(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、第1の実施例による半導体発光素子アレイ(LEDアレイ)の構造、および、その製造方法について説明する。LEDアレイは、たとえばビア構造を有する複数の半導体発光素子(LED素子)を含んで構成される。実施例では、電気的に直列に接続する2つのLED素子を含むLEDアレイについて説明する。ただし、LED素子は、2つ以上あってもかまわないし、電気的に並列に接続されていてもかまわない。
【0013】
第1の実施例によるLEDアレイは、主に、成長基板上に複数のLED素子が形成されたデバイス構造体を製造する工程(
図1B〜
図1G)、支持体を製造する工程(
図2Bおよび
図2C)、デバイス構造体と支持体とを貼り合わせて貼り合わせ構造体を製造し、当該貼り合わせ構造体から成長基板を除去する工程(
図3B〜
図3D)、および、複数のLED素子に電力を供給するための配線を形成する工程(
図3E〜
図3G)、を経て製造される。なお、複数のLED素子は、それぞれ同様の構成を有するものとする。また、図中に示す各構成要素の相対的なサイズは、実際のものと異なっている。
【0014】
図1Aは、デバイス構造体102を示す平面図である。デバイス構造体102は、成長基板11上に、たとえば2つのLED素子101(第1,第2LED素子101a,101b)が、間隙Geを空けて配列する構成を有する。LED素子101の平面形状は、たとえば一辺0.5mm〜1mm程度の矩形状である。また、間隙Geの幅(LED素子101の間隔)は、たとえば80μm程度である。
【0015】
LED素子101は、n型半導体層、活性層(発光層)およびp型半導体層を含む光半導体積層20(第1、第2素子領域20a,20b)と、光半導体積層20のn型半導体層と電気的に接続するn側電極層61(第1素子領域20a上に配置される第1n側電極層61a、および、第2素子領域20b上に配置される第2n側電極層61b)と、光半導体積層20のp型半導体層と電気的に接続するp側電極層62(第1素子領域20a上に配置される第1p側電極層62a、および、第2素子領域20b上に配置される第2p側電極層62b)と、を含んで構成される。n側電極層61およびp側電極層62は、電極層60を構成する。なお、n側電極層61およびp側電極層62は、相互に電気的に短絡しないように、間隙Gcを空けて配置されている。
【0016】
図1B〜
図1Gは、デバイス構造体102を製造する様子を示す断面図である。以下、
図1B〜
図1Gを参照して、デバイス構造体101の製造方法について説明する。
【0017】
最初に、
図1Bに示すように、C面サファイア基板からなる成長基板11を準備し、有機金属化学気相成長(MOCVD)法を用いて、GaN系半導体(Al
xIn
yGa
zN,x+y+z=1)からなる光半導体積層20を形成する。具体的には、まず、成長基板11をサーマルクリーニングして、GaNからなるバッファ層21を成長する。続いて、Si等をドープしたn型GaNからなるn型半導体層22、井戸層(InGaN)および障壁層(GaN)を含む多重量子井戸構造からなる活性層(発光層)23、および、Mg等をドープしたp型GaNからなるp型半導体層24を順次成長して光半導体積層20を形成する。
【0018】
なお、成長基板11は、GaN結晶と整合する格子定数を有する単結晶基板であり、後工程であるレーザリフトオフ工程(
図3C参照)において成長基板を剥離できるように、GaN結晶の吸収端波長である362nmの光に対して透明なものから選択される。サファイア以外に、スピネル、ZnO等を用いることができる。
【0019】
また、光半導体積層20において、n型半導体層22と活性層23との間に、InGaN層およびGaN層を含む超格子構造からなる歪緩和層を成長してもかまわない。さらに,活性層23とp型半導体層24との間に、p型AlGaNからなるクラッド層を成長してもかまわない。
【0020】
その後、光半導体積層20に、第1,第2素子領域20a,20bを区画する。そして、第1,第2素子領域20a,20b内に、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などにより、たとえば、インジウム錫酸化物(10nm)/Ag(100nm)/TiW(250nm)/Ti(50nm)/Pt(100nm)/Au(1000nm)/Ti(30nm)からなる多層膜を成膜し、フォトリソグラフィ法やリフトオフ法などによりパターニングして、所望形状のp側電極30を形成する。p側電極30は、光反射性を有する部材、たとえばAgやAlなどを含むことが好ましい。
