(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記箱体の前記二次側空間を形成する側壁に、前記通気口から浸水経路の逆方向に向かう空気の流れを前記連通孔へと絞り込む気流ガイド部を形成する請求項1または請求項2記載の床下浸水防止装置。
前記連通孔の孔縁に前記フロート栓体との弾性接触により前記一次側空間から前記二次側空間への浸水を防止する弾性部材からなるパッキンを備える請求項1〜請求項6何れか1項記載の床下浸水防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、板状の扉によって通気孔をふさぐ方法では、浸水が急激に生じた場合、水が流入する際の圧力によって扉が開いてしまい、通気孔の閉塞ができなくなるおそれがある。
また箱内に設けられた水に浮かぶ球体によって通気孔をふさぐ方法では球体と通気孔との間に隙間が生じると隙間から水が漏れ、床下が浸水するおそれがある。
【0005】
さらに近年では建物の床下に換気装置が設置されている場合があり、これらはダクトにより床下換気口と連結され、建物の外側とつなげられることがある。このような場合、床下換気口より浸水した水がダクトを通じて換気装置に浸入することを防止するためには、床下浸水防止装置をダクトや床下換気口等、床下への水の浸入経路に設置する必要がある。このような水の浸入経路は平時においては通風路となっているため、床下浸水防止装置を取り付けた状態においても平時には換気が可能なように十分な通風路が確保されている必要がある。しかし、上記のいずれの方法も床下高さからくる高さ制限のため、通風路の確保が困難であるという課題もある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。すなわち確実に床下浸水を防ぐことが可能であり、かつ床下高さからくる高さ制限の中で換気のための通風路を確保できる床下浸水防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
すなわち、本発明は建物の床下換気口を通じて屋外から床下への浸水を防止する床下浸水防止装置において、浸水経路の一次側に開口する浸水口と、二次側に開口する通気口と、内部を一次側空間と二次側空間に仕切るとともにそれらを連通する連通孔を有する隔壁とを有する箱体と、浸水口から一次側空間に水が浸入すると水に浮かんで連通孔を閉塞することで二次側空間への漏水を防止するフロート栓体とを備える床下浸水防止装置を提供する。
【0008】
前記本発明は、浸水経路の一次側に開口する浸水口と、二次側に開口する通気口と、内部を一次側空間と二次側空間に仕切るとともにそれらを連通する連通孔を有する隔壁とを有する箱体を備えるものとしている。箱体の内部が一次側空間と二次側空間とに仕切られているため、一次側空間の外部に漏水したとしても二次側空間内に貯水することができ、屋内側への浸水を確実に阻止することができる。すなわち、「空間」を一つだけ備えるものとした場合とは異なり、一次側空間から流れ出た水がそのまま床下浸水防止装置の二次側に接続したダクトや、そのダクトの他端に接続した床下にある換気装置に流入して屋内側が浸水するといった不都合を生じない。また本発明はこのような構造をとることで平時における通風路の確保と浸水の防止とを両立することができ、設置環境に合わせて小型化することが可能である。よって床下という高さ制限のある環境に設置することも可能である。
【0009】
また本発明は、一次側空間に浮力により水に浮かぶフロート栓体を備える。一次側空間に水が浸入し、その水かさが増すとフロート栓体は浮力により上昇し、連通孔の孔縁に接触する。これにより連通孔を閉塞し水の二次側空間への漏水、及び通気口から床下への浸水を防止することができる。
【0010】
