【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年10月11日長崎県立総合体育館メインアリーナにおいて開催されたながさき建設技術フェア2012で公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の曝気装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
具体的には、
図6に示すように、牡蠣等の養殖場において、海底101に曝気管102を敷設し、水域の水面下が高温となりやすく、かつ貧酸素化しやすい夏季の期間中に曝気を行う構成とされる。
【0003】
このようにして、水底付近で曝気することにより、水底付近の水は溶存酸素濃度が上昇すると同時に緩やかな鉛直循環流が発生する。これにより水面下の水と、水底付近の水とが混ざり合うことで、水深の如何にかかわらず水温をほぼ一定にすることができる。
【0004】
また、水底付近で曝気することで水底の堆積された養分を水面下に押し上げて牡蠣等の成長を促進させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された曝気装置では、水底に堆積された養分は鉛直循環流によって鉛直方向への循環となるが、連続した空気の噴出により水面下に滞留することなく広い範囲に拡散するために、牡蠣等に充分な栄養を供給することが困難となる。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、水底の養分を一定の水域の水面下に充分に供給することができる鉛直流発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る鉛直流発生装置は、内部と連通状とされる穴が穿孔された環状の空気配管と、該空気配管内に空気を間欠的に供給する空気供給制御部とを備える。
【0009】
ここで、空気配管が環状に構成されたことによって、一定の水域内を取り囲むことができる。これにより、例えば、水域内に設置される牡蠣筏等の周囲の水面下に水底付近の水を押し上げることで水域内に均一に水底付近の水を供給することができる。
【0010】
また、空気配管内に空気を間欠的に供給する空気供給制御部によって、水域の底層の水を噴出する空気で急激に水面まで押し上げた状態で空気の噴射を一定時間遮断し、続いて、空気の噴出を行うことを繰り返す、所謂空気を間欠的に噴出することで鉛直流を生起させて水域の底層の水を一定の水域内に供給することができる。
【0011】
更に、空気配管に穿孔された穴から噴出する空気で水底に堆積された養分を水面下まで押し上げることができる。続いて、空気の噴出を一定時間遮断することで養分を水面下に滞留させることができる。よって、連続して空気を噴出することによる鉛直循環流よりも養分の拡散を抑えることができ、空気配管の環内の水面下に養分を滞留することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る鉛直流発生装置において、空気供給制御部が、遮断弁部を有する場合には、空気配管内に圧縮空気を間欠的に供給することが可能となる。
具体的には、エアーコンプレッサーから空気配管内に圧縮空気が供給されることで、空気配管の穴から急激な空気の噴出が可能となると共に、圧縮空気を遮断弁部によって一定時間ごとに遮断して空気配管内に注入することで、空気配管の穴から圧縮空気を間欠的に噴出することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る鉛直流発生装置において、遮断弁部は、空気配管内に供給される空気を遮断する時間を調整できるタイマー機能を有する場合には、養殖場等の水域の水深、水温や水流の状況に応じて空気配管内に供給される空気を遮断する時間を調整することができる。
【0014】
また、本発明に係る鉛直流発生装置において、空気配管の環内であり、かつ空気配管と同一平面上に配置され、更に、内部と連通状とされる穴が穿孔された少なくとも1個の環状の空気補助配管とを備えることができるものとする。
【0015】
ここで、空気補助配管が空気配管と同一平面上に配置され、かつ環状に構成されたことによって、空気配管に取り囲まれた一定の水域内の領域を更に取り囲むことができる。これにより、一定の水域内に同心円状に空気補助配管を配置することで均一に空気を噴出させることができる。
【0016】
また、空気配管内の同一平面上に配置された空気補助配管の穴から空気を噴出させることで、空気配管の環状内の水域の溶存酸素濃度を上昇させることができる。
【0017】
また、本発明に係る鉛直流発生装置において、空気補助配管が、空気配管との間で連結された連結部を有する場合には、空気配管内の所定の位置に空気補助配管を支持することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鉛直流発生装置によれば、水底の養分を一定の水域の水面下に充分に供給することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら詳述する。
