(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167070
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】レール切断装置
(51)【国際特許分類】
E01B 31/04 20060101AFI20170710BHJP
B23K 7/00 20060101ALI20170710BHJP
B23K 7/10 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
E01B31/04
B23K7/00 501A
B23K7/00 509Z
B23K7/10 501B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-112498(P2014-112498)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227535(P2015-227535A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514136679
【氏名又は名称】有限会社阪和溶接工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】七河 正寛
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−237803(JP,A)
【文献】
特開平11−303002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00−37/00
B23K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに跨嵌させて固定するトーチ支持枠体と、このトーチ支持枠体にヘッド部を着脱自在に支持させるガス切断トーチとで構成され、
トーチ支持枠体は、レールに跨嵌させるための切欠部を有する縦板部と、該縦板部の前面側で前記切欠部の上側及び左右両側の三カ所に突設されたトーチ取付部と、該縦板部の後面側に突設されてレールの頂面及び一側側面に当接させるレール当接枠部と、先端側がレールの他側側面に対して離接方向に回動可能に枢着されたクランプアームと、該クランプアームの先端側をレールの他側側面に押接させる押接手段とを備え、
前記の各トーチ取付部が前方に開くトーチ保持孔を有すると共に、該トーチ保持孔の内周に軸受が嵌装され、
ガス切断トーチの前記ヘッド部には、前記トーチ保持孔に対して回転自在に挿嵌可能な枢支軸が火炎出射方向に対する直交方向に突設され、
切断対象のレールにトーチ支持枠体の前記縦板部を跨嵌させ、前記レール当接枠部と前記クランプアームの先端側との間で該レールを挟着することによってトーチ支持体を固定し、このトーチ支持枠体の前記三カ所のトーチ取付部に順次、ガス切断トーチのヘッド部を前記枢支軸を介して取り付けて回動操作することにより、該レールを3方向からガス切断するように構成されてなるレール切断装置。
【請求項2】
前記トーチ取付部のトーチ保持孔を塞ぐキャップを備え、レールのガス切断時にガス切断トーチのヘッド部を取り付けていないトーチ取付部に該キャップを嵌着するように構成されてなる請求項1に記載のレール切断装置。
【請求項3】
前記トーチ取付部及びキャップが磁性金属からなり、キャップ側に取り付けたマグネットによって該キャップがトーチ取付部の前端部に磁力吸着するように構成されてなる請求項1又は2に記載のレール切断装置。
【請求項4】