【0021】
このとき、p側電極30は、後工程(
図1C)において、光半導体積層20にビア20dを形成するための開口部30hを含んでパターニングされる。開口部30hは、第1素子領域20aにおいては、第2素子領域20bから離れた領域に形成され、第2素子領域20bにおいては第1素子領域に近い領域に形成される。
【0022】
次に、
図1Cに示すように、レジストマスク及び塩素ガスを用いたドライエッチング法により、光半導体積層20の、p側電極30の開口部30hに対応する領域をエッチングし、ビア20dを形成する。ビア20dはp型半導体層24および活性層23を貫通して形成されており、ビア20dの底面にはn型半導体層22が露出する。これにより、光半導体積層20の第1,第2素子領域20a,20b内に、ビア20dに対応するビア領域20nと、ビア領域20n以外の領域である平坦領域20pと、が画定される。なお、ここでは、光半導体積層20の各素子領域に、それぞれ1つのビア20dが形成される様子を示すが、実際には、ビア20dは複数設けられていることとする(
図1H参照)。
【0023】
次に、
図1Dに示すように、p側電極30および光半導体積層20のビア20d内側面を覆う絶縁層40を形成する。まず、p側電極30上およびビア20d内に、スパッタ法などにより、膜厚300nmのSiO
2膜を成膜する。続いて、レジストマスクおよびCF4/Ar混合ガスを用いたドライエッチング法により、p側電極30の上面一部およびビア20dの底面部に位置するSiO
2膜をエッチングし、絶縁層40を形成する。なお、このとき、ビア20dの底面には、n型半導体層23が露出している。また、p側電極30の一部も露出している。絶縁層40としては、SiO
2のほかに、SiNを用いることができる。
【0024】
次に、
図1Eに示すように、光半導体積層20のビア20d内に、n型半導体層22に接触するn側電極50を形成する。まず、絶縁層40上およびビア20d内のn型半導体層22が露出する領域に、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などにより、Ti(1nm)/Ag(200nm)/Ti(100nm)/Pt(200nm)/Au(200nm)からなる金属多層膜を成膜する。続いて、当該金属多層膜を、リフトオフ法などによりパターニングして、柱状のn側電極50を形成する。n側電極50に用いられる部材は、接触抵抗が低い、たとえば1×10
−4Ωcm
2以下であることが望ましく、また、光反射性を有する、たとえばAgやAlなどを含むことが好ましい。なお、n側電極50は、
図1Fに示す工程において、電極層60と一体的に形成してもよい。
【0025】
次に、
図1Fに示すように、絶縁層40上およびn側電極50上に、電極層60を形成する。まず、絶縁層40上およびn側電極50上に、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などにより、Ti(1nm)/Ag(200nm)/Ti(100nm)/Pt(200nm)/Au(200nm)/Ti(50nm)/Pt(100nm)/Au(100nm)からなる金属多層膜を成膜する。続いて、金属多層膜を、リフトオフ法などによりパターニングして、電極層60を形成する。なお、電極層60の最上層に形成されるAu層(接合層)71は、後工程(
図3B)において、支持体103を構成する融着層70(
図2C)と接合する層である。また、電極層60は、光反射性を有する部材、たとえばAgやAlなどを含むことが好ましい。
【0026】
なお、電極層60は、n側電極50と電気的に接続するn側導電領域61(第1素子領域に配置される第1n側導電領域61a、および、第2素子領域に配置される第2n側導電領域61b)と、p型電極30と電気的に接続するp側導電領域62(第1素子領域に配置される第1p側導電領域62a、および、第2素子領域に配置される第2p側導電領域62b)と、に区分される。n側導電領域61およびp側導電領域62は、電気的に短絡しないように、間隙Gcを空けてパターニングされる(
図1A参照)。間隙Gcの幅(n側導電領域61とp側導電領域62の間隔)は、たとえば10μm程度である。
