特許第6166817号(P6166817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上銀科技股▲フン▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000002
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000003
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000004
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000005
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000006
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000007
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000008
  • 特許6166817-無ねじ式リニアガイド 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6166817
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】無ねじ式リニアガイド
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   F16C29/06
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-85825(P2016-85825)
(22)【出願日】2016年4月22日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】513241523
【氏名又は名称】上銀科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 永紳
(72)【発明者】
【氏名】陶 仕晋
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0033141(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0003854(US,A1)
【文献】 特開2009−236152(JP,A)
【文献】 実開平05−022842(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無ねじ式リニアガイドであって、
レールと、スライダーと、還流モジュールと、固定部材と、を含み、
前記レールは、一方向に延伸する長尺状であり、前記延伸方向を軸方向と定義し、前記レールの前記軸方向の両側にはそれぞれ転動溝が設けられ、
前記スライダーは、冂字形状であり、冂字形状の2つの端部には前記レールの転動溝とそれぞれ対向する転動溝がそれぞれ設けられ、前記レールの転動溝と前記スライダーの転動溝とが負荷経路を構成し、2つの前記端部の間に上底面を有し、前記スライダーの前記軸方向の両端のそれぞれには隔てて設置される2つの延伸部が凸設され、各前記延伸部は係合溝を有し、前記スライダーは第4位置決め部を有し、
前記還流モジュールには前記第4位置決め部と対応する第3位置決め部が設けられ、前記第3位置決め部と前記第4位置決め部とが凹凸が対応する構造で互いに嵌合して前記還流モジュールが前記スライダーに位置決めされ、前記還流モジュールは前記軸方向にそれぞれ端面を有し、前記端面は前記係合溝の内面に合わせて連接され、前記端面は少なくとも1つの第1位置決め部を有し、前記還流モジュールは2つの前記負荷経路とそれぞれ接続する2つの還流路を有し、前記負荷経路と前記還流路とが循環路を構成し、
前記固定部材は、連結部と、前記連結部の両端にそれぞれ連結される2つの位置決め片とを含み、前記連結部及び前記位置決め片はいずれも板状であり、2つの前記位置決め片の厚さは前記係合溝の幅より小さく、前記連結部は外力を受けていない状態では円弧形状であるため2つの前記位置決め片の上端部の間隔の長さが2つの前記位置決め片の下端部の間隔の長さより大きく、前記連結部は前記上底面に当接するように配置され、2つの前記位置決め片は前記還流モジュールの2つの前記端面にそれぞれ当接するように配置され、2つの前記位置決め片の前記上端部が前記係合溝にそれぞれ挿設され、前記位置決め片は前記第1位置決め部と対応する第2位置決め部を少なくとも1つ有し、前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とが凹凸が対応する構造で互いに嵌合し、前記固定部材は前記還流モジュールの前記軸方向の自由度を制限することができる