前記レール当接枠部に前記クランプアームが枢支ピンを介して縦方向回動可能に枢着されると共に、該クランプアームのレールに押接させる先端側とは前記枢支ピンを挟んだ反対側の端部にねじ筒部が設けられ、前記押接手段が該ねじ筒部に螺装して先端をレール当接枠部に当接する操作ねじ軸からなり、該操作ねじ軸の回転によって前記クランプアームが回動するように構成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載のレール切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の線路を始めとして各種走行軌条を構成するレールをガス切断するのに使用されるレール切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鉄道車両の線路では、新線の敷設や接続変更、既設線の部分的な補修や定期的交換等の際、施工現場でレールを切断して溶接する作業が行われる。このレールの切断方法としては、ガス切断方式とカッター切断方式が知られるが、カッター切断方式ではクランプ機構を含めて構造的に複雑で高価な丸鋸型切断装置(例えば、特許文献1,2)を要するのに対し、ガス切断方式はガス切断トーチの手操作で簡易にレールを溶断できるために従来より多用されている。
【0003】
そして、ガス切断方式では、レールが下端幅の広い逆T字形の脚部上に厚肉の頭部を一体化した断面形状であり、一方向からの火炎噴射でレール全体を溶断することが困難であるため、一か所の切断位置に対し、火炎噴射の方向を左右各側からと上側からと順次に変えて行う三段階の切断操作により、レールを三方向から切り込んで溶断するのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−303002号公報
【特許文献2】特開2013−513041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、従来のガス切断では、三段階の各切断操作においてガス切断トーチを手操作で切断線に沿って移動させることから、三方向からの切込み位置を精度よく合わせることが難しく、切断作業に高度な熟練を要すると共に、多大な手間及び時間を費やして作業能率が悪く、また三方向からの切込みによる切断面間で段差や角度差を生じることが多々あり、その修正のために切断後のグラインダー等による研削加工を余儀なくされるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、鉄道車両の線路を始めとして各種走行軌条を構成するレールの切断装置として、三方向からの切込みを行うガス切断方式であるが、その三方向からの切込み位置を確実に精度よく一致させることができ、しかも熟練を要さずに容易に且つ迅速に能率よく切断作業でき、切断面に段差や角度差を生じず、修正のための切断後の研削加工も不要となるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係るレール切断装置は、レールRに跨嵌させて固定するトーチ支持枠体1と、このトーチ支持枠体1にヘッド部21を着脱自在に支持させるガス切断トーチ2とで構成され、トーチ支持枠体1は、レールRに跨嵌させるための切欠部11を有する縦板部10と、該縦板部10の前面10a側で切欠部11の上側及び左右両側の三カ所に突設されたトーチ取付部3A〜3Cと、該縦板部10の後面10b側に突設されてレールRの頂面Ra及び一側側面(左側面)Rbに当接させるレール当接枠部4と、先端側がレールRの他側側面(右側面)Rcに対して離接方向に回動可能に枢着されたクランプアーム5と、該クランプアーム5の先端(下端)5a側をレールRの他側側面Rcに押接させる押接手段(操作ねじ軸6)とを備え、各トーチ取付部3A〜3Cが前方に開くトーチ保持孔31を有すると共に、
該トーチ保持孔31の内周に軸受32が嵌装され、ガス切断トーチ2のヘッド部21には、トーチ保持孔31に対して回転自在に挿嵌可能な枢支軸7が火炎F出射方向に対する直交方向に突設され、切断対象のレールRにトーチ支持枠体1の縦板部10を跨嵌させ、レール当接枠部4とクランプアーム5の先端5a側との間で該レールRを挟着することによってトーチ支持体1を固定し、このトーチ支持枠体1の三カ所のトーチ取付部3A〜3Cに順次、ガス切断トーチ2のヘッド部21を枢支軸7を介して取り付けて回動操作することにより、該レールRを3方向からガス切断するように構成されてなる。