【0027】
次に、
図1Gに示すように、レジストマスク及び塩素ガスを用いたドライエッチング法により、光半導体積層20の一部(第1,第2素子領域20a,20bの間隙Ge)をエッチングし、第1,第2素子領域20a,20bを物理的に分離する。なお、分離された第1,第2素子領域20a,20bは、それらの平断面積が成長基板11に向かって徐々に増加する順テーパ形状を有する。
【0028】
以上により、LED素子101(第1および第2LED素子101a,101b)が完成し、また、デバイス構造体102が完成する。
【0029】
図1Hに、光半導体積層20、p側電極30およびn側電極50の全体的平面形状を示す。光半導体積層20(第1,第2素子領域20a,20b)に形成されるビア領域20n(ないしビア20d,
図1C)は、たとえば、円形状であり、平坦領域20pに囲まれるように形成されている。また、たとえば5つのビア領域20nが光半導体積層20面内に分布するように設けられている。なお、ビア領域20nの平面形状は、円形状に限らず、楕円状や矩形状であってもかまわない。また、ビア領域20nの配設数も5つに限らず、より多く設けてもよい。
【0030】
ビア領域20n(ないし平坦領域20p)のサイズや形状、分布密度などは、LEDアレイ(ないしLED素子)の発光強度ないし輝度ムラ・色ムラなどに影響する。ビア領域20n(ないし平坦領域20p)のサイズや形状、分布密度などは、LEDアレイ(ないしLED素子)の用途に応じて適宜調整することが望ましい。
【0031】
また、n側電極50(図中、ピッチが相対的に狭い斜線模様で示す領域)は、たとえば円形状であり、それぞれ光半導体積層20のビア領域20nに対応する位置に形成される。
【0032】
さらに、p側電極30(図中、ピッチが相対的に広い斜線模様で示す領域)は、光半導体積層20の平坦領域20pに対応する位置に、n側電極50(ないしビア領域20n)を覗くことができる円形状の開口部30hを含んでパターニングされている。なお、開口部30hの平面形状は、円形状に限らず楕円状や矩形状であってもかまわない。
【0033】
図2Aは、支持体103を示す平面図である。支持体103は、支持基板12上に、光反射性および電気伝導性を有する部材、たとえばAuを含む融着層70が形成された構成を有する。融着層70は、相互に電気的に短絡しないように、間隙Gjを空けて一方向に配列する複数の融着領域(第1〜第3融着領域70a〜70c)と、第1,第3融着領域70a,70cと連続して形成される給電領域70pと、を含む構成である。
【0034】
図2Bおよび
図2Cは、支持体103を製造する様子を示す断面図である。以下、
図2Bおよび
図2Cを参照して、支持体103の製造方法について説明する。
【0035】
まず、
図2Bに示すように、表面に絶縁膜12aが形成された支持基板12を準備する。支持基板12には、熱膨張係数がサファイア(7.5×10
−6/K)やGaN(5.6×10
−6/K)に近く、熱伝導率が高い部材を用いることが好ましい。例えば、Si、Ge、Mo、CuW、AlN等を用いることができる。支持基板12にSi基板を用いた場合、たとえば、当該Si基板の表面を熱酸化させることにより、SiO
2からなる絶縁膜12aを形成する。
【0036】
次に、
図2Cに示すように、支持基板12(絶縁膜12a)上に、スパッタ法などによりTi/Ni/Au/Pt/AuSn(Sn:20wt%)からなる金属多層膜を成膜し、フォトリソグラフィ法やリフトオフ法などによりパターニングして、融着層70を形成する。融着層70は、第1〜第3融着領域70a〜70cが間隙Gjを空けてパターニングされており、また、給電領域70pが第1,第3融着領域70a,70cと連続して形成されるようにパターニングされている。
【0037】
なお、間隙Gjの幅(第1,第2融着領域の間隔、ないし、第2,第3融着領域の間隔)は、デバイス構造体102におけるn側導電領域61およびp側導電領域62の間隙Gcの幅と同程度である(
図1F参照)。また、融着層70(金属多層膜の最上膜)と、後工程(
図3B)で当該融着層70と接合する電極層60接合層71(
図1F参照)と、に用いられる部材は、融着接合が可能な、Au−Sn、Au−In、Pd−In、Cu−In、Cu−Sn、Ag−Sn、Ag−In、Ni−Sn等を含む金属や、拡散接合が可能なAuを含む金属を用いることができる。
【0038】
以上により、支持体103が完成する。
