(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量が0.05〜20質量%、且つローズマリー抽出物の含有量が0.02〜0.2質量%である精製油脂の製造方法であって、ローズマリー抽出物を含有する油脂に140℃未満で水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程を含む、製造方法。
油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の精製油脂中の合計含有量に対する、ローズマリー抽出物の精製油脂中の含有量の質量比[ローズマリー抽出物/(C20:5+C22:6)]が5×10-3以上である請求項1記載の製造方法。
油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量が0.05〜20質量%、且つローズマリー抽出物の含有量が0.02〜0.2質量%である油脂を脱臭処理に供するものである請求項1又は2記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、健康の維持増進、疾病の予防治療に対する関心が高まり、魚油やその構成成分であるエイコサペンタエン酸(C20:5、EPA)、ドコサヘキサエン酸(C22:6、DHA)の生理機能に関する研究が数多く行われている。具体的には、抗動脈硬化作用、脳機能改善作用、視覚機能改善作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用等が報告されている(非特許文献1)。2005年には、厚生労働省よりEPAとDHAを合計で1g/日という摂取目標量(成人)が定められ、EPAとDHAを高濃度に含む油脂の利用が望まれている。
しかし一方でこれらの高度不飽和脂肪酸を高濃度に含有する油脂は、非常に酸化安定性が低く、劣化臭・異臭が発生し易いため、実用化が著しく制限されている。
【0003】
そのため、油脂の酸化安定性を向上させる技術が検討され、例えば、多価不飽和脂肪酸を含有する油脂に焙煎ゴマ油、アスコルビン酸エステル、ハーブエキスを添加し、油脂を安定化させる方法(特許文献1)や、ヤマモモ抽出物およびローズマリー抽出物等を含有する親油性酸化防止剤(特許文献2)が知られている。
なかでもローズマリー抽出物は、高い抗酸化性を有することが知られているが、非常に香りが強いため添加量を制限せざるを得ないという事情がある。
ローズマリー抽出物の抗酸化性を保ったまま臭いを抑える技術として、カーボンの存在下又は不在下にシリカで食用海産動植物油を処理し、0.2%又は0.4%のローズマリー抽出物の存在下に150℃又は190℃の温度で真空蒸気脱臭する方法(特許文献3)が知られている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量が0.05〜20質量%、且つローズマリー抽出物の含有量が0.02〜0.2質量%である精製油脂の製造方法であって、ローズマリー抽出物を含有する油脂に140℃未満で水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程を含む。
本発明で用いられるローズマリー抽出物は、シソ科マンネンロウ属のローズマリー(和名:マンネンロウ)(
Rosmarinus officinalis L.)の抽出物である。ローズマリーの品種にはベネンデンブルー、クリーピング、マリンブルー、マジョルカピンク、トスカナブルー、レックス等が知られているが、本発明においてはいずれの品種も使用することができる。
【0010】
ローズマリー抽出物を得るために用いるローズマリーの使用部位としては、特に限定されるものではなく、例えば、葉、茎、芽、花、枝、根、種子等、並びにこれらの混合物が挙げられる。これら部位は、そのまま抽出工程に付されてもよく、又は粉砕、切断若しくは乾燥された後に抽出工程に付されてもよい。
抽出物を得る抽出手段としては、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、水蒸気蒸留、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等の任意の手段を用いることができる。
【0011】
抽出のための溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;亜臨界又は超臨界二酸化炭素;大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、パーム油、ラード等の食用油脂類;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
