(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来技術の
図1Aは、アナログ入力電圧V
INをデジタル出力信号D
0UTに変換するために従来のSARアルゴリズムを実行する基本的周知のシングルエンドSAR ADCの簡略図である。例えばDavid Johns及びKen Martin著の「アナログ集積回路設計」(1997年、John Wiley&Sons,Inc社)の
図13.5、13.6、及び13.7、及び関連するテキストを参照されたい。
【非特許文献1】"Analog IntegratedCircuit Design" by David Johns and Ken Martin (1997 John Wiley & Sons,Inc.)
【0003】
従来技術の
図1AのSAR ADCは入力電圧V
INを受け取るサンプル/ホールド回路19を含む。サンプル/ホールド回路19の出力はコンパレータ20の(+)入力に印加される。コンパレータ20の出力23は、SAR/制御ロジック回路要素21の入力に印加され、SAR/制御ロジック回路要素21は基本的SARアルゴリズムを制御して連続的にN個のビット、b1、b2...bNを生成する。N個のビット、b1、b2...bNは、その出力電圧V
DACをV
INに正確に等しくさせるように、DAC16を制御する。アナログデジタル変換プロセスの終わりに、SAR/制御ロジック21は「変換終了」信号EOCを生成し、N個のビット、b1、b2...bNは、V
INが変換されたデジタル出力信号D
OUTとして取り扱われ得る。
【0004】
サンプル/ホールド回路19の出力はコンパレータ20によってV
DACと比較される。コンパレータ20の出力は、SAR/制御ロジック21に、ビット、b1、b2、...bNの値をSARアルゴリズムに従って決定させる。その方式は、SAR変換サイクルが進行するに連れて、DAC16に導体13のV
DACの値をV
INの値に徐々に近づけさせるような方式で行なう。基本的SAR変換プロセスはサンプル及びホールド動作が完了した後に開始する。最初にビットb1が「1」に設定され、他のビット、b2、b3...bNは「0」に設定される。DAC16は値V
REF/2に等しい中間レベルの「ハーフボルテージ」を生成する。この値と、サンプリングされた入力信号V
INとが比較される。V
REFは、V
INのフルスケール値を表す。コンパレータ20は、V
INがV
DACより大きい場合、ビットb1の最終値を「1」に設定させ、そうでない場合、b1は「0」に設定される。いずれの場合も残りのビットb2、b3...bNは「0」に設定される。次の変換サイクルでは、SARアルゴリズムはコンパレータ20に同様にしてビットb2を試験させる。DAC16は、サンプリングされた入力信号V
INを比較するためのV
DACの調整値を生成する。コンパレータ20は、V
INがV
DACより大きい場合、ビットb2の最終の値を「1」に設定させ、そうでない場合は、b2は「0」に設定される。いずれの場合も、残りのビットb3、b4...bNは「0」に設定される。それぞれ残りのビットb3、b4...bNの各々について残りのビットサイクルの各々の間、本質的に同じ手順が繰り返される。
【0005】
最も近い従来技術は、本明細書に参照として組み込まれる2003年12月23日、Mueckらに発行された米国特許第6,667,707号、発明の名称「バイアス又は基準電圧電力消費なしに信号を同期サンプリングする能力を備えるアナログデジタルコンバータ」を含むと考えられる。本明細書の従来技術の
図1Bは、本質的に、Mueckらの特許の
図4と同じであり、従来技術の
図1AのSAR ADCの改善された差動CDAC実装を示す。
【特許文献1】米国特許第6,667,707号
【0006】
従来技術の
図1Bにおいて、差動入力電荷再分配SAR ADCシステム300が、同相モードバイアス電圧Vcmに関して、一対の入力電圧Vinp及びVinnをサンプリングする。SARアルゴリズム/エンジンの制御下で、出力OUTにおいて一連のバイナリ決定が生成され、それらはVrefp−Vrefnのデジタル等価に対応する。ADCシステム300は、2つのDAC、DAC−P及びDAC−N、コンパレータ32、及び、DACを駆動するためのSARエンジン(図示せず)を含む。なお、CDACアレイは、入力電圧に応答してコンパレータ入力においてCDAC出力電圧を提供するビット決定「フィードバック」機能のために用いられることに加えて、従来技術の
図1Aのサンプル/ホールド回路19のサンプル/ホールド機能を実行することに留意されたい。この例では、各DACは、6ビットバイナリ加重キャパシタアレイ34P、34Nを含み、各アレイ34P、34Nの総キャパシタンスはCである。DACは、それぞれのDAC入力をVinp/nに接続するためのスイッチの2つの対応セット36P、36N、及びそれぞれのDAC入力をVrefp/nに接続するための対応するセット38P、38Nを更に含み、また、DAC出力、TOP−P、TOP−NをVcmに接続するためのスイッチ20P、20Nを更に含む。加重キャパシタアレイの各々、即ち、DAC−Nに関連する34N及びDAC−Pに関連する34Pは、キャパシタC1、C2、C3、C4、C5、C6、及びC7を含み、それらはC1=C/2、C2=C/4、C3=C/8、C4=C/16、C5=C/32、C6=C/64、及びC7=C/64のキャパシタンスを有する。これらの合計はおよそCに等しい。DAC−Nに関連するスイッチセット36N及びDAC−Pに関連するスイッチセット36Pの各々は、スイッチS1、S2、S3、S4、S5、及びS6を含む。DAC−Nに関連するスイッチグループ38N及びDAC−Pに関連するスイッチグループ38Pの各々は、スイッチS21、S22、S23、S24、S25、及びS26を含む。DAC出力TOP−P、TOP−Nは入力電圧をコンパレータ32に提供する。TOP−P、TOP−Nに直接接続されたキャパシタのプレートは「上部プレート」と称され、他のキャパシタプレートは「下部プレート」と称される。Vcmへのスイッチは、「上部プレートスイッチ」20P及び20Nと称される。
【0007】
動作中、入力電圧が入力キャパシタを横切る電荷としてサンプリングされる。上部プレートスイッチ20P及び20Nが閉のときに、DAC下部プレートがスイッチ及び36P、36Nを介して入力電圧Vinp及びVinnに接続されると、DACは「入力をサンプリングしている」と言われ、上部プレートスイッチが開になる瞬間に、DACは「サンプルを取った」と言われる。入力電圧をサンプリングした後、SAR ADC300は反復SARプロセスを実行する。SAR反復プロセスは、例として回路のP側を用いて、キャパシタアレイ34P、キャパシタC1...C6の各々の下部プレートを、スイッチバンク36Pの対応するスイッチS1...S6、及びスイッチバンク38Pの対応するスイッチS21...S26を介して、正の基準電圧Vrefp又は負の基準電圧Vrefnのいずれかに接続することにより開始する。各キャパシタ、例えばC4、はADC300のデジタル出力ワードのビットの1つを表す。その最上位ビット(MSB)はキャパシタC1に対応し、その最下位ビット(LSB)はキャパシタC6に対応する。
【0008】
従来技術の
図1Bでは、関連するキャパシタ、例えばC4、の下部プレートが正の基準電圧Vrefpに接続されるとき、ビットは2進値1を有し、キャパシタ、例えばC4、の下部プレートがスイッチバンク38を介して負の基準電圧Vrefnに接続されるとき、ビットは2進値0を有する。この例では、スイッチS4はキャパシタC4をVrefセットに接続するように切り替えられ、C4が論理1又は0のどちらを表すかに応じて、スイッチS24はキャパシタC4をVrefp又はVrefnのいずれかに接続するように整合される。MSBキャパシタから始まりLSBキャパシタで終わるこのような一連のSAR反復を介して、各反復の間、上部プレート電圧TOP−P及びTOP−Nが各反復に収斂するように、各キャパシタはVrefp又はVrefnのいずれかに切り替えられる。反復が完了すると、最後に使用されたデジタルワード(キャパシタが接続されたビットの値)がADC300の出力として選択される。
【0009】
DAC上部プレートはVcmにサンプリングされる。これは任意であるが一定の電圧であり、また、ゼロパワーサンプリングの場合はV
SSであり得る。サンプリング中、TOP−P及びTOP−Nは上部プレートスイッチによっておよそVcmに公称上ホールドされる。
【0010】
従来技術の
