特許第6166965号(P6166965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166965調湿建材の製造方法及び化粧調湿建材の製造方法
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  • 特許6166965-調湿建材の製造方法及び化粧調湿建材の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166965
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】調湿建材の製造方法及び化粧調湿建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/42 20060101AFI20170710BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   B28B1/42
   C04B28/02
   C04B14/04 Z
   C04B22/06 A
   C04B16/02 Z
   C04B16/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-133580(P2013-133580)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-28519(P2014-28519A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-149285(P2012-149285)
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】岩永 朋来
(72)【発明者】
【氏名】米倉 俊博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈尚
(72)【発明者】
【氏名】中田 華子
(72)【発明者】
【氏名】角田 洋
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−205879(JP,A)
【文献】 特開2003−096930(JP,A)
【文献】 特開2007−001043(JP,A)
【文献】 特開平10−182207(JP,A)
【文献】 特開2002−178444(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052291(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
B28B 1/42
B28B 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント20〜60質量%、予め石灰質原料とシリカ質原料を水熱合成してなるけい酸カルシウム水和物スラリーを固形分換算量で5〜50質量%、シリカゲル1〜15質量%、無機質充填材1〜50質量%及び補強繊維3〜12質量%を含有してなる配合物を湿式混合してスラリーを得、得られたスラリーを抄造することにより生板を得、得られた生板を加圧脱水した後、養生硬化することを特徴とする調湿建材の製造方法であって、抄造工程におけるメーキングロールに薄膜を巻き取る際の薄膜の含水率を80〜160%とし、加圧脱水工程におけるプレス圧を2〜30MPaとすることを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の調湿建材の製造方法により得られた調湿建材であって、JIS A 1470−1「建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法」に準拠した中湿域での吸放湿性能試験において、吸湿過程(23±0.5℃−75%RH)での3時間後の吸湿量が15g/m以上、6時間後の吸湿量が20g/m以上、12時間後の吸湿量が29g/m以上であり、且つ放湿過程(23±0.5℃−50%RH)での12時間後の放湿量が全吸湿量の70%以上であり、曲げ強度が、10〜30N/mmの範囲内にあり、見掛け密度が、0.5〜1.2g/cmの範囲内にあり、且つ長さ変化率が0.20%以下の範囲内にある調湿建材を基材とし、基材表面に化粧層を設けることからなる化粧調湿建材の製造方法であって、得られた化粧調湿建材がJIS A 1470−1「建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法」に準拠した中湿域での吸放湿性能試験において、吸湿過程(23±0.5℃−75%RH)での3時間後の吸湿量が15g/m以上、6時間後の吸湿量が20g/m以上、12時間後の吸湿量が29g/m以上であり、且つ放湿過程(23±0.5℃−50%RH)での12時間後の放湿量が全吸湿量の70%以上であることを特徴とする化粧調湿建材の製造方法
【請求項3】
