(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166948
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20170710BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20170710BHJP
B65D 53/02 20060101ALI20170710BHJP
B65D 51/20 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
B65D47/08
B65D47/36
B65D53/02
B65D51/20
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-100855(P2013-100855)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221643(P2014-221643A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000234627
【氏名又は名称】シロウマサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100154760
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 正男
(72)【発明者】
【氏名】北山 智治
(72)【発明者】
【氏名】小倉 佑介
(72)【発明者】
【氏名】高坂 健一
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−111535(JP,A)
【文献】
特開2013−043691(JP,A)
【文献】
特開平10−338253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部の外側に嵌合する筒状の中栓側壁部、中栓側壁部の上端部内周から内向きに突出する環状の中栓天板部、中栓天板部の上下に延長する筒状の注出壁部、注出壁部の内側に設けられる環状の注出口部、注出口部の内周に設けられており開封操作によって破損する環状の薄肉部、及び薄肉部の内周において注出口部の内側を塞ぐシール板部を備える中栓と、
シール板部に対して成形後に接合されている蓋天板部、及び蓋天板部の外周縁部から垂下する筒状の蓋側壁部を備える蓋であって中栓に対して開閉可能な蓋とを備える合成樹脂製のキャップにおいて、
シール板部は、山形形状であって、薄肉部の内周から上下に向かう環状の周壁部、及び周壁部の上端を塞ぐと共に蓋天板部に接合される頂部を備え、
周壁部は、頂部の外周全周から下方へ向かう環状の周壁部本体と、周壁部本体の下端部の外周全周から下方へ向かう環状の裾部とを備え、
裾部は、変形可能な肉厚を有すると共に下方へ向かうにつれて末広がりとなり、且つその外周縁が未開封状態では薄肉部の下側近傍に位置するものであり、
薄肉部は、その内周側と外周側に接続している双方の部分としての注出口部とシール板部の周壁部本体の各接続部分よりも肉厚が薄い形状であって、且つその肉厚は外周部に比べて内周部を薄くしてあり、
薄肉部の外周部と裾部とは、開封後に蓋を閉鎖した状態では、薄肉部の上に裾部が重なり合いつつ互いに変形し、密接することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
裾部の肉厚は外周縁へ向かうにつれて薄くしてあることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
裾部は、未開封状態では薄肉部の下側近傍においてその内周側から外周側へ向うにつれて薄肉部から徐々に離れるように形成されており、
裾部の外周縁は、未開封状態では薄肉部の下側近傍で且つ薄肉部の外周部に達する状態で形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のキャップ。
【請求項4】
中栓と蓋とを連結するヒンジを備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取り付けられるキャップに関する。より詳しく言えば、容器口部に取り付けられる中栓と、中栓に対して一部が接合された蓋とを備え、未開封時には中栓の注出口部が薄肉部を介して蓋の一部に接合されており、蓋の開封操作によって薄肉部を破損させて注出口部を開くキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器には、色々な内容物たとえば調味料やドレッシングが充填されており、その上で容器にはキャップが取り付けられる。このようなキャップの一例にヒンジキャップが存在する。そしてヒンジキャップとしては、中栓に容器の内容物を注ぎ出す注出口部を設けると共に、この注出口部を未開封状態ではプルリングで塞いでおき、蓋を開いた後に使用者がプルリングを引き剥がすことによって、注出口部を開通させるものが広く知られている。
