(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド踏面に、トレッド周方向に連続して延びる周溝を少なくとも2本設け、前記周溝のうち、断面積が互いに異なる2本の周溝の間に区画される陸部に、該周溝から離間した位置で陸部表面に開口する気室と、該気室を前記2本の周溝のうちの一方の周溝に連通させる1本以上の狭窄ネックと、前記気室を他方の周溝に連通させる1本以上の狭窄ネックとを有する共鳴器を配設した空気入りタイヤであって、
前記共鳴器の、断面積の相対的に大きい周溝に開口する前記狭窄ネックの断面積S1が、断面積の相対的に小さい周溝に開口する前記狭窄ネックの断面積S2よりも大きく、
前記狭窄ネックの断面積S1と断面積S2とが、
2≧S1/S2≧1.2
の関係を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、2本の周溝の間に区画される陸部に、2本の周溝のうちの一方の周溝に開口する1本の狭窄ネックと、他方の周溝に開口する1本の狭窄ネックとを有する共鳴器を配設した空気入りタイヤでは、例えば、狭窄ネックのそれぞれの断面積が等しいと、気柱共鳴音を低減しにくくなることがあった。
【0007】
本発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題としてなされたものであり、それの目的とするところは、共鳴器が発揮する騒音低減性能を向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に、周溝を少なくとも2本設け、前記周溝のうち、断面積が互いに異なる2本の周溝の間に区画される陸部に、該周溝から離間した位置で陸部表面に開口する気室と、該気室を、前記2本の周溝のうちの一方の周溝に連通させる1本以上の狭窄ネックと、前記気室を、他方の周溝に連通させる1本以上の狭窄ネックとを有する共鳴器を配設したものであって、前記共鳴器の、断面積の相対的に大きい周溝に開口する前記狭窄ネック(以下、「第1狭窄ネック」とも称す)の断面積S1が、断面積の相対的に小さい周溝に開口する前記狭窄ネック(以下、「第2狭窄ネック」とも称す)の断面積S2よりも大きいことを特徴とする。
この発明によれば、周溝に開口する狭窄ネックのそれぞれの断面積を異なるものとしたので、共鳴器を十分機能させることができ、また、周溝で発生する気柱共鳴音の音圧が相対的に大きくなる側の周溝に開口する狭窄ネックの断面積を大きくしたので、共鳴器をより効果的に共鳴させることができ、その結果として、共鳴器が発揮する騒音低減性能を向上させることができる。
【0009】
ここで、本発明の空気入りタイヤでは、前記狭窄ネックの断面積S1と断面積S2とが、2≧S1/S2≧1.2の関係を満たすものとする。これによれば、共鳴器の騒音低減性能をより効果的に向上することができる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記断面積の相対的に大きい周溝に開口する狭窄ネックの本数は、前記断面積の相対的に小さい周溝に開口する狭窄ネックの本数に比して多いことが好ましい。
さらに、本発明の空気入りタイヤでは、前記共鳴器は、トレッド踏面のタイヤ赤道を挟む一方側と他方側とに配置され、タイヤ赤道に関して線対称に位置することが好ましい。
【0010】
なお、本発明の空気入りタイヤでは、共鳴器の種類は、気柱共鳴音を有効に低減することのできるものであれば特に限定されないが、例えばヘルムホルツタイプの共鳴器とすることができる。この場合、共鳴器6は、
図2(a)に示すような形状としてモデル化することができ、その共鳴周波数f
0は、狭窄ネック7の、半径をr、長さをl
0、断面積をSとし、気室8の容積をV、音速をcとしたとき、式(1)で表すことができる。
【数1】
