(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6167113
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】体液を調べるための分析システムおよび分析システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/151 20060101AFI20170710BHJP
A61B 5/157 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
A61B5/14 300D
A61B5/14 300L
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-552601(P2014-552601)
(86)(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公表番号】特表2015-503982(P2015-503982A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】EP2013050697
(87)【国際公開番号】WO2013107752
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】12151541.5
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リスト、ハンス
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−502666(JP,A)
【文献】
特表2006−504506(JP,A)
【文献】
特表2008−504893(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/094426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/151
A61B 5/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を調べるための分析システムであって、
それぞれが少なくとも1つの穿刺エレメント(32)および/または少なくとも1つの検査エレメント(34)ならびに搬送エレメント(28)を設けられる複数のマガジンユニット(24)を備える、消耗品である交換可能なマガジン(18)と、
前記マガジン(18)を受容するためのマガジンガイド(16)を有する携帯用装置(12)と、
前記マガジン(18)を段階的に前記マガジンガイド(16)内で搬送するために、前記搬送エレメント(28)に係合する搬送機構(48)と
を備え、
アクティブなマガジンユニット(24)を所定の機能位置に位置決めする位置決め機構(50)が前記装置(12)に設けられ、前記位置決め機構(50)の保持手段(52、54)が、前記マガジン(18)の搬送エレメント(28)との係合をもたらすことが可能であり、
前記保持手段(52、54)が、前記アクティブなマガジンユニット(24)の搬送エレメント(28)と嵌合により係合し、前記マガジン(18)の、少なくとも一方向への動作を防ぐことを特徴とする分析システム。
【請求項2】
前記分析システムが、血糖検査用である請求項1記載の分析システム。
【請求項3】
前記搬送エレメントが、リング形状に配置された請求項1または2記載の分析システム。
【請求項4】
前記保持手段(52、54)が、前記装置(12)内に堅固に配置され、前記アクティブなマガジンユニット(24)の搬送エレメント(28)を支承するために用いられる支承点(52)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項5】
前記マガジン(18)が環状であり、偏心軸の周りで、制限された枢動により移動可能であるように取り付けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項6】
前記偏心軸が、前記アクティブなマガジンユニットの搬送エレメント(28)を通って延伸することを特徴とする請求項5記載の分析システム。
【請求項7】
前記保持手段(52、54)が、搬送エレメント(28)と係合した状態にある係合位置と、そこから離れた解放位置との間で移動可能であり、前記マガジン(18)の位置を固定するように機能する把持部(54)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項8】
前記把持部(54)が、その係合位置において、力の付与の下、少なくとも1つの搬送エレメント(28)に向かって押圧することを特徴とする請求項7記載の分析システム。