【0003】
しかしながら上記の一般的なヒンジキャップでは、蓋を開く操作と、プルリングを引き剥がす操作の2操作が使用時に必要である。従ってなんとかこれら操作を1回で行えるようにするために、プルリングを用いない特殊なヒンジキャップが開発されている。その一例として、未開封時には塞がれている注出口部を、開封操作となる初回の開蓋操作により自動的に開通させるものが存在する(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1の具体的な構成として、ヒンジキャップは、容器口部に固定されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジで連結される上蓋とを備えている。そしてキャップ本体の頂板部に、初回の開蓋操作により形成される予定の注出開口予定部が設けられている。この注出口開口予定部は、初回の開蓋操作をする前までは、その内周側に順次設けられた薄肉部とシール板によって塞がれている。その上で薄肉部の近傍であるシール板の外周縁部を上蓋の天板部から垂下する引き裂き具の下端に溶着してある。
【0005】
このような構成のヒンジキャップが容器に内容物を満たした後に取り付けられて製品化される。そしてヒンジキャップに対して初回の開蓋操作を行うことにより、薄肉部が引き裂かれて注出開口が形成され、それまで注出開口予定部を塞いでいたシール板と一緒に上蓋が開くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−289389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで開蓋操作が行われた後は、薄肉部が環状に引き裂かれているため、上蓋を閉めても引き裂かれた部分には隙間が形成される。従って注出開口は完全には塞がれず、密閉性が低い状態となる。
【0008】
本発明は、上記実情を考慮して創作されたもので、開封後に蓋を閉鎖した状態での密閉性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器口部の外側に嵌合する筒状の中栓側壁部、中栓側壁部の上端部内周から内向きに突出する環状の中栓天板部、中栓天板部の上下に延長する筒状の注出壁部、注出壁部の内側に設けられる環状の注出口部、注出口部の内周に設けられており開封操作によって破損する環状の薄肉部、及び薄肉部の内周において注出口部の内側を塞ぐシール板部を備える中栓と、シール板部に対して成形後に接合されている蓋天板部、及び蓋天板部の外周縁部から垂下する筒状の蓋側壁部を備える蓋であって中栓に対して開閉可能な蓋とを備える合成樹脂製のキャップを前提とする。
【0010】
そして本発明のキャップは、シール板部は、山形形状であって、薄肉部の内周から上下に向かう環状の周壁部、及び周壁部の上端を塞ぐと共に蓋天板部に接合される頂部を備えるものとする。
周壁部は、頂部の外周全周から下方へ向かう環状の周壁部本体と、周壁部本体の下端部の外周全周から下方へ向かう環状の裾部とを備えるものとする。また裾部は、変形可能な肉厚を有すると共に下方へ向かうにつれて末広がりとな
り、且つその外周縁
が未開封状態では薄肉部の下側近傍に位置
するものである。そして薄肉部は、
その内周側と外周側に接続している双方の部分としての注出口部とシール板部の周壁部本体の各接続部分よりも肉厚が薄い形状であって、且つその肉厚は外周部に比べて内周部を薄くしてある。
そのうえで薄肉部の外周部と裾部とは、開封後に蓋を閉鎖した状態では、薄肉部の上に裾部が重なり合いつつ互いに変形し、密接するものとする。
【0011】
また裾部の肉厚については変形可能であれば良く、開封後に蓋を閉鎖した状態で薄肉部の上に密接し易くすること並びに合成樹脂による射出成型をし易くする(型開きし易くする)には次のようにすることが望ましい。すなわち、裾部の肉厚は外周縁へ向かうにつれて薄くすることである。
【0012】
また裾部の外周縁は、未開封状態では薄肉部の下側近傍で且つ薄肉部の外周部に達する状態で形成されるものが望ましい。
【0013】
中栓と蓋とを連結するヒンジを備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載のキャップ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開封することによって薄肉部の内周部が破損し、薄肉部の外周部が注出口部に接続した状態となる。よって薄肉部の外周部の内側から内容物が吐出可能となる。しかも裾部の外周縁は、未開封状態では薄肉部の外周部の下側近傍に位置していたので、開封後に蓋を閉鎖する直前の状態では薄肉部の外周部の上側に接することになる。そして
薄肉部の外周部と裾部とは、開封後に蓋を閉鎖した状態では、薄肉部の上に裾部が重なり合いつつ互いに変形し、密接するので、キャップの密閉性が向上する。
