特許第6166870号(P6166870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166870
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】柱の立設方法、及び柱
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   E04G21/14
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-161773(P2012-161773)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-20157(P2014-20157A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 大地
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−045237(JP,U)
【文献】 実開平04−100188(JP,U)
【文献】 特開2010−121395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/14−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
の対向する2つの側部における高さ方向の重心位置よりも上の位置に、一対の引掛部材を前記柱の周面に着脱自在に取り付ける取付工程と、
当該引掛部材に、揚重機から垂下させた吊り具のフックを引掛ける引掛け工程と、
前記揚重機を用いて前記吊り具のフックを引き上げ、前記柱を鉛直に吊り上げる吊り上げ工程と、
前記柱を、鉛直状態を維持したまま所定位置に降下させる降下工程と、
前記柱の下端をその下方に位置する下部構造体に接合する接合工程と、を有することを特徴とする柱の立設方法。
【請求項2】
前記引掛部材は、
ボルトを挿通する挿通孔を有し前記柱の側部に当接される当接面を備えた当接片と、
前記当接片から前記当接面と反対方向に延出し、前記フックが引掛けられる引掛け孔を有する延出片と、
前記当接片から前記延出片とは反対方向に延出し、前記柱の他の側部に係止されて前記柱を吊り上げた状態における前記当接片の前記ボルトを軸とした回転を拘束する係止片と、を有することを特徴とする請求項1記載の柱の立設方法。
【請求項3】
前記フックは、引き紐の操作により、前記フックの前記引掛部材への引掛け状態を解除し得るように構成されており、
前記引き紐の操作により前記引掛け状態を解除する解除工程を、前記接合工程の後段階に有することを特徴とする請求項1又は2記載の柱の立設方法。
【請求項4】
対向する2つの側部を有する柱であって、
当該柱を鉛直に吊り上げ及び降下し得るように、一対の引掛部材が前記2つの側部における高さ方向の重心位置よりも上の位置において、当該柱の周面に着脱自在に取り付けられたことを特徴とする柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱の立設方法、及び柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄骨造建物の建設現場においては、柱をクレーン等の揚重機で吊り上げた後に所定位置で降下させて立設させている。このような柱の立設作業に関して、特許文献1には、柱にワイヤーロープ等を巻き付けて、当該ワイヤーロープの端部の環状部分を揚重機のフックで引っ掛けて吊り上げる方法が開示されている。また、特許文献2には柱を基礎に接合させる際に用いる露出型弾性固定柱脚工法が開示されており、特許文献3には柱と柱とを接合させる際の接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−364177号公報
【特許文献2】特開平01−203522号公報
【特許文献3】特開平06−180026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようにロープの環状部分にフックを引っ掛けて柱を吊り上げる方法を採用した場合、吊り上げられた柱が傾いてしまうので、柱の立設の際にスムーズに作業を行えないという課題がある。より具体的には、特許文献2の露出型弾性固定柱脚工法を採用している場合には、厚肉のベースプレートの孔にアンカーボルトを挿通させる作業がスムーズに行えず、特許文献3のような接合構造を有する場合には、接合部を嵌合させる作業がスムーズに行えないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、柱の接合作業をスムーズに行うことができる柱の立設方法、及び柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る柱の立設方法は、柱の対向する2つの側部における高さ方向の重心位置よりも上の位置に、一対の引掛部材を柱の周面に着脱自在に取り付ける取付工程と、当該引掛部材に、前記揚重機から垂下させた吊り具のフックを引掛ける引掛け工程と揚重機を用いて前記吊り具のフックを引き上げ、前記柱を鉛直に吊り上げる吊り上げ工程と、柱を、鉛直状態を維持したまま所定位置に降下させる降下工程と、柱の下端をその下方に位置する下部構造体に接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る柱の立設方法によれば、柱は、吊り上げ工程において鉛直に吊り上げられ、降下工程において鉛直状態を維持したまま降下され、この状態で下部構造体に接合される。このように、吊り上げ工程及び降下工程において柱が鉛直状態となっており、柱の軸方向と、下部構造体の接合部の軸方向とが一致することとなるため、柱の吊り上げ時及び柱の接合時における部材同士の無用な干渉を防止することが可能となり、柱の接合作業をスムーズに行うことができる。
