(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明の流体取扱装置の代表例として、マイクロ流路チップについて説明する。
【0016】
なお、本明細書において、「フィルム」とは、薄い平板状の部材を意味する。たとえば、「樹脂フィルム」には、樹脂薄膜(フィルム)だけでなく、樹脂薄板も含まれる。
【0017】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の一実施の形態に係るマイクロ流路チップ100と、マイクロ流路チップ100を有する流体取扱システム300について説明する。
【0018】
[マイクロ流路チップの構成]
図1は、実施の形態1のマイクロ流路チップ100の構成を示す図である。
図1Aは、マイクロ流路チップ100の平面図であり、
図1Bは、
図1Aに示されるB−B線の断面図であり、
図1Cは、
図1Aに示されるC−C線の断面図である。
【0019】
図2は、マイクロ流路チップ100のチップ本体110の構成を示す図である。
図2Aは、チップ本体110の平面図であり、
図2Bは、
図2Aに示されるB−B線の断面図であり、
図2Cは、
図2Aに示されるC−C線の断面図である。
【0020】
図3は、マイクロ流路チップ100の樹脂フィルム120の構成を示す図である。
図3Aは、樹脂フィルム120の平面図であり、
図3Bは、
図3Aに示されるB−B線の断面図である。
【0021】
図4は、マイクロ流路チップ100の部分拡大平面図である。
【0022】
図1A〜
図1Cに示されるように、マイクロ流路チップ100は、2つの有底の凹部(液体導入口160および空気排出口180)および1つの密閉空間(空気溜まり部170)を有する板状のデバイスである。液体導入口160および空気溜まり部170は、第1の流路130により互いに連通している。液体導入口160は、第1の流路130の第1の端部に形成されており、空気溜まり部170は、第2の端部に形成されている。空気排出口180は、第2の流路140および連絡部150を介して第1の流路130に連通している。後述するように、空気溜まり部170は、空気溜まり部170と外部とを連通する貫通孔を形成できるように形成されている。
【0023】
図1A〜
図1Cに示されるように、マイクロチップ100は、チップ本体(基板)110および樹脂フィルム120を有する。
【0024】
チップ本体110は、透明な略矩形の樹脂基板である。チップ本体110には、2つの貫通孔112a,112bおよび1つの有底の凹部114が形成されている(
図2A〜
図2C参照)。2つの貫通孔112a,112bは、樹脂フィルム120により一方の開口部が閉塞されることで、それぞれ有底の凹部(液体導入口160および空気排出口180)となる(
図1Bおよび
図1C参照)。また、凹部114は、樹脂フィルム120により開口部が閉塞されることで、密閉空間(空気溜まり部170)となる(
図1B参照)。
【0025】
貫通孔112a,112bおよび凹部114の形状は、特に限定されないが、例えば略円柱状である。チップ本体110の厚さは、特に限定されないが、例えば1mm〜10mmである。また、貫通孔112a,112bおよび凹部114の直径は、特に限定されないが、例えば2mm程度である。
【0026】
チップ本体110の樹脂フィルム120側の面には、貫通孔112aと凹部114とを接続する溝116aが形成されている。この溝116aは、樹脂フィルム120により開口部が閉塞されることで、液体導入口160と空気溜まり部170とを接続する第1の流路130となる(
図1B参照)。
【0027】
また、チップ本体110の樹脂フィルム120側の面には、貫通孔112bと溝116aとを接続する溝116b,116cも形成されている。これらの溝116b,116cは、樹脂フィルム120により開口部が閉塞されることで、空気排出口180と第1の流路130とを接続する流路(第2の流路140および連絡部150)となる(
図1C参照)。
【0028】
チップ本体110を構成する樹脂の種類は、特に限定されず、公知の樹脂から適宜選択されうる。チップ本体110を構成する樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエチレンなどが含まれる。
【0029】
樹脂フィルム120は、チップ本体110の一方の面に接合された、透明な略矩形の樹脂フィルムである(
図3Aおよび