また、ローズマリー抽出物として、市販品、好ましくは抗酸化剤として市販されているもの、より好ましくは飲食品用の抗酸化剤として市販されているものを使用することもできる。
【0013】
ローズマリー抽出物は、食品上許容し得る規格に適合し本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよく、さらに得られた粗精製物を公知の分離精製方法を適宜組み合わせてこれらの純度を高めてもよい。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限外濾過、吸着剤処理、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
【0014】
脱臭処理に供する油脂として用いる食用油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよい。例えば、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を挙げることができる。これらの油は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは適宜混合して用いてもよい。なかでも、使用性の点から、低温耐性に優れた液状油脂を用いるのが好ましく、更に大豆油、ナタネ油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油等の植物種子油、藻油及び魚油から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましい。なお、液状油脂とは、基準油脂分析試験法2.3.8−27による冷却試験を実施した場合、20℃で液状である油脂をいう。
【0015】
脱臭処理に供する油脂は、原料となる植物又は動物から搾油後、油分以外の固形分を濾過や遠心分離等により除去するのが好ましい。次いで、水、場合によっては更に酸を添加混合した後、遠心分離等によってガム分を分離することにより脱ガムすることが好ましい。また、油脂にアルカリを添加混合した後、水洗し脱水することにより脱酸を行うことが好ましい。更に、油脂に活性白土や活性炭等の吸着剤と接触させた後、吸着剤を濾過等により分離することにより脱色を行うことが好ましい。これらの処理は、以上の順序で行うことが好ましいが、順序を変更しても良い。また、この他に、油脂は、ろう分の除去のために、低温で固形分を分離するウインタリングを行っても良い。
【0016】
本発明において、油脂を構成する物質にはトリアシルグリセロールのみならずモノアシルグリセロールやジアシルグリセロールも含まれる。すなわち本発明において油脂は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものである。
油脂中、トリアシルグリセロールの含有量は、15質量%(以下、単に「%」とする)以上が好ましく、更に50%以上、更に75%以上、更に78%以上、更に88%以上、更に90%以上、更に92%以上が好ましく、また、100%以下が好ましく、更に99.5%以下、更に99%以下が油脂の工業的生産性の点から好ましい。
また、油脂中、ジアシルグリセロールの含有量は、0%でもよいが、0.1%以上が好ましく、更に0.2%以上が好ましく、また、85%以下が好ましく、更に50%以下、更に25%以下、更に19%以下、更に9%以下、更に7%以下、更に5%以下であるのが風味を良好とする点から好ましい。
また、油脂中、モノアシルグリセロールの含有量は、風味を良好とする点から、3%以下が好ましく、更に0〜2%が好ましい。
【0017】
また、遊離脂肪酸又はその塩の含有量は、油脂中5%以下が好ましく、更に0〜2%、更に0〜1%であるのが風味、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0018】
本発明において、油脂に水蒸気を接触させる方法としては、減圧水蒸気蒸留が挙げられ、バッチ式、半連続式、連続式等で行ってもよい。処理すべき油脂の量が少量の場合はバッチ式を用い、多量になると半連続式、連続式を用いることが好ましい。
半連続式装置としては、例えば数段のトレイを備えた脱臭塔からなるガードラー式脱臭装置等が挙げられる。本装置は、上部から脱臭すべき油脂を供給し、トレイ上で油脂と水蒸気又は不活性ガスの接触を適当な時間行った後、油脂を下段のトレイへ下降させ、間欠的に次々と下降しながら移動することにより処理を行うものである。
連続式装置としては、薄膜状の油脂と水蒸気を接触させることが可能な、構造物が充填された薄膜脱臭装置等が挙げられる。