基材表面と化粧層の間にシーラー層を設ける、請求項記載の化粧調湿建材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿建材、その製造方法及び該調湿建材を基材とした化粧調湿建材に関し、更に詳細には、高い吸放湿性能を有し、軽量で、寸法安定性に優れ、高強度を有する調湿建材、その製造方法及び該調湿建材を基材とした化粧調湿建材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的な建材として使用されている無機質板には、例えばセメント系、石膏系、けい酸カルシウム系等の材質のものがある。これらの無機質板は、通常、抄造法、プレス成形法等の方法によって製造されている。無機質板の原料としては、セメント系、石膏系及びけい酸カルシウム系とも、通常、マトリックス形成原料及び繊維原料を必須原料とし、これらの必須原料とともに、必要とされる諸特性を付与するために、無機質充填材等が併用されている。
【0003】
また、近年、高断熱技術の向上に伴い、住宅及び他の建築物の高気密化が進み、室内の温度環境及び省エネルギーレベルが向上している。その反面、室内の多湿化、あるいは寒冷期の結露といった弊害も少なくない。換気システムの導入による解消は可能であるが、小規模オフィスや一般家庭では現実的とはいえない。そこで、現在では、内装用壁材に調湿機能を付与した調湿建材が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、マトリックス形成用水和性原料20〜60質量%;無機質充填材1〜50質量%;補強繊維(石綿を除く)3.5〜12質量%;及び予め石灰質原料及びけい酸質原料を水熱合成して得られるけい酸カルシウム水和物10〜50質量%を含有してなる配合物を湿式混合してスラリーを得、得られたスラリーを抄造することにより生板を得、得られた生板を加圧脱水した後、養生硬化することからなる無機質抄造板の製造方法において、前記けい酸カルシウム水和物の平均粒子径は、30μm〜100μmの範囲内にあり、前記補強繊維は、濾水度がカナディアン標準フリーネスで150〜450mlの範囲内にある天然繊維3〜11質量%及び繊維長6.0〜0.2mmで、繊維径20〜50μmの範囲内にある無機繊維及び/または合成繊維0.5〜5質量%から構成され、抄造工程におけるエンドレスフェルト上での薄膜の脱水速度を5〜30%/秒の範囲内とし、且つメーキングロールに巻き取る際の薄膜の含水率を100〜180%とすることによりメーキングロールから切り離した後の生板の見掛け密度を0.35〜0.65g/cmの範囲内とし、該生板を加圧脱水し、加圧脱水後の生板の見掛け密度を加圧脱水前の生板の見掛け密度の1.3〜2.0倍の範囲内とすることを特徴とする無機質抄造板の製造方法(請求項1);前記無機質抄造板の製造方法によって得られた無機質抄造板であって、前記無機質抄造板の23℃−75%RHと23℃−53%RHの間での吸放湿量が30g/m以上であることを特徴とする無機質抄造板(請求項6)が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ファイバーと調湿性物質とセメントとの混合養生物から成り、比重が1.2g/cm以下であり、前記ファイバーはマトリックスとポイントで接合・密着した凝集体を形成し、ボード表面及び内部の空隙サイズが50〜500μmであり、前記ファイバーの凝集体における短軸径がファイバー径の1〜5倍であることを特徴とするファイバー制御型調湿性ボード(請求項1);前記調湿性物質はゼオライトから成り、前記ファイバーはパルプ、ビニロン、ワラストナイトもしくはセピオライトまたはこれらの2種以上の組み合わせから成ることを特徴とする前記ファイバー制御型調湿性ボード(請求項4);ファイバーとゼオライトとセメントと水との混合物を、抄造法により抄造速度20〜60m/分、メーキングロール圧1〜5kgf/cmの条件で抄造し、その後に養生して、マトリックスとポイントで接合・密着したファイバーの凝集体を形成することを特徴とするファイバー制御型調湿性ボードの製造方法(請求項6);前記混合物はファイバー3〜10重量%(質量%)とゼオライト10〜80重量%(質量%)とセメント10〜80重量%(質量%)とを含み、前記混合物を厚さ4〜20mmに抄造することを特徴とする前記ファイバー制御型調湿性ボードの製造方法(請求項7)が開示されている。また、特許文献2の[0019]欄には、「ファイバー制御型調湿性ボードで、調湿性物質として用いる多孔性粉状体または粒状体とは、例えば、ゼオライト、クリストバライト、アタパルジャイト、けい酸カルシウム、ケイソウ土、カオリン、モンモリロナイト、バーミキュライト、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭、多孔性架橋有機高分子化合物や、これらの2種類以上の混合物などの、吸水・吸着作用を有する粉粒体である。多孔性粉粒体としてはゼオライトが最も好ましい。」旨の記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−205879号公報
【特許文献2】特許第3328767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載されている無機質抄造板は、予め合成したスラリー状のけい酸カルシウム水和物を原料として使用するところに特徴を有するものであり、けい酸カルシウム水和物スラリーは、セメント系の材料に強度や靭性等の優れた力学的特性を与えると共に調湿性能もある程度有しているが、調湿建材としては、更なる吸放湿性能の向上が求められている。