図3B参照)。たとえば、樹脂フィルム120は、熱圧着によりチップ本体110に接合されている。前述の通り、樹脂フィルム120は、チップ本体110に形成された貫通孔112a,112b、凹部114および溝116a〜116cの開口部を閉塞している。
【0030】
樹脂フィルム120の厚さは、特に限定されないが、凹部114の開口部を閉塞している部位(空気溜まり部170の壁面を構成する部位)に、空気溜まり部170と外部とを連通する貫通孔を形成できる厚さが好ましい。このようにすることで、任意のタイミング(マイクロバルブを開放するタイミング)で、空気溜まり部170と外部とを連通する貫通孔を形成することができる。たとえば、樹脂フィルム120の厚さは、100μm程度である。
【0031】
樹脂フィルム120を構成する樹脂の種類は、特に限定されず、公知の樹脂から適宜選択されうる。樹脂フィルム120を構成する樹脂の例は、チップ本体110を構成する樹脂の例と同じである。チップ本体110と樹脂フィルム120との密着性を向上させる観点からは、樹脂フィルム120を構成する樹脂は、チップ本体110を構成する樹脂と同一であることが好ましい。
【0032】
図4に示されるように、第1の流路130および第2の流路140は、連絡部150を介して互いに連通している。第1の流路130および連絡部150は、いずれも毛管現象により流体(液体)が移動可能な管である。第1の流路130の断面積および断面形状は、その内部を液体が毛管現象により移動可能であれば特に限定されない。たとえば、第1の流路130の断面形状は、一辺の長さ(幅および深さ)が数十μm程度の略矩形である。なお、本明細書において、「流路の断面」とは、流体(液体または気体)が流れる方向に直交する流路の断面を意味する。
【0033】
これに対し、連絡部150の断面積は、第2の流路140の断面積より十分に小さい。より具体的には、連絡部150と第2の流路140との接続部において、流路の断面積が急激に変化するように、連絡部150の断面積を第2の流路140の断面積よりも小さくする。このようにすることで、連絡部150内の液体が、自らの表面張力により第2の流路140に進入することができなくなる。すなわち、連絡部150と第2の流路140との接続部が、バルブとして機能する。たとえば、第2の流路140の断面形状は、一辺の長さ(幅および深さ)が数十μm程度の略矩形であり、連絡部150の断面形状は、一辺の長さ(幅および深さ)が30μm程度の略矩形である。
【0034】
また、
図4に示されるように、空気溜まり部170は、第1の流路130にのみ連通している密閉空間である。ここで「密閉空間」とは、外部と直接連通していない空間を意味する。したがって、第1の流路130内の空気は、空気排出口180からは外部に排出されうるが、空気溜まり部170からは外部に排出されない。
【0035】
空気溜まり部170と外部との間に位置する樹脂フィルム120は、空気溜まり部170と外部とを連通する貫通孔を形成されうる。樹脂フィルム120に貫通孔を形成した場合、第1の流路130内の空気は、空気排出口180からだけでなく、空気溜まり部170からも外部に排出されうる。
【0036】
本実施の形態のマイクロ流路チップ100は、例えば、
図2A〜
図2Cに示されるチップ本体110と
図3Aおよび
図3Bに示される樹脂フィルム120とを接合することで製造されうる。
【0037】
[マイクロ流路チップの使用方法]
次に、本実施の形態のマイクロ流路チップ100の使用方法について、
図5を参照して説明する。
図5Aおよび
図5Bは、マイクロ流路チップ100の使用態様を説明するためのマイクロ流路チップ100の部分拡大平面図である。
【0038】
まず、
図5Aに示されるように、液体導入口160に試薬や液体試料などの液体210を提供することで、第1の流路130内に液体210を導入する。液体導入口160内の液体210は、毛管現象により第1の端部(液体導入口160)側から第2の端部(空気溜まり部170)側に向けて第1の流路130内を進み、第1の流路130と連絡部150との接続部に到達する。前述の通り、第1の流路130内の空気は、空気排出口180からは外部に排出されうるが、空気溜まり部170からは外部に排出されない。したがって、液体210は、連絡部150内を進むことはできるが、第1の流路130内をこれ以上第2の端部(空気溜まり部170)に向かって進むことはできない。また、連絡部150と第2の流路140との接続部はバルブとして機能するため、液体210は、第2の流路140内に進むこともできない。
【0039】