前記通気口が箱体の底壁よりも高い位置に設けられるものとすることができる。一次側空間が浸水する際に、フロート栓体で連通孔を完全に閉塞する前に一次側空間よりも屋内側に漏水した場合があっても、通気口が箱体の底壁より高い位置に設けられている。このため、箱体の底壁から通気口の高さまでの部分を貯水部として水を貯めることができる。よって万一、一次側空間から漏水した場合でも二次側空間の貯水部で水を貯め、換気装置やダクト内への浸水を食い止めることができる。
【0011】
箱体の内部に通気口から浸水経路の逆方向に向かう空気の流れを連通孔へと絞り込む気流ガイド部を備えるものとすることができる。箱体の内部に通気口から浸水経路の逆方向に向かう空気の流れを連通孔へと絞り込む気流ガイド部を備えるため、通気口から箱体に流れ込んだ空気の二次側空間内での滞留を防止し、また、連通孔から一次側空間への空気の流れをスムーズにすることができる。これにより床下浸水防止装置の圧力損失を低下させることができる。
【0012】
箱体の二次側空間を形成する側壁に、通気口から浸水経路の逆方向に向かう空気の流れを連通孔へと絞り込む気流ガイド部を形成することができる。箱体の二次側空間を形成する側壁に気流ガイド部を形成することで、この側壁と気流ガイド部とを別体として設ける場合と比較して部材間の接続部や隙間を少なくすることができ、より簡単な構造の床下浸水防止装置を形成することができる。これにより空気の乱れを減少させて床下浸水防止装置の圧力損失を低下させることができる。また部品点数や材料の使用量を減らすことができ、より低コストでコンパクトな床下浸水防止装置とすることが可能である。
【0013】
フロート栓体がフロート球体であり、箱体の一次側空間にフロート球体が箱体の側壁に衝突することを防止する衝突防止部を備えるものとすることができる。これにより、床下浸水防止装置内を流れる気流によって動いたフロート球体が一次側空間を形成する箱体の側壁に衝突し、騒音を発生させることを防止できる。
【0014】
前記フロート球体は偏重心球体とすることができる。フロート球体をその重心が球体の中心から偏心した偏重心球体とすることで、水に浮く際に重い部分が下になるように浮上させることができる。
フロート球体の表面には微細な凹凸が生じる場合があるが、この状態で水に浮くと凹凸部分が連通孔の孔縁と接してフロート球体との間に隙間が生じる。よって、これを防止するためにフロート球体の質量に勾配をもたせて水に浮く際に重い部分が下になるように浮上させることで、意図的に特定の平滑な部分が連通孔の孔縁と接するように調節することができる。また、フロート球体の球面形状を凹凸の無い平滑面として形成するのが困難な場合、例えばフロート球体を複数の分割球体(一例として2つの半球)を接合してなるものとして製造する場合には、その接合部分にバリが生じたり半球どうしの接合位置のずれが起きたりする可能性がある。しかしながら、偏重心球体として意図的に特定の部分が連通孔の孔縁と接するようにできれば、その接合部分が孔縁と接することを防止できる。そのため、バリや接合位置のずれによる段差で密閉が充分に行われなくなる不都合を回避することができる。
【0015】
フロート球体はポリ塩化ビニルからなるものとすることができる。フロート球体をポリ塩化ビニルで形成すれば大きな水圧にも耐えることができ、また、経時劣化しにくく耐用年数が長期に亘る床下浸水防止装置の部材として好適である。そして、内部に空隙を設けた球体を簡単に形成することができ、空隙を偏心させることで重心が偏心した偏重心球体も簡単に形成することができる。さらに気泡を有さず水や空気が通過しにくいため、発泡体等を用いる場合と比較してより強固に連通孔を閉塞することができる。
【0016】
連通孔の孔縁にフロート栓体との弾性接触により一次側空間から二次側空間への浸水を止める弾性部材からなるパッキンを備えるものとすることができる。このことにより、連通孔の閉塞時にそのパッキンとフロート栓体との間に隙間を生じさせずにより強固に密着させることができる。これにより確実に連通孔からの漏水を防止することができる。
【0017】
そしてこのパッキンは、連通孔の孔縁の表裏両面を覆うように形成することができる。連通孔の孔縁の表裏両面を覆う形状とすることで、連通孔の孔縁から外れ難くすることができる。