【0009】
請求項2の発明は、上記
請求項1のレール切断装置において、トーチ取付部3A〜3Cのトーチ保持孔31を塞ぐキャップ8を備え、レールRのガス切断時にガス切断トーチ2のヘッド部21を取り付けていないトーチ取付部3A〜3Cに該キャップ8を嵌着するように構成されてなる。
【0010】
請求項3の発明は、上記
請求項1又は2のレール切断装置において、トーチ取付部3A〜3C及びキャップ8が磁性金属からなり、キャップ8側に取り付けたマグネット81によって該キャップ8がトーチ取付部3A〜3Cの前端部3aに磁力吸着するように構成されてなる。
【0011】
請求項4の発明は、上記
請求項1〜3のいずれかのレール切断装置において、レール当接枠部4にクランプアーム5が枢支ピン9を介して縦方向回動可能に枢着されると共に、該クランプアーム5のレールRに押接させる先端(下端5a)側とは枢支ピン9を挟んだ反対側の端部(上端部)5bにねじ筒部51が設けられ、前記押接手段が該ねじ筒部51に螺装して先端6aをレール当接枠部4に当接する操作ねじ軸6からなり、該操作ねじ軸6の回転によってクランプアーム5が回動するように構成されてなる。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係るレール切断装置によれば、切断対象のレールRにトーチ支持枠体1の縦板部10を切欠部11において跨嵌させ、レール当接枠部4とクランプアーム5の先端5a側との間で該レールRを挟着して該トーチ支持体1を固定するが、その縦板部10に設けた上側と左右両側のトーチ取付部3A〜3Cの各トーチ保持孔31に対し、ガス切断トーチ2のヘッド部21に設けた枢支軸7を回転自在に挿嵌できる。そして、該枢支軸7はガス切断トーチ2の火炎F出射方向に直交する方向に突出しているから、三カ所のトーチ取付部3A〜3Cに順次、ガス切断トーチ2のヘッド部21を該枢支軸7を介して取り付け、それぞれ該ヘッド部21を回動操作するだけで、該レールRを3方向から切り込んで簡単にガス切断でき、その作業に熟練を要さ
ず、切断作業を迅速に能率よく行える。
また、各トーチ取付部3A〜3Cに対する該ヘッド部21の着脱が容易で
ある上、各トーチ取付部3A〜3Cのトーチ保持孔31の内周に軸受32が嵌装されているから、該トーチ保持孔31に枢支軸21を挿嵌した状態でガス切断トーチ2のヘッド部21を円滑に回動操作でき、もってレール切断の精度及び作業能率がより向上する。しかも、三カ所のトーチ取付部3A〜3Cにおいて該ヘッド部21の保持位置が自ずとレール長手方向の同一位置に定まるため、三方向からの切込み位置が精度よく一致し、加えて三方向からの火炎放射の軌跡が該レールRの長手方向に直交する面内に納まるから、切断面に段差や角度差を生じず、従来のような修正のための切断後の研削加工も不要となる。
【0013】
一方、このレール切断装置におけるトーチ支持枠体1は、切欠部11を有する縦板部10の前面10a側にトーチ取付部3A〜3Cを設け、同後面10b側にレール当接枠部4及びクランプアーム5とその押接手段(操作ねじ軸6)を設けただけの簡単な構造であるから、容易に且つ安価に製作できると共に、故障しにくく耐久性に優れ、また軽量であるために施工現場での取り扱い及び持ち運びを楽に行えるという利点がある。
【0015】
請求項2の発明によれば、レールRを三方向からのガス切断によって順次に切り込んでゆく際、三カ所のトーチ取付部3A〜3Cの内、ガス切断トーチ2のヘッド部21を取り付けていない不使用の二カ所にキャップ8を嵌着することで、切断部位から飛散するスラグが該二カ所のトーチ取付部のトーチ保持孔31内や前端部3aに付着するのを防止できる。従って、これら二カ所のトーチ取付部を次に使用する際、付着したスラグによるガス切断トーチ2のヘッド部21の保持位置や保持姿勢の狂いが回避され、もって高い切断精度を確保できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、キャップ8がマグネット80によってトーチ取付部3A〜3Cの前端部3aに磁力吸着する構成であるから、レールRを三方向から順次にガス切断してゆく際、トーチ取付部3A〜3C間での該キャップ8の付け替えを容易に迅速に行うことができ、もって切断能率がより向上する。