このように、液体導入口160に液体210を提供することで、第1の流路130内の、第1の端部(液体導入口160)と、第1の流路130と連絡部150との接続部との間にのみ液体210を導入することができる(バルブ閉鎖状態)。
【0040】
次いで、
図5Bに示されるように、空気溜まり部170と外部との間に位置する樹脂フィルム120に貫通孔220を形成することで、第1の流路130内の空気を空気溜まり部170からも排出できるようにする。その結果、第1の流路130内の液体210は、毛管現象により第2の端部(空気溜まり部170)側に移動する(バルブ開放状態)。
【0041】
樹脂フィルム120に貫通孔220を形成する方法は、特に限定されない。たとえば、樹脂フィルム120に針を刺したり、レーザ光を照射したり、加熱することで、樹脂フィルム120に貫通孔220を形成することができる。樹脂フィルム120を加熱して貫通孔220を形成する場合は、
図6に示されるように、樹脂フィルム120の上に加熱部190を形成してもよい。加熱部190は、樹脂フィルム120の空気溜まり部170側の面に形成されてもよいし、外部側の面に形成されてもよい。いずれの場合であっても、加熱部190に電流を流すことで、樹脂フィルム120に貫通孔220を形成することができる。
【0042】
以上の手順により、液体210を第1の流路130の一部および連絡部150内に留めること、および第1の流路130内の液体210を任意のタイミングで空気溜まり部170方向に移動させること、を実現することができる。
【0043】
[効果]
本実施の形態のマイクロ流路チップ100は、液体210の表面張力を利用することで、液体210を第1の流路130内の一部(液体導入口160と、第1の流路130および連絡部150の接続部との間)に留めることができる。また、本実施の形態のマイクロ流路チップ100は、空気溜まり部170と外部との間に位置する樹脂フィルム120に貫通孔220を形成することで、第1の流路130内の液体210を空気溜まり部170方向に移動させることができる。このように、本実施の形態のマイクロ流路チップ100は、外部に大掛かりな装置を設置することなく、流路内の液体の流れを容易に制御することができる。
【0044】
なお、これまでの説明では、空気排出口180、連絡部150および空気溜まり部170がそれぞれ1つずつ形成されたマイクロ流路チップ100について説明したが、マイクロ流路チップ100内の空気排出口180、連絡部150および空気溜まり部170の数はこれに限定されない。すなわち、マイクロ流路チップ100内には、複数のマイクロバルブ構造が形成されていてもよい。
【0045】
[流体取扱システムの構成]
次に、上記のマイクロ流路チップ100を有する流体取扱システム300について説明する。
【0046】
図7は、本実施の形態の流体取扱システム300の構成を示す平面図である。また、
図8は、
図7に示されるA−A線の断面図である。平面視したときの流体取扱システム300の外径は、例えば60〜70mm程度である。
【0047】
図9は、流体取扱システム300の駆動部ホルダ310の構成を示す図である。
図9Aは、駆動部ホルダ310の平面図であり、
図9Bは、
図9Aに示されるB−B線の断面図である。
【0049】
図12は、流体取扱システム300の第1のピンホルダ330の構成を示す図である。
図12Aは、第1のピンホルダ330の平面図であり、
図12Bは、
図12Aに示されるB−B線の断面図である。
【0050】
図13は、流体取扱システム300の第2のピンホルダ340の構成を示す図である。
図13Aは、第2のピンホルダ340の平面図であり、
図13Bは、
図13Aに示されるB−B線の断面図である。
【0051】
図14は、流体取扱システム300の第3のピンホルダ350の構成を示す図である。
図14Aは、第3のピンホルダ350の平面図であり、
図14Bは、
図14Aに示されるB−B線の断面図である。
【0052】
図15は、流体取扱システム300のチップホルダ360の構成を示す図である。
図15Aは、チップホルダ360の平面図であり、
図15Bは、
図15Aに示されるB−B線の断面図である。
【0053】
図7および
図8に示されるように、本実施の形態の流体取扱システム300は、駆動部ホルダ310、コーデッドプレート320、第1のピンホルダ330、第2のピンホルダ340、第3のピンホルダ350、チップホルダ360、駆動部370および複数のピン380a〜380e(ただしピン380b〜380eは図示せず)を有する。流体取扱システム300は、チップホルダ360に形成された凹部にマイクロ流路チップ100を差し込んだ状態で使用される。