【0018】
また、パッキンが傾斜部を有するものとすることができる。フロート栓体をフロート球体とする場合に、パッキンにフロート球体の表面形状に沿うように傾斜部を設けることで、傾斜部がフロート球体と面接触し、より水密性を高めることができる。これにより、水の二次側空間への流入を抑えることができる。
【0019】
パッキンが発泡ゴムとすることができる。パッキンを発泡ゴムとすることで、目の細かいスポンジ状のパッキンがフロート栓体の表面形状に柔軟に追従変形することで、高い止水性を発揮することができる。製造面でもビク抜きによる成型で容易かつ安価なパッキンとすることができる。
【0020】
箱体の二次側空間に開口する通気口が建物の床下換気口に屋外側から連通接続するものとすることができる。
これにより、本発明の床下浸水防止装置を屋外に設置することができる。従って完成後の建物に後付け設置することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の床下浸水防止装置によれば、建物の床下換気口から床下への浸水を防止することができるので、建物の浸食や浸水によるカビの発生等による衛生上の問題を解決することができる。また、換気装置の浸水による故障を防止しつつ、換気装置による換気のための通風路を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照しながらさらに詳細に説明する。以下の各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0024】
第1実施形態[図1〜図7]:
図1は第1実施形態の床下浸水防止装置1の設置場所を示す説明図であり、
図2は床下浸水防止装置1の斜視図である。また、
図3〜
図5は床下浸水防止装置1を種々の断面で切断した各主断面図、
図6(a)はパッキン24aの部分拡大断面図、
図6(b)はパッキン24aにフロート球体9が押し付けられた状態を示す説明図であり、
図7は床下浸水防止装置1の作動状態を示す説明図である。
【0025】
図1で示すように、床下浸水防止装置1は建物の基礎部2に設置可能であり、換気装置3と床下換気口4との間に設置される。換気装置3と床下浸水防止装置1とはダクト5を介して接続され、床下浸水防止装置1と床下換気口4とは直接またはダクト5等を介して間接的に連結される。また床下浸水防止装置1の下に支持台6を設けることで、床下換気口4の高さに合わせて設置位置を調節することができる。
【0026】
床下浸水防止装置1は建物の床下換気口4を通じて屋外から床下への浸水を防止するものである。その具体的な構成は、
図3〜
図5で示すように外箱7と、内箱8と、フロート球体9とを備える構成を基本としている。
このうち外箱7と内箱8は本発明の「箱体」を構成する。この「箱体」の内部(外箱7と内箱8との境界)は、本発明の「隔壁」としての2枚の壁、すなわち後述する内箱8の天井壁10と奥壁11aとによって一次側空間(内箱8)と二次側空間(外箱7)とに仕切られている。内箱8の天井壁10には本発明の「連通孔」としての内箱奥側孔12が開口している。フロート球体9は一次側空間としての内箱8の内部に備わっている。
なお、本明細書でいう「前側」や「奥側」との用語は、床下浸水防止装置を所定箇所に設置して建物の屋外側から屋内側に向けてこの床下浸水防止装置を見た際の屋外側を「前側」とし、屋内側を「奥側」とするものである。
フロート球体9は発泡体や中空のポリ塩化ビニル等の水に浮くものからなるが、外箱7、内箱8は亜鉛メッキ鋼板やステンレス等、水による腐食に強い金属材で形成する。
【0027】
(外箱及び内箱)