【0017】
請求項4の発明によれば、レール当接枠部4にクランプアーム5が枢支ピン9を介して縦方向に回動可能に枢着され、前記押接手段が該クランプアーム5のねじ筒部51に螺装して先端6aをレール当接枠部4に当接する操作ねじ軸6からなるため、この操作ねじ軸6の回転操作により、クランプアーム5の先端5a側をレールRの他側側面Rcに強く押接して、トーチ支持枠体1を確実に該レールRに固定できると共に、この固定状態を容易に解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレール切断装置の斜視図である。
【
図2】同レール切断装置のトーチ支持枠体の分解斜視図である。
【
図4】同トーチ支持枠体のトーチ取付部及びキャップを示す縦断側面図である。
【
図5】同トーチ支持枠体のレールに対する取付状態を示す縦断正面図である。
【
図6】同トーチ支持枠体のレールに対する取付状態を示す縦断背面図である。
【
図7】同トーチ支持枠体のトーチ取付部にガス切断トーチのヘッド部を取り付けた状態を示す要部破断側面図である。
【
図8】同レール切断装置によるレール切断の第一段階を示す縦断正面図である。
【
図9】同レール切断装置によるレール切断の第二段階を示す縦断正面図である。
【
図10】同レール切断装置によるレール切断の第三段階を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係るレール切断装置について、図面を参照して具体的に説明する。このレール切断装置は、鉄道レール切断用であって、
図1に示すトーチ支持枠体1とガス切断トーチ2とから構成されている。
【0020】
トーチ支持枠体1は、
図1〜
図3,
図5,
図6に示すように、略正方形で下方に開く切欠部11を有する縦板部10の前面10a側に、該切欠部11の上側左寄りと左右両側の三カ所に位置して円筒状のトーチ取付部3A〜3Cが突設されると共に、該縦板部10の後面10b側に、上板部41と側板部42とでL字枠状をなすレール当接枠部4が切欠部11の上縁から左縁上部にわたって沿う配置で突設されている。そして、三カ所のトーチ取付部3A〜3Cに共用する2個のキャップ8が付属している。また、レール当接枠部4には、上板部41の右端の前後両側に一対のブラケット部43,43が上向き突設され、両ブラケット部43,43間に橋架した枢支ピン9を介して、弧状のクランプアーム5が上部寄り位置で縦方向に回動自在に枢支されると共に、このクランプアーム5の上端部5bに設けたねじ筒部51に上方から操作ねじ軸6が螺装され、該操作ねじ軸6の下端6aがレール当接枠部4の上板部41の上面4aに当接している。
【0021】
なお、縦板部10の上端には手提げ用の把手12が固着され、操作ねじ軸6の上端には捻回用のハンドル部6bが設けてある。また、縦板部10、トーチ取付部3A〜3C、レール当接枠部4、クランプアーム5、操作ねじ軸6、キャップ8はいずれも鋼鉄製であり、レール当接枠部4は縦板部10に溶接されている。
【0022】
トーチ取付部3A〜3Cは同一の寸法形状であって、
図2〜
図4に示すように、それぞれ円筒状本体30の後端中央から後方へ突出するボルト部33を有しており、該ボルト部33を縦板部10に設けたボルト挿通孔13に挿通して、後方から蝶ねじ34を螺合緊締することにより、縦板部10に止着されている。そして、各円筒状本体30は前方に開くトーチ保持孔31を有しており、該トーチ保持孔31内には3個の軸受32がスナップリング33を介して抜出不能に嵌装されている。なお、
図2に示すように、縦板部10の左右両側下部にはボルト挿通孔13が上下2個ずつ設けてあり、切断対象のレールサイズの大小に応じて左右のトーチ取付部3B,3Cの止着位置を上下に変更できるようになっている。
