(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維状固体物質が、モノフィラメント、ユニディレクション糸、及び紡績糸からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1項記載の有形体の製造方法。
工程2において、前記線状骨格の骨格形状を設計した際の座標に基づいて、ロボットを利用した繊維供給装置を座標の近傍に移動し、ロボット操作によって繊維供給装置から前記層形成繊維を繰り出し、前記線状骨格に付着させて前記層を形成させる、請求項1〜5のいずれか1項記載の有形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)線状骨格
本発明における線状骨格(以下、線状骨格ともいう)は、本発明における有形体(以下、有形体ともいう)に含まれる繊維(以下、層形成繊維ともいう)で構成された層(以下、繊維構成層ともいう)を形成するために必要な骨格形状が線状物質で構成されており、空間中でその骨格形状が安定して維持できる構造体である。
【0010】
線状骨格は、線状物質の重なり本数の最大値が、好ましくは10本以下、より好ましくは7本以下、更に好ましくは4本以下である。
【0011】
有形体の所望の形状を、例えば、有限要素法で使用される三角形などの微小線状要素で分割し、各微小線状要素を構成する辺を固体物質で形成して、線状骨格としてよい。
上記分割は、有形体の所望の形状を所望の精度で得ようとする場合、その精度に合わせて粗くしたり、密にしたりすることができる。
有形体の所望の形状が、円筒等の一軸対象物のような簡易な形状であれば、線状骨格も簡易に構成できる。
層形成繊維を精度よく固定させて、繊維構成層の形態を精度よく形成することができる場合も、線状骨格を簡易に構成できる場合がある。
【0012】
線状骨格を構成する固体物質は、金属、無機物質及び有機物質からなる群から選ばれる少なくとも1種であればよい。
線状骨格の骨格形状を空間で安定に維持するための枠組みとなるような骨格は、一定の強度が要求される観点から金属や、セラミックスのような強靭な無機物質が好ましい。
線状骨格が、有形体の構成素材として有形体に取り込まれる場合は、軽量に仕上げる観点から有機物質であることが好ましい。
従って、線状骨格は、線状骨格の骨格形状を空間で安定に維持するための枠組みとなるような、例えば金属性の骨格と、プラスチックや繊維のような軽量な骨格とから構成されていてもよい。
【0013】
固体物質として金属を使用する場合、
強度の観点からは、ステレンレス、チタン、鉄、ステレンレス、アルミニウム、ジュラルミン及びマグネシウムチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、
耐薬品性の観点からは、ステレンレス及び/又はチタンが好ましく、
軽量である観点からは、アルミニウム、ジュラルミン及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、
リサイクル、生分解性等の環境保持の観点からは、鉄及び/又はアルミニウムが好ましい。
【0014】
固体物質として無機物質を使用する場合、
強度、耐薬品性、リサイクル及び生分解性等の環境保持からなる群から選ばれる少なくとも1の観点からは、炭素、ガラス及びセラミックスからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機物質が好ましく、
軽量である観点からは、炭素及び/又はガラスが好ましい。
【0015】
固体物質として有機物質を使用する場合、
強度の観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、麻及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維が好ましく、
耐薬品性の観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維が好ましく、
軽量である観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、麻及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機物質が好ましく、
リサイクル、生分解性等の環境保持の観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、麻、サイザル及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機物質が好ましい。
【0016】