外箱7は奥壁13a、前壁13b、左側壁13c、右側壁13d、天井壁22、底壁18により形成される略直方体形状でなる。また、奥壁13aは本発明の「通気口」としての外箱奥側孔14を、前壁13bは本発明の「浸水口」としての外箱前側孔15をそれぞれ有する。外箱奥側孔14及び外箱前側孔15にはそれぞれ通風筒16a、16bが設けられており、それらはリベット止め、カシメ、接着剤または止水コーキング等により固定されている。通風筒16aには換気装置3につながるダクト5を連結することができる。また通風筒16bは床下換気口4に直接連結することができるが、設置場所に応じてダクト5を介して連結することもできる。
【0028】
内箱8は外箱7の内部に設けられて外箱7の内部に一次側空間を形成するものであり、奥壁11a、前壁11b、左側壁11c、右側壁11d、天井壁10、底壁17により形成される略直方体形状でなる。内箱8は外箱7の内部に奥壁11aと天井壁10の2つの壁板を取り付けることで設けられており、内箱8の前壁11b、左側壁11c、右側壁11d及び底壁17はそれぞれ外箱7の前壁13b、左側壁13c、右側壁13d及び底壁18と一体の共通壁として形成されている。内箱8の前壁11bには本発明の「浸水口」としての内箱前側孔19が、天井壁10には本発明の「連通孔」としての内箱奥側孔12が設けられている。内箱前側孔19と外箱前側孔15とは連通しており、一体の共通壁として形成されている。内箱8と外箱7の共通部分を設けることで、部品点数や材料の使用量を減少でき製造コストを低く抑えることができる。また、よりコンパクトな床下浸水防止装置1とすることができる。
【0029】
また、外箱7の外箱奥側孔14が底壁18よりも高い位置に設けられている。内箱8の内箱前側孔19から内箱8の内部に浸入した水Wが仮に外箱7に漏出したとしても、外箱7の底壁18から通気口14の高さまでの部分を貯水部とし、そこに水を貯めることができる。これにより外箱奥側孔14からダクト5まで水Wが漏れ出ることを防止することができる。
【0030】
内箱8及び外箱7は亜鉛メッキ鋼板等の金属板どうしをリベット止め、カシメ、接着剤または止水コーキング等で固定することにより略直方体形状に構成される。これにより溶接する場合と比較して製造作業が容易になり、また作業時に金属板が熱により変形する等の不都合を生じることなく同一形状を大量生産することができる。
【0031】
(気流ガイド部)
内箱8の天井壁10の上面には板状でなる2つの気流ガイド部20a、20aが内箱奥側孔12を挟んで設置されている。2つの気流ガイド部20a、20aは屋外側から屋内側に向かって開かれたハの字状に設けられる。ダクト5から吐き出されて外箱奥側孔14から外箱7に流れ込んだ空気は、外箱7内で滞留することなく内箱8の内箱奥側孔12にガイドされる。また反対に内箱8から内箱奥側孔12を通過して外箱7に流れ込んだ空気は、外箱7内をスムーズに外箱奥側孔14に向かってガイドされる。これにより床下浸水防止装置1の圧力損失を減らすことができる。内箱8の天井壁10に設置した状態における気流ガイド部20a、20aの上端または下端のいずれか一方にはフランジ21が設けられている(
図4では下端に設けられたフランジ21を示す。)。上端に設けられたフランジ21は外箱7の天井壁22と、下端に設けられたフランジ21は内箱8の天井壁10とそれぞれ接触しており、それらは接触部で固定されている。
【0032】
(フロート球体)
内箱8の内部にはフロート球体9が収容されている。また、フロート球体9は内箱奥側孔12よりも大径とする。これによりフロート球体9が内箱奥側孔12から抜け出ることを防止できる。
【0033】
フロート球体9は発泡体や中空のポリ塩化ビニル等の水Wに浮くものからなり、水Wに浮かんだ状態でフロート球体9の上半球が完全に水面より上に出る程度の浮力を有することが好ましい。これにより内箱奥側孔12の直径をフロート球体9の直径よりもわずかに小さくするだけでフロート球体9によって内箱奥側孔12を閉塞し、漏水を防止することができ、このことにより床下浸水防止装置1の圧力損失を低く抑えることができる。
【0034】