【0015】
また裾部の肉厚が外周縁へ向うにつれて薄くなっていれば、裾部は変形し易くなる。従って開封後に蓋を閉鎖した状態で薄肉部の上に密接し易くなると共に、中栓を合成樹脂による射出成型で型開きする際に金型から離型し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(イ)(ロ)図は、第1実施形態のヒンジキャップにおける開封状態を示す断面図、斜視図である。
【
図2】未開封状態の第1実施形態のヒンジキャップを示す断面図である。
【
図3】開封後に蓋を閉鎖した状態の第1実施形態のヒンジキャップを示す断面図である。
【
図4】(イ)(ロ)(ハ)図は、成形直後の第1実施形態のヒンジキャップを示す平面図、正面図、右側面図である。
【
図5】(イ)(ロ)図は、
図4のA−A、B−B線断面図である。
【
図6】(イ)(ロ)図は、ヒンジキャップの第2実施形態における成形直後の状態、未開封状態を示す断面図である。
【
図7】(ハ)(ニ)図は、第2実施形態のヒンジキャップにおける開封状態、蓋を閉じた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から
図5には、本発明のキャップとしての第1実施形態のヒンジキャップ10が示されている。
図1には始めてヒンジキャップ10の蓋12を開けた開封状態、
図2には未だ蓋12を一度も開けていない未開封状態、
図3には開封後に蓋12を閉鎖した状態、
図4及び
図5には樹脂成形直後の状態における各ヒンジキャップ10が示されている。第1実施形態のヒンジキャップ10は、容器口部に取り付けられる中栓11と、中栓11に対して開閉可能な蓋12と、これらを連結するヒンジ13とから構成されている。以下、これら各構成について、
図2に示す未開封状態を基本的態様として詳述する。
【0020】
中栓11は、同心円状に外周側から内周側に向かって間隔をあけて筒状の外壁部21及び側壁部22及び注出壁部23がそれぞれ設けられている。この外壁部21の上端部と側壁部22の上端部が接合部24によって接続されており、側壁部22の上端部と注出壁部23の高さ中間部が環状の天板部25によって接続されている。また、天板部25の外周縁部から筒状の係止壁部26が上方に延長しており、注出壁部23の内側から環状の注出口部27が内向きに突出している。この注出口部27の内側全周に亘って開封時に破損する薄肉部28が設けられており、薄肉部28の内側には注出口部27を未開封状態で塞ぐシール板部29が設けられている。このような概要の中栓11の構成について、さらに詳述する。
【0021】
外壁部21は、側壁部22よりも下方にまで延長すると共に、側壁部22よりも薄肉に形成されている。また、接合部24は、外壁部21と側壁部22との間を、円周方向全周の一部領域については円弧状の円弧部24aによって連続し、他の領域については複数の架橋部24bを円周方向に間隔をあけて放射状に掛け渡して連続している。使用済みのヒンジキャップ10を容器から外して廃棄する際には、蓋12を上方に引っ張ると、架橋部24bが破損して、破損した外側の部分の外壁部21が持ち上げられて、中栓11が容器口部から外れ易くなる。
【0022】
側壁部22は、その下部内周面に楔状の抜け止め部22aが内向きに突出しており、この抜け止め部22aによって容器口部の外周に嵌め込まれる。また、側壁部22は、円周方向全周に亘って等間隔をあけてスリット22bが設けられている。各スリット22bは、抜け止め部22aよりも上側から側壁部22の下端にまで達していると共に、側壁部22の肉厚方向に貫通している。これらスリット22bにより、側壁部22の下部が外周側に開き易くなり、容器口部への着脱が容易となる。
【0023】
天板部25は、容器口部の上端面を覆う部分である。また、係止壁部26は、蓋12に対して開閉可能に嵌まり合う部分で、その上部から係止突部26aが外側に突出している。この係止突部26aに着脱可能に嵌まり合う被係止突部32aが後述する蓋12の側壁部32の下端部から内側に突出している。
【0024】
注出壁部23は、天板部25の内側から上下に延長するもので、上側の上方注出壁部23a及び下側の下方注出壁部23bより構成されている。このうち下方注出壁部23bは、容器口部の内周面に嵌め込まれる。一方、上方注出壁部23aは、前述したように筒状であるが、より詳しく言えば、ヒンジ13に近い側が低く、ヒンジ13とは反対側が高く形成されており、この高い部分は平面視すると、円弧状となっている。
【0025】
注出口部27の内周の輪郭は、図示の例では平面視して角部が丸く面取りされた細長い菱形形状である。そして、注出口部27の内周全周に亘って薄肉部28が環状に設けられている。
【0026】