線状骨格の太さは、有形体の所望の大きさ及び所望の強度に応じて適宜選択できる。
線状骨格の断面の大きさは、
有形体が、ロケット、航空機、タンカー、自動車のように数m〜数百mのオーダーの大きさである場合は、線状骨格の断面の大きさは、円換算直径で、0.1〜100cmが好ましく、0.5〜50cmがより好ましく、0.5〜10cmが更に好ましく、0.5〜5cmが更に好ましく、0.5〜1cmが更に好ましく、
有形体が、ロケット、航空機、タンカー、自動車等の部品や工具等のように数cm〜数mのオーダーの大きさである場合は、円換算直径で、0.1〜10cmが好ましく、0.1〜5cmがより好ましく、0.1〜1cmが更に好ましく、0.1〜0.5cmが更に好ましく、0.1〜0.3cmが更に好ましく、0.1〜0.2cmが更に好ましく、
有形体が、人体と同程度の大きさの生物に使用される衣料用具、アクセサリー、人工臓器などの医療用具等のように軽量であることが要求される場合、円換算直径で、0.0001〜1cmが好ましく、0.001〜0.5cmがより好ましく、0.001〜0.1cmが更に好ましく、0.001〜0.01cmが更に好ましく、0.001〜0.005cmが更に好ましい。
【0017】
線状骨格を構成する固体物質の長さは、線状骨格を構成する各辺の長さであればよいが、線状骨格の形成性の観点から、各辺の長さが極端に長い等の場合は、各辺を、短い材料を繋ぎ合わせて構成してもよい。
【0018】
線状骨格は、線状骨格を構成する各辺の長さに相当する所望の強度を有する棒状固体物質を、互いに接着して構成できる。棒状物が細くても線状骨格を形成できれば、棒状固体物質が繊維状固体物質であってもよい。繊維状固体物質が繊維である場合は、モノフィラメントでもよく、ユニディレクション糸、紡績糸でもよい(以下、モノフィラメント及び紡績糸をまとめてフィラメント等ともいう)。紡績糸は、リリアンのような編上げられた紐状の糸でもよい。
【0019】
(2)層形成繊維
層形成繊維は、金属繊維、無機繊維、有機繊維等を使用できるが、軽量性と加工性の観点から、好ましくは有機繊維である。
【0020】
また、本発明においては、層形成繊維は、フィラメント等だけでなく、断面形状が異方性を有するテープ状のものも含み、複数の繊維が単一方向に引き揃えられて強度を有するユニディレクションテープでもよい。
テープの幅は、層形成繊維を線状骨格に又は繊維同士で付着させていく過程での操作性の観点と形状成形の精度の観点から、好ましくは0.1〜10cm、より好ましくは1〜5cm、更に好ましくは2〜4cmである。
層形成繊維は互いに絡合してもよく、その結果、有形体における繊維構成層が織物状又は不織布状になっていてもよい。
【0021】
層形成繊維として金属繊維を使用する場合、
強度の観点からは、ステレンレス、チタン、鉄、ステレンレス、アルミニウム、ジュラルミン及びマグネシウムチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、
耐薬品性の観点からは、ステレンレス及び/又はチタンが好ましく、
軽量である観点からは、アルミニウム、ジュラルミン及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、
リサイクル、生分解性等の環境保持の観点からは、鉄及び/又はアルミニウムが好ましい。
【0022】
強度、耐薬品性、リサイクル及び生分解性等の環境保持からなる群から選ばれる少なくとも1の観点からは、炭素、ガラス及びセラミックスからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機繊維が好ましく、
軽量である観点からは、炭素及び/又はガラスの繊維が好ましい。
【0023】
層形成繊維として有機繊維を使用する場合、
強度の観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、麻及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維が好ましく、
耐薬品性の観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維が好ましく、
軽量である観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、麻及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維が好ましく、
リサイクル、生分解性等の環境保持の観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、麻、サイザル及びこれらの変性若しくは誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維が好ましい。