【0054】
駆動部ホルダ310は、駆動部370およびその他の部材を支持する支持部材である(
図8参照)。駆動部ホルダ310の中央部には、駆動部370を設置するための凹部が形成されている。また、駆動部ホルダ310の外周部には、第3のピンホルダ350の凸部が嵌合しうる溝が形成されている(
図9B参照)。
【0055】
駆動部370は、駆動部ホルダ310の凹部内に配置されている。駆動部370は、回転軸372を所定の速度で回転させることで、流体取扱システム300を動作させる。後述するように、回転軸372には、第1のピンホルダ330および第2のピンホルダ340が固定されている。駆動部370の回転軸372が回転すると、第1のピンホルダ330、第2のピンホルダ340、第3のピンホルダ350、チップホルダ360、複数のピン380a〜380eおよびマイクロ流路チップ100が一体となって回転する。たとえば、駆動部370は、電動機(モーター)やぜんまいばねなどである。
【0056】
コーデッドプレート320は、駆動部ホルダ310の上に配置されており、第3のピンホルダ350により固定されている。コーデッドプレート320は回転軸372に固定されておらず、回転軸372が回転しても、コーデッドプレート320は回転しない。
【0057】
コーデッドプレート320の表面には、5本の円周状の溝322a〜322eが形成されている(
図10Aおよび
図10B参照)。円周状の溝322a〜322eの中心は、いずれも回転軸372の中心と一致している。
【0058】
溝322a〜322eには、凸部324が形成されている(
図11A〜
図11D参照)。後述するように、凸部324は、流体取扱システム300の動作内容を規定する。すなわち、コーデッドプレート320の溝322a〜322eには、流体取扱システム300の動作内容を規定する情報が書き込まれている。
【0059】
第1のピンホルダ330および第2のピンホルダ340は、コーデッドプレート320の上に配置される。一方、第3のピンホルダ350は、コーデッドプレート320、第1のピンホルダ330および第2のピンホルダ340の側面に配置される。第1のピンホルダ330、第2のピンホルダ340および第3のピンホルダ350は、図示しないねじにより互いに固定されている。また、互いに固定された第1のピンホルダ330および第2のピンホルダ340は、回転軸372に固定されている。したがって、回転軸372が回転すると、第1のピンホルダ330、第2のピンホルダ340および第3のピンホルダ350が一体となって回転する。
【0060】
第1のピンホルダ330には、ピン380a〜380eを収容するための貫通孔332a〜332eが形成されている(
図12A参照)。同様に、第2のピンホルダ340にも、ピン380a〜380eを収容するための貫通孔342a〜342eが形成されている(
図13A参照)。第1のピンホルダ330および第2のピンホルダ340を回転軸372に固定した場合、貫通孔332aおよび貫通孔342aは、合わせて一つのピン収容部382aを形成する(
図8参照)。同様に、貫通孔332b〜332eおよび貫通孔342b〜342eも、それぞれピン収容部382b〜382eを形成する。このようにして形成されるピン収容部382a〜382eは、それぞれ、コーデッドプレート320の溝322a〜322eの上に位置する。
【0061】
ピン380a〜380eは、それぞれ、ピン収容部382a〜382e内に収容されている(
図8参照)。ピン380a〜380eの下端は、それぞれ、コーデッドプレート320の溝322a〜322eの底面に接触している。また、ピン380a〜380eの上端は、それぞれマイクロ流路チップ100の樹脂フィルム120(空気溜まり部170の壁面を構成する部分)に対向している。ピン380a〜380eの上端の形状は、針状である。
【0062】
チップホルダ360は、第1のピンホルダ330および第2のピンホルダ340の上に固定されている。チップホルダ360の第2のピンホルダ340側の面には、マイクロ流路チップ100を差し込むための凹部が形成されている(
図15参照)。
【0063】
[流体取扱システムの動作]
次に、本実施の形態の流体取扱システム300の動作について、
図16を参照して説明する。
図16は、流体取扱システム300の動作を説明するための流体取扱システム300の部分拡大断面図である。
【0064】