発泡体は中実であるが微細な気泡が形成されているため、浸水時にフロート球体9が浮力を受けて内箱奥側孔12の孔縁23に設けられる後述のパッキン24aに強く押し付けられると、水Wが気泡を通過して滲み出てくるという欠点がある。よってその滲み出しを抑制するために、フロート球体9の表面には塗装等による漏水防止用の被膜を形成している。その一方で発泡体の利点として、発泡体でなるフロート球体9は重量が軽く水Wに浮きやすいため、浮力を高める中空構造として形成する必要がない。よって成形容易な中実構造として形成することができるという製造面での利点もある。
【0035】
これに対してポリ塩化ビニルによるフロート球体9は、浮力を得るために中空構造とする必要があるが、発泡体のような気泡が無い。よって浮力を受けてパッキン24aに強く押し付けられても、発泡体とは異なり水Wが滲み出ないため、表面に漏水防止用の被膜を設ける必要がない点で有利である。
【0036】
また、ポリ塩化ビニルからなるフロート球体9を用いる場合には、加工が容易であり厚みを自由に設定することができる。よって、例えばフロート球体9を部分的に厚く重くすることで偏心させ、水Wに浮いた時に特定部分が上になるようなフロート球体9とすることができる。すなわち、2つの半球を結合して製造したフロート球体9であっても結合部分がパッキン24aに接触することを防ぐことができるので、密閉効果を高めることができる。
【0037】
(パッキン)
内箱奥側孔12の孔縁23には、
図6(a)で示すようにフロート球体9との弾性接触により内箱8の内部から外箱7の内部への浸水を防止する弾性部材からなるパッキン24aが固定されている。パッキン24aの材質としては発泡ゴムやシリコーンゴム等からなる柔軟性を有するものであることが好ましい。これにより、
図6(b)で示すようにフロート球体9が押し付けられてパッキン24aが変形し、フロート球体9に密着して隙間を塞ぐことができる。
【0038】
パッキン24aは、孔縁23に沿ったリング形状からなるリング状板10aと内箱8の天井壁10との間でネジ10bにより挟み込まれることで孔縁23に設置されている。また、ネジ10bはネジ先を上方に向けた状態で天井壁10の下側から固定する。さらにネジ10bの頭部と天井壁10との間にOリング10cを設けることで内箱8への浸水時、天井壁10に開けられたネジ穴を経路とする隙間から二次側空間への水Wの浸入を防止することができる。
【0039】
(衝突防止部)
内箱8には細板状の衝突防止部25,25が内箱奥側孔12の周辺から直下の底壁17まで垂直に2本設けられている。フロート球体9は2本の衝突防止部25,25と内箱8の奥壁11aによって前後左右方向(上下を除く)の動きが制限されるため、フロート球体9が送風によって内箱8の中で動いて側壁11c、11d及び前壁11bに衝突することによる騒音の発生や、フロート球体9の破損・損傷を抑止することができる。また、フロート球体9の動きが制限されることで、フロート球体9が内箱前側孔19を通じて床下浸水防止装置1の外に抜け出ることを防止することができる。さらに衝突防止部25,25は、フロート球体9と接する面を発泡体やゴム状弾性体からなる緩衝材で覆ってもよい。これにより、フロート球体9の破損・損傷をより確実に抑制することができる。
【0040】
(作動状態の説明)
浸水時に床下換気口4に水Wが到達すると、水Wは床下換気口4から外箱前側孔15及び内箱前側孔19を通じて内箱8に浸入する。内箱8中の水かさが増すにつれてフロート球体9は浮力で上昇し、やがて内箱奥側孔12まで到達する。上述の通りフロート球体9は内箱奥側孔12よりも大径であるため、内箱奥側孔12を通過することができずに孔縁23に押し付けられる。孔縁23には上述の通りパッキン24aが設けられているため、フロート球体9とパッキン24aとが隙間なく密着する。これにより内箱奥側孔12の閉塞状態が完成する。この際、内箱奥側孔12がフロート球体9によって完全に閉塞される前に多少の水が外箱7側に流れ出ることがあっても、外箱7の底壁18から通気口14の高さまでの部分を貯水部とし、そこに水Wを貯めることができる。これによりダクト5への水Wの浸入を防止することができる。
【0041】
第1実施形態の変形例:
第1実施形態の床下浸水防止装置1では、外箱7の内部に奥壁11aと天井壁10の2つの壁板を取り付けることで内箱8が設けられている。しかし、内箱8は六面体形状の箱を外箱7の内部に設置することで設けることもできる。
【0042】
第2実施形態[図8〜図12]:
第1実施形態の床下浸水防止装置1は気流ガイド部20a,20aを外箱7とは別体として形成し、外箱7の中に収めるように設けている。これに対し第2実施形態における床下浸水防止装置26は、
図8〜
図12に示すように気流ガイド部20b,20bを外箱7の左側壁13c、右側壁13dと一体とする共通壁として形成し、左側壁(外箱)13cと左側壁(内箱)11c、右側壁(外箱)13dと右側壁(内箱)11d、天井壁(外箱)22と天井壁(内箱)10というそれぞれ互いに平行する2枚の壁面のうち、重複する壁面を可能な限り削除して1枚の壁面とした。これにより気流ガイド部20a,20aを外箱7とは別体として設けた第1実施形態と比較して、使用する金属材料の使用量を減らすことができるため、製造コストを下げることができる。
【0043】
第3実施形態[図13、図14]:
前記各実施形態の床下浸水防止装置1、26は左側壁(外箱)13cと左側壁(内箱)11c、右側壁(外箱)13dと右側壁(内箱)11dとがそれぞれ部分的に一体となる共通壁として形成されている。これに対し第3実施形態における床下浸水防止装置27では、
図13、
図14に示すようにそれぞれが分離されており完全な別体として形成されている。
【0044】
従って、左側壁(外箱)13cと左側壁(内箱)11cとの間、右側壁(外箱)13dと右側壁(内箱)11dとの間に空間が設けられることで、これらの空間にも新たな空気の流路が生じる。外箱奥側孔14から外箱7に浸入した空気は、これらの流路からも内箱奥側孔12へと浸入する。また逆に内箱前側孔19から内箱8内に浸入した空気は、内箱奥側孔12を通じて前記の新たな空間を含む各方向に向けて拡散し、外箱奥側孔14を通して床下浸水防止装置27の外へと排出される。これにより、床下浸水防止装置27では気流ガイド部20aを設けることなく圧力損失を低く抑えることができる。
【0045】
外箱7の底壁18から通気口14の高さまでの部分を貯水部として水Wを貯めることができる。特に本実施形態では左側壁(外箱)13cと左側壁(内箱)11cとの間、右側壁(外箱)13dと右側壁(内箱)11dとの間の空間にも内箱奥側孔12から漏出した水Wを貯めることができる。これにより、より確実に外箱奥側孔14からダクト5への浸水を防止することができる。
【0046】
第4実施形態[図15]:
前記各実施形態の床下浸水防止装置1、26及び27は建物の床下換気口4と建物の床下にある換気装置3との間に設置されている。
これに対し、第4実施形態における床下浸水防止装置28は換気装置3と連通する床下換気口4に外箱奥側孔14を連結することで、屋外に設置している。この際、必要に応じて屋外に支持台6を設け、その上に床下浸水防止装置28を設置する。また、例えば床下換気口4の近くにスペースが無く設置が困難であるといった場合には、床下浸水防止装置28を床下換気口4から離れた場所に設置し、床下換気口4と通風筒16aとをダクト5を介して連結する。これにより床下浸水防止装置28、床下換気口4及び換気装置3が連通し、通風が可能となる。
【0047】
また床下浸水防止装置28は屋外に設置可能であるため、狭い床下空間に設置する場合のような高さ制限を受けることなく設置することができる。従って、設置場所や換気装置3の種類に応じて大きさを変更することができる。よって、例えば大型の換気装置3に対応するために大きくすることも可能である。またこれに伴い内箱前側孔19及び外箱奥側孔14の高さや大きさ、さらに内箱奥側孔12とフロート球体9の大きさを変更することもできるため、屋外に後付け可能な床下浸水防止装置28とすることができる。
【0048】
第5実施形態[図16]:
上記各実施形態のパッキン24aは、