ここで、上記式中の狭窄ネック7の長さの補正は、通常は、実験で求めるものであり、その値は、文献によって相違することになるが、ここでは、1.3rを用いるものとする。
【0011】
また、
図2(b)に模式的に示すような、1個の気室8に対して2本の狭窄ネック7a、7bが設けられたヘルムホルツタイプの共鳴器6の場合における共鳴周波数f
0は、同様に、狭窄ネック7a、7bのそれぞれの半径をr
a、r
b、長さをl
0a、l
0b、断面積をS
a、S
bとし、気室8の容積をV、音速をcとしたとき、式(2)で表すことができる。
【数2】
【0012】
したがって、共鳴器6の共鳴周波数f
0は、狭窄ネック7a、7bの断面積S
a、S
b、気室8の容積V等を選択することで、所要に応じて変化させることができる。また、式(2)に狭窄ネック7が2本の場合を例にとって示したように、狭窄ネック7が複数本ある場合は、これら複数の狭窄ネック7a、7bの断面積を合計した断面積を有し、複数の狭窄ネック7a、7bの平均長を長さとする1本の狭窄ネック7と等価であると見なして計算を行うことで実用上問題ないことが分かっている。
【0013】
ここで、本発明において、周溝および狭窄ネックの断面積は、周溝および狭窄ネックの延在方向に直交する方向に沿う断面での断面積とし、それらの断面積が変化する場合は、平均の断面積(周溝および狭窄ネックの容積を、その延在長さで除したもの)とする。また、1つの共鳴器について、それぞれの周溝に開口する各狭窄ネックが2本以上の場合は、それらの狭窄ネックの断面積の総計を狭窄ネックの断面積S1、S2とする。
【0014】
また、本発明において、トレッド踏面の接地条件は、特に断りのない限り、適用リムに組み付けたタイヤに規定の空気圧を充填して最大負荷荷重の80%の荷重を負荷させた状態を指す。ちなみに、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARD MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズにおける標準リム(または、“Approved Rim”、“Recommended Rim”)を指す。また、「適用リムに組み付けたタイヤに規定の空気圧を充填し」た状態とは、タイヤを上記の適用リムに装着し、JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)とした状態を指す。なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能である。
さらに、タイヤの諸寸法は、特に断りのない限り、適用リムに組み付けたタイヤに規定の空気圧を充填した無負荷状態での寸法を指す。
【0015】
なお、ここにおける「狭窄ネック」および「気室」はともに、前述した接地条件の下で、接地面内でも開口するものをいうものとする。
【発明の効果】
【0016】
この本発明よれば、共鳴器が発揮する騒音低減性能を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に例示説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッドパターンを示す一部展開平面図である。なお、タイヤの内部補強構造等は一般的なラジアルタイヤのそれと同様であるので、ここでは図示を省略する。
【0019】
本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1では、トレッド踏面2に、略トレッド周方向に連続して延びる周溝3が少なくとも2本、
図1で示すところでは4本の周溝3が設けられている。なお、
図1では、周溝3は、トレッド周方向に沿って直線状に延びる延在形態を示しているが、周溝3はトレッド周方向に連続的に延びるものであればよく、例えば、ジグザグ状、波状等の延在形態とすることができる。
【0020】
また、トレッド踏面2には、