【0008】
また、フックを引掛ける引掛部材を柱に着脱自在に取り付けるため、引掛部材が不要な場合には引掛部材を柱から外すことにより、作業員等が引掛部材に引掛る事態が生じなくなり、作業の安全性を保つことができる。また、柱をトラックの荷台等に積載する際や建設現場に仮置きする際には、引掛部材を外しておくことにより、荷姿がよくなるとともに、積載あるいは仮置き等を効率よく行うことが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る柱の立設方法では、引掛部材は、ボルトを挿通する挿通孔を有し柱の側部に当接される当接面を備えた当接片と、当接片から当接面と反対方向に延出し、フックが引掛けられる引掛け孔を有する延出片と、当接片から延出片とは反対方向に延出し、柱の他の側部に係止されて柱を吊り上げた状態における当接片のボルトを軸とした回転を拘束する係止片と、を有することが好ましい。この場合、当接片の挿通孔及び柱の孔部にボルトが挿通され、当該ボルトにより引掛部材が柱に取り付けられ、係止片によって当接片の回転が拘束されるようになっている。よって、吊り上げ工程及び降下工程において、引掛部材の回転を防止し、柱の姿勢を安定させることができるため、柱の立設作業の効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る柱の立設方法では、フックは、引き紐の操作により、フックの引掛部材への引掛け状態を解除し得るように構成されており、引き紐の操作により引掛け状態を解除する解除工程を、接合工程の後段階に有することが好ましい。このように、引き紐の操作によって引掛け状態を解除する解除工程を有すると、フックの取り外し作業を、脚立等を使用せずに、引き紐の操作のみで容易に行えることとなるため、作業効率をより向上させることができる。
本発明に係る柱は、対向する2つの側部を有する柱であって、当該柱を鉛直に吊り上げ及び降下し得るように、一対の引掛部材が2つの側部における高さ方向の重心位置よりも上の位置において、当該柱の周面に着脱自在に取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柱の接合作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法が適用された柱と引掛部材とを示した側面図である。
図2図1中の引掛部材を示す斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法において、柱に引掛部材を取り付けた状態を示す平面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法において、柱に取り付けた引掛部材にフックを引掛けた状態を示す斜視図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法において、柱を上方に吊り上げる状態を示す側面図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法において、柱を下方に降下させる状態を示す側面図である。
図7】本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法において、柱を下部構造体に接合させる状態を示す側面図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る柱の立設方法において、上部柱を接合させる下部柱を示す斜視図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る柱の立設方法において、下部柱のコラムカプラにクリッパーを取り付けた状態を示す斜視図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る柱の立設方法において、上部柱を下方に降下させる状態を示す斜視図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る柱の立設方法において、上部柱を下部柱に接合させる状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る柱の立設方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
[第一実施形態]