【請求項9】
前記搬送機構(48)が、前記把持部(54)の動作を制御する制御手段(62)を有することを特徴とする請求項7または8記載の分析システム。
【請求項10】
前記制御手段(62)が、カムギアである請求項9記載の分析システム。
【請求項11】
前記把持部(54)が、調整手段を介して、前記マガジンガイド(16)を閉鎖する蓋(14)に連結され、前記蓋(14)が開かれたときに前記把持部(54)が前記解放位置に移動することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項12】
前記マガジンガイド(16)が、1つの面に架かり、前記マガジン(18)の平坦な案内面(36)を支持するように機能する3つの支持部(38)を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項13】
支承面において限られた程度まで移動可能である前記マガジン(18)が、前記支承面に垂直な力の影響下にあることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項14】
前記搬送機構(48)が、前記マガジン(18)の偏心枢動動作に、線形の解放動作を重ねるギヤエレメント(66、68)を備え、少なくとも1つの搬送エレメント(28)が、前記装置上に固定された保持手段(52、54)から係合を解かれることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項15】
前記搬送機構(48)が、楕円形の経路上を移動でき、その動作経路の一部で搬送エレメント(28)に係合するスライダ(74)を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項16】
前記マガジンガイド(16)が、前記搬送エレメント(28)用のアーチ状の誘導輪郭(76、78、80)を有し、前記誘導輪郭(76、78、80)が、円形の経路から逸脱した前記搬送エレメント(28)の解放動作を制御することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項17】
前記マガジンユニット(24)の有用性を検査するための検査ユニット(42)が前記装置(12)に設けられることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項18】
前記検査ユニット(42)が、前記マガジンユニット(24)のマガジンチャンバ(30)を閉鎖するシーリングフィルム(46)をスキャンする光バリアである請求項17記載の分析システム。
【請求項19】
前記保持手段(52、54)が、前記装置上に固定され、前記搬送エレメント(28)の1つのために備えられる支承点(52)を有し、さらに、前記支承点(52)から離れている別の搬送エレメント(28)に係合する把持部(54)も有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項20】
分析システムの作動方法であって、前記方法において、
消耗品であるマガジン(18)が携帯用装置(12)のマガジンガイド(16)に挿入され、前記マガジン(18)が、それぞれが少なくとも1つの穿刺エレメント(32)および/または少なくとも1つの検査エレメント(34)ならびに搬送エレメント(28)を設けられる、複数のマガジンユニット(24)を備え、
前記マガジン(18)は、前記搬送エレメント(28)に係合する搬送機構(48)によって、前記マガジンガイド(16)内で段階的に搬送され、
装置側の位置決め機構(50)の保持手段(52、54)は、前記マガジン(18)の搬送エレメント(28)との係合をもたらし、使用に供されるアクティブなマガジンユニット(24)が、前記装置内の所定の機能位置に位置付けられ、
前記保持手段(52、54)が、前記アクティブなマガジンユニット(24)の搬送エレメント(28)と嵌合により係合し、前記マガジン(18)の、少なくとも一方向への動作を防ぐことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記分析システムが、請求項1〜19のいずれか1項に記載の分析システムであることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記マガジンユニット(24)の前進の指標付けのために、前記マガジン(18)が、前記装置に固定された個々の支承点(52)の周りに枢動させられ、そこから解放され、各アクティブなマガジンユニットの搬送エレメント(28)は、前記支承点(52)内で案内され、他のマガジンユニットの搬送エレメントは、前記マガジンガイド(16)の誘導輪郭(76、78、80)に対して移動させられることを特徴とする請求項20または21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に血糖検査のために、体液を調べる分析システムに関し、この分析システムは、それぞれ、少なくとも1つの分析補助具および搬送エレメントが設けられる複数のマガジンユニットを備える、消耗品である交換可能なマガジンと、マガジンを受容するためのマガジンガイドを有する携帯用装置と、マガジンを段階的にマガジンガイド内で搬送するために、好ましくはリング形状に配置された、搬送エレメントに係合する搬送機構とを備える。