図1に示すように、互いに隣り合う周溝3によって3列のリブ状陸部4がタイヤ幅方向内側に区画されるとともに、周溝3とトレッド踏面2のタイヤ幅方向外側の接地端とによって2列のリブ状陸部4がタイヤ幅方向外側(ショルダ部)に区画されている。また、タイヤ幅方向内側の3列のリブ状陸部4のうちの2列のリブ状陸部4aが、断面積が互いに異なる2本の周溝3a、3bによって区画されている。なお、
図1に示すトレッド踏面2に配設した周溝3は、空気入りタイヤ1の排水性を確保するとの観点から、タイヤ幅方向内側に位置する周溝3aの断面積を、タイヤ幅方向外側の周溝3bの断面積よりも大きくしているが、タイヤ幅方向外側の周溝3bの断面積を大きくすることもできる。なお、
図1に示すところでは、2本の周溝3a、3bのそれぞれの断面積の大小関係は、周溝の溝幅を変化させることにより実現しているが、各周溝の深さ、または溝幅および深さの両方を変化させることによっても実現することができる。
【0021】
そして、断面積が互いに異なる2本の周溝3a、3b間に区画されるリブ状陸部4aには、
図1に示すように、該周溝3から離間した位置で陸部表面に開口する気室5aと、気室5aを、2本の周溝3a、3bのうちの一方の周溝3に連通させる狭窄ネック5bと、気室5aを、他方の周溝3に連通させる狭窄ネック5bとを有する共鳴器5が配設されている。また、
図1に示すところでは、一方および他方の周溝3に開口する狭窄ネック5bをそれぞれ1本ずつとしているが、一方および他方の周溝3に開口する狭窄ネック5bを、両側ともに、または片側のみ2本以上とすることもできる。
【0022】
ところで、一方の周溝に開口する1本以上の狭窄ネック、およびその狭窄ネックと同じ断面積を有する、他方の周溝に開口するそれぞれ1本以上の狭窄ネックからなる共鳴器では、気柱共鳴音を低減しにくくなることがあった。
そこで、本発明の空気入りタイヤ1では、共鳴器5は、断面積の相対的に大きい周溝3aに開口する狭窄ネック(第1狭窄ネック)5cの断面積S1を、断面積の相対的に小さい周溝3bに開口する狭窄ネック(第2狭窄ネック)5dの断面積S2よりも大きくして構成されている。
この空気入りタイヤ1によれば、共鳴器5を構成する狭窄ネック5bおよび気室5aの各寸法や形状の中でも、特に、周溝3に開口する狭窄ネック5bのそれぞれの断面積S1、S2を異なるものとしたので、共鳴器5の、断面積の相対的に大きい周溝3aに開口する狭窄ネック5c、と、共鳴器5の、断面積の相対的に小さい周溝3bに開口する狭窄ネック5dとのそれぞれを介して生じる、共鳴器5による共鳴が互いに打ち消し合うことがなく、それゆえに、共鳴器5を十分機能させることができる。また、周溝3で発生する気柱共鳴音の音圧が相対的に大きくなる側、すなわち断面積の相対的に大きい周溝3aに開口する狭窄ネック5bの断面積を大きくしたので、共鳴器5をより効果的に共鳴させることができ、それゆえに、共鳴器5が発揮する騒音低減性能を向上することができる。そして、共鳴器5の騒音低減性能を向上させることにより、例えば、同等の騒音低減性能を維持しつつトレッド踏面2に配設する共鳴器5の数を低減させ陸部4の剛性を向上することができるので、タイヤ1の操縦安定性を増加させることができ、また、それぞれ共鳴周波数が異なる多種類の共鳴器5をトレッド踏面2に配設可能になる等のトレッドパターンのデザイン上の自由度を高めることができる。
【0023】
なお、本発明の空気入りタイヤ1では、共鳴器5を配設したリブ状陸部4aを区画する2本の周溝3a、3bが、断面積が互いに異なっていればよく、その断面積が異なる2本の周溝3a、3b以外の周溝3の断面積は、互いに等しく、または異なるものにすることもできる。さらに、トレッド踏面2には、
図1に示す、タイヤ幅方向中央側およびタイヤ幅方向外側のリブ状陸部4にも、気室と狭窄ネックとからなる、他の共鳴器を配設することができる。
さらに、