無ねじ式リニアガイド。
【請求項2】
請求項1に記載の無ねじ式リニアガイドであって、
前記還流モジュールは、2つの還流部材から構成され、2つの前記還流部材は外形が匚字形状であり、2つの前記還流部材の匚字形状の2つの端部が互いに対向して接続されて口字形状を呈し、
前記スライダーは、冂字形状2つの前記端部にさらにそれぞれ凹溝が設けられ、前記還流部材の匚字形状の2つの前記端部は前記凹溝にそれぞれ収容される
無ねじ式リニアガイド。
【請求項3】
請求項1に記載の無ねじ式リニアガイドであって、
さらに2つの補強片を含み、2つの前記補強片は凵字形状であり、凵字形状の両端にそれぞれ第5位置決め部が設けられ、前記第5位置決め部と前記第2位置決め部とが凹凸が対応する構造で互いに嵌合して前記補強片を前記還流モジュールの底面に固定することができる
無ねじ式リニアガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイドに関し、特に無ねじ式リニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアボールガイドは、図7に示すように、レール1と、スライダー2Bと、端蓋8と、蓋板9と、転動体5と、防塵部材4Bとを含み、ねじ10によって端蓋8、蓋板9及び防塵部材4Bがスライダー2Bに固定される。レール1及びスライダー2Bにはそれぞれ固定孔12及びねじ孔26Bが設けられ、固定孔12はレール1を機構に固定するためのもので、ねじ孔26Bはスライダー2Bとワーク(図示せず)とを締結するためのものである。レール1及びスライダー2Bには共にボール溝が設けられ、転動体5がスライダー2Bのボール溝とレール1のボール溝との間に配置されて循環転動し、これによってスライダー2Bがレール1上で相対移動するとき生ずる摩擦抵抗が小さくなる。スライダー2Bの両端には、転動体5を方向転換させることができる端蓋8がそれぞれ設けられる。スライダー2Bがレール1上で移動するとき、転動体5はスライダー2Bとレール1とのボール溝から端蓋8を経由してスライダー2Bの還流孔27Bに進入し、さらに還流孔27Bから他端の端蓋8に進入してスライダー2Bとレール1とのボール溝に戻り、このようにして、スライダー2Bは無限運動(作動)が可能となる。防塵部材4Bは、スライダー2Bの両端の端蓋8の外側に設けられ、レール1上の雑物がレール1とスライダー2Bとのボール溝に進入することを防止する。端蓋8には蓋板9が挿設され、転動体5の還流経路をスムーズにし、ボール詰りを回避する。
【0003】
現在、リニアボールガイドはすでに精密機械や機器に広く用いられている。そのため、リニアボールガイドの大きさについて、精密化が求められて小型化する趨勢にある。しかし、リニアボールガイドの大きさが小さくなると、対応してスライダーの体積も小さくなり、スライダーの体積が小さくなると、対応してねじの大きさも小さく設定せざるを得なくなる。しかし、ねじの大きさをある程度小さくすると、大きさが小さくなるほどねじ及びねじ孔の加工が難しくなり、ねじを用いて部品を組み立てるコストも高くなり、組立所要時間も長くなる。このように、従来技術には改良すべき課題がある。
【発明の概要】
【0004】
上記課題に鑑み、本発明の主な目的は、ねじによる各構成部分の固定を必要としないリニアガイドを提供することである。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る無ねじ式リニアガイドは、レールと、スライダーと、還流モジュールと、固定部材と、を含み、前記レールは、一方向に延伸する長尺状であり、前記延伸方向を軸方向と定義し、前記レールの前記軸方向の両側にはそれぞれ転動溝が設けられ、前記スライダーは、冂字形状であり、冂字形状の2つの端部には前記レールの転動溝とそれぞれ対向する転動溝がそれぞれ設けられ、前記レールの転動溝と前記スライダーの転動溝とが負荷経路を構成し、2つの前記端部の間に上底面を有し、前記スライダーの前記軸方向の両端のそれぞれには隔てて設置される2つの延伸部が凸設され、各前記延伸部は係合溝を有し、前記スライダーは第4位置決め部を有し、前記還流モジュールには前記第4位置決め部と対応する第3位置決め部が設けられ、前記第3位置決め部と前記第4位置決め部とが凹凸が対応する構造で互いに嵌合して前記還流モジュールが前記スライダーに位置決めされ、前記還流モジュールは前記軸方向にそれぞれ端面を有し、前記端面は前記係合溝の内面に合わせて連接され、前記端面は少なくとも1つの第1位置決め部を有し、前記還流