74は、第1部材71の凹部71cに嵌り込んだ状態に維持したり、当該凹部71cから抜け出した状態に維持したりすることが可能になっている。
【0057】
また、頭部74a及びナット74bは、ストッパピン74が長孔72eから抜け落ちるのを防止するために、当該ストッパピン74の両端部に設けられた抜止部材となっている。また、圧縮コイルスプリング74dは、少なくとも一方の抜止部材から第2部材72に弾性力を付与する制動用付勢部材となっている。
【0058】
コイルスプリング8は、揺動支持軸64が水平方向に向けられた状態において、シュー部材7の先端部が下方に移動する方向の弾性力を当該シュー部材7に作用するように構成されている。即ち、コイルスプリング8は、伸縮方向の両端部にフック8a、8aを備えた引張ばねによって構成されたものであり、一方のフック8aが荷重伝達部材4に形成された係止部4aに引っ掛けられ、他方のフック8aが第1部材71の下面部71bに形成された係止部71fに引っ掛けられた状態で設けられている。これにより、コイルスプリング8は、揺動支持軸64の基端側に位置する第1部材71の基端部に対し常時上方に引き上げる方向の弾性力を作用することにより、揺動支持軸64の先端側に位置する第2部材72の先端部に対して下方に向かう方向の弾性力を付与するようになっている。
【0059】
但し、ストッパ71gが連結板部61に当たることにより、第1部材71の下面部71bが連結板部61にほぼ直角になった状態から更に下方に回動することがない。即ち、第1部材71と第2部材72とがストッパピン74によって一体化された状態のシュー部材7については、第2部材72の下面部72bが連結板部61にほぼ直角になった状態から更に下方に回動することはない。但し、この状態から上方には、コイルスプリング8の弾性力に抗しながら揺動支持軸64回りに回動することが可能である。
【0060】
なお、第1部材71については、基端から先端までの寸法が極力小さなもので構成されている。これに対し、第2部材72は、屋根200の縁側からその奥に向かう方向に十分大きな寸法をもって当該屋根200の上面に当接することが可能なように、基端から先端までの長さが長いもので構成されている。即ち、第2部材72は、第1部材71より十分に長いもので構成されている。
【0061】
そして、上記梯子用滑り防止具1を備えた梯子100は、当該梯子用滑り防止具1の構成及び特性を備えた梯子となる。
【0062】
上記のように構成された梯子用滑り防止具1においては、基礎部材2の基板部21を梯子100の支柱101、101にクランプ23によって固定することで、当該梯子用滑り防止具1を梯子100における上述した仮想面の一方の側、他方の側又は双方の側に取り付けることができる。なお、各シュー部材7について、第1部材71の凹部71cにストッパピン74を嵌め込むことで、第1部材71と第2部材72とを一体化しておく。この状態で、
図8に示すように、梯子用滑り防止具1を建物の側に向けた上で、当該梯子100を例えば切妻屋根のケラバ201側に立て掛ける。この場合には、シュー部材7、7のそれぞれが傾斜した屋根200の上下の各位置に当たるように梯子100の立て掛け角度を調整する。この際、荷重伝達部材4が支点ピン3の軸線回りに自動的に回動し、当該各シュー部材7が屋根200の上面における高低の各位置に確実に当接した状態になる。即ち、シュー部材7、7の間隔に基づいて設定される十分に大きな寸法間隔をもって、各シュー部材7を屋根200におけるその縁に沿う位置に当接することができる。
【0063】
しかも、各シュー部材7は、梯子100の立て掛け角度に応じて、屋根200から上下方向の角変位を受けることになることから、揺動支持軸64を中心にして上下に回動することになり、当該各シュー部材7の下面(特に第2部材72における下面部72bの下面)が全体的に屋根200の上面に当接することになる。この際、各シュー部材7は、コイルスプリング8からの弾性力を受けて屋根200の上面に所定の圧力で当接した状態になる。例えば、梯子100を地面に対して70°の角度で立て掛けた場合には、シュー部材7は水平方向に対してほぼ20°(連結板部61に直交する状態から上方に20°)回動した状態となり、その回動角度に基づくコイルスプリング8の弾性力により各シュー部材7が屋根200の上面に当接することになる。これにより、各シュー部材7における基端側から先端側までの長さに基づいて設定される十分に大きな寸法間隔をもって、各シュー部材7を屋根200の縁側から奥に向かう位置に当接することができる。
【0064】
従って、梯子100をケラバ201側に立て掛けた場合でも、屋根200の縁に沿う方向にも、屋根200の縁側から奥に向かう方向にも、十分に長い寸法間隔をもって各シュー部材7を当該屋根200の上面に当接させることができると共に、当該各シュー部材7を所定の圧力で(即ち、所定の摩擦力をもって)当該屋根200の上面に当接させることができる。従って、梯子100を屋根200側において極めて安定的に保持することができる。即ち、梯子100が屋根200の縁に沿って滑ったり、屋根200の縁から離れる方向に倒れたりするのを確実に防止することができる。
【0065】
なお、梯子100を軒先側に立て掛けた場合には、各シュー部材7が水平方向に所定の間隔をおいて屋根200の上面に当接した状態になる。また、各シュー部材7は屋根200の傾斜角度に応じて揺動支持軸64を中心にして回動し、当該各シュー部材7の下面が全体的に屋根200の上面に当接することになる。即ち、屋根200の縁に沿う方向にも、屋根200の縁側から奥に向かう方向にも、十分に大きな寸法間隔をもって各シュー部材7を当該屋根200の上面に当接させることができると共に、当該各シュー部材7を所定の圧力で当該屋根200の上面に当接させることができる。