駆動部370が所定の速度で回転軸372を回転させると、第1のピンホルダ330、第2のピンホルダ340、第3のピンホルダ350、チップホルダ360、ピン380a〜380eおよびマイクロ流路チップ100は、一体となって回転する。一方、コーデッドプレート320は回転しない。したがって、ピン380a〜380eは、それぞれ、コーデッドプレート320の溝322a〜322eをなぞるように移動する。
【0065】
図16Aに示されるように、溝322a〜322eが通常の深さの場合、ピン380a〜380eの上端は、マイクロ流路チップ100の樹脂フィルム120には接触しない。一方、
図16Bに示されるように、溝322a〜322eの凸部324の上にピン380a〜380eの下端が乗り上げた場合、ピン380a〜380eの上端は、マイクロ流路チップ100の樹脂フィルム120を押圧する。これにより、樹脂フィルム120に貫通孔220が形成され、第1の流路130内の液体210は、毛管現象により空気溜まり部170に向かって移動する。
【0066】
以上のように、本実施の形態の流体取扱システム300では、コーデッドプレート320の溝322a〜322eに形成された凸部324のパターンに従って、ピン380a〜380eが自動的にマイクロ流路チップ100の樹脂フィルム120に貫通孔220を形成する。これにより、コーデッドプレート320の溝322a〜322eに形成された凸部324のパターンに従って、マイクロ流路チップ100のマイクロバルブ(第1の流路130、第2の流路140、連絡部150、空気溜まり部170および空気排出口180により構成されるマイクロバルブ)が自動的に開放される。
【0067】
[効果]
本実施の形態の流体取扱システム300は、マイクロ流路チップ100内に設けたマイクロバルブを任意のタイミングで自動的に開放することができる。本実施の形態の流体取扱システム300は、大掛かりな装置を必要としないため、容易に小型化することができる。
【0068】
なお、マイクロ流路チップ100の空気溜まり部170内に加熱部190が配置されている場合(
図6参照)、流体取扱システム300は、加熱部190に電流を流して樹脂フィルム120に貫通孔220を形成することで、マイクロ流路チップ100のマイクロバルブを開放してもよい。すなわち、流体取扱システム300に設けられるバルブ開放部は、マイクロ流路チップ100の樹脂フィルム120にピンを押圧することでマイクロバルブを開放してもよいし、樹脂フィルム120を加熱することでマイクロバルブを開放してもよい。
【0069】
また、これまでの説明では、コーデッドプレート320の溝322a〜322eに形成された凸部324を利用してピン380a〜380eを操作する例について説明したが、ピン380a〜380eを操作する方法はこれに限定されない。たとえば、板バネやソレノイドアクチュエータ、空圧シリンダなどを用いてピン380a〜380eを操作してもよい。
【0070】
(実施の形態2)
[マイクロ流路チップの構成]
図17は、本発明の実施の形態2のマイクロ流路チップ400の構成を示す部分拡大平面図である(
図4に対応)。実施の形態2のマイクロチップ400は、実施の形態1のマイクロ流路チップ100と同様に、チップ本体110および樹脂フィルム120により形成されている(
図1A〜
図1C参照)。なお、
図1〜4に示される実施の形態1のマイクロ流路チップ100と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
図17に示されるように、実施の形態2のマイクロ流路チップ400は、第1の流路130、第2の流路140、連絡部150、液体導入口160(図示省略)、空気溜まり部170および空気排出口180(図示省略)を有する。実施の形態2のマイクロ流路チップ400は、第1の流路130内に凸部410を有する点において実施の形態1のマイクロ流路チップ100と異なる。
【0072】
凸部410は、第1の流路130内において、連絡部150の開口部152に対向する位置に形成されている。凸部410の大きさおよび形状は、第1の流路130を塞がなければ特に限定されない。
【0073】
[マイクロ流路チップの使用方法]
次に、マイクロ流路チップ400の使用方法について、
図18を参照して説明する。
図18Aおよび
図18Bは、マイクロ流路チップ400の使用態様を説明するためのマイクロ流路チップ400の部分拡大平面図である。
【0074】
まず、
図18Aに示されるように、液体導入口160に液体210を提供することで、第1の流路130内に液体210を導入する。これにより、実施の形態1のマイクロ流路チップ100と同様に、第1の流路130内の、第1の端部(液体導入口160)と、第1の流路130と連絡部150との接続部との間にのみ液体210を導入することができる(バルブ閉鎖状態)。このとき、第1の流路130内に凸部410が形成されているため、液体210が第2の端部(空気溜まり部170)側に移動することをより確実に防止することができる。