図1図7を参照して、本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法について説明する。本実施形態における下部構造体は、鉄筋コンクリート製の基礎である。図1は、本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法が適用された柱と引掛部材とを示す側面図である。図2は、引掛部材を示す斜視図である。図3は、柱に引掛部材を取り付けた状態を示す平面図である。図4は、柱に取り付けた引掛部材にフックを引掛けた状態を示す斜視図である。図5は、柱を上方に吊り上げる状態を示す側面図である。図6は、柱を下方に降下させる状態を示す側面図である。図7は、柱を下部構造体に接合させる状態を示す側面図である。
【0015】
図1に示すように、柱10は、ラーメン構造の骨組みを構成する構造部材であり、略正方形断面を有する角形鋼管からなる。
【0016】
柱10の対向する2つの側部11における高さ方向の中間位置よりも上方に偏った位置(すなわち高さ方向の重心位置よりも高い位置)かつ幅方向の中央位置(すなわち幅方向の重心位置)には、ボルト30を挿通する為の孔部11aが穿たれている。また、柱10の下端部には、正方形板状でアンカーボルトを挿通する為の挿通孔12aが穿設されたベースプレート12が溶接されている。柱10の対向する2つの側部11には、夫々引掛部材20が着脱自在に取り付けられる。
【0017】
引掛部材20は、図2に示すように、矩形平板状の当接片21と、当接片21の上辺から直角に屈曲された矩形平板状の延出片22と、当接片21の側辺から延出片22とは逆方向に直角に屈曲された矩形平板状の係止片23と、を備えて構成されている。
【0018】
当接片21の幅は柱10の幅と同程度であり、係止片23側の面が柱10の側部11の外面に当接される当接面21bとなる。当接片21の幅方向の略中央部にボルト30を挿通するための挿通孔21aを有している。
【0019】
延出片22の幅方向の中央部に後述するフック41を引掛けるための引掛け孔22aを有する。
【0020】
側部係止片23の当接片21側の面は、柱10の4つの側部のうち、2つの側部11以外の側部(側部11に隣接する側部)11´(図3参照)の外面に当接される当接面23aとなる。
【0021】
以上のように構成される引掛部材20には、図4に示すように、吊り具40が取り付けられる。吊り具40は、ワイヤー43と、ワイヤー43の夫々の端部に接続されるフック41と、夫々のフック41から下方に垂れ下がるように設けられる引き紐42と、を備えて構成されている。
【0022】
フック41は、延出片22の引掛け孔22aに係合するための係合部41aを有する。係合部41aは、鉤状で先端が上方に突出するように形成されており、係合部41aが引掛け孔22aに係合し、例えば係合部41aの先端がフック41本体の突出部に当接することにより、フック41が引掛部材20に引っ掛けられるようになっている。
【0023】
引き紐42は、一端がフック41の下端部に取付けられ、他端が下方に垂れ下げられ、その長さは柱10を下部構造体100に接合した状態において、地上や作業床面にいる作業者の手に届く程度に設定されている。
【0024】
上記構成の吊り具40では、引き紐42が下方に引かれることにより、係合部41aの先端が引き下げられてフック41本体の突出部から離間し、係合部41aの引掛け孔22aに対する係合が解除される。更にこの状態を保ったまま、フック41を引掛部材20から遠ざける方向に引き紐42が引かれることで、引掛部材20への引掛け状態が解除される。
【0025】
次に、第一実施形態に係る柱の立設方法の各工程について説明する。まず、引掛部材20の取付工程が行われる。取付工程は、例えば建設現場にトラック等によって搬入され、トラックの荷台あるいは仮置き場に横たえられた状態の柱10に対して行われる。取付工程において、柱10の対向する2つの側部11であって高さ方向の重心位置よりも上の位置に、一対の引掛部材20が取り付けられる。
【0026】
具体的には、図3に示すように、柱10の2つの側部11の夫々において、引掛部材20の当接片21の当接面21bが側部11の外面に当接されるとともに、係止片23の当接面23aが側部11に隣接する一方の側部11´の外面に当接され、更に挿通孔21aと孔部11aの位置が合わせられる。この状態で一方の挿通孔21aにボルト30が挿通され、他方の挿通孔21aから突設されたボルト30の先端にナット31が螺合されることにより、右側の引掛部材20は柱10に取り付けられる。
【0027】
次に、引掛部材20に、図4に示すように、揚重機から垂下させた吊り具40のフック41を引掛ける引掛け工程が行われる。引掛け工程において、ワイヤー43の両端に設けられた2個のフック41は、その係合部41aが引掛部材20の引掛け孔22aに係合されることにより、引掛部材20に引っ掛けられる。
【0028】
次に、柱10を鉛直に吊り上げる吊り上げ工程が行われる。吊り上げ工程では、まず、ワイヤー43の中間部がクレーン等の揚重機のフック50に引っ掛けられる。そして、揚重機の操作によってフック50が引き上げられて、横たえられた状態の柱10が、ベースプレート12を接地させた状態のまま起立される。この際、引掛部材20の回転が拘束されていないと、柱10の向きによっては、孔部21aの位置を回転の軸として引掛部材が回転する恐れがあるが、係止片23の当接面23aが側部11´の外面に当接しているので回転は阻止される。