【0019】
脱臭処理において、油脂に水蒸気を接触させる際の温度は、ローズマリー抽出物中のポリフェノールの減少を抑制する点から、140℃未満であるが、同様の点から、135℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。また、加熱調理に使用した際のローズマリーに由来するハーブ臭を抑制する点から、80℃以上が好ましく、更に90℃以上、更に100℃以上が好ましい。油脂に水蒸気を接触させる際の温度は、80℃以上140℃未満が好ましく、更に90〜135℃、更に90℃〜130℃、更に100〜130℃が好ましい。なお、本発明において、油脂に水蒸気を接触させる際の温度は、水蒸気を接触させる油脂の温度である。
【0020】
油脂と水蒸気の接触時間は、ローズマリー抽出物中のポリフェノールの減少を抑制する点から、3〜180分が好ましく、更に5〜150分、更に7〜120分、更に15〜90分が好ましい。
【0021】
また、油脂と水蒸気を接触させる際の圧力は、ローズマリーに由来するハーブ臭を低減する点から、0.01〜4.0kPa、更に0.06〜1.0kPaとすることが好ましい。
【0022】
油脂に接触させる水蒸気の量は、油脂に対して0.3〜20%/hr、更に0.5〜10%/hrとすることが、同様の点から好ましい。
【0023】
本発明においては、次の(i)又は(ii)の精製油脂の製造方法を好ましい態様として挙げることができる。
なお、本発明において、ローズマリー抽出物は、純分約100%の形態もあるが、抽出に用いた溶剤で希釈されている形態もある。本発明におけるローズマリー抽出物の量は、希釈に用いられる溶剤を除いたローズマリー抽出物純分を基準とするものである。
(i)油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量が0.05〜20質量%、且つローズマリー抽出物の含有量が0.02〜0.2質量%である精製油脂の製造方法であって、
油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量が0.05〜20質量%であり、且つローズマリー抽出物を0.02〜0.2質量%含有する油脂に、140℃未満で水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程
を含む、製造方法。
(ii)油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量が0.05〜20質量%、且つローズマリー抽出物の含有量が0.02〜0.2質量%である精製油脂の製造方法であって、
ローズマリー抽出物を含有する油脂に140℃未満で水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程と、
脱臭処理を行った油脂とそれ以外の油脂を混合し、油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量と、ローズマリー抽出物の含有量を調整する工程
を含む、製造方法。
【0024】
前記(i)の方法で、脱臭処理に供する油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量の好ましい範囲は、後述する精製油脂中の好ましい範囲と同じである。
【0025】
前記(i)の方法では、脱臭処理に供する油脂中のローズマリー抽出物の含有量を、精製油脂中のローズマリー抽出物の含有量が前記範囲となる範囲で適宜設定できるが、実質的には0.02〜0.2%であり、抗酸化性の点から、更に0.03%以上、更に0.04%以上が好ましい。また、ローズマリー抽出物由来のハーブ臭を低減する点から、、更に0.15%以下、更に0.1%以下、更に0.08%以下が好ましい。脱臭処理に供する油脂中のローズマリー抽出物の含有量は、更に0.03〜0.15%、更に0.04〜0.1%、更に0.04〜0.08%が好ましい。
【0026】
また、前記(i)の方法において、脱臭後の精製油脂中のポリフェノールの含有量は、脱臭前と比べ減少量が少ないことが好ましい。例えば、ローズマリー抽出物0.1%を添加した際の脱臭後の精製油脂中のポリフェノールの含有量は、14ppm以上であることが好ましく、更に15ppm以上、更に16ppm以上、更に17ppm以上であることが好ましい。油脂中のポリフェノールの含有量は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0027】
前記(ii)の方法で、脱臭処理を行った油脂と混合するもう一方の油脂としては、前記の脱臭処理に供する油脂として用いる食用油脂の1種又は2種以上が挙げられるが、精製工程を経た精製油脂であるのが好ましい。