また、特許文献2には、調湿性ボードに使用可能な調湿性物質として、ゼオライト、ケイソウ土、シリカゲル等が開示されており、これらの中でも、シリカゲルは高い調湿効果が期待できるが、シリカゲルを一次原料として用いると、水和性原料として用いられるセメントの水和に伴って生成されるCaが非晶質物質であるシリカゲルの表面でポゾラン反応を生じてC−S−Hを生成することによってシリカゲル表面を覆ってしまうため、現状では、シリカゲルが有している吸放湿性能を十分に発揮させることができないという課題がある。更に、調湿性物質として、ゼオライトやケイソウ土を使用しても十分な吸放湿性能を付与することができないという課題もある。
【0008】
従って、本発明の目的は、セメント系材料において調湿性物質としてシリカゲルを使用した場合に、シリカゲルが有する高い吸放湿性能を十分に発揮させるとともに、軽量で、寸法安定性に優れ、高強度を有する調湿建材、その製造方法及び該調湿建材を基材とした化粧調湿建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、セメント系材料においてシリカゲルとけい酸カルシウム水和物スラリーとを併用することにより、一次原料としてシリカゲルを使用しても高い吸放湿性能が得られること、軽量化が図られること、寸法安定性に優れること、及び高強度が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、セメント20〜60質量%、予め石灰質原料とシリカ質原料を水熱合成してなるけい酸カルシウム水和物スラリーを固形分換算量で5〜50質量%、シリカゲル1〜15質量%、無機質充填材1〜50質量%及び補強繊維3〜12質量%を含有してなる配合物を湿式混合してスラリーを得、得られたスラリーを抄造することにより生板を得、得られた生板を加圧脱水した後、養生硬化することを特徴とする調湿建材の製造方法であって、抄造工程におけるメーキングロールに薄膜を巻き取る際の薄膜の含水率を80〜160%とし、加圧脱水工程におけるプレス圧を2〜30MPaとすることを特徴とする調湿建材の製造方法に係る。
【0010】
また、本発明は、上記製造方法により得られた調湿建材であって、JIS A 1470−1「建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法」に準拠した中湿域での吸放湿性能試験において、吸湿過程(23±0.5℃−75%RH)での3時間後の吸湿量が15g/m以上、6時間後の吸湿量が20g/m以上、12時間後の吸湿量が29g/m以上であり、且つ放湿過程(23±0.5℃−50%RH)での12時間後の放湿量が全吸湿量の70%以上であり、曲げ強度が、10〜30N/mmの範囲内にあり、見掛け密度が、0.5〜1.2g/cmの範囲内にあり、且つ長さ変化率が0.20%以下の範囲内にある調湿建材を基材とし、基材表面に化粧層を設けることからなる化粧調湿建材の製造方法であって、得られた化粧調湿建材がJIS A 1470−1「建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法」に準拠した中湿域での吸放湿性能試験において、吸湿過程(23±0.5℃−75%RH)での3時間後の吸湿量が15g/m以上、6時間後の吸湿量が20g/m以上、12時間後の吸湿量が29g/m以上であり、且つ放湿過程(23±0.5℃−50%RH)での12時間後の放湿量が全吸湿量の70%以上であることを特徴とする化粧調湿建材の製造方法に係る。
【0012】
また、本発明の化粧調湿建材の製造方法は、基材表面と化粧層の間にシーラー層を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は、セメント系材料においてシリカゲルとけい酸カルシウム水和物スラリーとを併用することにより、一次原料としてシリカゲルを使用しても高い吸放湿性能を有し、且つ建材として好適な、軽量で、寸法安定性に優れ、高強度を有する調湿建材及びその製造方法を提供したことにある。
また、本発明の効果は、前記調湿建材を基材としたことにより、高い吸放湿性能を有し、且つ建材として好適な、軽量で、寸法安定性に優れ、高強度を有する化粧調湿建材を提供したことにある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明品1の吸放湿性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(セメント)
本発明の調湿建材の製造方法に使用されるセメントは、特に限定されるものではないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、高炉セメント、中庸熱セメント、低熱セメント、エコセメント等を挙げることができる。なお、セメントの比表面積は、2500〜5000cm/g、好ましくは3000〜4000cm/gの範囲内にあることが好ましい。
【0016】