【0023】
キャップ8は、
図4に示すように、円形の基壁部8aと周壁部8bとで構成され、基壁部8aの内面側に円形凸部8cが一体形成されており、該円形凸部8cと周壁部8bとの間にリング状のマグネット80が嵌着されている。この嵌着されたマグネット80の端面は周壁部8bの端縁よりも低位にあり、また周壁部8bの内径はトーチ取付部3A〜3Cの円筒状本体30の外径より僅かに大きく設定されており、
図4の仮想線で示すように、該キャップ8を各トーチ取付部3A〜3Cに嵌着したとき、その前端面3aにマグネット80が磁力吸着すると共に、周壁部8bが円筒状本体30に外嵌する。
【0024】
レール当接枠部4は、
図3及び
図5に示すように、上板部41の下面側の前後両側部が下方に膨出し、縦板部10の切欠部11の上縁よりも若干低いレール上面当接部41a,41aを構成すると共に、側板部42の下縁側も該切欠部11の左縁よりも若干内側に膨出し、その内面側が前後方向全長にわたる垂直面をなすレール側面当接部42aを構成している。なお、枢支ピン9は、クランプアーム5の両側へ突出する円筒状のボス部52がレール当接枠部4の両ブラケット部43,43間に配置した状態で、両ブラケット部43,43のピン挿通孔43a(
図2参照)及び該ボス部52に挿通されると共に、その後部周面に設けた平面部9aに、後側のブラケット部43の上端に開口したねじ孔43bに螺装したロックねじ45を押接することにより、後方抜出不能に保持されている。
【0025】
一方、ガス切断トーチ2は、
図1に示すように、一端側に火口ノズル2aが突出した円筒状のヘッド部21が燃料ガス供給管22及び酸素供給管23に対して略直角に接続されており、該ヘッド部21に取付枠70を介して枢支軸7が火口ノズル2aの火炎出射方向に対する直交方向で且つ燃料ガス供給管22及び酸素供給管23の管長方向と逆方向に突設されている。この枢支軸7は、トーチ取付部3A〜3Cのトーチ保持孔31つまり軸受32の内周に適嵌する径に設定されている。
【0026】
取付枠70は、一端側の開裂筒部71をヘッド部21に外嵌し、その開裂の両側に突出する突片71a,71a間に貫通させたボルト73に蝶ねじ74を螺合緊締することで、該ヘッド部21に固定されている。また、該取付枠70の火口ノズル2aに近い他端側には円盤部72が溶接固着され、この円盤部72に枢支軸7が同心状に固着されている。なお、酸素供給管23は切断用酸素供給管23aと予熱用酸素供給管23bとに分岐しており、切断用酸素供給管23aにはレバー式の開閉バルブ24が介装されると共に、予熱用酸素供給管23bと燃料ガス供給管22にはねじ式の流量調整バルブ25が介装されている。
【0027】
上記構成のレール切断装置によって鉄道レールを切断するには、
図5及び
図6に示すように、まずレールRに対し、上方からトーチ支持枠体1を縦板部10の切欠部11に該レールRが嵌入するように跨嵌させ、レール当接枠部4のレール上面当接部41a,41aを該レールR上に載せる。このとき、クランプアーム5は、予めねじ筒部51に対する操作ねじ軸6の螺装度合を浅くすることで、下端5aが切欠部11の右側方に退避した状態になっている。なお、レールRは図示の如く厚肉の頭部R1と薄肉縦板状の脚部R2と巾広の底板部R3からなるが、このレールRに跨嵌したトーチ支持枠体1は、切欠部11の深さ設定により、縦板部10が該レールRの底板部R3から浮き離れた状態にある。
【0028】
かくして該トーチ支持枠体1をレールRに跨嵌させたのち、操作ねじ軸6を螺装度合が深くなる方向に回転操作することにより、クランプアーム5をクランプ方向に回動させ、その下端5aをレールRの右側面Rcに押接させる。この押接に伴い、レールRの頭部R1の左側面Rbがレール当接枠部4のレール側面当接部42aに押接し、このレール側面当接部42aとクランプアーム5の下端5aとの間で該レールRを挟着することにより、トーチ支持枠体1が該レールRに固定される。この固定状態では、縦板部10から後方へ突設されたレール当接枠部4が、レールRの頭部R1の左側面Rbに対してレール側面当接部42aで面接触ないし線接触し、また該頭部R1の上面Raに対してもレール上面当接部41a,41aによって前後二カ所で当接するから、縦板部10は面方向がレール長手方向に直交する垂直姿勢に確実に保持される。