図1に示すところでは、第1狭窄ネック5cおよび第2狭窄ネック5dのそれぞれの断面積S1およびS2の大小関係は、各狭窄ネックの幅を変化させることにより実現しているが、各狭窄ネックの深さ、または幅および深さの両方を変化させることによっても実現することができる。
【0024】
ここで、第1狭窄ネック5cの断面積S1、および第2狭窄ネック5dの断面積S2が、
2≧S1/S2≧1.2の関係を満たす
ものとする。これによれば、第1および第2狭窄ネック5c、5dを介して生じる、共鳴器5による共鳴が打ち消し合うことをより効果的に抑制して、共鳴器5をさらに十分機能させることができ、また、断面積が相対的に大きい周溝3aで発生する、相対的に大きい音圧の気柱共鳴音に対し、共鳴器5をより効果的に機能させることができる。
なお、第1狭窄ネック5cの断面積S1の、第2狭窄ネック5dの断面積S2に対する比の上限は、限定されるものではないが、第1狭窄ネック5cの断面積S1を、第2狭窄ネック5dの断面積S2に対して、大きくしすぎると、共鳴器5を所期の共鳴周波数となるように形成するのが困難になる傾向があ
る。また、上述のように、共鳴器5をさらに効果的に機能させつつ、共鳴器5を所期の共鳴周波数となるように形成することを容易にするとの観点か
ら、第1狭窄ネック5cの断面積S1、および第2狭窄ネック5dの断面積S2が、2≧S1/S2≧1.2の関係を満たす
ものとする。
【0025】
ところで、共鳴器5の狭窄ネック5bおよび気室5aは、上述した接地条件の下で、接地面内で路面に開口するものであって、所期の共鳴周波数を生じるものであれば、その幅、深さ、延在形態等の如何を問わない。狭窄ネック5bは、適用リムに組み付けたタイヤに規定の空気圧を充填した無負荷状態で、例えば、陸部表面へ開口幅を0.5〜2.0mmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.7〜2.0mmの範囲とする。また、共鳴器5を所期の共鳴周波数となるように形成して十分に機能させるとの観点からは、狭窄ネックのトレッド踏面2からの深さを、該狭窄ネック5bが開口する周溝3のトレッド踏面2からの深さの1/3〜1/2とすることが好ましい。さらに、狭窄ネック5bの延在方向に直交する方向に沿う断面形状は、
図3に示すように、例えば、長方形などの方形とすることができ(
図3(a))、あるいは、狭窄ネック5bの底部に拡大部を有する、いわゆるフラスコ型とすることもできる(
図3(b))。さらにまた、狭窄ネック5bの延在形態は、
図4(a)に示すように、直線形状、折曲がり形状、湾曲形状またはそれらの組合わせとすることができる。また、図示は省略するが、狭窄ネック5bの側壁には、該側壁から突出する突起を複数配置することもでき、狭窄ネック5bの不測の閉塞を防ぐことができる。
なお、上述の狭窄ネック5bの寸法および形状等は、1つの共鳴器5の、複数の狭窄ネック5bのそれぞれを、または、1列のリブ状陸部4a内もしくはリブ状陸部4a間で複数の共鳴器5の狭窄ネック5bを、相互に同一とすることも異なるものとすることもできる。
【0026】
また、共鳴器5の気室5aは、該気室5aの、陸部4a表面への開口形状を、
図4(a)に示すように、多角形輪郭形状、または、円形、楕円形等の曲線輪郭形状等にすることができ、さらに、気室5aの底部の形状を、平坦状、湾曲状等にすることができる。なお、複数の共鳴器5のそれぞれの気室5aの開口形状等は、1列のリブ状陸部4a内またはリブ状陸部4a間で、同一とすることも異なるものとすることもできる。
【0027】
さらに、
図4(b)に示すところでは、気室5aの寸法を変化させて共鳴器5の共鳴周波数を変化させているが、上述のように、共鳴器5の狭窄ネック5bおよび/または気室5aの寸法または形状等を変化させることにより、トレッド踏面2のリブ状陸部4aに、それぞれ異なる共鳴周波数を有する共鳴器5を複数個配設することができる。
【0028】