【0021】
図1は本発明を適用した鉛直流発生装置の一例を説明するための模式図、
図2は本発明を適用した鉛直流発生装置における空気配管及び空気補助配管の一例を説明するための平面模式図である。また、
図3は本発明を適用した鉛直流発生装置における空気配管及び空気補助配管の要部拡大模式図である。更に、
図4(A)は本発明を適用した鉛直流発生装置における空気噴出部の一例を説明するための模式図、
図4(B)は本発明を適用した鉛直流発生装置における空気注入部の一例を説明するための模式図である。
【0022】
ここで示す鉛直流発生装置1は、環状の空気配管2と、この空気配管2内に同一平面上に配置された環状の空気補助配管3と、これら空気配管2及び空気補助配管3に圧縮空気が供給される空気供給制御部4が連結された構成とされている。
【0023】
ここで、空気配管2は、例えば、長さが約1150mmの塩化ポリエチレンで形成された接続パイプ6と、空気噴出部7、あるいは空気注入部17(
図3に図示せず。)が設けられた中継パイプ5がジョイント部14によって交互に連結されることで直径が約15mの環状に構成されている(
図3参照)。
【0024】
また、空気補助配管3は、例えば、長さが約960mmの塩化ポリエチレンで形成された接続パイプ6Aと、空気噴出部7A、あるいは空気注入部17A(
図3に図示せず。)が設けられた中継パイプ5Aがジョイント部14によって交互に連結されることで直径が約10mの環状に構成されている(
図3参照)。
【0025】
更に、空気補助配管3は、空気配管2の環状内に一定間隔を設けて同一面上に配置され、空気配管2と空気補助配管3との連結として、複数の支持用アングル部材16が空気補助配管3と空気配管2との間に連結されている(
図2参照)。
【0026】
また、空気噴出部7、7Aは、T字状エルボ管8の開口雌ネジ部9、9にカプラプラグ10、10が螺着され、このカプラプラグ10、10に中継パイプ5、5Aの開口端11に取り付けられたカプラソケット12が着脱可能な状態で連結されている。
【0027】
更に、T字状エルボ管8の開口雌ネジ部9Aには、逆止弁13が設けられたブッシング15が取り付けられた構成とされている(
図4(A)参照)。
【0028】
また、空気注入部17、17Aは空気配管2に4箇所配置されており、T字状エルボ管8の開口雌ネジ部9、9にカプラプラグ10、10が螺着され、このカプラプラグ10、10に中継パイプ5、5Aの開口端11に取り付けられたカプラソケット12が着脱可能な状態で連結されている。
【0029】
更に、T字状エルボ管8の開口雌ネジ部9Aには、塞ぎプラグ18が取り付けられた構成とされている(
図4(B)参照)。
【0030】
また、空気配管2の空気注入部17には、注入ホース19の一端が接続されると共に、他端が空気分配部20に接続されている。
【0031】
この空気分配部20は、エアシリンダー(
図1に図示せず。)が内蔵され、このエアシリンダーによって各々の空気注入部17に圧縮空気が注入される構成とされている。
【0032】
また、空気分配部20には、供給ホース21の一端が接続されると共に、他端が空気供給制御部4に接続されている。
【0033】
ここで、空気供給制御部4は、タイマー22を有する遮断弁23に、エアーコンプレッサー24が連通状に接続されている。
【0034】
また、空気補助配管3の空気注入部17Aには、注入ホース19Aの一端が接続されると共に、他端が空気分配部20Aに接続されている。
【0035】
この空気分配部20Aは、エアシリンダー(図示せず。)が内蔵され、このエアシリンダーによって各々の空気注入部17Aに圧縮空気が注入される構成とされている。
【0036】
また、空気分配部20Aには、供給ホース21Aの一端が接続されると共に、他端がエアーコンプレッサー24Aに接続されている。
【0037】
更に、供給ホース21、21Aには逆止弁13A及びボール弁25が設けられると共に、補助用のエアーコンプレッサー24Bに切替え弁26を介して接続されている。
【0038】
なお、本実施の形態では、空気供給制御部は、空気配管内に空気を間欠的に供給可能とされた遮断弁部を有するものであるが、空気配管内に空気を間欠的に供給可能とするものであれば、必ずしも遮断弁部を有する必要はない。
【0039】
しかし、エアーコンプレッサーからの圧縮空気を確実に遮断し、かつ開放することが可能な遮断弁部を使用することが望ましい。
【0040】
また、本実施の形態では、空気配管内に供給される空気を遮断する時間を調整できるタイマー機能を有するものであるが、空気配管内に空気を間欠的に供給可能とするものであれば、必ずしも遮断弁部にタイマーを有する必要はない。
【0041】