図6で示すようにリング状板10aと内箱8の天井壁10とで挟み込まれることにより設置されている。これに対し、第5実施形態における床下浸水防止装置29のパッキン24bは
図16で示すように内箱奥側孔12の孔縁23の表裏両面を覆うように設けられている。これによりフロート球体9が勢いよくパッキン24bに当たっても、パッキン24bが内箱奥側孔12の孔縁23から外れ難くなっている。
【0049】
第5実施形態の変形例[図17]:
第5実施形態の床下浸水防止装置29は、内箱8の内箱奥側孔12の孔縁23に内箱奥側孔12の中心方向に向けて突き出した形状のパッキン24bを有するが、その形状を変更することも可能である。
【0050】
図17(a)で示すように、パッキン24cは、内箱8の内箱奥側孔12の孔縁23に内箱奥側孔12の中心方向に向けて先細り形状で突き出し、フロート球体9の表面形状に沿った傾斜面24c1を有する。これにより、水圧でパッキン24cに押し付けられたフロート球体9は、この傾斜面24c1と曲面で接触するため、床下浸水防止装置29の作動時に、フロート球体9とパッキン24cとが隙間なく密着し、水Wの漏出を確実に抑止することができる。
【0051】
あるいは
図17(b)で示すように、内箱奥側孔12の孔縁23から内箱奥側孔12の中心方向に突き出した突出部が上下方向に複数重なるパッキン24dとすることもできる。複数重ねることでフロート球体9とパッキン24dとを複数の接点で接触させることができ、水密性を高めることができる。ここでは二重に設ける例を示しているが三重以上に設けることもできる。
【0052】
図17(c)で示すように、孔縁23から中心に向かう斜め下方に設けるパッキン24eとすることができる。パッキン24eは、フロート球体9とより低い位置で接触するため、浸水時により早い段階で内箱奥側孔12を閉塞することができる。また、斜め下方に向かうパッキン24eがフロート球体9で押圧されると上方に変形するため、下方に戻ろうとする弾性力でフロート球体9との密着性を高めることができる。
【0053】
さらに
図17(d)で示すように、下方に縦長のパッキン24fとすることができる。下方に厚みを有するため、フロート球体9で押圧される際の潰れ部分を大きく設けることができ、その大きな潰れ部分による復元力でフロート球体9との密着性を高めることができる。
【0054】
そして
図17(e)で示すように、内箱奥側孔12の孔縁23の下から内箱奥側孔12の外側に向かって傾斜する傾斜面24g1を設けたパッキン24gとすることができる。パッキン24gは、孔縁23の下から外側に向かう傾斜面24g1を有するため、内箱奥側孔12を狭めることなくフロート球体9との接触面積を増やすことができる。そのため、内箱奥側孔12が塞がれていない通常時の圧力損失を抑えることができる。
【0055】
各実施形態の変形例:
上記各実施形態では、金属板どうしを連結する手段としてリベット止め、カシメ、接着剤または止水コーキング等で固定する例を示したが、溶接接合により連結しても良い。これにより金属板どうしを隙間なく強固に連結させることができる。
上記各実施形態では、衝突防止部25を2本設ける例を示したが、本数はこれに限定されない。
【0056】
さらに、上記各実施形態では、通風筒16a、16b、外箱奥側孔14、外箱前側孔15、及び内箱前側孔19が円形である例を示した。しかし、例えば角型ダクトや角型形状の床下換気口4に接続する場合等はこれらの形状に大きさ及び形状を一致させるために変形することもできる。これにより、接続部に隙間が生じることを防止できるため、より確実に漏水の発生を防止することができる。
【0057】
上記各実施形態ではフロート栓体がフロート球体9である例を示した。このフロート球体9は異方性が無くどこの面でも円形の内箱奥側孔12を閉塞でき、また球面が内箱奥側孔12に入り込み天井壁10の上面側に突出することでよりパッキン24aと水密に接触することができる点で有利である。しかしながら、これらの有利な点を考慮しなければ、例えば半球状などの立体形状や、平板状などの平面形状とすることもできる。