モジュールは2つの前記負荷経路とそれぞれ接続する2つの還流路を有し、前記負荷経路と前記還流路とが循環路を構成し、前記固定部材は、連結部と、前記連結部の両端にそれぞれ連結される2つの位置決め片とを含み、前記連結部及び前記位置決め片はいずれも板状であり、2つの前記位置決め片の厚さは前記係合溝の幅より小さく、前記連結部は外力を受けていない状態では円弧形状であるため2つの前記位置決め片の上端部の間隔の長さが2つの前記位置決め片の下端部の間隔の長さより大きく、前記連結部は前記上底面に当接するように配置され、2つの前記位置決め片は前記還流モジュールの2つの前記端面にそれぞれ当接するように配置され、2つの前記位置決め片の前記上端部が前記係合溝にそれぞれ挿設され、前記位置決め片は前記第1位置決め部と対応する第2位置決め部を少なくとも1つ有し、前記第1位置決め部と前記第2位置決め部とが凹凸が対応する構造で互いに嵌合し、前記固定部材は前記還流モジュールの前記軸方向の自由度を制限することができる。
【0006】
また、好ましくは、前記還流モジュールは、2つの還流部材から構成され、2つの前記還流部材は外形が匚字形状であり、2つの前記還流部材の匚字形状の2つの端部が互いに対向して接続されて口字形状を呈し、前記スライダーは、冂字形状2つの前記端部にさらにそれぞれ凹溝が設けられ、前記還流部材の匚字形状の2つの前記端部は前記凹溝にそれぞれ収容される。
【0007】
また、好ましくは、さらに2つの補強片を含み、2つの前記補強片は凵字形状であり、凵字形状の両端にそれぞれ第5位置決め部が設けられ、前記第5位置決め部と前記第2位置決め部とが凹凸が対応する構造で互いに嵌合して前記補強片を前記還流モジュールの底面に固定することができる。
【0008】
本発明は、スライダーと還流モジュールと固定部材との嵌合(係合)によって、各構成部分がねじを使用せずに互いに嵌合(係合)して固定され、さらに補強片を設けることで還流モジュールの強度を補強することができる。還流モジュールには通常樹脂射出成型が用いられ、固定部材及び補強片はいずれも金属素材で製造されるため、固定部材及び補強片で還流モジュールを覆うことによって、転動体が作動するとき、内部で異物によって循環路が塞がれて転動体が還流モジュールから外部に飛び出すことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る無ねじ式リニアガイドの分解斜視図である。
図2A】本発明に係る無ねじ式リニアガイドのスライダー、還流部材及び固定部材を示す図である。
図2B】本発明に係る無ねじ式リニアガイドのスライダー及び還流部材を示す図である。
図3】本発明に係る無ねじ式リニアガイドの組立図である。
図4図3におけるA−A断面図である。
図5】本発明に係る無ねじ式リニアガイドの補強片の斜視図である。
図6】本発明に係る無ねじ式リニアガイドの補強片がスライダーに組み立てられた組立図である。
図7】先行技術におけるリニアボールガイドの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図4を参照されたい。本発明に係る無ねじ式リニアガイドは、レール1と、スライダー2と、還流モジュールAと、固定部材4とを含む。レール1は、一方向に延伸する長尺状であり、この延伸方向を軸方向Xと定義する。レール1の軸方向Xの両側にはそれぞれ転動溝11が設けられる。スライダー2は、冂字形状であり、冂字形状の両端部にはそれぞれレール1の転動溝11と対向する転動溝21がそれぞれ設けられる。レール1の転動溝11とスライダー2の転動溝21とが負荷経路を構成する。スライダー2は、2つの端部26の間に上底面24を有する。スライダー2の軸方向Xの両端のそれぞれには隔てて配置される2つの延伸部23が凸設される。各延伸部23は、係合溝231を有する。スライダー2は、第4位置決め部25を有する。スライダー2は、冂字形状の両端部26にさらに凹溝22がそれぞれ設けられる。還流モジュールAは、2つの還流部材3から構成される。2つの還流部材3は、外形が匚字形状であり、2つの還流部材3の匚字形状の両端部35が互いに対向して接続されて、還流モジュールAは口字形状を呈する。凹溝22は、還流部材3の2つの端部35を収容するためのものである。還流部材3には第4位置決め部25と対応する第3位置決め部33が設けられ、第3位置決め部33と第4位置決め部25とは、凹凸が対応する構造で互いに嵌合する。本実施形態では、第4位置決め部25が孔で、第3位置決め部33が凸柱であり、これによって、還流モジュールAがスライダー2に位置決めされる。還流モジュールAは、軸方向Xにそれぞれ端面30を有する。