また、トレッド踏面2に配設した共鳴器5を所期の共鳴周波数となるように形成して十分に機能させ、また、例えば、共鳴器5が有する全ての狭窄ネック5bを、上述した接地条件の下でも、接地面内で路面に開口させるため、共鳴器5が有する第1狭窄ネック5cおよび第2狭窄ネック5dの合計本数は、2〜4本であることが好ましい。
なお、
図4(c)に示す共鳴器5は、第1狭窄ネック5cおよび第2狭窄ネック5dをそれぞれ2本、1本としており、第2狭窄ネック5dに比して第1狭窄ネック5cの本数を多くしているが、第2狭窄ネック5dの本数を多くすることもできる。
【0029】
ところで、本発明の空気入りタイヤ1では、第1狭窄ネック5cおよび第2狭窄ネック5dのそれぞれの、気室5aに対する延在方向の如何は問わないが、タイヤ1が転動する際に、狭窄ネック5bおよび気室5aの、陸部表面への開口縁が路面に衝突することで発生するピッチノイズを低減させるとの観点からは、第1狭窄ネック5cおよび第2狭窄ネック5dのそれぞれが、気室5aに対して、
図5に示すようにトレッド周方向内側に向かって延在せず、気室5aに対して、
図1に示すようにトレッド周方向外側に向かって延在することが好ましい。換言すれば、狭窄ネック5c、5dおよび気室5aの、リブ状陸部4aの幅方向での重なりを少なくして、狭窄ネック5c、5dを延在させることが好ましい。さらに、このような観点から、
図1に示すように、狭窄ネック5c、5dは、気室5aのトレッド周方向外端位置からトレッド周方向外側に向かって延びて周溝3a、3bに開口させることが好ましい。
【0030】
さらに、
図1に示す、トレッド踏面2に配設したそれぞれの共鳴器5は、リブ状陸部4a間で、トレッド周方向にずれて位置しているが、トレッド周方向に同じ位置とすることもできる。
また、断面積が互いに異なる2本の周溝3a、3b間に区画されるリブ状陸部4aには、第1狭窄ネック5cおよび第2狭窄ネック5dを有する共鳴器5以外に、一本の狭窄ネックのみを有する共鳴器および/または第1狭窄ネックと第2狭窄ネックとのそれぞれの断面積が等しい共鳴器をさらに配設することもできる。
【0031】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の空気入りタイヤは、上記の例に限定されることは無く、本発明の空気入りタイヤには、適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る実施例のタイヤ、および、比較例のタイヤを試作し、以下に示す実験1〜3を行った。
【0033】
[実験1]
実験1では、トレッド踏面に、トレッド周方向に伸びる周溝を4本設けるとともに、タイヤ幅方向内側の2本の周溝の断面積を、タイヤ幅方向外側の2本の周溝に比して大きくし、さらに、周溝の断面積が互いに異なる2本の周溝の間に区画されるリブ状陸部にヘルムホルツタイプの共鳴器を配設した空気入りタイヤにおいて、その共鳴器が有する、1本の第1狭窄ネックおよび1本の第2狭窄ネックのそれぞれの断面積を変化させた下記のタイヤを試作して、周溝で発生する気柱共鳴音の低減効果を、騒音試験により確かめた。
比較例3のタイヤは、
図1に示すトレッドパターンを有する、タイヤサイズが195/45R15の乗用車用空気入りタイヤであり、タイヤ幅方向内側の2本の周溝は、断面積80mm
2(幅10mm、深さ8mm)であり、タイヤ幅方向外側の2本の周溝は、断面積64mm
2(幅8mm、深さ8mm)であり、また、共鳴器は、第1狭窄ネックの断面積3.3mm
2(幅0.83mm、深さ4mm)、第1狭窄ネックの長さ10mm、第2狭窄ネックの断面積3mm
2(幅0.75mm、深さ4mm)、第2狭窄ネックの長さ10mm、気室の容積1560mm
3、その共鳴周波数が1020Hzであり、そして、1列のリブ状陸部に52個配置した。
また、実施例2
、3及び比較例4〜6のタイヤは、第1狭窄ネックおよび第2狭窄ネックの断面積を表1に示す諸元に変更するとともに、共鳴周波数を実施例1のタイヤと同一にするために狭窄ネックの各寸法を調整した以外は、