図1Bでは、入力電圧をサンプリングした後であるがSARプロセスを開始する前に、コンパレータ出力がSARアルゴリズムに2つのDAC出力が収斂するようにDAC入力を改変するように命令する。DACの同相モード出力電圧は、反復の幾つかの間のみブーストされる。コンパレータへの入力は、反復の幾つかの間、同相モード電圧ブーストをコンパレータ入力に結合することによって容量性ブーストされ、それによって、サンプリングされた電荷の基板ダイオードを介したリークを防止する。しかしながら、SARプロセスが進行するに連れて、TOP−PとTOP−Nとの間の電圧差が徐々に小さくなり、DACの出力ノードの電圧が基板ダイオードをオンにすることができないポイントまで小さくなり、その後、コンパレータ入力に対する容量ブーストが取り除かれる。
【0011】
従来技術の
図1Bに示されるもののような従来のゼロパワーサンプリングSAR ADCの場合は、CDAC上部プレートの加算ノード電圧は、供給又は接地電圧のいずれをも大きく上回って振幅し得る。従来技術の
図1BのSAR ADC300では、これによってCDACキャパシタから再配分された電荷のリークが起こり、上部プレートスイッチに関連する基板ダイオードを介して放電し、変換エラーを引き起こす。従来技術の
図1Bでは、2つのスイッチがコンパレータ32の入力でVcmに接続される。接合から基板へのリークを防ぐために、加算ノード電圧を許容不可能な範囲外値から許容可能な値に、即ち、V
SSから約100mVを超えて下回らない値までブースト/シフトすることによって、コンパレータ32の入力における加算ノード電圧を許容可能な範囲に維持するように、キャパシタ311P及び311N、及び、スイッチ313P及び313Nを含む、関連する追加の回路要素をブーストすることが必要とされる。また、多数の開始ビットサイクルのためにブーストキャパシタを動作的に接続し、その後、ブーストキャパシタを動作的に切断することによってブースト/シフト動作を適合するように従来のSARアルゴリズムが改変される。加算ノードの同相モード電圧を許容範囲内に維持するために、加算ノード電圧が監視及び制御されなければならない。
【0012】
従って、加算導体に固定同相モード電圧成分を提供するスイッチドキャパシタ回路及び方法に対する満たされていない必要性がある。それがなければその電圧は通常動作中、安全動作電圧範囲を超える恐れがある。
【0013】
また、アナログ加算電圧の範囲外値に起因するアナログ加算ノードからの集積回路の基板ダイオードを介したリークを防ぐために、コンパレータの入力においてアナログ加算電圧をブーストすることを必要としないSAR ADC及び方法に対する満たされていない必要性が存在する。
【0014】
また、アナログ加算電圧の範囲外値に起因するアナログ加算ノードからの集積回路の基板ダイオードを介したリークを防ぐために、コンパレータの入力におけるアナログ加算電圧のブーストを必要とせず、且つ、最近の従来技術のSAR ADCよりもシンプルで低コストSAR ADC及び方法に対する満たされていない必要性が存在する。
【0015】
また、アナログ加算電圧の範囲外値に起因するアナログ加算ノードからの集積回路の基板ダイオードを介したリークを防ぐために、コンパレータの入力におけるアナログ加算電圧のブーストを必要とせず、且つ、通常のSAR ADC決定プロセスの改変を必要としないSAR ADC及び方法に対する満たされていない必要性が存在する。
【0016】
また、アナログ加算ノードの基板ダイオードからのリークを防ぐために、従来技術のコンパレータの入力において、アナログ加算電圧のキャパシタブースティングの使用に関連するSNR(信号対雑音比)の低下を防止するSAR ADC及び方法に対する満たされていない必要性が存在する。
【0017】
また、ADC、スイッチドキャパシタフィルタ、スイッチドキャパシタ積分器、又は、スイッチドキャパシタ増幅器などの回路の加算導体の同相モード電圧を監視及び制御するための特殊な回路要素を提供する必要性を回避するための満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0018】
加算導体に所定の同相モード電圧成分を提供する、スイッチドキャパシタ回路及び方法を提供することが本発明の一つの目的である。提供されなければその電圧は通常動作中に安全動作電圧範囲を超える恐れがある。
【0019】
導体の電圧が安全動作範囲を超えることを防止するために、動作中に、任意の導体の電圧をブーストする必要がなく、入力同相モードの幅広い範囲を適合可能なスイッチドキャパシタ回路を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0020】
アナログ加算電圧の範囲外値に起因するアナログ加算ノードからの集積回路の基板ダイオード又は他の寄生的リーク通路(MOSトランジスタ等)を介したリークを防ぐために、そのコンパレータの入力においてアナログ加算電圧のブーストを必要としないADC及び方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0021】
アナログ加算電圧の範囲外値に起因するアナログ加算ノードからの集積回路の基板ダイオードを介したリークを防ぐために、コンパレータの入力においてアナログ加算電圧のブーストを必要とせず、且つ、最近の従来技術のSAR ADCよりもシンプルで低コストのSAR ADC及びその方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0022】
ADCに印加されたアナログ入力信号の同相モード電圧とは関係なく、コンパレータ入力において最適な同相モード電圧を得るためのADCのためのゼロパワーサンプリング方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0023】
アナログ加算電圧の範囲外値に起因するアナログ加算ノードからの集積回路の基板ダイオードを介したリークを防ぐためにコンパレータの入力においてアナログ加算電圧のブーストを必要とせず、且つ、通常のSAR ADC決定プロセスの改変を必要としない、SAR ADC及びその方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0024】
アナログ加算ノードからの基板ダイオードを介したリークを防ぐために従来技術のコンパレータの入力におけるアナログ加算電圧のキャパシタブースティングの使用に関連するSNR(信号対雑音比)の低下を防止するSAR ADC及び方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0025】
同相モード電圧を許容範囲内に維持するように加算導体の同相モード電圧を監視及び制御するために従来技術で必要とされるような特別な回路要素を提供する必要性を回避することが本発明のもう1つの目的である。
【0026】
簡潔に説明すると及び一実施形態に従って、本発明は、第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の上部プレートを加算導体(13)を介して第1の基準電圧(V
SS)に切り替え、その下部プレートを第1の信号に切り替えることによって、第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)に第1の信号(V
IN+)をサンプリングするスイッチドキャパシタ回路(10、32、又は32A)を提供する。第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の上部プレートを第2の信号に切り替え、その下部プレートを第1の基準電圧に切り替えることによって、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)に第2の信号(V
IN−)がサンプリングされる。サンプリングの後、第2のキャパシタの上部プレートが第1のキャパシタの上部プレートに結合される。第2のキャパシタの下部プレートは第1の基準電圧に結合される。第1のキャパシタの下部プレートは第2の基準電圧(V
DD又はV
REF)に結合され、それによって、第1の導体(13)からの同相モード入力電圧成分の少なくとも一部をキャンセルし、サンプリングされた差動電荷を加算導体にホールドし、そこに所定の同相モード電圧を確立し、加算導体が、そこからの電荷のリークを許容する電圧を有することを防止する。
【0027】
一実施形態において、本発明はスイッチドキャパシタ回路(10、32、又は32A)を提供する。スイッチドキャパシタ回路(10、32、又は32A)は第1のステージ(16又は33)を含む。第1のステージ(16又は33)は、第1(V
IN+)及び第2(V
IN−)の入力信号を受け取り、第1(C
IN1)、第2(C
IN2)、第3(C
IN3)、及び第4(C
IN4)の入力キャパシタを含み、スイッチの第1の配置を更に含む。スイッチの第1の配置は、第1のフェーズの間、(1)第1の入力信号(V
IN+)を第1の入力キャパシタ(C
IN1)の下部プレートと第4の入力キャパシタ(C
IN4)の上部プレートとに結合し、(2)第2の入力信号(V
IN−)を第2の入力キャパシタ(C