【0039】
図3Aは、LEDアレイ100を示す平面図である。LEDアレイ100は、既に作製したデバイス構造体と支持体とを貼り合わせて、その後、成長基板を除去することにより作製される。
【0040】
LEDアレイ100は、支持基板12上に、LED素子101(第1,第2LED素子101a,101b)が間隙Geを空けて配置される構成を有する。支持基板12および第1,第2LED素子101a,101bは、融着層70(および接合層71,
図1G参照)を介して、物理的に結合している。第1,第2LED素子101a,101bは、たとえば電気的に直列に接続されている。第1,第2LED素子101a,101bの間隙Geからは、支持基板12上に形成された、光反射性を有する融着層70の第2融着領域70bを覗くことができる。
【0041】
支持基板12の両端には、第1,第2LED素子101a,101bに電力を供給するための融着層70の給電領域70pが露出している。給電領域70pの幅Wは、たとえば160μm程度である。給電領域70p上の一部の領域には、光吸収性を有する部材、たとえばTiなどを含む光吸収層73が形成されている。また、給電領域70p上の、光吸収層73が形成されていない領域には、外部電源に接続するための配線74が設けられている。
【0042】
図3Bおよび
図3Gは、LEDアレイ100を製造する様子を示す断面図である。以下、
図3Bおよび
図3Gを参照して、LEDアレイ100の製造方法について説明する。なお、
図3Bおよび
図3Gは、
図3AにおけるIIIB−IIIB断面に対応する。
【0043】
まず、
図3Bに示すように、既に作製したデバイス構造体102および支持体103を、電極層60(第1,第2n側導電領域61a,61b、および、第1,第2p側導電領域62a,62b)と融着層70(第1〜第3融着領域70a〜70c)とが対向接触するように配置し、3MPaで加圧しながら300℃に加熱した状態で、10分間保持する。続いて、室温まで冷却して、電極層60(その最上層である接合層71)と融着層70とを融着接合する。これにより、貼り合せ構造体104が形成される。
【0044】
なお、デバイス構造体102および支持体103は、デバイス構造体102における電極層60の間隙Gcと、支持体103における融着層70の間隙Gjと、が重なるように貼り合せる。これにより、LED素子101(光半導体積層20および電極層60)、融着層70、および、支持基板12に囲まれる筒状(ないし管状)の空洞領域Svが画定される。
【0045】
また、第1LED素子101aのn側導電領域61aは、融着層70の第1融着領域70aと接触して電気的に接続しており、第1LED素子101aのp側導電領域62aは、融着層70の第2融着領域70bと接触して電気的に接続している。また、第2LED素子101bのn側導電領域61bは、融着層70の第2融着領域70bと接触して電気的に接続しており、第2LED素子101bのp側導電領域62bは、融着層70の第3融着領域70cと接触して電気的に接続している。これにより、第1,第2LED素子101a,101bは、電気的に直列に接続されることになる。
【0046】
次に、
図3Cに示すように、貼り合せ構造体104に、成長基板11側からKrFエキシマレーザ光(波長:248nm,照射エネルギ密度:800〜900mJ/cm
2)を照射し、バッファ層21の一部を熱分解する。これにより、成長基板11と光半導体積層20とが分離する。
【0047】
その後、バッファ層21(GaN結晶)の熱分解で発生したGaを熱水などで除去し、塩酸や水酸化ナトリウムなどで光半導体積層20表面(バッファ層21およびn型半導体層22の一部)をエッチングする。これにより、光半導体積層20のn型半導体層22が露出する。なお、第1,第2素子領域20a,20bは、それらの平断面積が支持基板12に向かって徐々に減少する逆テーパ形状となる。
【0048】
次に、
図3Dに示すように、露出したn型半導体層22表面に、いわゆるマイクロコーン構造層(MC層)22aを形成する。光半導体積層20の光出射面(n型半導体層22表面)に微細な凹凸構造を有するMC層22aを形成することにより、LED素子(ないしLEDアレイ)の光取り出し効率を向上させることができる。MC層22aは、たとえば、n型半導体層22表面を、TMAH(水酸化フェニルトリメチルアンモニウム)水溶液(温度約70℃,濃度約25%)などによりウエットエッチングすることにより形成することができる。