【0029】
そして、図5に示すように、更に揚重機のフック50を上方に引き上げることにより柱10が宙に浮き、吊り上げられるが、この際、吊り具40のフック41の位置は柱10の高さ方向の重心位置よりも高く、且つ柱10の幅方向の重心位置に一致するので、柱10は鉛直状態が保たれる。また、吊り上げ工程において、引き紐42は、下方に垂れ下がった状態となっている。
【0030】
次に、柱10を、鉛直状態を維持させたまま所定位置に降下させる降下工程が行われる。降下工程では、図6に示すように、柱10が鉛直状態を維持した状態で、ベースプレート12の上下に貫通する貫通孔12aがその下方に位置する基礎(下部構造体)100のアンカーボルト101の上部に位置するように、揚重機が操作され、この状態でフック50が降下されることにより、柱10が基礎100に降下される。
【0031】
次に、柱10の下端をその下方に位置する基礎100のアンカーボルト101に接合させる接合工程が行われる。接合工程では、図7に示すように、柱10の鉛直状態が維持された状態で、貫通孔12aにアンカーボルト101が挿通され、アンカーボルトにナット102が螺入されることにより、柱10が基礎100に接合される。
【0032】
次に、引き紐42の操作により引掛け状態を解除する解除工程が行われる。解除工程では、地上で作業する作業者によって引き紐42が引っ張られることにより、フック41の引掛部材20に対する引掛け状態が解除されて吊り具40が引掛部材20から取り外される。なお、解除工程の後には、引掛部材20が柱10から取り外される。引掛部材20は、立設される柱10の数と同数用意されて、上記引掛部材20の取付工程から引掛け状態の解除工程までがすべての柱10について完了した後に、まとめて取り外されるのが作業効率上好ましい。
【0033】
本発明の第一実施形態に係る柱の立設方法の作用・効果について説明する。
【0034】
本実施形態に係る柱の立設方法によれば、柱10は、吊り上げ工程において鉛直に吊り上げられ、降下工程において鉛直状態を維持したまま降下され、この状態で下部構造体100に接合される。このように、吊り上げ工程及び降下工程において柱10が鉛直状態となっており、柱10の軸方向と、基礎100のアンカーボルト101の軸方向とが一致することとなるため、柱10の吊り上げ時及び柱10の接合時における部材同士の無用な干渉を防止することが可能となり、柱10の接合作業をスムーズに行うことができる。
【0035】
また、本実施形態に係る柱の立設方法では、フック41を引掛ける引掛部材20が柱10に着脱自在に取り付けられるため、立設作業完了後に引掛部材20を柱10から外すことにより、柱10からの突起がなくなる。この為、作業者の安全性を保つことができ、外壁や内装材等他の部材との干渉がなくなって部材の納まりがよくなるとともに施工性も向上する。更には、柱10をトラックの荷台等に積載する際や建設現場に仮置きする際には、引掛部材20を外しておくことにより、荷姿がよくなってトラックへの積載効率が向上し、建設現場においても効率よく仮置きすることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態に係る柱の立設方法では、係止片23によって引掛部材20の回転が拘束されるようになっている。よって、横たえられた状態の柱10をベースプレート12を支点として起立させるときに引掛部材20が回転して、柱10を吊り上げた際にワイヤー43の張力の作用線と柱10の中心軸線とがずれる事態を回避でき、吊り上げ時の柱10の姿勢が安定して立設作業の効率を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る柱の立設方法では、引き紐42の操作により、フック41の引掛部材20への引掛け状態を解除する解除工程を有するため、フック41の取り外し作業を、脚立等を使用せずに容易に行えることとなり、作業効率をより向上させることができる。
【0038】
[第二実施形態]
図8図11を用いて第二実施形態について説明する。本実施形態における下部構造体は、柱同士をコラムカプラと称する接合構造を用いて上下につなぐ際の下部柱である。図8は、下部柱200を示す斜視図である。図9は、下部柱200のコラムカプラ210にクリッパー214を取り付けた状態を示す斜視図である。図10は、上部柱150を下方に降下させる状態を示す斜視図である。図11は、上部柱150を下部柱200に接合させる状態を示す斜視図である。
【0039】
下部柱200は、略正方形断面を有する角形鋼管からなり、図8に示すように、下部柱200の上端には、上部柱150を接合させるための平面視矩形枠状のコラムカプラ210が設けられており、コラムカプラ210は、その上面に設けられる4個の孔部211と、クリッパー落下防止プレート212とを備えて構成される。コラムカプラ210の上面の四隅には下方に凹む凹部が4個形成されている。クリッパー落下防止プレート212は、クリッパー214の落下を防止するためのものであり、コラムカプラ210の内部に水平に設けられている。