【0075】
次いで、
図18Bに示されるように、空気溜まり部170と外部との間に位置する樹脂フィルム120に貫通孔220を形成する。その結果、実施の形態1のマイクロ流路チップ100と同様に、第1の流路130内の液体210は、毛管現象により第2の端部(空気溜まり部170)側に移動する(バルブ開放状態)。
【0076】
以上の手順により、実施の形態1のマイクロ流路チップ100と同様に、液体210を第1の流路130の一部および連絡部150内に留めること、および第1の流路130内の液体210を任意のタイミングで空気溜まり部170方向に移動させること、を実現することができる。
【0077】
[効果]
本実施の形態のマイクロ流路チップ400は、実施の形態1のマイクロ流路チップ100の効果に加えて、バルブ閉鎖状態のときに液体210の流れをより確実に停止することができる。
【0078】
(実施の形態3)
[マイクロ流路チップの構成]
図19および
図20は、本発明の実施の形態3のマイクロ流路チップ500の構成を示す図である。
図19Aは、マイクロ流路チップ500の平面図であり、
図19Bは、
図19Aに示されるB−B線の断面図である。また、
図20は、マイクロ流路チップ500の部分拡大平面図である。
【0079】
実施の形態3のマイクロチップ500は、実施の形態1のマイクロ流路チップ100と同様に、チップ本体110および樹脂フィルム120により形成されている(
図19Aおよび
図19B参照)。なお、
図1〜4に示される実施の形態1のマイクロ流路チップ100および
図17に示される実施の形態2のマイクロ流路チップ400と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図19Aおよび
図19Bに示されるように、マイクロ流路チップ500は、4つの有底の凹部(第1の液体導入口160、第1の空気排出口180、第2の液体導入口530および第2の空気排出口540)および1つの密閉空間(空気溜まり部170)を有する板状のデバイスである。
【0081】
第1の液体導入口160および空気溜まり部170は、第1の流路130により互いに連通している。第1の液体導入口160は、第1の流路130の第1の端部に形成されており、空気溜まり部170は、第2の端部に形成されている。第1の空気排出口180は、第2の流路140および連絡部150を介して第1の流路130に連通している。
【0082】
第2の液体導入口530および第2の空気排出口540は、第3の流路510により互いに連通している。第2の液体導入口530は、第3の流路510の第1の端部に形成されており、第2の空気排出口540は、第2の端部に形成されている。
【0083】
図20に示されるように、第1の流路130および第3の流路510は、第2の連絡部520により互いに連通している。第1の流路130において、第2の連絡部520との接続部の位置は、第1の連絡部150との接続部と、空気溜まり部170との間に位置する。
【0084】
第3の流路510は、毛管現象により流体(液体)が移動可能な管である。第3の流路510の断面積および断面形状は、その内部を液体が毛管現象により移動可能であれば特に限定されない。たとえば、第3の流路510の断面形状は、一辺の長さ(幅および深さ)が数十μm程度の略矩形である。
【0085】
第2の連絡部520の断面積は、第1の流路130の断面積より十分に小さい。より具体的には、第2の連絡部520と第1の流路130との接続部において、流路の断面積が急激に変化するように、第2の連絡部520の断面積を第1の流路130の断面積よりも小さくする。このようにすることで、第2の連絡部520内の液体が、自らの表面張力により第1の流路130に進入することができなくなる。すなわち、第2の連絡部520と第1の流路130との接続部が、バルブとして機能する。たとえば、第2の連絡部520の断面形状は、一辺の長さ(幅および深さ)が30μm程度の略矩形である。
【0086】
また、
図20に示されるように、第1の流路130における第2の連絡部520の接続部と空気溜まり部170との間には、第1の流路130の断面積が周囲に比べて小さくなっている細径部132が形成されている。細径部132は、第1の連絡部150および第2の連絡部520と同様に、バルブとして機能する。