また、脱臭処理を行った油脂ともう一方の油脂の混合割合は適宜設定できる。
【0028】
前記(ii)の方法では、脱臭処理に供する油脂中のローズマリー抽出物の含有量を適宜設定できるが、抗酸化性の点から、0.05%以上が好ましく、更に0.1%以上が好ましく、更に0.15%以上、更に0.2%以上が好ましい。また、ローズマリー抽出物由来のハーブ臭を低減する点から、2.5%以下が好ましく、更に2%以下、更に1.5%以下が好ましい。脱臭処理に供する油脂中のローズマリー抽出物の含有量は、0.05〜2.5%、更に0.1〜2%、更に0.2%〜1.5%が好ましい。
【0029】
また、前記(ii)の方法において、脱臭後の油脂中のポリフェノールの含有量は、脱臭前と比べ減少量が少ないことが好ましい。例えば、ローズマリー抽出物0.8%を添加した際の脱臭後の油脂中のポリフェノール含有量は、110ppm以上であることが好ましく、更に120ppm以上、更に130ppm以上であることが好ましい。
【0030】
本発明の方法により得られる精製油脂は、油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計含有量が0.05〜20%であるが、更に0.1%以上、更に0.3%以上、更に1%以上、更に1.5%以上であるのが生理効果の点から好ましい。また、15%以下、更に12%以下、更に9%以下、更に5%以下であるのが、酸化安定性の点から好ましい。エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の、油脂を構成する全脂肪酸に対する合計含有量は、生理効果と酸化安定性の両方の点から、0.1〜15%、更に0.3〜12%、更に1〜9%、更に1.5〜5%であるのが好ましい。なお、本明細書における脂肪酸量は遊離脂肪酸換算量である。
【0031】
また、精製油脂中のローズマリー抽出物の含有量は、0.02〜0.2%であるが、抗酸化性の点から、更に0.03%以上、更に0.04%以上が好ましい。また、ローズマリー抽出物由来のハーブ臭を低減する点から、更に0.15%以下、更に0.1%以下、更に0.08%以下が好ましい。精製油脂中のローズマリー抽出物の含有量は、更に0.03〜0.15%、更に0.04〜0.1%、更に0.04〜0.08%が好ましい。
【0032】
本発明の精製油脂は、油脂を構成する全脂肪酸中のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の精製油脂中の合計含有量に対する、ローズマリー抽出物の精製油脂中の含有量の質量比[ローズマリー抽出物/(C20:5+C22:6)]が、抗酸化性の点から、5×10
-3以上が好ましく、更に8×10
-3以上、更に10×10
-3以上、更に20×10
-3以上、更に30×10
-3以上が好ましい。
【0033】
本発明の処理の結果、ローズマリー抽出物中のポリフェノールが多く残存した精製油脂が得られる。
本発明の方法により得られる精製油脂中のポリフェノールの含有量は、抗酸化性の点から3ppm以上が好ましく、更に5ppm以上、更に7ppm以上が好ましい。また、ポリフェノールによる調理品の変色を抑制する点から、40ppm以下が好ましく、更に35ppm以下、更に30ppm以下が好ましい。
【0034】
本発明の方法により得られる精製油脂には、一般の食用油脂と同様に、保存性及び風味安定性の向上を目的として、ローズマリー抽出物以外の抗酸化剤等を更に添加することができる。
また、本発明の方法により得られる精製油脂は、一般の食用油脂と同様に使用でき、油脂を用いた各種飲食物に広範に適用することができる。なかでも、加熱調理用油脂、更に野菜炒めやチャーハン等の炒め物の調理用油脂として好適である。
【実施例】
【0035】
〔分析方法〕
(1)油脂のグリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
<GLC分析条件>
(条件)
装置:アジレント6890シリーズ(アジレントテクノジー社製)
インテグレーター:ケミステーションB 02.01 SR2(アジレントテクノジー社製)
カラム:DB−1ht(Agilent J&W社製)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:50)、T=320℃
ディテクター:FID、T=350℃
オーブン温度:80℃から10℃/分で340℃まで昇温、15分間保持
【0036】
(2)油脂の構成脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られた油脂サンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定した。