【0040】
図9に示すように、クリッパー落下防止プレート212の上部に略直方体形状のクリッパー214が載置されている。また、コラムカプラ210の四隅の凹部に凹部にクリッパー214の四隅から水平方向に突設されたボルト217が嵌め込まれ、ボルト217の先端にはナット215及び座金216が装着されている。また、4個の孔部211のそれぞれには、位置合わせ用ピン213が差し込まれる。
【0041】
以上のように構成される下部柱200には下部柱と同一断面形状の上部柱150が接合される。上部柱150の下端には、図10に示すように、下部柱200に接合させるための平面視矩形枠状のコラムカプラ160が設けられている。コラムカプラ160の構成はコラムカプラ210の構成と同様である。
【0042】
次に、図10図11を参照して、第二実施形態に係る柱の立設方法について説明する。第二実施形態に係る柱の立設方法は、取付工程、引掛け工程、吊り上げ工程、降下工程、接合工程、及び解除工程をこの順で有し、この点は第一実施形態に係る柱の立設方法と同様である。すなわち、第二実施形態に係る柱の立設方法において、取付工程では上部柱150に一対の引掛部材20が取り付けられ、引掛け工程では引掛部材20にフック41が引っ掛けられ、吊り上げ工程では上部柱150が鉛直に吊り上げられる。
【0043】
そして、降下工程では、図10に示すように、上部柱150が鉛直状態を維持した状態で、コラムカプラ160の四隅に設けられる凹部160aがその下方に位置する下部柱200の接合部であるナット215及び座金216の上部に位置するように、揚重機が操作され、この状態でフック50が降下されることにより、上部柱150が下部柱200に降下される。
【0044】
次に、接合工程では、上部柱150の下端がその下方に位置する下部柱200のコラムカプラ210に接合される。接合工程では、図11に示すように、四隅のナット215が引き出された状態で上部柱150が下部柱200上に載置され、四隅のナット215が締め付けられることにより、上部柱150と下部柱200とのボルト仮締めが行われる。そして、トルクレンチ及びシャーレンチ等を用いて上部柱150と下部柱200との本締めが行われて接合工程を終了する。接合工程を終了した後は、第一実施形態と同様に引き紐42の操作による解除工程が行われ、その後、引掛部材20が上部柱150から取り外される。
【0045】
第二実施形態に係る柱の立設方法の作用・効果について説明する。
【0046】
本実施形態に係る柱の立設方法によれば、第一実施形態と同様、取付工程、引掛け工程、吊り上げ工程、降下工程、接合工程、及び解除工程を有するため、第一実施形態と同様の作用・効果が得られる。また、第二実施形態では、クリッパー214の外周面とコラムカプラ160の内周面とのクリアランスが少ないため、第一実施形態と比較して、上部柱150の下部柱200に対する位置合わせの精度をより高めることが要求される。ここで、第二実施形態に係る柱の立設方法によれば、降下工程において、垂直状態を維持させたまま上部柱150を降下させることが可能となるため、上部柱150の下部柱200に対する位置合わせが容易となり、作業の効率を格段に高めることができる。
【0047】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0048】
例えば、柱10及び引掛部材20の形状は図1及び図2に示すものに限られず、柱10の代わりにH型鋼を用いる等、適宜変更可能である。また、引掛部材20を柱10に取り付ける方法は、図3に示すものに限られず、柱10及び引掛部材20の構成等によって適切に変更することができ、引掛部材20の取付工程、及びフック41の引掛け工程の態様も適宜変更することが可能である。更には、例えば柱10の代わりにフランジを有する柱に本発明に係る柱の立設方法を適用させる場合には、引掛部材20、取付工程、及び引掛け工程がなくてもよい。
【0049】
また、フック41は、引き紐42の操作により引掛け状態を解除可能となっていなくともよく、フック41とは異なる種類のフックを用いてもよい。更には、フック以外の吊り具で柱10を吊り上げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…柱、11…側部、11a…孔部、20…引掛部材、21…当接片、21a…挿通孔、22…延出片、22a…引掛け孔、23…係止片、30…ボルト、41…フック、42…引き紐、100…下部構造体、101…アンカーボルト(接合部)、150…上部柱(柱)、200…下部柱(下部構造体)、210…コラムカプラ(接合部)、215…ナット(接合部)、216…座金(接合部)、217…ボルト(接合部)。
図1
図2
図3
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図5
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図9
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図11