IN2)の下部プレートと第3の入力キャパシタ(C
IN3)の上部プレートとに結合し、そして、(3)第1(C
IN1)及び第2(C
IN2)の入力キャパシタの上部プレートを第1の基準電圧(V
SS)に結合するように構成される。第3(C
IN3)及び第4(C
IN4)の入力キャパシタの下部プレートが、第1の供給電圧(V
SS)に結合され、従って、第1(V
IN+)及び第2(V
IN−)の入力信号が第1のフェーズの間サンプリングされる。第2のステージ(20又は34)が、第1(V
OUT+)及び第2(V
OUT−)の出力信号を生成するように第1の加算導体信号(V
A+)及び第2の加算導体信号(V
A−)を処理するために第1のステージ(16又は33)に結合された第1(13)及び第2(14)の加算導体を有する。第1のステージ(32)はスイッチの第2の配置を更に含み、スイッチの第2の配置は、第2のフェーズの間、第1(C
IN1)及び第2(C
IN2)の入力キャパシタの下部プレートを第2の基準電圧(V
REF又はV
DD)に結合し、(1)第1の入力キャパシタ(C
IN1)の上部プレートを第3の入力キャパシタ(C
1N3)の上部プレートに結合し、そして、(2)第2の入力キャパシタ(C
IN2)の上部プレートを第4の入力キャパシタ(C
IN4)の上部プレートに結合するように構成され、そのため、第1(V
A+)及び第2(V
A−)の加算導体信号からの第1(V
IN+)及び第2(V
IN−)の入力信号に関連する同相モード成分の少なくとも一部をキャンセルし、第1(13)及び第2(14)の加算導体に所定の同相モード電圧を確立し、それによって、第1の入力信号(V
IN+)に関連する電荷が第1(C
IN1)及び第3の入力キャパシタ(C
IN3)から第1の加算導体(13)に伝達されると、且つ、第2の入力信号(V
IN−)に関連する電荷が第4(C
IN4)及び第2(C
IN2)の入力キャパシタから第2の加算導体(14)に伝達されると、第1(V
A+)及び第2(V
A−)の加算導体信号を所定の安全動作範囲内に維持するようにする。
【0028】
一実施形態において、スイッチドキャパシタ回路はSAR ADC(10)を含み、SAR ADC(10)は、多数のビット試験動作の各々の間に第1の加算導体(13)上の第1の加算導体信号(V
A−)と第2の加算導体(14)上の第2の加算導体信号(V
A+)を比較するための第2のステージ(20又は34)におけるコンパレータ(20)を含む。第1のステージ(16又は33)の第1のCDAC(16)は、MSBキャパシタ(C3)と、各々が第1の加算導体(13)に結合される第1の端子を有する複数のLSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)とを含むバイナリ加重キャパシタの第1のグループと、第1のグループの対応するキャパシタの第2の端子を、第1の基準電圧(V
SS)又は第2の基準電圧(V
REF)に選択的に結合するためのスイッチの第1のグループ(S1、2...N、S
DUMMY)とを含む。第1のグループのLSBキャパシタの第2の端子は、サンプリングの間、第1の入力信号(V
IN+)に選択的に結合される。SAR及び制御回路要素(
図1の21)が、コンパレータ(20)によって生成された出力信号(23、24)に応答して、第1のグループのスイッチ(S1、2...N、S
DUMMY)を制御する。サンプリング動作が完了した後、且つ、第1のビット(b1)の試験の前に、SAR及び制御回路要素(21)は、第1のグループのスイッチ(S1、2...N、S
DUMMY)を制御して、第1のグループのMSBキャパシタ(C3)及びLSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第2の端子を、第1(V
SS)及び第2(V
REF)の基準電圧の間に直列に接続し、第1の加算導体(13)に所定の同相モード電圧信号成分(V
CM)を生成する容量分圧器として機能させる。第1の加算導体(13)上の同相モード電圧信号成分(V
CM)は、第1(V
SS)及び第2(V
REF)の基準電圧の間の中途の電圧を有する。説明される一実施形態において、ビット試験動作は、SARアルゴリズムに従ってコンパレータ(20)及びSAR及び制御回路要素(21)に応答して実行される。
【0029】
一実施形態において、第1のスイッチ(SW5)は、サンプリング動作の間、第1の加算導体(13)を第1の基準電圧(V
SS)に結合する。第1のCDAC(16)は、サンプリングの後、且つ、第1のビット(b1)の試験の前に、電荷ホールド動作の間、第1の加算導体(13)をMSBキャパシタ(C3)の第1の端子に結合する第2のスイッチ(SW3)を含む。
【0030】
一実施形態において、第2のCDAC(17)が、MSBキャパシタ(C2)と、各々が第2の加算導体(14)に第2の信号(V
A+)を生成するように結合された第1の端子を有する複数のLSBキャパシタ(C4=30−2、3...N、27)とを含むバイナリ加重キャパシタの第2のグループと、第2のグループの対応するキャパシタを第1の基準電圧(V
SS)又は第2の基準電圧(V
REF)に選択的に結合するためのスイッチ(S1、2...N、S
DUMMY)の第2のグループとを含む。第2のグループのLSBキャパシタの第2の端子が、サンプリング動作の間、第2の入力信号(V
IN−)に接続される。第1のグループのMSBキャパシタ(C3)の第1の端子が、サンプリング動作の間、第1の入力信号(V
IN−)を受け取るように結合され、第2のグループのMSBキャパシタ(C2)の第1の端子が、サンプリング動作の間、第2の入力信号(V
IN+)を受け取るように結合される。電荷ホールド動作が、第1のグループのMSBキャパシタ(C3)及びLSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)を用いて実行される。
【0031】
一実施形態において、第1のグループの第1のスイッチ(S1)が、サンプリングの間、第1のグループのMSBキャパシタ(C3)の第2の端子を第1の基準電圧(V
SS)に結合し、第1のグループの他のスイッチ(S2、3...N、S
DUMMY)が、サンプリングの間、第1のグループの、それぞれ、LSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第2の端子を第1の入力信号(V
IN+)に結合する。第1のグループの第1のスイッチ(S1)は、電荷ホールド動作の間、MSBキャパシタ(C3)の第2の端子を第1の基準電圧(V
SS)に結合し、第1のグループの他のスイッチ(S2、3...N、S
DUMMY)が、電荷ホールド動作の間、第1のグループのそれぞれのLSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第2の端子を第2の基準電圧(V
REF)に結合する。全てのビット試験動作の間、第1(V
A−)及び第2(V
A+)の信号が、第1(V
SS)及び第2(V
REF)の基準電圧の間に留まり、ビット試験が進行すると、所定の同相モード電圧信号成分(V
CM)に向かって収斂する。
【0032】
一実施形態において、アナログデジタルコンバータは完全差動アナログデジタルコンバータである。一実施形態において、スイッチドキャパシタ回路は、第2のステージ(34)に、積分器(35)、第1の積分キャパシタ(C
INTA)、及び第2の積分キャパシタ(C
INTB)を含むスイッチドキャパシタ積分回路(32)を含む。他の実施形態において、スイッチドキャパシタ回路は、第2のステージ(34A)に、増幅器(36)を含むスイッチドキャパシタ増幅回路(32A)を含む。
【0033】
一実施形態において、本発明は、第1(V
IN+)及び第2(V
IN−)の入力信号の差に等しい差動入力信号からサンプリングされた差動入力電荷のリークを防ぐための方法を提供する。この方法は、第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第1の端子(上部プレート)を、第1の導体(13)を介して第1の基準電圧(Vss)に切り替えること、及び第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第2の端子(下部プレート)を第1の入力信号(V
IN+)に切り替えることによって、第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)に第1の入力信号(V
IN+)をサンプリングすること;第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第1の端子(上部プレート)を第2の入力信号(V
IN−)に切り替えること、及び第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に切り替えることによって、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)に第2の入力信号(V