【0024】
有機繊維は、有形体に所望の物性を付与する観点から、ポリマーアロイ樹脂由来であってもよいし、金属粒子、無機粒子、無機繊維等の金属及び/又は無機材料と有機樹脂の混合樹脂由来であってもよい。
【0025】
(3)線状骨格の形成方法
線状骨格は、例えば、線状骨格の骨格形状の各辺の接続点の座標をコンピュータ設計システム(CAD)によって算出し、その座標に基づき、ロボットを使用して、各辺を構成する棒状の構成材料(以下、スティックともいう)を所定の接続点の座標の近傍に運び、2つのスティックの端部をその接続点の座標において、接着手段を用いて接続させていくことによって形成できる。
また、線状骨格は、特許文献2に開示されているような方法及び装置を使用して形成してもよい。
以下では、スティックの接合により線状骨格を形成する場合について詳細に説明する。
【0026】
2つのスティックの端部の接着は、2つのスティックの端部を、溶接して接続してもよく、接着剤で接着させてもよい。
【0027】
線状骨格を構成する固体物質が繊維状固体物質である場合、1本の長い繊維状固体物質(以下、フィラメントともいう)を必要な本数だけ張り巡らせた態様であってよい(例えば、
図4及び5)。
【0028】
線状骨格としてフィラメントを張り巡らす場合、各フィラメントの端部を壁に固定して壁と壁の間にフィラメントを張り巡らせるとよい(例えば、
図4及び5)。
【0029】
線状骨格としてフィラメントを張り巡らす場合、各フィラメントの端部を壁に固定する代わりに、好ましくはロボットヘッドで(より好ましくは複数のロボットヘッドで、更に好ましくは先手観音状のロボットヘッドで)保持して所定の位置に固定し、ロボットヘッド間にフィラメントが張り巡らせられていると、壁のような閉鎖空間を必要としない点で好ましい。
【0030】
接着剤としては、スティックの構成材料並びに要求される強度及び硬化速度に応じて、天然系又は合成系(アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、エチレン−酢ビ系、塩ビ系、ポリイミド系、シリコーン系、これらのコアシェルゴム変性型等)の接着剤を適宜選択すればよく、熱及び/又は光硬化性型の接着剤によって、硬化速度を調整することが好ましい。
【0031】
なお、線状骨格に層形成繊維を層状に配置させて層を形成する際に、形成途上の層の安定性を考慮して、必要に応じてスティックと面状の構成材料であるプレート切片を組合せてもよい。プレート切片は、スティックに好適に使用できる材料を使用でき、アルミホイル状の薄層でも、一定の耐変形性を有する板状でもよい。
【0032】
(4)有形体の形成方法
繊維構成層を有する有形体は、その有形体の形状が繊維構成層で形成されている。
有形体の内面及び/又は外面は、繊維構成層の内面及び/又は外面であってもよく、繊維構成層の内面及び/又は外面がさらに、仕上塗装されていたり、保護層被覆されていたりしてもよい。
【0033】
(4−1)層構成繊維の線状骨格への付着方法
有形体の所望の形状に基づく線状骨格を形成し、その線状骨格の外部又は内部から、繊維供給装置から繰り出される層形成繊維を、線状骨格に付着させながら、有形体が所望の形状になるように、層形成繊維を固定して、繊維構成層を形成していく。
この場合、線状骨格を全て形成し終わってから、層形成繊維を線状骨格に付着させてもよいし、線状骨格を形成しながら、層形成繊維を線状骨格に付着させてもよい。
【0034】
層形成繊維と線状骨格との付着は、線状骨格を有形体に取り込まないことを想定している場合は、繊維構成層を形成後に、繊維構成層が線状骨格から、繊維構成層を破壊することなく離脱できる程度に付着していることが好ましい。
層形成繊維と線状骨格との付着手段としては、層形成繊維及び/又は線状骨格の表面自体が粘着性を有していれば、その粘着性を利用してもよいし、層形成繊維及び/又は線状骨格の表面に予め粘着剤、弱接着の接着剤、分解性の接着剤等(以下、まとめて付着剤ともいう)を塗布しておいてもよいし、線状骨格に層形成繊維を接触する際に、ロボットを使用して付着剤を層形成繊維及び/又は線状骨格に塗布してもよい。
【0035】
付着剤の塗布は、層形成繊維又はスティックに沿って連続塗工してもよいし、不連続にスポットウェルドに塗布してもよい。
【0036】
層形成繊維がフィラメント等であれば、例えば、線状骨格の骨格形状を設計した際の座標に基づいて、ロボットを利用した繊維供給装置を座標の近傍に移動し、ロボット操作によって繊維供給装置から層形成繊維を繰り出し、線状骨格に付着させてよい。
【0037】
フィラメント等の場合の繊維供給装置としては、FW工法の繊維供給装置や自働塗装機械の塗料供給装置等を改良したもの等を使用できる。