セメントの配合割合は、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%の範囲内である。セメントの配合割合が20質量%未満の場合には、調湿建材に強度等を十分に付与することができないため好ましくなく、また、60質量%を超えると、シリカゲルの変質を招く恐れがあるため好ましくない。
【0017】
(けい酸カルシウム水和物スラリー)
本発明の調湿建材の製造方法に使用されるけい酸カルシウム水和物スラリーは、石灰質原料及びけい酸質原料を水とともに混合し、高温高圧下での水熱合成により生成させることができる。石灰質原料としては、生石灰、消石灰等が挙げられ、けい酸質原料としては、珪石、珪藻土、シリカヒューム等が挙げられ、特に、珪石が好適である。
【0018】
なお、けい酸カルシウム水和物スラリーは、例えば次のようにして製造することができる:石灰質原料とけい酸質原料とを、例えば配合比(CaO/SiOのモル比)0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.2とし、この混合物に対し、質量比で5〜20倍、好ましくは7〜16倍の水を加え、混合分散したものを原料スラリーとし、この原料スラリーを攪拌可能な圧力容器内にて150〜230℃、好ましくは170〜210℃の温度で、1〜20時間、好ましくは3〜12時間にわたり水熱合成を行うことにより、例えばトバモライト、ゾノトライト等としてけい酸カルシウム水和物スラリーを得ることができる。
【0019】
けい酸カルシウム水和物の平均粒子径は、30μm〜100μm、好ましくは50μm〜90μmの範囲内にある。このような平均粒子径を有するけい酸カルシウム水和物スラリーを使用することにより、抄造法による製造に適した良好な濾水性を保持しつつ、調湿建材として十分な強度を付与することができる。ここで、「平均粒子径」は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定装置により求めたものである。
【0020】
けい酸カルシウム水和物スラリーの配合割合は、固形分換算量で5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内である。けい酸カルシウム水和物スラリーの配合割合が5質量%未満の場合には、調湿建材の見掛け密度が1.2g/cmを上回ったり、曲げ強度が10N/mmを下回る原因となるため好ましくなく、また、50質量%を超えると、調湿建材の見掛け密度が0.5g/cmを下回ったり、曲げ強度が10N/mmを下回る原因となるため好ましくない。
【0021】
(シリカゲル)
本発明の調湿建材の使用方法に使用されるシリカゲルは、B型シリカゲルである。シリカゲルはシリカのコロイド粒子が三次元的に結合した無定形多孔質のゲルであり、B型シリカゲルは、コロイド粒子の凝集が粗で、粒子径が大きく、表面積が小さく、細孔容積が大きいことを特徴とするものである。シリカゲルの水分吸着には、表面吸着と毛細管凝縮があり、表面吸着は、シリカゲル表面でのファンデルワールス力や水素結合により水分が化学的に吸着されるものであり、毛細管凝縮は、毛細管現象で水分が物理的に細孔に吸着されるものである。シリカゲルB型は、毛細管凝縮により高湿度で多量の水分を物理的に吸着し、湿度が低下すると徐々に吸着している水分を放出する特性を有するものであり、建材等に吸放湿性能を付与するために適した材質である。
【0022】
シリカゲルの配合割合は、1〜15質量%、好ましくは3〜9質量%の範囲内である。シリカゲルの配合割合が1質量%未満の場合には、シリカゲルの配合効果が発現しないために好ましくなく、また、15質量%を超えると、調湿建材の吸水による長さ変化率が増大、即ち、寸法安定性が低下し、内装用建材として適さなくなるため好ましくない。
【0023】
(無機質充填材)
本発明の調湿建材の製造方法に使用される無機質充填材は、一般的に無機質板に使用されるものであれば良く、特に制限されるものではないが、例えばマイカやウォラストナイト等の耐熱性向上用充填材、二水石膏や炭酸カルシウム等の耐火性向上用充填材、珪石等の亀裂発生防止用充填材、フェロシリコンダストやフライアッシュ等のポラゾン物質等が挙げられ、これらは2種類以上を併用することもできる。なお、該無機質充填材に二水石膏を用いる場合、セメントとの混配においてセメントの硬化反応に影響を与えることから、注意が必要である。
【0024】
無機質充填材の配合割合は、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲内である。無機質充填材の配合割合が1質量%未満の場合には、内装用建材として必要とされる断熱性、耐火性等の性能が低下するために好ましくなく、また、50質量%を超えると、バインダーであるセメントの配合割合が低下し、曲げ強度が10N/mmを下回る原因となるために好ましくない。
【0025】
(補強繊維)
本発明の調湿建材の製造方法に使用される補強繊維は、例えば、木質パルプ、各種麻類等の天然繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミックウール、炭素繊維などの無機繊維、人造パルプ、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリル、レーヨン等の合成繊維が挙げられる。中でも、曲げ強度および耐衝撃性能を一層高めるという観点から木質パルプ等のセルロース系繊維を補強繊維の主成分として用いる。