IN−)をサンプリングすること;サンプリング動作が完了した後、第1の導体(13)を第1の基準電圧(V
SS)から切り離すこと;及び、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第1の端子(上部プレート)を第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第1の端子(上部プレート)に結合するように、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第1の端子(上部プレート)を第1の導体(13)に切り替えること、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に切り替えること、及び第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第2の端子(下部プレート)を第2の基準電圧(V
DD又はV
REF)に切り替えることであって、それによって、第1の導体(13)からの同相モード入力電圧成分の少なくとも一部をキャンセルし、サンプルされた差動電荷を第1の導体(13)にホールドし、第1の導体(13)に所定の同相モード電圧成分を確立し、第1の導体(13)の電圧が、リークを発生させる値を有することを防ぐことを含む。
【0034】
一実施形態において、この方法は、第1の入力信号(V
IN+)と第2の入力信号(V
IN−)との差をデジタル信号(D
OUT)に変換することを含む。
【0035】
一実施形態において、この方法は、第1のグループのバイナリ加重LSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第1の端子(上部プレート)を、第1の加算導体(13)を介して第1の基準電圧(V
SS)に切り替えること、及び第1のグループのバイナリ加重LSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第2の端子(下部プレート)を第1の入力信号(V
IN+)に切り替えることによって、バイナリ加重LSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第1のグループの各々に第1の入力信号(V
IN+)をサンプリングすることを含み、バイナリ加重LSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第1のグループは第1のキャパシタ(C1)に含まれる。
また、この方法は、第1のMSBキャパシタ(C3)の第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に切り替えること、及び第1のMSBキャパシタ(C3)の第1の端子(上部プレート)を第2の入力信号(V
IN−)に切り替えることを含み、第1のMSBキャパシタ(C3)は第2のキャパシタ(C3)に含まれ、第1の導体(13)はコンパレータ(20)の第1の入力(−)に接続される。また、この方法は、第1のビット(b1)の試験の前に第1の導体(13)を第1の基準電圧(V
SS)から切り離すことを含む。また、この方法は、第1のMSBキャパシタ(C3)の第1の端子(上部プレート)を第1の導体(13)に切り替え、それによって第1のMSBキャパシタ(C3)の第1の端子(上部プレート)を第1のグループのバイナリ加重LSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第1の端子(上部プレート)に結合すること、第1のMSBキャパシタ(C3)の第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に切り替えること、及びLSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第1のグループの第2の端子(下部プレート)を第2の基準電圧(V
REF)に切り替えることを含む。またこの方法は、第1のMSBキャパシタ(C3)とLSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第1のグループとにそれぞれ対応するデジタル信号(D
OUT)の連続ビットを試験及び設定するために、SARアルゴリズムに従ってコンパレータ(20)及び各種スイッチを動作させることによってデジタル信号(D
OUT)を生成することを更に含む。
【0036】
一実施形態において、この方法は、コンパレータ(20)の第2の入力(+)を第1(V
SS)及び第2の基準電圧(V
REF)の間の中途にある基準電圧に結合することを含む。
【0037】
一実施形態において、この方法は、第2のグループのバイナリ加重LSBキャパシタ(C4=30−2、3...N、27)の第1の端子(上部プレート)を、第2の導体(14)を介して第1の基準電圧(V
SS)に切り替えること、及び第2のグループのバイナリ加重LSBキャパシタ(C4=30−2、3...N、27)の第2の端子(下部プレート)を第2の入力信号(V
IN−)に切り替えることによって、バイナリ加重LSBキャパシタ(C4=30−2、3...N、27)の第2のグループの各々の第1の端子(上部プレート)に第2の入力信号(V
IN−)をサンプリングすることを含む。また、この方法は、第2のMSBキャパシタ(C2)の第1の端子(上部プレート)を第1の入力信号(V
IN+)に切り替えること、及び第2のMSBキャパシタ(C2)の第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に切り替えることによって、第1の入力信号(V
IN+)を第2のMSBキャパシタ(C2)の第2の端子(下部プレート)にサンプリングすることを更に含む。また、この方法は、LSBキャパシタ(C4=30−2、3...N、27)の第2のグループの第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に切り替えること、第2のMSBキャパシタ(C2)の第1の端子(上部プレート)を第2の導体(14)に切り替えること、及び第2のMSBキャパシタ(C2)の第2の端子(下部プレート)を第2の基準電圧(V
REF)に切り替えることとを含む。
【0038】
一実施形態において、この方法は、第1の加算導体(13)に所定の同相モード電圧信号成分(V
REF/2)を生成させるように、第1のMSBキャパシタ(C3)とLSBキャパシタ(C1=29−2、3...N、26)の第1のグループとを容量分圧器として動作させることを含む。説明する一実施形態では、LSBキャパシタ(29−N)の最下位と同じキャパシタンスを有するダミーキャパシタ(26)が提供される。
【0039】
一実施形態において、本発明は、サンプリングされた入力電荷の集積回路基板ダイオード(25)を介したリークを防ぐために、第1(V
IN+)及び第2の入力信号(V
IN−)の差をデジタル信号(D
OUT)に変換するためのスイッチドキャパシタ回路(10、32、又は32A)を提供する。このスイッチドキャパシタ回路は、第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第1の端子(上部プレート)を、第1の導体(13)を介して第1の基準電圧(V
SS)に切り替えること、及び第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第2の端子(下部プレート)を第1の入力信号(V
IN+)に切り替えることによって、第1の入力信号(V
IN+)を第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)にサンプリングするための手段(
図1Aの21、及び
図2の16、又は
図9の33)と、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第1の端子(上部プレート)を第2の入力信号(V
IN−)に切り替えること、及び第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に切り替えることによって、第2の入力信号(V
IN−)を第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)にサンプリングするための手段(
図1Aの21、及び
図2の16、又は
図9の33)と、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第1の端子(上部プレート)を第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第1の端子(上部プレート)に結合するように、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第1の端子(上部プレート)を第1の導体(13)に結合し、第2のキャパシタ(C3又はC