比較例3のタイヤと同様である。
さらに、比較例1、2のタイヤは、第1狭窄ネックおよび第2狭窄ネックの断面積を表1に示す諸元に変更するとともに、狭窄ネックの各寸法を調整した以外は、
比較例3のタイヤと同様である。
【0034】
気柱共鳴音についての騒音試験は、上記のタイヤをサイズ7.5J−15のリムに装着し、内部に180kPaの空気圧を適用して、車両に取り付けた。該車両を、速度80km/hの定速で走行させた後、エンジンを停止して車両を惰性走行させた。そして、車両中心から側方に7.5mの位置、地面からの高さ1.2mでJASO C606に定める条件に従って側方音を測定し、1/3オクターブバンドで中心周波数800Hz‐1000Hz‐1250Hzの帯域のオーバオール値を求めた。該オーバオール値が小さい程、空気入りタイヤのトレッド踏面に配設した共鳴器の騒音低減効果が大きいことを示す。これら結果を表1に示す。
なお、これら試作したタイヤに設けた共鳴器は、上述の式(1)および(2)に対応するものとし、音速cは、343.7m/sとした。
【0035】
【表1】
【0036】
この試験の結果、
実施例2、3及び比較例3〜6のタイヤでは、第1狭窄ネックの断面積を第2狭窄ネックに比して大きくしたので、比較例1、2のタイヤと比較して、気柱共鳴音が低減することがわかった。また、実施例2
、3及び比較例4〜6のタイヤでは、第1狭窄ネックの断面積S1および第2狭窄ネックの断面積S2を、S1/S2≧1.2としたので、実施例1のタイヤと比較して、さらに気柱共鳴音が低減することがわかった。
【0037】
[実験2]
実験2では、実施例2のタイヤについて、共鳴器の共鳴周波数、および第1狭窄ネックの断面積の総計と第2狭窄ネックの断面積の総計との関係を変えずに、第1狭窄ネックおよび第2狭窄ネックのそれぞれの本数を変化させた下記のタイヤを試作して、周溝で発生する気柱共鳴音の低減効果を、騒音試験により確かめた。
実施例7のタイヤは、第1狭窄ネックの本数を2本に、実施例8のタイヤは、第2狭窄ネックの本数を2本に、実施例9のタイヤは、第1狭窄ネックおよび第2狭窄ネックの本数をそれぞれ2本に変更した以外は、実施例2のタイヤと同様である。
なお、騒音試験は、上記の方法と同様である。これら結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
*断面積S1'およびS2'は、1本の狭窄ネックの断面積を示し、S1=S1'×本数、S2=S2'×本数である。
【0039】
この試験の結果、実施例2、7〜9のタイヤでは、狭窄ネックの本数を変化させても、比較例2に比して、気柱共鳴音を低減することがわかった。
【0040】
[実験3]
実験3では、実施例2のタイヤについて、第1狭窄ネックおよび第2狭窄ネックのそれぞれの気室からの延在方向を、気室に対してトレッド周方向内側に向けた、
図5に示すトレッドパターンを有する実施例10のタイヤを試作して、周溝で発生する気柱共鳴音の低減効果、および、ピッチノイズを、騒音試験により確かめた。
なお、ピッチノイズについての騒音試験は、気柱共鳴音の騒音試験と同様に測定し、そして、ピッチノイズの周波数が、車両の速度、タイヤの周長、共鳴器の個数等で変化するところ、各供試タイヤでは1/3オクターブバンドで中心周波数630Hzの帯域のオーバオール値をピッチノイズとして、その値を求めた。該オーバオール値が小さい程、ピッチノイズを低減することを示す。この結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
この試験の結果、実施例2のタイヤでは、第1狭窄ネックおよび第2狭窄ネックのそれぞれの気室からの延在方向を、気室に対してトレッド周方向外側に向けたので、実施例10のタイヤと比較して、ピッチノイズを低減することができる。