【0049】
次に、
図3Eおよび
図3Fに示すように、スパッタ法およびリフトオフ法などを用いて、融着層70の給電領域70pの一部に、光吸収層73を形成する。
【0050】
まず、
図3Eに示すように、支持基板12全面に、第1,第2LED素子101a,101bおよび融着層70を覆ってフォトレジスト(たとえばクラリアント社製AZ5214)を塗布し、90℃以下に設定したホットプレートを用い、大気中で90秒間程度のプリベークを行う。続いて、紫外光(UV光)を用い、ファースト露光量17mJとして、フォトレジストにパターンを露光する。露光後のフォトレジストを120℃の大気中で90秒間程度のリバーサルベーク処理を行い、露光部を熱架橋させる。その後、反転露光量600mJとして、UV光をフォトレジスト全面に照射する。さらに、現像液中に130秒間浸漬し、現像処理を行うことにより所望のフォトレジストパターンRPを形成する。なお、このようなフォトリソグラフィ処理の条件は、適宜変更可能である。
【0051】
続いて、スパッタ法を用いて、膜厚約20nmのTi膜73aを成膜し、その後、フォトレジストパターンRP(同時にその上方に形成されたTi膜73a)を除去(リフトオフ)することにより、
図3Fに示すように、融着層70の給電領域70pの一部に、光吸収層73を形成する。なお、給電領域70pにおいて、後工程(
図3G)で形成される配線74との密着性の観点から、当該配線74が形成される領域には、吸収層73を形成しないことが好ましい。また、光吸収層73は、Tiのほか、Cr,Ni,TiN等で形成してもよい。
【0052】
次に、
図3Gに示すように、第1,第2LED素子101a,101b上に、化学気相堆積(CVD)法などにより、SiO
2などからなる表面保護膜80を形成する。その後、ワイヤーボンディングにより、Auなどからなる配線74で、給電領域70pの光吸収層73が形成されていない領域と外部電源PSの端子との間を接続する。以上により、LEDアレイ100が完成する。
【0053】
なお、その後、
図3Hに示すように、LEDアレイ100を覆う蛍光層90を形成してもかまわない。蛍光層90は、たとえば、黄色光を放出する蛍光体微粒子91を含む樹脂を、支持基板12全面に、第1,第2LED素子101a,101bを覆うように滴下し、その後、当該樹脂を硬化させることにより形成することができる。
【0054】
融着層の給電領域に接続された配線を介して、複数のLED素子に電力を供給することにより、電気的に直列に接続された複数のLED素子各々の光半導体積層(特にその活性層)に電流が注入される。これにより、光半導体積層(特にその活性層)が発光し、光半導体積層(特にそのn型半導体層)から光が放出される。実施例の場合、光半導体積層はGaN系半導体により構成されているため、青色光ないし紫外光が放出される。複数のLED素子を覆うように、黄色光を放出する蛍光層を形成することにより、LEDアレイから白色光を出射させることができる。このようなLEDアレイ100は、たとえば車両用灯具に用いることができる。
【0055】
図3Iに、完成したLEDアレイの全体的平面形状を示す。なお、図中において、光半導体積層20(第1,第2素子領域20a,20b)は破線によって示されている。また、電極層60(第1,第2n側導電領域61a,61b、および、p側導電領域、第1,第2p側導電領域62a,62b)は、ピッチが相対的に広い斜線模様によって示され、融着層70の給電領域70pにおける光吸収層73は、ピッチが相対的に狭い斜線模様によって示されている。
【0056】
配線74から電力を供給することにより、光半導体積層20(第1,第2素子領域20a,20b)から光が放出される。このとき、LEDアレイ100面内において、第1,第2LED素子101a,101bが配置されている領域が発光領域となり、それらLED素子が配置されていない領域、つまり、第1,第2LED素子101a,101bの間隙領域、および、LEDアレイ100の両端領域が非発光領域となる。
【0057】
第1および第2LED素子101a,101bの間には、光反射性を有する、たとえばAuなどを含む融着層70の第2融着領域70bが露出している。第1,第2LED素子101a,101bの間から露出する融着層70(第2融着領域70b)は、第1および第2LED素子101a,101bの間に画定される間隙領域Rgの大部分を占有することが好ましい。たとえば、第1および第2LED素子101a,101bの間から露出する融着層70(第2融着領域70b)の面積は、間隙領域Rgの面積の80%以上であることが好ましい。