IN3)の第2の端子(下部プレート)を第1の基準電圧(V
SS)に結合し、第1のキャパシタ(C1又はC
IN1)の第2の端子(下部プレート)を第2の基準電圧(V
DD又はV
REF)に結合するための手段であって、それによって、第1の導体(13)からの同相モード入力電圧成分の少なくとも一部をキャンセルし、サンプリングされた差動電荷を第1の導体(13)にホールドし、第1の導体(13)に所定の同相モード電圧成分を確立し、第1の導体(13)の電圧がリークを許容する値を有することを防止する、手段(
図2のSW3、又は
図9のS3A、B)とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図2を参照すると、SAR ADC10は、上側CDAC(キャパシタデジタルアナログコンバータ)16、下側CDAC17、及び従来のコンパレータ20を含む。また、SAR ADC10は、従来技術の
図1に示すSAR/制御ロジック21等の従来のSAR及び制御ロジック回路要素を含む。差動アナログ入力電圧V
IN+−V
IN−が入力導体9と11との間に印加される。
【0054】
上側CDAC16はN個のバイナリ加重キャパシタ29−1、2...N、ダミーキャパシタ26、N個のスイッチS1、S2...SN、及びダミースイッチS
DUMMYを含む。1つの実装において、Nは16に等しい(又は、例えば従来のスケーリングキャパシタが使用される場合は16に等しい)。キャパシタ29−1は上側CDAC16のMSBキャパシタであり、その「上部プレート」が導体15に接続され、その「下部プレート」がスイッチS1のポール端子に接続されている(なお、CDACキャパシタ対し
図2に示される記号「A」は、どのプレートが上部プレート」で、どのプレートが「下部プレート」かを示していることを留意されたい)。上側CDAC16の残りのキャパシタ29−2、3...Nは、「LSBキャパシタ」と称され、各々の上部プレートは、アナログ電圧V
A−を伝達しSARコンパレータ20の(−)入力に接続された第1の加算導体13に接続されている。上側CDAC16のキャパシタ29−1、2、3...Nは、それぞれ、C/2、C/4、...C/2
Nに等しいキャパシタンスを有する。上側CDAC16のダミーキャパシタ26は最下位LSBキャパシタ29−Nと同じキャパシタンスC/2
Nを有する(ダミーLSBキャパシタ26はSAR ADC10のLSB誤差をLSB値の二分の一以内に維持するために有用である)。加算導体13はSAR ADC10が製造される集積回路の基板に基板ダイオード25によって結合される。
【0055】
LSBキャパシタ29−2、3...Nは、それぞれスイッチS1、2...SNのポール端子に接続された下部プレートを有する。ダミーキャパシタ26の上部プレートは加算導体13に結合される。ダミーキャパシタ26の下部プレートはスイッチS
DUMMYのポール端子に接続される。スイッチSW5が加算導体13とV
SSとの間に接続される。導体15が、スイッチSW3によって上側加算導体13に結合され、また、スイッチSW1により入力導体11に動作的に接続される(なお、ダミーキャパシタ26及びそれに関連するスイッチS
DUMMYは任意選択的とし得ることが理解されるべきであろう。また、より加重の高い(MSB)キャパシタの幾つかのサイズを低減するために、従来のスケーリングキャパシタがCDACのセクション間に直列に結合されてもよい)。
【0056】
スイッチS1、2...Nの各々の第1の端子が、典型的に接地電圧(GND)である供給電圧V
SSに接続される。スイッチS1、2...Nの各々の第2の端子が基準電圧V
REFに接続される。スイッチS2、3...Nの各々の第3の端子が、V
IN+を受け取るために導体9に接続される。ダミースイッチS
DUMMYの第1、第2、及び第3の端子は、それぞれV
SS、V
REF、及びV
IN+に接続される。
【0057】
同様に、下側CDAC17は、N個のバイナリ加重キャパシタ30−1、2...N、ダミーキャパシタ27、N個のスイッチS1、S2...SN、及びダミースイッチS
DUMMYを含む。キャパシタ30−1は下側CDAC17のMSBキャパシタであり、その上部プレートが導体18に接続され、その下部プレートがスイッチS1のポール端子に接続される。下側CDAC17の残りのキャパシタ30−2、3...Nは、そのLSBキャパシタと称され、各々の上部プレートは、アナログ電圧V
A+を伝達し、コンパレータ20の(+)入力に接続された第2の加算導体14に接続される。下側CDAC17のキャパシタ30−1、2...Nは、それぞれ、C/2、C/4、...C/2
Nに等しいキャパシタンスを有する。下側CDAC17のダミーキャパシタ27は、C/2
Nに等しいキャパシタンスを有する。加算導体14は基板ダイオード28によって、SAR ADC10が作成される集積回路の基板に結合される。下側CDAC17のLSBキャパシタ30−2、3...Nの下部プレートは、それぞれ、スイッチS2、3...SNのポール端子に接続される。ダミーキャパシタ27の上部プレートは加算導体14に接続される。ダミーキャパシタ27の下部プレートは、スイッチS
DUMMYの1つの端子に接続される。スイッチSW6が加算導体14と供給電圧V
SSとの間に接続される。導体18は、スイッチSW4によって加算導体14に結合され、また、スイッチSW2によって入力導体9に動作的に接続される。スイッチS1、2...Nの各々の第1の端子がV
SSに接続される。スイッチS1、2...Nの各々の第2の端子が基準電圧V
REFに接続される。スイッチS2、3...Nの各々の第3の端子が、V
IN−を受け取るように導体11に接続される。ダミースイッチS
DUMMYの第1、第2、及び第3の端子は、それぞれ、V
SS、V
REF、及びV
IN−に接続される。
【0058】
SAR変換プロセスの間、上側CDAC16及び下側CDAC17の両方のスイッチS1、S2...SNを制御するためNビット信号b1、b2、...bNを生成するように、コンパレータ20の出力導体23及び24が、SAR及び制御ロジック回路要素(これは従来技術の
図1に示すSAR/制御ロジック21と同様であり得る)の入力に結合される。また、スイッチS
DUMMYはビット信号bNによって制御される。デジタルアナログ変換プロセスの最後のb1、b2、...bNの論理レベルがSAR ADC10のデジタル出力信号D
OUTを形成する。なお、V
A+又はV
A−のいずれかがV
SS/接地から約100mVを超えて下に行く場合は、上側CDAC16のスイッチSW3、SW5、及びSW1、及び下側CDAC17のスイッチSW4、SW6、及びSW2に関連する(ダイオード25及び28及び
図2等の)集積回路基板ダイオードは、僅かに順方向バイアスがかけられ、変換エラーに繋がる恐れのある加算導体13及び/又は14からの電荷のリークを起こし得る。
【0059】
図2に示す上側CDAC16及び下側CDAC17の種々のスイッチの開/閉構成は、入力電圧V
IN+及びV
IN−のサンプリングの間用いられる。具体的には、入力サンプリング動作中、上側CDAC16のスイッチS1はキャパシタ29−1の下部プレートをV
SSに動作的に接続し、スイッチS2、3...N及びS
DUMMYはキャパシタ29−2、3...N及び26の下部プレートをV
IN+に接続する。同様に、入力サンプリング動作中、下側CDAC17のスイッチS1がキャパシタ30−1の下部プレートをV
SSに接続し、スイッチS2、3...N及びS
DUMMYはキャパシタ30−2、3...N及び27の下部プレートをV
IN+に接続する。サンプリング中、スイッチSW1、SW2、SW5、及びSW6は閉になり、スイッチSW3及びSW4は開になる。
【0060】
図3は、
図2に示すサンプリングプロセスの間サンプリングされた入力電圧V
IN+及びV
IN−に関連する電荷を「ホールド」又は保存する間に使用される、上側CDAC16及び下側CDAC17の種々のスイッチの異なる開/閉構成を示す。具体的には、上側CDAC16では、サンプリングされた電荷のホールド動作の間、スイッチS1はキャパシタ29−1の下部プレートをV
SSに動作的に接続し、スイッチS2、3...N及びS
DUMMYは、それぞれ、キャパシタ29−2、3...N及び26の下部プレートをV
REFに動作的に接続する。下側CDAC17では、サンプリングされた電荷のホールド動作の間、スイッチS1がキャパシタ30−1の下部プレートをV
REFに動作的に接続し、スイッチS2、3...N及びS
DUMMYは、それぞれ、キャパシタ30−2、3...N及び27の下部プレートをV