本発明はさらに、この種の分析システムの
作動方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
体液の自動の採取および測定のための、持ち運び可能な携帯用システムにおいて、ユーザの使いやすさを向上するために、複数の使い捨ての測定ユニットを備えるマガジンがますます用いられている。これらは、機械的動作の観点から、従来の測定装置に比べて、より多くの費用を伴う。このようなシステムの全体の大きさを最小限にしようと、互いに適合する必要のあるマガジンおよび装置の構造は、徐々に小さくなっているにもかかわらず、個別の部品の公差は、同規模で減少しない。それゆえ、位置決めに対して今まで以上に大きな要求がある。小型化された個々の検査は、評価システムに対する位置の観点から、高レベルの精度および正確性の両方を要求し、また、測定中の位置安定性の観点から、高度なロバスト性が要求される。後者は、特に電気的に評価される検査において適用され、これは、電流が流れる接点のそれぞれの動きが、信号のノイズを引き起こし、これは評価を妨害するか、または完全に不可能にするからである。しかしながら、光学的なシステムも、進行中の測定の間の位置の変化に対して極めて敏感である。考慮に入れられるべきさらなる局面は、製造コストを可能な限り低く抑えるために、消耗品であるマガジンは、検査工程に必須の構造および構成部品に限られたままであるべきであるということである。
【0003】
円形のディスク形状のマガジンを備える、問題となるこの種の分析システムは、特許文献1で言及されている。特許文献1では、マガジンユニットをさらに搬送するために、分析システムが、マガジンの搬送エレメントと連動する、対応する搬送装置を有し得ることが提案されている。また特許文献1は、このようなマガジンを製造する方法が開示されており、これは本明細書において参照される。
【0004】
一般的にいえば、装置内のリングの中心上に環状マガジンを収容し、動作の精度を装置の部品に委ねるという発想は、非常に複雑で高価な構成を引き起こす。というのも、避けることのできないマガジンディスク自体の寸法のずれに加えて、同様に必然的に寸法のずれを有し、場合によっては走行中の遊びの程度も有する、装置の多くの他の構造が、位置決めの公差の連鎖に含まれるからである。ゆえに、6自由度のマガジンの動作は、不当な量の努力を伴う制御下でのみもたらされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/094426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここから開始して、本発明の目的は、先行技術において提案されるシステムおよび方法をさらに改良し、相当に小型化された場合でも、機構および測定に関する要件が満たされるように、検査ユニットおよびマガジンユニットの正確な位置決めを確実にすることである。それと同時に、マガジンは、単純な手段によって交換および搬送も行うことができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1および16に示す特徴の組み合わせを提案する。本発明の有利な実施形態および発展は、従属請求項に示す。
【0008】
本発明は、測定中の正確な位置決めに最大の優先度を置くという発想に基づく。したがって、本発明は、装置の位置決めおよび固定機構を提案し、これにより、使用できる状態にあるアクティブなマガジンユニットが、所定の機能位置に位置決めおよび固定(ある場所で維持)される。ここで位置決め機構は、保持手段を有し、この保持手段は、マガジンの1つまたは2つ以上の搬送エレメントとの係合をもたらし得る。保持手段および搬送エレメントは、ゆえに、相互に係合する位置に運ばれ、ここでマガジンの搬送が中断されると同時に、装置に対する正確な位置が維持され、特に、測定ユニットまたはフィンガレシーバなどに対する相対位置が、少ない公差で再現可能に維持され得る。
【0009】