【0058】
融着層70(第2融着領域70b)が、間隙領域Rgの大部分を占有していない場合、光半導体積層20(第1,第2素子領域20a,20b)から間隙領域Rgの支持基板12方向に放出される光の大部分は、Siなどから構成される支持基板12に吸収されてしまい、LEDアレイ100の光出射面側には反射されない。このため、発光領域(第1,第2LED素子101a,101b)と間隙領域Rgとの間には、著しい輝度ムラが生じうる。また、LEDアレイ100に発光層90(
図3H参照)を設ける場合には、光半導体積層20からの発光(たとえば青色光)と蛍光層90による蛍光(たとえば黄色光)とのバランスが、発光領域と間隙領域とで異なってしまい、著しい色ムラが生じる可能性がある。
【0059】
一方、融着層70(第2融着領域70b)が、間隙領域Rgの大部分を占有している場合、光半導体積層20から間隙領域Rgの支持基板12方向に放出される光の大部分は、光反射性を有する融着層70によりLEDアレイ100の光出射面側に反射される。つまり、第1および第2素子領域20a,20bの間から露出する融着層70の第2融着領域は、第1および第2素子領域20a,20bによる2方向からの入射光を反射する。このため、発光領域と間隙領域との間に生じうる輝度ムラが緩和される。また、LEDアレイ100に発光層90を設ける場合には、発光領域と間隙領域との間に生じうる色ムラも緩和することができる。
【0060】
なお、光反射性を有する融着層が間隙領域の大部分を占有している場合であっても、相互に隣接するLED素子の間隔が著しく広い場合には、発光領域と間隙領域との間に著しい輝度ムラが生じうる。したがって、相互に隣接するLED素子の間隔は、80μm以下であることが好ましいであろう。
【0061】
また、支持基板12の両端には、第1,第2LED素子101a,101bから露出して、融着層70の給電領域70pが形成されている。給電領域70pの配線74が形成される領域以外の領域には、光吸収性を有する、たとえばTiなどを含む光吸収層73を形成することが好ましい。
【0062】
光吸収層73が給電領域70pに形成されていない場合、光半導体積層20から給電領域70p方向に放出される光の大部分は、LEDアレイの光出射面側に反射される。しかしながら、給電領域70pは、支持基板12の端部に形成されており、第1または第2素子領域20a,20bによる一方向からの入射光しか反射することができない。このため、発光領域(第1,第2LED素子101a,101b)および間隙領域Rgと、給電領域70pと、の間には、輝度ムラ(発光層90を設ける場合には色ムラ)が生じうる。
【0063】
一方、光吸収層73が給電領域70pに形成される場合、光半導体積層20から給電領域70p方向に放出される光の大部分は、光吸収層73により吸収されるため、LEDアレイの光出射面側に反射されない。このため、LEDアレイ100の光出射面内において、光出射面積は低減するものの、出射光強度を均一化することができる。
【0064】
以上のように、相互に隣接するLED素子の間隙から露出する、光反射性を有する融着層(第2融着領域)が、LED素子の間隙に画定される間隙領域の大部分を占有することにより、LEDアレイの光出射面内に生じうる輝度ムラ(ないし色ムラ)を抑制することが可能となる。また、支持基板の両端にLED素子から露出して形成される融着層(給電領域)に、光吸収層を形成することにより、LEDアレイの出射光強度を均一化することが可能となる。
【0065】
本発明者らの更なる検討によれば、LED素子101(光半導体積層20および電極層60)、融着層70、および、支持基板12に囲まれる空洞領域Svの形状が、筒状(ないし管状)である場合、
図3Eおよび
図3Fに示す工程(光吸収層パターニング工程)において、光吸収層73が良好にパターニングされない可能性があることがわかった。たとえば、空洞領域Svの開口部Op付近にTi膜73aが形成されてしまい、融着層70の第1および第2融着領域70a,70b、ないし、第2および第3融着領域70b、70cが電気的に短絡しうることがわかった。
【0066】