SSに動作的に接続する。サンプリングされた電荷のホールド動作の間、スイッチSW3及びSW4は閉になり、スイッチSW1、SW2、SW5及びSW6は開になる。
【0061】
図4は、
図2に示すようなサンプリング動作中の上側CDAC16及び下側CDAC17のスイッチ及びCDACキャパシタの構成を表す簡略化された等価回路を示す。
図4及び後述する
図5では、キャパシタC1は、上側CDACのLSBキャパシタ29−2、3...N及びダミーキャパシタ26の組み合わされたキャパシタンスを表す。キャパシタC2は下側CDACのMSBキャパシタ30−1を表す。キャパシタC3は上側CDACのMSBキャパシタ29−1を表し、キャパシタC4は、下側CDACのLSBキャパシタ30−2、3...N及びダミーキャパシタ27の組み合わされたキャパシタンスを表す。キャパシタC1、C2、C3、及びC4のキャパシタンスは全てCに等しいと仮定される(が、C1、C2、及びC4全てがCに正確に等しい必要はない。幾つかのケースでは、それらはCにほぼ等しいだけであり得る)。
【0062】
図4では、キャパシタC1の上部プレート及び下部プレートは、それぞれ、V
SS及びV
IN+に接続される。キャパシタC2の上部プレート及び下部プレートは、逆順に、それぞれ、V
IN+及びV
SSに接続される。同様に、キャパシタC4の上部プレート及び下部プレートは、それぞれ、V
SS及びVm
−に接続され、キャパシタC3の上部プレート及び下部プレートは、逆順に、それぞれ、V
IN−及びV
SS、に接続される(が、或いは、キャパシタC1及びC4の上部プレート、及びキャパシタC2及びC3の下部プレートがV
SS又は接地ではなくV
DDに接続されてもよい)。
【0063】
図5は、
図2に示すサンプリングが完了した後直ちに生じるサンプリングされた電荷のホールド中の、上側CDAC16及び下側CDAC17の種々のスイッチ及びCDACキャパシタの構成を表す簡略化された等価回路を示す。具体的には、
図5において、キャパシタC1の上部プレート及び下部プレートは、それぞれ、V
A−及びV
REFに接続される。キャパシタC2の上部プレート及び下部プレートは、それぞれ、V
A+及びV
REFに接続され、キャパシタC3の上部プレート及び下部プレートは、それぞれ、V
A−及びV
SSに接続される。キャパシタC4の上部プレート及び下部プレートは、それぞれ、V
A+及びV
SSに接続される。
【0064】
ここで、以下の式A、D、及びC、及び式(1)〜(6)で用いられる信号V
IN+、V
IN−、V
SIG、及び同相モード入力電圧成分V
CMの波形を示す
図6を参照することは役立つであろう。
【0065】
図6のV
SIGは、入力電圧V
IN+及びV
IN−のAC成分を示し、また、V
IN+及びV
IN−の同相モード電圧成分V
CMを示す。SAR ADC10の入力に印加される信号は、差動入力信号成分V
IN+−V
IN−及び同相モード入力信号成分V
CMの両方を含む。V
IN+はV
CM+V
SIGに等しく、V
IN−はV
CM−V
SIGに等しい。V
IN+及びV
IN−を平均すると、式(V
IN++V
IN−)/2が得られ、これは同相モード信号V
CMであり、V
IN+がV
CM+V
SIGに等しく、且つV
IN−がV
CM−V
SIGに等しいため、差動入力信号V
IN+−V
IN−は2×V
SIGに等しい。
【0066】
同相モード信号成分V
CMは、差動入力信号V
IN+−V
IN−を生成する特定の回路又はアプリケーションに依存する。V
IN+、V
IN−、V
SIG、及びV
CMの間に以下の関係が存在することが容易にわかる。
式(A) V
lN+=V
CM+V
SIG
式(B) V
IN−=V
CM−V
SIG
式(C) V
IN+−V
IN−=2V
SIG
【0067】
スイッチSW5及びSW6は、それぞれ、加算導体13及び14をV
SSに接続する。V
IN+は、キャパシタC1の下部プレート及びキャパシタC2の上部プレートにサンプリングされる。入力電圧V
IN+は差動電圧V
IN+−V
IN−の同相モード電圧成分V
CMを含む。SAR ADC10の入力電圧は、差動入力電圧V
IN+−V
IN−と同相モード電圧V
CMとの組み合わせとして考えられ得る。サンプリングが終了した後、キャパシタC1の下部プレートのサンプリングされた電荷は(V
CM+(V
IN+−V
IN−)/2)にC1を掛けたものに等しい。
【0068】
キャパシタの上部プレート及び下部プレートは、量は等しいが逆の極性の電荷を有する。従って、C1の上部プレートの電荷は(−V
CM−(V
IN+−V
IN−)/2)にC1を掛けたものに等しい。サンプリングが終了した後、サンプリングされた総電荷はキャパシタC1の上部プレートにホールドされる。V
IN−はキャパシタC3の上部プレートにサンプリングされる。サンプリングが完了した後、キャパシタC3の上部プレートにホールドされた電荷は(V
CM−(V
IN+−V
IN−))にC3を掛けたものに等しい。「V
CM誘導」電荷のみが逆の極性を有し、差動入力電圧(V
IN+−V
IN−)電荷は同じ極性を有する。従って、キャパシタC1及びC3の上部プレートでは、V
CM誘導電荷が逆の極性を有し、差動電荷が同じ極性を有する。
【0069】
サンプリングフェーズの終わりに、差動入力信号V
IN+、V
IN−が
図4のキャパシタC1〜C4にサンプリングされる。これらのキャパシタの上部プレート及び下部プレートに保存される電荷は以下の式によって求められる。
式(1) Q
C1,top=Q
C2,bottom=−CV
1N+=−C(V
CM+V
S1G)
これは、サンプリングフェーズの終わりに、C1の下部プレートにおけるサンプリングされた電荷はQ
C1,bottom=C1V
IN+に等しいからである。C1の上部プレートは、C1の下部プレートと同じ量であるが逆の極性の電荷を有するため、C1の上部プレートの電荷はQ
C1,top=−Q
C1,bottom=−C1V
1N+である。サンプリングフェーズの終わりに、C2の上部プレートのサンプリングされた電荷は、Q
C2,top=C2V
IN+に等しい。C2の上部プレートは、C2の下部プレートと同じ量であるが逆の極性の電荷を有するため、C2の下部プレートの電荷は次のようになる。
式(2) Q
C2,bottom=−C2V
IN+
C1=C2=C3=C4=C、であるため、Q
C1,top=Q
C2,bottom=−CV
lN+である。
式(3) Q
C3,bottom=Q
C4,top=−CV
IN−=−C(V
CM−V
SIG)
式(4) Q
C1,bottom=Q
C2,top=CV
IN+=C(V
CM+V
SIG)
式(5) Q
C3,top=Q
C4,bottom=CV
IN−=C(V
CM−V
SIG)
【0070】
サンプリングが完了し、SAR ADC10が第1のビット決定動作を開始する直前に、キャパシタC3は、
図4に示す接続から
図5のキャパシタC1への接続に切り替えられる。また、キャパシタC2は、
図4に示す接続から
図5のキャパシタC4への接続に切り替えられる。
【0071】
サンプリング動作の完了後、
図5に示すように、キャパシタC1及びC3の上部プレートが共に接続され、キャパシタC2及びC4の上部プレートが共に接続されている。そのため、同相モード電荷がキャンセルされている。キャパシタC1及びC3は、容量分圧器として機能し、導体13の同相モード電圧をV
REF/2に等しくさせる。同様に、キャパシタC1及びC3は、容量分圧器として機能し、導体14の同相モード電圧をV
REF/2に等しくさせる。その結果、後続のビット試験プロセスが継続するにつれて、加算導体電圧V
A+及びV
A−は安全範囲に留まり、安定してV
REF/2に本質的に等しくなる。
【0072】
このように、
図2及び
図3のSAR ADC10では、コンパレータ入力同相モード電圧が固定され、従って、CDAC加算導体13及び14のそれぞれの電圧V
A+及びV
A−は常に供給電圧と接地の間である。そのため、サンプリングされた電荷が、種々のCDACスイッチに関連する基板ダイオードを介してリークすることがない。従って本発明によれば、SARビット試験プロセス中にコンパレータの入力において加算ノード導体の電圧をブーストするために種々の従来技術を利用する必要がなくなる。
【0073】
これは、従来技術の
図1Bに示すSAR ADCとは直接対比する。従来技術の
図1Bに示すSAR ADCでは、従来技術の容量ブースト技術及び改変されたSARアルゴリズムが使用されない限り、コンパレータの入力における電圧のアナログ加算導体は、同相モード入力電圧の関数として実質的に変動し、従って、典型的に、供給電圧と接地電圧との間の安全範囲の外側の値を有する(それによって、サンプリングされた電荷が集積回路基板ダイオードを介してリークする)。
【0074】
より詳細には、SAR ADC10が
図2及び
図4に示すサンプリング構成から
図3及び