有利には、保持手段は、機能位置に位置するアクティブなマガジンユニットの搬送エレメントに、嵌合により係合し、それによりマガジンの、少なくとも一方向への動作を遮断する。それゆえ、関連する基準点までの距離を短く維持し、ゆえにこのような距離の変動を最小限にすることができる。また、消耗品の射出成型など、特に大量生産の方法においては、このずれは寸法の大きさに関連することにも留意する。
【0010】
有利には、搬送エレメントは、リング形状に配置される一方で、保持手段は、係合位置において、好ましくは互いに対して直径方向で対向して位置するか、または少なくとも互いから離れて配置されている2つの搬送エレメントと嵌合係合しており、これらはゆえに、数自由度での動作を防ぐ。また、保持手段により係合された搬送エレメントは、軸上には位置せず、マガジンの中心に対して鈍角の位置に存在することも認識できる。
【0011】
2つの保持手段が提供され、第1の保持手段が好ましくは装置上に固定されており、第2の保持手段が装置内で移動可能であることが特に好ましい。
【0012】
特に有利な実施形態において、装置内に堅固に配置される支承点は、アクティブなマガジンユニットの搬送エレメントを受容するための保持手段として用いられる。このようにして、装置内の固定された基準点が作り出され、他の装置の機構がそこに対して方向付けられ得る。これは、次に続く搬送手順においても有利に達成でき、機能位置に位置するマガジンユニットの搬送エレメントが、線形動作で入ったり、また再び出ることができる、側方に開放した支承アイを有する。
【0013】
マガジンは、有利には環状であって、好ましくはアクティブなマガジンユニットの搬送エレメントを通って延伸し、マガジンのリング軸または中心軸(技術的中心線)に対して偏心した軸の周りで、制限された枢動により移動できるように取り付けられ、所定の装置の構造が搬送段階中のマガジンユニットの前進の指標付けにも用いることができ、マガジンは全体的に自由には移動しない。
【0014】
特に切り替え可能な係合を可能にするために、保持手段が把持部を備えることが有利であって、把持部は、把持部が搬送エレメントと係合した状態にある係合位置と、把持部がそこから離れた解放位置との間で移動でき、また、マガジンの位置を固定するように機能する。
【0015】
位置決め中の遊びをさらに減少させるために、把持部は、その係合位置において、力の付与の下、少なくとも1つの搬送エレメントに向かって押し付けるべきである。原理上は、把持部がその係合位置において、2つの搬送エレメントの間に係合し、力の付与の下、これらを押し付けることも可能である。
【0016】
また、搬送機構が、制御手段、特に把持部の動作を制御するカムギアを有することも好都合である。このようにして、例えば電気モータなど、1つの駆動源のみで適切な場合、搬送工程および位置決め工程を共に制御し、互いに対して適合させることが可能である。
【0017】
マガジンの交換を容易にするためには、把持部が、調整手段を介してマガジンガイドを閉鎖する蓋に連結されることが有利であって、これは、蓋が開いているときに把持部が解放位置まで移動し、その結果、6自由度のマガジンの5自由度が開放され、ユーザが問題なくマガジンを交換できるようにするためである。
【0018】
予備的な位置決めのためには、マガジンガイドが、1つの面に架かり、マガジンの平坦な案内面を支持するように機能する3つの支持部を有することが特に有利である。
【0019】
位置決めの正確性におけるさらなる改良は、支承面において限られた程度まで移動可能であるマガジンが、支承面に垂直な力の影響下にある場合に達成され得る。マガジンの作動面に対する垂直な力が、マガジンの作動スペースを閉鎖する蓋のバネにより生じることが有利である。また、垂直方向の力の合計が、マガジンの質量と、測定を損なわない最大許容衝撃加速度との積と同じ大きさであることも好都合である。
【0020】
有利には、搬送機構は、マガジンの偏心枢動動作に、限られた線形の解放動作を重ねるギヤエレメントを備え、少なくとも1つの搬送エレメントは、装置上に固定された保持手段から係合を解かれる。このようにして、特にリングマガジンが、交互に搬送され、段階的に配置され得る。後退動作は、好ましくは、枢動動作の経路によって定められる面において行われる。この面に垂直な動作は、好ましくは回避されるべきである。
【0021】
組み合わされた回転動作および線形動作に関連して、搬送機構が、楕円形の経路上を移動でき、その動作経路の一部で搬送エレメントに係合するスライダを有することが有利であって、また、マガジンガイドが、搬送エレメント用のアーチ状の誘導輪郭を有し、この誘導輪郭が、円形の経路から逸脱する搬送エレメントの解放動作を制御することが有利である。
【0022】
マガジンユニットの有用性を検査するために、特に、シーリングフィルムをスキャンする光バリアの形態の検査ユニットが有利である。