【0026】
なお、天然繊維の濾水度は、JIS P 8121に規定されるカナディアン標準フリーネス(以下、「CSF」という)で150〜450ml、好ましくは150〜350mlの範囲内にある。CSFは、天然繊維、例えば木質パルプを湿式にてリファイナー等による叩解処理を行うことによって調整することができる。該叩解処理により、繊維の枝分れが増加し、所謂フィブリル化がなされ、その結果、マトリックス形成用水和性原料が水和して形成されるマトリックスとの密着性及び柔軟性の向上を図ることができる。ここで、CSFを450ml以下にすることにより、補強繊維とマトリックスとの十分な密着が達成されるとともに、良好な補強繊維の分散が得られ、調湿建材に高い強度を付与することができる。また、CSFを150ml以上とすることにより、スラリーの濾水性を高め、加圧脱水時の脱水ムラ、膨れ、剥離等を防止するとともに、良好な柔軟性、ひいては耐衝撃性能を製品に付与することができる。
【0027】
また、無機繊維及び合成繊維の繊維長は、6.0〜0.2mm、好ましくは4.0〜0.5mmの範囲内にあり、かつ繊維径が20〜50μm、好ましくは20〜40μmの範囲内である。このように無機繊維及び合成繊維のサイズを規定することによって、抄造法による製造に適した良好な濾水性を保持しつつ、複合材料として十分な強度を得ることができるという効果が奏される。
【0028】
補強繊維の配合割合は、3〜12質量%、好ましくは3〜9質量%の範囲内である。補強繊維の配合割合が3質量%未満の場合には、マトリックスを十分に補強することができなくなり、所望の曲げ強度が得られなくなるため好ましくなく、また、12質量%を超えると、繊維質が過多となり原料の結合力が極端に低下し、所望の曲げ強度が得られなくなるため好ましくない。なお、補強繊維としては、天然繊維と、無機繊維及び/または合成繊維とを併用し、天然繊維を1〜10質量%、好ましくは3〜9質量%、無機繊維及び/または合成繊維を0.5〜3質量%、好ましくは0.5〜2質量%とし、天然繊維と、無機繊維及び/または合成繊維の合計量を上記範囲内とすることが好ましい。
【0029】
本発明の調湿建材の製造方法は、上記各種材料を配合し、更に、上記各種材料の固形分含量の7〜30倍(質量比)、好ましくは10〜20倍の水を加えて湿式混合してスラリーを形成し、得られたスラリーを抄造することにより生板を得、得られた生板を加圧脱水した後に養生硬化することにより製造することができる。
【0030】
なお、本発明において、抄造法は、当業者に既知の抄造法のいずれをも適用可能であり、例えば丸網式抄造法、長網式抄造法、フローオン式抄造法等を挙げることができる。丸網式抄造法では、原料スラリーを金網シリンダーで抄き上げて薄膜(グリーンフィルム)を形成し、得られた薄膜をエンドレスフェルトに移し取り、エンドレスフェルト上で脱水し、メーキングロールに所定の厚さとなるまで巻き取り、所定の厚さとなったならばメーキングロールから切り離して生板(グリーンシート)を得る方法である。また、フローオン式抄造法は、原料スラリーを直接エンドレスフェルト上に供給し、エンドレスフェルト上で脱水して薄膜を形成し、メーキングロールに所定の厚さとなるまで巻き取り、所定の厚さとなったならばメーキングロールから切り離して生板を得る方法である。これらの中で、丸網式抄造法は、製造効率が高く、薄物の製造も可能であり、補強繊維の二次元配向が良いので、補強性能を十分に発揮させることができるために好ましい。なお、本発明では、スラリーを抄造した後に得られる、加圧脱水前のシート状成形物を「生板」と定義する。
【0031】
ここで、本発明の調湿建材の製造方法においては、抄造工程において、メーキングロールに巻き取る際の薄膜の含水率を80〜160%、好ましくは90〜140%とする。薄膜の含水率が80%未満であると、調湿建材に吸放湿性能を付与するに適した空隙を提供できないために好ましくなく、また、160%を超えると、調湿建材に柔軟性及び耐衝撃性能を十分に付与することができないために好ましくない。
【0032】
また、生板の加圧脱水は、公知のプレス機等の加圧脱水装置を用いて行うことができる。生板のプレス圧(保持圧力)は、2〜30N/mm、好ましくは5〜20N/mmの範囲内である。プレス圧が2N/mm未満の場合には、材料の適正な緻密化ができず、所望の曲げ強度や吸放湿性能を得ることができなくなるため好ましくなく、また、30N/mmを超えると、材料が過度に圧縮されるため、水割れ、層間剥離といった材料内の欠陥の原因となるために好ましくない。
【0033】
また、本発明の調湿建材の製造方法において、養生硬化工程は特に限定されるものではなく、例えば自然養生、湿潤養生等の公知の方法を採用することができる。
【0034】
上述のような本発明の調湿建材の製造方法により得られた調湿建材は、JIS A 1470−1「建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法」に準拠した中湿域での吸放湿性能試験において、吸湿過程(23±0.5℃−75%RH)での3時間後の吸湿量が15g/m以上、6時間後の吸湿量が20g/m以上、12時間後の吸湿量が29g/m以上であり、且つ放湿過程(23±0.5℃−50%RH)での12時間後の放湿量が全吸湿量の70%以上であることが好ましい。ここで、上記吸湿量が上記範囲未満であったり、上記放湿量が全吸湿量の70%未満であると、調湿建材が十分な調湿性能を有するものではないために好ましくない。