【0038】
また、繊維供給装置から供給される繊維の配置及び繊維同士又は線状骨格との接着部位及び接着条件は、予め、CAD、コンピュータ等により算出した座標データ及び接着条件に基づいて設定され、その設定に沿って、ロボット等を用いて繊維供給装置を駆動させて繊維を具体的に配置して層を形成させる。
【0039】
層形成繊維は、繊維供給装置としての紡出機によって樹脂を紡出しながら、紡出された層形成繊維を線状骨格に付着させてもよい。
紡出は、エレクトロスピニング法や、不織布を製造する際に使用されるフラッシュ紡糸のように線状骨格に付着させつつ、線状骨格間で面上の繊維交絡体を形成してもよい。
層形成繊維を繰り出して、複数本の繊維同士、又は、繊維と線状骨格とを絡ませたり、結んだり、織物のように編まれた状態で線状骨格に固定又は付着されてもよい。
【0040】
層形成繊維は、繊維供給装置によってフィラメントを線状骨格に接触させながら供給して所定の座標に配置させてもよいし、フィラメントを切断して短繊維化又はステープル化しながら所定の座標に配置していってもよいし、これらの場合、フィラメントの供給と、フィラメントを他のフィラメント又は線状骨格と接着させるための接着機能を有する樹脂の供給を、1台の装置で行い、フィラメントの供給と、フィラメントに代えて接着機能を有する樹脂だけを所定の場所に配置させることを、1台の装置で行ってもよい。
上記の方法で、鉄、ステンレス等の金属繊維を供給しながら、金属繊維間を仮付けをしたり、樹脂をウェルドさせて金属繊維を付けて接着部を固めるとよい。
【0041】
なお、線状骨格及び/又は層形成繊維間の接着は、好ましくは金属繊維の場合、レーザーやアーク溶接のような高温エネルギーを用いて、線状骨格及び/又は層形成繊維間を溶融すると、線状骨格及び/又は層形成繊維間の結合が強固となり好ましい。
【0042】
(4−2)層構成繊維の固定方法
層形成繊維は、繊維構成層の形状を安定に維持し、繊維構成層に所定の強度を付与するために、層形成繊維同士が接着手段によって固定されることが好ましい。
【0043】
層形成繊維同士の固定は、層形成繊維に接着剤を塗布して、又は、層形成繊維を積層させつつ接着剤を塗布して層形成繊維同士を接着させてもよいし、層形成繊維を溶融させて層形成繊維同士を接着させてもよい。
【0044】
層形成繊維同士の固定に接着剤を使用する場合、繊維の材質並びに要求される強度及び硬化速度に応じて、天然系又は合成系(アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、エチレン−酢ビ系、塩ビ系、ポリイミド系、シリコーン系、これらのコアシェルゴム変性型等)の接着剤を適宜選択すればよく、熱及び/又は光硬化性型の接着剤によって、硬化速度を調整することが好ましい。
【0045】
(4−3)層構成繊維の積層方法
線状骨格が、
図1のように密に構成されているか、簡易な形状の有形体を形成するような場合に対して、
図2のように粗に構成されている場合は、層形成繊維を、線状骨格に沿って順次付着させていけばよい。
【0046】
層形成繊維がフィラメント等である場合は、
線状骨格を固定して、層形成繊維を線状骨格の外部から線状骨格に沿って巻きつかせていくか、
層形成繊維の供給位置を固定して、線状骨格を回転等させて、層形成繊維を線状骨格の外部から線状骨格に沿って巻きつかせていくことが好ましい。
【0047】
層形成繊維を紡出しながら形成する場合も、
線状骨格を固定して、層形成繊維を線状骨格の外部から線状骨格に沿って紡出機を移動させて、紡出した繊維を線状骨格に付着せていくか、
紡出機を固定して、線状骨格を回転等させて、紡出された層形成繊維を線状骨格の外部から線状骨格に沿って付着させていくことが好ましい。
【0048】
層構成繊維の積層方法として、例えば、
図3のような末広がりの線状骨格を使用して、各稜を支点にして、層形成繊維を直線的に積層させて、上方の狭い口部は開放され、下方の広い底面は層構成繊維が積層されて閉鎖された、末広箱型有形体を製造することもできる。
末広箱型有形体のような有形体は、従来のFW工法では製造することが困難であり、プレートで囲まれた定形型枠を使用すると、充填物が固化した後の脱型が困難であったところ、本発明の有形体の製造方法では、これらの困難なく製造することができる。
【0049】
層構成繊維の積層方法として、蚕が繭を形成するような方法を採用してもよい。
例えば、
図4のような格子状の線状骨格の内部に、繊維供給装置を設け、
線状骨格を固定して、繊維供給装置の供給口を左右に所定の回転をさせながら、層構成繊維を線状骨格に付着させつつ層構成繊維同士を付着させていくか、