これは、LED素子101を覆うフォトレジストバターンPRが、空洞領域Svの開口部Opを塞いでしまい、空洞領域Sv内に閉じ込められた空気がプリベーク処理などで膨張して、フォトレジストパターンPRを破裂させるためだと考えられる。本発明者らは、光吸収層を良好にパターニングすることができる空洞領域の形状について検討を行った。
【0067】
図4Aは、第2の実施例によるデバイス構造体102aを示す平面図である。第2の実施例によるデバイス構造体102aは、電極層60の平面形状を除いて、第1の実施例によるデバイス構造体102と同様の構成を有する。
【0068】
第2の実施例によるデバイス構造体102aでは、光半導体積層20(第1,第2素子領域20a,20b)上に形成される電極層60(p側導電領域62)が、間隙Gcと連続して電極層60の外部と通じる溝部(通気溝)63aを含むようにパターニングされる。また、溝部63aは、間隙Geと交差する方向に形成される。溝部63aを含む電極層60は、
図1Fに示す工程で使用するマスクパターンを変更することにより、容易に形成することが可能である。なお、溝部63aの幅は、1μm以上あることが好ましい。
【0069】
図4Bは、デバイス構造体102aを用いて作製したLEDアレイ100aを示す断面図である。電極層60に分離溝部63aを含むデバイス構造体102aを用いて、LEDアレイ100aを形成することにより、空洞領域Svに、LED素子101の外部に通じる通気溝63を、開口部Op(
図3I参照)に加えて設けることができる。
【0070】
空洞領域SvにLED素子101の外部に通じる通気溝63を設けることにより、光吸収層パターニング工程(
図3Eおよび
図3F)において、空洞領域Sv内に閉じ込められる空気の膨張圧力が分散し、フォトレジストパターンPRの破裂を抑制することが可能となる。これにより、光吸収層73を良好にパターンングすることが可能となる。
【0071】
図5Aは、第3の実施例による支持体103bを示す平面図である。第3の実施例による支持体103bは、融着層70の平面形状を除いて、第1の実施例による支持体103と同様の構成を有する。
【0072】
第3の実施例による支持体103bでは、支持基板12上に形成される融着層70(第2,第3融着領域70b、70c)が、間隙Gjと連続する凹み部(通気溝)75aを含むようにパターニングされる。凹み部75aを含む融着層70は、
図2Cに示す工程で使用するマスクパターンを変更することにより、容易に形成することが可能である。なお、凹み部75aの幅は、1μm以上あることが好ましい。
【0073】
図5Bは、支持体103bを用いて作製したLEDアレイ100bを示す断面図である。融着層70に凹み部75aを含む支持体103bを用いて、LEDアレイ100bを形成することにより、空洞領域Svに、LED素子101の外部に通じる通気溝75を、開口部Op(
図3I参照)に加えて設けることができる。なお、融着層70に設けられる通気溝75は、LED素子101の間隙Geにおける輝度ムラ(ないし色ムラ)緩和の観点から、平面視において、LED素子101からはみ出さないように形成することが好ましいであろう。
【0074】
空洞領域SvにLED素子101の外部に通じる通気溝75を設けることにより、光吸収層パターニング工程(
図3Eおよび
図3F)において、空洞領域Sv内に閉じ込められる空気の膨張圧力が分散し、フォトレジストパターンPRの破裂を抑制することが可能となる。これにより、光吸収層73を良好にパターンングすることが可能となる。
【0075】
なお、空洞領域と連続してLED素子の外部に通じる通気溝(溝部および凹み部)は、電極層および融着層の両方に形成してもかまわない。また、通気溝は、空洞領域に1つのみ形成してもかまわない。ただし、空洞領域内に閉じ込められる空気による膨張圧力の分散の観点から、空洞領域にはより多くの通気溝が形成されることが望ましいであろう。
【0076】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。たとえば、LEDアレイを構成するLED素子は、ビア構造でなくてもかまわない。つまり、光半導体積層にビアを形成して、当該ビア内に露出するn型半導体層と融着層とを電気的に接続する構造ではなく、n型半導体層表面(上面)にn側電極が形成され、n側電極と融着層とを、光半導体積層の側面を通って、電気的に接続する部材が設けられた構造(対向電極構造)であってもよい。その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。