【0035】
また、本発明の調湿建材は、曲げ強度が10〜30N/mmの範囲内、好ましくは12〜30N/mmの範囲内にあることが好ましい。曲げ強度が10N/mm未満であると、調湿建材の強度が不足するために好ましくなく、また、30N/mmを超えると、調湿建材自身が固くなってしまい、耐衝撃性能が失われ、また、加工、施工時の負担が大きくなり、汎用性を損なう恐れがあるために好ましくない。ここで、曲げ強度は、JIS A 1408の記載に準拠して測定したものである。
【0036】
なお、本発明の調湿建材の見掛け密度は、0.5〜1.2g/cm、好ましくは0.6〜1.0g/cmの範囲内にあることが好ましい。見掛け密度が、0.5g/cm未満であると、柔軟性や体衝撃性能のような建材としての物性を調湿建材に付与することができない場合があるために好ましくなく、また、1.2g/cmを超えると、本発明の調湿建材を通常の内装用として使用する場合、材料自身が重くなり、施工しにくくなるために好ましくない。ここで、見掛け密度は、調湿建材を絶乾状態(105℃で恒量となるまで乾燥した状態)まで乾燥し、乾燥後の質量(g)をその体積(cm)で除することによって得ることができる。
【0037】
また、本発明の調湿建材は、長さ変化率が0.20%以下、好ましくは0.18%の範囲内にあることが好ましい。長さ変化率は、その値が小さいほど、寸法安定性が優れていることを意味する。長さ変化率が0.20%を超えると、内装施工した場合に、吸湿及び放湿に伴う材料の動きが大きくなり、目地開き、クラック発生等の原因となるために好ましくない。ここで、長さ変化率は、JIS A 5430に準拠して測定したものである。
【0038】
次に、本発明の化粧調湿建材は、上記本発明の調湿建材を基材とし、基材表面に化粧層を設けた構成のものである。化粧層を構成する材質としては、透湿性塗料、漆喰塗料、一般塗料、透湿性化粧紙、透湿性化粧単板(フィルム)等を挙げることができる。これらの中でも、施工性や得られる化粧調湿建材の調湿性能などを勘案すると、透湿性塗料、漆喰塗料、一般塗料などを用いることができ、透湿性塗料、漆喰塗料等を使用することが好ましい。
【0039】
ここで、透湿性塗料とは、アルコキシシラン及び合成樹脂分散体を含有し、乾燥後の塗膜内部に湿気の通路を有する構造となる塗膜組成物である。透湿性塗料としては、例えばセラミック変性シリコン系塗料(ニッペDANシリコンセラ:日本ペイント社製)等を使用することができる。
【0040】
また、漆喰塗料としては、消石灰をベースとした漆喰材料と合成樹脂成分を含有してなり、質感のある外壁用として現在広く用いられているものを使用することができる。漆喰塗料は無機質粒子を多く含み、湿気の通路が多く形成されるために、調湿建材よりなる基材の吸放湿性能を損なうことがない。このような漆喰塗料としては、例えば消石灰・合成樹脂系塗料(インディアートCera:日本ペイント社製)等を使用することができる。
【0041】
更に、一般塗料としては、例えばアクリル系樹脂などの樹脂成分より構成される塗料を用いることができる。ただし、このような一般塗料は、塗布量が過多の場合には、基材表面を封止してしまい、基材の吸放湿性能を著しく損なうことがある。そのため、一般塗料を使用する場合には、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法等の印刷法を用いて、可能な限り少量の塗布量で加飾することが好ましい。
【0042】
また、本発明の化粧調湿建材には、上述の基材と化粧層の間にシーラー層を設けることもできる。シーラーとしては、通気性シーラーを用いることで、基材の透湿性を損なうことなく、化粧層の密着性を向上させることができる。このようなシーラーとしては、例えば透湿性シーラー、ケイ酸ソーダ系無機系シーラー、無機系成分をベースとし、有機系樹脂を含有するハイブリッドシーラーなどを用いることができる。
【0043】
ここで、透湿性シーラーとしては、シリカ変性アクリル共重合体樹脂、アクリル樹脂エマルジョン等を用いることができ、例えばニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント社製)等を用いることができる。
また、ケイ酸ソーダ系無機シーラーは、ケイ酸ソーダを主成分とする基材表面の強化を目的とする無機シーラーである。更に、ハイブリッドシーラーは、ケイ酸ソーダに少量のアクリル系樹脂成分を配合してなるものである。ケイ酸ソーダ系無機シーラーやハイブリッドシーラーは、主成分であるケイ酸ソーダが乾燥・硬化する際に、基材表層の構成成分と親和して、基材の空隙、気孔形状を残したまま、基材表面を強化することができるという利点がある。ただし、塗布量が過多となると、空隙や気孔を閉塞してしまう原因となり、塗布量が過少であると、十分に基材表面を強化することができなくなるため、塗布量を例えば10g/m以上100g/m以下、好ましくは10g/m以上50g/m以下とすることが好ましい。なお、ケイ酸ソーダ系無機シーラーやハイブリッドシーラーは、一般塗料を用いる場合のシーラーとして好ましく使用することができる。