維供給装置の供給口を固定して、線状骨格を左右に回転をさせながら、層構成繊維を線状骨格に付着させつつ層構成繊維同士を付着させてもよい。
層構成繊維同士の付着は、層構成繊維と線状骨格との付着の手段を採用することができる。
【0050】
本発明の有形体の製造方法は、以上のように、線状骨格を形成する工程1と、線状骨格上に層形成繊維を付着させて繊維で構成された有形体を形成させる工程2で構成されるが、工程1及び/又は工程2を大気中で行ってよいが、線状骨格及び層形成繊維の配置を容易にするために、できるだけ重力の影響が排除された空間で行ってもよい。
【0051】
重力の影響が排除された空間としては、ロケット内のような宇宙空間、比重の高い液体、粉体又は粘稠な液体等の媒質が充填された空間等が挙げられる。
粘稠な液体としては、粘稠なコンニャク水溶液、チキソトロピー系のゲル物質、フェライト粉末が分散する磁化可能流体等が挙げられる。
なお、重力の影響が排除された空間を構成する充填物質は、有形体の成形が終了した段階で、取り除いて、可能であれば再利用できるようにすることが好ましい。
【0052】
上記の媒質中には、媒質と非相溶の硬化性樹脂液を分散させて、樹脂液を硬化させて線状骨格を形成したり、層形成繊維を形成させてもよい。
硬化性樹脂液は、必要なときに硬化させられるという観点から、エネルギー硬化性であることが好ましく、赤外線等の電磁波硬化型、超音波硬化型、熱硬化型等を使用して、電磁波、レーザー、超音波又は熱を作用させて硬化させることができる。
【0053】
〔実施態様例1〕
本発明の実施態様例1を、
図5を用いて説明する。
(以下略)
Aは、有形体の完成態様である。
Bは、卵形の有形体の形成途上の態様である。
Cは、繊維状の線状骨格である。
Dは、Cを固定するための面上の固定枠で、垂直の四面で直方体の筒を形成している。
このような筒は、Cを固定するために必要な面が確保されていればよく、円筒状でも、三角柱状でも、多角柱状でもよく、不要な面は開放されていてもよい。
面は不透明でもよいが、実施例では、内部の作業が見えるように透明であるように描かれている。Cの各端部は、有形体を卵形に形成できるように、Dの各面の各箇所(楕円状に描かれている箇所)に固定されている。
Eは、層形成繊維である。
Fは、層形成繊維の繊維供給装置である。
層形成繊維Eは、有形体を卵形に形成できるように予め設定された吐出条件に従って、ノズルNを有する繊維供給装置FのノズルNから吐出される。
層形成繊維Eは、有形体を卵形に形成できるように予め設定された位置に張り巡らされた線状骨格Cに付着しつつ、予め設定された有形体の座標に沿って層を形成するように、吐出時の吐出角度及び吐出速度を、例えば、コンピュータによって制御されている。
また、層形成繊維Eは、線状骨格Cに付着した際、及び、層を形成している際に、線状骨格C及び層形成繊維E同士が接着剤により接着されて固定される。
接着剤の接着は、例えば、層形成繊維Eがノズルから塗出する際に、光硬化性熱硬化性接着剤を、接着剤塗出手段(図示されていない)によって層形成繊維Eの周囲に付着させ、層形成繊維Eが互いに積層するときに光を照射して光硬化性熱硬化性接着剤を硬化してもよく、繊維構成層が形成されてから光照射と加熱により光硬化性熱硬化性接着剤を硬化してもよい。
層形成繊維Eによる積層が、有形体が予め設定された卵形に形成され、接着剤が硬化した後、線状骨格Cを有形体から取り外し、有形体を固定枠Dから搬出して製造は完了する。
C、D及びEの材質及び寸法、並びに、Gの種類及びFの方式は、設定されている有形体の機械的特性と物理化学的特性を考慮して決められる。
【0054】
〔実施態様例2〕
本発明の実施態様例2を
図6−1及び6−2を用いて説明する。
図6−1及び6−2に示した実施態様例2では、
図2に示した線状骨格と類似の六角柱型の線状骨格を、所定の座標にスティックをロボットヘッドで運んで接着して形成しながら、層形成繊維であるフィラメントを線状骨格に接着させて巻き込んでいく様子を、コンピュータ・グラフィックスで再現したものである。
図6−1のXは、有形体が1/3だけ形成された状態を、
図6−1のYは、有形体が2/3だけ形成された状態を、
図6−2のZは、有形体の形成が終了する直前の状態を示す。
いずれも、線状骨格を形成する工程1と、線状骨格上に、前記繊維を付着させて前記層を形成させる工程2が並行して実施されている。
【0055】
本発明によれば、有形体として、例えば、
ロケット、航空機、タンカー、鉄道用車両及び自動車等の外装のような大型物品、
ロケット、航空機、タンカー、鉄道用車両及び自動車等の部品のような中小型物品、
工具、ブーツ等の衣料用具、アクセサリー及び人工臓器などの医療用具等のような人体スケールの物品を、定形型枠を使用せずに形成することができる。