図5に示すサンプリングされた電荷のホールド構成に切り替えられると、同相モード電荷は逆の極性を有するため平均化又はキャンセルされ、差動信号電荷は同じ極性を有するため追加される。更に、
図5では、キャパシタC1の下部プレートがV
REFに接続され、キャパシタC3の下部プレートが接地に接続されるため、それらは、導体13のV
A−の同相モード電圧成分V
CMをV
REF/2に等しくするための分圧器として機能する。
図5では、キャパシタC1及びC3の上部プレートに保存された電荷が共に加算され、キャパシタC2及びC4の上部プレートに保存された電荷が同様に共に加算される。
図5に示すように結合された種々のキャパシタの上部プレート及び下部プレートの電荷は次のようになる。
式(6) Q
Cl,C3=Q
C1,top+Q
C3,top=−2CV
SIG
式(7) Q
C2,C4=Q
C2,top+Q
C4,top=2CV
SIG
【0075】
このように、
図5の初期の入力同相モード信号V
CMに対応する電荷はキャンセルされ、V
IN+−V
IN−に対応する差動電荷のみがデジタル出力信号D
OUTに変換される。それぞれ、導体13及び14のV
A+及びV
A−の同相モード電圧成分V
CMは、基準電圧V
REFにのみ依存し、C1=C3及びC2=C4であるためV
REF/2に等しい。CDAC加算導体13及び14の同相モード電圧成分V
CMはV
REF/2の固定値を有する。従って、後続のSARビット決定は差動信号V
IN+−V
IN−の同相モード電圧成分V
CMに依存しない。
【0076】
サンプリングされた電荷が
図4に示すように構成されたスイッチによってSAR ADC10内にホールド又は保存された直後、コンパレータ20が出力を生成し、その出力は、ビット1が「1」又は「0」のいずれに設定されるべきかを決定するために使用される。
【0077】
第1のビットb1の試験の間、上側MSBキャパシタC3はV
SSに接続され、残りの上側キャパシタ、即ち上側LSBキャパシタC1、はV
REFに接続される。C3=C1であるため、これら2つのキャパシタンスは分圧器として機能し、加算導体電圧V
A−をV
REF/2に等しくさせる。同様に、第1のビットb1の試験の間、下側MSBキャパシタC2はV
REFに接続され、残りの下側キャパシタ、即ち下側LSBキャパシタC4、は接地に接続される。C2=C4であるため、これら2つのキャパシタンスは分圧器として機能し、加算導体電圧V
A+をV
REF/2に等しくさせる。
【0078】
図2及び
図3の完全差動SAR ADC10の例では、MSBキャパシタC3及びC2はそれらの上部プレートにサンプリングされ、LSBキャパシタC1及びC4はそれらの下部プレートにサンプリングされる。入力電圧のサンプリングが完了した後、且つ、第1のビットの決定プロセスが開始する前に、入力同相モード電圧をキャンセルするように、MSBキャパシタC3の上部プレートはLSBキャパシタC1の上部プレートに接続される。従って、上側CDAC16は加算導体13上の差動入力信号電荷のみを含み、そのDC電圧は、V
REF/2に等しく、入力同相モード電圧V
CMに依存しない。また、入力電圧のサンプリングが完了した後、且つ、第1のビット決定プロセスの開始の前に、入力同相モード電圧をキャンセルするように、MSBキャパシタC2の上部プレートはLSBキャパシタC4の上部プレートに接続される。従って、下側CDAC17は加算導体14上の差動入力信号電荷のみを含み、そのDC電圧は、V
REF/2に等しく、入力同相モード電圧V
CMに依存しない。
【0079】
その結果、CDACの上部プレート電圧は常に供給電圧V
REFと接地との間であり、そのため、サンプリングされた電荷は、CDACキャパシタ上に確実に保存され得、加算導体13及び14に関連する集積回路基板ダイオードを介して至るリークが起こることがない。
【0080】
図7は、入力電圧サンプリングが完了した直後(であるがビット1決定が行なわれる前)の、それぞれ、加算導体13及び14上の正規化電圧V
A+及びV
A−を正規化差動入力電圧V
IN+−V
IN−の関数として示す。
図7のグラフは、V
A+及びV
A−の両方が常に、0〜1.0ボルトの正規化電圧範囲内にあることを示しており、そのため、集積回路基板ダイオードを介した電荷のリークに起因する、差動入力信号V
IN+−V
IN−を表すサンプリングされた電荷の損失に関する問題が完全に回避される。
【0081】
図8のグラフは、16個のSARビット試験動作(SAR ADC10の16ビット実装の場合)の各々の間の加算ノード電圧V
A+及びV
A−の正規化値を示す。変換プロセスの開始において、加算ノード電圧V
A+及びV
A−は、「安全範囲」(この範囲内では、サンプリングされた電荷の基板ダイオードを介したリークは起こり得ない)内であり、SARビット試験が進行するにつれて正規化同相モード基準電圧V
REF/2に収斂する。加算ノード電圧V
A+及びV
A−が収斂するまで、V
A+及びV
A−は安全領域内に留まるため、ビット決定エラーを起こす可能性のある、基板に対するサンプリングされた電荷のリークの危険性は全くない。
【0082】
SAR ADC10では、Vcm,cmpが常に最適値V
REF/2に等しいので、両方の加算導体13及び14上の加算導体同相モード電圧Vcm,cmp(式、Vcm,cmp=(V
A++V
A−)/2によって求められる)は、ADC入力信号同相モード電圧(式、V
CM=(V
IN++V
IN−)/2によって求められる)に依存することがなく、従って、各ビット試験及び変換サイクルを通して変化しないままである。Vcm,cmpのその値は、基板接合ダイオードを介した電荷リークを起こすことなく、最大ADC入力信号範囲を提供する。これは、最も近い従来技術と直接対比する。従来技術では加算導体同相モード電圧Vcm,cmpは、Vcmに強く関連し、各ビット試験及び変換サイクルの間大きく変化する。
【0083】
なお、
図2及び
図3は完全差動ADCを示しているが、本発明は擬似変動ADCにも適用可能であることを理解されたい。擬似変動ADCでは入力の1つ、例えばV
IN−、は典型的には接地電圧に近い固定電圧に留まる。また、シングルエンドのADCではV
IN−入力は内部的に接地に接続され得る。それ以外は上述の擬似差動ADCと同じである。
【0084】
また、単一のCDACのみが必要であることも理解されるべきである。例えば、
図2ではCDAC17が省略されてもよく、その代わりにコンパレータ20の(+)入力がV
REF/2に等しい基準電圧に接続され得る。その場合、C1(即ち、キャパシタ29−2、3...N、26)で表されるLSBキャパシタの下部プレートにV
IN+がサンプリングされ得、MSBキャパシタC3の上部プレートにV
IN−がサンプリングされ得る。ホールドフェーズの間、C1及びC3の上部プレートを共に接続するように、スイッチSW3が閉にされ得、C1で表されるLSBキャパシタの下部プレートが、V
REFに切り替えられ得、MSBキャパシタC3の下部プレートが接地に接続され得る。この結果、加算導体13からの入力同相モード電圧成分がキャンセルされ得、導体13及び14にV
REF/2の同相モード電圧を提供し得る。
【0085】
要約すると、SAR ADC10における同相モード電圧信号成分及び関連する同相モード電荷が自動的にキャンセルされ、V
REFと接地との間に結合された分圧器によって、SARコンパレータの入力に接続された加算導体にV
REF/2に等しい固定同相モード電圧が自動的に確立される。その同相モード電圧成分は、SAR ADC入力電圧の同相モード成分に依存しない。これによって、範囲外又は安全でない加算導体電圧を完全に防ぐことができる。
【0086】
その結果、SAR ADC10は、SARコンパレータの入力における入力同相モード電圧をブーストするために従来技術で必要とされている追加のブーストキャパシタの必要性を回避する。また、SAR ADC10は、ブーストキャパシタのブースト動作に適合するために従来技術で必要とされているSARアルゴリズムの対応する改変の必要性を回避する。また、SAR ADC10はブーストキャパシタによって起こるSNR(信号対雑音比)の低下を防止する。最も近い従来技術に対するSAR ADC10の利点としては、要求される集積回路チップ面積量の削減、回路要素の簡素化、及びサンプリング電力の削減が含まれる。
【0087】
図9は、ゼロパワーサンプリングスイッチドキャパシタ積分回路32を含む本発明の別の実施形態を示す。
図10はゼロパワーサンプリングを説明及び分析するための簡略図を示す。
図11は積分動作中の電荷を説明及び分析するための簡略図である。
【0088】
図9では、スイッチドキャパシタ積分回路32がスイッチドキャパシタ回路要素33を含み、スイッチドキャパシタ回路要素33は、入力信号V
IN+−V
IN−を受け取り、それぞれ、加算導体13及び14に電圧V
A+及びV