【0044】
上記透湿性塗料、漆喰塗料及びシーラーの基材への塗布方法としては、塗料の塗布量を少量に調整できる方法が好ましく、例えばスプレー方式、ロールコーター方式などを用いることが好ましい。
【0045】
また、一般塗料については、塗布量を加飾するために必要最低限な量とすることができるスクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法を用いることができ、より少量の塗布量による加飾が可能なグラビアオフセット印刷法を用いることが特に好ましい。グラビアオフセット印刷法は、デザインを施した金属製基板のエッチング部分にインク(一般塗料)を載せた後、インクをオフセットロールに転写し、更に、基材へ転写することにより加飾するものであり、極微量の塗布量でインクを均一且つ微細に配置できるものである。なお、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法により一般塗料を塗布する場合、その塗布量は1〜20g/m、好ましくは3〜10g/mの範囲内である。塗布量が1g/m未満であると、意匠性を醸しだす化粧層を得るための加飾を行うことができないために好ましくなく、また、20g/mを超えると、得られる化粧調湿建材の吸放湿性能に影響を及ぼすことがあるために好ましくない。
【0046】
上述のような構成を有する化粧調湿建材は、基材となる本発明の調湿建材の良好な吸放湿性能を維持しつつ意匠性を醸しだすことができるものであり、JIS A 1470−1「建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法」に準拠した中湿域での吸放湿性能試験において、吸湿過程(23±0.5℃−75%RH)での3時間後の吸湿量が15g/m以上、6時間後の吸湿量が20g/m以上、12時間後の吸湿量が29g/m以上であり、且つ放湿過程(23±0.5℃−50%RH)での12時間後の放湿量が全吸湿量の70%以上であることを特徴とするものである。[放湿量(%)=(23±0.5℃−50%RH12時間後放湿量(g/m))/(23±0.5℃−75%RH12時間吸湿後の吸湿量(g/m))×100]
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明の調湿建材を更に説明する。
使用材料
セメント:太平洋セメント(株)社製、比表面積3500cm/gの普通ポルトランドセメント;
けい酸カルシウム水和物スラリー:種類トバモライト、平均粒子径65μm、固形分濃度10質量%;
B型シリカゲル:啓和炉材(株)社製、B型シリカゲル粉末(−0.8mm品);
木質パルプ:NBKP(約CSF300mlに叩解処理);
ビニロン:(株)クラレ社製、2.0dtex 4mm;
ゼオライト:日東ゼオライト(株)社製、モルデナイト系天然ゼオライト;
珪藻土:昭和化学工業(株)社製;
パーライト:三井金属鉱業(株)社製;
スラグ:(株)デイ・シイ社製、セラメント;
マイカ:関西マテック(株)社製、100メッシュ;
セピオライト:巴工業(株)社製、IGS。
【0048】
以下の表1に記載する配合割合にて各種原料を配合し、そこに水を加えて湿式混合することにより固形分濃度10質量%のスラリーとし、得られたスラリーを丸網式抄造法にて抄造することにより所定の厚さの生板を得た。得られた生板をプレス機により所定の圧力で加圧脱水した後、温度60℃で15時間養生して硬化させることにより本発明品及び比較品を得た。本発明品及び比較品の諸特性を表1に併記する。
【0049】
【表1】
【0050】
表中、
「見掛け密度」は、JIS A 5430に従って供試体を絶乾状態(105℃で恒量となるまで乾燥した状態)まで乾燥し、乾燥後の質量(g)をその体積(cm)で除することによって得た値である;
「曲げ強度」は、JIS A 1408に準拠して測定したものである;
「長さ変化率」は、JIS A 5430に準拠して測定したものである;
「調湿性能」は、JIS A 1470−1「建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法」に準拠した中湿域[23±0.5℃−75%RH(吸湿過程)、23±0.5℃−50%RH(放湿過程)]での吸放湿性能試験により得られた結果である。なお、試験前に、供試体を23℃±0.5℃−50±2%RHにて恒量となるまで養生した。
【0051】
なお、図1に、本発明品1の吸放湿性能を示す。
【0052】
本発明品1〜4は、セメント、けい酸カルシウム水和物スラリー及びB型シリカゲルをバランス良く配合したものであり、建材としての材料物性は勿論のこと、優れた吸放湿性能を示す調湿建材であった;
比較品1は、セメントの配合量が本発明の範囲を超え、けい酸カルシウム水和物スラリーの配合量が本発明の範囲を下回るものであり、見掛け密度を0.91g/cmとすると、十分な強度を得ることができず、建材としては不適であった;
比較品2は、セメントの配合量が本発明の範囲を下回るものであり、十分な強度を得ることができず、建材としては不適であった;