【0087】
[マイクロ流路チップの使用方法]
次に、本実施の形態のマイクロ流路チップ500の使用方法について、
図21を参照して説明する。
図21A〜
図21Cは、マイクロ流路チップ500の使用態様を説明するためのマイクロ流路チップ500の部分拡大平面図である。
【0088】
まず、
図21Aに示されるように、第2の液体導入口530に第2の液体230を提供することで、第3の流路510内に第2の液体230を導入する。次いで、第1の液体導入口160に第1の液体210を提供することで、第1の流路130内に液体210を導入する。
【0089】
第2の液体導入口530内の第2の液体230は、毛管現象により第3の流路510内を進み、第2の空気排出口540に到達する。また、第2の液体230は、毛管現象により第2の連絡部520内にも進む。しかしながら、第2の連絡部520と第1の流路130との接続部はバルブとして機能するため、第2の液体230は、第1の流路130内に進むことはできない。
【0090】
一方、第1の液体導入口160内の第1の液体210は、実施の形態1で説明したように、第1の流路130と第1の連絡部150との接続部まで第1の流路130内を進む(バルブ閉鎖状態)。なお、第2の連絡部520は、第2の液体230で満たされているため、第1の流路130内の空気が、第2の液体導入口530または第2の空気排出口540から外部に排出されることはない。
【0091】
次いで、
図21Bに示されるように、空気溜まり部170と外部との間に位置する樹脂フィルム120に貫通孔220を形成することで、第1の流路130内の空気を空気溜まり部170から排出できるようにする。その結果、第1の流路130内の第1の液体210は、毛管現象により第2の端部(空気溜まり部170)側に移動する(バルブ開放状態)。
【0092】
図21Cに示されるように、第1の液体210は、細径部132まで第1の流路130内を進む。細径部132はバルブとして機能するため、第1の液体210は、これ以上先に進むことはできない。すなわち、第1の液体210が移動可能な細径部132までが第1の流路130に相当し、細径部132の端部(第2の端部側)から先の部分全体が空気溜まり部170に相当する。最終的には、第1の流路130と第2の連絡部520との接続部において、第1の液体210と第2の液体230の液液界面が形成される。
【0093】
以上の手順により、任意のタイミングで第1の液体210と第2の液体230の液液界面形成することができる。
【0094】
なお、本実施の形態においては、細径部132が第1の流路130における第2の連絡部520の接続部の近傍に形成される例について示したが、細径部132の位置はこれに限定されない。たとえば、細径部132は、第2の連絡部520の接続部から離れた位置に形成されていてもよい。いずれの場合であっても、貫通孔220の形成時における細径部132より先への第1の液体210の流出を抑制することができる。また、貫通孔220の形成時に、連続的に第1の流路130内へ第1の液体210を流入する工程が必要な場合には、細径部132を形成しなくてもよい。
【0095】
[効果]
本実施の形態のマイクロ流路チップ500は、実施の形態1のマイクロ流路チップ100の効果に加えて、任意のタイミングで第1の液体210と第2の液体230の液液界面形成することができる。
【0096】
たとえば、本実施の形態のマイクロ流路チップ500では、抗体を担持させた磁気ビーズを用いて、反応工程と洗浄工程を連続して行うことが可能である。具体的には、1)第1の流路130内の第1の液体210中で抗原を抗体に結合させ、2)第1の液体210と第2の液体230の液液界面を形成し、3)磁石を用いて磁気ビーズを第3の流路510内の第2の液体230中に移動させ、4)第2の液体230で磁気ビーズを洗浄することができる。
【0097】
上記1)〜4)の工程における磁気ビーズの操作は、磁石を備えた流体取扱システム300を用いることによって、自動的に行うことができる。すなわち、コーデッドプレート320の穴部326、第1のピンホルダ330の溝部334および第2のピンホルダ340の溝部344に磁石を係合させ、第2のピンホルダ340の溝部344の形状などにより1)〜4)の工程に合わせて磁石の動きを予め規定しておくことで、磁気ビーズの操作を自動的に行うことができる。
【0098】
本出願は、2011年7月20日出願の特願2011−158688に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。