<GLC分析条件>
カラム:CP−SIL88 50m×0.25mm×0.2μm (VARIAN)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:40)、T=300℃
ディテクター:FID、T=300℃
オーブン温度:150℃で5分保持後、1℃/分で170℃まで昇温、1℃/分で200℃まで昇温、20℃/分で220℃まで昇温、5分保持
【0037】
(3)油脂のポリフェノール量
油脂約1gをヘキサン1mLに溶解し、MeOH/水(8/2)1mLで抽出した。3500rpmで5分間遠心分離し、MeOH相を回収した。抽出操作を計3回繰り返し、回収したメタノール相をまとめ、ヘキサン1mLを加えて洗浄した。3500rpmで5分間遠心分離し、ヘキサン相を取り除いた。洗浄操作を計3回繰り返し、残ったMeOH相をポリフェノール含有溶液とした。
ポリフェノール含有溶液に、Folin−Ciocalteu試薬(シグマアルドリッチ)0.5mLを添加し、3分間反応させた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1mLを添加した。水で希釈して1時間静置し、725nmにおける吸光度を測定した。予め作成しておいたカフェ酸の検量線に基づき、ポリフェノール量(カフェ酸等量として)を求めた。
なお、検量線は、濃度既知のカフェ酸を用いて上記方法で吸光度を測定し、作成した。
【0038】
〔原料〕
植物油として表1の組成を持つ油脂1を用い、魚油として表1の組成を持つ油脂2を用いた。ローズマリー抽出物製剤として、ハーバロックス タイプHT−O NS(Kalsec、ローズマリー抽出物純分40%)を用いた。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1〜5、比較例1〜4
〔油脂A〜油脂Gの調製〕
クライゼンフラスコに、表2に示した比率で油脂1又は油脂2、ローズマリー抽出物を入れ、表2に示した条件で水蒸気脱臭処理を行い、油脂A〜油脂Fを得た。
油脂Gは、表2に示した比率で油脂1及びローズマリー抽出物を混合したものであり、脱臭処理を行わなかったものである。油脂A〜油脂Gの分析値を表2に示す。
【0041】
〔精製油脂の調製〕
ビーカーに、表3に示した比率で油脂A〜油脂G、油脂1及び/又は油脂2を入れ、窒素雰囲気下で0.5時間攪拌しながら混合し、精製油脂を得た。
精製油脂の分析値を表3に示す。
【0042】
〔風味評価〕
実施例と比較例で調製した精製油脂をステンレスシャーレに10gを入れ、ホットプレートで150℃に加熱し、下記の評価基準で加熱時のローズマリー由来のハーブ臭を評価した。また、実施例と比較例で調製した精製油脂を各人1〜2gを生食し、下記の評価基準で味を評価した。
保存品の評価は、実施例と比較例で調製した精製油脂を、50mLスクリューバイヤルに20gを入れて密閉して、遮光下、60℃で3日間保存した後、40℃に加熱し、下記の評価基準で加熱時の魚劣化臭を評価した。
各評価ともパネル5名で評価し、その平均点を評点とした。結果を表3に示す。
<加熱時のローズマリー由来のハーブ臭>
5:ローズマリー由来のハーブ臭を感じない
4:ローズマリー由来のハーブ臭をほとんど感じない
3:ややローズマリー由来のハーブ臭を感じる
2:ローズマリー由来のハーブ臭を感じる
1:強くローズマリー由来のハーブ臭を感じる
<味>
5:軽く、かつ非常にすっきりしている
4:やや軽く、すっきりしている
3:わずかに重く、かつ僅かに油臭い
2:やや重く、かつやや油臭い
1:重く、油臭い
<保存品加熱時の魚劣化臭>
5:魚劣化臭を全く感じない
4:魚劣化臭を感じない
3:わずかに魚劣化臭を感じる
2:魚劣化臭を感じる
1:強く魚劣化臭を感じる
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
実施例6〜14、比較例5〜8
クライゼンフラスコに、表4又は表5に示した比率で油脂1、油脂2及びローズマリー抽出物を入れ、表4又は5に示した条件で水蒸気脱臭処理を行い、精製油脂を得た。精製油脂の分析値を表4又は表5に示す。
また、前記と同様の〔風味評価〕を行った結果を表4又は表5に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
表3〜5より明らかなように、140℃未満で脱臭処理を行うことで加熱時のローズマリーに由来するハーブ臭は抑制しつつも、ローズマリー抽出物中のポリフェノールをより多く残存させることができた。保存後の加熱においても風味の劣化が抑制され、油の味も良好であった。