【0023】
マガジンは、好ましくは、リングマガジン、特に、マガジンユニットが周方向に分配されている円形のディスクマガジンとして設計される。このようなマガジンは、有利には、100mm未満、好ましくは70mm未満の直径を有し、関連するマガジンユニット内に、多数の分析検査手段(例えば、穿刺ユニットおよび/または分析ユニット)を備え、例えば、合計で10〜100のユニットに達する。また、搬送エレメントが、それぞれのマガジンユニット上で軸方向に平行または放射状に方向付けられた、突出部(例えば、ピン)または凹部のリングにより形成されることも有利である。
【0024】
特に好ましい組み合わせにおいて、保持手段は、装置上に固定され、搬送エレメントの1つのために備えられる支承点を有し、さらに、支承点から離れている別の搬送エレメントに係合する把持部も有する。
【0025】
方法に関しては、消耗品であるマガジンが携帯型または持ち運び可能な装置のマガジンガイドに挿入され、このマガジンが、それぞれが少なくとも1つの分析補助具および搬送エレメントを設けられる、複数のマガジンユニットを備え、マガジンは、好ましくはリング形状で配置された搬送エレメントに係合する搬送機構によって、マガジンガイド内で段階的に搬送され、装置側の位置決め機構の保持手段は、マガジンの搬送エレメントとの係合をもたらし、使用するために設けられるアクティブなマガジンユニットは、装置内で所定の機能位置に配置されるか、固定されているという事実によって、上述の目的が達成される。
【0026】
測定箇所での非常に精密な位置決めを確実にするために、保持手段が、アクティブなマガジンユニットのエリアで搬送エレメントに係合し、マガジンの、少なくとも一方向への動作が防がれることが有利である。また、位置付け段階の間、アクティブなマガジンユニットから離れて(可能な限り遠くに)位置する少なくとも1つの搬送エレメントを遮断することにより、マガジンが、好ましくは把持部によって、動くことができないまま維持されることも有利である。
【0027】
本発明による位置決めにおいて、マガジンを作動面に割り当てるために、マガジンの小形状はその比較的大きなエリアと一緒に用いられる。これは、3つの装置側の支持面上に載り、そこに垂直方向に作用する力によって保持されているマガジンの、大きなエリアによって有利に達成される。このようにして、3自由度がすでに定められる。
【0028】
位置のさらなる固定のために、先端間の支承が、マガジンを、軸に沿って空間的に定められた方法で保持するために用いられる。保持手段の2つは、マガジンユニットの適切な搬送エレメントにより接触させられ、一時的にアクティブなマガジンユニット上に係合する保持手段は、さらに2自由度を固定する一方で、直径方向において反対側か、そこから可能な限り離れている保持手段は、最後の(6つ目の)自由度を固定する。また、静的に定められる支承が同様に得られるように、2つの搬送エレメント間での係合を、アクティブなマガジンユニットから可能な限り離して行うことも考えられ、例えば、2つの搬送エレメントがくさびの側面上にあるように、2つの搬送エレメントの間に係合するくさび状の要素により行われる。
【0029】
測定箇所の近くの保持手段は、有利には、堅固な装置構造により形成され、測定箇所から離れている保持手段は、可動な装置構造の形態である。後者は、衝撃耐性のある位置決めを確実にするために、最大許容衝撃負荷に対応する力を受けるべきである。
【0030】
必要に応じて、次の搬送段階において1つのさらなる検査ユニットのそばに、この固定された位置からマガジンを移動させるために、マガジンが移動させられるべき自由度が、本発明にしたがって連続して解放され、マガジンの、その作動面に対する圧力により引き起こされる干渉摩擦は、自由度の解放にもかかわらず、マガジンが制御されない方法でその位置を離れることを確実に防ぐために、用いられる。
【0031】
環状マガジンは、有利には、搬送段階においてマガジン全体の限られた枢動動作が可能であるように、回転対称マガジンの中心軸(技術的中心線)に対して偏心した、アクティブなマガジンユニットの搬送エレメント上に取り付けられる。
【0032】
マガジンユニットの前進の指標付けのために、マガジンは、有利には、装置上に固定された個別の支承点の周りを枢動させられ、その後そこから解放され、ここで各アクティブなマガジンユニットの1つの搬送エレメントは、最初に支承点へと案内され、その後自由になり、他のマガジンユニットの搬送エレメントは、支承点から免れているマガジンガイドの誘導輪郭に対して移動させられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は、図面に示した例示的な実施形態に基づき、以下でより詳細に説明される。