端面30は、図2Aに示すように係合溝231の内面2311に合わせて連接される、又は図2Bに示すように内面2311より凸出するように配置される。端面30は、少なくとも1つの第1位置決め部31を有する。還流モジュールAは、2つの負荷経路とそれぞれ接続する2つの還流路32を有し、負荷経路と還流路32とが循環路を構成する。固定部材4は、連結部41と、連結部41の両端にそれぞれ連結される2つの位置決め片42とを含む。連結部41及び位置決め片42は、いずれも板状である。2つの位置決め片42の厚さは、係合溝231の幅より小さい。図2Aに示すように、連結部41は、外力を受けていない状態では円弧形状であり、これによって2つの位置決め片42の上端部422の間隔の長さL1は、下端部423の間隔の長さL2より大きい。このように設けることによって、還流モジュールAを固定する固定部材4の能力が強化される。連結部41は上底面24に当接するように配置され、両位置決め片42は還流モジュールAの両端面30にそれぞれ当接するように配置され、両位置決め片42の上端部422は係合溝231にそれぞれ挿設される(係合する)。位置決め片42は、第1位置決め部31に対応する第2位置決め部421を少なくとも1つ有する。本実施形態では、第2位置決め部421は、下端部423に近接している。第1位置決め部31と第2位置決め部421とは、凹凸が対応する構造で互いに嵌合する。本実施形態では、第1位置決め部31が凸塊で、第2位置決め部421が凹孔である。このようにして、固定部材4は、還流モジュールAの軸方向Xの自由度を制限することができる。
【0011】
図5及び図6を参照されたい。本発明では、リニアガイドの全体の強度及び安全性を強化するために、図5に示すように、2つの補強片7を増設している。補強片7は、凵字形状であり、凵字形状の両端にそれぞれ第5位置決め部71が設けられる。第5位置決め部71と第2位置決め部421とは、凹凸が対応する構造で互いに嵌合する。本実施形態では、第5位置決め部71が凸塊で、第2位置決め部421が凹孔である。本実施形態では、部品部分の構造の複雑化を回避するために、第5位置決め部71の嵌合相手と第1位置決め部31の嵌合相手は、両者とも第2位置決め部421である。このようにして、補強片7を還流モジュールAの底面34に固定することができる。
【0012】
以上のように、本発明が「産業上の利用可能性を有する」ことには疑いの余地がない。また、本実施例において開示した技術的特徴は、出願前に刊行物に掲載されたことも、公開使用されたこともなく、上記の効果増進の事実を有するだけでなく、付加的な効果も見損なうことができない。よって、本発明の「新規性」及び「進歩性」は特許法規の規定を満たしており、法に従って特許出願をするので、審査を通じて早期に特許査定がされることを期待する。
【0013】
以上の実施形態による開示は本発明を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。従って、数値の変更や等効素子の置換等は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0014】
<本発明>
X 軸方向
1 レール
11 転動溝
2 スライダー
21 転動溝
22 凹溝
23 延伸部
231 係合溝
2311 内面
24 上底面
25 第4位置決め部
26 端部
A 還流モジュール
3 還流部材
30 端面
31 第1位置決め部
32 還流路
33 第3位置決め部
34 底面
35 端部
4 固定部材
41 連結部
42 位置決め片
421 第2位置決め部
422 上端部
423 下端部
5 転動体
L1、L2 間隔の長さ
7 補強片
71 第5位置決め部
<先行技術>
1 レール
2B スライダー
4B 防塵部材
5 転動体
8 端蓋
9 蓋板
10 ねじ
26B ねじ孔
12 固定孔
27B 還流孔
【要約】      (修正有)
【課題】ねじによる各構成部分の固定を必要としないリニアガイドを提供する
【解決手段】レール1と、スライダー2と、還流モジュールと、固定部材4と、を含み、スライダー2、還流モジュール及び固定部材4の固定は嵌合(係合)構造による相互位置決めによるもので、各構成部分がねじを使用せずに互いに嵌合して固定され、さらに補強片を設けることで還流モジュールの強度を補強することができる。還流モジュールには樹脂射出成型が用いられ、固定部材4及び補強片はいずれも金属素材で製造されるため、固定部材4及び補強片で還流モジュールを覆うことによって、転動体5が作動するとき、内部で異物によって循環路が塞がれて転動体5が還流モジュールから外部に飛び出すことを回避することができる。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7