【0029】
次に、このレールRに固定したトーチ支持枠体1の三カ所のトーチ取付部3A〜3Cに対し、順次にガス切断トーチ2を取り付けて三段階のガス切断操作を行う。この三段階のガス切断操作の順序については特に制約はないが、以下では第一段階で右側のトーチ取付部3C、第二段階で左側のトーチ取付部3B、第三段階で上側のトーチ取付部3Aを用いるものとして説明する。
【0030】
トーチ支持枠体1に対するガス切断トーチ2の取り付けは、
図7に示すように、トーチ取付部3A〜3Cのトーチ保持孔31に、ヘッド部21の枢支軸7を基端まで挿嵌するだけでよい。これにより,該枢支軸7の基端周囲の環状段部7aが最も外側の軸受32の端面に当接し、もってヘッド部21が前後方向に位置決めされた状態で回転自在に保持される。この取付状態において、枢支軸7の軸方向が火口ノズル2aの火炎出射方向に直交しているから、ヘッド部21の回転に伴う火口ノズル2aからの火炎放射の軌跡は、その回転軸に対して直交する平面に沿って移動することになる。
【0031】
第一段階のガス切断操作では、
図8に示すように、トーチ支持枠体1の右側のトーチ取付部3Cにガス切断トーチ2のヘッド部21を装着すると共に、他のトーチ取付部3A,3Bにはキャップ8を嵌着しておく。そして、図示仮想線の如くヘッド部21の火口ノズル2aが下向きの姿勢から、火炎Fを噴射しつつ、該ヘッド部21を図示実線の如く火口ノズル2aが左斜め下向きになる姿勢まで略45°右旋回させることにより、レールRの底板部R3の右側半部を切り込む。次いで、左側のトーチ取付部3Bのキャップ8を取り外し、右側のトーチ取付部3Cから抜出したヘッド部21を左側のトーチ取付部3Bに装着する共に、取り外したキャップを右側のトーチ取付部3Cに嵌着する。そして、第二段階のガス切断操作として、
図9に示すように、ヘッド部21を図示仮想線の如く火口ノズル2aが下向きの姿勢から図示実線の如く右斜め上向きになる姿勢まで、火炎Fを噴射しつつ略70°左旋回させることにより、レールRの底板部R3の残る左側半部から脚部R2の上部まで切り込む。しかるのち、同様に上側のトーチ取付部3Aのキャップ8を取り外してヘッド部21を装着し、該キャップを左側のトーチ取付部3Bに嵌着した上で、第三段階のガス切断操作として、
図10に示すように、ヘッド部21を図示実線の如く火口ノズル2aが下向きの姿勢から図示仮想線の如く右斜め下向きになる姿勢まで、火炎Fを噴射しつつ略45°左旋回させてレールRの残る頭部R1を溶断することにより、該レールRの切断を完了する。
【0032】
このようなガス切断では、三カ所のトーチ取付部3A〜3Cにおいて、ガス切断トーチ2のヘッド部21の保持位置が自ずとレール長手方向の同一位置に定まるため、三方向からの切込み位置が精度よく一致し、加えて三方向からの火炎放射の軌跡がレール長手方向に直交する面内に納まるから、切断面に段差や角度差を生じず、従来のような修正のための切断後の研削加工も不要となる。しかも、トーチ取付部3A〜3C間でのガス切断トーチ2の付け替えは、トーチ取付部3A〜3Cのトーチ保持孔31に対してヘッド部21の枢支軸7を挿脱するだけでよく、その操作を極めて迅速に行えるから、三カ所のトーチ取付部3A〜3Cを順次移行する間の時間的ロスが非常に少なくなり、もって従来に比較して切断能率が格段に向上する。
【0033】
また、各トーチ取付部3A〜3Cにおけるガス切断はガス切断トーチ2のヘッド部21を回動操作するだけでよく、前記のトーチ取付部3A〜3C間でのガス切断トーチ2の付け替えを含め、操作的に極めて簡単であり、その作業に熟練を要しない。とりわけ、実施形態のようにトーチ取付部3A〜3Cのトーチ保持孔31内に軸受32を嵌装した構成では、ヘッド部21を円滑に回動操作できるから、レール切断の精度及び作業能率がより向上する。