【0034】
【
図1】携帯型の装置と、そこに挿入される分析補助具用のマガジンとを備える診断分析システムの斜視図である。
【
図2】リングまたはディスク形状で設計されたマガジンの斜視図である。
【
図3】マガジンの一部を切り取った半径方向のセクションにおけるマガジンユニットを示す図である。
【
図4】マガジン用の位置付け機構と連動する、搬送機構の連続的な位置の平面図である。
【
図5】マガジン用の位置付け機構と連動する、搬送機構の連続的な位置の平面図である。
【
図6】マガジン用の位置付け機構と連動する、搬送機構の連続的な位置の平面図である。
【
図7】マガジン用の位置付け機構と連動する、搬送機構の連続的な位置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示す分析システム10は、検査被験者の手によって保持することができ、その場での血糖測定に用いることができる。この目的のために、機器は、蓋14を用いて閉鎖でき、使い捨ての環状マガジン18を受容する、マガジンガイド16を備える持ち運び可能または携帯型の装置12を備えている。皮膚切開により、グルコース判定用の血液試料を採取するために、検査被験者が指を置く適用開口部22が、装置12のハウジング20に設けられる。
【0036】
図2に示すリング形状の環状マガジン18は、周方向に分配された多数のマガジンユニット24を有する。各マガジンユニット24は、測定窓26と、マガジンの下面から突出するピンの形態の搬送エレメント28とを有する。リング形状に配置された搬送エレメント28により、段階的な指標付けと、適用開口部22の前の機能位置への、個別のマガジンユニット24の所定の位置付けとが可能となる。
【0037】
図3に示すように、穿刺エレメント32および検査エレメント34は、各マガジンユニット24のマガジンチャンバ30内に位置している。機能位置において、穿刺エレメント32は、往復する穿刺駆動部(図示せず)により径方向外側へと押し出され得るので、皮膚が穿刺されると、少量の血液が毛管チャネルに取り込まれ、検査フィールド34へと移送される。検査フィールド34は、色の変化により分析物(グルコース)に反応する検査薬を備え、光度測定ユニット(図示せず)により、環状面に対して横断方向に測定窓26を介して光学的にスキャンされ得る。アクティブなマガジンユニットを、適用開口部22の前および測定ユニットの上の機能位置に、可能な限り正確に配置することが特に重要である。この目的のために、マガジン18は、搬送エレメント18の隣に、平面36を有し、これは、所定の測定距離で、装置側の3点支承により堅固な支持ハンプ38上に保持され、光ビーム経路が再現可能となっている。位置の公差を低く保つために、バネ40は、三角形の平面配置の3つの支持ハンプ38のそれぞれの反対側で、マガジン18の上面を押し付ける。
【0038】
特に、マガジンの交換時に、使用済の穿刺エレメントが再び用いられないことを確実にするために、マガジンユニット24の透明エリア44を通してビームを通過させる、装置側の光バリア42が設けられる。穿刺駆動部からマガジンチャンバ30を閉鎖する滅菌フィルムまたはシーリングフィルム46が、それゆえスキャンされ、使用状態は、フィルムの破壊から直接検出できる。
【0039】
図4〜7は、装置12(それ自体は図示しない)におけるマガジン18のマガジンユニット24の、前進の指標付けおよび所定の位置決めのための動作順序を示す。この目的のために、装置側の搬送機構48は、マガジン18の搬送エレメント28の操作によりこの機能を満たすために、装置の位置決め機構50(固定機構)に連結される。搬送機構48および固定機構の両方が、これにより、マガジン18の搬送エレメント28上に係合する。
【0040】
図4は、マガジンユニット24が機能位置に固定されて保持されているマガジンの位置を示す。この目的のために、位置決め機構50は、装置に配置され、マガジン18の、直径方向に対向する2つの搬送エレメント28(図面においては黒で強調されている)と解放可能に嵌合接続する、保持手段52、54を備えている。
【0041】
保持手段の1つは、横方向に開放する支承アイ52により形成され、これは装置上に固定された支承点として、機能位置に位置するマガジンユニット24の搬送エレメント28の半分の周囲と係合する。このマガジンユニット24のアクティブな測定窓26への距離が短いことにより、得られる位置公差は小さい。横方向の動作に対する自動ロックは、支承アイの急勾配の側面によりもたらされる。
【0042】