比較例3は、けい酸カルシウム水和物スラリーの配合量が本発明の範囲を超えるものであり、高いプレス圧にて加圧脱水成形を行っても目標製品厚さに到達せずに、一部割れが生じた。見掛け密度が0.57g/cmと低いにも拘わらず、高い強度を有しているが、長さ変化率が0.32%と大きく、建材としては不適であった;
比較品4は、けい酸カルシウム水和物スラリーの配合量が本発明の範囲を下回るものであり、十分な強度が得られず、吸放湿性能も低下していた;
比較品5は、B型シリカゲルの配合量が本発明の範囲を超えるものであり、一定レベルの強度が確保できるものの、B型シリカゲルの吸放湿に伴う長さ変化率が大きくなり、建材としては不適であった;
比較品6は、調湿性物質としてゼオライトを配合したものであるが、十分な吸放湿性能を得られず、調湿建材としては不十分なものであった;
比較品7は、調湿性物質として珪藻土を配合したものであるが、十分な吸放湿性能を得られず、調湿建材としては不十分なものであった;
比較品8は、特許文献2の実施例に準拠した配合例であるが、十分な強度及び吸放湿性能を得られず、調湿建材としては不十分なものであった;
比較品9は、比較品8のゼオライトをB型シリカゲルに置換したものであるが、建材としての物性が得られず、不適なものであった。
【0053】
化粧調湿建材A
上記本発明品4の調湿建材を基材とし、この基材を加温装置にて加温することにより、基材の板温を約60℃まで加温した。次に、基材表面に透湿性塗料としてセラミック変成シリコン系塗料[ニッペDANシリコンセラ(日本ペイント株式会社製)]を53g/mの塗布量にてロールコーターで塗布した後、熱風乾燥を施すことにより意匠性を有する化粧層を備えてなる化粧調湿建材Aを得た。
【0054】
上述のようにして得られた化粧調湿建材Aの化粧層を有する面における調湿性能を上記と同様に測定したところ、23℃−75%RHにおける吸湿量は、3時間後18g/m、6時間後27g/m、12時間後40g/m、放湿量80%であった。
【0055】
化粧調湿建材B
上記本発明品4の調湿建材を基材とし、この基材を加温装置にて加温することにより、基材の板温を約60℃まで加温した。次に、基材表面にシーラーとしてウルトラシーラーIII(日本ペイント株式会社製)を32g/mの塗布量にてロールコーターで塗布した後、乾燥帯域にてシーラーを乾燥し、次に、セラミック変成シリコン系塗料[DANシリコンセラ(日本ペイント株式会社製)]を41g/mの塗布量にてロールコーターで塗布した後、熱風乾燥を施すことにより意匠性を有する化粧層を備えてなる化粧調湿建材Bを得た。
【0056】
上述のようにして得られた化粧調湿建材Bの化粧層を有する面における調湿性能を上記と同様に測定したところ、23℃−75%RHにおける吸湿量は、3時間後17g/m、6時間後25g/m、12時間後39g/m、放湿量79%であった。
【0057】
化粧調湿建材C
上記本発明品4の調湿建材を基材とし、この基材を加温装置にて加温することにより、基材の板温を約60℃まで加温した。次に、基材表面に漆喰塗料としてセラミック・シリコン系意匠塗料[インディアートCera(日本ペイント株式会社製)]を325g/mの塗布量にてロールコーターで塗布した後、熱風乾燥を施すことにより意匠性を有する粧層を備えてなる化粧調湿建材Cを得た。
【0058】
上述のようにして得られた化粧調湿建材Cの化粧層を有する面における調湿性能を上記と同様に測定したところ、23℃−75%RHにおける吸湿量は、3時間後18g/m、6時間後28g/m、12時間後43g/m、放湿量81%であった。
【0059】
化粧調湿建材D
上記本発明品4の調湿建材を基材とし、この基材を加温装置にて加温することにより、基材の板温を約60℃まで加温した。次に、基材表面にシーラーとしてウルトラシーラーIII(日本ペイント株式会社製)を30g/mの塗布量にてロールコーターで塗布した後、乾燥帯域でシーラーを乾燥し、次に、漆喰塗料としてセラミック・シリコン系意匠塗料[インディアートCera(日本ペイント株式会社製)]を276g/mの塗布量にてロールコーターで塗布した後、熱風乾燥を施すことにより意匠性を有する化粧層を備えた化粧調湿建材Dを得た。
【0060】
上述のようにして得られた化粧調湿建材Dの化粧層を有する面における調湿性能を上記と同様に測定したところ、23℃−75%RHにおける吸湿量は、3時間後17g/m、6時間後26g/m、12時間後41g/m、放湿量82%であった。
【0061】
化粧調湿建材E
上記本発明品4の調湿建材を基材とし、この基材を加温装置にて加温することにより、基材の板温を約60℃まで加温した。次に、基材表面にケイ酸ソーダ系無機シーラー( トウペ社製)を50g/mの塗布量にてロールコーターで塗布した後、乾燥帯域でシーラーを乾燥した。次に、グラビアオフセット印刷機にて、アクリル系塗料(トウペ社製)を10g/mの塗布量にて塗布した後、熱風乾燥を施すことにより、意匠性を有する化粧層を備えてなる化粧調湿建材Eを得た。
【0062】
上述のようにして得られた化粧調湿建材Eの化粧層を有する面における調湿性能を上記と同様に測定したところ、23℃−75%RHにおける吸湿量は、3時間後17g/m、6時間後23g/m、12時間後38g/m、放湿量80%であった。
図1