【0066】
また、基板部21の表面側における支点ピン3を挟んで幅方向の両側の位置に、平板部41の裏面を摺動自在に支持するレール状の案内部材26が設けられているので、各シュー部材7から揺動支持軸64及び支持部材6を介して平板部41に作用する外力を案内部材26で受け止めることができ、当該外力が支点ピン3に直接的に作用するのを極力低減することができる。従って、荷重伝達部材4を支点ピン3の軸線回りに円滑に回動することができる。また、基板部21の表面側にリベット等の凸部が存在する場合でも、荷重伝達部材4の回動に支障を来すことがない。
【0067】
更に、シュー部材7が第1部材71と、第2部材72と、これらを回動自在に連結する折畳回動軸63とを備えた構成になっているので、第2部材72を折畳回動軸63を介して基礎部材2の基板部21側に倒すことにより、シュー部材7が基板部21から突出する量を低減することができる。従って、梯子用滑り防止具1の搬送や収納の際の効率を向上させることができる。
【0068】
一方、ストッパピン74を第1部材71の凹部71cに嵌め込むことによって、第1部材71と第2部材72とが揺動支持軸64とストッパピン74の二つの軸で連結された状態なることから、第1部材71と第2部材72とが相対的に変位不能な一体化されたシュー部材7となる。
【0069】
また、折畳回動軸63が揺動支持軸64と平行に配置されているので、第1部材71や第2部材72に作用する折畳回動軸63回り及び揺動支持軸64回りの曲げモーメントの方向が同一になるので、第1部材71、第2部材72等の強度の計算が簡単になり、安全性の高いものを容易に設計することができるという利点がある。
【0070】
更に、第1部材71と第2部材72とが基端部から先端部まで直線状に延在した状態において、ストッパピン74が嵌り込むように、凹部71cが第1部材71の先端縁に形成されているので、第1部材71と第2部材72とが一体となった直線状に延在する長尺のシュー部材7を得ることができると共に、当該シュー部材7をコンパクトに折り畳むこともできるという利点がある。
【0071】
更にまた、ストッパピン74の両端部には長孔72eから抜け落ちるのを防止する頭部74a及びナット74bが設けられており、ナット74b側には、当該ナット74bから第2部材72に平座金74cを介して弾性力を付与する圧縮コイルスプリング74dが設けられているので、頭部74a側の平座金74cと第2部材72との間等の部位に生じる摩擦力によって、ストッパピン74を長孔72eにおける所定の位置に確実に保持することができる。従って、ストッパピン74を第1部材71の凹部71cに嵌め込んだ状態に確実に保持することができる。また、第1部材71と第2部材72とを折り畳んだ状態にする際には、ストッパピン74を凹部71cから抜け出した状態に保持することもできる。
【0072】
そして、梯子用滑り防止具1を備えた梯子100においては、屋根200側の上部において滑りが生じるのを確実に防止することができる。このため、切妻屋根におけるケラバ201側に立て掛けた場合においても、安全に上り下りすることができると共に、踏桟102に留まった状態で安全に作業することもできる。
【0073】
また、梯子100の立て掛け角度については、上述のように地面に対して70°の角度とすることが望ましいが、この角度については、工事現場等の状況により、70°±10°になることもあり得る。即ち、立て掛け角度は60°〜80°になる場合がある。60°の場合には、シュー部材7は連結板部61に直交する状態から上方に30°回動することになる。従って、シュー部材7については、上方に少なくとも30°回動するように構成することが好ましい。
【0074】
なお、上記実施形態においては、梯子として平行に配置された2本の支柱101を備えたものを示したが、その支柱については並列に配置されたものであればよく、必ずしても平行に配置されたものである必要はない。即ち、並列に配置された支柱については、その間隔が例えば上方に向かって漸次狭まるように形成されたものであってもよい。この場合でも、クランプ23によって梯子用滑り防止具1を支柱に確実に固定することができる。また、梯子としては、2本以上の支柱を並列に備えたものであってもよい。この場合も、任意の2本の支柱に、梯子用滑り防止具1をクランプ23によって固定することができる。
【0075】
上記実施形態においては、各部材をリベットRで連結した例を示したが、これらの各部材については溶接により連結してもよい。即ち、基板部21と案内部材26、平板部41と連結板部61、直板部42とフランジ部63、当該直板部42と直板43b等については、すみ肉溶接や突き合わせ溶接等により連結してもよい。この場合、アルミニウム製の部材を溶接することになることから、アルゴン溶接を用いることが好ましい。また、溶接は、連結強度等を考慮して、連続溶接又は断続溶接によって行うことが好ましい。
【解決手段】基礎部材2と、基礎部材2に設けた支点ピン3と、支点ピン3に回動自在に設けた荷重伝達部材4と、荷重伝達部材4に設けた押圧部材5、5とを備え、基礎部材2は支柱101に固定する基板部21を有し、支点ピン3は基板部21の幅方向の中央部に設け、荷重伝達部材4は支点ピン3の回りに回動自在な平板部41を有し、各押圧部材5は平板部41の支点ピン3の両側に設けた支持部材6と、各支持部材6に設けたシュー部材7と、各シュー部材7に弾性力を付与するコイルスプリング(付勢部材)8とを備えており、各支持部材6は揺動支持軸64を有し、各シュー部材7は各揺動支持軸64に回動自在に連結され、各コイルスプリング8は各シュー部材7に先端部が下方に向かう方向の弾性力を付与するように構成されている。