ゆえに、マガジン18は、固定されたピンの周りでのみ、依然として回転するか、または支承アイから線形に後退し得る。これら残りの自由度の動作も防ぐために、角柱状の把持部54は、保持手段として、直径方向の反対側のピンに係合する。この把持部54は、例えばバネによる、矢印56の方向への復元力によって付勢される。この復元力は、3つの支持ハンプ38上の、マガジン18のバネのサスペンションにより引き起こされる摩擦力よりも大きなものであるべきである。搬送機構48への連結を可能にするために、把持部54は、軸58周りに枢動可能な2つのアームの把持レバー60の一方の端部に配置される。
【0043】
この配置において、アクティブなマガジンユニット24は、機能位置である測定ユニットの前に幾何学的に正確に位置付けられる。把持部54は、これに関連する唯一の可動構造(および、例えば、その動作のために隙間を要する)として、ピンのリングの直径に対応して、位置を決定する支承点52から、測定窓26のエリアに位置する測定ユニットよりもさらに離れて離間しているので、正確に定められた光伝送経路を有する。
【0044】
しかしながら、ピンまたは搬送エレメント28のための保持手段52、54の、自動ロックのデザインは、環状マガジン18の、次のマガジンユニット24への前進の搬送を抑制する。この搬送を可能にするために、捕捉用角柱(プリズム)を備える把持部54は、
図5〜7に段階的に示すように、その係合位置からその解放位置まで、復元力56に抗して搬送機構48によりアクティブに持ち上げられなければならない。
【0045】
動作の連結のために、搬送機構48は、モータの出力軸64上に設置され、クランクピン66を介して掘削機状のレバー68を駆動するカムギアとしての制御カム62を有する一方で、制御カム62の外周の輪郭は、把持部レバー60を作動させる。掘削機状のレバー68は、長円形の孔70を覆って取り付けられ、装置に固定される支承ピン72上で、略楕円形の動作で前後に移動でき、またこの周りで回転できる。この動作の間、ブレイド形状のスライダ74は搬送エレメント28に係合し、マガジンガイド16のアーチ状の誘導輪郭76、78、80(
図5)と相互作用して、次のマガジンユニット24への搬送ステップをもたらす。
【0046】
前進の指標付けの最初の段階(
図5に示す)において、把持部54は、最初に、制御カム62によってその解放位置まで移動させられる。これと同時に、スライダ74は、搬送エレメント28の1つが把持されるように、搬送エレメント28のリング内へと、楕円形経路上で案内される。マガジン18の3つの支持面に対する押圧バネ40の摩擦に関する、このスライド動作の強い偏心の係合の結果、マガジン18全体が、支承アイ52内に位置する搬送エレメントの周りを枢動(
図5においては、時計回りに)することを可能にするトルクが生じる。この枢動動作は、搬送エレメント28のリングがそこに向かって移動する、アーチ状の誘導輪郭76によって制限される(
図6)。枢動動作が停止するとすぐに、搬送エレメント28が再び誘導輪郭78に当接するまで、マガジンが支承アイ52から後退することを可能にする、線形の自由度のみが利用可能となり、これは、最終段階において、マガジン18全体の回転のみが依然として可能である(
図7)ようにするためである。この回転が1つのマガジン区画を前進させた後、その楕円形経路上のスライダ74は、搬送エレメント28との係合を解き、把持部54は再び、その捕捉エリアに位置する次の搬送エレメントの上に落とし込まれるので、その結果、マガジン18も再び支承アイ52内へ移動する。マガジン18は、それゆえ、再びマガジンユニットの前に明確に配置されるが、マガジンユニットは新しいマガジンユニット24である。
【0047】
上述の機構は、マガジン18を完全に自由にすることが決してない。システムからマガジンを取り除くとき、把持部54は、復元力56の下で、マガジンガイド16内へとさらに枢動し、その結果、新しいマガジンの挿入が妨げられる。これを回避するために、把持レバー60が延ばされ、その自由端82は、調節手段(図示せず)を介して装置の蓋14に連結される。調節手段、例えば、接続ロッドは、開放する装置の蓋14により移動させられ、また、把持部54が、とりわけスライダ74と係合することなくその解放位置へと移動するように、把持レバー60を作動させる。
【0048】
これにより、ユーザは、マガジン18の角度方向を考慮することなく、新しいマガジンを装置内に配置できる。マガジン18が中間位置に残らず、内側に枢動する把持部54によりこの位置に固定されないことを確実にするために、搬送サイクルは、ハウジングの蓋14の閉鎖後、最初に行われるべきである。また、すでに使用されたマガジンを取り付ける場合、感染の危険性を排除するために、使用済の穿刺エレメント32が用いられないことが確実にされるべきである。このために、搬送サイクルは、検査ユニットとして光バリア42を用いて、未使用のマガジンユニット24が機能位置において検出されるまで実行されるべきである。