【実施例】
【0014】
〔実施例1〕
図1〜
図4に示す実施例1の建物1は、桁行方向(X方向:長手方向)に連続配置された複数の住戸2,2,・・・と、該複数の住戸2,2,・・・に沿うように該複数の住戸2,2,・・・の一側に配置された共用廊下3と、該複数の住戸2,2,・・・に沿うように該複数の住戸2,2,・・・の他側に配置されたバルコニー4とを備えている。各住戸2の平面形は、間口が短辺、奥行きが長辺となる矩形である。
バルコニー4側の桁行方向には、柱5と梁6によってラーメン構造の架構面7が形成されている。このラーメン構造の架構面7は、バルコニー4の外側(バルコニー4の外側端部)に配置されている。梁6は逆梁形状であり、手摺の一部として使用されるようになっており、採光を妨げない。また、ラーメン構造の架構面7は、両妻面からの各二住戸を除いた中央部分に設けられている。この各二住戸のバルコニー4の内側(バルコニー4の内側端部)かつ室内空間の外側には梁間方向に扁平な柱5aが設けられているが、梁は設けられていない。よって、各住戸2,2,・・・のバルコニー4側の室内空間に柱型及び梁型が突出しない構成となっている。
【0015】
建物1の梁間方向(Y方向:短手方向)では、耐震壁(連層耐震壁)10が梁間方向の一方の側においてラーメン構造の架構面7の柱5(又は柱5a)に接合一体化されおり、梁間方向の水平剛性及び耐力を確保している。この耐震壁10は、複数の住戸2,2,・・・を仕切る戸境壁となっている。耐震壁10の上辺には耐震壁10の壁厚内に梁が内蔵され、壁面から梁型は突出しない。
【0016】
耐震壁10は、バルコニー4側のラーメン構造の架構面7の柱5(又は5a)に接続している耐震壁薄肉部10aと、この耐震壁薄肉部10aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした、共用廊下3側に位置する耐震壁厚肉部10bを備えている。耐震壁厚肉部10bは柱に接続しない。
耐震壁厚肉部10bの共用廊下3側の端部(端面)は、住戸2と共用廊下3の境界部分あるいは住戸2と共用廊下3の境界部分から共用廊下3へ該共用廊下3の幅の1/3程度までの間に突出するように設けられる。
【0017】
また、建物1の床構造を形成する床スラブ20は、バルコニー4側のラーメン構造の架構面7の柱5(又は5a)に接続している床スラブ薄肉部20aと、この床スラブ薄肉部20aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした、共用廊下3側に位置する床スラブ厚肉部20bを備えている。
床スラブ厚肉部20bは、その下面は床スラブ薄肉部20aの下面と一致しており、その上面が床スラブ薄肉部20aよりも高く形成されている。床スラブ薄肉部20aの上面は配管スペースとして利用できる。
床スラブ厚肉部20bの共用廊下3側の端部は、住戸2と共用廊下3の境界部分あるいは住戸2と共用廊下3の境界部分から共用廊下3へ該共用廊下3の幅の1/3程度までの間に突出するように設けられており、その位置は耐震壁厚肉部10bの端部位置とほぼ一致している。
【0018】
しかして、耐震壁厚肉部10bと床スラブ厚肉部20bとによって形成される構造部において、耐震壁厚肉部10bは壁状の柱として機能し、床スラブ厚肉部20bはスラブ状の梁として機能し、これにより共用廊下3側の強度が確保されるようになっている。
図4に耐震壁厚肉部10bと床スラブ厚肉部20bとが形成されている領域を散点ハッチングで示す。
そして、上記の構造部は柱型及び梁型の出ない構造であるから、この構造部に住空間を形成することにより、柱型及び梁型が突出しない住空間が形成される。すなわち、共用廊下3側に面する室内空間に柱型及び梁型が突出しない。このため、従来軽視されがちであった共用廊下に面する居室に柱型及び梁型が突出しない開放的な住空間が形成され、廊下側の居室のグレードを上げることができる。開口部の高さ、広さ、位置などの自由度を向上させた効率の良いプランが可能となる。
【0019】
以下、他の実施例について説明するが、実施例1と共通する構成要素については、同一の符号を用いる。また、主に実施例1との相違点について説明し、基本的な構成及び構成要素において実施例1と共通する点についてはその説明を適宜省略する。
【0020】
〔実施例2〕
図5に示す実施例2の建物では、バルコニー4側のラーメン構造の架構面7は、バルコニー4の内側かつ室内空間の外側に配置され、この架構面7は桁行方向の全スパンにわたって配置されている。柱5に接合する梁6は扁平梁であり、十分な開口部の高さが確保されるとともに、室内に梁型は突出しないようになっている。
【0021】
梁間方向の一方の側においてラーメン構造の架構面7の柱5に接合一体化される耐震壁10は、バルコニー4側のラーメン構造の架構面7の柱5に接続している耐震壁薄肉部10aと、この耐震壁薄肉部10aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした、共用廊下3側に位置する耐震壁厚肉部10bを備えている。
また、床スラブ20は、床スラブ薄肉部20aと、この床スラブ20aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした床スラブ厚肉部20bを備えている。床スラブ厚肉部20bの領域を散点ハッチングで示している。
【0022】