薄肉部28は、その内周側と外周側に接続している双方の部分(注出口部27とシール板部29の周壁部本体29cの各接続部分)よりも肉厚が薄い形状であって、開封時には破損可能となっている。より詳しく言えば、環状である薄肉部28は、その外周側から内周側に徐々に薄くなっており、全体的には内周部(シール板部29寄りの部分)を外周部(注出口部27寄りの部分)よりも薄肉に形成してある。したがって内周部の方が外周部よりも破損し易くなっており、この内周部の径方向の幅範囲(破損想定範囲)で破損するように薄肉部28は設計される。薄肉部28が破損すると、破損線28Lが環状に形成される。図示の例では、薄肉部28は部分的に分離することなくその全部が注出口部27に接続した状態となっており、この場合破損線28Lは破損前の薄肉部28の内周縁(破損前の薄肉部28とシール板部29との境界位置)となっている。但し破損線28Lの位置は前記境界位置とは限らず、前記境界位置よりも外周側となる場合もあり(図示せず)、この場合であれば薄肉部28は二分され、破損線28Lに対して内側部分はシール板部29に接続している状態となり、破損線28Lに対して外側部分は注出口部27に接続している状態となる。
【0027】
シール板部29は、山形形状であって、その中央部の平らな頂部29aが中栓天板部25よりも高く且つ注出口部27を縮小した相似形状に設けられ、頂部29aの外周縁部から筒状の周壁部29bが垂下して設けられている。
【0028】
この周壁部29bは、頂部29aの外周全周から下方へ向かう環状の周壁部本体29cと、周壁部本体29cの下端部の外周全周から下方へ向かう環状の裾部29dとを備えている。周壁部本体29cと裾部29dとは何れも下方へ向かうにつれて末広がり状に傾斜している。これらの傾斜具合の関係は、水平を基準とした場合に、裾部29dの方が周壁部本体29cよりも緩やかとなっている(一段と末広がり状となっている)。また周壁部本体29cの下端部の外周においては裾部29dよりも上側に薄肉部28が接続しており、それ故薄肉部28の内周縁から周壁部29b(周壁部本体29c)が上下に向かっている。さらに周壁部本体29cにおける薄肉部28の接合箇所よりも少し下側から裾部29dは下方へ向かいながら末広がり状に傾斜している。従って裾部29dは未開封状態では薄肉部28の下側に位置している。詳しく言えば薄肉部28の下側(より詳しく言えば真下側)の近傍においてその内周側から外周側へ向うにつれて徐々に離れるように裾部29dは形成されている。
【0029】
また裾部29dは、その先端である外周縁)向かうにつれて肉厚が薄くなる変形可能な肉厚を有すると共に環状形状である。そして裾部29dの外周縁全周は、薄肉部28の外周部(破損想定範囲よりも径方向外側)に達するように形成される。それゆえ裾部29dの外周縁全周は、開封後に蓋12を閉鎖した状態では、破損した薄肉部28(注出口部27に接続している部分)の上に重なり合う。重なり合った薄肉部28と裾部29dは合成樹脂の弾性によって互いに若干変形し、密接する。
【0030】
次に蓋12について詳述する。蓋12は、円形状の天板部31と、天板部31の外周縁部から垂下する筒状の側壁部32を主要な構成として備えている。
【0031】
蓋側壁部32は、その下端面が中栓外壁部21の上に重なるように配置されている。蓋側壁部32の下端には、ヒンジ13とは反対側に鍔部32bが外向きに突出して設けられており、平面視すると、鍔部32bは円弧状である。
【0032】
蓋天板部31は、その中央部(シール板部29と対向する部分)に円形の器状の陥没部31aが設けられている。ヒンジキャップ10は射出成型等を用いて生産されたプラスチック(より具体的にはポリプロピレン)の一体成形品であり、成形後に蓋12を閉鎖した状態では、陥没部31aの底部31bがシール板部頂部29aに接する状態で設けられている。また、陥没部31aのうち底部31bに向かって落ち込んでいる周壁部31cは、下に向かうにつれて尻すぼまりとなる形態で傾斜している。この陥没部周壁部31cから筒状の密閉壁部33が同心円状に垂下しており、密閉壁部33の下端が注出壁部23の内面に強く接することにより、開封後の閉蓋状態において注出壁部23の内側を密閉する。従って密閉壁部33と注出壁部23とによる密閉箇所と、薄肉部28と裾部29dとによる密閉箇所が形成される。
【0033】
この陥没部31aの底部31bとシール板部頂部29aをヒンジキャップ10のプラスチック成形後に溶着(超音波溶着や高周波溶着等)や接着によって接合させる。超音波溶着等の場合には、陥没部31aの上面とシール板部29の下面のうち一方に超音波溶着用の振動子を当て、他方に治具を当てながら、超音波溶着を行う。すると、陥没部31aの底部31bとシール板部頂部29aとが溶融して接合し一体化する。
【0034】
最後にヒンジ13について詳述する。ヒンジ13は、長さ中間部で屈折可能な板状物13aと、屈曲可能な薄肉の帯状物13bとから構成されており、各々の一端が中栓11に、他端が蓋12に連続して設けられている。より詳しく言えば、板状物13aが中央部に配置され、板状物13aの両側に帯状物13bが間隔をおいて配置されており、これらの両端は、中栓外壁部21の上端と蓋側壁部32の下端に連続して設けられている。このような構成により、ヒンジ13は中栓11に対して蓋12を開閉可能に連結している。