【0034】
更に、実施形態のように、レールRを三方向からのガス切断によって順次に切り込んでゆく際、三カ所のトーチ取付部3A〜3Cの内、ガス切断トーチ2のヘッド部21を取り付けていない不使用の二カ所にキャップ8を嵌着する構成とすれば、切断部位から飛散するスラグが該二カ所のトーチ取付部のトーチ保持孔31内や前端部3aに付着するのを防止できる。従って、これら二カ所のトーチ取付部を次に使用する際、付着したスラグによるガス切断トーチ2のヘッド部21の保持位置や保持姿勢の狂いが回避され、もって高い切断精度を確保できる。加えて、実施形態として例示したように、キャップ8がマグネット80によってトーチ取付部3A〜3Cの前端部3aに磁力吸着するものとすれば、レールRを三方向から順次にガス切断してゆく際、トーチ取付部3A〜3C間での該キャップ8の付け替えを容易に迅速に行うことができ、もって切断能率がより向上する。
【0035】
一方、このレール切断装置におけるトーチ支持枠体1は、切欠部11を有する縦板部10の前面10a側にトーチ取付部3A〜3Cを設け、同後面10b側にレール当接枠部4及びクランプアーム5と操作ねじ軸6の如き押接手段を設けただけの簡単な構造であるから、容易に且つ安価に製作できると共に、故障しにくく耐久性に優れ、また軽量であるために施工現場での取り扱い及び持ち運びを楽に行えるという利点がある。
【0036】
なお、実施形態ではクランプアーム5が縦方向に回動する構成を例示したが、該クランプアーム5は先端側がレールRの側面に対して離接方向に回動可能であればよく、例えば横方向(水平方向)に回動する構成も採用可能である。また、クランプアーム5をレールRに押接させる上で、例示した操作ねじ軸6以外の種々の押接手段も採用できる。ただし、実施形態のように、レール当接枠部4にクランプアーム5を枢支ピン9を介して縦方向に回動可能に枢着し、そのねじ筒部51に螺装した操作ねじ軸6の先端6aをレール当接枠部4に当接した構成では、該操作ねじ軸6の回転操作により、クランプアーム5の先端5a側をレールRの他側側面Rcに強く押接して、トーチ支持枠体1を確実に該レールRに固定できると共に、この固定状態を容易に解除できるという利点がある。
【0037】
本発明のレール切断装置は、例示した鉄道レールの切断に限らず、ハンガーレールを含む各種走行軌条を構成するレールをガス切断するのに使用できる。また、切断対象のレールRは、頭部R1を上向きにして配設されるもの以外に、該頭部R1を横向きや下向きとして配設されるものでもよい。しかして、トーチ支持枠体1における縦板部10の切欠部11は、適用するレールの断面形状及びサイズに応じて、該レールを跨嵌できる形状及び寸法に設定すればよい。更に、トーチ支持枠体1の各構成部材の材質は例示した鋼鉄に限らず、種々の金属やセラミックスを採用できるが、キャップ8をマグネット80を介して磁力吸着させる構成では該キャップ8及びトーチ取付部3A〜3Cに磁性金属を用いる必要がある。その他、本発明のレール切断装置としては、トーチ支持枠体1における縦板部10及びレール当接枠部4の形状、縦板部10に対するトーチ取付部3A〜3Cの止着構造、クランプアーム5の形状及び枢支構造、ガス切断トーチ2のヘッド部21に対する枢支軸7の取付構造等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 トーチ支持枠体
10 縦板部
10a 前面
10b 後面
11 切欠部
2 ガス切断トーチ
21 ヘッド部
3A〜3C トーチ取付部
3a 前端部
31 トーチ保持孔
32 軸受
4 レール当接枠部
5 クランプアーム
5a 下端(先端)
51 ねじ筒部
6 操作ねじ軸(押接手段)
7 枢支軸
8 キャップ
80 マグネット
9 枢支ピン
F 火炎
R レール
Ra 上面
Rb 左側面(一側側面)
Rc 右側面(他側側面)