しかし、水深、水温、水流あるいは養魚の種類に応じて空気を遮断する時間を調整することができるタイマーを設けることが望ましい。
【0042】
また、本実施の形態では、空気配管の環状内に空気補助配管を配置するものであるが、内部と連通状とされる穴が穿孔された環状の空気配管と、空気配管内に空気を間欠的に供給する空気供給制御部と備えるものであれば、必ずしも空気補助配管を配置する必要はない。
【0043】
しかし、空気補助配管を空気配管の環状内に配置することで鉛直流を生起させると共に、空気配管の環状内の水域の溶存酸素量を高めることができるために、空気補助配管を空気配管の環状内に配置することが望ましい。
【0044】
また、本実施の形態では、空気配管の環状内に1個の空気補助配管を配置するものであるが、空気配管の環状内の水域の溶存酸素量を高めることであれば、必ずしも1個である必要はない。例えば、2個あるいは3個であっても構わない。
【0045】
また、本実施の形態では、空気補助配管は、空気配管との間で連結された連結部として支持用アングル部材を有するものであるが、空気配管の環内であり、かつ空気配管と同一平面上に配置されていれば、必ずしも連結部を有する必要はない。
【0046】
しかし、潮流等で動いたりすることを考慮した場合には、連結部として支持用アングル部材で空気配管と空気補助配管を連結することが望ましい。
【0047】
本発明の鉛直流発生装置1は、
図5に示すように、例えば、牡蠣筏Aが位置する水底B上に空気配管2と、同空気配管2の環状内に空気補助配管3を配置する。
【0048】
また、陸上Cにはエアーコンプレッサー24、24Aを配置し、コンプレッサー24を空気供給制御部4(図示せず。)を介して供給ホース21によって空気分配部20に接続する。更に、空気分配部20と空気配管2とを注入ホース19で連通状に接続する。
【0049】
また、コンプレッサー24Aを供給ホース21Aによって空気分配部20Aに接続する。
更に、空気分配部20Aと空気補助配管3とを注入ホース19Aで接続する。
【0050】
このようにして、牡蠣筏Aを取り囲むようにした水域D周囲に沿って空気配管2を配置すると共に、水域D内には空気補助配管3を配置する。
【0051】
ここで、前記
図2において詳述したように、エアーコンプレッサー24からの圧縮空気を、空気供給制御部4の遮断弁23によって一定時間ごとに遮断する。この場合に、遮断弁23による遮断時間は、水面下の温度、水深等の状況に応じてタイマー22で遮断時間を設定する。
【0052】
このようにして、コンプレッサーからの圧縮空気を一定時間遮断することで空気圧が一層に高まる。
【0053】
このような状態から遮断弁23を開とすることで、空気配管2の空気噴出部7から一気に圧縮空気が噴出する。これにより、水底付近の水塊が水面まで押し上げられて水面下の水と混ざり合うことで水面下の水温を下げることが可能となる。
【0054】
また、水底に堆積する養分も水面下に押し上げられることで牡蠣に栄養分を補給することが可能となる。
【0055】
続いて、空気噴出部7からの圧縮空気の噴出を一定時間遮断することで、水底付近の水塊が水面下で滞留すると共に、養分も水面下で滞留することになる。
【0056】
ここで、空気配管2上の水面下の温度が上昇する前に、再び空気配管2の空気噴出部7から一気に圧縮空気を噴出することで水底付近の水塊が水面下まで押し上げられる。これにより水面下の水温を下げると共に、水面下の水が水域D内の水面に押し広げられることで水域D内の全体の水面下の温度を下げることが可能となる。
【0057】
更に、圧縮空気の噴出が一定時間遮断水面下の押し上げられた養分が沈降する前に、再び空気配管2の空気噴出部7から一気に圧縮空気を噴出することで水底付近の養分が水面下まで押し上げられる。これにより水面下の養分を拡散することなく、水域D内の水面下滞留させることで牡蠣筏Aに養分を充分に供給することが可能となる。
【0058】
このようにして、水域Dの周囲から急激な鉛直流を間欠的に生じさせることで水底付近の温度の低い水と、養分とを水面下に滞留させることが可能となる。
【0059】
一方、空気補助配管3の空気噴出部7Aからはエアーコンプレッサー24Aからの圧縮空気が常時噴出される。これにより、水域D内の溶存酸素量を高めることができる。
【0060】
以上の構成よりなる本発明の鉛直流発生装置では、空気配管から圧縮空気を間欠に噴出させることで水底付近の水を水面下まで押し上げて水温を下げると共に、水底に堆積する養分を水面下まで押し上げることで、例えば養殖牡蠣の成長を促進させることが可能となる。
【0061】
また、常に水面下への鉛直流を生じさせることで水底の養分を水面下へ補給し続けることになり、空気配管の環内の水域全体の養分を滞留させることで安定した養分の補給を行うことが可能となる。
【0062】
また、空気配管の環内に空気補助配管を配置することで空気配管の環内の水域全体に溶存酸素を供給することで閉鎖水域における貧酸素を解消することが可能となる。