しかして、耐震壁厚肉部10bと床スラブ厚肉部20bとによって形成される構造部において、耐震壁厚肉部10bは壁状の柱として機能し、床スラブ厚肉部20bはスラブ状の梁として機能し、これにより共用廊下3側の強度が確保されるようになっている。
そして、上記の構造部は柱型及び梁型の出ない構造であるから、この構造部に住空間を形成することにより、柱型及び梁型が突出しない住空間が形成される。すなわち、共用廊下3側に面する室内空間に柱型及び梁型が突出しない。
【0023】
〔実施例3〕
図6に示す実施例3の建物では、バルコニー4側のラーメン構造の架構面7は、バルコニー4の外側に配置され、この架構面7は桁行方向の全スパンにわたって配置されている。梁6は逆梁形状である。このため、各住戸のバルコニー4側の室内空間に柱型及び梁型が突出しない構成となっている。
【0024】
梁間方向の一方の側においてラーメン構造の架構面7の柱5に接合一体化される耐震壁10は、バルコニー4側のラーメン構造の架構面7の柱5に接続している耐震壁薄肉部10aと、この耐震壁薄肉部10aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした、共用廊下3側に位置する耐震壁厚肉部10bを備えている。
また、床スラブ20は、床スラブ薄肉部20aと、この床スラブ20aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした床スラブ厚肉部20bを備えている。床スラブ厚肉部20bの領域を散点ハッチングで示している。
【0025】
しかして、耐震壁厚肉部10bと床スラブ厚肉部20bとによって形成される構造部において、耐震壁厚肉部10bは壁状の柱として機能し、床スラブ厚肉部20bはスラブ状の梁として機能し、これにより共用廊下3側の強度が確保されるようになっている。
そして、上記の構造部は柱型及び梁型の出ない構造であるから、この構造部に住空間を形成することにより、柱型及び梁型が突出しない住空間が形成される。すなわち、共用廊下3側に面する室内空間に柱型及び梁型が突出しない。
【0026】
〔実施例4〕
図7〜
図9に示す実施例4の建物1は、柱5と梁6からなるラーメン構造の架構面7が共用廊下3側の桁行方向に配置され、耐震壁厚肉部10bと床スラブ厚肉部20bとによって形成される構造部はバルコニー4の側に配置されているものである。ラーメン構造の架構面7は、住戸2と共用廊下3との境に配置されている。
【0027】
建物1の梁間方向(Y方向:短手方向)では、耐震壁(連層耐震壁)10が梁間方向の一方の側においてラーメン構造の架構面7の柱5に接合一体化されおり、梁間方向の水平剛性及び耐力を確保している。この耐震壁10は、複数の住戸2,2,・・・を仕切る戸境壁となっている。耐震壁10の上辺には耐震壁10の壁厚内に梁が内蔵され、壁面から梁型は突出しない。
【0028】
耐震壁10は、共用廊下3側のラーメン構造の架構面7の柱5に接続している耐震壁薄肉部10aと、この耐震壁薄肉部10aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした、バルコニー4側に位置する耐震壁厚肉部10bを備えている。耐震壁厚肉部10bは柱に接続しない。
耐震壁厚肉部10bのバルコニー4側の端部(端面)は、住戸2とバルコニー4の境界部分あるいは住戸2とバルコニー4の境界部分からバルコニー4へ該バルコニー4の幅の1/2程度までの間に突出するように設けられる。
【0029】
また、建物1の床構造を形成する床スラブ20は、共用廊下3側のラーメン構造の架構面7の柱5に接続している床スラブ薄肉部20aと、この床スラブ薄肉部20aよりもその厚さ及び剛性を夫々大きくした、バルコニー4側に位置する床スラブ厚肉部20bを備えている。
床スラブ厚肉部20bは、その下面は床スラブ薄肉部20aの下面と一致しており、その上面が床スラブ薄肉部20aよりも高く形成されている。床スラブ薄肉部20aの上面は配管スペースとして利用できる。
床スラブ厚肉部20bのバルコニー4側の端部は、住戸2とバルコニー4の境界部分あるいは住戸2とバルコニー4の境界部分からバルコニー4へ該バルコニー4の幅の1/2程度までの間に突出するように設けられ、その位置は耐震壁厚肉部10bの端部位置とほぼ一致している。
【0030】
しかして、耐震壁厚肉部10bと床スラブ厚肉部20bとによって形成される構造部において、耐震壁厚肉部10bは壁状の柱として機能し、床スラブ厚肉部20bはスラブ状の梁として機能し、これによりバルコニー4側の強度が確保されるようになっている。
図10に耐震壁厚肉部10bと床スラブ厚肉部20bとが形成されている領域(前記構造部の領域)を散点ハッチングで示す。
そして、上記の構造部は柱型及び梁型の出ない構造であるから、この構造部に住空間を形成することにより、柱型及び梁型が突出しない住空間が形成される。すなわち、バルコニー4側に面する室内空間に柱型及び梁型が突出しない。
このため、バルコニーに面する居室に柱型及び梁型が突出しない開放的な住空間が形成され、開口部の高さ、広さ、位置などの自由度を向上させることができ、良好な採光や眺望が得られる。
【0031】
以上、発明を実施するための形態を説明したが、本発明は上記したものに限定されず、本発明の要旨の範囲で適宜、付加、変更等なし得るものである。建物の一部に上述した構造部を備えていない部分があってもよい。また、上述した板状の集合住宅に限定されるものではなく、平面形がL字形の建物等にも適用することができる。また、集合住宅のほか、事務所、ホテル等の用途の建物にも適用することができる。