【0035】
上述したヒンジキャップ10の成形直後の形態が、
図4、
図5に示されている。この形態は、アンダーカットが無い形状である。従って、固定金型に対して可動金型を直線的に移動させるだけで、型開き可能である。なお、ヒンジキャップ10には、型開き方向に対して交差する方向に対して突出する部分が幾つかあるが、突出量は短いし、例えば裾部29dについてはその先端へ向かうにつれて肉厚が薄くなる変形可能なものなので、合成樹脂の弾性による変形を利用して型開き可能である。中栓側壁部22については前述したようにスリット22bが設けられているので、中栓側壁部22の抜け止め部22aがあっても、合成樹脂の弾性による変形を利用して型開き可能である。また、蓋陥没部31aも同様に突出する部分がない形態である。
【0036】
上述したヒンジキャップ10については、以下の要領で製造され、開封され、再び閉鎖される。
(1)ヒンジキャップ10をプラスチック成形した直後の状態(金型の中に収容されている状態)では、
図4及び
図5に示すように、蓋12が開いたまま中栓11の横に並んでおり、このとき、中栓シール板部29及び蓋陥没部31aはいずれもアンダーカットのない末広がりの山形形状となっている。
(2)金型から取り外したヒンジキャップ10について蓋12を閉鎖すると、
図2に示すように、蓋陥没部31aの底部31bが中栓シール板部29の頂部29aに面接触した状態となる。
(3)この後に、超音波溶着等して蓋陥没部31aの底部31bと中栓シール板部29の頂部29aを接合させる。
(4)このようにして完成したヒンジキャップ10を内容物が充填された容器口部に嵌合する。
(5)開封するために蓋12の側壁部鍔部32bを押し上げると、
図1に示すようにヒンジ13を支点として蓋12が開きながら、環状の薄肉部28が全周に亘って引きちぎられるようにして破損する。またその破損した薄肉部28の内側をシール板部29の裾部29dが乗り越え、注出口部27の内側が開通し、内容物を吐出することが可能となる。そして、シール板部29が蓋天板部31に付いたままの状態となる。
(6)開封後に蓋12を閉鎖しようとすると、閉鎖する直前の状態では裾部29dが破損した薄肉部28の外周部の上に接する。そして閉鎖する直前の状態から閉鎖した状態になると、裾部29dとその下側の薄肉部28の外周部とが重なり合いつつ互いに変形し、密接する。また密閉壁部33の下端が注出壁部23の内面に密接する。このように密接するものであるので、ヒンジキャップ10は密閉性の高いものである。内容物は限定されないが、固体(顆粒、粉末等)に比べれば液体(ドレッシングのような粘性の低いものやケチャップのような粘性の高いものも含む。)の方が、ヒンジキャップ10の密閉性の高さをより実感できる。
【0037】
図6、7には、本発明の第2実施形態のヒンジキャップ10が示されている。第1実施形態との違いは、蓋天板部31を陥没部31aのない平らな形状としてあること、及び中栓シール板部29が高い山形形状となっていることである。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明のキャップは、ヒンジキャップに限らず、他のキャップ例えばネジの付いたスクリューキャップであっても良い。スクリューキャップの場合は成形後に、中栓11と蓋12とを互いの外周面又は内周面に形成したネジによって中栓11と蓋12とを開閉可能に連結し、その後に中栓11のシール板部29に対して蓋天板部31を溶着等して接合する。
【0039】
また蓋天板部31と中栓シール板部29を接合させる手段として、超音波や高周波による溶着を用いたが、これに限らず、接着を用いても良い。さらに注出口部27の形状も、菱形に限らず、他の形状であっても良い。なお開封後に蓋12を閉鎖した状態では、破損した薄肉部28の上には裾部29dの先端全周が重なり合うことが望ましいが、裾部29dの先端全周の一部が重なり合う構成であっても良く、この構成の場合であっても、全く重なり合わない構成に比べれば、密閉性が向上している。なお、蓋12は、蓋天板部31から垂下する筒状の密閉壁部33を有する構造に限らず、密閉壁部33の無い構造であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
10ヒンジキャップ
11中栓
12蓋
13ヒンジ
13a板状物
13b帯状物
21外壁部
22側壁部
22a抜け止め部
22bスリット
23注出壁部
23a上方注出壁部
23b下方注出壁部
24接合部
24a円弧部
24b架橋部
25天板部
26係止壁部
26a係止突部
27注出口部
28薄肉部
28L破損線
29シール板部
29a頂部
29b周壁部
29c周壁部本体
29d裾部
31天板部
31a陥没部
31b底部
31c周壁部
32側壁部
32a被係止突部
32b鍔部
33密閉壁部