A−を生成する。加算導体13は、積分器35の(−)入力と積分キャパシタC
INTAの上部プレートとに接続され、積分キャパシタC
INTAの下部プレートは積分器35の(+)出力に接続される。加算導体14は、積分器35の(+)入力と積分キャパシタC
INTBの上部プレートとに接続され、積分キャパシタC
INTBの下部プレートは積分器35の(−)出力に接続される。積分器出力電圧V
OUT+−V
OUT−が積分器35の(+)出力と(−)出力との間に生成される。
【0089】
図9のスイッチドキャパシタ回路要素33は、それぞれの1つの端子がV
IN+に結合されたスイッチS1A及びS2Bを含み、また、それぞれの1つの端子がV
IN−に結合されたスイッチS1B及びS2Aを含む。スイッチS1Aの第2の端子は入力又はサンプリングキャパシタC
IN1の下部プレート、及びスイッチS6Aの1つの端子に接続され、スイッチS6Aの別の端子はV
DDに接続される。スイッチS1Bの第2の端子は入力又はサンプリングキャパシタQ2の下部プレート、及びスイッチS6Bの1つの端子に接続され、スイッチS6Bの別の端子はV
DDに接続される。入力キャパシタC
IN1の上部プレートはスイッチS3Aの1つの端子、スイッチS4Aの1つの端子、及び、スイッチS5Aの1つの端子に接続される。入力キャパシタC
IN2の上部プレートは、スイッチS3Bの1つの端子、スイッチS4Bの1つの端子、及び、スイッチS5Bの1つの端子に接続される。スイッチS3Aの別の端子は、スイッチS2Aの別の端子、及び入力又はサンプリングキャパシタC
IN3の上部プレートに接続され、その下部プレートはV
SSに接続される。スイッチS3Bの他方の端子はスイッチS2Bの別の端子、及び入力又はサンプリングキャパシタC
IN4の上部プレートに接続され、サンプリングキャパシタC
IN4の下部プレートはV
SSに接続される。スイッチS4A及びS4Bの別の端子はV
SSに接続される。スイッチS5Aの他方の端子は加算導体13に接続され、スイッチS5Bの他方の端子は加算導体14に接続される。
【0090】
CK1及びCK2は、相補的な非重複クロック信号である。スイッチS1A、S1B、S2A、S2B、S4A、及びS4Bは、CK1によって制御される。スイッチS3A、S3B、S6A、S6B、S5A、及びS5Bは、CK2によって制御される。(なお、代わりに、スイッチS1A及びS1Bを制御するためにCK1の僅かに遅延したバージョンが用いられてもよいことを留意されたい。)
【0091】
図9では、スイッチS5A及びS5Bが開のとき、即ちサンプリングフェーズの間、積分キャパシタC
INTA及びC
INTBの電荷が「保存」又は「ホールド」される。
【0092】
スイッチドキャパシタ積分回路32が
図10に示すようにサンプリングフェーズにあるとき、CK1は論理「1」であり、従ってS1A、S1B、S2A、S2B、S4A、及びS4Bは閉にされる。その後、C
IN1の上部プレート、C
IN3の下部プレート、C
IN2の上部プレート、及びC
IN4の下部プレートが接地に接続される。また、V
IN+がC
IN1の下部プレート及びC
IN4の上部プレートに接続され、V
IN−がC
IN2の下部プレート及びC
IN3の上部プレートに接続される。従って、差動入力信号V
IN+−V
INに関連する差動入力情報及び同相モード入力情報の両方がサンプリングされる。理想的には、入力キャパシタC
IN1、C
IN2、C
IN3、及びC
IN4の4つが全て等しい。積分キャパシタC
INTA及びC
INTBは、積分キャパシタC
INTA及びC
INTBに前のサイクルからの電荷をホールドさせるように、積分器35のために負のフィードバックを提供する。
【0093】
図10に示すサンプリングが終了した後、スイッチドキャパシタ積分回路32は積分動作に切り替わり、そこでは、C
IN3及びC
IN2が
図11に示すように接続される。この結果、C
IN1の下部プレートがV
DDに結合され、且つ、C
IN3の下部プレートがV
SSに結合されるとき、導体13からの同相モード電荷成分がキャンセルされる。また、このことは加算導体13上の同相モード電圧をV
DD/2に設定する。動作は、V
DD/2に等しい同相モード電圧を加算導体14に確立する場合に類似する。V
IN+に関連する差動信号電荷が、C
IN1及びC
IN3から積分キャパシタC
INTAに伝達され、出力電圧V
OUT+を変更し、V
IN−に関連する差動信号電荷が、C
IN2及びC
IN4から積分キャパシタC
INTBに伝達され、出力電圧V
OUT−を変更して、現行の積分フェーズを終了する。
【0094】
このように、差動電荷が、積分キャパシタC
INTA及びC
INTBに伝達され、V
OUT+及びV
OUT−の値を決定する差動電荷を提供し、差動出力電圧V
OUT+−V
OUT−に影響を与えることなく同相モード電圧がキャンセルされる。各積分フェーズの後、スイッチドキャパシタ積分回路32はサンプリングモードに戻り、V
OUT+及びV
OUT−の新しい値が次の積分フェーズまでホールド又は維持される。
【0095】
図12は、本発明のゼロパワーサンプリングスイッチドキャパシタ増幅器の実施形態の簡略化された概略図である。
図12では、スイッチドキャパシタ増幅器32Aは、
図9のものと同様であるがスイッチS5A及びS5Bが省かれた、スイッチドキャパシタ回路要素33Aを含む。スイッチドキャパシタ増幅回路32Aは、
図9の積分器35ではなく、増幅器36を含み、その(−)入力は加算導体13によってキャパシタC
IN1の上部プレートに接続され、その(+)入力は加算導体14によってキャパシタC
IN2の上部プレートに接続される。
【0096】
また、増幅器36の(−)入力は、フィードバックキャパシタC
FB1の上部プレート、及びスイッチS7Aの1つの端子にも接続される(定義上、
図2及び
図3のコンパレータ20、
図9の積分器35、及び
図12の増幅器36は、「処理」回路と考えられる)。フィードバックキャパシタC
FB1の下部プレートは、スイッチS8A及びS9Aの各々の1つの端子に接続される。スイッチS8Aの他方の端子はスイッチS7Aの他方の端子に接続され、スイッチS9Aの他方の端子は、出力電圧V
OUT+を生成する増幅器36の(+)出力に接続される。同様に、増幅器36の(+)入力は、フィードバックキャパシタC
FB2の上部プレート、及びスイッチS7Bの1つの端子に接続される。フィードバックキャパシタC
FB2の下部プレートは、スイッチS8B及びS9Bの各々の1つの端子に接続される。スイッチS8Bの他方の端子は、スイッチS7Bの他方の端子に接続され、スイッチS9Bの他方の端子は出力電圧V
OUT−を生成する増幅器36の(−)出力に接続される。クロック信号CK1及びCK2は、
図9のものと同じであり、
図9のスイッチドキャパシタ回路要素33にあるのと同じ、スイッチドキャパシタ回路要素33Aのスイッチを制御する。
図12では、クロック信号CK1はスイッチS7A、S7B、S8A、及びS8Bも制御し、クロック信号CK2はスイッチS9A及びS9Bを制御する。入力同相モード信号成分をキャンセルし、導体13及び14に固定同相モード信号レベルを確立するためのスイッチドキャパシタ回路要素33Aの動作は、本質的に
図9のものと同じである。
【0097】
図9のスイッチドキャパシタ回路要素33と本質的に類似するスイッチドキャパシタ回路要素は、デルタシグマ変調器又はデルタシグマADCにおいても使用できることを理解されたい。
【0098】
本発明を幾つかの特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者であれば、本発明の真の趣旨及び範囲を逸脱することなく、本発明の説明した実施形態に種々の変更が可能であろう。特許請求の範囲に記載されたものと非実質的に異なるが、請求されたものと同じ結果を達成するため実質的に同じ方法で、それぞれ、同じ機能を実質的に実行する要素又は工程は全て本発明の請求の範囲に包含されることを意図している。例えば、
図2及び
図3に示す本発明の実施形態では、同相モード入力電圧成分の影響の完全キャンセルを達成し、同時に固定同相モード電圧V
REF/2を加算導体13及び14の各々に確立する目的のために、キャパシタC1、C2、C3、及びC4を理想的に等しくして、MSBキャパシタC3及びC2の接続を
図4に示す構成から
図5に示す構成に切り替えるが、幾つかのケースではLSBキャパシタの1つを、対応するMSBキャパシタと共に、対応するMSBキャパシタと同じ様に切り替えることによって、適切な結果が得られる場合もある。これは同相モード入力電圧成分の完全なキャンセレーションを下回るものを提供し得、また加算導体13及び14に確立される同相モード電圧もV
REF/2とは異なる結果になり得る。それでも、これは加算導体電圧V
A+及びV
A−が所定の安全動作電圧範囲内に留まるような方式で達成され得るであろう。